シャロちゃんは皆のおもちゃ 作:abc
最近、シャロには悩みがあった
それはいつも悩んでいるお金のことでもなければ、学校でのことでもない。
尊敬する先輩であるリゼのことについてだ。
その悩みというのはリゼが何かにつけて、シャロにプレゼントを送ったり、お金を貸してくれたりするのだ。最初はほんとに些細なプレゼントや小銭程度であったが最近ではその額も量も増えてきており、シャロの悩みの種になっている。
現在、シャロはその悩みについて自室のベッドの上で横になりながら考えていた。少し前のシャロの部屋と違い、今はリゼからもらった多くの小物やぬいぐるみなどで溢れてしまっていることも悩みに拍車をかけた。
「このままじゃ、やっぱ、ダメよね……」
どうにかして貰ったものの分を返しに行こうと決めるシャロであった。
そんな時にリゼの方から電話が入る。
『シャロ、良かったら今日一緒に遊ばないか?』
「は、はい、もちろんいいですよ」
今日のデートはリゼからお金を借りたり何かをおごってもらわない様にしよう。そう決めたシャロはいつもより多めのお金を財布に入れてリゼとの待ち合わせ場所に向かうのであった。
待ち合わせ場所に着くとリゼが待っていた。いつも通りの凛々しくも可愛らしい顔立ちにシャロはリゼの顔を見ただけで嬉しくなる。
「待たせてしまってごめんなさい、リゼ先輩」
「大丈夫だ、今来たところだしな。ほらそれより行くぞ」
「は、はい」
そう言ってシャロの手を掴んで引っ張っていってくれる。リゼの手の温かさにシャロの心は少しだけ揺れ動いた。
いつも通り木組みの街の雑貨店などを見て回る。シャロは正直リゼと一緒にいられるならどこでも良かったが、そんなことは恥ずかしくて言えなかった。
そしてあるアクセサリー店に入った時に、シャロはそこで可愛らしいネックレスを見つける。値札を見てみるとそれなりの値段がするが、決して買えない額ではない。それに今日はいつもより多めの額を持ってきたので思い切って買うことを決めたのであった。
目当ての物が見つかったシャロにリゼが話しかけていく。
「どうしたんだシャロ?何か良いものでもあったのか?」
「はい!このネックレスを買おうと思うんです。少し高いですけどバイト代も入ったばかりですし思い切って買おうかなって」
「……そうか、なあ、シャロ?このネックレス私にプレゼントさせてくれないか?今日のデートに付き合ってくれたお礼がしたいんだ」
シャロとしてはプレゼントされれば確かに、金銭面ではかなり助かる。だが今日のシャロは違った。リゼからの援助を断ち切るためにも自分で買わないとと決めている。
「ありがとうございます……気持ちだけ受け取っておきます」
「!?……ど、どうしてだ?私にプレゼントされるのは嫌なのか?」
断った瞬間に急に焦りだしたりリゼに、少しだけ違和感を覚えるシャロであった。
「えっと、その、いつもリゼ先輩には何か貰ったり、お金を貸して貰ったりしてますから……その申し訳ないなと思って」
リゼはシャロの言葉に完全に動揺していた。
「そ、そんなことはない。私はシャロのことが好きで、大切だからそういうことをしているんだ。なあ、頼む。私にお金を出させてくれ。シャロの為にないかをさせてくれ。お願いだ!」
あまりに様子がおかしいリゼにシャロは少しだけ恐怖を覚える。
だがここで自分が折れては、これまでと同じになると思いしっかりと拒絶する。
「リ、リゼ先輩落ち着いてください!本当にその気持ちは受け取っておきますから!だから、気にしないでください!」
「ああ……わかった……それを買ったら今日はもう帰ろう」
まだデートをする時間はあるがあからさまにリゼの様子がおかしいために、シャロは仕方なくネックレスを買って解散した
