マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

106 / 141
パート67 前書きは靴音と一緒に 前編

 

 やっと第二部が始まるRTA、はーじまーるよー。

 

 なんで第二部に入るまでこんなにかかってるんですか?

 これはな、誰でもそうなるんや。

 

 というのも、下準備を一切しないとフラグはねぇ、突破する手段はねぇ、ないない尽くしで横から不合理トラックが突撃してきてお陀仏です。タイムどころか完走すら怪しくなります。

 

 逆に言うと、準備さえしていればあとはお祈りポイントを突破するだけです。

 楽ですね(建前)。いや楽じゃない!(本音) ここまで来てランダム要素とか嫌です。

 

 当然ランダムへの対策はしてますが、カバーしきれない部分はあります。

 そんな地獄に対抗するため、どんな展開が来ても対応できるように、多くの方の協力を得て分岐チャートを120弱ほど作ってきました。量で対抗するまでです。

 

 もっとも、ここまでに起きてきた大惨事(フランス遠征)に比べるとそれほど苦戦する内容ではありません……が! 当然の権利がごとくルート分岐をミスると神浜の魔法少女が全滅! 再走確定です。チャートをちゃーんと守って走り抜きましょう。

 

 ではさっそく第二部第1章『前書きは靴音と一緒に』に突撃ー!

 おはよーございまーす!

 

「おっはよー!」

「おはよ……」

 

 本日は自宅からスタート。

 シナリオ上推奨される動きは、このまま街に繰り出して『キモチ』について探ることです。

 

 キモチとは神浜の各地に点在している二部の敵。ブレスレットにキモチの宝石8種類すべて集めることで自動浄化システムが奪えるらしいっすよ?

 二部用のステータス『感情』に恍惚・期待・激怒・嫌悪・驚嘆・敬愛・恐怖・悲嘆と8つのパラメータグラフが出現したのもそのせいです。対応したキモチと戦う際に、誰に憑りつくかの指針になります。

 

 新たなる敵、探索要素、ボス戦、ワクワクしますね。

 やらないので関係ないです。

 

 これ、どのグループに何個あるかでストーリーが分岐するだけなのでどうでもいいです。どうして白タヌキの思惑にわざわざ乗ってやる必要なんかあるんですか?

 

 既に偏り始めてるくれはちゃんのグラフは飾りだよ飾り!

 そんなことより信頼度上げや短縮のための行動をしたほうがよく、なにより8個とか多すぎてやってられねぇぜ。

 

 さて今回は、前日に観鳥さんから神浜で見慣れない魔法少女が増えているという話を聞いています。これがポイントです。

 

「ああ、なんか増えてるんだっけ? あたしらからしたら知らないやつばっかだと思うけど」

 

 帆奈ちゃんはこう言いますが、実際に市外から自動浄化システムを狙う輩が来ています。

 新たな魔法少女。そして深まる謎。感動的ですね。

 

 じゃあ探ってやるか! しょうがねえなぁ。

 用意するメンバーはなぎたん。メイドカフェに押し入ってバイト終了後に出かける約束を取り付けましょう。これでパーティに入ってくれます。

 

 では夜まで信頼度を上げてイクゾー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました大東区。

 なぎたんを連れて二人っきりで夜の逃避行(大嘘)。

 

「なに、二人でパトロールなど久しぶりだ。たまにこうして気分転換するのも悪くない。……ふふ、自分は案外君のことを好いているようだ」

 

 見てください、イケメン魔法少女特有の口説き文句です。

 二人行動の際は信頼度次第で話すことも変わるので嬉しいですよね。全員分コンプ、しよう!

 

「嘘ではないぞ。観覧車草原でマギウスの翼を見つけた時も――む、そこの、止まれ」

 

 はい来た!

