あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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ゲキテツ一家 その6

 

「ふぃー。ようやくシマに帰ってきたな!」

「お勤め、ご苦労様でした」

「なに、これも親分の仕事さ。なーっはっは!」

 

 本日、全ての日程を終えて、私たちは再び自分たちの屋敷へと帰ってきたのである。

 

「お帰りんす。ご苦労様でやんすよー」

「おう! なんか変わった事はあったか?」

「何もなかったでやんすよ。静かですごしやすい日でした」

「それはわたしの声がデカいと言いたいのかぁ……」

「そうでやんす」

「副長! お前というやつはーっ!!」

 

 副長もめげない。用意してもらった少し遅い夕食を頂く。タネガシに来てから嬉しい事といえば、ご飯とみそ汁が飲める事。ケチャップ丼も捨て難い味ではあったが、そこは日本人。贅沢をいえば卵かけも食べたいところではあるが……。流石に衛生面が気になって無理だ。

 早々に食べ終わった親分は、両手を畳につけて満足げ。報告をするのなら今時分だろうか、お暇させていただくという事を。厳密にいえば休暇をください、三ヶ月ぐらい。許可されるとは思えない。でも伝えてみなければ結果は分からない。

 

 ここに連れてこられてから色々な事があった。最初にマフィアだと聞いて、イジツにもいるんだ……そんな人達……。という感想から始まり、みかじめ料の徴収に付きあわされた日は、反社会組織に属している事を実感した。曽祖父に知られたらゲンコツで済まされるわけがない。

 ただ、自分の目で直接見たモノがいくつもある。タネガシは今もマフィア同士の小競り合いが多く、自警団は意味を成していないという事。各シマの住民たちが自分たちの身を守るには、マフィアに頼るという選択肢しかないという事。

 そして、イジツには孤児が多い。多すぎると言っても問題はない程に。これはイサオさんから聞いており、ある程度は想像していたがそれ以上であった。

 ラハマには孤児院があった。そこも子供たちでいっぱいであったが、守ろうとする大人たちもいた。

 ではタネガシは? 自分たちの身を守るだけで限界な状況下。いくらゲキテツ一家がタネガシでも指折りの規模とはいえ、救える数は知れている。元を減らさなければいくら救い上げても終わりが見えないのが現状だ。

 

 限られた資源。衰退の一途を辿るイジツの世界。

 イサオさん。貴方が成そうとしていた事、少しだけ分かる気がしてきました。穴の独占というのは事実か、方便かは分かりませんが、この状況は誰かが止めなければならない。生き残るには。

 その中で限られた選択肢、最短の道にして最悪の選択肢。イサオさんが選んだ道は血を流す方だったのですね。

 穴というパンドラの箱。イジツの世界が、町が、自分たちが生き残る為には、その箱さえ開けなければならない状況下。

 イサオさんから出された課題は大変に重く、深刻である事が、タネガシに来て気づいた事であった。

 

 と、深く考えてはみたが、あの人の場合はこの状況も楽しんでいたのだろうな。ユーハングのおもちゃを使い放題の立場だし。自身も戦闘機に搭乗して敵機撃墜をするのが好きだった様子だし。

 しいて言うのであれば、強すぎたのだ、イサオさんは。

 そんな人に当時の最新鋭機を乗せてみたらどうなるか。普通に考えてみればイサオさんが落とされる確率は低いハズなのだが、イケスカに発生した穴、イサオさんが少しおっちょこちょいな性格であったせいで、知っている限りで二度、被弾している。そして最後はイサオさん自身はイジツから存在を消されてしまったが、イサオさんから生み出されたモノたちは未だに健在。

 それらは歯止めが効かなくなり、跋扈往来をしているみたいだ。うん、大体はイサオさんが悪いや。

 

「ハルト、ハールトー。考え事かー?」

 

 物思いにふけていたら、親分に呼ばれている事に気づき、顔を上げる。

 

「大丈夫かー? 疲れてるんじゃないのか?」

 

