ちょっとシチュエーションとか要素が過去作と被りすぎててどうにかしないといけない今日このごろ
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ロドスアイランドCEO、アーミヤにはとある悩み事があった。
その悩みを解決するために、自身で行えるありとあらゆる手段を講じても解決には至らなかった。
二進も三進もいかなくなったアーミヤは、問題を解決できるであろう人物へと相談することにした。
「それで私というわけね」
アーミヤが頼った相手は、療養庭園の管理者であるパフューマーであった。そして側らには仕事の合間に会いに来たせいか、パフューマーの同僚兼弟子であるポデンコの姿もあった。
思い詰めた表情のアーミヤに、作業を行っていた手を止めたパフューマーは聞きの姿勢に入る。
「実はドクターの労働姿勢に対してなんですが…」
「ああ、ドクターくんの…」
アーミヤの相談事とは、ドクターに関してであった。渋い顔をするアーミヤに、パフューマーは何ともいえない表情をしていた。
側で話を聞いていたポデンコだが、療養庭園及び温室での仕事に追われドクターの普段の生活を知らなかった。そのため二人の反応に首を傾げた。
「ドクターってダメダメなんですか?」
二人の表情から、マイナス方面に解釈したポデンコから飛び出た毒舌。アーミヤとパフューマーの二人は思わず噴出してしまう。
「フフ、違うのよ。困ったことにドクターくんは仕事をしすぎちゃうのよ」
「働きすぎってことですか。あれ、でもそれならアーミヤ社長の強権で休ませちゃえば…」
納得するポデンコだったが、アーミヤが何故相談に来るのかが分からなかった。曲がりなりにもロドストップに立つアーミヤならば、方法なんぞ幾らでもありそうなのに。
ポデンコの発言に、アーミヤは沈痛な面持ちになっていた。
「アーミヤちゃんにも原因の一端があるのよね…」
「うぐっ」
「…え?」
どうやらドクターが記憶を失う前の頃、アーミヤとドクターの二人とも過剰労働の環境下にあった。その際に休んではいけない、ということを互いに口癖のように言ってたのだが。
「ドクター救出後、労働環境が良くなってもその口癖が抜けず…」
「それを真に受けてしまったドクターくんが、ワーカーホリックになっちゃったのよね」
「なんというか、ドクターもアーミヤ社長もちょっとバカなのでは?」
「うぅ…」
歯に衣着せぬ物言いに、アーミヤは胸を押さえて膝をついてしまう。ちょっと的を得てるだけに、パフューマーはアーミヤをフォローできなかった。
アーミヤはなんとか立ち直ると、藁にもすがる思いでパフューマーに縋りつく。
「パフューマーさん、なんとかできませんか…?」
「なんとかしたいのは山々だけど、この後暫くロドスを離れるのよね」
「そんな…!」
望みが絶たれたアーミヤは再度膝をついてしまう。一応、アーミヤにはケルシーに相談するという選択肢があるがドクター共々説教される未来しかないため避けたいことであった。
何か術はないかと思案するアーミヤにポデンコが声を上げた。
「私がなんとかしましょうか?」
「ポデンコさんが…?」
「はい、強気にガツンと言えば大丈夫です!」
細腕でガッツポーズをして、力瘤を作るポデンコ。対するアーミヤは、毒舌によってドクターの心を折るだけなのではと冷や汗を流す。
ただ、アーミヤとしては他に頼る術がすぐには思いつかないため一抹の望みをポデンコに託すことにした。
「そこまで言うならお願いします」
「任されました!」
「ふふ、それなら私は使えそうなものを用意しておくわね」
「お願いしますお師匠様!」
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ドクターはアーミヤによって療養庭園内にある温室へと呼び出された。特にこれと言って呼び出される理由が思い至らなかったが、ポデンコがドクターに用があるとのことであった。
片付けなければならない書類もあったのに、アーミヤに全て盗られてしまい温室へと足を運ぶことになった。
ドクターは温室に入ると、ポデンコが仁王立ちで待ち構えていた。眉間に皺が寄っているポデンコに、気圧されるがポデンコの案内のまま、ドクターをイスに座った。
「あー、ポデンコ用事ってなんだろうか?」
「ドクター、アーミヤ社長から聞きましたよ」
「アーミヤから? 何だろう…」
責めるようなポデンコの声音に、ドクターの気分は警官に問い詰められる犯罪者。だが思い至ることがないため、首を捻るしかなかった。
「ドクターは働きすぎなんです!」
ポデンコは机を叩きながらそう言い、ドクターに指を刺した。ぷんすこと擬音が付きそうなポデンコに、自覚があるドクターは渋面になる。
とはいえ、ドクターとしてはこなさなければならないものであるため素直に首を縦に振ることはできない。
「そうは言ってもだな」
「ドクターが倒れたら皆さん心配するんですよ!」
問答無用と言わんばかりに口を挟むポデンコ。口を挟むのは本来よろしくない行為だが、ドクターのワーカーホリック具合を知ったポデンコには関係なかった。
