キリエの気持ち   作:ユーユーリ

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ヒノボリ飛行隊とコトブキ飛行隊との護衛任務も最後となる キリエはユークのことで・・・


見つけてぶつける

「発煙筒の煙は見えないね・・・、ヒノボリの人たちはみんな装備してるらしいよ。チカたちの隼にも欲しい!」

チカはナツオ班長が持つ隼を借りてユークやヒノボリ飛行隊員の捜索をしている。空戦が酷く行われたアキラ山付近を、ケイトや捜索隊が乗っている赤とんぼ、イジツでは珍しい、ショウト自警団が持つ三式指揮連絡機が飛んでいる。生存者の報告もあれば死亡したとの報告も聞こえて来る。そんな中、チカとケイトはなんとしてもユークを見つけ出さなければならない。生きている希望を持つしかなかった。すると、捜索に加わっていたヒノボリ飛行隊機から通報が入る。

「こちら 猫の8 墜落したヒノボリ飛行隊機を確認!恐らくユーク機と思われる。コトブキ飛行隊のケイトさん、チカさん、あなた方が救助に向かえる最寄り機だ!こちらは既に負傷した味方を乗せている。座標をそちらに伝える。」

「了解した。送れ。」

この広い荒野で、墜落した味方搭乗員を探すのは苦労する。特に、今回は敵味方共に多くの戦闘機が落ちている。さらに、この時も敵がいつ襲ってくるか分からない。

 

ケイトが墜落した零戦を見つける。間違いない、翼が角ばった三二型でヒノボリ飛行隊のラウンデルに、ユーク機の塗装である。チカが不安げにケイトに伝える。

「ユークさん・・・大丈夫だよね?ケイト」

「機体の損傷がかなり激しそうだが、着陸して、機体を見てみなければ分からない。」

ケイトとチカが着陸し、ユーク機に向かう。機体の至る所が穴だらけであった。だが、コクピットはあまり被弾しておらず、風防も開いていた。中にはユークの姿は無く、機体周囲を捜索した。

「ねぇ!ケイト!!」

チカが叫ぶ。ユーク機の近くに大きな岩がある。ケイトがその後ろ側を見る。

そこには、ボロボロになったユークがいた。航空服が破れており、鍛えられた腕が覗く。ケイトがすぐに息を確かめようとする、すると、

「ゲホッゲホッ・・・うぅ・・・助けに来てくれた・・・あんたは、コトブキの・・・」

「大丈夫、ユークはまだ息がある、体は・・・足と腕以外外傷が見当たらない。呼吸器の異常が見られる。チカ、ユークに応急処置をした後、ケイトの機体に乗せる。」

「ユーク!!しっかりしてよ!チカたちが助けに来たんだよ!!ほら!!キリエも待ってるよ!!!」

チカが目一杯声をかける。するとユークの口元が緩んだように見えた。ユークが何か呟いたのだが、チカもケイトも聞き取れなかった。引き締まった体を見てチカは頬を赤らめながら、なんとか赤トンボに乗せて、すぐにショウトの飛行場に向かった。

「外傷は酷くない・・・。だが、呼吸器の異常が気になる。恐らく、発動機に被弾したことで、煙を大量に吸い込んだのだとケイトは思う。しかし、治療すれば、また飛行機に乗れる。」

 

捜索隊が飛行場に帰還しようとする時、もう朝になろうとしていた。生存者が多く幸いであったが、死者も8人ほどいた。敵の搭乗員も何人か見つけ、捕虜として自警団に引き渡した。ケイトが赤とんぼのコクピットから日の出を見る。「・・・・綺麗・・・!」

すると、太陽の方からレオナとザラ、エンマの隼に、ヒノボリ飛行隊機が数機、援護にやってきた。

「ユークが生きてんだろっ!!あああああっ!!!!」

カトウが泣き叫ぶ。エンマ、ザラ、レオナの声がケイトたちの無線に聞こえてくる。

「カトウさん、分かりましたから、少し声を抑えて頂けます?私たちも安心いたしましたわ。ケイト、チカ、ご無事で何よりですわ。」

「お疲れ様ね。良かったわ、生存者がいて・・・」

「よくやってくれた。ヒノボリ飛行隊機にショウト自警団、そしてケイト、チカ。仲間を見つけられてよかった。」

 

