キリエの気持ち   作:ユーユーリ

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任務も最後を迎える


最後の離陸

「よし、みんな集まったな。明朝より、我々コトブキ飛行隊は、ヒノボリ飛行隊と共に最後の護衛任務にあたる。ヒノボリ飛行隊は搭乗員が少し足りていないものの、戦力の立て直しがほぼ完了している。彼らの援護が我々の任務だ。任務中、自由博愛連合機が襲来した場合、直ちに戦闘へと移る。以上だ。」

「ヒノボリさんたちをしっかり守るわよ、いいわね?明日に備えましょう。さぁ今日も飲むわよ?」

レオナとザラがエンマ、ケイト、チカそしてキリエに任務内容を伝える。ヒノボリ飛行隊隊長にカトウも同席していた。すると、カトウが席を立って礼をした。

「レオナさん、改めて礼を言う。あんたらにこの二ヶ月、本当に助かったぜ・・・。元は即席で作った、寄せ集めの飛行隊だった。うまく連携もできねぇ。だが、シンヤや部下たちがあんたらから色々な戦い方や飛行機の飛ばし方を習ったことで、それ以来、護衛機が全滅なんて無くなった。改めて感謝をしたい。恩人だよ。」

レオナが続ける。

「我々もあなた方と任務を一緒にできて光栄だ。特にキリエとエンマは二ヶ月も任務に当たってくれた。2人に改めて礼を言ってやってくれ」

 

キリエは改めて思い返す。二ヶ月の間、色々な事があった。エンマと2人で、自警団学校にいる教官のように空戦機動を教えたりした時もあった。カトウさんが酔って零戦に乗った時にみんなで止めたこともあった。その時、シンヤさんも酔って飛行場近くの川に落ちた気がする。羽衣丸では絶対に起きない。フクセンを除いて、みんなお酒強いから。私はあまり飲まないけど。それから、チカやケイトが来てから、飛行隊の連携がよくなったと思う。シンヤさんたちに追いかけれられた時もあった。だが、なによりも、キリエはそれまでの人生の転換点と言えるようなかけがえのない時間を過ごすことができた。ユークと共に笑い、喜び、幸せを感じ合い、時には苦しむこともあった。だが、周りに助けられた。空の上でも地上でも、支え合うことは大切だとキリエは噛み締める。

 

レオナとザラがヒノボリ飛行隊長やカトウたちと共に任務の最終確認のため、司令所に向かった。明日の任務では飛行船に爆撃機、輸送機を使って、医療物資に食料品、そして今回は戦闘機の発動機やパーツまでをも運ぶ。かなり大掛かりな輸送任務であった。まだシンヤは意識が戻らない、ミホがつきっきりだが明日の任務には参加する。キリエたちは宿舎に残り、早めに眠りにつこうとする。すると、何だかエンマの様子が妙だ。

「ねぇ・・・キリエ?あなた、大丈夫ですの?」

エンマがモジモジしながらキリエに尋ねる。

「え〜どうしたのエンマ。」

「いや・・・その、ここでの任務も終わってしまいますわねっ!ちょっと整備士の方と機体を見てきますわ、ご機嫌よう・・・。」

エンマがスタスタと立ち去って行った。すると、チカにケイト、そしてユークがキリエと顔を合わせる。

「キリエ、明日は長い航路を飛ぶ、早く睡眠をとるべき」

「ありがとう、ケイト。私ももう寝るよ」

チカがキリエを見上げる。

「私が先に敵を5機落としたら、キリエの分全部食べちゃうからね!でもユークが先に敵を3機落としたらキリエの分全部食べていいよ。」

チカが人懐っこくユークの顔を覗く。意地悪な言葉をキリエに浴びせる。

「ははは・・・・・、困ったなあ」

ユークが苦笑いする。

「ちょっと!ユークは関係ないっしょ!!数も私の方が多いし!じゃあ私が先に敵を落としたらチカのカレーも私が食べるしお風呂は私が先だよっ!ユークもカレーが好きだからチカの分やっぱり食べていいよっ!」

