マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
今日も別の学校に乗り込むRTA、はーじまーるよー。
前回は無事モカちゃんに出会えたのでさっそく利用してやりましょう。
そのためにまずは南凪から飛び出します(物理)。ひらけー窓!
「ちょっと待て! お前さん飛び降りなんざやめ――おっと、くれはか……いやどちらにせよダメだ! 早まるな!」
ちーがーいーまーすー!
デスルーラするときしかHPゼロにするような真似はしません! なんとか言ってやってくださいよ信頼度上げのために呼んだ真里愛さん!
「そうねぇ、くれはちゃんはむしろ止める側だと思うわ。でも危ない真似はしちゃいけません。一緒に階段で降りましょう?」
真里愛さんの優しさを感じるんでしたよね?
しかし階段から降りるなどと愚の骨頂。走者は窓から落ちるもの……フワーッ!
「くっ……くれはー!」
「あらあらあらあら」
浮遊感与えちゃったかな。
くれはちゃんはいつも通り地面に落下。少々ダメージを受けようが圧倒的に早いのでこのまま向かいましょう。真里愛さんは後からついてきてくれよな!
◇
やってきました栄総合学園。
芸術方面に強いだけあって、校門は七色だし謎のオブジェがあったりなかなかエキセントリックな校内です。誰だよこれ作ったの……。
いつも通り校内に許可なく入ると面倒事になります。あ、すいませんあの、栄に不審な魔法少女がいるんですけどと通報されても困ります。
そこで友好関係にある生徒が必要なのですが……行方不明になってないあのアーティストと会いたくないのでかりんちゃんは利用できません。いくみんも現役ではないですし、かなえさんはもう退場しています。悲しいなぁ……。
というわけでよろしくな、モカちゃん!
「急に押しかけちゃってごめんなさいね」
「いえいえ昨日出会いましたし、真里愛さんも一緒ですから、とっても楽しみです!」
あ~ら良い子だねアンタ!
モカちゃんはとても話が通じやすくて優しくてなんか、あったかい……RTAで荒んだ心がどんどん癒されていきますよ! まあそこに付け込むんですけど。
「そういえば、最近はぐむちゃんを見ませんでしたか?」
「えっ、もしかして萌花ちゃんも見てないの……?」
はい来た! 『
彼女は元黒羽根なので、他の元黒羽根と会話すれば情報が手に入る可能性がありますが、不確実かつ必要以上に七瀬ゆきかとエンカウントするので採用できません。
そこで、ほぼ確実に友人になっている真里愛さんと萌花ちゃんを引き合わせた際に発生する会話で入手します。南凪スゴい! 魔法少女の関係性がこんなに広いなんてショック!
ここまでしてはぐむんの情報が必要なのは彼女が『ネオマギウス』の初期メンバーであることが関係するのですが、それはまた後で解説します。
それより早く校内に行こうぜ。日が暮れちまうよ。
「そうですね……って、あれ? どうしてくれはさんは来たんでしょう」
2人の剣吞な眼差し感じるんでしたよね?
いいぜ、くれはちゃんはどうせ老い先短い魔法少女なんだし、ギラギラした目線で見てやがる奴にはとことん短縮テクを見せ付けてサービスしてやるぜ!
そうと決まれば空いてる窓目掛けてジャンプ!
ちょうど高等部の廊下に出るのでそのままスライディングで教室にイン!
はい到着!
「なにこの人!? 蛍起きて!」
「……んん~? どうしたの~?」
いましたね。
小さいほうが初等部の『
この二名、特に会いたかったのはチョーネムネムの顔をしてる蛍です。
なんと彼女、アリナに対して有利を取れる激レア魔法少女で、しかもその賢さはトップレベル。灯花ちゃんのように性格に難があるわけでもなくむしろ人格者。通常プレイなら是非ともパーティに欲しい逸材でしょう。
しかしバランス調整のためか普段ずっと寝ています。
やる気は出さないわ魔法少女衣装のまま寝るわやりたい放題し放題。本当になんでもやればできる天才なのですが困りましたねぇ。
彼女を酷使する方法欲しいですよね?
