あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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第13話

 手も頭も引っ切り無しに動かし続けていれば、早くもユーハングの工廠跡を見に行く日になる。

 ラハマ町長の許可書を頂いたおかげで自警団からトラックを一台借りる事が出来た。

 普段はバイクばかり乗っていたけれど、このサイズであれば私でも運転できそうだ。何事もなく往復できますように。

 動作確認も含めてゆっくりと運転し、待ち合わせ場所まで向かう。

 

「ハルトは車の運転が出来るんだね」

「運転できないと移動が大変な地域に住んでいたしね。それにユーハングは車社会だから大体の人は運転できるよ」

 

 そうはいいつつもマニュアルのトラックは流石に初めてだったりする。軽トラ持ち込みたいなぁ。

 アレンの案内に従い、地面に気を使いながらゆっくりと走行していく。荷台にも人を乗せておりますしね。

 しかし町から外れたら何もない。荒野といっても過言ではない風景だ。風でも吹けば藁を束ねて丸めたような物でも転がってきそうな気配すらするよ。

 それでもまだこの道はマシな方らしい。少し道をずれるとデコボコだらけ。おまけに気を付けないと谷底までストンと落ちそうな渓谷もある。

 そりゃ車なんて使い道はごく僅かだなぁ。地面を整備して橋かけて、空賊に橋落とされて、フリダシに戻る? 何十年かかる事やら。

 

「ユーハングでは飛行機は使われてないの?」

「使われてはいるけど、イジツでいう飛行船の立ち位置が主かなぁ。戦闘機とかそこら辺はこっちと同じだと思う」

「へぇ、あの震電もエンジンがイジツの物では無いみたいだし」

「アレもユーハングで探すのに苦労したみたいだよ。七十年前のシロモノらしいし」

「震電に積まれたエンジン。動作確認を所望する」

 

 荷台からこちらに顔を向けたケイトがそう言葉にする。

 

「アレシマから戻ってきた頃にでもマダムと相談してから動かしてみます?」

「是非、お願いする」

「いいねぇ。僕も乗ってみたいよ」

 

 そう言いながら足をポンポンと軽く叩く。そういやアレンの足ってなんで動かないんだろう。治るのだろうか。それもこれも今日のが終わってから聞いてみるとして。

 

「残念ながらお一人様用です。ケイトが搭乗しているのを地面から一緒に見ましょう」

 

 指でお酒を飲むような仕草をしながらアレンに伝える。

 

「あはは、残念だけど楽しみでもあるなぁ」

「飲み過ぎは体に毒」

「大丈夫だよ、ケイトの操縦を見ながら宴会を開けるのだから良い事しかないさ」

 

 二人して笑って誤魔化す。一応見張っておきますから大丈夫でしょう。多分。

 そうこうしていたらリリコさんから「そろそろじゃない」とのお声を頂く。古めかしい建物と滑走路のような物が目に入る。

 

「昔はここで戦闘機も作られていたみたいだよ」

「それで滑走路まで用意されているんですか」

「滑走路は作り上げた物を輸送する為の物でもある。理由はイジツではほぼ陸路での輸送が困難な為」

 

 なるほどなぁーとケイトの発言に頷いてしまう。そうだ、ここはイジツだもんな。

 アレンの指示で建物前まで車を移動させて停止。リリコさんが後ろから降りて周りを警戒。大丈夫との事なのでケイトの手伝いをしてアレンを車椅子へ。

 ここからはリリコさん先導で建物内に移動。何も起きませんように。

 

「というよりも何も無い」

 

 文字通り、建物内は空っぽという言葉がよく似合う。格納庫のような建物が二つ並んでおり、今いる場所はその建物の横にある事務所のようなスペース。

 木で作られた机や椅子はある事にはあるのだが。昔は何かが置かれていたであろう痕跡だけを残して無い。

 

「イジツ的に木で出来た机や椅子って貴重じゃないの?」

 

「木はまったく無い訳ではない。手間を考えると持ち運ぶだけ無駄と推測」

 

 なるほど。さてどうしたものか。辺りを見渡しても極端に物が少ない。地面には予定表と書かれた黒板のような物。

 特に何かが書かれているわけでもなく。事務所の中を周回プレイ。

 ついでに壁とかも触ったり。アレで見つかればいいんだけども。

 

「人気もなければ物も無いわね」

「さてはて、ハルトはここから何か見つけ出せるのやら」

「期待」

「おや、ケイトが期待するなんて珍しい。今の所は何かが見つかる可能性は極端に低いのに」

「勿論、現状では可能性は無いに等しい。けどハルトは何かを探しているように見える動きをしている。ケイト達が知らないユーハングの隠し場所を知っているかもしれない」

「なるほどねー。お兄ちゃんは嬉しいよ」

「?」

 

 後ろで兄妹が期待ageをしてくれているのは嬉しいのだけど、本当にこれで見つかるのかは結構な博打。

 簡単に言ってしまうとイジツに来る前に曽祖父から教えて貰っていた、日本軍の伝統的隠し場所を試しているだけという。なんだよ伝統とか、などと最初は思ってたけどコレが中々あなどれない。

