あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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第19話

 言うまでもなく、こっ酷く怒られた。

 ユーリア議員が飛行船の搭乗口で仁王立ちをしていたのである。頭によぎる鬼の文字。ああいうのはな、鬼神っていうんだ。

 最初はさり気なく表れて、お疲れ様でーす。と声をかけて素通りをしようとした。だがそれは怒りを増幅させるだけであった。

 襟首を掴まれてユーリア議員の目の前へと引っ張り上げられる。しかも片手で。鬼。私の冒険はここで終わりを告げる。

 夕食までありとあらん限りの説教と罵倒を食らう。ごめんなさい。もう遅刻しません。門限も守ります。ユーリアかわいいよユーリア。解放してぇ、おねがいぃ。

 その後、第二段としてレオナさんにも怒られる。遅刻厳禁! 遅れるならせめて一言連絡を入れる事! コトブキ飛行隊の名を落としめるような行為は隊員として断じて禁止だ!

迫力もあってかその時は何も考えずに、はい! と返事をしたが、私は隊員ではない。両名ともご心配とご迷惑をおかけしました。

 

 

 翌日、イケスカへと出航する飛行船。道中はコトブキ飛行隊が護衛を担当する。イケスカ近郊からはガドールの方々と交代。

 イケスカ動乱においてコトブキ飛行隊という存在は、悪夢の象徴かそれに近いモノであると聞いた。イケスカ連合の本拠地で代表のイサオさんをイジツから消したのだから。

 現在は自分達の立ち位置を決めるべく、内部闘争が活発中。町は二つに分かれ火に包まれている。などというわけがなかった。

 武力で統治をしようとしていたイサオさんの時の反動なのか、議会でエライ人達が今日も元気に口論を交わす。お互いに譲れない事が発生すると、空戦による決闘が始まる。

その裏側で発生する賭け事。震電に積んだエンジンを作り上げた国のような事をしている。

 私はユーリア議員と共にイサオさんの執事である方に会う為、街中を移動中。動乱によって破壊された建物がいくつも見える。だが人並みは絶えない。

イジツ一、大きな町だとイサオさんが言っていたのは過言では無かった。

 コトブキ飛行隊の皆は船内で待機。キリエとチカに文句を言われてしまったが仕方ない。本気で言っている訳ではないと思うが、ラハマに戻ったらお互いの好きな食べ物を作る事を約束する。

カレールーって無いよね? ジョニーさんとリリコさんにまたお願いしよう。

 

 

「ハルト。腹は括ったかしら」

「緊張でお腹が痛くなってきました」

「あっそ、それじゃ行くわよ」

 

 私のご意見を華麗に受け流す。この先に執事さんがいらっしゃる。聞きたい事は……うん。大丈夫。覚えている。

 ユーリア議員が一つの扉に向けてノックをする。帰ってくる返事と共に扉を開ける。白髪と上ひげが整えられ、燕尾服を着ている。この方がイサオさんの執事。動乱の時もイサオさんに従事していた人。

 

「相変わらず、慌ただしい小娘ですな」

「誰が小娘よ!」

「失礼。年増でしたな」

「はぁ!? アンタ目が腐ってるんじゃないの!?」

「そちらの方がハルト様でいらっしゃいますか」

「初めまして、ハルトと申します」

 

 頭を下げて挨拶をする。

 

「これはご丁寧に。私の事は執事、とでもお呼びください。ハルト様」

「様。を外してもらえる事はできないでしょうか?」

「イサオ様のご友人とあらば、そのような失礼な呼び方は土台無理な話でございます」

 

 いつから友人になったのだろう。私達、これから先もズッ友だよね。じゃあコレおねがーいで始まる友人間の上下関係。気が付けばイジツに。

 

「さっさと初めてくれるかしら。こんな所、一秒でも居たくないのよ」

「ならばユーリア議員には先にお帰り頂きましょう。ハルト様は我々が責任を持ってお送りしますゆえ」

「全て聞くまでは帰る気は無いわ、貴方達だけにする訳にはいかないの」

「帰ると申し上げたり、聞くまで帰らないと譲らない。頑固で癇癪持ちの年増は手間がかかる」

 

