あの穴の先にあるモノは   作:星1頭ドードー

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カナリア自警団 その23

「ウタカさん、教えてください。あの小型飛行船は一体何なのでしょうか?」

「見ての通りだよ、アコ君。我々が現在使用している飛行船のご先祖様。とでも言えばよいか」

「ここまできて貴方のナゾナゾに付き合う理由は無いのだけれど?」

「すまない。だが、問われた内容に答えるとしたら、それ以外に返す言葉が見つからない」

「素直にアレに関した話を伝えればいいだろう」

「そうだな。茶化したつもりはないが、不快に感じたならば詫びよう」

「いえ! 大丈夫です! 是非その話をお聞かせ下さい!」

「了解した」

 

 ウタカさんから聞かされた小型飛行船に纏わるお話。事の全てはイヅルマで起きた出来事から始まる。

 イヅルマを支配していた自警団上層部、及び町の有権者を排除するパロット社の計画を全て終えた時、ウタカさんが行おうとしていた事の一つ。それは穴の先にいるトキオさんを救い出すという目的。

 それを遂行する為に用意された物は、穴へと進入出来る大きさの飛行船。

 だが、現れる穴の大きさがどの程度か不明。現在、製造されている主要の飛行船では通れない可能性も大きい。その為の予備として製造されたのが小型飛行船であった。

 穴に突入した際に、支援用途として最低限の物資の輸送。しかし、小型とはいえ飛行船を動かす為には人員が必要であり、それを解決するのが自動操縦装置である。

 自動操縦装置によってどの程度まで操縦が可能なのかは分からない。少なくともウタカさんの説明を聞く限り、戦闘機から無線によりある程度の操舵が可能なことだ。

 可能な限り自分一人で事を済ませようとする辺り、イヅルマの男達は寡黙ながら内に秘める意志の強さは人一倍。女性が強いのはイジツ特有……でもないか。

 

「あれ? でもパロット社はあの飛行船を取引の為に譲渡されるはずでしたよね?」

「そうなのかね、アコ君」

「はい。町の方針により技術者保護の為にパロット社は解体されず、今回の引き渡しについても彼らに支払う給料の為、現金化する必要があるからと聞かされていたのですが……」

「それが嘘か真か分からないわ。ただ、現実は一人の議員が離反を起こして小型飛行船と共に去り、その護衛として雇われていたのは、イサオ所属部隊の黒い疾風。で合ってるかしら?」

「うん、お母さんの言ったとおりで合ってるよ。疾風についての情報はラハマのオウニ商会から教えていただいたんです」

「ほう、カナリア自警団にはオウニ商会と通じる人物がいたか。はたまた……」

「ウタカさんなら察しておられるでしょうが、ハルトさんを通じてです」

「アコさん達と出会った理由が、離反した議員が起こした強行手段による呼び出しなのですけどね」

 

 私をイヅルマへと呼び出した真実は分からない。小型飛行船を奪取したあの時、もし私が震電に搭乗していなかったら、そのまま奪い去ろうとでも考えていたのだろうか。真相は闇の中。

 

「全て、今日の日の為に用意したのではないかしら? まるで誰かさんみたいね」

「私なら時間をかけて念入りに事を起こすさ」

「起こすな。もう少し人に頼れ、馬鹿野郎」

 

 元はライバル同士だと知らされている大人の三人組。其々、想いはあれど、願う事はただ一つ。かくも偶然の重なり合うとは誰が想像出来るであろうか。

 日本から探し人を求めてイジツへ。そこで出会った人達の中には、ユーハングへ行ったとされる人物を探すイジツの人の姿。その人物と出会った証拠を持ち合わせていた私。

 そして議長のお話を伺うに、私の探し人である曾祖叔父が、生存していた際に居た場所は、タネガシ。タネガシ? あれ? どこかで聞いた様な……。

 頭の中で絶叫が響く。そうじゃん! イヅルマで調べ物をしていた時に、資料の中で見かけたタネガシという地名。そこは様々なマフィアが存在し、その中にはゲキテツ一家の名前も! 

