マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート10 バイバイ、また明日 後編

 なんで、こうなっちゃったんだろう。

 

 失踪事件から不審者騒ぎが続いて団地の雰囲気が変だった。それだけでも嫌だったんだ。

 不審者が保護されてやっと元に戻れるかと思ったら、今度はれいらとせいかが喧嘩しちゃった。

 

 それだけじゃない。ついさっきお母さんから言われたんだ。……ここ最近物騒だから私のために引っ越すんだって。

 

 嫌だ。嫌だよ。団地から離れて学校も変わっちゃって二人に会えなくなるなんて絶対に嫌だ。

 せいかは隠し事があって怒っちゃって、れいらはそれが原因で悲しい顔をして、私は……こんな、なにもかもが離れ離れになるなんて……。

 

 部屋で泣いてた私にはなにもできなかった。二人には話さないといけないのに、そんな気もおきなくて。

 

「やあ相野みと。悩みがあるんだろう? ボクの名前はキュゥべえ。ボクと契約して魔法少女になってよ!」

 

 そんな状況だったから、私の前に現れた白い生き物の言うことを嬉しく感じた。

 『魔法少女』になれば全部解決できる。嫌なことを全部無くしちゃえる。今まで通りに戻れるって教えてくれた。

 まるでおとぎ話みたいで、すごいなって思った。

 

 

 

 だから、裏があるんじゃないかって思ったんだ。

 

「どうかしたのかい?」

「ちょっと気になることがあって。魔法少女になるってことは普通の人じゃなくなっちゃうんじゃないの?」

「そうだね。魔女と戦うことになる以上普通の生活では――」

「そうじゃなくて、身体の話だよー」

「……魔法少女は契約するとその魂をソウルジェムという宝石に移し変える。こっちが本体になるから人間の認識上普通ではないかもね。ボクは合理的だと思うんだけど理解してくれる子は少ないんだ」

 

 ……だよね、なんにもないはずないよ。怪しいなーって思ったんだ。二人によく言われたもん、怪しい大人に騙されないように気をつけてって。

 

「でも、こうは思わないかい? れいらとせいかも魔法少女なんだ。二人と同じになれて一緒にいられるんだ。二人だけじゃ危険な相手もキミがいれば安全になるかもしれない」

 

 多分契約させたいんだろうな、というのはわかったんだ。でも、私は二人も魔法少女ってことに驚いて、いつ魔法少女になったのって聞くのを優先した。そうしたらせいかはちょっと前、れいらは昨日って答えてくれた。

 そこまで知ったらまた知りたいことが増えて、それを聞いちゃったんだ。

 

「ねえ、二人はどんなことを願って契約したの?」

「れいらは『せいかと元通りになりたい』。せいかは『れいらを生き返らせて』だよ」

 

 れいらのはわかる。私だってそういうことが思い浮かんだもん。でも、せいかのって……。

 

「伊吹れいらは魔女に操られて屋上から飛び降りた。桑水せいかは偶然その現場に居合わせて願ったんだ」

 

 言葉が出なかった。れいらに起きたことにも、せいかがそんなことを願ったなんてことにも。

 だって、それって、れいらは一度死んじゃってるってことで。偶然そこにいなかったら、キュゥべえと出会ってなかったら、今こうやって悩むことすらできなくて。

 頭がぐるぐる回る。自分でもなにを考えてるのかよくわからない。ただ、恐ろしいなにかが私を包んでた。

 

「……気持ちが落ち着いたらまた来るよ。焦らなくていいからね」

「待って!」

 

 涙を抑えて私は叫んだ。

 なんとなくだけどわかるんだ。もう時間がないって。二人をこのままにしておいたらいけないって。

 

 せいかが隠してたのって、やっぱり魔法少女のことだと思う。でも隠し事は私にもあるんだ。

 

 れいらが言ってた。商店街でもう一人の不審者を見たって。

 ……ほんとはね、噂通りの人に見られてたって知ってたんだ。うっかりしてたのか私が振り返っても気づいてなかった。でも言えなかったんだ。団地全体が変な空気なのに、そんなこと言ったら二人を心配させちゃうって。