「なんですか、じっと見て」
そこで隣のあかりちゃんです。
彼女が関わる時はちゃんと働いてくれるので、あかりちゃんの信頼度を上げておけば芋づる式に協力させられます。というわけでハイ、ヨロシクゥ!
「急に入ってきたと思ったら変なこと言い出して、どういうことなの……?」
あれれぜんぜん反応がないですね(すっとぼけ)。
これでは困るので初対面最悪の今から信頼度を上げねばなりません。
信頼度を上げるには、共に行動したりイベントを発生させたり好きな物をプレゼントするなど色々とありますが、全員にそんなことやってられねーよ! RTAじゃ絶対ムリだぜ!
なのでハロハロー? かはるん元気ー?
『これはくれはさん、いかがなさいましたか?』
困ったときのかはるんパワーはこんなところにも活用できます。
真井あかりが香春ゆうなと知り合いでない場合、『恋は△ 愛は●』が終了していません。
これはあかりちゃんの幼馴染のお兄さんに許嫁がいることが発覚し、取られたくないとあかりちゃんが奮闘する話なのですが……。
この許嫁、かはるんです。
しかも両者とも理由があり白紙にするのに賛成と、すれ違いがなければ電話一本で根本部分が解決します。
というわけでかくかくしかじか。あとは縁談の場で直接ハートを伝えるだけだぜ!
「許嫁もゆうなさんのことも初めて知ったわ……でも、うん」
「良かったねぇ~、けど、お兄さんには直接伝えたほうが良いんじゃないかな~……いつ同じ事が起きるかわからないよ~」
「そっ、そうよね……」
お前もしかして……あいつのことが好きなのか? 恋すか?(青春)
ここまで来ればかはるんと柚希姉妹の協力で全部解決します。
するとあら不思議、イベント成功に関わったのでくれはちゃんへの信頼度がアップ。いくらスライディング初対面でも持ち直してプラスに一直線なワケ(一般通過栄芸術家)。
「もしかして、変な人だけど良い人なのかも」
「偶然が~……重なっただけだと思うよ~……」
なんのこったよ(すっとぼけ)。
「すみませ~ん! ここにくれはさん来てませんか~……あっ、いました!」
「ダメでしょくれはちゃん、あんまり迷惑かけすぎたら本気で怒るからね?」
じゃあ迎えも来たし用も済んだし帰りましょう。
と言いつつ……あっ萌花ちゃんパトロールっすか? 大丈夫ですか一人で。真里愛さんにあかりちゃんと蛍ちゃんも付いていきますよ。な!
「眠いぃ……」
ほら立て! 眠いと言っても行くんだよ!
一度は蛍が戦闘する場面を見なきゃフラグが足りなくなり、進行次第であのアリナ先輩ですら退場しかねません。そのほうが人類のためになる気がしますがそれはチャートが許さない。イクゾー!
しかし魔女探しからの結界攻略はもう見飽きたので倍速で飛ばします。
その間二人の解説だけしておきましょ。
真井あかりは珍しい小学生魔法少女ですが、変身すると髪型や体型が変わり16歳になる特殊な魔法少女です。自分よりも大きな太刀を使う近接アタッカーで、遠距離には衝撃波で攻撃できます。
だがデカくなるのはあかりちゃんだけの特権じゃねぇぜ!
なりたい自分になれた気分は案外ちっちゃいっすよね。自分の手で掴み取るのがイーヨー……。
では由良蛍はどうかというと、ちょうど良い場面なので等速。
「え~い……」
見ての通り、彼女の攻撃方法は枕投げ。遠距離型です。
凶悪なのはその枕です。付いてる口に食われるとマギア並みの大ダメージか固有魔法による夢の世界送りかの強制二択。こいつどっちもヤバイっすよ。
なお、必要と言ったのはこの情報です。
誰も性質を知らない&救助できるキャラがいない状態で『お月見はゆらねむパジャマパーティー』が発生した場合、最悪、チームみかづき荘と見滝原組が夢の世界から帰ってこれなくなり枕に消化され退場します。割と高い確率で発生する大ロスかリセなので先んじて可能性を潰しておきましょう。おきました。
加えて、お察しの通り"夢の世界"なのでみふゆさんを送り込むとパーフェクトみっふが再降臨。敵と一緒に放り込むだけで一部の戦闘以外は確実に勝てる最強最悪コンボです。バランスが壊れてんだよなあ、みっふのせいでなぁ!