 アレシマで出会ったフィオさんが、私を部下にすると口にしていた際に、確かゲキテツ一家という名前が出ていた。勢力を拡大させる為とか言っていたから、少なくとも何かしらこのマフィアと関わり合いがある人達だ。ならばフィオさんと共にしていたあのお優しいローラさんまで!? 

 

「大丈夫ですか、ハルトさん? 急に顔色が悪くなっていますが……」

「今日の出来事をまとめたら、私の探し人を探すのに回避できない未来が存在してしまう事に気が付いてしまって」

「具合が悪くなるほど深刻な未来なんですか!?」

「かなり、それなりに、結構深刻な問題として。でも、その未来を迎える為にも、この課題を無事に済ませなければ」

「ハルト、君は面白いな。町を破壊しようとする奴等が現れる事を課題と表現するか」

「無い頭を回転させて思いついたんです。イヅルマで起きた当時の出来事について、私は資料と人を通じてしか内容は分かりません。ただ、彼等の存在はイサオさんと大いに関わり合いがあり、宣戦布告とも取れる大胆な方法で小型飛行船を手に入れる」

「そして自分達が敗戦した方法でやり返し、自由博愛連合の意志をイジツ中に知らしめる、か。だとしたら狙われるのはイヅルマよりラハマの可能性が高いと思うが」

「大胆に行動を起こした事は、彼らの復讐の手始めにイヅルマを。という意志を私達に伝えたかったようにも思えます」

「なるほど、事前に自分達の行動を見せつけた後に彼等の目的が達せられたならば、十分すぎる程の価値があるな。それに彼等を支えている者の中には、私が排除した者達も含まれているのだろう。そうでなければ短期間でここまで事が進むとは思えない」

「そこまでしてイヅルマを!?」

「奴等はおもちゃを取り上げられたんだ。癇癪だって起こすさ」

「それが小さな子供であれば、可愛げがあるのだけれどね」

 

 それが理由で自由博愛連合に手を貸していたとしたら、本当にどうしようもない話だ。イサオさん不在で誰が指示を出しているのかさえ不明だというのに。

 

「だが、自動操縦ってのはそこまで精密に動かせる物なのか?」

「ある程度だ。想像しているような機動はできんよ。それが飛行船であれば尚更。アコ君がよく知っている」

「あはは……」

「例えそうだとしても、イケスカ騒動の再現を狙っているのならば飛行船には爆薬が搭載、おまけにブースターによる高速接近、どうやって止めようかしら?」

「上部にあるガス袋を撃ち抜き、墜落と共に爆破を起こせればいいが、問題が二つある」

「一つは護衛部隊の存在でしょう? もう一つは?」

「推力に任せて飛行する物は、推力を断ち切らねば止まらない可能性があるという事だ」

「仮にその手段を選ぶとしたら、全てのブースターを撃ち抜かなければならないのかしら?」

「いや、左右どちらかを集中して破壊すればいい。自動操縦ではそこまで精密に補正は出来ない。片側のブースターの勢いに任せ、飛行船の進路が変更された後に落とせばいい」

「それが出来る状況ならいいんだがな」

 

 ジョージさんの言うとおり、護衛はイサオさんの所属部隊。それが何機現れるのかも不明。唯一救いなのは、索敵さえ怠らなければ小型飛行船を見つけ出すのはそれほど難しい問題ではないという事だ。

 

「自分で発言しておいて何ですが、相手の成功率は元々低いですよね、この作戦」

「彼等を支えている出資者に対する活動も含まれているのだろう。だが、成功すれば効果は言うまでもない」

「相手からすれば奪った物だけで行える作戦。もしかしたら何か隠し玉でも抱えているのかもしれないわね」

「だとしても、イヅルマで使用する確率は極めて低いだろう。今回の行動は自分達の存在を余りにも大衆に晒しすぎている。例え何かを持っていたとしても、この様な作戦で使用するとは到底思えない。そこまでして彼等がイヅルマに執着する理由も見当たらないのだから」