 

 きっとせいかも同じなんだと思う。人見知りで、知らない人の前だとすごい怒ってるみたいに思われたり怖がられたりするけど優しいんだ。私たちにどうしても知られたくなかったんだよね。危険なあっちの世界を。

 

 れいらもそう。誰よりも他の人を気遣うとっても優しい友達。このままでいたら私が深入りしないように止めたと思う。……ごめんね、でも、私はこれ以上二人と離れたくないから。

 

「キミの願いはなんだい? 引っ越しを取り消すことも三人の仲を戻すこともできる。それどころか両方解決することもできるよ。なんだって叶うんだ」

 

 三人の仲を戻しても引っ越しは? 取り消しを願っても二人との関係は? 両方を選んでも……それって、ほんとに正しいのかな? 

 二人はお互いのことをそれぞれ願ってた。だったら私のためだけじゃなく、みんなのために。こんな悲しいすれ違いをなくすために。

 

「……そのどれでもないよ。キュゥべえ、私が願うのは――」

 

 

 

 

 

 願ったそのあと、少ししてからキュゥべえに呼ばれた私は屋上に続く階段を駆け上がってた。れいらとせいかが言い合いをしているって教えてくれたんだ。

 

「……れいら? ……まさか、関わらないでって言ったのに……! あなたがれいらを!」

「ち、違うよせいか! 私は……」

 

 屋上では二人と……給水塔の上に肩にキュゥべえを乗せたあの不審者の人がいた。みんな格好が独特で、魔法少女なんだってすぐにわかった。

 

「れいら、せいか……」

「みと!? どうして……」

「ボクが呼んだんだ。それが彼女の望みだったからね」

「キュゥべえと話したの? じゃあ……」

 

 私は全部話した。魔法少女になったこと。魔女のことも魔法少女のことも聞いたって。怪しいと思ったことも、ソウルジェムがどんなものかも知ってるって。

 でも、迂闊だったんだ。ソウルジェムのことを二人は知らなかった。れいらは立ち尽くして、せいかはキュゥべえと不審者の人を問い詰めた。

 

「人間は脆い。頭や首はもちろん手足一本だって損傷したら活動できなくなってしまう。その点、ソウルジェムだけを守ればいいのだから合理的じゃないかい?」

「キュゥべえ! そんなこと教えてくれなかったでしょ!?」

「聞かれなかったからね」

「……知ってたら、知ってたら絶対に止めたのに……! ごめん……れいら……みと、こんな、ことに……」

 

 泣き崩れたせいかに一番最初に近寄ったのは不審者の人。せいかの右頬に手を当てて、涙を拭っているようにも見えた。

 

 怒った顔、悲しむ顔。こんな表情、見たくなかった。二人には笑顔でいて欲しかった。

 そう思ったら、覚悟したはずなのにまた少し涙が流れた。

 

 ダメだ。

 今止めないと、きっと大変なことになる。

 泣いてる場合じゃない。こんな悲しいことを止めるために私は魔法少女になったんだから。

 

「それは違うよ。せいかだけなら良かった、なんて私は思わない。そのほうが苦しいよ」

「みと……うん、私も凄くショックだけど……こんな世界にせいかを一人にしておけないから魔法少女になったの」

「……それじゃ私が与えられてばかりだよ。出会った時からずっと……」

 

 やっぱりそうだよ。みんなお互いのことを思ってるんだ。それを伝えるのがちょっと難しかっただけなんだよね。

 だから私は二人の手を掴む。右手でれいらを、左手でせいかを。二人が不思議そうな顔で見るけど、これが私の願いだから。

 

「私が願ったのはね、『心を繋げる力』。さあ二人とも! 行くよ!」

 

 

 手を繋いだまま意識が心に沈んでいく。

 

 見えたのは団地の公園。私たちが出会って、遊んだあの場所。そこに二人はいた。

 私には同時に見えるけど、今二人は互いの心の中で私と一緒に本心と話してるんだ。あれ? ということは私が二人? でもそれを見てる私もいるから三人? 魔法って難しい。

 

 

