キリエの気持ち   作:ユーユーリ

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味方機が再び自由博愛連合機と交戦中、キリエたちコトブキ飛行隊も向かおうとしたが・・・


安らぎ (序)

「畜生、弾が当たらねぇ!!」

哨戒に当たっていたヒノボリ飛行隊機が敵の零戦五二型と紫電改と交戦する。

4対10、明らかに不利である。

「ケツにつかれた!!」

一機の零戦がヒノボリ飛行隊機の後ろにつく。死を覚悟したが、無線が入る。

「みんな無事か!!」

コトブキ飛行隊の隊長、レオナの声だ。見ると2機も零戦が視界から消えていた。後ろにいた零戦も荒野に落ちていく。

「こんなの楽勝だよっ!!」

キリエがまさに発砲しようとした時だった、突然、敵機が主脚を出し、翼を振る。無線が入る。

「撃たないでくれ!俺たちは降伏する、たった今、あんたたちを襲う意味が無くなった。」

その場にいた全員が理解できなかった。よく見ると、その零戦の所属は自由博愛連合ではなく、空賊であるカミナシ組であった。すると、羽衣丸から連絡が入る。アンナの声だ。

「コトブキ飛行隊に哨戒機隊の皆さん、聞こえますか!?今から、ラハマに、イヅルマの両自警団、アレシマ市立飛行警備隊からも連絡が入ると思います!無選周波数をこれから伝える数字に合わせてください!」

「妙だな・・・3つも自警団から連絡が入るとは。」

レオナさえ不審に思う。よくわからないまま、皆無線を合わせる。

「こちら、イヅルマ カナリア自警団の団長、アコです。私たちはこれより、大規模空賊団による強奪・強襲行為に関連する犯罪行為を捜査するため、3都市の自警団による空賊団並びに自由博愛連合の拠点に対する強制捜査を行います。ツチカワからラハマ間の航路を飛行する場合、スータ渓谷・ブンゴ山脈に、ナンコ―を経由してラハマへ向かってください。降伏を申し出る空賊機がいれば、自警団に引き渡してください!皆さん、捜査へのご協力をお願いします!」

 

「ねぇねぇ、つまり・・・どういうこと?」

チカが皆に尋ねると、ケイトが咄嗟に答える。

「恐らく、今後空賊が襲ってくる心配はない、大丈夫。自由博愛連合の拠点に自警団が強制捜査を実施、アレシマも含めるとなると大規模のはず。ケイトが思うに、敵も自警団の強制捜査は全く想定していなかったため、指揮系統が混乱し、自由博愛連合内で内部対立が起きている可能性がある。彼らは拠点の防衛に回るか、自首をするために降伏するか、その方法しか残されていない。自警団に自首をすれば、刑罰が減軽される可能性がある。その場合、彼らは更生支援の一環である、【空賊離脱者支援法】の対象となる。」

「最近、自警団も都市を超えて一緒に行動したりしてるわよね。前に比べて頼もしくなったわ」

ザラが呟くとレオナも続ける。

「イヅルマの自警団がかなり有名になったはずだ。あれほどしっかり自分たちの役割を自覚して、市民からの指示を得る自警団はあまり聞かないぞ。」

「つまり、もう戦わなくていいってことだ」

キリエがつぶやく。ザラがホッとした口調で話す。

「今からもう戦わなくて済むのね~、なんだか安心したわー。早く帰ってビール飲みたいわね」

「ひとまず安心だな、キリエ・チカ!前の飛行機を横から囲んで羽衣丸に向かえ!ケイトとエンマも援護に入ってくれ」

レオナから指示が飛ぶ。

「まだ私、悪い奴と戦ってないよ!」

「チカがのろのろ飛行機落とすの遅いから自警団の人たちが捕まえに行かなきゃいけないんでしょ」

「キリエだってそうじゃん!!」

降伏を申し出た空賊機を次々と最寄りの飛行場へ着陸させていった。

 

ラハマまであと少しの地点に来た時、ラハマ自警団機が16機ほど編隊を組んで飛んでいく。

「こっ!こちら、ラハマ自警団第三支部!航路上の安全を確認しました…。付近の船団にお伝えします。こっ・・これより飛行経路の指示を・・・」

「おぅ!コトブキ飛行隊にチカ姐さんじゃねぇか!!俺たち自警団に安心してラハマまで向かってくれ!!」

「ちょっと!トキワギ支部長からしっかり事情を説明してやって下さい!一番下っ端の僕がすることですか!?今日初めての出撃なのに・・・」

「うるせぇ!これも新兵の教育一環だ!おい!3番機のリューヤ!編隊を崩すなよ!」

 

ラハマ自警団第三支部長のトキワギからの無線だった。あのイケスカ動乱後、各地域の自警団が装備の充実化や法整備を行ったことで、ラハマ自警団も装備が一新された。まだまだ空賊の脅威は大きいものの、わずかながら空の治安は良くなっている。また、空賊離脱者支援法により、正当な社会復帰をする元空賊の人間もわずかながら存在し始めている。人々の力が、僅かながらイジツの空を変えようとしている。だが、それでもなお空賊の道を選ぶ者は少なくない。さらに、自由博愛連合も、完全に消滅したわけではない。側近であったヒデアキと言われる男・・・まだ表舞台に再び姿を現していないのだ。空を安全に飛ぶためには、コトブキ飛行隊は今後も用心棒として空を飛び続けることになるだろう。

 

