キリエの気持ち   作:ユーユーリ

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緊張は熱いもの


緊張

ユークが孤児院時代の同期であることを知って、キリエは親近感を覚えた。その後も私はユークと会話を交し始めた。孤児院の頃を必死に思い出す。

「いつも私のご飯も食べてたの、ユークくんだったんだねー。はぁー!クツジョク!!」

孤児院で提供される毎日の食事はいつも誰かに食べられていた。全てユークの胃袋に吸収されていた。

「ごめん、ごめん、お腹をいつも空かせていたからつい。」

「もう人のもの食べちゃダメっしょ!」

「今はもう食べないよ…あはは。そうだ!明日の護衛任務が終わったあとに、食事を奢らせてくれ。近くにパンケー…」

「パンケーキ私大好きー!!!!!」

あの時のキリエの顔は太陽のように眩しく素敵な笑顔だった。この時、ユークの顔は、ユーハングのラウンデルのように、赤かった。目の前に、これほど素敵な女の子がいるものなのか。確かに、衣服は飛行機に乗るためのコートを着ており、洒落っ気は一切存在しない。しかし、その笑顔は…素敵としかいいようがない。ユークはこの時、心にある感情を覚えた。この人のことをもっと知りたい。

 

「お二人とも、なんかお似合いねー。」

ミホが呟く。

「若いってこういうことさ。」

シンヤがボソボソ言う。

「あんたも十分若い…ああそうだったわね。ごめんなさい。」

4人の中で1番物静かで体が大きいシンヤ。彼が1番心の中で苦しんでいる。彼には、愛している人がいたが、2年前に、空賊の襲撃により、亡くしているのである。だが、その苦しみを生きる力に変えなければならない。彼女は幸せな人生を歩めただろう、そう信じて。

キリエとユークが仲良く会話している様子を見て、シンヤは口元を緩める。

 

「キリエがあれほどの笑顔を見せるなんて、パンケーキを目の前にしたときくらいですわ。」

「はははは!そうなのか!疾風迅雷のキリエって呼ばれているんでどんな奴かわからなかったぜ・・・。あんな顔して、腕はいいんだろう?」

「ええ、いい飛行機乗りですわ。ちょっと、無茶なことをするときもありますけれども、キリエがいれば、私は安心して空を飛べますわ。他の4人もそう思っているに違いありませんわ。」

エンマとカトウが遠くから二人を眺める。

 

日数が経つにつれて、キリエ、エンマとシマヒロ特別飛行隊隊員との交流は親しいものになっていた。また、復帰した飛行隊隊長がエンマと同じ女学校出身であったり、カトウの兄がラハマ自警団員であるなどコトブキ飛行隊と間接的な繋がりがあることも分かってきた。そんな中、キリエとユークの仲も親しいものになっていく。

 

「おいおい、またこの店か・・・。昨日も来ただろう?」

ユークが苦笑する。

「今週はここ!って決めてんの。ユークだってここ気に入ってんじゃん!!私に紹介してくれた時から!いつものカレーライス、チキンカツ付きで辛さは強めで・・・えーっと・・・」

「いいから!さっさと入るぞ!!全く・・・。」

アレシマには、ラハマに比べれば、たくさんの飲食店がある。二人とも、このカフェにしか入っていない。店主にも顔を覚えられた。

「また来てくれたのね。ユークさんにコトブキ飛行隊のキリエさん!お二人さんいつも一緒ね♪」

「いやっ・・・そんなことはないぞ?ははは・・・」

ユークの顔が赤くなっている。だが、キリエの顔も熱く感じる。これってもしかして・・・。空を飛んでいるときは、気にならないのに、顔を合わせると照れる、というのか。

「いやーやっぱりここのパンケーキも美味しいねー。ジョニーのと違ってホイップが多め!サクサクもしてるし!」

「本当に毎日パンケーキばかりだな・・・。いつからハマったんだ?」

「本能かな?ウチューノシンソーシンリ?」

聞いて困惑するユーク。

「好きなもんはとことん好きになるっしょ!」

自分が発した言葉の意味・・・なぜかキリエの頭の中で飛び回る。ケイトも驚くほどの機動力・・・。私の感情、ユークと話す時に起きる自分の本能的な反応・・・。またキリエは顔を赤くしていく。着ているコートよりも赤いかもしれない。

そんなことを考えていたらユークがキリエに尋ねる。

「・・・キリエはさぁ、なぜ隼にずっと乗っているんだい?それこそ、好きなんだな。」

(ぎくっ・・・!)