 図書館等で調べてみると、曽祖父が教えてくれた場所に隠し部屋があったり、倉庫があったりと中々の的中率。

 これってもしかしてマニュアル化されてたんじゃ、と曽祖父に問うも笑顔で返されるのみ。しかもこれ、陸軍編、海軍編、内地編と多種様々。

 ユーハングでは既にバレている隠し方もイジツでは通じるのではないか。というのが曽祖父のご意見。ならば期待に応えましょう。ユーハング式へそくり探しを。

 一人うろうろと探索術をしているがそれらしい形跡はない。見て分からず、触れても分からず、それ以外の方法だと……。

 自分の足を見る。当時の人達に比べれば大きい方だと思うから歩幅で測ると誤差が出そう。となれば他の人。

 

「リリコさん。すみませんが足をみせてください」

「何がしたいの?」

「歩幅で測りたい事があるのですが、私の足では当時の人達に比べて大きすぎまして。リリコさんかケイトの歩幅なら計算できるかなと」

 

 おおよそ、私の掌ぐらいなのでここに足を乗せてくださいとお願いする。

 仕方ないわね。リリコさんが靴から足を差し出す。本日は黒のタイツにホットパンツという動きやすさ重視の服装。素敵なおみ足ありがとうございます。帽子も似合っておりますよ。

 掌におかれたリリコさんの足の大きさは丁度よい。リリコさんにお願いしようと思うがふと思い出す。そういえば護衛で来てもらってた。

 お礼と理由を伝えて今度はケイトに乗せてもらう。ケイトのおみ足も黒タイツに包まれて、ショートパンツ姿の動きやすい服装をしている。

 ベルトとサスペンダーの組み合わせのおかげか身体のラインが分かる。スタイルいいですね。ありがとうございます! 

 足のサイズも大丈夫そう。ケイトにお礼して建物の入り口に立ってもらうようにお願いする。足の先端にかかとをつけて一歩としてだ。東に六歩、北に四歩……。

 

「ここに何かあるって事かな」

 

 机や椅子を移動させながらの歩数合わせ。辿り着いた先は特になにもない。しいて言うならば床か屋根か。

 屋根にあったらもう誰かに見つかっていてもおかしくない。とならば床になる。リリコさんに顔を向けると待っててと言われる。

 どこぞからバールのような何かを持ってきてくれたリリコさん。そのまま床に持ってきた物を差し込んで床を剥そうとしてくれている。やだ逞しいわこの人。

 流石に見ているだけなのは気が引けたので、隙間が見え次第、落ちていた物を差し込んでお手伝い。次第に床が浮いてきて埃と共に剥される。

 

「レバーがある」

「お、まさかの当たりかな」

 

 いつの間にか口元をハンカチで覆っている兄妹が呟く。まさかって何よ。アレン、私の事を信じてなかったのね。もう知らないわ! 

 脳内劇場では女性不在で男女間のもつれが発生するが横に押し潰しておこう。リリコさんがはよ引けと目線で合図をしてくるから。

 それじゃ引きますよ。どこかの世界にいるパイロット達の様に自分の名前を言いたくなるが、我慢してレバーを引く。結構重い。

 ガコンと何かが浮くような音。格納庫のような建物から聞こえたみたいで、みんなそちらに目線を向けている。行ってみますか。

 建物の一角にある地面が少し浮いた状態で静止している。上には何かが置かれていたのか、多数の擦れたような跡。隠した時についたのか、それとも誰かが何かを持って行った後についたのか。

 

「はーい。現状報告会を開きたいです」

「本当に何かを見つけるとは思わなかったよ」

「何も無い所にまだ何かあるなんてね」

「ケイト、驚愕中」

「期待してると言ってくれたのに驚くんかい!」

 

 宝物探しで本当に宝箱を見つけてしまったせいか、私だけテンションがおかしい事になっている。落ち着くために深呼吸しよう。スーッごっほごはっ。埃が肺に。

 リリコさんから、貴方馬鹿なのみたいな視線が送られてくる。はい、馬鹿ですごめんなさい。ケイトが優しく背中を擦ってくれる。馬鹿だけどこれだけで幸せを感じてしまう。

 少しの間を置いてようやく落ち着いた。

 

「それで、誰が行くのかしら」

「リリコさん。お願いします」

「貴方でなくていいの? せっかく見つけたのに」

「埃が舞っている中で深呼吸する人間に一番槍させたら、階段から足を滑らせて死にますよ」

 

 それもそうね。と納得されてしまう。何はともあれリリコさんに偵察してもらう事になった。

 浮いた地面を持ち上げて、壁際に固定する。階段の先に扉らしき物がこちらからでも分かる。

 行ってくるわ。いってらっしゃい、気を付けて。リリコさんが階段を下りて扉まで向かう。そして扉のノブに手をかけて引っ張る。ガンガンという音がこの静かな場所で響く。

 

「開かないわ」

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