徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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不思議な出来事とドクターとニェンとちょっどだけシー

以前ついったーで投稿したものをそのまま投稿。
夜中ふと思いついて書きなぐり、誤字脱字設定ミス多いと思ふ。


不思議な思い出の‐ (ドクター・ニェン・シー)

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 ドクターは生まれつきアーツが使えなかった。しかし、石棺から目覚めた日の夜から目の前の何もない空間が波打ち始めた。

 ドクターは不思議とそれが、水面のように感じ糸を垂らしてみると波打った空間に吸い込まれていった。ドクターは不思議に思いながらも、ただの竹に糸を括り付けただけの釣竿を作り、毎夜糸を垂らして見ていた。

 そんな不思議な水面とドクターともう一人のお話。

 

 

 

 

 夜、基地の甲板の端にてドクターは今日も釣りに興じていた。月明かりは乏しく、時々雲もかかり闇に包まれることが多々あった。

 

「...」

 

 今日も釣果がないドクターだったが、そんな沈黙の時間がドクターは嫌いではなかった。

 

「なにやってんだオメー」

 

 闇に誘われ、意識が朧げになっていたドクターに声を掛ける人物が現れた。

 片手に火が入った七輪を持ち、反対の手には酒と肴が握っているニェンであった。

 

「ニェン、晩酌かい?」

「まぁーな、というかそれどうなってんだ?」

 

 ニェンは自身とドクターの間に七輪を置くと、どかりと甲板の端へと腰を下ろした。視線はドクターが握っている竿の先へと向けられており、虚空へと消えている糸を見つめていた。

 

「さぁ?私も詳しい事は何も」

「なんだそれ。何か釣れたりは」

「さっぱり」

 

 何も分からない、知らないことに怪訝に思うニェン。七輪の火を使って干し肉を炙り、口にすると酒を一杯煽った。

 

「下手くそなんじゃないか?」

「釣りをした経験も、記憶もないからねぇ」

「こういうのは経験が大事なんだよ。貸してみろ」

 

 ドクターから竿を借りたニェンは、器用に竿先を揺らしながら獲物がかかるのを待った。一定のりずむにならないように、時には大きく時には小さく揺れる竿と虚空の水面。ドクターはどこか呆然とそれを眺めていた。

 

「こうしてると昔を思い出すなー」

「昔かい?」

「ああ。ガキの頃、部屋に籠り気味のシーを連れ出して釣りをな。つってもシーの奴は外に連れ出してもお絵かきに夢中だったけどよ」

「筋金入りだったんだね」

「懐かしいぜ...っておお⁉︎」

「おや」

 

 どこか遠い目をしながら思い出にふけていたら、釣り竿に反応があった。何かが釣れるとは思っていなかったからか、初動が遅れてしまう。しかしながら引きは強くないどころか、ニェンが軽く持ち上げただけで釣れてしまう程弱いものだった。

 

「これは、紙。いや和紙、かな?」

 

 釣れたものは魚どころか生き物でさえなかった。ドクターは首を捻るだけであったが、ニェンは目を見開き驚いていた。

 

「こいつは、また懐かしいもんが...」

 

 くしゃり、と折り畳まれた紙を広げたニェンは頬を綻ばせた。大切な宝物に触れるように、優しく一撫でした。

 

「それは?」

「ん?ああ、私の似顔絵だよ。どうだ、下手くそだろ」

 

 ニェンはドクターに見える様に紙を広げると、そこには子供が黒白で描いた辛うじてニェンと分かる似顔絵があった。たしかに下手ではあるとドクターは思ったが、ニェンの喜色満面な顔に口には出さなかった。

 

「これはシーの奴が始めて私を描いたやつなんだよ、ほんと懐かしいな。なんで釣れたのかイマイチわかんねーけど」

「それは、宝物だね」

「...むかーしの火事で焼けちまったはずなんだけどな。案外思い出せるもんなんだな」

 

 優しい眼差しで似顔絵を見ていたニェンであったが、一時の時間が過ぎると和紙を折り始めた。宝物であるはずのものを折ることに、首を傾げるドクター。

 

「...ニェン?」

「こいつは既に無くした宝物だ、思い出させてくれただけありがたいってもんだな。だから帰すんだよ」

 

 ニェンの手によって紙飛行機へと折られた紙は、虚空へと飛ばされた。ふらふらと飛んだ紙飛行機は、何もないはずの虚空に波紋を漂わせて消えていった。

 どこかスッキリとした顔のニェンに、ドクターは問わずにはいられなかった。

 

「よかったのかい?」

「いいさ、思い出せたことのが重要だからな。それに」

「それに?」

「今ならシーもロドスにいるんだ、描いて貰えばいいのさ。新しい宝物としてな」

 

 ニェンはそう言うと、釣り竿をドクターに返しその場を後にする。

 

「七輪と酒と肴、やるよ。じゃあまた明日な」

 

 ひらひらと手を振りながらニェンは去っていった。

 一人取り残されたドクターはそのまま釣りを再開した。古い宝物と新しい宝物、どちらが大切ではなくどちらも大切なもの。ドクターは残された七輪の暖かい火を感じながら、雲に覆われた夜空を見上げて酒を一杯煽るのだった。

 

 

 

 

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 次の日、ドクターが書類仕事をしていると珍しい人物が訪ねて来た。

 

「ドクター」

「ん?シー、どうかしたかい?」

 

 嫌そうで、でも嬉しそうにも見える表情のシー。恐らくニェンが何かしたのだろうが、複雑なシーの表情から上手く感情を読み取れなかった。

 

「昨日、ニェンと何かあったでしょ」

「確かに不思議な出来事はあったけど」

「...はぁ、これニェンからよ」

 

 色々なものを吐き出すかの様なため息をつくと、ドクターに一枚の和紙を差し出した。四つ折りにされたそれをドクターは受け取り、紙を広げるとそこにはドクター自身の似顔絵が描いてあった。

 絵を描いてさらには無償で差し出し、画材としては特段優れているわけでもない一般の和紙。終いには折り畳んでいたという事にドクターは驚いた。

 

「...言われたのよ、ニェンに」

「何をだい?」

「『始めて描いてくれた下手くそな似顔絵をくれ』って」

「それはまた...」

 

 直球なものいいに苦笑いをするドクター。シーは絵に関して誇りとプライドを持っている、さぞかし憤怒したのかとドクターは思うが。

 

「ほんと馬鹿じゃないの。あれから何年経ってると思うんだか、下手くそに描けるわけないじゃない...」

「シー...」

 

 存外、満更でもなさそうなシーに驚くと同時に、あの絵はシーにとっても大切な物だったのだと気づく。

 

「とっくの昔に忘れてると思ったのに...。聞けばドクターが関係してるとか、だからお礼よ。『下手くそな似顔絵』だけどね」

「いや...これ以上ない程の『宝物』だよ」

 

 

 

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 誤字脱字、お気に入り、評価ありがとうございます。

 リアルの方のゴタゴタと精神的ダメージが大きく執筆できない状態でした。以後も執筆予定は未定です。
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