 思えば親分に連れられて来る前に言われた事がある。『ゲキテツ一家が勢力を拡大させる為にもハルトのような人材は必要だろう!』後半部分は添削しておこう。私情だから。

 ゲキテツ一家が行っている勢力の拡大方法は、対話と同盟。血を流す方法で無かったのは救いである。

 私が出来る事、出来た事。今のところは言われた事をこなし、今日の出来事のように、呼び出されれば赴き、意見を述べる。それぐらいである。思い返せばユーリア議員にしていた事と似ている。

 まっ、私一人で何か変化を起こせるわけがないしね。

 

「すみません。考え事をしていました」

「どうしたんだ、いきなり?」

「このシマに来てからの事と、親分にお伝えする事があるのを思い出しまして」

「なんだ? 言ってみろ」

「休暇をください。三ヶ月ぐらい」

「はぁ!? 三ヶ月も休みが欲しいだって!? 一体そんな長い期間、何をしてくるんだよ!!」

「一度、実家に戻って色々と清算してこなければいけない時期に差し掛かりまして」

「実家? ハルトの実家はどこにあるんだ?」

「うーん……。活動拠点としてはラハマを利用していたとぐらいしか」

「……わたしにも言えない事なのか?」

 

 少し躊躇する。ゲキテツ一家としてやらなければならない事が多い大切な時期に、心配事を増やすような思いはさせたくはない。何よりユーハングから来た事を知る人間は少ないほうがいいのは決まっている。

 だが、どうやらこの態度は親分の機嫌を損ねてしまう行動であったようだ。

 

「ハルト!! 言えない事なのかと聞いているんだ!!」

「すみません。事情が事情なので詳しい事は」

「わたしとハルトの仲でもダメなのか!?」

「ごめんなさい」

 

 駄目なものはダメなのである。頭を下げて飛んでくるであろう罵倒に耐えるべく、準備を整えるが、一向に飛んでこない。

 おそるおそる顔を上げて、親分の顔を見つめてみると、瞳には涙のようなモノが見えた。

 

「お、親分……?」

「……」

「すみません」

「ッ!! ハルトの馬鹿!! アホ!! おたんこなす!! あとチビ!!!」

 

 屋敷から飛び出すように駆け出す親分。その俊敏な動きは瞬く間に姿を消していく。

 

「また自分より小さい人にチビって言われた……」

「そういう事を言っている場合ですかね」

「そうですよね。追いかけないと」

「ハルト君。なんで親分が激怒したか分かっているんすか?」

「……ゲキテツ一家は、組のみんなは家族だからでしょうか」

「そうでやんす。だから親分は悩み事も心配事も隠されたくなかったのだと思うんすよ。特にハルト君には」

「気に入られている事は自覚しているつもりでしたが」

「その中でも親分にとってハルト君は特別でやんすから。さぁ、迎えに行ってくるでやんすよ」

「ありがとうございます。副長」

「あっしは先に寝てますから後は頼んます」

「この場面で寝ますかね!? 待っててくれないの!?」

「連れて帰ってこれるのが分かり切ってやんすから。それじゃおやすみでんすー」

 

 なんて副長だ! あのげっ歯、いつか磨き上げてやる!! 

 

 

 親分を探して屋敷を飛び出し、街の中心地までやってきてしまった。

 一月も一緒にいたのに、親分の行きそうな場所が思いつかない。我ながら情けなさすぎて自己嫌悪に陥りそうだ。

 周りを見渡しても、親分らしい人影は見当たらず、光が灯っているのは酒場ぐらいだ。

 

「おや、フィオちゃんのところの子じゃないか」

 

 その言葉に振り返ると、一人の老婆が立っていた。

 

「すみません! 親分を見かけませんでしたか!?」

「何かあったのかい?」

「心配をかけまいとした好意が仇となり、泣かせてしまいまして……」

「ほほぅ、フィオちゃんを泣かせたのかい」

「大変申し訳」

 

 言葉を紡ごうとした瞬間、腹に何かが当てられる。次に聞こえたのはゲキテツが引き起こされた音。

 

