徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 『拝啓ペンギン急便の皆さん、私は元気です。』『かまえ!』『かまって?』の続きです。
 そろそろ独立させたほうがいいのかなと思う今日この頃。独立させません(アンケ結果)


かまいませんっ! (プロヴァンス)

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 拝啓

 

 

 

 私達の門出をお祝いするかのように色とりどりの花が咲き乱れております。

 

 お送りいたしました手紙も、双方無事に届きましたこと嬉しく思います。

 

 その手紙の件において、龍門に帰省せよとのことでしたが申し訳ありませんが少々お時間をいただけないでしょうか。

 

 以前お話していたレッドさんに関してなのですが、是非私に相談したいという被害者の方がおられるのです。ロドスの幹部の方からもよくしてくれとのことです。

 

 ペンギン急便の社員として、ロドスとの友好関係を築く上で必要なことだと判断いたします。なにとぞ再考のほどを。

 

 

 

 

 敬具

 

 

 

 ○年○月○日

 

 

 

 ロドスアイランド派遣員

 

 

 

 ペンギン急便 テキサス様

 

 

 

 

 

 

 

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 拝啓

 

 

 

 そちらのレッドの件、了解した。存分にやれ。

 

 こちらの用事も大したことではないからな、案件を全て処理してから来てくれればいい。

 

 

 敬具

 

 

 

 ○年○月○日

 

 

 

 テキサス

 

 

 

 ペンギン急便 ロドスアイランド派遣員様

 

 

 

 

 

 

 

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「さて、会社から許可は出ました。詳しく聞きましょうかね」

 

 手紙を読み終わった相方が姿勢を正して目の前の人物に向き直った。対面にいるのは菫色をしたループス族、プロヴァンスであった。

 

「えっとね、レッドさんのついてなんだけど...」

 

「なるほど」

 

 プロヴァンスの耳は垂れており、自慢の大きな尻尾に艶がなかった。恐らくレッドに追いかけ回されたのであろろう、体力的には問題なくても精神的疲労が重なっていることが伺える。

 

「彼女はただ尻尾を触りたいだけなんですが、難しいですかね?」

 

 分かりきってはいるが、確認の意味を込めて聞いてみる。がプロヴァンスは首を横にぶんぶんと振って意思表示をした。

 

「そうですか。私から止めるよう言うことはできますが」

 

「いやそうじゃないの」

 

「違うといいますと」

 

「どうしたら相方さんみたいに克服できるか、それを知りたくて...」

 

「ふむ」

 

 思案顔なプロヴァンスに、少々意外だと相方は感じる。他のループス族のスタッフからは止めてくれと懇願されたのだから。

 相方はじっと対面の彼女を見ると、確かに疲れは見えはするがその目は真剣であった。

 

「克服ですか。一つ言っておきますが私は克服してませんよ?」

 

「え!? でもレッドさんと触れ合って」

 

「我慢してるだけです」

 

 まさかの相方の発言に、驚いていたプロヴァンスの目が点になる。それもそのはず、特に何か対策なり訓練なりをしたのではなく根性論であったのだから。

 その事実にサーとプロヴァンスの顔から血の気が引いていく。

 

「な、何か対策が...」

 

「ないです」

 

「訓練とか...」

 

「ありません」

 

「こう便利な装置が...」

 

「残念ながら」

 

「帰ってもいいですか?」

 

「ダメです」

 

 徐々に涙になりながら、最後はイスから立ち上がり逃げ出そうとするが相方に羽交い絞めにされとめられてしまう。

 帰る、お家帰るぅ! と連呼しながらジタバタと暴れるが、研究者のプロヴァンスが敵うわけもなく再度イスに座らされた。

 

「最初のあの覚悟を決めた目はどうしたんですか」

 

「何かあると思ったんですぅー! そうすれば逃げずに済むかもって!」

 

「そんなものがあるならラップランドは逃げてませんよ」

 

「...そうでした」

 

 堪忍したのか、ガクリと頭を垂れた。プロヴァンスを落ち着けたところで仕切りなおす。

 

「先ほども言いましたけど、嫌なら止めれますよ? 彼女も聞き分けが悪いわけではないですから」

 

 机に置いておいたポットから紅茶を注ぐと、プロヴァンスに差し出した。座ってから俯いているプロヴァンスだが、素直に紅茶を受け取る。

 揺れる紅茶の水面をジッと見つめながら思い馳せる、ループス族に拒絶されて悲しそうにするレッドの背中を。

 

「レッドさんが可哀想で、なんかほっとけないんです...」

 

「...さっきは逃げようとしたのに?」

 

「あれは! 思っていたのと違ったからなんですっ!?」

 

 折角覚悟を決めたのに、茶化されたプロヴァンスは頬を膨らませた。茶化した当の本人は、プロヴァンスの今の姿にこれはいけると意を得たと一つうなずいた。

 

「一応、方法はありますよ」

 

「あるんですか!?」

 

「はい、少々手荒ですけど」

 

「構いませんっ! やりましょう!」

 

 プロヴァンスは対処法があると聞き、ガッツポーズしながら意気込んでいる。しかし張り切りすぎたせいか、相方が怪しい笑みを浮かべているのに気がつかなかった。もっともガスマスクで見えないのだが。