 せいかの本心は言った。団地に引っ越してきてからひとりぼっちで不安だったって。それを私とれいらが救ってくれたから、自分がどうなろうと契約するのに迷いはなかったって。そこまで私たちのことを思ってくれてたんだ。

 

 れいらの本心は言った。せいかが悩んでいないか事件に巻き込まれてないか心配だったって。力になりたい、元の関係に戻りたいって思って願ったけど、もっと向き合うべきだったって反省してた。

 ……ううん、せいかも言ったけど、私ももっと早くに向きあえれば良かったんだ。れいらは優しいから、助けたいけど傷つけちゃいけないって思って願ったんだね。私はそれを『逃避』とは思わないよ。

 

 ね、二人とも。私たちはずっと互いのことを思ってたんだよ。私もこれで気づけた。ほんとはこうして繋げなくとも繋がってるんだ。

 

 視界がだんだんと元の屋上に戻っていく。もうそのときには二人の顔は私のよく知る表情になってた。

 

 起きたことはショックだよ。知って契約した私もそうだもん。でも私たちは一人じゃないんだ。だから大丈夫。みんなでこの運命を背負えるんだから。

 ちょっと恥ずかしかったけど、互いに抱きしめあった私たちはそれをわかったんだ。

 

「……いいかしら」

 

 あっ、そうだった! ここにはもう一人、あの不審者の人がいたんだ。キュゥべえはどこかにいっちゃったみたいだけど……。

 

 話してみてわかったんだけど、その人は帆秋くれはさん。れいらはキュゥべえに聞いて知ってたみたいだけど、この団地の魔女を調査しに来たみたい。

 

「……みと。私ね、まだこの人のことが信じきれないの。だからさっきのをもう一回やってくれない?」

「そうだね。みと、私からもお願い。くれはさんともやってみようよ」

 

 せいかの言うことももっともで、連日私たちを見てたのは間違いないから一応ってことで私はもう一度心を繋げた。

 

 そうして見えたのはどこかのファミレスだった。知らない人たちと団地のことを話してて……そっか、私たちのことを心配して見ていてくれたんだ。途中でせいかを助けてくれたり、この団地の魔女を倒そうと動いてくれてたんだね。……でも、尾行はやっぱり不審者だと思うなぁ。

 とにかく、これで二人もくれはさんのことを信じられるはず。二人を見ると納得半分呆れ半分みたいな顔でその記憶を見てた。

 

 心を繋げるのは二度目だからちょっと余裕がある。他の人はわからないみたいだけど、私には色んな光がまたたく心の中を見渡せる。でも一部分、団地のイメージの近くかな。そこが黒い霧みたいなので包まれてた。よくわからないけど、人の心って不思議だな。

 

 戻った私たちはくれはさんの記憶で聞いた話をもう一度確認した。引っかかったのは団地の魔法少女のこと。最初はせいかのことだと思ったんだけど、これまで他の魔法少女には会ったことがないみたいだし、くれはさんの記憶の中にいた人のことも知らないって。

 

「この話はここまでにして、今は魔女を倒すことを考えましょう」

 

 このまま考えても仕方ないからってくれはさんが言ったのは、明日から本格的に退治するってこと。そう聞いて私たちも協力を決めた。戦ったことなんてないし弱いのはわかってるけど、この団地のことなら私たちが解決したい。

 

 ……それに、そんな魔女を残して引っ越すなんてできないよ。

 

「え、今引っ越すって……」

 

 せいかの言葉にハッとした。思わず声に出てたみたい。言うタイミングがなくて言えなかったけど、私はそれを伝えた。二人は悲しい顔をしたけど、心の中を見たからかいくらかは落ち着いていた。……良かった。

 

「……そっか、引っ越しちゃうんだ」

「うん……言えなくてごめんね。……寂しいけど、悲しいけど、だからこそ笑顔でいたいな。魔女を倒してさ、パーっと見送って!」

 

 でもやっぱり悲しくて、また泣きそうだったけど堪えた。二人もそうだった。

 三人でもう一度手を繋いで決めた。絶対、魔女を倒すって。

 

 

 

 

 