そんなこんなで魔女戦完。
作業のついでに倒される魔女の気分はどうだ? 感想を述べよ!
「無事倒せました! みなさんありがとうございます~!」
「萌花は危なっかしいからねぇ……」
「それを言うなら蛍も! 魔女の結界の中で寝たらダメだからね!」
「寝る子は育つってこのことかしら……そうだくれはちゃん。私はこれから南凪に戻るけど――」
あっいいっすよ(快諾)。
はぐむんの情報入手の時点で真里愛さんに用はないのでご帰還いただき、くれはちゃんも南凪に戻る……。
と、称してあした屋に寄ります。
今は帆奈ちゃんとラピヌお姉さまが来ている頃でしょうね。でも会いたいのは潤のほうです。
アネキィ! 栄の奴ら連れて来やしたぜ!
「なんだなんだ、あした屋大繁盛じゃねェか……って、その制服は栄の?」
彼女の前に栄総合学園の生徒を連れて行くと、雪野かなえの話を聞くことができます。時系列的には2年前の『ガールズ・イン・ザ・フッド』の出来事ですね。
かなえさんは第一次みかづき荘のメンバーですが……今までみかづき荘ルートの話をパーフェクトスルーしていたので初登場じゃないっすかね?
「あいつもだったか……バイク乗ってんのかねェ」
「あいつ?」
「前に会った魔法少女さ。確か、"雪野かなえ"って名前の」
「あ、そいつあたし知ってる。目つきの悪いヤツでしょ? 音楽好きの」
しかもなんと帆奈ちゃんが知ってるのでこれ以上聞く必要がなくなります。クソ長回想に入らなくて済むので短縮です。良い仲間を持ったなぁ……。
あした屋ポイントは無事貯まったので電車に乗り込み、くれはちゃん強化計画第2弾に向けて出発したので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
――くれはちゃんのことをどう思ってるのか。
そう、ひなのちゃんから聞かれた。
夕暮れ時の放課後、化学室で片付けのお手伝いをしている時だった。
「アイツ、テストの成績は悪いし、常日頃おかしな行動が目立つだろ? 真里愛は学童保育でよくやってくれてるって言ったが、素行がアレだからな」
冗談じみた言い方に棘があるように見えても、隠しきれない優しさが滲み出ている。出来の悪い妹に対して遠慮なくありつつ、心配で言っているようで微笑ましい。
「くれはちゃんは良い子よ。ひなのちゃんもそう思うから聞いたんでしょ?」
「そうかぁ? 常に胃を痛めつけられてるが」
「ふふっ、わかってるから自由奔放にできてるのよ、きっと」
私が触れた時間は二人の時間よりも短いけれど、わかっていることがある。
みんな気づいているのかしら。くれはちゃんは他の人を呼び捨てで呼ぶのに、ひなのさんやひなの先輩と、彼女には敬称をつけることを。
呼び方が違うのは令ちゃんも。唯一、観鳥と名字で呼んでいるのは印象深かった。
ちょっとした違いはあれど、呼び方が違うのはくれはちゃんに思うところがあるということ。家族とか身内とか、仲の良い人って話し方が変わるじゃない?
