あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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怪盗団アカツキ その17

「なるほど。七十年前にイジツからユーハングが消え去ったとされる時に、あちらには戻らずにこちらに残った可能性があるのか」

「はい。ですがユーハングではイジツの世界について詳細は残されておらず、曽祖父が何十年もかけて情報をかき集め、ようやく穴を見つけられた程に情報が少なかったのです」

「曽祖父殿が残りの人生を賭けて見つけだした穴。それが突如、異変を来たし、そこからイサオ様が飛び出してきた。ここまでは合っているか?」

「はい。大まかな流れですが合っています」

「それでだ、小僧の家族はこのイジツで生きていると思っているのか?」

「無理でしょう。イサオさんの情報収集能力を駆使しても該当する人物は居なかったようです。もし今も生きていた場合は百歳を超えておりますから」

「百歳か……イジツでは無理だろうな」

 

 日本に居た頃だって三桁の大台に乗っても達者に動ける人はそうそうない。

 

「それで、墓場探しに切り替えたのか」

「はい。おかげ様で眠っている場所については幾つか絞り込む事が出来たのですが」

「儂らの登場で計画がおじゃんか」

「はい。全くもってその通りです」

 

 口を開けて笑い出すじーさま。

 この一件がなければ、きっと夜明けの鷹の子孫から情報を得て、何か進展したかもしれない。

 その後で怪盗団アカツキがオタカラを手に入れた後に、きっと私のお墓探しが再開されていたのだろうな。

 

「それに関しては謝罪する」

「お気になさらず。あの人達と共に行動していれば、もう一月ほど先の話になっていたでしょうし」

「小僧、お主はよく変わり者だと言われんか?」

「勝手気ままに動きすぎて首輪を付けておきたいと言われた事ならありますよ」

「誰が言うたかしらんが、儂もそう思うわい」

 

 やはりそう思われてしまうのか。

 自分ではそこまでの事はしていないつもりなのだが、あくまで日本ではという前提で。イジツでは異分子扱いなのだろう。

 未だ縛られたままの両手足。落ち込んだ事を相手に伝えるように身体を床に倒す。ひんやりとしたタイルが気持ちいい。

 

「小僧がイジツへとやってきた理由は分かった。ここから先はイサオ様の事について聞かせてもらうぞ」

「それはかまいませんが、私の言う事を信用しますかね?」

「難しいな、だが聞いて判断をするのはこちら側だ。知っている事は全て喋ってもらおう」

「そうなるとイサオさんがユーハングに辿り着いてからの話になりますけど」

「それでいい。今のところ会話を邪魔する奴もおらん。喋ってみ」

 

 曽祖父に呼び出された家の玄関先にイサオさんが居た事。

 イジツの世界で好き放題暴れていた話を聞いてドン引きした事。

 空に上がるロケットを二人で見て興奮した事。

 自分でも驚くぐらいに、いつのまにかイサオさんとの思い出がたくさん出来上がっていた。

 

「一つ、疑わしい事がある」

「なんでしょうか?」

「イサオ様は相変わらずお変わりないようで想像は実に容易いが、今聞いた話だと我々が受けた任務の説明と食い違いが発生する」

「はぁ……って任務?」

「何かがおかしい。小僧はイケスカで執事から今回の事について何も聞かされてはいないのか?」

「何か、という意味では一つだけ決まった事があります。イサオさんと執事さんの策略で私が次期ブユウ商事の会長に任命されそうな事ですが」

「なんだと!? それは一体どういう事だ!!」

「問い詰められても答えようがありません。イサオさんからの伝言を伝えたら執事さんから了承の返事が返ってきている状態で止まっているだけですし!」

「我々はイサオ様亡き現状を打開する為、自由博愛連合を再び復活させる為の第一弾としてラハマへの攻撃を決めたと聞かされていた」

「質問。そもそも執事さんから直接聞いた話なのですか?」

「……いや、イサオ様の執事から直接聞いたのではなく、イサオ様直轄の部下であった者から聞かされただけだ」

「なんだか随分と雲行きが怪しい話になってきましたが……」

「これはマズイ事になったかもしれんな……」

 

 その時、サイレンがけたたましく鳴り響く。

 スピーカーから敵襲の声。

 それと同時に団長と呼ばれる人が部屋に入ってきた。

 