ドクターは、ポデンコの言にも一理あると思ったのか考え込む。
「うーん…」
考え込んだドクターを、まだ渋っていると判断したポデンコはトドメの一撃を入れる。
「というかもう心配されてるんですっ!」
「うっ」
呻くドクターはこれには返す言葉もなく、白旗をあげるしかなかった。
「分かった。心配かけてすまなかった...」
「特に、アーミヤ社長が心配してましたよ」
「アーミヤが…?」
「はい。ドクターに無理させちゃったって、だからドクターが休めるようにするって言ってましたよ」
「そうだったのか、そういう事なら言葉に甘えようか」
ある意味、元凶といえるアーミヤの保証つきとあってはドクターも吝かではなかった。そのためか、テーブルへだらりと体を預ける体勢になった。
ドクターの様変わりに驚くポデンコだが、脇に準備していたものを取り出した。
「ドクター、緑茶とお菓子そしてお香です」
「緑茶か、いいね。そしてお香とは渋いね」
テーブルの上に緑茶とお菓子が並べられ、火を着けられたスティック型のお香も置かれた。
「お香は初めてだけど、いいね。アロマとまた違う感じだ」
「お師匠様が特別に出してくれたんです」
「パフューマーが? 本当に心配させちゃってたんだな」
「色々な人に聞いてみましたけど、どなたも心配してましたよ?」
「うっ!」
その後も、一時の休息を楽しみながらも時々ポデンコからチクチクと心にダメージを負う言葉を貰いながらもドクターは安らか(?)に過ごした。
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後日、ポデンコから諸々成功したことを聞いたアーミヤはドクターの様子を見にいくことにした。
ドクターの仕事量の調節をしたことによって、休日どころか平日の休息時間も捻出できた。そのために数日掛かったが、本日午後十五時、所存おやつの時間に執務室へと赴いた。
「ドクター、いらっしゃいますか?」
「アーミヤかい? 入ってきて大丈夫だよ」
「失礼します」
アーミヤが入室して、真っ先に目がついたのはドクターのデスクの上にあった書類の量であった。前までとは明らかに減っている書類に、仕事量を減らした効果があったことにほっと胸を撫で下ろした。
「はは、ありがとうアーミヤ」
「え、えっと…」
「書類、減らしてくれたのアーミヤだろう?」
突然、ドクターから感謝されたアーミヤは驚く。どうやら、アーミヤが動いたことはドクターにはお見通しだったようであった。
もっとも仕事漬けになった原因の一端を担っていた自覚のあるアーミヤは、ドクターの感謝を素直に受け取れなかった。
「原因は私にもありますし…」
「いや、大部分は私自身が原因さ。記憶喪失で戻ってきた頃は、何かしてないと不安でね…。それが癖になってしまって、ようやくロドスに馴染んだ今時分でよかったんだと思うよ。早くてもダメ、遅くてもダメ。だから、ありがとうアーミヤ」
「ドクター…。いえ、私こそごめんなさい」
アーミヤはちょっと救われる思いだった。たしかにロドスに戻ってきた頃のドクターは、鬼気迫るものがあった。
そんな朗らかな二人の間に、ノックの音が室内に響いた。
「どうぞ」
「失礼しまーす。お菓子持って来ました!」
入ってきたのは件の立役者、ポデンコであった。両手にお菓子を持ってやって来たポデンコは、テーブルの上へと並べた。
「休憩の時間です!」
「あ、ああ、ありがとうポデンコ」
胸を張って言うポデンコに、ドクターの声が少し震えていた。それを不思議に思うアーミヤだったが、邪魔しては悪いと退室しようとする。
「アーミヤも一緒にどうだい?」
「え、私もですか?」
「いいですね、アーミヤ社長もおやつにしましょうそうしましょう!」
急に声をかけられ戸惑うものの、ドクターとポデンコ双方に誘われては断れないアーミヤ。ただドクターの様子が少々おかしなことに除けばだが。
二人に誘われるまま、アーミヤも席に着く。焼きたてのクッキーと淹れたて緑茶のいい匂いが鼻腔をくすぐる。
三人ともクッキーを齧り、緑茶を啜る。ほんわかとした空気の中、ポデンコが口を開いた。
「いやー丁度よかったです。ドクターだけじゃなくてアーミヤ社長にも言いたいことがあったので」
「え」
そこからはポデンコの独壇場であった。どこからか聞き集めたのか、ドクターとアーミヤの勤務態度、主に仕事のしすぎなことに関してのダメだしであった。
ここに来てアーミヤはドクターが自身を引きとめた理由を悟った。
「恨みますよドクター!」
「旅は道連れ世は情けだよアーミヤ」
「人を呪わば穴二つ、です!」
「聞いてますか二人とも!」
「「は、はい! もちろんです!」」
以後、ドクターとアーミヤのワーカーホリックが治ったのは言うまでもなかった。
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評価、お気に入り、ここ好き、ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。ないとむしろ不安になります(