徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 『拝啓ペンギン急便の皆さん、私は元気です。』『かまえ!』『かまって?』『かまいませんっ!』の続きです。
 めっちゃ書けなかった。書きたいのに書けなかった、つらたん...。

 


かまうぞ (テキサス)

.

 

 

 

 

「そないゆっくりしててええんか、テキサスさん。今日やろ? お礼参り」

「ああ。そろそろ準備しておくか」

 

 

 ペンギン急便の事務所にて、先に仕事を終えていたクロワッサンがテキサスへと声を掛けた。当のテキサスは、食べ終えた菓子の空箱を握りつぶすとソファから立ち上がった。

 

 

「確か丸組ちゅーヤクザのとこやったか。奴さんも馬鹿やねぇ」

「極東出身者の集まりの新参だ。大方箔付けのためだろうが、こっちとしては仕事が増えるばかりだ」

 

 

 この後行われることに、クロワッサンは同情も慈愛もなくただおかしそうに笑うのみ。対してテキサスは余計な手間が増えたことに対して顔をしかめる。彼女は面倒が嫌い故にだ。

 テキサスは最終確認として、服装、お礼参りするヤクザの事務所の場所とその名簿、武器である鉱石刀と予備が入っているボックス型のリュックと持っていく物全てのチェックを済ませる。勿論、タオルなどの拭うためのものもいくつか入れている。

 

 

「さて後はあいつが来るだけだが」

 

 -コンコンコン

 

 

 まるで見計らったようなタイミングでノック音が鳴る。ノック音は表側の玄関ではなく、社員用の裏口からであった。ペンギン急便の面子はあまり使わない裏口だが、約一名は頻繁にどころか裏口しか使わない人物が居る。

 

 

「来たか」

「おまたせしました」

 

 

 裏口から顔を出したのは皆から相方と呼ばれているループス族であった。数日前に仕事で呼ばれていたため、本日出社してきたというわけである。

 

 

「『トラヴィス』やん久しぶり~。どや、ロドスの生活は」

「皆さんよくしてくれるのでとても過ごしやすいですよ。社長の無茶振りもありませんし」

「メリットばっかりやん、うちも行きたいわ~...」

 

 

 トラヴィスは入室せずに、武器や小道具などを除いた荷物を放り入れる。クロワッサンは脱力したようにソファに埋もれてしまう。クロワッサンもつい先日、社長の『日頃の良い行い』の激戦の尻拭いを行ったばかりである。そのためトラヴィスのロドスの生活を羨ましく感じてしまうのも無理もなかった。

 

 

「準備はいいな。行くぞ」

「了解です」

「気をつけてなぁ~」

 

 

 それぞれ自身の武器などを持った二人は、クロワッサンに見送られながら開いている裏口出て行った。

 ガチャリ、と裏口が閉められ一人事務所内に残されるクロワッサン。本日の業務は終わらせているため、ボーとしたままソファに身を預ける。

 

 

「...やっぱうち、苦手や」

 

 

 静寂に包まれた中でポツリと溢したそれは、先ほどやって来たトラヴィスに対してのもの。

 クロワッサンは相方より先にペンギン急便に所属していた関係上、それなりに相方の人となりを知っている。

 出会った当初は丁寧な言葉遣いと物腰でわりと印象は良かった。だが一緒に過ごしていく内に変わっていき。

 

 

「不気味やなぁほんま。テキサスさんもよー付き合えてるわ」

 

 

 嫌悪するわけでもなく、ただただその在り方に対して不気味である。クロワッサンはトラヴィスに対してそう評価していた。

 クロワッサンは思考を切り替えるために、天井に向けていた顔を正面に向けた。とそこへ玄関から音が鳴る。

 

 

「不肖ソラ、只今戻りました!」

「不肖エクシア、仕事を無事終わらせてきました!」

「おーお疲れ様ってなんやそれ」

 

 

 元気よく勢いのまま帰ってきたソラは片手を額の前、所存敬礼のポーズをとっていた。それだけなら快活なソラらしいのだが、エクシアもソラのノリに乗っかっている。そのせいでクロワッサンは二人に怪訝な目を向けていた。

 

 

「ノリ!」

「さいで」

「もーつれないなぁ。お疲れ?」

「あれ? テキサスさんは?」

 

 

 エクシアとソラの二人の疑問に答えているのか、クロワッサンは裏口を指差した。裏口を見た二人、エクシアはそれだけで得心したがソラは気づかないのか首をかしげている。

 

 