きっとくれはちゃんも同じ。信頼してるからよね。頼ることのできる相手でいるから――
それは、私はどうなのだろう。
「真里愛?」
「あっ、ごめんなさい。なんでもないの」
「……なにかあったら言えよ?」
こういうところなんだろうな。ひなのちゃんがみんなに慕われて、まとめ役をしっかり務められてるのは。
きっと気づかれたんだろう。本当はなんでもないわけじゃなくて、ある出来事がずっと心に残っていることを。
『あっ、真里愛さん……』
同じような夕暮れの中、泣いているはぐむちゃんを偶然見かけた。
自分は魔法少女なのに魔女を倒せない。簡単に倒す子を見かけて心が折れてしまった。
そう言う彼女の根底にあるのはもっといい願いがあったんじゃないかという気持ちと、自分に対する否定。
変わりたいと願うはぐむちゃんに言えた言葉は、"そのままでもいい"という肯定でしかなかった。
……どんな言葉を言えば、はぐむちゃんに寄り添えたのかなぁ。
◇
翌日。くれはちゃんに呼ばれて教室に向かうと、飛び降り現場だった。
「やめろーっ! 早まるンじゃねぇ!」
「平気よ」
「んなわけあるか!」
「私は死なない」
涼子ちゃんがくれはちゃんを羽交い締めにしてるのを見て、今日はその窓からなのね――と、いつもの光景に思えてしまった自分が怖かった。
しっかりしなくちゃ。くれはちゃんのでたらめに吞まれちゃダメダメ。
「おっ、手伝ってくれ! 危ない真似しやがるんだよ!」
「真里愛、説得して」
「そうねぇ、くれはちゃんはむしろ止める側だと思うわ。でも危ない真似はしちゃいけません。一緒に階段で降りましょう?」
いつもなら「そうね」とでも言いそうなものの、既に重心が傾いていたのか落下していってしまった。魔法少女だから大丈夫だけど……小さい子にはとても見せられないわ。
こういう行動といい最近のくれはちゃんはなんだかおかしい。
不思議な行動をすることは変わってないけれど、そのタガが外れているというか、度が過ぎている。校内を走り回ることも急いでいたならまだ理解できるものの、別の理由があってやっていたような……。
それは、くれはちゃんと一緒に栄総合学園に向かった時もだった。
いつの間にか萌花ちゃんと知り合っていたのはわかる。ただ、来た理由がわからない。彼女に会いに来たのかと思えば知らない様子なのだし。
……かと思えば。
「えっ」
「ええーっ!?」
くれはちゃんの姿が消えた――いいえ、違う。跳んだ。
遅れて視線を上に向けると、開いていた窓に綺麗に飛び込む姿が見えた。
「あの~? 真里愛さん、これってどういう……?」
「次はちゃんと言っておくわね。びっくりさせないようにって」
萌花ちゃんが言うには飛び込んだ先は高等部らしい。
案内してもらって急いで追いかけると、教室の中に知らない二人に話しかける彼女の姿があった。
「すみませ~ん! ここにくれはさん来てませんか~……あっ、いました!」
「ダメでしょくれはちゃん、あんまり迷惑かけすぎたら本気で怒るからね?」
「え、ええ……」
本気でしょんぼりしてしまった姿は知ってるもので、それ以上強くは言えなかった。
「もしかしてこの二人に会いたかったの?」
「いえ、さっき知り合った」
「……さっき?」
「さっき」
「そうなんです、この人、教室にスライディングしながら入って来て……」
えっ……スライディング? スライディングって、地面に身体を擦り付けて滑り込むアレよね? なんで……?