 次の日、魔女退治の待ち合わせ場所で待っていたのは、くれはさんと大東学院の制服を着た女の子だった。

 

「はじめまして! あ、もう会ってたかな……? 眞尾ひみかです! 途中でこの人を見かけたので付いてきました!」

「ひみか、家族のことがあるでしょう。無理についてこなくていいのよ」

「今家にこのはさんたちが来てるんで大丈夫です。連絡も入れました」

「……手際が良いわね」

「慣れてきましたから!」

 

 魔法少女って本当に他にもいるんだ! 一緒に戦ってくれる人が増えて心強いけど、せいかは大丈夫かな。なんて思ってそっちを見ると、やっぱり物凄く怒ったような表情をしていた。

 

「あれ、そういえばくれはさんとは普通に話してたよね?」

「そ、そそ、それは、余裕がな、ななな、なかった、か、から……」

「大丈夫ですか? なんかすごい顔になってますけど」

 

 本当に人見知りで、緊張するとこうなっちゃう。でも、それが私のよく知ってるいつものせいかだからそれでいいんだ。ね、せいか。

 

 

 それでさっそく行動! 記憶でも見たけど、くれはさんは失踪事件のことを調べていた。今ならその謎の事件が魔女の仕業だってわかる。だから私たちは事件が起きた12号棟の515号室に向かったんだ。

 

 特になにもないように見えたけど、くれはさんが小さなバツの落書きを見つけたときから異変が起きた。バツがどんどん増えていったかと思ったら私たちは商店街にいたんだ!

 

「これ、結界ですかねぇ。変なところとかありますか?」

「うーん……特にない? 二人はどう?」

 

 首をぶんぶんと横に振るせいかと同じで、私も変なとこは見つけられなかった。でもれいらがくれはさんと遭遇したってところを探すとまたバツ印。今度は屋上に飛ばされちゃった。

 もう夜になっちゃったから、屋上から見える景色はわかりにくいけど……ここ、多分12号棟だ。

 

「またバツを探せってことなんでしょうけど……あの貯水塔なんて怪しくないですか? ちょっと見てきますね!」

「止まりなさい。関係ないわ。あれは関係ない」

「魔法使ってまで止めます……?」

 

 ここが12号棟ならすぐ下は……あった!

 

「みんな! 下の公園におっきなバツ印がある! って、うわ、うわわ!」

 

 今度はそれに引き込まれるみたいに吸い寄せられた。

 気づいたらそこは元の場所、12号棟の廊下だった。でもなにかおかしい。部屋が……一つ多い。15号室までしかないはずなのに、『516号室』がある。

 ちょっと怖かったけど、すごく自然に入っていくくれはさんに続く。そこでソウルジェムが急に反応して、見つけたのはなんだかうにゃ~ってしたものだった。

 

「あったわね」

「あれが結界……せいか、知ってる?」

「ここまで強い反応があるのはみたことない……」

 

 変身していざ! って行こうとしたら止められた。その前に作戦タイムだって。でも難しいことはなくて、私たち三人が固まって動いていればいいみたい。

 そうと決まって、三人で顔を見合わせて頷いた。

 

「『俺たちが力を合わせればどんな壁でも乗り越えられる!』」

「ど、どうしたのせいか……」

「……好きな青春ドラマのセリフ! 勝とう!」

 

 それで初めて入った結界の中は、なんというか芸術的だった。椅子と机が積み重なってたり貯水タンクがひたすら並んでたり空に向かって手が伸びてたり……不気味。

 

 変身した私の手には大きな弓。使ったことなんてないけど、適当にやってみたら撃てた。魔法ってすごい。れいらは炎が出る剣、せいかは水を操れる鞭を使って近づいてくる使い魔を倒してくれている。

 

 でも、私たちが相手してる使い魔よりもやっぱり魔女って強いんだ。明らかに雰囲気が違うし、攻撃が派手。貯水タンクに乗ったくれはさんがフックをすっごく警戒してる。今もギリギリで当たりそうだった。

 

 ……あれ? 貯水タンク? ピカーンって閃いて、それを撃ってみると現実と同じように水が流れ出てきた。せいかが言ってた。魔法少女がそれぞれ持ってる固有魔法っていうので水がある場所にワープできるんだって。

 

「せいか! 跳べる!?」

「う、うん! 多分!」

 

 視界が切り替わる。正面を見てた魔女の背中が見える。だったらどんどん貯水タンクを壊せば!

