あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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前話を加筆させていただきました。よろしければそちらも合わせてどうぞ。
様子を見ながらまた書いていきたいと思います。多分、大丈夫、治ったはず。


カナリア自警団 その12

「ハルト、話がある」

「?」

 

 イヅルマへ辿り着いてから行われる様になった朝食時の定例会議。いつものように談話中の最中、レオナさんの口から改めて話を変えようとする素振りをみせる。

 口に物を含んでいたため、首を傾げるようにして応える。

 

「どうかしましたか、レオナさん?」

「震電の件とハルトの護衛についてなんだが……」

「な、何か問題でもありましたか!? ミントさんに吹き飛ばされたのを止められなかったとか!?」

「あれを対処するのは不可能だ。読んでいたウーミのページが風圧で捲れた程だぞ?」

 

 そんな一撃を食らって私は生きてたのか。ミントさんが直前で手加減してくれたとか? それとも緊急処置を行って蘇ったとか。それっぽい気がしてきた。

 

「一応、見せる前に警告をしていたんですけど」

「彼女の想像を超えてしまったんだろうな。芸術とはいえ少しばかり過激な絵だったから」

 

 薄く頬を染め、視線を逸らしながらそう答えるレオナさん。見たんですね、あの合わせ技を。咳払いをして場を仕切り直す。

 

「ともかく、震電については一段落つき、ハルトの安全もあの時以外は特に問題ないと判断した」

「レオナさんの許可なく一人で町を歩き回るなとも言われていましたし」

「うむ、護衛をすると一言で表しても護衛される側の協力も必要不可欠だ。その点についてハルトは護衛対象として守りやすく、肝が冷えるような事は……」

 

 笑顔で語りかけてきたレオナさんが瞼を閉じ、沈黙する。私の予想としては、議会で気絶した時の事まで考えていると思うんだ。

 イヅルマへ来て二回も気絶して、その両方が味方とも呼べる人達が原因という。

 

「流石に同士討ちまでは計算できないと思いますが。相手が相手ですし」

「冷静に考えていると、私は護衛任務を遂行出来たと言えるのだろうか……?」

「出来てますから、そこまで深く考えていると拗らせてしまいますよ?」

「す、すまん。ザラにもよく注意されてしまうのだが、一度考え始めると止まらなくてな……」

「なら考える前に、私に伝えたい事から始めましょうよ」

「その事なんだが……カナリア自警団が信用できる相手だと私が判断し、ハルトの身の安全を確保出来た状態であり、イヅルマ滞在が予定よりも伸びそうな場合は報告の為に一時帰還せよと、マダムから事前通達されていてだな」

「レオナさんの話を聞いて、気絶した部分をマダムがどう捉えるか、ですかね」

「……やはりまだ私が離れるわけにはいかない! マダムには失礼だが郵便で報告書を提出するとしよう! 私の友人に郵便配達員をしている双子がいてな、しばらくすればイヅルマへ訪れると話を」

「大丈夫ですから! 大丈夫ですって! マダムなら私の行動に頭を痛めるだけでしょうから!」

 

 帰る、帰らないの謎の押し付け合いが発生し、騒がしい朝の始まりを告げた時、何時もの様にカナリア自警団からお迎えがやってきた。

 

「おはよ~。ごはん、食べないの?」

 

 本日の担当はヘレンさんの様だ……が、お腹から盛大な音を立てながらテーブルの上にある食事を眺めている。

 

 

「うめー」

「おかわりが必要でしたら言ってください。追加注文しますので」

「まじか」

 

 まじです。元々イヅルマでの滞在費用は全て議会が支払ってくれる事になっている。レオナさんに支払うべき費用はマダムのご厚意で割引が効いている。お給料から天引きされるんだけどね。

 第二羽衣丸が建造中であり運輸業が再開出来ていない事と、コトブキ飛行隊が隊としての活動がまだ限定的な事が理由だそうだ。

 本来ならば隼の修理も部品集めやらで時間がかかるところを、予備機を駆使してまでも私が通ってきた穴の調査へやってきたそうだ。

 どうやら私がイジツへやって来たことが、様々な人達の予定を狂わせた模様。人一人が現れただけで、本人の知らぬところで大騒ぎ。

 

「ハルト、おかわり」

「あい」

「朝からよく食べるな。いや、決して悪い事ではないのだが、普段は何を食べているんだ?」

「コッペパンとミルク」

「そ、そうか……。無礼なことを聞いてしまったな。ハルトの言うとおり好きなだけ食べてくれ」

「さんきゅー」

 

 それはきっと勘違い。自警団で働いているのだから食べるのに困ることは早々無いとは思うのだけれど。

 用心棒として働くのと、自警団としてお勤めするのでは、やはり感覚が違うのだろうか。

 高給取りなのは間違いなく用心棒だと思うけれど、機体そのものから弾薬、燃料に至るまでの事はよく分からない。

 自警団は全て町が負担しているんだろうなとは思う。いわゆるお役所勤めのはずだから。

 

「ごちそうさま~」

 

 お腹一杯と満足そうな笑顔と言葉。しかしながらコッペパンとミルクだけで、そこまでワガママに育つのだろうか。

 いけない、最近は自分のペースが崩されている気がする。カナリア自警団の皆さんと出会った辺りからだろうか。慢心せず精進していかなければ。

 

「それじゃいこっかー」

「あ、その事なのですが、レオナさんとの話がまだ終わっていなくて」

「あれ、帰るんでしょ?」

「へ?」

 

 

 渋るレオナさんをなんとか説得して駐機場まで足を運ぶ。ヘレンさんから話を伺えば、レオナさんは既にアコさんへ話を通してあり、私の身はカナリア自警団が責任をもってお守りすると返事を頂いていたそうだ。

 そのため、本日最初に訪れる場所は詰所ではなく駐機場である事もヘレンさんに伝えられていた。知らぬは私だけなり。

 

「ハルト、大丈夫だぞ。アコにきちんと説明をしておいたからな。それでも心配であればやはり私がのこ」

「大丈夫です! こうして今もヘレンさんに護衛して頂いてますから!」

「うぇーい」

 

 その返事は逆効果ではないだろうか。見事にレオナさんは心配そうな顔でこちらを見つめたまま立ち尽くしている。

 失礼と一言断りを入れて、体の向きを変えたあとに背中を押す。そうしないと何時まで経っても飛び立つ準備をしなさそうに見えたから。

 

 

「可能な限り早く戻る。その間、ハルトの事は頼んだぞ?」

「おっけー」

「い、いってらっしゃい。大人しくしていますので」

 

 尚も不安げな顔をこちらに見せるレオナさん。図書館へも行けなくなりましたし、詰所で調べ物の整理をしていますから。

 私とは比べ物にならないぐらい綺麗に離陸をして大空へと舞い戻る隼の姿。こうして見送ると一抹の寂しさを覚えるのだから自分でも不思議である。

 

「それじゃ、いこっかー」

 

 詰所に向かうものだと思えば違う方向へ歩みを進めるヘレンさん。

 

「何処へ行かれるつもりで?」

「ハルトがあたしの傍からはなれなければいいんだよねー」

「それは間違いないのですが……何処へ?」

「あたしのいえー」

 

 は? 家? いえーい?

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