 なぎたんが呼び止めたのはフードを被ってたりマスクしていたりヤンキー感漂う複数人の魔法少女。コンビニ前にいそうな『プロミストブラッド』の構成員モブです。

 

「……神浜の魔法少女だな?」

「そうだが、穏便な用事ではなさそうだな」

「死んでもらう!」

「だ、そうだ。やるぞ帆秋」

 

 というわけで『謎の魔法少女たち』戦が始まります(謎とは言っていない)。

 相手は3人、こちらの戦力は2人。数的有利と見たまだ神浜初心者の彼女たちは、和泉十七夜の洗礼に耐えられるのでしょうか。それではご覧ください。

 

「バ、バカな……」

「強すぎる……」

 

 勝ちました。

 黄金の鉄の塊で出来ているなぎたんがヤンキー装備のモブに遅れをとるはずは無い。

 

 特にすることがなかったくれはちゃんの仕事はここから! モブが逃走を始めたらパパパっと転んでもらうぜ!

 

「うわっ!」

 

 知らなかったのか? 『停止』からは逃げられないとばかりに逃走阻止、はい確保。

 

 ではなぎたんの『読心』で彼女たちがなにをしに来たかを探りましょう。

 『心を繋げる力』のみとちゃんでもいいのですが、あれは必要な情報がある場面を選択しないといけないのでこの方が早いです。

 

「うむ、見えたぞ。だが、自動浄化システムの奪取に神浜への復讐だと? この者たち、明確に敵意を持っているのか……」

 

 なぎたんが説明してくれてる間に勢力紹介コーナー。

 今回ご紹介するのはこちら! プロミストブラッドもとい略してミスド!

 

 彼女たちは二木市を拠点とする魔法少女たちです。

 二木市で争っていた虎屋町、竜ケ崎、蛇の宮の魔法少女たちが対神浜のために連合を組み、それぞれのリーダーが義姉妹の血の契りを交わしたことで結成されました。詳しくは結成イベント『Crimson Resolve』で語られますが、くれはちゃんは二木市に行く用事はなかったのでスルー。自分で見て、どうぞ。

 

 簡単に言うと、二木市で魔女が減って仲間が倒れていったのはマギウスが神浜に集めていたからだと知ったので、その復讐のために来てます。マギウスの翼に潜入してるのがいたんですがちょっと連絡が遅い……遅くない?

 まあキュゥべえ狩りしてたり、神浜にいる魔法少女ならマギウス以外も敵視していますが、その辺の説明は彼女たちと関わっていくことでわかるかもしれません。わからないかもしれない。

 

 とにかく、ミスドルートに入らない限り第二部前半の明確な敵は彼女たちです。これから散々ぶつかるのでよーく見ておけよ?

 

 あっ十七夜さん、この子たちの拠点もお願いしますね。

 

「そうだな、組織立って動いているのなら、どこから来ているのかを知っておいたほうがいい」

 

 ユニオンも時女一族もそうですが、各グループには拠点が存在します。

 メンバーを集めたり作戦会議をしたり行動には欠かせないものです。

 

「……工匠区か」 

 

 というわけでミスドの拠点は工匠区のデンキ街にあることがわかりました。地下トンネルをくぐった先、旧車両基地方面じゃないほうに向かい、地上に登って近くにある雑居ビルのワンフロアです。

 普通に進めたら第6章で手に入る情報ですが、この通り心を読めば一発です。

 

 ……と、騙されるとでも思うたか! へっ、甘ちゃんが!

 駅近物件でもないこんな狭い部屋で拠点とかぼったくりなので偽情報。ハードモードは拠点を教えてるモブと教えてないモブがいます。

 

 本当は旧車両基地です。

 第一部で天音姉妹がいるところですがスルーしましたね。偽情報でも入手した時点で近くまで行けます。

 

 本来はそのままだと進めませんが、あるイベントを利用すればダイレクト拠点襲撃可能です。壊してミスドの影響力を下げると第7章までの自由時間が圧倒的に増えますし、やらない理由はありません。

 

「帆秋、わかってるだろうが拠点にひとりで行くなよ」

 

 当たり前だよなぁ? くれはちゃんがひとりで行ってもデスルーラするだけだよな!