「翁。残念ながら相手が一枚上手のようだ。空に上がり露払いをしてくれ」

「団長、その前に伝えておきたい事がある」

「どうした?」

「我々の任務は何者かによって仕組まれた可能性が出て来た」

「……その小僧に誑かされましたかな?」

「残念ながら儂は正気だ。小僧側の視点から見た話しと、我々からの視点で見た今回の任務には余りにも食い違う点が多い」

「……例えば?」

「この任務はイサオ様の執事が指示した作戦ではなく、直轄の部下による者の偽りの作戦である可能性が浮上してきた」

「だが、あの方からの指示では執事からの極秘任務だと」

「我らは自分たちの考えに固執し続けた。イサオ様亡き今、意志を引き継ぎ自由博愛連合を再び復活させ、イジツを手中に収めるという使命を。それ故に今回の任務は我々に都合が良すぎる」

 

 団長と呼ばれている人の目が細くなり、思考に耽っている様子が分かる。

 じーさまも団長からの答えを待つように立ち尽くす。

 出撃命令が発せられているにも関わらず、両人共に動きはない。

 今なら話をすれば通じるだろうか。

 イサオさんと執事さんのあの映像を見せつける事で、これから始まる戦闘を中止させる事が出来るのであろうか。

 

「すみません。一つよろしいでしょうか?」

「なんじゃい小僧。今は話を聞いている場合では……」

「イサオさんから預かってきた言付を聞いてみませんか?」

「……それが貴様の手によって都合よく改変されていない証拠は?」

「確かイジツでも映画がありましたよね? 銀幕役者と呼ばれる人達もいるとか」

「観に行ける場所が限られておるせいで衰退の一途を辿っておるがの」

「映画のような映像をユーハングの技術で今ここでお見せできる事が出来るとしましたら、どうします?」

 

 静寂が訪れる。

 相手がこちらの話に乗ってくれるのであれば、この戦いをまだ止められる可能性があるのだが。

 意外にも口を開いたのは団長と呼ばれる方からだった。

 

「師よ、貴方の教えに背く事をお許しください」

「気にするな。再三、教え込んできた儂が好奇心に負けて始まった事だ。師弟揃って救いようのない馬鹿じゃい」

「貴様、その映像とやらを見せてもらうぞ」

「では、両手の縄を解いてください」

「妙な行動を起こすなよ、貴様の命はこちらが握っているのだから」

 

 その時、走りながらこちらに向かってくる足音が聞こえる。

 勢いよく開けられた扉の先に現れたのは副長と呼ばれている方。

 

「翁! 出撃命令が出ているのにまだ話し合いをしているのですか! 敵の偵察部隊がやって来ているのですよ! 今の内に空へ上がらなければ一方的な戦いに、それどころか争う前に計画が終わってしまいます!」

「団長、副長の言い分も、もっともだがどうする?」

「……翁は出撃を、こちらの件については私が」

「了解した。何れにせよ、オウニ商会とコトブキはケリを付けなければならん相手だしな。その前哨戦か」

「団長! 私に震電への搭乗許可を!」

「慣れない機体で出撃するつもりか? 死ぬぞ?」

「他の隊員たちの士気を向上させる為にも必要です! 許可を!」

「……許可する」

「ありがとうございます!」

「あの、すみません。もう一つ」

「なんじゃい。小僧の要求がどんどん増えていくの」

「震電から脱出する際は、必ず後部のプロペラを自爆させてから飛び降りてください。そうしないとプロペラに絡まれて死んでしまいますから」

「っ! そのような状況にはならん!」

 

 踵を返すように部屋から出て行く副長。

 足音からも激怒しているのが伝わる。

 でも伝えておかないと本当に死んでしまう訳でありまして。

 そんな様子を見て何かおかしかったのか、じーさまは大口開けて笑いよる。

 

「敵を心配する阿呆がここにおるわい! これ以上面白い事は早々あるまいよ!」

「私が攫われた場にいた仲間たちと、コトブキ飛行隊を信じていますから」

「では、その希望は儂が打ち砕いてこよう! その後、再び小僧の話を聞かせてもらうとするわい!」

 

 実に楽し気に部屋から出て行くじーさま。

 結局は戦う事になるのね。早期の作戦実行を恐れた余り自分語りが長すぎたか。

 人生思うようにはいかないなぁ……。

 取り残されるように部屋には私と団長だけ。

 変化といえばこちらに向けられていたハズの銃口が仕舞われている事。

 

「私一人では貴様の両手を解放する事は困難になった。だが、こちらとしても確認すべき事が発生した。映像を観る事が出来るというユーハングの技術とやらと、操作方法を口頭で教えてもらうぞ」

「それで構いません。ご自身の目と耳でイサオさんからの言付を確認してください」

 

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