 ユーリア議員の表情が凍り付く。アレシマで震電の前で演説をした時にも見た事がある。鉄仮面を装着した状態だ。つまりさっさと話せ。

 口に手を当てて喉を鳴らす。失礼。一言断ってから始める。

 

「貴重なお時間を頂いた事です。幾つか質問の前にイサオさんの話を」

「イサオ様はユーハングでも元気にしておられますか」

「既に話は伝わっておりましたか?」

「会談理由として其処にいる小娘を経由して。震電についても」

 

 話が早い。これもユーリア議員の手腕によるものだろう。虚空を見つめて表情を一切変えないユーリア議員に心からの感謝を。

 

「そうでしたか、ではイサオさんから預かってきた言付があります。お受け取りください」

 

 ポケットに仕舞ってあるスマホを取り出す。イジツに来てからは何かしら忙しさを感じる毎日ではあったが、充電は忘れずにおこなっていた。太陽充電が出来てよかった。

 事前に動画の手前まで操作をしていた。後はタップをするだけで表示される。音量を確認して執事の前にスマホを三角立て。再生を始める。

 

『あーこれ、もう始まってる? そっかそっか。やぁ爺や! 僕だよ! イサオ! これを見てるならきっと側にハルト君がいると思うんだ。ハルトくーん。こっちきて! 嫌だって? 一緒に映らないと証明できないでしょ! ほらほら早く! せっかくだから何か言ってみて!』

『えーと、まだ見ぬ執事さんへ。こんにちは。ハルトと申します』

『もうハルト君は相変わらず固いなぁ。執事にさん付けは逆に失礼だから呼び捨てで呼んであげてよ! まっそこもハルト君らしいか』

『恥ずかしいので画面から消えたいのですが』

『終わるまでは隣に居てもらうよ! 僕はいまユーハングの世界にいる。こうして五体満足で元気にしてられるのもハルト君のおかげだよ!』

『いや、それはおかしい』

『おかしくないよ! 本当の事だからね!』

 

 画面の中で喋っているイサオさんは私の知っているイサオさんだ。イジツに来たばかりの事を思い出す。マダムがレオナさんに向けて放った言葉。今も昔も同一人物。

 

『帰る予定はあるけれど、一先ずはここでお世話になる事になったよ。色々と調べたい事もあるしね! その代わりではないけれどハルト君がイジツに向かうから、彼の手伝いをしてあげてくれないかな。おねがーい!』

『そんなに軽い頼み方で大丈夫なんですか?』

『僕と爺やの付き合いは長いからだいじょーぶ!』

『問題は、イジツで出会う最初の人にもよるのですが』

『うーん。まぁもし僕側の人間でこれを見ていたのなら伝えておくよ。ハルト君に傷一つ、つけるなよ』

『……反対側の人達だったら?』

『見せなければいいんじゃないかな』

『あぁそっか……そうですよね』

『あはは。ハルト君はどこか抜けてる所があるよね。まぁそこが面白いんだけどさ!』

『本人からすれば直したい部分なんですけどね』

 

 そのままのハルト君でいて欲しいな! なんていう言葉が出てくる。気恥ずかしさ最大値。こんな会話だったっけ……? 

 

『まっそういう事で僕は元気にしているよ。イジツがどういう状況になっているかは定かじゃないけど、あの世界の事だから闇鍋みたいになっているだろうね。僕以外の人間が成り上がる最大のチャンスかも!?』

『二度と帰ってくるなって思う人もいるでしょうね』

『そんな……酷い……』

『しおらしい仕草をしても何も変わりませんって』

『それもそうだね』

 

 ポンと手を叩くと同時に紙吹雪が舞う。このあと無茶苦茶、曽祖父に怒られていた。

 

『ブユウ商事もどうなっているかなぁ。爺やがいるなら解体にはなっていないだろうけど』

『社員の人達は肩身狭そうですね。外部からの圧力で執事さんも名ばかりの肩書を押し付けられているか、それとも追い出されているか』

『そういう事ができる奴等だったらいいんだけどねぇ……閃いた!』

 

 閃いたらしいので頭に浮かんだであろう電球を吹き矢を吹くような仕草で壊そうとする私。ボケが通じなかった時の気恥ずかしさは異常。

 

