※1時間時間が取れそうなときに続きかきます
バイクに乗りたいわけ。
そう頭の中で呟いたのは艦娘と相対する存在である戦艦レ級その人である。俗にいう転生者というやつではあるものの、結局として一戦力としか数えられていない深海棲艦だ。
あと米も食いたいよね。みそ汁とさ。ぬか漬けとか最高やんね。
圧倒的に彼女は飢えていた。元の性別は不明ではあるが、ぬか漬けが出てくるあたり、恐らく年老いてからの転生であろう。だが今の彼女は十代の見た目の異形である。見る人が見れば美しいという言葉が出てくる姿かたちだ。
ただ、深海棲艦はお互いに特に姿形を褒め称えたりはしない。所詮軍隊であるのだから、評価されるのは戦績のみである。その点この戦艦レ級は優秀である。転生してから1か月程度で長門を食らい、大和をねじ伏せ、赤城を叩き落とし、イ号を藻屑としている。隙は割と無いと思われがちだが、転生前の知識を生かし、それっぽい事をし、あとは戦艦レ級としての性能が彼女をエースたらしめていた。しかし彼女が思うのはやはり。
バイクに乗りたいわけね。ネイキッド
転生前にやたらめったら乗っていた、バイクの事だけである。
◇
彼女は転生前の性別は判らない。だが、バイク好きだったことは覚えている。バイクに乗った人間は、バイクの事を一生忘れられないことは周知の事実だとして、それが輪廻転生した後も残っているとはだれも考えなかったことであろう。しかし彼女は、バイクと走った阿蘇を忘れられない。バイクと走ったカルストを忘れられない。バイクと走ったいろは坂を忘れられない。バイクと走った九十九里浜を忘れられない。バイクと走った十和田湖を忘れられない。バイクと走った男鹿半島を忘れられない。バイクと走ったどうし道を忘れられない。バイクと走った首都高を忘れられない。バイクと走った奥多摩を忘れられない。バイクと走った箱根を忘れられない。バイクと走った伊豆を忘れられない。バイクで走った…
バイクと走った、全ての時間を忘れられない。
そして未だ北海道の地を走ってはいない。未練しか残っていない。そもそも阿蘇だって弾丸でいったから楽しみ切っていない。同じ九州の高千穂はいきたいし十年に一回の草千里も参加したかった。だがどういうことだか今は深海棲艦をやっている。そんな彼女が思う事はだた一つ。
ズルいやん皆。私だってバイクにのりたいんや。
そう、今この世界は深海棲艦と艦娘が戦っている世界だ。戦乱の世の中だ。だが、それでも陸に上がれば確実にバイクに乗ってる馬鹿がいる。バイク乗りである戦艦レ級がバイクに乗れない深海棲艦であるジレンマ。バイク乗りのジレンマ。そのジレンマが爆発するのは至極当然のことであり。
そうか、北海道まで海越えて行って、レンタルすりゃええんや。
上には侵攻作戦で2か月ぐらい不在ですっていっとこ
バイクは馬鹿にしか乗れないわけである。
◆
レ級は素晴らしいが働き過ぎでは?
そう頭の中で呟いたのは戦艦レ級の上官であらせられる南方棲戦姫その人だ。彼女は転生体でもなんでもない普通の深海棲艦である。もちろん姫級なので艦娘なんかは鎧袖一触である。ただ、その陰には戦艦レ級を含めた部下の活躍が大いに影響していることをこの上官は十二分に理解している。
レ級は最近休みとったかしら?
上官がそう思う程度にはレ級は連日連戦である。つまり、朝飯食って出撃して昼飯食って出撃して夕飯食って出撃して仮眠とって夜食食って出撃して、そしてまた朝飯食って出撃していくまさに深海棲艦の軍馬といった有様だ。ただ、普通の軍馬と違うところは固い強い疲れ知らずの最新型といった具合であろう。長門の砲弾を噛み砕き、大和の装甲を正面からぶん殴って変形させ、赤城の航空機を艦娘をぶん投げて叩き落とし、潜水艦を追っかけまわしてかかと落としを食らわせる砲撃しない系筋肉派深海棲艦。上官の南方ですらドン引きする強さを持っている。ただ惜しむらくは砲雷撃戦になると並みの戦艦ぐらいの実力しかないといったところだ。
うん、良い働きすぎるわね。最近は戦況も拮抗しているし英気を養ってもらおう
拮抗、とはいっても実力のある艦娘が陣地に侵入はしてくる。だが、戦艦レ級がいなくとも他のエリート達でなんとかなる戦況ではある。ということを鑑みて、南方はレ級に一週間ぐらい恩給を出そう。と判断する。だがその矢先。
「2か月…単独行動で侵攻作戦?」
戦艦レ級がそんなことを言ってきた。
「はい。最近は拮抗状態が続いております。幸いにもこちら側の防備は今のところ破られておりませんし、補給線にも余裕があります。今のうちに一手打つことも作戦かと愚考した次第です」
「確かに一理ある。しかし単独というのはどうだ?艦隊行動のほうがよろしくないか?」