 魔女から攻撃を受けないようにせいかが何度も位置を変えて、れいらが近づいてきた使い魔を倒してる間に私が魔女を弓で狙う。協力するってこういうことだよね!

 

「こっちこっちー! 行かせないよ!」

 

 それでも魔女が来そうになったときはひみかさんがお金を撃って注意をそらしてくれる。そんな固有魔法もあるんだ!

 

 私たちが援護をしている間、くれはさんは目で追えない勢いで魔女を斬り続けてた。吹き飛んだガレキが時折なぜか止まって、それを足場にして魔女の周囲を転々としてる姿はカッコいい。

 

 私も負けてられない。弓に全力の力を込めて放つ。そうしたら当たった場所からイバラが飛び出て魔女を覆い尽くしちゃった。

 それで結界が崩れ始めて、気づいたら『516号室』のない普通の団地に戻ってた。……これって、つまり!

 

「勝った……勝ったんだよ! せいか! みと!」

「やったー!」

「良かった、これで……!」

 

 喜ぶ私たちを見るくれはさんとひみかさんの目は優しかった。二人にもありがとうを伝えないと。この団地を守ってくれてありがとうって!

 

 

 

 

 

 

 それからちょっと後のこと。今日は二人と待ち合わせ。……魔法少女としてね。

 見慣れない道はまだ迷うこともあるけれど、きっとそのうちいつも通りの道になる。

 

 ちゃんと辿り着けて、揃ったしさあ行こう! ってとき。私たちに声をかける人がいた。

 

「そこの三人! 何者なのさ!」

 

 はじめに来たのは全体的に赤くて眼帯をしてる女の子。私よりも小さいかな?

 一緒に現れた背の高い黄色い人に、しっかりしてそうな青い人を見てわかった。この人たち、私たちと同じように魔法少女でチームを組んでるんだって。

 

「くれはさんは『他の魔法少女と協力しなさい』って言ってたけど……」

「……くれは? それ、ひょっとして帆秋くれは?」

「ご存知なんですか? クールでカッコいい人ですよね」

「えっ」

「でもちょっと変な感じの……」

「くれはね。南凪の制服だったでしょ?」

 

 あの人のイメージは大体みんな同じなんだなーって思った。でもそこで判断されるんだ……。

 共通の知り合いがいたことで仲良くなった私たちは自己紹介をしようとしたけど、赤くて小さい子が叫んだ。

 

「あー! きっとひみかが言ってた三人だよ!」

 

 そういえばひみかさんとの話で『このはさん』って名前が出てた。聞いてみるとやっぱりそうで、時々ひみかさんの家に行ってたりするらしい。意外と近くに魔法少女っているんだね!

 

「く、くみくみくみ……」

「桑水せいかって言おうとしてるんだと思います!」

 

 せいかは相変わらずだったけど、自己紹介もした私たちはくれはさんについて話した。尾行されてたことを話したらやっぱりって感じで呆れられたり、あの人が壊滅的に料理ができないことを聞いて驚いたり。

 

「ねえ、アタシみたいな髪の人いなかった?」

「くれはさんとひみかさんだけでしたよ?」

「……それじゃ勘違いもされるわ。観鳥さんがいないと、ね」

 

 その観鳥さんって人も、そのうち会えるかな?