『ハルト君!』

『絶対に嫌です』

『まだ何も言ってないじゃないか!』

『流れで何となく読めますよ! これでも日本人ですよ!』

『じゃあ話は早い! 僕が帰る時、一緒にイジツに行こう! そして僕の代わりにブユウ商事を治めてくれないか!』

『いーやーだ!』

『新しく会長が就任するんだ。せっかくだし名前も変えよう! 今がトウワ・ブユウ商事だから……、シン・ブユウ商事! 決定!』

『昨日見た映画に影響されすぎですよ! 結局名前もイサオさんが決めるんですか!』

『ハルト君に任せると日が暮れても決まらないよ! はい決定! 異議なし! 文句なーし!』

 

 抗議の声を挙げながらイサオさんに掴みかかるが、軽くいなされ、猫じゃらしに食らいつく猫の状態な私が映っている。もうやめて……。

 

『そんなわけだから、もうしばらくは頼んだよ! 何か僕に伝えたい事があったらハルト君にお願いしてね! イジツとユーハングを自由に動ける唯一の人間だからさ!』

 

 じゃあね! そういって動画の再生が止まる。最後は私の抗議を片手で受け止めるイサオさん。腕も足も長いなんてずるい。

 ひと時の静寂。イサオさんが現れただけで場の空気が賑やかになる。やかましいだけかもしれないが。

 

「生存確認の言付。という割には中身の濃い話じゃない」

「年増の化粧の厚さに比べれば薄い方かと」

 

 表情は変わらず、されど辺りに巻き散らす最大限の殺気。これが鬼神か、魅力的な奴じゃないか

 

「ま、まぁイサオさんの事ですから、その場で思いついた事を言っただけで深い意味はないかと。特に後半部分は」

「その思い付きから始まる行動力もあり、ブユウ商事は業績拡大いたしましたから。イサオ様がそう仰るのであれば間違いは無いかと」

「いくら業績拡大しても、頭が消えてしまえばこのザマよ」

「なのでハルト様。正式にイサオ様から引き継いだ事を表明されては如何でしょうか」

「私が先日、イサオの存在を完膚なきまで否定した事を台無しにするつもり!?」

「存命なのは確かですからな」

 

 鉄仮面が外れて私の知っているユーリア議員に戻りつつある。

 

「ハルト! 前にも聞いたわよね。私とイサオ。どちらを取るか今決めなさい!」

「ハルト様。このような年増にアゴで使われる人生などつまらない事でしょう。イサオ様の手伝いをしていただければ、お金も美女も苦労せず、イジツで好きなだけ戦闘機野郎になる事ができますぞ」

「いやぁ……お金も女性も飛行機もあんまり興味ないです」

「おや、男色家でございましたか」

「いやいや、普通です。普通ですよ。普通……?」

「ハルトはそんな薄っぺらいモノではなびかないわよ!」

「あのような高圧的な態度を取っているのは信頼の証というわけですか」

「誰が高圧的よ! 私だってハルトからユーハングの情勢を聞かせてもらってるのよ。情報を握っているのはイサオだけじゃないのよ」

「少しだけ情報を分け与えてもらっただけで、私は信用されていると。なんともチョロイ年増でしょうな」

 

 胃が痛い。もうおうちにかえりたい。レオナさんに困り顔で心配されたい。ザラさんにご褒美貰いたい。エンマと植物のお話がしたい。ケイトとアレンの治療を試したい。チカとウーミの話で盛り上がりたい。キリエ……キリエには目的を終えた後に伝えておかないといけない事がある。

 

「で、ハルト。どちらを選ぶのかしら?」

「ユーリア議員です」

 

 っっしぁ! ついには隠す事も無く喜びを表現するユーリア議員。

 

「理由を聞いてもよろしいでしょうか。ハルト様」

「私が知っているイサオさんは、ユーハングに現れたイサオさんだけです。イジツで大暴れしたイサオさんの事は知らない事ばかりです」

「どちらもイサオ様である事には変わりはないはずですが」

「そうです。どちらもイサオさんです。だから私はイジツのイサオさんの事も知りたい」

「今からでも遅くはありません。こちら側に来ていただけるのならイサオ様の全てをお伝えしましょう」

「それでも、ユーリア議員につきます」

「何故?」

「イジツでお世話になった方、勿論、他にも同じぐらいお世話になっている方々がいます。だけど震電から始まる噂を払拭させてくれたのは紛れもなくユーリア議員であります。議員の立場を使い評議会という場を開催させてまで私を助けてくれました。私にとっては恩人です。これにはきちんと私に出来る事で返さなければならない事だと私は思っております」