夕方には、コトブキ飛行隊たち輸送船部隊は無事、ラハマに到着した。

「俺の部下たちに、コトブキ飛行隊の皆さん、それにエリヰト興業の皆さんのおかげで、無事積荷を送り届けることができた。本当に・・・助かるぜ」

ヒノボリ飛行隊を代表して、カトウが顔をくしゃくしゃにしながら礼を言う。

「あいつの絵も無事、ラハマに届けられて、俺たちも最高だぜっ!」

トリヘイも横で号泣している。

レオナがみんなに伝える。

「我々コトブキ飛行隊もヒノボリ飛行隊にエリヰト興業の力が無ければ、最後まで任務を達成する力は無かったかもしれない。特に、ヒノボリ飛行隊の隊員には感謝の気持ちでいっぱいだ。負傷した搭乗員や隊員の回復を願っている。」

コトブキ飛行隊の護衛任務は正式に終わった。ヒノボリ飛行隊の隊員たちと別れて、ラハマの飛行場から羽衣丸に戻ったレオナたちは早速ジョニーズ・サルーンで時間を過ごす。今日はジョニーだけが切り盛りしていた。リリコは3日間の短期バイトの真っ最中らしい。

 

「みんな本当に戻ってきてくれて僕も助かるよ。任務中はお客さんが決まっていたから少し寂しかったなぁ・・・。今日は好きなだけ堪能してくれたら僕も嬉しいよ。」

ジョニーがグラスを磨きながらいい笑顔を見せる。

「私生きてるわ・・・最高だわ〜!もう一杯頂こうかしら?こんな美味しい飲み方があったとはね・・・レオナももっと飲みなさいよ〜」

ザラがユーハング酒を塩をつまみにして飲む。何でもヒノボリ飛行隊にいた整備士から教えてもらったようだ。一家が整備士らしいが弟はカイチのガデン商会で整備副班長として働いているらしい。兄は行方不明であるものの、タネガシにある、急速に勢力を伸ばすマフィアであるゲキテツ一家にいるとの噂もあるという。

「ちょっ・・・ザラ!分かったから抱きつくのは私が飲んだ後にしてくれないか・・・。」

レオナが恥ずかしがっている。レオナもしっかり飲んでおり、顔がほんのり赤い。

「ジョニーのカレーは最高だね!また一緒に早食いしたいなぁ」

「ケイトもまたヒノボリ飛行隊のみんなと一緒にハンブルクサンドを食べ歩きしたい。」

この護衛任務に途中から参加したレオナたち4人であったが、しっかりと交流もとれていた。ある時は空戦機動を教える立場、ある時は時間を共に過ごす仲間として任務を過ごした。

 

そんな護衛任務にはキリエとエンマが1番長く携わった訳だが、さすがに疲れが見える。精神的な疲れだけではない。キリエとエンマが乗る一式戦 隼 は塗装が剥げたり、発動機のオーバーホール、さらには機体の全面的な検査が必要だった。班長から今後の任務に影響が出るかもしれないということを聞かされていた。

 

「私とエンマの隼どうなっちゃうんだろうね・・・」

「ナツオ班長のことですからしっかり修理して下さるわよ。ヒノボリの整備士さんも修理して下さったけれども、新人の方がたくさんいらしたわね。向こうの整備班長に酷く扱かれているところも見てしまいましたわ!」

「まっ!とにかく任務が終わってよかったよ・・・う〜ん、どうしてるかな・・・退院したとは聞いたけど・・・」

「キリエ?心の声が漏れてますわよ。明日にでも病院へ・・・」

エンマが微笑みながらキリエに言う。

「わーっ!!!私何も言ってない!!!!」

ケイトとチカもキリエに尋ねる。

「キリエ、ユークは恐らく、退院しており、私たちが羽衣丸に戻るのと入れ違いでヒノボリ飛行隊に戻った可能性がある。既にヒノボリ飛行隊はアレシマに戻ったはず。明日にでも顔を見に行くと良い。実はケイトもアレンと一緒にアレシマに行く。」

「えーっ何でキリエだけアレシマに行くのさ〜?私もアレシマに行きたい!住みたい!!」

「うっさい!バカチ!!」

「あら、私もアレシマに行ってヒノボリの隊長さんに会いたいですわ。カトウさんともまたお話したいわね。でも明日は実家の様子を見に行かなきゃいけないからアレシマには行けないわね。明後日にでも行こうかしら。」

「もうっ!!何でみんなそんなにアレシマに行きたいのさ!!!」

キリエが叫ぶ。そんな時、ジョニーズ・サルーンにマダム・ルゥルゥが入ってきた。

「みんな本当に任務お疲れ様ね。コトブキ飛行隊には1ヶ月休みを与えるわ。羽衣丸の定期整備と時期が被るし。もう今から仕事で飛んじゃダメよ。しっかり翼を休ませなさいね。以上よ。」

レオナが声をあげる。

「マダム!私とザラには仕事を入れて頂いても構いません。1番最後に護衛任務に参加したので。隊長としてのお願いです。キリエ、エンマ、ケイトにチカには今回はしっかり休んでもらいたい。」

チカが立ち上がる。

「えーっ!私もっと飛びたいー!」

チカが手を広げて飛行機の真似をする。

「そうね・・・、じゃあレオナとザラには5日間だけ仕事を与えるわ。さっき受けた依頼なんだけど。ガデン商会のハルカゼ飛行隊と一緒に物資の配達に輸送船護衛を手伝ってもらいたいの。ウッズに頼まれてね、報酬はうちより弾ませるなんて言ってたわ。でもレオナとザラ以外はしっかり休むこと、休んだ分、働いてもらうわ。」

「分かりましたわ、マダム。ではお言葉に甘えて。」

「ケイトもレオナとザラ、マダムに感謝する」

ルゥルゥからほぼ命令のような形で休暇の指示を出されたキリエたち4人は翼を休めることにした。

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