今のところは、後ろを振り返らず、前に飛んでこの輸送任務を終わらさなければならない。仲間の死を悼んでばかりでは、仲間の願いである、この大事な任務を完了させることができない。

 

あと少しでショウトの飛行場だ。レオナがカトウに尋ねる。

「昨日の戦いでかなりの戦力の低下が見込まれるが。万全なのか?」

「当たり前ぇぇだ!レオナさんっ!コトブキ飛行隊っ!頼もしい助っ人が今回から加わってくれるんだぜ!!そうだろ!?社長さん?」

カトウが自信気に興奮しながらレオナたちに伝える。レオナたちは首を傾げる。だが、唯一、ザラは社長という言葉で何となく予想がつき、口元が緩む。程なくして、無線から大音量の音楽が聞こえて来る。もう朝を迎え、太陽もしっかり空に出ている、その眩しい太陽の方から多くの真っ赤な隼3型に、彗星が飛んでくる。黄色い隼3型が先導する。

「おぅ!ザラじゃあねぇか!!隊長のレオナまで!!本日よりこのエリヰト興業、ショウトから積み込む絵画の護衛のため輸送任務に参加させて頂く!!よろしく頼むぞっ!!」

隼や彗星のエンジン音が爆音となって周りの音を消し去る。

「株式会社となってしばらく経つはずなのでございますが、その音楽は何とかならないのでございますの?」

エンマが文句を言う。

「あら?社長さん、また久し振りね。」

「今は一機でも飛行機が多い方が助かる。頼りになる」

「おーエリートの絵のおっさんじゃん!チカのウーミの絵も飾ってよ!」

トリヘイが答える。

「おぅ!こっちとしてもコトブキ飛行隊と仕事が一緒にできて光栄だぜっ!社員一丸となって、積荷を守るぞっ!!よしよし!ウーミの絵だな!わかっ・・・って誰がおっさんだぁっ!!トリヘイだっ!!」

 

ずっと真っ青な空を飛んでいた気がする。下には雲がちらほらある。横を見ると、ユークの零戦三二型が見えた。だがユークの顔はよく見えない。すると遠くに緑色の零戦が見える。主翼や胴体部分に何か塗りつぶした跡がある零戦三二型だった。私の知る零戦三二型・・・。サブジーの機体。ユークがサブジーの方へ飛んでいこうとする。

「待って!!ユーク!!!ねぇ!待ってよサブジー!!!ユーク!!!!どこに行っちゃうの!?」

すると、ユークの声が聞こえる。

「大丈夫、君のそばにいる。」

 

はっとキリエは目覚める。体中が汗だらけである。天井で気付く。羽衣丸の医務室だ。チカと追いかけっこして怪我した以来だ。横を見るとリリコさんがいた。

「リリコさん・・・私・・・」

「やっとお目覚めね。あなた、格納庫で倒れちゃって。レオナがあなたを抱えて連れてきたのよ?その後、レオナとザラにエンマがさっきまであなたに一晩中付きっきりだったのよ。私もあなたのことが心配だから今来たところなの。チカとケイトは生存者の捜索に行ったわ。そろそろ帰っ-」