 

 なので。

 

「ひとりで行くなって、あたしらと一緒なら良いって意味じゃないと思うんだけど」

「おもしろそー! 早く行こっ!」

 

 大人しく帰るフリしてくれはちゃんハウスの二人を招集。

 帆奈? 今工匠区に外部の魔法少女が来て襲撃する予定です。すぐ来れますか? とでも言ってやればいつでも来てくれてます。信頼度が高いって……なんか、あったかい。

 

 拠点と化した旧車両基地は本来第二部第6章で向かう場所ですし、トラップも不意打ちも上等の連中がいるので、レベル上げをしたベテラン魔法少女10人ほどで進んだほうが良いでしょう。斥候として、透明化できるまさらや気配を消せるさなちゃんがいたらなお良しです。

 

 もちろんRTAなので正面突破します。オラオララピヌお姉さまのお通りじゃー!

 あとはこのまま前進し、旧車両基地にラピヌお姉さまをシューッ! 超! エキサイティンッ!!

 

 白い服が通り過ぎたのを追いかけつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衣服というのは、非常に重要だ。

 寒暖差から身を守るのはもちろん、儀礼として場ごとに適した服装がある。守らねば白い目で見られ常識がないと思われるのは想像に難くない。懐が寂しい状況では頭の痛い問題だろう。

 もっとも、自分のような学生は制服こそが最適だ。うむ。実にリーズナブルだな。

 

 だがここでは別の装い――青を基調としたメイド服。

 幾度となく着た衣装こそ、この場における正装だろう。心が引き締まるというものだ。 

 

 だからだろう。入り口からの気配を鋭敏に感じて待ち構えた。

 長い髪をなびかせ入ってきたのはよく見知った顔で、他の魔法少女を連れてくることもしばしばある常連様だ。

 

 彼女はよどみない足取りで前へと進む。洗練された歩みと言ってもいい。幾人かが見惚れるのも仕方ない。

 

「お帰りなさいませだぞ、ご主人」

「私だけど」

「確かに帆秋は帆秋だが、ここではご主人だ」

 

 そして自分は和泉十七夜ではない。メイドのなぎたんだ。

 帆秋が来た場合の対応は一任されている。下手に他の者が腕相撲対決をしたら折られかねず、テーブルですら無事かわからない。まったく、魔法少女とはいえ自分でも相手取るのがギリギリとは、腕力で世界を狙ってるのだろうか。

 

「メロンソーダと、今日はどうする? 今はキャンペーン中でな、一定金額以上のご注文で特別なクーポンをプレゼントだぞ」

「その前に頼みたいことがあるの」

「む、用があるのはそちらか」

  

 帆秋の目は真剣そのもの。いつもの真顔でもそれぐらいの違いはわかる。話した内容からしてメイドのなぎたんではなく、魔法少女の和泉十七夜を頼ってきたらしい。

 ……それはそれとして、メロンソーダは飲んでいった。

 

 そのままメイドさんの仕事をこなすと、夜風の吹く冷たい時間となる。

 どこで待ち合わせかも言わずに急いで出て行った帆秋だったが、余計な心配は無用だった。なにせ、帰り道で曲がり角からぬらりと身を現したのだ。本人曰く「栄区に行ってた」らしい。ぷちうさというマスコットキャラクターのグッズを見せてくれた。

 

「それで、自分は君に付いて行けばいいのだな」

「ええ。だけど……忙しいでしょう? 悪いわね」

「なに、二人でパトロールなど久しぶりだ。たまにこうして気分転換するのも悪くない。……ふふ、自分は案外君のことを好いているようだ」

 

 更紗君を引き寄せたその生き方か。あるいは、観鳥君の良い相談相手となってくれているからか。もしくは東西の可能性を信じさせてくれるからかもしれない。

 原因はなんにせよ、神浜マギアユニオンが結成されてからも東を纏めている者として立場が変わらないからこそ、自分の想いもまた、変わらないのだろう。

 