「はぁ、広報活動は方法を選んで欲しいわね」

 

 ため息をつくミヤコさん。呆れてしまうのも無理はない。結局のところ、根源はイヅルマの元有権者たちの暴走とも取れるのだから、中々どうして闇が深い。方向性であれば市長を目指して欲しい……のも問題かな。

 

「私達が出来る事とすれば、日頃のパトロール任務を強化する事ですね!」

「アコ達は本体が現れるまで体力を温存しておくべきだわ。イヅルマの主戦力部隊であり、代表となるカナリア自警団なのだから」

「う、うぇ!? お母さん!? そんなに褒めても何も出ないよ!?」

「事実よ。索敵なら私達や他の自警団員が行えばいいだけよ。ね、ジョージ?」

「そうだな。これを止めるのはカナリア自警団の役目だ。サポートは俺達に任せておけばいい」

「ジョージさんまで!?」

 

 この話の流れでいけば、シノさんとの射撃訓練はお流れになるのかな? そもそも私が空に上がっても出来る事って無いよね? 大人しくしていれば……。

 

「それにね、アコ。何も出ないと言うけど、ちゃんと出せるものはあるわよ」

「へ? 何かあるの?」

「ハルト君をお母さんに貸して貰うわね。大丈夫、キッチリ仕上げておくから」

 

 何も起きず過ごせる訳が無かった。仕上げるって何を? 何かされること前提の言葉ですよね。そっと私の肩に置かれるのはジョージさんの手。

 

「諦めろ。空賊が現れた時にシノの後ろを飛行し続けられたんだろう? 生きていれば良い事もある」

「最後の言葉が不穏を感じさせるのですが、ジョージさん」

「ちょっとだけ、私からもハルト君に技術を教えたい事があるのよ」

「教官殿はシノさんだけで十分なのですが!?」

「あら、一途なのね。けど心配しなくても大丈夫よ、彼女の教えに少しだけ上乗せさせるだけだから」

「少しなの!? 本当に少しで済むのかな!?」

「二人とも君に礼がしたいのさ。私からの分も添えて頑張りたまえ、ハルト」

 

 ウタカさん。そんな簡単に言いますけれど、お二人はイヅルマで伝説とまで謳われた元イカルガ自警団ですよね? ミヤコさんに関してはおっかない二つ名が付けられていたと記憶しておりますが! 

 

「頑張ってください! ハルトさん! 上手になれる事は良い事ですから!」

「この状況下で上手くなる必要性ありますかね! 猫の手を借りたいほど戦力不足でも無いですよね!? ナンデドウシテ!」

「イザという時の為に、保険は掛けておくべきなのよ。期待が出来そうな子がいるのなら、特にね」

「うっそだー」

 

 本音がつい零れてしまう。毎日が空戦のイジツであれば、私よりも上手い人材なぞ街中を探せば見当たるだろうに。

 僅かながらミヤコさんに対して必死の抵抗を試みていると、看守に動きがある。どうやら面会時間の終了のようだ。こちらはそれどころでは無いというのに。

 

「ハルト、最後に再び問いたい事がある。なぜこの問題を課題と表現をしたのだ?」

「そう言われましても。過去問は、予習と復習で解決できるからですよ」

 

 私からの答えに辺りは静まり返る。そんなに黙らなくても。カナリア自警団という立派な人達が居るのだから、私が解決できるような事は無いわけで。空戦が関わる事で私に期待しないで欲しいのだ。

 

「その返答であれば、私からの課題にも応えてもらうわね!」

「私の知っている入試問題に空戦はありませんでしたよ!!」

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