 

 

 

 

 このはさんたち三人と魔女退治をした後。私たちはあの頃のように一緒に帰ってた。

 

「今日はびっくりしたねー。いきなり魔法少女の知り合いが三人も増えちゃった!」

「うん。くれはさんの知り合いだったし……」

 

 こうしてると団地にいた頃が懐かしい。

 ……でも、そろそろ分かれ道。私は二人と別の道を行かないと。

 

「私ね、こっちなんだ」

「あ……うん……そうだよね」

「みと……」

 

 引っ越しちゃったけど同じ神浜にいるんだ。魔法少女としてこうやって会えるし、思ってたよりは寂しくない。だって繋がってるもん。

 

 だから私は言うよ。今まで通りに。

 

「バイバイ、また明日!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みとちゃんを魔法少女にするRTA、はーじまーるよー。

 

 

 前回無理やりひみかちゃんに連れ去られましたが、懲りずにまた団地に来ました。

 不審者扱いされていましたがなんででしょうね?(すっとぼけ)。まあ、帆秋ちゃんの説得力を見せつけてやったので大丈夫だと思います。

 

 次の行動ですが、白いアイツかられいらが魔法少女になったと聞いたのでもう尾行する必要はありません。動向を確認しつつ、危ない場面では白タヌキに動いてもらいましょう。その間に自分は魔女戦の準備をします。

 

 

 まず団地さぁ、12号棟の屋上に給水塔あんだけど……壊してかない? これのせいでリセットする危険性があるので今のうちに対応します。壊すのが手っ取り早いです。

 

「くれは。伝えたいことがある」

 

 おうなんだ白タヌキ用事か? あと帆秋ちゃんの肩乗んな。

 

「れいらとせいかが言い合いをしているよ。棟は分からないけど屋上だ」

 

 展開早い……展開早くない? いい感じに加速してます。幸い屋上にいるので変身して跳んで行きましょう。

 

 想定していない加速で嬉しいのですが、こうも急に来るとは……やっぱり、多感な時期の少女の行動の把握って難しいんやなって……。キュゥべえ、なんかお前の苦労がわかったような気がするよ。

 

「みとなら呼んであるからすぐに来るよ。彼女は契約するのに少し手間取った。キミが団地に来てくれて助かったよ」

 

 いややっぱこの白タヌキのことはわからねぇわ。お前には人の心ってものが……は? 契約?

 やべぇ、契約しちゃった(冷静)。こ、こ、これ事故だよな? なあ事故だろ? 事故ってことにしてくれよ。

 

 いくらなんでも早すぎますね。間を二つか三つぐらいすっ飛ばしてます。まるでRTAみたいだぁ……変な願いで契約してたらリセットやぞ……。うまくいけば区間新記録ですが速度より安定を取りたいってそれ一番言われてるから(走者の屑)。

 

 

 そんなこと言ってたら二人のところに着きました。

 タイミング的にれいらが魔法少女になったことをせいかに伝えたのが今の原因でしょう。ここにみとちゃんまで来るとか、ちょっとせいかのソウルジェムがマズいかもしれません。一応目を離さないようにしておきましょう。

 

「あの人……!」

「……れいら? ……まさか、関わらないでって言ったのに……! あなたがれいらを!」

「ち、違うよせいか! 私は……!」

 

 違います! コイツが、白いコイツが勝手にやったんです! でも信じてもらえないので信頼度が下がります。

 

「れいら、せいか……」

 

 やべえよ……やべえよ……どうする? みとちゃん来ちゃったよ……。

 魔法少女になったみとちゃんが来るのはいいんですが、あまりにもタイミングが悪すぎます。今その経緯を話してくれてますが……ウッソだろお前!? 

 みとちゃんが早すぎてソウルジェムがなんなのか最初に知っちゃってるじゃないか……。友達二人が魔法少女になったばっかりでその追い打ちはお前……こ、これも、事故だよな? 心配なのでグリーフシードをスタンバイしておきます。

 

「人間は脆い。頭や首はもちろん手足一本だって損傷したら活動できなくなってしまう。その点、ソウルジェムだけを守ればいいのだから合理的じゃないかい?」

 

 ヤメロォ!(本音) ヤメロォ!(本音) いきなり何言いだしてんだこの白タヌキが! 巻き込まれて帆秋ちゃんとの信頼度が壊れる~! あぁ(信頼度が)落ちたねぇ、落ちましたね……。

 

「……知ってたら、知ってたら絶対に止めたのに……! ごめん……れいら……みと、こんな、ことに……」

 

 どんどん状況が悪くなりますねーこんなに話が重くなるだなんて思わなかったぁ。バキィッ!!(三人の関係の破損音)。

 というかいい加減グリーフシードを使っておきましょう。せいかの変身時のソウルジェムの位置は右耳に付いてるイヤリングです。この位置もなかなか……怖いねんな。

 

「……なんで」

 

 なんでもなにも見てくださいよ帆秋ちゃんのこの顔! 悪いことできる顔じゃないでしょこれ!