 

 

 

 

 

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 ペラ紙にレッド恐怖症克服室と書かれた紙が張られた部屋に通されたプロヴァンスは、背もたれがないイスへと座らされていた。

 どういうことをされるのか、一切知らされてないプロヴァンスは頭の中にハテナマークが乱立している。その間にも相方は着々と準備を進めている。

 

「あの、本当にこれでいいんですか...?」

 

「ええ、そうです。仕切り版降ろしますね」

 

「ア、ハイ」

 

 手足をイスに固定され、さらには尻尾を挟むように仕切り版と呼んでいる背もたれが設置された。これによってプロヴァンスは背後を見れず、抵抗さえできなくさえれた。

 

「では、暫くお待ちくださいね」

 

「待ってるだけでいいんですか...?」

 

「はい」

 

 プロヴァンスの頭の中は混乱の真っ只中、でもレッドのことを考えてぐっと堪える。

 相方は準備を済ませるとさっさと部屋から出ていってしまう。パタリと閉じられるドア、するとドアに張られていたペラ紙が落ち本当の部屋の名前が明らかになった。

 

 『ループス族お仕置き部屋』。

 

 

 

 

 

 

「いつまでこうしていればいいんだろう...」

 

 イスに固定されてから凡そ三十分ほど経つが、特に何かが始まることなく過ぎていった。体を動かすことができないため、暇つぶしにと背後の背もたれの向こうにある尻尾を左右に振る。

 大きな尻尾のため、背後では埃が舞っていることであろう。

 

「んぅ~、はぁ...。レッドさん...」

 

 出来る限りの伸びをして、赤い狼の名前を呟く。プロヴァンス自身は遠目から眺めるか、追いかけられるぐらいの接点しかないが、周囲のループス族以外から彼女の話を聞き込みしていた。

 曰く戦闘巧者である、曰く学がない、曰く幼いなどなどであった。総合すると大きな子供であるとプロヴァンスは結論付けた。

 子供または子供のような感性をしているのか、レッドはよく他者の尻尾を触りに行く。人肌恋しいのかはたまたモフモフと言ってる様にただ触りたいだけなのか、プロヴァンスには分からなかった。

 だがある日、ループス族のスタッフに拒絶された場面を見てしまったプロヴァンスは、彼女のことが放っておけなくなってしまったのである。

 

「これでレッドさんに近づかれても大丈夫になるといいんですけど...んん?」

 

 ぽつりと独り言をもらすと、さわり、と何かが尻尾に触れたのを感じた。先ほどから左右に振っていたため物ではないことは明らかである。

 さわりさわり、と徐々に触れる頻度が増す。同時にプロヴァンスは背中にゾワワと悪寒が走るのを感じた。

 

「な、何!? ボクの背後に何があるの!?」

 

 くすぐったいが嫌なものを感じるプロヴァンスは身をよじる。

 

「遅れましたプロヴァンスさん」

 

「相方さん! 何かが尻尾に...っ!?」

 

 すると相方が漸く部屋に戻ってきた。プロヴァンスは思わず相方に懇願するが、相方は平然としていた。

 

「ああ、もう始めてるんですね。大丈夫です、これがその方法なので」

 

「ほッ、ほんとうにッ、これがそのぉ! 方法なんです、かぁ!?」

 

 最早遠慮のない触り方に、プロヴァンスは体をひくつかせた。

 

「ええ、暫く我慢してください」

 

「我慢~~ッ! って、こんじょーぉう!? 論じゃないですか、ひゃう!?」

 

「ええ、最初にそう言いましたよね?」

 

「しょんなぁわっ!?」

 

 ここからプロヴァンスの地獄が始まった。

 

 

 

-ぬひぃ! ...あふん、あひゃ!? 

 

-んんんんぅーッ! んひゃ!? 

 

-はっ、はっ、はっ...あふん...

 

 

 

 一時間、プロヴァンスは地獄を耐え切った。息も絶え絶えで体は火照り汗もかいている、なのに鳥肌が立っていると状態である。

 

「ふむ、耐えれましたか。なら大丈夫でしょうか」

 

「...ほへ?」

 

 相方がプロヴァンスの様子を見てそういうと、仕切り版を取り除いた。そこには、プロヴァンスの大きな尻尾に抱きついているレッドがいた。

 

「モフモフ」

 

「え...?」

 

 レッドはプロヴァンスの尻尾を堪能したのか、相好を崩して幸せそうであった。

 対してプロヴァンスは、二度見三度見して漸く事態を把握すると背筋に弩級の悪寒が走りぬけた。

 

「...きゅう」

 

「モフ?」

 

 プロヴァンスはかわいらしい声と共に、気絶してしいレッドは不思議そうに顔を傾けた。

 

「まだ早かったみたいですね」

 

 相方の残念そうな声が室内に響いた。

 

「モフ、モフ♪」

 

 

 

 

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 評価、感想、お気に入りありがとうございます!

 前話でも書きましたが、今回の投稿を最後に不定期に入らせていただきます。
 流石に書くのが辛くなってきたのと、リアルが忙しくなってしまうので。

 3月のほぼ毎日投稿、楽しんでいただけたら幸いです。
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