 マギウスの翼が存在した頃は調査をしに二人で東側を回ったものだ。

 特に観覧車草原では――と、口にしようとした時、不審な人影が見えた。

 

 黒と赤のパーカーと、牙のような柄が白で描かれた赤いマスクをそれぞれ身に着けた三人組。

 どこぞの不良グループかと思ったが、紛うことなき魔力反応が只者ではないと告げている。同時に脳裏に浮かんだのは見慣れない魔法少女がいるという報告。もしや。

 

「……神浜の魔法少女だな?」

「そうだが、穏便な用事ではなさそうだな」

 

 一人はチェーンソー、残る二人はダガーを持って威嚇とは、隠す気もないらしい。

 

「死んでもらう!」

「だ、そうだ。やるぞ帆秋」

 

 変身し、自分は馬上鞭、帆秋はカトラスを構える。

 

 「白い衣装にモノクル……!?」

 

 驚く声からして、どうやら自分のことは知っているらしい。

 

 それでも真っ先に向かって来たのはリーダー格らしきチェーンソー持ちだ。

 あれは武器に向かないとメイドカフェでご主人から聞いたことがある。だが、刃物は刃物。回転する刃は皮膚を裂き、肉をズタズタにするぐらいできるだろう。ましてやアレは魔法少女の武器。一般的な常識は捨てたほうが身のためだ。

 

 しかし、それは当たればの話だ。

 

「遅い」

「ぐうっ!?」

 

 鞭をしならせ叩けば手からチェーンソーが落ちる。その隙に蹴飛ばして追撃を与えてやれば地面に伏した。

 この瞬間を隙と見たダガー持ちの二人が左右から挟撃してくるが、問題はない。

 

「動きが激甘だな」

 

 くるりと一人の背後を取って一撃。そのまま残りに一撃。

 言葉にしてしまえばそれだけだ。躊躇なく武器を振るうあたり対人戦闘には慣れているようだが、力押しの傾向がある。同じ服装をしているだけのチームなら連携不足。グループであれば下っ端というところか。

 

 彼我の実力差がわかると、三人はよろよろと立ち上がって逃げようとする。

 もちろん逃がしてやるつもりはなかったが、自分が動く前に一人が転倒した。急停止した不自然な転び方は、帆秋の『停止』により引き起こされたのだろう。

 

「失礼する。痛くはないぞ」

「なにをっ……!?」

 

 今が好機と捉えて、帆秋が抑えてくれている間に『読心』を使った。

 この固有魔法は変身状態かつ近くにいないと使用できない制限があるが、文字通り心を読める便利なものだ。

 

 記憶の濁流の中から探すのは唐突に襲い掛かってくる目的。

 意外にもすぐに読めた内容は、首を傾げるものでもあり、いつかは来るだろうと想定していた内容でもあった。

 

「この者たち、明確に敵意を持っているのか……」

 

 『プロミストブラッド』という組織に属する彼女たちは、理由あって矛を向けていた。

 

 かつて、マギウスは神浜に魔女を集中させていたという。魔女が増えていた原因だ。

 元々いた場所から誘導しているのだから、当然ながら元の地域には魔女が少なくなる。そこに暮らす魔法少女たちはグリーフシードの入手が困難になるだろう。自動浄化システムの恩恵もないのだから、魔女化の危険性が跳ね上がるわけだ。

 

 ゆえに、原因たるマギウスに恨みを持ち、魔女化を防ぐ自動浄化システムを奪い取ろうとする輩が来ることは想像できた。

 これは言わば自分たちのワガママのツケだ。マギウスたちは市外の魔法少女を踏みにじり自動浄化システムを広げようとした。だが我々は、実現に必要な犠牲を許容できないと計画を阻止したわけだ。救済を遠のかせたと言ってもいい。

 

 神浜の魔法少女にまで飛び火しているのは恩恵を受けていることへの怨讐か。

 彼女たちも強化された魔女やウワサといったものに傷つけられたマギウスの被害者であり、立ち向かった者もいるのだが、その違いは一目で判断できないだろう。八つ当たりであろうと『今もマギウスを擁する神浜の魔法少女たち』であることに変わりはないのだから。

