全身が痛い。特に足が。震電から脱出を図り、パラシュートが開かれ着地した事までは覚えている。瞼を開いて辺りを見渡す。
この部屋には見覚えがある。アレンのいる病院だ。
やはりあの音は……痛みが走る箇所を確認する為、頭を動かして見ると左足にボルトが刺さっているのが見える。がっちりと固定されているようだが見るからに痛々しい。
でも左足一本で生き延びられたのだから良かったのかな。イサオさんと共に日本へ現れた震電。イジツへと私を導いてくれた震電。そのせいで色々と問題も発生したけれど思い出がたくさんの機体。
足が治ったら残骸の一部でも拾わせてもらおうかな。
考え事をしていたら少しだけ落ち着いてきた。そして、一番大事な事も思い出す。羽衣丸は? 傷一つ、つけたら許さないってママ……マダムが!
首を動かしても確認しようがないのだが、どうしても気になってしまいベットの上で右往左往。
そんな中、こちらに向かう足音と喋り声が聞こえノックの音と共に部屋の扉が開かれる。
「ハールトー、起きたー? 元気してるー?」
「チカ、病院内の騒音は禁止されている」
「騒音って! ちょっと呼び掛けただけじゃん!?」
聞きなれたいつもの二人の声だ。無事にお仕事から帰ってきたんだなと安心する。
「ハルト、何やってんの?」
羽衣丸の事が気になって小刻みに揺れる頭。喉から声が出てこない。これでは先日のレオナさんと同じではないか。
「って起きてるじゃん! みんな呼んでこないと! ケイトはセンセーとかアレンとか呼んで!」
チカは走ってまた来た道を引き返していく。危ないよ。ケイトも一言、待っててと告げて呼び出しに行く。流石に走ってはいないけれど早歩きはしている様子。
先に戻ってきたのはお医者様と看護師さん。意識の確認。現状を優しく教えてくれた。全治三ヶ月。穴が開くまであと二ヶ月って聞いたんだけど!
しばらくは安静にしてリハビリはサボらない事。君が持ち込んでくれた器具を自己実験してくれるなんて嬉しいよ。この医者もマッド系だっ!
説明が終わり、お医者様と看護師さんが部屋から退室すると同時に、部屋へと入ってくるレオナさん以外のコトブキの皆とアレン。
「ハルト! 目が覚めたんだね! よかったぁ……」
「キリエやチカのように落ち着きのない人ですこと。このような姿にまでなって……」
「素直に喜べよ! 仲間だろ! ワタシ達がいない間にラハマを守ってくれたんだぞー!」
「ハルト。二度と無茶はしないで」
「そうね、その姿はいつみても落ち着かないわ」
この騒がしい感じはいつものコトブキだ。うん。楽しさや嬉しさがこみ上げてくる。
「やぁ、お隣さん。これからはご近所暮らしだね」
「いままでと大して変わらなくないですか?」
「そうだね。むしろハルトの足がそうなってしまった事でより身近な関係になれるね」
「それだけは絶対にないです」
「はぁ、フラれちゃった。あの戦場を共に駆け抜けた友人なのに」
「それはそれ、これはこれです。でも感謝していますよ、本当に」
再び扉の音が開く音が聞こえる。レオナさんだ。私の右側に立ち、腰に手を当てている。これはあれですね。
「ハルト!! 何度言えば分かるんだ!! 無理も無茶も無断行動もあれだけ控えろと言っただろ!!」
はい。怒られています。仕方ないのです。戦場で急遽マダムからの追加依頼が発生しまして。
レオナさんの認識では私はコトブキ飛行隊の傘下に置かれているのだ。今思えばイサオさんから頼まれた時からこういう認識になったのではないかと推測してみる。借りは作らない主義の人。
根性頼りは下の下! 戦闘機乗り失格だ! はい。その通りでございます。レオナさんの正論に打ちひしがれつつも、心の隅っこでは嬉しさが湧いてくる。馬鹿な、新しい何かに目覚めつつあるのか。そんな事を考えていると、起こしていた身体をレオナさんが抱きしめてくる。頭に埋まる感触。埋まるんだこれ……。
「ハルト……ラハマを救ってくれて、ありがとう」
「もむみあみあみえ」
「何言ってっかわかんなーい!」
「それでも意思は伝わりますわ」
レオナさん以外の笑う声が聞こえる。最初はね、嬉しかったの。発掘探検隊! とかちょっとは思っていたわけ。
でも気づいたんだ。レオナさんから伝わる弾力と、固定されている頭に。つまり息が出来ない。