 浄化したからか少し落ち着いたみたいですね。おう白タヌキお前のせい……逃げやがったな! もう許せるぞおい! もう許さねぇからな?

 

 なんか話してるので邪魔をしないように下がります。(リセットまであと)120(秒)ぐらいじゃないすか?

 助けて! みとちゃん助けて! そうその『心を繋げる力』で……ん? 勝ったな(掌クルクル)。(区間新記録が出て)笑っちゃうんすよね。みとちゃん! 好きっス!

 

 三人が手を繋いでいますが、今使われてる固有魔法はみとちゃんの願いそのものです。まるで主人公みたいだぁ……(直喩)。

 これは性質としては『読心』に近いものです。しかし、精神空間にダイブして直接記憶を見ることができるどころか本心を共有できる超有能固有魔法です。ちなみにキュゥべえに使うと心の中は真っ暗でなにも見えません。やっぱ感情がないヤツはダメだな!

 

 早速その恩恵にあやかればあら不思議、簡単に仲直りができちゃうんです!

 ここまでに信頼度がいくら下がろうが、最初からせいかを心配していたという動きをしていれば納得してくれて信頼度が回復します。間違えても白タヌキに魔法少女を増やしたいだなんて言ってはいけません。ここでバレます。

 アイツには『この団地にいる魔法少女が気になる』ことと『魔法少女がいるはずなのにまだ魔女がいるなら相当手強いだろうから情報を集めたい』としか言ってません。契約はアイツが勝手にやったことです濡れ衣です。

 

 ここまで来ればクリアしたも同然ですね。すぐに魔女を倒すことを提案して先に進めます。

 

 

 

 

 

 おはよーございまーす!(夕方)

 

 そんなわけで団地にいますがなぜかひみかちゃんが付いてきました。元々都合が合えば呼ぶつもりだったのでまあいいんですが……。

 

 ちなみに呼ぶ理由は魔女戦で団地組を守る役が必要だったからです。時間をかけていいなら使い魔戦を繰り返して経験を積ませますが、今回のようにまったく育ってない三人ではやられる可能性があります(2敗)。

 

 

 それではここから『12号棟516号室』の捜索パートになります。本来は操られていたれいらの記憶を見てから行く場所ですが直行します。団地組の閃き具合では最悪ノーヒントになって数日かかるか失敗する捜索ですが、最初から知っていれば関係ありません。

 

 まず最初の探索時に見つけておいた12号棟5階のバツ印に向かいます。すると商店街に飛ばされるので、せいかが不審者を発見した位置にあるバツ印を見つけます。

 今度は屋上に飛ばされますが、貯水塔にある明らさまな大きなバツ印は罠です。それを調べると失敗になります。なので先に壊して……ないですね。なにやってんだこいつ……(自問自答)。全力で目を逸らさせましょう。誰かが調べてもアウトです。

 なお正解は下に見える公園にある大きなバツ印です。12号棟に戻されますが、516号室が出現しています。

 

 おじゃましまーす! 魔女退治の時間だオラァ! 

 ここは確実にあの憎っくき『屋上の魔女』です。また君か、(体力が)壊れるなぁ……。

 

 団地組ですが、今はまだまだ本来の動きをしてくれないので解説しません。

 ですがこの三人のポテンシャルはかなり高いです。同じ三人組でもアザレア組がありますが、元からステータスが高くてソロでも強いアザレア組か、伸び代とサポート能力の高い団地組かって感じですね。

 

 代わりにひみかちゃんについて。『眞尾 ひみか』は巨大なマジックハンドのような武器を使う近距離系魔法少女です。手の部分を燃やしてそれで殴ったり、ロケットパンチも出来ます。固有魔法の『コイン弾』には対象の注意をそらせる効果があるので、今回のように守る対象がいる場合に便利ですね。……普通だな! 衣装が過激な反動でしょうか。