 

 ……つくづく、あのおガキ様は厄介事も引き起こす。

 考えることが増えた。降りかかる火の粉は払わなければなるまい。

 

「その子たちはどこから来たの」

「そうだな、組織立って動いているのなら、どこから来ているのかを知っておいたほうがいい」

 

 帆秋が珍しく建設的な意見を提示し、少々驚きながらもう一度心を読む。

 次に読めたのは工匠区。工事中のトンネルを通り雑居ビルに入る……というものであった。

 

 帆秋に口頭で説明はするものの、理解しているか不安になる。こういった場合、相野君の魔法ならば景色ごと見えるので楽なのだが贅沢は言っていられない。

 

「さて、もう行っていいぞ」

「……随分と甘いな。殺さないのか?」

「神浜は優しい魔法少女が多いのでな。お仕置きが欲しいのならお尻ペンペンでもするが」

 

 馬上鞭で己の手のひらを軽く叩くと、捕縛していた魔法少女は逃げていった。うむ、本気だったのが読み取られたのかもしれんな。

 

 今回は自分たちが遭遇したからいいものの、力の弱い魔法少女が出会ってしまっては危険だ。緊急の要件として得た情報を皆に伝えねばなるまい。ユニオンに入っていない者へは、帆秋を通じて――

 

 と、そこで、ふと閃きのような予感が自分の口を滑らせた。

 

「帆秋、わかってるだろうが拠点にひとりで行くなよ」

「もちろん」

「……まあ、今の君であれば無茶はしないだろうな」

 

 お節介がすぎた。こういう話を聞いたら飛び込んでいくイメージが自分の中にまだ残っていたとはな。

 言った通り、己が傷つくことで誰が悲しむかを理解している彼女であれば無茶なことはしない。自分で言うのは気恥ずかしくあるが、頼れる仲間もいるのだ。過ぎた心配だったろう。

 

 ああ――だからだろうな。

 

 ひとつ、忘れていたんだ。 

 自分すら手段の一つとして考えていた頃からは変わったと言っても、取れる全力を以って助けようとする点は変わらない……ということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カツン、カツンと硬く冷たいコンクリートの床が鳴る。

 遠くから聞こえるほどの乱暴な足取りで、誰かが歩いているらしい。

 

 それに気を向けることはなく、転落防止柵に軽く寄り掛かって下を見た。

 微かな明かりがかつて車両があっただろう空っぽの空間を照らし出し、グループの子たちが思い思いにたむろしているのがわかる。敵地に来ている緊張感よりも、復讐を成せる高揚感と拠点となる場所を得た快感が勝っているようだった。

 

 近づいて来た足音が隣で止まると、持ち主はわざわざニヒッと笑顔を見せた。

 

「なに黄昏てんだ姉さんよ」

「なんでもないわよぉ……」

 

 今すぐにでも暴れそうな雰囲気を持つのは竜ケ崎の魔法少女『大庭(おおば) 樹里(じゅり)』。

 幾度も殺し合いを行った仲で、こうして互いに武器を構えることなく話していることを昔の私が見たらなんと思うのかしらぁ。

 

「そうかな~着いてからずっとそんな感じだよ」

 

 続けてゆっくりと現れたのは蛇の宮の『笠音(かさね) アオ』。

 神浜に来るのはまだ早いんじゃないかと何度か私に言ってきたけども、しっかりと覚悟は決めたようでその目はまっすぐと見つめている。

 

「にしてもここ、いきなりバレたりしねーだろうな」

「姉ちゃんは心配性だね~今はまだチュートリアル。しばらくは平気だよ」

「そうねぇ……用心はしときなさぁい」

 

 そして私――虎屋町の『紅晴(くれは) 結菜(ゆな)』。

 