背中をポンポン叩いても力が強まるの。レオナさん、悲しみで叩いてるわけじゃないんだ。息が出来ないだけなんだ。誰か助けて。その日、二度目の睡眠に。
一ヶ月と半分の時間が経過した。私の足についていたボルトは未だに入ったまま。松葉杖の移動ぐらいは出来るようになった。
流石にチカの四十三日退院は無理でした。リハビリを頑張らないとお家に帰れないの。
「アレンの為に作っておいた器具を自分で使う事になるとはなぁー」
「本当ですよ。ナツオさんに作成しておいてもらったおかげで捗ります」
「そうかそうか! まっ無理してまた怪我すんなよ! またな!」
「ありがとうございます。ナツオさん」
お見舞いにきてくれたナツオさんにお礼を言う。振り返る事無く手をあげてヒラヒラと動かす仕草は様になっているのだからかっこいい。
「ようこそ! ハルト! 僕は君を待ちかねていたよ!」
「生まれたての小鹿が何か言っている」
一緒にリハビリをするアレン。プルプルと足が震えているが、最初の頃に比べれば立てる時間が長くなった。まだ数秒程度だけど。
しかし、私は本当に帰れるのだろうか。あと二週間以内でこの足で飛行機を操縦し、穴に突入をしなければならない。
どうしたモノかと考えるけれど、イザとなれば赤とんぼなりで穴の近くまで寄ってもらい、無線で帰れませんとでも伝えればいいのか。最悪はそれでいっか。
「そうそう。無理して悪化させるならきちんと治療してから帰った方がいいよ。そうじゃないと僕みたいになっちゃう」
「言葉の重みが凄くてつい耳を傾けたくなりますよ」
よっと、掛け声と共に横に腰掛けるアレン。
「それで、ハルトはこの先どうしたいんだい?」
「んー安定したユーハングとイジツの移動手段かなぁ」
「やっぱりイサオと関係があるのかな?」
「うん」
「ユーハングは分からないけれど。イジツに再びイサオが出現したらまた大騒ぎになりそうだね」
「それも踏まえて一年ぐらいはユーハングで下準備かなと考えているよ。まずはひーじぃ……曽祖父に報告したいから」
「そうだね。その為にイジツへやってきたんだもんね。ハルトは」
少しだけ、しんみりとした空気になる。だけどまだお別れではないよ。
この日、私はある方からご実家へご招待を頂いた。わざわざ病院まで出迎えをしてくれて車椅子に乗せて運んでくれた。
「ハルト、元気にしておりますこと?」
「おかげ様で、エンマはどうですか」
「貴方に比べれば健常でしてよ」
エンマ。女郎花の髪色と長い髪は頭の後ろで結われている。白をベースとした服の上から肩の部分が開いている長めの青いジャケットを着こなしている。
いま、実家にある桜の剪定を行っている。脚立に立ちながらも器用にパチパチと心地よい音を立てていく。
「まさかとは思いましたが、ハルトにソメイヨシノの知識があるとは思いませんでしたわ」
「最初に聞かれた時は思い出すので精一杯でしたよ」
お願いしますわ。そう言われて手渡したのは墨汁。
「剪定した後に墨汁を塗って消毒だなんて思いつきません」
「イジツからユーハングが去って、更に二十年後ぐらいに始めた方法みたいですよ」
「なるほど。それでユーハングにあるソメイヨシノの寿命は延びましたの?」
「知っている覚えている限りだと、百年越えもそれなりにって所です」
「まぁ! それではこの子もまだまだ元気に花を開いてくれるでしょうか」
「それはもちろん。エンマが愛情込めてお世話していますからね」
上を見上げる。立派な桜の木。花が咲き誇るのを見てみたい。イジツの青空、雲一つない……はずなのに見える雲。そうだ、気を付けていたのに。見上げてはいけないのに……見なかった事にしよっと。
エンマが脚立から下りてくる。本日の剪定と消毒が終わった模様。
「ふぅ終わりましたわ」
「ご苦労様です。あとは根が隠れる程度に肥料を与えてあげればなお良しかと」
「分かりましたわ。何かお礼を……と思いましたが必要ありませんわね」
「え? まぁお礼は別に構わないですけど」
手袋を外したエンマがそのまま私の頬に両手を押し付ける。
「先程、何か見たのではありません?」
「桜かな?」
「それより上ですわ」
「んー青空とか」
少しずつ力が込められる。バレてる!