 

 ユーリア議員の驚く顔が視界に映るが、いまはそっとしておこう。

 執事さんが息を入れる。

 

「そうですか。出会う順番が違えば……というのは無しですな」

「残念ながら。ご協力頂けなくなる事は大変厳しい事ですが、こればかりは譲る事はできません」

 

 ごめんなさい。執事さんだってイサオさんの事が気になるだろう。それでも私は曽祖父との約束を優先させる。まぁ元々地味コツ作業になるは分かっていたんだ。近道が利用できなくても仕方ない。

 

「私がいつ、協力をしないと申し上げましたかな? ハルト様」

「……へっ? あ、いや確かに申し上げてはおりませんが、流れとしては決裂では?」

「それはそこの年増が独占欲丸出しでハルト様を求めていただけでしょう。卑しい女ですね。私はイサオ様の命により、最初から協力は惜しまないつもりですが」

「は、はぁ、へ?」

「ひとまず休憩と致しましょう」

 

 出される紅茶。簡単に摘まめる茶菓子。もしゃもしゃと食べながら現状を思い返す。

 選択しなければならなかった事。これはこの場で聞かれるだろうと思いながら、今までの事を考え付いた先の結果。

イジツに来れたのはイサオさんのおかげ、イジツで自由に動けるようにしてくれたのはユーリア議員。始まりとその後、どちらを取るか。

結果としてはその後を選んだ。これについては後悔はない。それなのにも関わらず協力を申し出てくれた執事さん。協力してくれる理由は本当にイサオさんからの命令だけなのだろうか。

 

「何か聞きたい。という顔しておられますな」

「ご協力していただく理由が浮かばないものでして」

「イサオ様からの命でございます。それ以上はございません」

「その、ユーリア議員を選んだ事で何かあると思っていたので」

 

 あぁ、なるほど。執事さんが納得をしている。

 

「ハルト様は探し物を見つける為にイジツへとやってきた。その過程でそこの小娘に恩を着せられる形になった。自由に動ける身となったハルト様には我々もご協力させていただき、無事に探し物を見つけ、ユーハングへと帰還していただく。それが早ければ早いほど。我々にも利点があるのです。イサオ様に対してのご報告であったりと」

「あぁ、確かに。帰還が早ければイサオさんに伝える事も……ってそうだ。ユーハングに戻ればどうしたってイサオさんが待っているんだった」

「その通りでございます。なのでパパっと済ませて小娘に感じている恩義もさっと返却していただければ、後はシン・ブユウ商事立ち上げを待つのみでございます」

「それはおかしい」

「そ、そんな簡単に返せるほどの恩じゃないわよ!」

「ほう、ではハルト様はいつ小娘から解放されるのでしょうか。聞けばハルト様の行動は全て曽祖父様から託された思いによって始まった事。それを自分の恩返しが終わるまで帰さないとはいささか人としてどうかと思われますが」

「ハイ! 止め止め! 繰り返しになってしまいますよ!」

 

 そう発言した後にユーリア議員の隣に移動する。お手を拝借。暖かい手をしていらっしゃる。

 

「ユーリア議員。きちんと言葉でお伝えすべきでした。私はユーリア議員のおかげでイジツを制限なく動き回れるようになりました。この事については何度感謝の言葉を告げても足りません。ありがとうございます。そしてこの恩は必ず返さなくてはならないと思っております。それが今回、イジツに居られる期間では叶わなくても」

「そ、そうなの……?」

「はい。イサオさんの事で……と言われると、そもそも私一人で何とか出来るような人ではありません。ですが飛行船で語られていた、空賊離脱者支援法。イジツで人々が手を取り合い、イジツを良い方向に向け生き延びようとする活動。私にも手伝わせてください」

 

 視線を私に向けたまま動かないユーリア議員。

 