 元はバラバラだった二木市は、私たち三人が血の契りを交わしたことで一つになっている。ただ復讐のみを考え、今度は自らが憎き神浜から奪うために。

 私だってその一人。今も死んでいった彼女たちの怨嗟の声が聞こえてくる。この恨みを晴らすまで、止まるわけにはいかない。

 

「……で、さくやとらんかは明日だったか」

「ここの警備体制の確認をしてからじゃないと、尾行でもされたら面倒だわぁ」

「へっ、樹里サマは構わねぇが? ぶっ飛ばせるヤツが増えるだけだろ」

 

 樹里の相変わらずの思考に、私は不満げな表情を突きつけた。

 

 この旧車両基地は神浜市で活動するための拠点。放棄されていて人が来ない場所だからこそ、集まるにはうってつけの場所だった。

 

 もし発見されたとしても、二木市からの()()()()がある限り神浜への襲撃はできる。

 されど、神浜拠点から動かせる駒が少なくなることは作戦の展開が狭まること。一時撤退にも大きな時間がかかると考えると、継続的な襲撃が不可能になる可能性がある。ゲリラ的な戦法しか取れなくなることも考えるべきでしょう。

 

 次の拠点候補も考えてはいるけれど、メリットを得られてないうちに失うわけにはいかない。

 それだけに多少大げさでも揃って最終確認をすることには意味があった。

 

 もっとも、主な雑務は下の子たちと主導する"馬"がやっているのだけれど。

 

「結菜さん結菜さん結菜さーん! 大変っす!」

 

 その馬――私の右腕と言っても過言ではない『煌里(きらり) ひかる』が何度も名前を叫びながらカツカツと階段を駆け上がってきた。

 二木市で争っていた頃から能力も忠誠も信頼している。スパイとして活動させていた時期もあり、策略に必要な人材だ。

 

「なにか問題かしらぁ」

「見張りが侵入者を捕まえたっす。服からしてマギウスの翼の残党じゃないかって話っすよ」

 

 ひかるの言葉で周囲の雰囲気が冷たいものになったのを感じた。鋭く研いだ刃物でありながら爆発寸前の爆弾のようで、同様にぎりりと私の拳に入る力もより強くなる。

 

 マギウス。その者ら、そいつらこそ、この復讐を果たす相手。

 私たちから魔女を奪い、血の惨劇を味わせた元凶。多くの仲間たちの死に報いるためにも、作り上げた自動浄化システムを奪って二木市に争いのない魔法少女の社会を築かなければならない。

 

 だからこそ、私が変身するのは当然のことだった。

 和服のような衣装がふわりと揺れる。対して、手に持った金棒は振り下ろされる瞬間を待っているかのごとく馴染んでいた。

 

「私が行くわぁ……二人は好きにしてなさぁい」

「わざわざ姉さまが?」

 

 アオはなにか言いたいことがあるようではあったものの、樹里が持ってきていたゲームをすると言い始めて、二人はこの場を離れていった。

 

 ひかるの案内に従って階段を降りて旧車両基地から出る。この周辺はまったく手入れがされていなくて、フェンスで覆われた敷地内は草木が伸び放題だ。明かりも少なく、遠くに見える高層ビルの夜景がいやに眩しい。

 

 僅かな光に照らされて、配下の子たちに囲まれたひとりの姿が見えた。

 

「う、うぅ……」

 

 それは内側が青い白色のフード付きローブを被った魔法少女。マギウスの翼の白羽根と呼ばれる役職のものに酷似しているから残党と言っていたのでしょう。ちらりと見える頬には擦りむいたような跡があって、捕まえられる際に怪我したのだと想像できる。

 

 二木市の子であれば簡易の治癒を施したかもしれない。絆創膏を持っていれば渡していた。そうでなくてとも、心配の一言ぐらいかけるのが当然だと思う。

 

 だけど、そんな慈悲をくれてやる必要がある?