「え・・・聞いてないや・・・。でも私が大好きなカレーとユークが食べるカレーは全然違うからね!私のカレーは男の人には合わないかな〜」

キリエとチカがガミガミ言い合い、ユークは困り果てる。するとケイトがユークを呼ぶ。

「ユーク、明日の任務はアレシマからショウト、ツチカワ、そしてラハマ近郊までの長い距離・・・。またここに戻ってくる頃には夜が深くなる。ケイトたちと共にユークたちヒノボリ飛行隊もラハマの飛行場近くの旅館や羽衣丸に泊まるべきだとケイトは思う」

「そうかなぁ・・・困らないかい?そちらの社長さんに迷惑かかるかもしれないなぁ、でも多分泊まることになると思うよ・・・迷惑かけるね」

ケイトはコクっと頷いた。そして、皆自分の部屋に戻っていく。

 

「キリエ・・・。」

ユークがキリエを呼ぶ。

キリエはチカと一緒に歩いていたのだが、チカは手洗いに行くといって走り去っていった。

「明日で・・・最後だな。その・・・なんだ、任務が終わった後・・・」

ユークが唇を噛み締めて俯いてしまう。キリエは何故だか分からないが「今」ではないと思った。

「ねぇー、なんなの?言いたいことあるならしっかり言いなよっ!任務が終わった後で聞くからねー。明日はユークもレオナたちと一緒に飛ぶんだからね。しっかりしなよ!」

そう言い残し、キリエは部屋に戻っていた。だが、キリエも平静を装うも動揺していた。今後、私とユークの関係はどうなっていくのだろう。そんなことを考えながら自分の部屋に入って行く。

 

「ねぇ、ケイト。あの2人大丈夫なのですの?この任務が終わったら私たちどうしてあげたらいいのですの・・・」

部屋に戻ったと思っていたエンマがケイトを呼び止めて、ケイトは少し驚く。ケイトも若干頬が赤いか。

「ケイトには分からない・・・でも、ケイトが言えることは2人ともよき仲として今後も関係を続けていくことを願う。ケイトたちは後ろからキリエを援護・・・見守るだけ。」

 

部屋に戻っていたチカは相変わらずベッドにマロちゃんとそのお嫁さんを置いている。

「チト兄はそこんところ教えてくれなかったなぁ・・・」

横になったものの、眠気が来ないので図書館で借りていた本を読み始める。「レオナたちもいずれ、その時が来るのかなぁ・・・」

 

まだ夜明け前だが、飛行場の待機場には、戦争でも起きるのかというくらいの大量の飛行機で埋め尽くされている。キリエはそんな光景を横目に隼に乗り込もうとする。すると、ユークの零戦三二型がキリエたちの前をタキシングしていく。ユークはキリエの方を向いて、手を振る。何か言ったように見えたがよく分からず、頷いておいた。コートのポケットにはマリア、アンナから貰ったお守りがある。よくこのお守りを見ては手に持つようになった。無事に任務が終わって欲しいが、少し不安もある。そんな不安をよそに右手にはお守り、左手にはミニパンケーキである。チカはカレーうどんを食べてるし、ザラは機内にお酒を持って乗り込んでいった。いつも通り飛ぶだけ。数機の零戦が離陸する。ミホが零戦五二型に乗っている。シンヤが持つ予備機だ。シンヤはエンマやケイトにも五二型の特性について、熱弁していた時がある。それほどの愛機である。輸送用の飛行船が3隻離陸する。羽衣丸は周辺空域を飛行する。輸送用の機体は百式輸送機に百式重爆、零式双発輸送機、一式陸攻。護衛機にはカトウが乗る零戦二一型、ニニ型、五二型、隊長が乗る紫電、コトブキ飛行隊の一式戦1型や五式戦も見える。上空で編隊を組めば、オフコウヤマでイサオと戦ったあの時のことを思い出すほど壮観な光景であった。全機無事に離陸した。ヒノボリ飛行隊が先行しコトブキ飛行隊は飛行船の周りを囲む。それから180キロクーリル飛んだ所だろうか、飛行船から連絡が入る。