「謝る相手が違うだろう?」

「……そうですね」

「何故、フィオちゃんを泣かせたのだい?」

「親分にも伝えられない事を教えるわけにはいきません」

「腹に当てられているモノが何か、分からないわけではないでしょう?」

「それでもです。たとえ引き金を引かれても答えるわけにはいきません」

 

 脅されても、それが原因で傷を負うとしても、親分にでさえ教えられない事を他人に伝えるような事はできない。せめてもの抵抗。償い……は格好良すぎるから駄目だ。

 

「一つだけ、聞かせなさい」

「答えられる事なら」

「またフィオちゃんを泣かせるような事があれば、どうするんだい?」

 

 親分を泣かせてしまう事。きっとこの先もあるだろう。穴から帰ってきたら直ぐにでも戻らないとまた怒られてしまいそうだ。

 穴から戻る、かぁ。曾祖叔父がまだ見つかっていないから、可能性は大いにある。イサオさんとの約束事も。

 その際になったらここに帰ってくると、考えが出るのだから不思議だ。もうここは私の帰る場所なんだなって。

 

「多分、また泣かせてしまう事でしょう」

「言い切るわね。引き金を引かれたいのかい?」

「出来れば勘弁していただきたいですが、この先を考えると泣かせないという状況が思いつきません」

「……では、どうするんだい?」

「悲しみで泣かせてしまう事があるのならば、喜びで泣かせる事もあるでしょう。頑張って喜びで埋め尽くしてみますよ」

 

 それぐらいしか思いつかない。どう足掻いても生きている以上、感情がある以上は泣かせてしまう事が起こるだろう。

 それならせめて、楽しくて、嬉しくて、どうしようもない事で泣かせてみせる。

 

 腹部に押し付けられていたモノが離れて行くのを感じた。

 

「フィオちゃんなら、一人になりたい時はこの先にある高台にいるわよ」

「やっぱり高いところが好きなんですね、うちの親分は」

「早く行っておやり、きっと待っているから」

「ありがとうございます」

 

 老婆にお礼をして、再び足を動かし、親分の元へと走り始めた。老婆ですら銃を所持しているだなんて、イジツコワイ。

 

 

 足を畳み、身体を曲げた姿の親分を見つけた。小柄な女性がその体勢になると余計に小さく見える。

 

「親分」

「ッ! ハルト! どうしてここが!」

「そこら中を駆け巡りましてね、親分みーっけ」

 

 息切れをしている身体を動かし、親分の隣に腰掛ける。こちらを向いていた親分の顔は、再びかくれんぼを始めてしまった。

 

「ごめんなさい、親分。あのような言い方になってしまい」

 

 返答はない。怒る……というよりも今は悲しんでいると表現した方が近い。

 しばらくの間、沈黙が続いたが、親分が口を開く。

 

「なぁ、ハルト。わたしはそんなに頼りないか?」

「滅相も。親分ほど頼りがいのある方は早々いませんよ」

「なら何故、ハルトの事は手助けできないんだ? わたしじゃ力になれないのか?」

「そんなことはありません。ただ、ゲキテツ一家という看板を背負っている以上はダメな事もあるのです」

「わたしはハルトに助けて貰ってばかりだ。アレシマからわたしが無理矢理連れてきた後も、ハルトは着実に仕事をこなしているというのに、恩返しも出来てやしない」

「こうして好き放題、行動させてもらえているだけで十分なのですが」

「それではわたしの気が済まない! ゲキテツを背負っているからこそ、駄目な事って一体何だよ!!」

 

 親分の八つ当たりに似た質問。伝えるべきか、信頼に答えるべきか、私が穴の先から来た事を。

 

「……ハルトの実家の事が関係しているのか?」

「いえ、私の実家は普通の家なので、しいて言えばマフィアは苦手かもしれませんが」

「他の場所ではわたしたちのような存在は煙たいだろうな……」

 

 少しだけ、自暴自棄のような言い方をする親分。心がお疲れのようだ。そうさせてしまったの私か。

 親分にもう少しだけ近寄る。逃げる事もなくそのまま座っている親分とは、手を置く隙間もないくらいに近くなる。

 そのまま、自分の頭と親分の頭をくっつける。少し驚くような動作はあったが、そのまま受け入れられる。

 