「私のスカートの中。覗いていたのは知っているのですよ!」
「ご、誤解です! たまたまなんです! 凄くよかった。いやちが」
そのまま思いっきり引っ張られる頬。ふぁふぃふぉふぁふぇふぇふぁふぃ。
「素直に白状しなさい! ……貴方、もちもち肌ね」
頬は離してくれたが、今度は顔中を触られまくる。
「よく見るとまつ毛も細く長い、髪もサラサラで肩まで伸びている……貴方ってもしかして……」
トドメといわんばかりに胸元に手を置かれる。そ、そこは敏感なの!
「無い……わね」
「ちゃんとあるわい!」
「あら、あるというのはこういう事でしてよ」
モデルのようなポーズを取るエンマ。美しい。出ている所に引っ込んでいる所、スタイルの良い女性だ。思わず拍手をするが満更でもなさそう。
「はぁ、イサオの事も穿り返して全て暴いて差しあげようと思いましたのに、貴方が一番怪しい人間ではありませんこと」
「そんなに恐ろしい事を考えていらしたのですか。私は普通ですよ。ふつうー」
「はいはい、そういう事にしておきましょうね」
エンマが上品に笑う。その仕草も優雅である。
帰り道をエンマがまた送り届けようとしてくれたら、ケイトがやってきた。お散歩がてらお向かいに来たとの事。申し訳ない。
「ハルト」
帰り際にエンマに呼び止められ、正面を向くようにケイトが移動させてくれる。深呼吸をした後に告げられた言葉。
「ラハマを守っていただいた事に感謝します」
深々と下げられる頭。自分がこの町を守る為に少しでも力になれていたのなら嬉しいな。
車椅子をケイトに押されながら進み町。夕焼けにつつまれて今日も一日が終わりそうだ。病院のご飯を食べてまた明日に向けて寝るしかない。
ふぅーと一息を入れると車椅子が止まる。どしたのかな? 前方にケイトが現れた。
「どうしたの、ケイト?」
「ハルト、オフコウ山の約束」
「約束、お礼は何でもする券の事でいいのかな」
「そう。それを今、使いたい」
「構わないけど、何をすればいいの?」
「アレンをユーハングへ連れて行って欲しい」
アレンを。確かに治療目的としても知識を得る為でもアレンを連れていけば良い事は起きるだろう。けど、無理じゃないかな。
「ケイト、アレンはきっと拒否するよ」
「何故?」
「これは私とケイトの約束なのだから、ケイトの為に使えってアレンなら言うよ。絶対に」
暗い表情に変わるケイト。あーとえーと何か……あぁそうだ!
「ケイト、こちらから一つ提案があるのだけれど」
「何?」
「ケイトの好きな食べ物にハンブルグサンドがあったよね? それを次回、作ってあげるのはどう?」
「大変興味がある」
「ユーハングのハンブルグサンドはオサカナが挟まれているんだ。イジツだと何が挟んであるのだろう?」
「今ならまだケイトが推奨する店は開いている。ハルトには是非食べてもらいたい」
言い出すと同時に押される車椅子。今からですか!