 

 一応団地組を簡単に言いますと、れいらが近接、せいかが水経由のワープ持ち、みとちゃんが遠距離です。

 

 

 なので戦法としては、ひみかちゃんには万が一にも団地組がやられないように『コイン弾』で魔女がそっちに向かわないようにしてもらいます。

 幸いここには忌々しいあの貯水タンクがあるので、壊せばせいかの水ワープが使えるようになります。これで位置を転々としてもらいつつ、接近してきた使い魔はれいら、魔女本体へはみとちゃんに遠距離から攻撃してもらいましょう。

 帆秋ちゃんは難しいことを考えずに斬るだけです。ひみかちゃんが誘導に失敗したときだけ『停止』でサポートします。

 

 しかし貯水タンク……フック……なんか嫌な組み合わせですねぇ(詠唱開始)。今回は団地組がいるし、小学校とはえらい違いだ。ああ、団地の戦力は軒並みここに回してんのかもな。ま、もうそんな――あっぶぇ! 遊んでる場合じゃありません。三人を戦わせてはいますが戦力として期待できないので帆秋ちゃんとひみかちゃんが頑張るしかないんじゃ!

 

 さすがに二度も死にかけるなんてことはしません。あれから帆秋ちゃんの攻撃力は進化を遂げています。ざっくり斬るだけでかなり魔女の体力を減らせます。

 あとは慌てず騒がず落ち着いて、ご注目……いきますよ! これ(カトラス)、上下に動かすだけ! ただただひたすら魔女がホラホラ! 千切りになってしまうんです!

 

 勝ちました。トドメを刺せませんでしたね、ええ(不満)。

 これで団地イベントは成功です。もう用はないので帰りましょう。

 

 

 おうどうしたれいら!

 

「……ここに住んでた家族の人たち、魔女のせいで失踪しちゃったんだよね」

 

 この場の人は誰も気づいていませんが、失踪した子はおそらく魔法少女でしたね。……あっ(察し)。(魔法少女の命は)は、儚いです。

 

 

 ちなみに転校の話ですが、一定時期を過ぎると年齢やら学年やらが止まるのと同様で余計な干渉をしない限りは第一部の間に転校の日は来ません。長引かせるとクリスマスが何回も来るぞ良かったなみとちゃん!

 

 それと団地組はこれから連れ回す機会が多いので彼女らの信頼度をガンガン上げていきましょう。お前らはもう帆秋ちゃんの交友関係から出られないんだよ! 仲良しになるまでやるからなぁ?

 

 

 絶賛帰宅中ですが、そういえばあの白いヤツ途中でどっか行きましたね。もうそろそろ見納めなので一発お礼でもしてやろうかと思ってたんですが……まあ構うだけロスですね。

 

「今回は助かったよ。おかげでスムーズに事が進んだ。やっぱり人間の感情は人間が一番よくわかるよ。ボクたちではどうにも理解し難いところがあるからね」

 

 白タヌキを無視しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 




■今回の内容
 『バイバイ、また明日 ~神浜大東団地の記憶~』

■相野 みと
 主人公系魔法少女。クローバー担当のアーチャー。GN対話空間を作れる。
 唐突にボディブローを決めるかのごとく正解を選ぶ。

■アイツ
 不審者コンボで迅速に新規契約が増えたのでご満悦。地味に加速させている走者の味方。
 しかしそろそろ追い出される。

■団地組
 ほう三人パーティですか……たいしたものですね。
 役割を分担したチームは魔女退治の効率が極めて高いらしく、調整屋で勧誘する魔法少女もいるぐらいです。それにワープ能力と回復能力。これも魔女退治で有力です。しかもみとちゃんまでそえてメンタルバランスもいい。
 それにしても、初戦だというのにあれだけ協力できるのは超人的な友達力というほかはない……。

■帆秋ちゃん
 最近は南凪の不審者で通じるようになった。
 みゃーこ先輩と観鳥さんの胃にダメージ。


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