◆
リゼしかいない部屋の中でベッドの中で丸まりながら一人ぶつぶつと呟く。
「何でどうしてシャロは私からの愛を受け取ってくれないんだ。おかしい。おかしい。おかしい。シャロは私のことが好きな筈なのに、それなのに私からのプレゼントを拒んだ。何で?どうして?もしかしてシャロは私のことが嫌いになったのか?嫌だ!嫌だ!そんなの嫌だ!でもどうしようシャロを手に入れるには……。どうしても欲しい……シャロが欲しい……。ああ、シャロ、その金色の髪も、綺麗な緑の瞳も全てが愛おしい。他の奴らなんかに絶対にやらない。無理矢理にでも手に入れてやる、絶対に、絶対に!」
リゼはシャロを手に入れるために覚悟を決めた。
◆
リゼとのデートから三日後、シャロはバイトを終えて自宅に帰宅していた。あれ以来リゼとは顔を合わすことがなかった。心配してリゼの教室にも行って見たのだが、あいにく間が悪いのか毎回すれ違うようにして不在であった。
「リゼ先輩どうしちゃったんだろ……私何か失礼なことでもしちゃったのかな……!」
そんな時、シャロの携帯にリゼから着信が入る。
「リゼ先輩ですか?」
『ああ、私だよシャロ、三日ぶりだな』
「はい、デートした時様子がおかしくて心配していたんですからね!」
『すまなかった……それより今から車でお前の家に向かえに行くから今日は私の家に泊まらないか?実は悩みがあって相談したいんだ』
シャロは納得がいった。
あの時の様子がおかしかったのもその悩みのせいであったのだろう。
友人としてそして何より尊敬する先輩としてリゼの力になりたいシャロは、リゼの提案を受け入れる。
「分かりました!すぐに準備しますね!」
『頼む』
そう言うと急いで着替えと荷物を持って準備をする
「せっかくだからあの時買ったネックレスも付けて行こう」
すぐに迎えの車が到着し、シャロはリゼの豪邸へと向かう。案内されたリゼの自室の扉の前まで来る。
「リゼ先輩入りますね」
「……ああ、入ってくれ」
リゼのいつもより低い声で入室の許可が出る。
シャロが部屋に入るとその異常な状況に気分が悪くなる。
「失礼します……!?……なに……これ……」
その部屋の壁にはシャロの写真が一面中貼られまくっていた。アングルなどからそのほとんどが盗撮写真であることが分かる。あまりの気持ち悪さにシャロは部屋を出ていこうとするが既に閉じたドアには鍵かかっていた。
「その扉の鍵は私がこのリモコンで操作することが出来るんだ。今晩からお前が誰の物なのかをしっかりと教えないとな」
そう言って寄ってくるリゼから下がりながら距離を保つ。
「リゼ先輩……どうしちゃったんですか?……いつもの優しいリゼ先輩に戻ってくださいよ……」
「何を言っているんだ……これが本当の私だ。シャロのことが好きで好きで好きで仕方ないんだ。この前までは自分の気持ちを抑えることが出来ていたそれなのに」
壁際に追い込まれるシャロに特殊なガスを吹きかける。
「それなのに私からの贈り物を拒絶した。シャロを私色に染め上げたかったのに、それなのにシャロは私の気持ちを裏切ったんだ…………ああ、今日はそのネックレスを着けてきたんだな……こんなもの!」
そう言ってネックレスを引きちぎる。シャロの顔に絶望がはしる。
そしてガスの効果なのか立っていることすら出来なくなるシャロ。その場にへたり込んでしまう。
「そんなネックレスの代わりにこれをやる。チョーカーだ、シャロが私の物だという証だ。絶対に取るんじゃないぞ?」
「嫌……嫌ぁ……助けて、千夜、ココア……」
「私以外に助けを求めるな!」
体が痺れて動けないシャロをベッドに寝かせる。
「さあ、シャロ、私の色に染まるんだ」
次は誰にしようか迷っています