「とにかく、高校生なんですから子供みたいな真似はやめてくださいね。みんな迷惑します」
「そっ、そうよね……」
「え~? でも、私もあかりによく言われるからぁ……」
「蛍もそうよ! 毎朝私が起こさないと起きないんだから!」
くれはちゃんが起こした騒動は明らかな不審行動。正直に言って警察の厄介になっちゃうんじゃないかって不安はあった。
その割にはこの二人が好意的なのは、私たちが来る前にちょっとした出来事があったのだとか。なんというか手際が良い。
そして名前が出たことから自然と自己紹介が始まった。
高等部のほうが由良蛍さん。初等部のほうが真井あかりちゃんというらしい。くれはちゃんはいきなり「あーちゃん」なんて呼んでいたけれど、この短時間でそんなに親しくなったのかな。
じゃあ萌花ちゃんはどうかと言うと、よく眠る高校生と高等部に出入りする小学生の組み合わせは校内でも有名で、既に知り合いだったらしい。
蛍ちゃんたちも萌花ちゃんの危なっかしさは知っているそうだ。
この後パトロールに行くと彼女が言い出したら、間髪置かずに付いてきてくれると言ってくれた。まああかりちゃんが言い出して、蛍ちゃんは眠そうなままだけど。
私たち5人は学校を出ると栄区を歩く。
栄総合学園は芸術関係に強いのは、周辺にファッションや芸術のお店や会社が揃っているから。中央区に大きな被害が出た今、こっちに移動してきてるものもあって普段より人が多いのだとか。
つまりは、引き寄せられる魔女も多い。
きっと萌花ちゃんの目的は、そんな魔女ともっと戦えるように経験を積みたいということと、未然にみんなを守りたいという気持ちから生まれたものなのよね。
にしても。
「あの、変身したらちょっと驚くかもしれないんですけど……私なので」
「え? ええ……」
いざ魔女の結界を見つけて全員で乗り込もうとしたところ、あかりちゃんからそんなことを言われた。
魔法少女の衣装は特徴的なものが多い。その人のイメージや考えを反映しているのか、私の場合は保育士さんに近いものがあるし、武器として出てくるのはカメさんとシャチさんのハンドパペットだったりと不思議だ。
くれはちゃんだって緑を基調とした服になるけれど、暗いイメージに近い服は本当に彼女らしいかと言われると少し戸惑うし、なにか思いもしない理由があるのかもしれない。
だけれど彼女が変身すると、それらがほんの少しの変化でしかなかったと思った。
「大きくなったわ」
「きゅ、急成長ね……」
だってあかりちゃん、変身すると成長するの。
身長は伸びて、体付きもより女性らしくなり、髪は伸びるどころか色まで変わって――そう、私たちが言うのはおかしいけれど、まるで"魔法少女"のようだった。
「よく見てる秘密のヒロイン・ミミカル☆ミミコちゃんみたいに16歳の姿に変身できたら……って願ったんですけど、解除したら小学生に戻るところまで一緒になっちゃって」
「あかりならよく考えたらわかったはずなんだけど、焦っちゃってたんだよね~……」
「蛍も『もう少し寝かせて』で契約したでしょ。すっごく眠かったからって」
契約の理由を聞くと、なんというか……言葉にできない。
魔法少女の願いは一回っきりで、代償として様々な影響が伸し掛かる。
だけど彼女たちのように不本意や偶然で契約したり、萌花ちゃんの『限定スイーツが食べたい』のように願わなくても別の手段で容易に叶えられる願いの子もいるそうだ。
「変なことを聞くようだけど、二人は願いで後悔していない?」
気がついたら、普段の私ではそう口にしない無神経な言葉をぶつけていた。
ハッと思ったのも束の間。訂正しようと言葉を紡ぐ前に、彼女たちは様子を変えずに答えてくれたのだった。
「キュゥべえには怒ってますけど、そう願ったのは私ですし……なにより、この姿だからできることもあって、一足飛びじゃなくてちゃんと成長しようって思えたこともあるんです」
「過ぎたことだからねぇ……」
「……いきなりでごめんなさい、少し気になったものだから」
もしもはぐむちゃんがこの子を見たら、なんて思うのかな。
自分より小さい子が魔女を倒せていることに悲しむのか、変わることを願えたことを羨んじゃうのかな。抱えている自分が小さく見える気持ちが、もっと大きくなってしまったら。
彼女たちは自分のために願いを使った。
今も落胆しないでいるように見えるのは、そういう部分が違うのかもしれない――