「急な予定変更は遺憾だったんじゃないの?」
「時には自分の気持ちに従う事も大事」
口元を緩めるケイトは私の車椅子を押してお店へと向かう。
マダムからの呼び出し。松葉杖で訓練もかねて一人で向かう。あともう少しかなぁ。通された部屋にはいつものマダムの姿が目に映る。
「ごめんなさいね。呼び出してしまって」
「お気になさらずに。良い訓練ですから」
ソファーに座ると運ばれてくる紅茶。やはりここで飲む紅茶は一味違う。
「まず最初に。羽衣丸及びラハマの防衛。ご苦労様でした」
「依頼ですから。なんてね」
「羽衣丸に傷をつけるな。と申しただけで富嶽を撃墜をしろとは言っていないわ」
「あのタイミングで追加依頼発生ってそうするしかないんじゃないですかね!?」
「それは貴方の勘違いよ」
ぐぬぬぬ。そんな楽し気な表情で言われても。本気で言っているわけではないのが見え見えで、揶揄われているのがはっきり分かる。スッとマダムが立ち上がる。
「ハルト君。貴方に感謝しているわ。人も町も羽衣丸も守っていただき、ありがとう」
お辞儀をされる。慌てて立ち上がりこちらこそ。とお辞儀で返す。うーん、日本人。
マダムの微笑み。守った中にはマダムも含まれているのかな。そうだと嬉しいな。
「ハルト君は次の穴が開く時に帰るのかしら」
「はい。目的は達成し、その事を伝えたい人が待っていますので」
「そうね。貴方には待っている人達がいるものね」
曽祖父とイサオさん。元気にしてるかな。元気じゃない二人なんて想像できないけれど。
「ハルト君。貴方に依頼した報酬がまだ決まっていないわ。追加報酬も含めてどうしたらいいかしら」
「いやぁ……この機会でお金を頂いても直ぐに帰ってしまいますし、病院の治療費ぐらいですかね?」
「それは既に完済済み。何がいいかしら。何もいらない。というのは無しよ」
んぐ。読まれている。だとすれば……うん。出来るか分からないけど伝えてみよう。
『はぁ!? もう帰るですって!? 誰に断りをいれて帰るつもりなのよ!!』
「いえ、ですから帰る予定なのでお別れのご挨拶にとマダムから電話を借りまして」
『何よ!! 私を捨てる気なわけ!?』
なんでそういう言い方になるのですか。ユーリア議員。
「見捨てませんし、再び戻ってきます。約束したじゃないですか」
『そ、そうよね。ハルトが裏切るわけないわよね』
「勿論です。これで一言も伝えずに消えてたらユーリア議員はどう思いますか?」
『絶対に許さない』
鬼神の圧が受話器を通して伝わる。イジツの女性は凄い。
「なのでまた会いましょう。それを伝えたかったのです」
『……分かったわ。連絡ありがとう。ハルト』
「はい」
『行ってらっしゃい。気をつけてね』
「ありがとうございます」
レオナさんが食事会を開きたいと申してくれたが、お断りをさせてもらった。
どうしてもしんみりとした空気になってしまうから。ザラさんもお別れ会みたいになるのは嫌よって援護をしてくれる。
しばらくの後、納得してくれたレオナさん。そうだな。まだ先もあるのだから慌ててする事もないな。そうですよ。また来ますから。その時はお帰り会と富嶽撃墜祝いにもなるから覚悟しておけ。と言われる。分かりました。
何故かおかしくて三人で笑ってしまった。
病院に戻りベットの中へ。もうちょっと。あと少し。私の冒険が終わりに近づいている。
空き時間にお世話になった人達にお礼をしに行かなければ。頭を布団の中にまで入れてもぞもぞと。
今回のイジツ滞在期間でやる事はまだまだあるものだと考えていた時に、窓の方から音が聞こえた。頭を出して確認するとそこにいたのはキリエ。布団から出て窓を開ける。
「こんばんは、キリエ。どうしたの」
「あ、あのね、ハルト。なんていうか……その、ね」
両手の指先が落ちつかない。くるくると回している。
「よかったら寄っていく? 窓からじゃ落ち着かないでしょ?」
「うん!」
手を貸して部屋へと招く。座る場所は二人で隣通しベットの上。