「とはいえ、私はユーリア議員のように頭は良くないです。一人より二人にもならないでしょう。私自身もまだすべき事がありますが、一段落つけばユーハングの歴史を調べる事は出来ます。その中にはきっとイジツと似た過去の話もあるでしょう。資料の提供ぐらいしか出来ませんが……」

「それで十分よ! 私の考えに賛同して手伝いをしてくれるのがユーハングの、いえハルト君なら心強いわ!」

「そういって貰えると嬉しいです。微力ながら精一杯頑張りたいと思います」

 

 イジツに深入りが決定。何もせずにいれば曽祖父からのげんこつを貰うだけなので結局積みゲー。腹を括ろう。

 

「ハルト様は熟女がお好みでしたか」

 

 ちゃうわい! 好きになった人が好きで今回のはまた別だい! 

 

 

「なるほど。ユーハング跡地、ユーハング人の名簿、それに墓場、ですか」

「はい。期待できそうな順番に質問させていただきました」

「跡地。イジツには無数の工廠が残されておりますが、既に我々も含め大方探し終えたところばかりかと」

「何も無い、といわれた場所からユーハングの置き土産が見つかったのですよ」

 

 執事さんに置き土産の写真を手渡す。ほぅ。と感心するかのような一言。

 

「その場所からは物資と帳簿が残されていました。アレン、友人がいま分析中ですが」

「ユーハング独自の隠し場所があったという事ですな。跡地を知りたがる理由が分かりました」

「跡地を根気よく調査をし続けていけばいずれは。というところです」

「よろしかったのです? 私にそのような情報を伝えても。ハルト様より先に調査を始める事も可能ですよ」

「その時はその時で、私の探し物がそちらで見つかればそれだけで良いので情報提供を求めたいですが……最終的には合流するのでしょう? シン・ブユウ商事とやらに」

 

 ユーリア議員がこちらを見つめる。何故か今も隣に座ったまま。移動しようにも片手を掴まれたまま固定されて身動きが取れない。

 執事さんは驚きの顔。その後に聞こえる笑い声。

 

「イサオ様のご友人になられるだけの人物だけありますな。ハルト様」

「継ぎませんよ? 設立もしませんよ? イサオさんが戻れば自分で勝手に始めるでしょ」

「イサオ様でしたら。本人の承諾無しでハルト様を会長に仕立て上げるでしょう。私めも全力でお手伝いさせていただく事になりますな」

 

 簡単に想像できるのが困る。一つだけ、といって関わり始めると底沼になると分かってはいたはずなのに。

 ぎゅっと握られる手。鉄仮面を被っているユーリア議員。

 

「おや、随分としおらしくなられて」

「……人に頼れるところは頼る事にすると決めただけよ」

「それで手始めにハルト様と。年増なだけに若いツバメを飼えるぐらいの余裕はありそうですな」

 

 手に込められる力が増す。痛いですって! でも挑発にのらないユーリア議員も素敵ですよ! 

 

「め、名簿についてはどうでしょうか。そういった類の物は存在しているのでしょうか」

「残念ながら、ハルト様が見つけた帳簿程度であればいくつかございますが、名前が記載されている物は一つも。徹底しておりますな」

 

 軍隊だからなぁ。書類は焼却が基本なのだろうか。

 

「ですが、墓場。については心当たりがございます」

「本当ですか!?」

「正式に調べた訳ではありません。ただユーハングがイジツに辿り着き、全ての人間が帰路へ着いた。とは考えにくい。現に生きていた人間がイジツに残るという選択をされた人物も知っております」

「サブジー、という方ですか?」

「よくご存じで。その後の結末については?」

「イサオさんから。出来れば詳細に教えていただきたい。どのような状況であったか、撃墜された場所とかを」

「調べに行かれるのですか? 機体と骨以外は何も残っていないかと思われますが」

「それでも、余計なお節介は重々承知で」

 

 イケスカでイサオ様を被弾させた小娘絡みの事ですか。

 

「ハルト様も、随分と深みに嵌まり込んでいますな」

「一つ始めれば後は勝手に積み上げられていくものですよ。それでも私は自分の目的を第一優先させますけどね」

「それでよろしいかと」




荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!
一周年だよ。やったね。めでたいね。次話も置いていくよ。
尚、明日の更新が無かった場合、察していただきますよう、よろしくお願いいたします。
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