「なるほど、帰ってきてたんだねトラヴィス」

「そーいうこと」

「えーと確か『オースティン』さんのこ、とッ!」

 

 

 ソラがそう言った瞬間、室内がザワついた。殺気のような害意があるものではない、だが確実にソラに突き刺すような空気が一瞬のうちに出来上がった。

 唐突な変化と異様な雰囲気に呑まれたソラは、喉が干上がっていくのを感じる。

 恐らく一分ほどで室内の異様な空気は霧散した。

 

 

「ハッ...! ハッ...!」

 

 

 荒い息をするソラにとっては、数十分にも感じいたのか疲労が浮き出ていた。

 ソラの様子に、先ほどの雰囲気を作り出した元凶のエクシアとクロワッサンは申し訳なさそうな顔をしていた。

 エクシアは飲み物を取りにキッチンへと向かう。クロワッサンはソラを手招きして隣に座らせると、ソラの背を優しく擦る。

 少ししてエクシアが戻ってくると、熱すぎない程度に温めたミルクをソラに手渡した。そしてエクシアはそのままソラの隣へと座る。

 

 

「ソラ。はい、ホットミルク」

「ありがとうございます...」

 

 

 ホットミルクを口につけ、程よい暖かさを手と体の中から感じ、ソラはようやく人心地ついた。

 危険な仕事先でも、血生臭い戦場でも、『あの』ラップランドが騒ぎを起こしても感じることのなかった雰囲気にソラは恐る恐る声を上げた。

 

 

「さっきのは一体...」

「びっくりさせてごめんなぁ。えーと」

「教えていいと思うよ。むしろ教えたほうがいいんじゃないかな」

「それもそうやな」

 

「いいかソラちゃん、トラヴィスの家名は言うたらあかん」

「トラヴィスさんの家名を、ですか...?」

「そや」

 

 

 神妙な面持ちのクロワッサンだが、ソラは何故言ってはいけないのかと首を傾げる。何故ならペンギン急便の社長たる皇帝(エンペラー)がポロっと言っていたのを聞いてしまっていたからである。

 

 

「何も説明せんとあんのクソ社長...」

「流石社長、怖いもの知らず」

「盗み聞きみたいなものですから...」

「不用意なことには変わらへん」

 

 

 呆れた顔の二人に一応の弁明はするソラだったがクロワッサンにバッサリ一刀両断される。

 

 

「まぁ兎に角、トラヴィスの家名は本人の前で言わないようにね」

「は、はぁ...」

「血ぃ見ることになるで」

「えぇっ!?」

「あ、そういえばロドスから手紙来てたんだった」

「ちょっとぉ!?」

 

 

 話は以上だと言わんばかりに、エクシアが一通の封筒を取り出した。

 ソラとしては気になる所ではあるが、先輩の二人が話したがらないことを察する。血生臭い気配を感じ取ったのもあるが。

 

 

「ロドスから? トラヴィスはん関連かいな」

「たぶんそうじゃないかな。えーと何々...『社会見学の一環でオペレーターを一人送る』?」

「トラヴィスさんではなくてですか?」

「...うん、そうみたい」

 

 

 封筒の中身を読みあげると三人は首を傾げる。

 

 

「じゃあこの後ここに来るってことですよね」

 

 

 ソラが室内を見渡して言った。今居るところは社員が使う休憩室、そのため部外者が来ることを想定していない、散らかっているとまでは言わないが外様に見せれないありさまである。

 エクシアとクロワッサンも部屋を見る。

 

 

「片付けな!」

「時間あるかな~」

「掃除道具持ってきますね」

 

 

 ペンギン急便の社員の休憩は終わりを告げ、急遽部屋掃除をすることになった。

 ただしばらくしてソラはふと気づく。

 

 

「手紙、誰が持って来たんだろう?」

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 テキサスとトラヴィスの二人は事務所の裏口から屋上へと上がると、パルクールを行いビルからビルへと移動していっている。

 通り過ぎたビルが十を超えたあたりで、トラヴィスは前方にいたテキサスの様子がおかしいことに気がつく。しきりに首筋を擦り、チラチラと後方を確認している。

 トラヴィスも一度後方を確認するが、何かが居るわけでもなければ悪意や害意なども感じ取れない。不思議に思い声を掛ける。

 

 

「どうしました。何か気になることでも?」

「...いや、何でもない」

 

 

 テキサスは首裏がひりつく様な物を感じていた。それが何なのか、判断がつかず、一瞬迷うものの結局口に出すことはなかった。

 

 

「そうですか」

 

 