「見送ってくれませんか、フィオ」

「……卑怯だぞ、ハルト」

「分かっています。でも、一度は帰らなければ。伝えてこなければ私も怒られてしまうのです」

「ハルトを怒るような人がいるのか?」

「そこら中に。しばらくはその対応と、ここに戻ってくる為の対策もしないと」

「戻ってくるのか!?」

「休暇だとお伝えしましたやん」

「それは口実で、逃げ出すのかと思っていた」

「意外とフィオからの信頼値が低い事にショックで寝込みそうです」

 

 がっくりと頭を下すと、フィオは慌ててフォローしようと手探り弄り。それがおかしくてつい笑ってしまう。

 

「はぁ……。こんなに慌てふためいて、わたしがバカみたいじゃないか」

「そんな事はありませんよ。私の事を想っての言葉だったのでしょう? 嬉しかったです」

「なっ!? そういう事を本人を目の前にして言うか!?」

「本人に伝わらなければ意味がありませんから」

 

 そっと、フィオの頭に手を置いて優しく撫でる。アレシマで見かけた時と変わらない、赤みがかかった洗柿色の髪。サラサラとしていて撫でていても気持ちがいい。

 手は払われる事もなく、そのまま撫でられるフィオ。再び再開する頭と頭。少し頭を抱きかかえるような体勢になるが、そのまま手を止めずに。

 

「ありがとう。フィオ」

 

 ちゃんと戻ってきますから。少しの間のお別れですから。帰ってきたらまた一緒に頑張りましょうね。

 

 

「どうしてこうなった」

「ふふーん。フィオ様の記憶力を侮ったな! ハルト!」

 

 現在の場所はフィオの寝室。寝間着に着替えたフィオが布団に潜り、その隣に雑魚寝の状態の私。流石に上着のボタンは外してはいるが。

 

「ニコのシマで言ってただろう? 後で何でも言う事を聞くって」

「ここで使いますかね、普通」

「どうせわたしも連れてけと言っても無駄だろ? なら面白そうな事に使った方が得策だ!」

「親分の中では添い寝は面白い事と」

「フィオだ!! 今日ぐらいは名前で呼べ!!」

「うえーい、フィオ」

「何がうえーい、だ! 優しく労わり感謝を込めてもう一度!!」

「フィオ様」

「……何か違う」

 

 何時ものワガママさんなフィオに戻って一安心。やっぱり喚き散らしているフィオが一番魅力的だと思うのだ。

 

「そもそも、なんでそんなに離れているんだ? 布団に入れ、風邪ひくぞ?」

「その距離感は我々にはまだ早い」

「おかしな事をいうな! 早くこい!」

 

 ネクタイを引っ張られ、勢いよくフィオの元へ。勢いの余り頭はフィオの鎖骨部分へと。視線の先にはタネガ島名物の豊かな実りを垣間見る事ができた。今日の気分はスパシィーバ。ダンケを使ってはいけない案件だ。

 先程のお返しといわんばかりに、頭を抱きかかえられる。逃げようと試みるが足を器用に使われ、抱き枕にされてしまった。

 

「ほら! 逃げるな! 今日はこのまま寝るぞ!」

「ほんはははは」

「何を言っているのか分からん!!」

 

 フィオが素敵なモノを押し付けているせいで何も喋れない。もう諦めようか。時には必要だよね。うん。

 

「ふが」

「大人しくなったな。それじゃ寝るぞ。おやすみ! ハルト!」

「ふぉふぁふふぃふぁふぁふぃ」

「ははっ。おかしなヤツだな。ハルトは」

 

 最後はおかしな人認定をされてしまった。フィオから伝わる熱と香りは、私を眠りにつかせるのに十分な効果があったようだ。

 

 

 夜中。不意に目が覚める。暖かな物を感じるのは、腕の中にいるハルトだ。規則正しい呼吸を続けて寝ている。

 