「大丈夫? キリエ? 何か用事があったのかな?」
「用事……うん、用事」
「何かな?」
「変だとか思わないよね? 笑わないよね?」
「既に挙動不審だけど」
「なんでそういう事を言うの! 見て見ぬふりしてよ!」
ポカポカと叩かれてしまい笑う。でもキリエは少し落ち込み気味。お別れが苦手なのか……そうだよなぁ。
「ハルト。これで帰っちゃうんだよね」
「うん。でも戻ってくるよ?」
「そうだよね! でも心がサブジーが消えちゃった時のように落ち着かないの。あの時とは違うって分かっているのに」
こういう時は一つしかないわけで。私が先にベットへと潜り込み、キリエにポンポンと隣に来るように知らせる。
「こういう時は誰かと一緒に寝るのが一番だよ。キリエが私を選んでくれたのが凄く嬉しい。だから今日はぎゅーってして寝よ」
お互いに意識を向けあいながらは初めての事。それでもキリエは素早く私の右側へ潜り込んでくる。
短い黒髪の女性。キリエ。布団に潜り込み、右腕をあの時以上に抱きしめている。優しく頭を撫でると嬉しそうに笑ってくれる。
右腕はキリエの両手によって指一つ動かせなくなり。今回は右脚までもがキリエの両脚に挟まれて動かせなくなる。
視界に入る絹のように柔らかく白い脚。日頃から戦闘機を操縦しているのだから鍛えられて固いのだろうという予想を裏切る。
私の右脚は今やキリエの両脚によって確認する事ができない。服の裾から見える可愛いフリル、離さないとばかりに可愛く交差するキリエの指先。
このままではやられっぱなしになってしまう。一つぐらい反撃してもいいよね。
自分の頭を少し上に動かし、キリエのおでこに触れて温もりを残してあげる。あの時の仕返しだ。おやすみと伝えて目を閉じる。右腕から伝わる。キリエの確かな鼓動と熱が徐々に上昇していくのを感じ取れた。
ユーハングへ帰還当日。イジツの天気は快晴。目の前にはいまも開きそうな穴。
イジツへ来た時とは色々と変わった。首元には青いマフラー、伸びてしまった髪は、レオナさんから頂いた髪飾りでポニーテール。操縦している機体はナツオさんの隼一型。ちゃんと返しに来いよ! 約束をしたので返しにこなくては。
周りには初めてイジツで出会ったあの時と同じ人達がいる。顔を向けると手を振り返してくれる。嬉しくてこちらもつい振る。
『さぁ、そろそろ穴が開くよ』
アレンの言葉に連動するかのように穴に変化が始まり、イジツの世界に来た時の状態で止まる。無線を通じて連絡をする。
「あーあーこちらハルトです。ひーじぃー聞こえますかー?」
『ハルトか!! よく、よく無事で……っ!』
「よかった。これを通れば無事に帰れそうだ」
『ハルト君! おっかえりー! イジツはどうだったー?』
「貴方のアレやソレで死ぬところでしたよ」
『あははは! ごめーんね! そこには隊長さんもいるのかな』
『あぁいるぞ、イサオ』
『ハルト君はどうだった? 何か手伝ってあげてくれた?』
『あぁ。逆に借りを作ってしまったぐらいにな』
『ほっほーう……それで、僕に作った貸しはどうなったのかな?』
『もう終わりだ。今度、敵対した時は迷わず撃つ』
『ひえええ、隊長さんこわーい。でもまっいっか。僕を落とせるものなら落としてみなよ』
『次は必ず。な』
イサオさんとレオナさんの会話が終わったようだ。お別れをしなければ。
『ハルトーっ今度くる時はもっとカレー食べさせてねー!』
『私はハンブルグサンド。絶対に』
『もう! 二人とも食い意地を張りすぎですわ』
『それじゃ私はお酒がいいわー』
『僕もそれに一票。ユーハングの味をもっと知りたいな』
『はぁ……お前たちは。ハルト、気を付けて。またな』
「はい。皆さんもお元気で。また会いましょう!」
『ハルト!! 絶対に!! 絶対に帰ってきてね!!』
「帰ってくるよ、キリエ! 絶対に。またね!」
穴に突入する為に機体を旋回させる。この大地ともしばらくはお別れだ。直線に入り、翼を軽く振る。そして私は再び穴へと突入したのであった。
次回、最終話です。