「ねぇ?ユークは!?ユークは見つかったの!?」

キリエが必死に尋ねる。リリコは優しい笑みを浮かべて答える。

「大丈夫よ。ユークさん、生存者の中にいるわ。怪我が酷いみたいだけど生きてるって、さっき病院から容体が安定したって連絡がきたわ。」 

「ユーク・・・ユーク・・・。よかった、みんなに悪いなぁ・・・」

リリコが続ける。

「今日のところは、少し休んだ方がいいわ。輸送任務は明日に延期になったそうよ。」

廊下の方が騒がしい。マリアにアンナが医務室にやってくる。

「キリエ!良かった〜。目が覚めたのね。」

マリアが安堵した顔をする。

「私たち、操舵中も気が気じゃなかったの。あなたのことが心配で・・・倒れちゃうなんて聞いたことなかったから!でも目が覚めて良かったわ!」

いつものマリアとアンナの顔も見て、キリエも落ち着く。そして、キリエがお守りを2人に見せる。

「2人がくれたお守りのおかげだよっ。凄くいいこと・・あったし!ありがとね!」 

「良かったわ。」

「よかったよねぇー!あっ!アンナ!」

「あっ!そうだった!!ちょっと待ってね。」

するとアンナが操舵室まで急に戻って行った。マリアがキリエに向かってニコニコしながら口を開く。

「ねぇキリエ?あのお守りよかったでしょ?」

「うん、ちゃんと守ってくれたと思うよ!いいこともたくさん起きたしー♪」

「えっ!?そうなの!じゃあ、好きなひ・・・」

マリアが言おうとした言葉を封じるようにアンナがもの凄い速さで無線機を持ってきた。

「あっ!えっとね?ショウトの病院からキリエに!って。今繋がってるから・・・。マリアっ!帰るよ!!操舵室に!」

アンナが凄く顔を赤くして恥ずかしげに医務室を飛び出る。マリアも何かを察したのか、

「じゃあね?キリエ!よかったね!」

と言い残し、2人とも足早に操舵室に戻る。すると、リリコも気づいたのか、

「じゃあ、私も食事の用意をしてくるわね。お大事に。」

医務室には、キリエと無線機だけが取り残された。無線機からの呼びかけに応じる。

「コトブキ飛行隊のキリエです・・・あのぉ、どちら・・って!ユーク!?」

キリエはガバッとベッドを起き上がる。

 

「怪我は無かったか?こっちはだ-」

「もうっ!何やってんのさ!!ユークが私との間に入らなくても!あんな攻撃避けれたよっ!!・・・・いきなり入り込んで!そんなの・・連携って言えないよ!自分の飛行機といの-」

「それほどキリエのことを守りたかったんだ!!いくらコトブキにいるとはいえ、あの攻撃を避けるなんて!神業だよ!!あの状況で、ああするしかなかったんだ・・・、ごめん、心配かけて。俺がキリエと連携取れなかったのが悪い。俺は、一緒に飛んで・・いいだろうか。」

「もうっ・・・バカじゃないの・・・?ユークが難しかったら私がユークが飛びやすいように飛ぶからっ!もっと、冷静になってよ・・・・」

「・・・悪い」

「・・・・ありがとう・・」

お互いに感情をぶつける。お互いが心の中で思っていたことを、この短時間で出し合った。視界が涙で見えにくい。キリエが続ける。

「ねぇ、怪我の方は大丈夫なの?」

「3日ほど入院らしい。途中から輸送任務に参加できるが。俺のゼロが無くなっちまった。」

「無理しないでね?助かってよかった。じゃあ、ゆっくりしてねっ!」

「キリエもな・・・」

無線を切る。ふぅと溜息をつく。ユークが生きててよかったと心の底から思った。コトブキのみんなと飛んだ後、またみんなで集まることができてよかったと思う時と同じ感情だ。またゆっくり寝ようとした時、聞き慣れた声が耳を貫く。

 

「キリエー!大丈夫!?このチカ様とケイトがユークを見つけてあげたからねっ!!感謝してよね!キリエがぶっ倒れるなんて聞いたことないよ。パンケーキ食べ過ぎても体重が重くて転けないのに。」

「うっ・・・うっさい!バカチ!!・・・・・ありがとう」

チカがニッと笑う。ケイト、エンマ、ザラにレオナが続ける。

「キリエ、疲れが取れているようでケイトは安心・・・。輸送任務は明日に延期。本日はケイトたちもしっかり休む。キリエ、適切な食事を採っていないはず、しっかり食べて栄養を摂取すべき。」

「まぁ、キリエ!目覚めたのね。私、安心致しましたわ。今日はみんなでゆっくり休みますわよ。私も、腰が痛いですわ。」

「よかったわ〜キリエがちゃんと起きて。ずっと起きないんじゃないかと思ったわ。あなた、お腹空いたでしょ?私がパンケーキ作るわ♪」

「ユーク?って誰だ?まぁいい。キリエ・・・大丈夫か?ひとまず、体を休めて、明日に備えよう。」

キリエが目に涙を浮かべる。

「みんな・・・ごめんねっ!ありがとう!」

 

つづく

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