 テキサスが言わないのなら構わないのか、トラヴィスは一言で済ませた。

 その後、移動を続けるのだがテキサスは時折後ろを確認するような素振りを見せる。しかし、ついぞトラヴィスが再度声を掛けることはなかった。

 

 

「ついたぞ」

 

 とあるビルの屋上で立ち止まったテキサス。既に日は暮れており周囲は薄暗くなっている。そのため目の前の建物以外の灯りは消えており、そのビルと街頭だけが周囲を明るくしていた。

 

「目の前の雑居ビル、二階ですね」

「ああ。情報通り、今日はまだ居るみたいだな」

 

 

 道路を一本挟んだ向かい側の雑居ビル、その二階の窓から光が漏れていた。

 

 

「警備はなしと、構成人数は?」

「六人、うち一人が組長のはずだ」

「随分少ないですね。生死は?」

「龍門に来たばかりの弱小だからな。殺すな、ただ見せしめにはしろとのことだ」

「無知は怖いですね」

 

 

 二人は情報の刷り合わせを行いつつ、準備を進めていく。

 テキサスはリュックに詰められている原石刀を二本取り出し、一本をトラヴィスへと手渡す。トラヴィスは受け取った源石刀を腰に指すと、矢筒を背負い短弓を手に取った。そして短弓にはグラップリング機能が備え付けられた矢を番えた。

 

 

「正面突破は待ち構えられる可能性があるとはいえ、グラップで窓からですか。アクション映画の影響を受けましたか?」

「否定はしない。だが奇襲には向いている」

 

 

 軽い口調でやり取りしているが、トラヴィスが構えている短弓は弦が切れるのではないかと言うほどに引き絞られていた。

 

 

「窓ガラスが防弾ではないことに祈りましょう」

「む、それもあったか。なら私が先行する」

「アーツで強行突破ですか。カンフー映画染みてきましたねっ!」

 

 

 掛け声と共に放たれた矢は、側らに積まれてあったロープをグングン減らしていく。

 そして、向かいの雑居ビルの二階と三階の間へと突き刺さった。

 

 

「ヒット。刺さり具合は、OK」

 

 

 グラップリングを確認したトラヴィスは、屋上にあった大型室外機の足元へとロープをきつく結んだ。

 その間に目標の二階からは、俄かに慌ただしくなっておりブラインド越しに人影が窓際に寄って来ているのが見て取れた。

 

 

「では、行くぞ」

「私は後ほど」

 

 

 テキサスは原石刀の柄を使いロープを器用に滑っていった。トラヴィスもその手があったかと関心するが、掌側に鉄板が仕込まれた皮手袋を右手に着用する。

 先にグラップを滑っていき、半ば程まで到達したテキサスは突入のためにアーツを起動させ剣雨を発動できる状態にする。

 突入まであと少しといったところで正面の窓に人影が現れた。なにやらその人影は窓を開けようとしているようで、それを確認したテキサスはアーツを解き霧散させると蹴りの体勢へと入った。

 

 

「ったく、一体何だってんだ」

「フンッ!!」

「どべらばッ!?」

 

 

 哀れ窓を開けた下っ端は、顔面にテキサスの蹴りを受けて昏倒した。

 対してテキサスは、華麗に蹴りを決めたことにより勢いを殺すことで、室内へと安全に着地することができた。

 

 

「運がいい。互いにな」

「な、なんだぁてめぇ!?」

 

 

 突然の奇襲に敵の構成員は驚くものの、すぐさま各々の武器を握る。室内ということもあり短い刃渡りのドスや、取り回しやすいハンドガン(チャカ)といった顔ぶれになっている。

 武器を向けられたテキサスは、恐れるどころかいつものチョコ菓子を懐から取り出すと口へと咥えた。それをみた構成員は、なめられると感じ額に青筋を立てる。

 

 

「カチコミしてきやがったと思ったら菓子なんて食いやがって...! なめてんのか!?」

「なめるも何も、警戒する価値もないだろう」

 

 

 ポリポリをお菓子を短くしていくテキサス。ただその立ち姿に油断はない。

 構成員を挑発しながら数歩、横へずれる。

 

 

「このクソアマッ!?」

 

 

 大胆不敵で傲慢な姿に、沸点を超えた一人の構成員がテキサスへと銃口を向けた。

 銃口を向けられたテキサスは顔色を変えず、鼻で笑う。

 

 

「ああそうだ」

「ああ゛!?」

「襲撃しにきたのは私だけじゃないぞ?」

「お邪魔しますよっと!」

 

 