「はい。いいえ。侵攻作戦と考えた時、艦隊編成だと数が足りません。日々こちらに攻め入る艦娘と同じ運命を辿ってしまいます。であれば、単独で侵入し損害を与え、帰投する戦力、つまりは私個人で攻め入ったほうが有効かと愚考します」
「しかし貴官は砲雷撃が苦手ではないか」
戦艦レ級の砲雷撃は並。それは当人も判っている周知の事実である。
「はい。しかしながら今回は砲雷撃を行いません。敵地深くに浸透し、奇襲を悟らせぬまま喰らい、損害を出さずに帰投する。これが出来るのは深海棲艦多しと言えど、近接特化の本官にしかできない作戦だと進言致します」
「…そうか。確かに今動かせるのは多くとも6隻。その中からとなると貴官が有用か」
「はい。それに、私であれば多少の戦力であれば跳ね返しますし、補給線も必要のないほど十分な格納庫を持っております。単独浸透作戦であれば、まさに最優かと」
「まぁ、判った。それで、どこを攻め上げるのだ」
「はい。単冠湾を攻め、北方の姫の負担を減らしたいと思っております。その後、援軍が集まるであろう大湊を潰して参ります。あとは日本海側を南下し、各拠点をつつきながら帰投しようかと。順調に進めば1か月といったとろでしょうか」
「なるほどな」
「しかしながら、作戦が長引くことも考えられます。故に、2か月」
「まぁ、ちょうどいい。お前の好きなようにやれ。こちらは2か月、間違いなく艦娘を跳ね返そう」
「はい。では、早速明朝に出立致します」
◆
全力でガッツポーズである。無論心の中で、ではあるが。
全力でバイクに乗れるかもしれない。いや普通にやってしまっては乗れない。そもそも深海棲艦は恐ろしいものである。人間は逃げるし艦娘は追っかけてくる。だがバイクの魅力には勝てないのだ。それに上官は2か月こちらの基地を守り切ると断言した。戦争なので確実性は無いが、それでも憂いを払しょくするには十分な言葉である。
やりたい放題やねー!
なるべくなら平和にバイクに乗りたいものの、駄目なのであれば力で奪えばよろしい。出来れば大型バイクがいいけれど、原付でも文句は言わぬ。排気量なんてものは所詮飾りであるし、姿形は好みでしかないし、乗車姿勢は疲れるかどうかの違いしかない。バイクなのだ。バイクに乗れるだけで嬉しいではないか。
オフロードもいいねー。スーパーなスポーツも乗りたいけれど、やっぱりネイキッドー♪
侵攻作戦はどうした。そう言いたくなるほどのお花畑である。しかしながら腐っても戦艦レ級。そこはしっかりうっかり考えている。
単冠湾攻めて、あとは北海道に上陸して陸路移動すれば察知されないしバイクに乗れる~♪
主に後半の理由100%で陸路移動をする予定である。バイクは単冠湾で確保できれば最高。確保できなくともどこかにあるであろう。つまりうっかり行き当たりばったり侵攻作戦である。
さーて今日はしっかり寝て、明日の出発に備えよう!待ってろよー北海道の大地!
馬鹿である。バイク馬鹿である。
◆
まぁ、ちょうどいいかな。南方の姫は心の中で呟いた。
確かに休みではない、休暇ではないが、レ級にとってはちょうどいい気晴らしにはなるだろう。単冠湾は北方の姫の活躍のお陰で勢力がかなり弱っている。もともと艦娘が占領していたキス島は撤退していることからも、今、北方方面の基地を戦艦レ級クラスの戦力が叩けば簡単に落ちるであろう。そのあとは恐らく大湊に戦力が集中するだろうが、大和や武蔵が居なければレ級にとっては独壇場と言っても過言ではない。砲雷撃が苦手なだけあって、接近戦特化型の戦艦レ級、もとい水上戦力なんていうものは、おそらく、彼女だけだろうから。
あー、でも金剛が出てきたら厄介ね。あれもインファイターだし。
戦艦金剛。私の顔面をぶん殴ってドヤ顔をして、更にそのまま撤退した艦娘だけれど、元気しているだろうか。敵だがもう一度会いたいものだ。砲弾を噛み砕き、ヲ級をアッパーで飛ばし、戦艦レ級をクロスカウンターで気絶させ、こちらの潜水艦をスタンプで気絶させ、そして南方の顔面に一撃を叩き込んだ金剛。素晴らしい女だった。
それにしても、戦艦レ級もなかなかの戦術眼よね。この時期に攻勢に出ると進言してくるなんて
深海棲艦はそこそこ知能は低い。目の前の艦娘にはかみつくが、全体を見れる存在は姫級ぐらいなものである。しかしながら、姫級ですら目の前の艦娘に夢中になる存在もある。あれはどうにもならない。部下を死なせて戦況を悪化させるだけ。
その点あのレ級は素晴らしいわよね。着任1か月だけど、そうね。戦姫への昇格、検討しようかしら。
戦姫レ級。爆誕かもしれないが、それは当人たちが知るのみである。
バイクはいいよね、バイクはさ。とはいいつつお久しぶりです。
死んではいませんが創作は死んでおります。
忙しいのが悪いんや…と言い訳をさせて頂きます。ぬわー!