 わたしも伝えられない事がある。それを伝えられた時は胸の奥からこみ上げてくるモノがあった。それはとても複雑で、絡み合い、何物であるのかさえ理解できなかった。

 ただ、悲しかった。わたしもハルトの手助けがしたかったのに。させてもらえない。

 そのまま屋敷を飛び出し、一人になりたい時の秘密の場所へと足が向いていた。

 いつもなら、ここからの景色を見ていてば明日も頑張れると信じられた。今日はその自信が浮かんでこない。

 悲しくて、悔しくて、自分の不甲斐なさで思考がゴチャゴチャになる。辛くて気が付けば額を足に押し付けて座り込んでいた。

 

 しばらくして、わたしを呼ぶ声が聞こえた。ハルトだ。息を切らし汗をかいている。わたしを探す為に。

 その姿をみて、また自己嫌悪に陥る。何も出来ない自分に。

 

 その後の出来事は言うまでもない。また、わたしはハルトに助けられてしまった。なのに心は穏やかさを取り戻している。頼りっ放しなのに、甘えっぱなしなのに。

 帰り道でみたハルトの背中。背が小さいと気にしている割に、とても大きく見えた。首領であるオヤジと、ローラとも似てはいるが、また別の安心感がある。握られた手は離さまいと少し強めに。それさえも心地よい。そして思い出す、良い事を。

 

 風呂を浴び、着替えを済ませてハルトを呼ぶ。今日は一人で寝れるような気分ではない。こんな時に限って誰かさんのせいでマロちゃんは貸し出し中。ならば相手は一人しかいない。

 無理矢理、何でも言う事を聞く権利を行使する。呆れながらも傍にいてくれるハルト。再び甘えてしまった。

 どうしても抑えきれない表情。でも恥ずかしくて見られたくない。なので思いっきり引き寄せて、抱き枕にした。こうすれば私の顔を見られずに済むからな! 

 

 今もわたしの腕の中で穏やかな表情を浮かべながら眠りについているハルト。頭をそっと撫でてやる。少し長めで、細くやわらかい髪。

 

「ハルト、寝てるよな? 起きていないよな?」

 

 声をかけて問いかけるが、反応はない。寝てる。なら、もうちょっとだけ甘えてもいいよな? 

 自分の身体を布団に潜らせるように下げていく。目の前にはハルトの胸板。顔を近づけると、少し汗の匂いがした。

 わたしを探す為に必死に走り回ってくれた証拠。嗅覚が鋭くなるのを感じ、幸せが身体を巡るいい匂い。

 もう一度だけ、もう一度だけ。何度も自分に自制を示すが、身体は言う事を聞かない。本能の赴くまま。気が付けば顔を擦りつけるように埋めて、幾度となく呼吸を繰り返していた。

 何も考えられなくなる。頭はぼやけて、余りの心地のよさに目が閉じていくのが分かる。

 

 その時、目に映る物があった。イサカの懐中時計だ。無性に腹が立つのが自分でも分かる。ハルトの胸ポケットから取り出し、頭の上へと追いやる。レミのアクセサリーもだ! 

 そういえば、シアラのやつからも何か受け取っていたな。そんなモノもポイだ! ポイ! 横ポケットに手を突っ込んで探り、手に感触を覚える。

 それを掴み、放り投げようとした瞬間。普段身に着けている、見慣れた薄い布が見えた。これは! まさか!! シアラのやつは何を考えているんだ!!! 

 穏やかで幸せに包まれていた心は、再び荒れに荒れる。ゴミ箱がある場所にソレを無造作に放り投げる。

 シアラのせいで、眠気が吹き飛ぶ程の感情に揺さぶられる。これではまた、心を落ちつかせなければ眠りにつけなくなってしまったではないか! 

 体のいい言い訳が見つかり、意気揚々と再びハルトの胸板に顔を押し付ける。これは仕方のない事。仕方ないんだ。

 

 邪魔な物が無くなったおかげで先程以上に頭が流暢に動かせる。

 緩み切った顔は誰にも見せられない。

 




ホラ話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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