「大規模な編隊を確認!数はおよそ・・・70?いつもの5倍はいるぞ!こっちに真っ直ぐ向かってくる。敵だ!」

レオナが全員に伝える。

「敵は空賊ではない可能性がある。戦闘機を集中して攻撃するかもしれない。注意しろ!」

ヒノボリ飛行隊長に、カトウも追って全員に伝える。

「こいつはイケスカ戦以来の大空戦になるかもなぁ!腕が鳴るぜ。見敵必殺!!コトブキ飛行隊から教わったことをここで生かせ!!」

再度、レオナがコトブキ飛行隊に無線を合わせる。

「みんな、準備はいいか。相手は自由博愛連合機の可能性がある。最後の任務だが1番危険な時だろう。だが、輸送任務をしっかり果たすぞ。コトブキ飛行隊!一機入魂!!」

空戦が始まった。飛行船から対空機銃の弾幕を貼る。輸送機も負けてられない。だが、飛行船には目もくれず、護衛機ばかり狙ってくる。

「でりゃあっ!!野郎ども荒野に落として歩いて帰したるわ!!ミホ、アーク、ケイ、サトウ、行くぞっ!!コトブキのエンマさん!見ててくれっ!教えてもらった機動をっ!」

カトウが僚機と共に空戦を始める。呼ばれたエンマが応える。

「私は戦闘に集中いたしますわ。どうぞお気をつけて」

カトウが早速、飛燕を二機落とす。頼もしい戦力となる。敵機の3分の2は自由博愛連合のラウンデルを持つ疾風や五式戦であった。また、狼のリュウが乗っていたF6Fや、見たこともない飛行機も5機ほど飛んでいる。その中の1機が上方よりヒノボリ飛行隊機に突っ込んでくる。

「おいっなんだあの機体は!速いぞ!うっ!!」

ヒノボリ飛行隊の隼や零戦があっという間に4機ほど落とされた。

「飛燕のようだが違うのかっ!コトブキのケイトさん聞こえるか?あんた分かるだろ!?」

カトウのほかに数名がケイトに無線を入れる。ケイトは記憶を辿らせ、その機体の名を明らかにした。

「あれはユーハングの試作戦闘機、キ-88。イケスカ戦で交戦した自由博愛連合機が有したキ-64の拡大改良型。プロペラ軸に37mm機関砲、機首付近に20mm機関砲を搭載。低高度に誘い込めばケイトたちやヒノボリ飛行隊でも撃墜可能」

残りの4機は見当たらないが、取り敢えず目の前の敵を落とすまでである。すると、全員に飛行船から通信が入る。

「攻撃を受けているものの、大半の敵の目標は戦闘機だ!こちらは残りの護衛機でなんとかなる。」

対戦闘機戦に集中するだけ。乱戦となるものの、連携はなんとか取れている。キリエもチカやエンマ、そしてユーク、ミホ、他数機と共に敵を落としていく。隼で致命傷を与え、零戦の20mmでとどめを刺す。キリエも敵の四式戦を何とか落としたところだった

「キリエ手数ってやんのー」

「うっさい!バカチ!!相手が固いんだよ!」

「キリエ、チカ!後ろですわ!!」

エンマから無線で呼ばれる。後方上空を見ると逆ガル翼をした大きな戦闘機が向かってきて機銃が火を吹く。6門も見える。青っぽい塗装をしており、エンジン音も力強い。ユーハングの敵対勢力が生産した、F4Uである。重武装で注意がいる。

「なんだよーあれー!あんなの反則じゃん」

「手強そうですが落とすまでですわよ!」

機体は優速で追いつけない、味方機がバリバリ落とされる。

「私も援護するよ!」

キリエもエンマたちと共に向かおうとするが、今度はユークから無線が入る。

「キリエ!避けろっ!!」

F6Fが一撃離脱をしようとする。キリエは回避しようとしたが、数発の12.7mmを喰らう。だがあまり当たっていない。振り返るとボロボロになった三二型が見えた。キリエは理解できなかった。

 

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