「もう!いいっしょ!!早く食べないと!ほら、カレー冷めちゃうよ!!」

無心になってキリエはパンケーキを頬張った。

「俺が払うから、座っておけ・・・。凄い量と速度で平らげたんだからな。」

なんだか、恥ずかしい気がしつつも、キリエはゆっくりしようとしてテーブルにあった水を飲んだ。

「あれー?コトブキ飛行隊のキリエさんだー!!」

すっとキリエは振り返る。チカよりは背が高いがちびっこく、金髪のボブヘアーカット、最近、仕事が増えてウキウキしてるガデン商会の・・・。盛大に水を吹くキリエ。

「ちょっとユーカ!ごめんなさいキリエさんお邪魔して(男性と一緒だわ・・・!)ほら!ユーカ!!あなたが食べたかったのは向こうのから揚げ屋さんでしょ!アカリ!向こうのお店よ!!」

「エリカがここのチーズケーキ美味しいって言ったのに~!」

嵐は過ぎ去った。

「おい、もう出るぞ。今の女の子たちは知り合いか?」

「いや!!人違い!!ほんとに!飛行機乗り失格だねっ!(私どんな顔したんだろう・・・)」

なんだかユークといるとドキドキしてしまう。さっきのことは予想外だったけど。

 

物資輸送は、ほぼ毎日キリが無い。主にラハマやアレシマ、ショウト、ごく稀にインノなどへ輸送をしている。だいたい、10機ほどの編隊を組んで飛び、飛行船を使うときもある。長い航路上、空賊が襲来してくる。数が多く、活動空域が広範囲であるため、自警団だけでは取り締まりが追い付かない。特に、カミナシ組、オニシマ団といった、物資略奪目的で襲撃する空賊がいる。ヒノボリ商事のような長い航路を飛ぶ飛行隊は格好の餌食となる。2か月ほどの任務であったのだが、1か月経った時点で、飛行隊の4分の1の人員が離脱していた。中には亡くなった者もいる。人員不足が露見しだす。

 

「護衛機に乗る方がだんだん少なくなってきましたわ。。次から次へと大切な荷物を運ぶ輸送機から積み荷を略奪しようとするなんて。空賊どもはいつでも忌々しいのですわ!!カトウさんも大変でいらして。」

「仕方ねえ。奴らも金が欲しいのさ。無傷だったら闇で売りさばくだろうが、輸送機をほとんど落としやがるから部品や飛行機の残骸を闇に売っちまう。空の飛び方が間違ってるのさ。でも正しさなんて分からねえもんだ。」

「でも、私はあなたの飛ぶ姿、正しいものとお見受けしますわ。全力であなたを支援して差し上げますわ。」

 

シンヤとミホが夕食を終えて、飛行場へ帰っている。シンヤは一昨日の輸送任務中に空賊の戦闘機から12.7mmを脇腹に喰らっていた。だが彼は痛みを堪えて空へ飛ぶ。

「シンヤ〜アンタ大丈夫なの?普通、体に12.7当たったら命落とすよ?」

「痛いのはわかってる。だが、俺は与えられた務めをまだ果たせてない。明日は飛行船でショウトまで復興物資を届ける任務がある。それに、明日の航路上は…。奴は絶対にまだいる。俺の大切な人を…。うっ!!」

シンヤは無理をしすぎている。その場で倒れ込んでしまう。

「シンヤ!ちょっとー!そこのお兄さんお二人さん病院まで手伝って!」

 

翌週には、人員不足から、コトブキ飛行隊にも護衛任務が与えられた。物資輸送任務期間は残り3週間であったが、飛行船で物資を運ぶことが多くなる。まず、ケイトとチカがアレシマに到着した。

 

「おーキリエじゃん。キリエが護衛任務失敗してるからチカたちが呼ばれたんでしょ?」

「そんなことないやい!ここの方が空賊いっぱい出るからレオナたちの力が欲しいの!」

キリエとチカは久し振りに顔を合わせていつもの調子をみせる。

「エンマ、状況は深刻化している。襲ってくる空賊の練度と機材の質が上がってきている。ケイトには理解に苦しむ。恐らく、自由博愛連合の残りも加わっている可能性がある。ケイトたちは残り3週間と2日、同じ航路を飛ばなければならない。彼らからしたらケイトたちコトブキ飛行隊を攻撃する絶好の機会となる。」

「いつ空賊が襲ってこようとも、飛行隊の方々を全力でお守りいたしますわ。ケイトも明日に備えて休みましょう。」

 

皆が寝静まったあと、ユークとキリエが一緒にいる様子をチカは目撃した。チカは空腹感から、少なめの量のカレーライスを食べていた。

(あれ?キリエに…隣の人はシマヒロ飛行隊のユークさん?2人でこんな時間へどこへ…何で格納庫の方へ………前に読んだ本で夜に男女が人気のないところに行けば思った通りのことが起きていると書いてあったっけ。 ケイトが言ってた…[種の保存]…!)

チカはなんだか体が熱くなる。キリエとユークの様子を見てはならないと思いつつも格納庫の扉を静かに開けた…。

 

 

 

 

 

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