 開け放たれた窓から滑り込むようにして飛び込んできたトラヴィス。勢いそのままに部屋の中をかっとんで行く。

 そして着地する間に、短弓でテキサスへと銃口を向けていた構成員の肩を正確に射抜いた。

 

 

「ぎゃぁ!?」

「慢心するからだ」

 

 

 これで残り四人と、部屋の中を見渡すと組長らしき人物が逃げるようにして奥の部屋へと入っていくのが目に入った。

 

 

「トラヴィス! 今逃げて行ったのを追え!」

「了解です」

 

 

 逃げていく組長らしき人物を確認したトラヴィスは、短弓を背負うと鉱石刀を手に取り追いかけた。

 二人の会話が耳に入っていた残りの構成員はトラヴィスを阻止しようと動く。テキサスは足止めを行おうとするものの、位置関係により二人しか阻めず一人逃してしまう。

 

 

「行かせるか!」

 

 

 トラヴィスに上段から切りかかる構成員。それに対してトラヴィスは、一歩後退しつつ体を一回転させながら構成員の大腿へと切りつけた。

 構成員は痛みに膝をつき、トラヴィスは回転の勢いのまま、その首へと狙いを定め...途中で変更し胸元を浅く切りつけた。

 

 

「ぐぅ!」

不殺(ころさず)、というのも面倒なものですね」

 

 

 そうボヤキながらも、倒れた構成員を踏みつけ昏倒させるとトラヴィスは逃げた組長を追った。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 トラヴィスが奥の部屋へと入ると、逃げた組長は金庫を開け広げ中から様々な書類を取り出しバックへと詰めていたところであった。ご丁寧に、逃げ出すためなのか裏口を開けていた。

 方をつけようと組長に近づくトラヴィスだが、異変に気づき顔を上げトラヴィスの存在を目に入れると顔を青褪めさせながら懐からハンドガンを抜いた。

 

 

「近づくんじゃねぇ!」

「...」

 

 

 銃口を向けられ足を止めたトラヴィスに組長は勝ち誇った顔をする。

 

 

「そうだ、動かなけりゃー命だけは助けてやる」

「...」

 

 

 組長はバックを掴み、トラヴィスを警戒しながら一歩一歩裏口へと歩を進める。

 当のトラヴィスは、組長の勝ち誇った顔に首を傾げる。今居る部屋は広くなく、二人の直線距離は凡そ五メートルしかない。その程度なら、一足飛びに詰めることができる。

 故に..。

 

 

「動くなって言っただろうが!? これが見えねーのか!」

「見えてますよ?」

 

 

 強く銃口を向けられても尚足は止めない。

 

 

「なら止まれ!!」

「理由がないですね」

「てめっ!?」

 

 

 残り三メートル、我慢の限界を超えた組長は引き金を引き絞り。

 

 

「危ないの、ダメ」

「ゴッ!?」

 

 

 弾丸は発射されなかった。突然、音もなく組長の後ろに現れた存在によって昏倒されたためだ。

 床に倒れる組長、その後ろには赤いコートを羽織った銀髪のループス、レッドが居た。

 

 

「おや。なんでレッドさんがいらっしゃるので?」

「? 、ケルシーの、手紙。見てない?」

「存じ上げませんが...。まぁ事務所に戻れば何か分かるでしょう」

 

 

 和やかな会話をしつつも、昏倒した組長を縛り上げていく。縛り終えるとトラヴィスは組長を担ぎ上げた。

 

 

「さてテキサスさんも終わらせてますかね」

「テキサス?」

「ええ、ペンギン急便のリーダーなんですけど」

 

 

 ここでトラヴィスに電流走る。

 

 

「頼れる『ループス族』の上司なんですよ」

 

 

 チラリとレッドを見るとそこには既に居らず。

 

 

「な、なんだお前は!? 近づくな! 後ろに回りこむな!! 尻尾に触れるな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃぁぁああああああああああッ!?!?」

 

 

 大変面白いことになっているようであった。

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 その後レッドを落ち着かせてから、組にケジメをつけさせてから事務所へと帰った。

 帰った先では事務所は大掃除がなされており、話を聞けばロドスからやってくるオペレーターを向けるためだという。尤も当のオペレーターはトラヴィスを追ってきてしまっていたわけだが。

 時間も遅く、上記のこともありレッドの紹介は後日に行うことにして事務所に残っていた面子は帰ることになった。

 そして、テキサスは事後処理を行うために、トラヴィスは荷解きをするために事務所に残った。

 

 

「なんだまだ残っていたのか」

「事務処理お疲れ様です。久しぶりに帰ってきましたからね、少しゆっくりしていこうかと」

 