私は願った内容に後悔はしていない。小さな子が車に轢かれたのを見て咄嗟に『あの子を助けて』と願えたのだから、手を差し伸べたい気持ちに従っただけ。もし魔法少女の契約がなかったら身を挺してでも車から庇っていたと思う。
けれどもいつしか、考えたくもない不幸がにじり寄って来て、その最初の気持ちさえも憎く思って疑う日が来てしまったら、それは魔法少女としての終わりに違いない。
守りたいものも叶えたかった願いへの気持ちを失ってしまえば、私を形作る核がなくなってしまうのだから。
……はぐむちゃんが言っていた。
『魔女の口付けを受けて操られていた人がいたから、魔女を消してって願ったんです。だけど……助けられたことは後悔してなくても、もっと良い願いがあったんじゃないかって。もっと私を変えられる良い願い方があったと思ってしまうんです……』
泣きそうになりながら紡がれた言葉を思い出して、目の前の二人に自然と重ねてしまう。
願い方に失敗したはずなのに前を向けている姿はとても輝いて見えて――なにが必要なのだろうと、思ったのだった。
「真里愛」
ふと、くれはちゃんに呼ばれた。
そういえば、彼女の願いは知らない。その本心に触れられてもいない。
彼女も後悔しているかもしれないし、折り合いを付けているのかもしれない。もしかしたらあの真顔の裏で、はぐむちゃんと同じ想いを抱えていることさえもありえる。
けれども可能性のままでしかなくて、明言はできないのだから余計な考えよね。
「あの人……もう先行ってるよ」
「えっ、あ、くれはちゃん!?」
「すごい、一人で使い魔の群れに……!」
「言ってる場合じゃないです! ほら蛍急いで!」
もう、くれはちゃんったら、いつもこうなんだから!
と……魔女を倒し、無事に結界の外に出た時のことだった。
「……ぁ」
遠目にはぐむちゃんの姿が見えた。
でも、私たちを見るとすぐに逃げて行ってしまったの。
あれじゃまるで――誰かに怯えているみたい。
◇
やっちゃった。
真里愛さんと視線が合ったのに、背を向けて逃げちゃった。
「うぅ……」
あそこにいた5人のうち、真里愛さんと萌花ちゃんはよく知ってる。二人とも数少ない魔法少女の知り合いでよくしてくれる相手だ。
でも……私とは違う。私はあんなにしっかりもしてないし、純粋さも持ってない。
唯一得意だと思ってた魔女退治だって、私よりも小さな子が倒しているのを見て自信を失ってしまった。そんなの、魔法少女なら普通だ。
だから、私にも"なにか"があればっていつも思ってしまう。価値をくれるものがあればって。
だけどそれは呆れるほどいつものことであって、イヤってほど心を縫い付けてきた。今さら、知らない人がいるからって逃げ出すような理由じゃない。
原因は――帆秋くれはさんだ。
「あの人、だよね……」
彼女はマギウスの翼の中でも要注意人物だって言われていた。
広報の人が時々流してくれるメールマガジンで悪い人じゃないっていうことは知ってるけれど、ある思い出が焼き付いていて、どうしてもまだ近づけない。
見ちゃったんだ。
大事な任務だからって連れられて行った『記憶ミュージアム』で、何度も何度も何度も何度もドッペルを出しては前へと突き進む……狂気に満ちた姿を。
■今回の内容
『恋は△ 愛は●』(一部分)
安積はぐむ 魔法少女ストーリー 3話 『砕けてしまいました』(一部分)
真井あかり 魔法少女ストーリー 1話 『私の大好きなお兄さん』(一部分)
由良蛍 魔法少女ストーリー 3話 『やっぱりぐーたら…』(一部分)
■由良 蛍
ぐーたら系魔法少女。やれば本当になんでもできる。
出てくるたび有能ムーブをする栄総合学園の秘密兵器。実際の性能面も、配布なのですぐ来てくれるし持続MP回復など有能。
■真井 あかり
魔法少女っぽい魔法少女。変身後の露出度は結構高い。
しっかりしているものの、小学生なことに変わりないので蛍がいないと結構心配。
■安積 はぐむ
おでこがチャームポイントの魔法少女。不幸にもゾンビドッペル戦法の現場にいた。
自信をなくした原因はソロで魔女をぶっ飛ばす理子ちゃんを見たせい。その小学生、かなり強いんですよ。
■マギウスの翼の羽根たち
アニレコがごとくモブの中にネームド魔法少女が混じっている。いた。
よりにもよってゾンビドッペル戦法を見せつけられてしまったはぐむんの明日はどっちだ。