 

 満月が天高く輝いている時間、ようやく書類仕事が終わったテキサスが見たのは窓際のソファに座り杯を傾けているトラヴィスであった。

 トラヴィスに近づき、側らに置いてある大ボトルを手に取る。

 

 

「大吟醸ケバブ...?」

「面白い名前ですよね」

「また変なのを。しかもこの匂い安酒だろうに悪酔いするぞ」

「ええ。酔えない体質ですし、酒精さえ感じられれば何でもいいので」

「まったく、少しは体を労わったらどうだ。普段の食生活も疎かにしているから余計にだ」

 

 

 くどくどとしつこいぐらいにトラヴィスに説教を始めたテキサス。トラヴィスはというと説教自体は右から左へと聞き流し、けれども早口になっているテキサスを見て笑みを浮かべていた。

 

 

「なんだ、何がおかしい」

「いえ、凄い饒舌だなと思いまして。...そんなに嫌です? レッドさんにモフモフされるの」

 

 

 笑みを浮かべたトラヴィスはテキサスの後ろを覗いた。そこにはテキサスの尻尾を抱きしめているレッドがいた。

 レッドはテキサスの尻尾を揉み込むのではなく、撫で付けるようにして楽しんでおり顔には笑みが張り付いていた。

 

 

「嫌に決まっているだろう!? 言い得も知れない、本能に訴えるような恐怖を感じるんだぞ! お前っ、気合でなんとかしたって手紙で書いてあったが嘘だろ!!」

「はて、なんのことですかねぇ」

「貴様ぁ...!」

 

 

 テキサスはとぼけるトラヴィスに恨めがましく睨みつけた。トラヴィスは普段見れないテキサスの姿に、もう少し見ていたい気持ちに駆られるが今後、レッドとテキサスの関係が拗れる可能性があるためレッドに声をかけることにした。

 

 

「レッドさん、テキサスさんの尻尾のさわり心地はどうですか?」

「モフモフ、なのにすべすべ、ずっと触っていたい」

「気に入ったのですね。ただテキサスさんもお疲れですし、それ以上触り続けると嫌われちゃいますよ」

「それはやだ!」

「私ので我慢してください」

「分かった」

 

 

 レッドはテキサスから離れるとトラヴィスの隣へと座り、トラヴィスの尻尾をモフり始めた。

 解放されたテキサスは、ゾワゾワと背筋に感じていたものがなくなりようやく人心地つきほっと安堵のため息をついた。それでもまだレッドが近くにいるため、首筋に嫌なものを感じてはいたが。

 

 

「はぁ...」

「お疲れ様です。一杯飲みます?」

「止めておこう、絶対悪酔いする」

「それは残念」

 

 

 まったく残念そうではないトラヴィスに、今度は疲れたようなため息を吐いたテキサス。

 することもなくなり、帰宅しようと踵を返すがあることを思い出して足を止めた。

 

 

「そうだトラヴィス」

「なんでしょう?」

「いい加減コードネームぐらい考えておけ。ロドスでもまだ申請していないのだろう?」

「ですね。...コードネームですか」

 

 

 杯を月にかざしながらジッと考え込む。

 

 

「『アーカンソー』」

「アーカンソー?」

「ええ、特に意味はありませんが」

「そうか、分かった。ペンギン急便の通達はやっておく、ロドスからはお前から言っておけ」

「了解しました」

 

 

 じゃあな、というとテキサスは自宅へと帰っていった。

 トラヴィス改めアーカンソーはテキサスを見送ると、残っていた安酒を飲み干す。空になった杯を置き、片手で隣にいるレッドを撫でまわす。

 顔を上げるとそこには綺麗な満月が浮かんでおり、フードとガスマスクを外しているアーカンソーの顔を照らし出す。

 男にも女にも見えるアーカンソーの顔には、表情が何も浮かんでいなかった。

 

 

 

 

 .




 評価、感想、お気に入り、ありがとうございます。

 めっっっちゃ書けなかった。本当に書けなかった...辛い。
 今話は主にオリキャラの掘り下げ多め。見切り発車でシリーズ化したのでなーんも考えてなかった。
 こいつ、未だに性別(筆者の中でも)確定してないんだぜ...どうしよう。

追記
 誤字脱字報告、本当にありがとうございます!
 そういえば、トラヴィスもオースティンもアーカンソーも元ネタがあるんですよ。と言っても今後の話に関係はないんですけどね。アメリカの州と属と都市名なだけなんで。
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