   

 目の前まで行くと、金棒を地面に叩きつけてやった。こうすれば嫌でも重みがわかる。

 現に、その魔法少女は上ずった声で弁明を始めたのだから。

 

「ちが、違うんです! ただ迷っちゃっただけで、そんな、ここに来ようと思ったわけじゃ――」

「それだけ?」

 

 知ってて少人数で攻めてくるなんて単なる馬鹿でしかない。迷い込んだのは本当だろう。

 だけど、それがどうしたともう一度金棒を叩きつける。バラバラになった雑草が土煙と一緒に宙を舞った。

 

「ひとつ聞くわぁ。あなたは神浜の魔法少女でしょう?」

「はっ、は、はい! でも、ユニオンじゃなくて、ネオマギウスの……!」

「へぇ、マギウスっすか」

「新組織かしらぁ、余計に許せないわねぇ……どちらにせよ、殺すだけだから関係ないわぁ……」

「ひぃっ――」

 

 臆病にも後ずさりをする姿はとても滑稽で、なおさら殺意が湧いた。この子の断末魔を聴けば、頭に響く彼女たちの声が報われるだろうか。

 

「言わない、誰にも言わないから……!」

「神浜の言葉は信じられないわねぇ」

 

 殺す。金棒を振り上げて、ソウルジェムに狙いを定めた。

 

「お願い……()()()……」

 

 誰にも届くはずのない無責任な言葉。

 命乞いをするぐらいなら、逃げたほうがたった数秒とはいえまだ生きられるものを。

 

 振り下ろす。魔法少女の魂である急所を砕けば確実に死ぬ。

 

 

 

 

 

 ――その、はずなのに。

 

 

 

 

 

 「止まれ」と、誰かの声が聞こえた。

 振り下ろそうとした金棒が意思に反して不自然に止まる。腕が自分のものではないように微動だにしない。

 

 異変はそれだけじゃない。暗闇の中から影の手とでも呼ぶべきものが伸びてきて、ローブの魔法少女を連れ去っていく。

 さらには、逃すものかとひかるが追いかけようとした瞬間、どういうことか私たちの変身が解けた。

 

 そして、その言葉を確かに聞き届けたかのように、そいつはいた。

 羽根帽子と緑と黒の衣装。綺麗な淡い栗色の髪。冷たい視線でカトラスを向ける、魔法少女が。

 

「帆秋……」

 

 見紛う容姿につい口からその名字が零れた。いつか聞いた思い出話が頭を過る。

 私と同じ――その名前を!

 

「帆秋……くれは……!」

 

 

 




■今回の内容
 第二部第1章『前書きは靴音と一緒に』
 『Crimson Resolve』(一部分)

■あらすじ(むすんでひらいて座談会)
 ・自動浄化システムを求める魔法少女グループの登場
 ・イブが分裂したことで生み出された存在『キモチ』
 ・キモチの石を巡る戦いの始まり
 ・佐鳥かごめに憑いている風の伝道師のウワサ

■なぎたん
 第一部で旧車両基地をスルーしたのでお尻ペンペンをここで回収。
 なぎたんはそういうことする。

■くれはちゃん
 知ってて少人数で攻めてくる単なる馬鹿。
 調整でずっと攻撃力を上げていたため異常なことに。魔法少女の身体能力マジパネェっす!

■紅晴 結菜
 復讐者系魔法少女。遂に出てきたくれはちゃんの名前の由来最後の一人。こっちが本家。
 奇しくもおそらくくれはちゃんと同い年。なぜか被った。

■大庭 樹里
 火炎放射器魔法少女。一人称は樹里サマ。
 この頃はまだかなり尖っているが、そのうち樹里ちゃん扱いになる。専用メモリアはサイコ。

■笠音 アオ
 ゲーマー系魔法少女。だが武器は斧のパワーファイター。
 彼女の本番は中盤以降である。

■ウェルダン
 樹里サマが魔法少女になってから知った言葉。
 最近知った言葉だから得意気に使っているんだとか(『時を越えた大宴会』参照)。

■キモチ
 元々はエンブリオ・イブ。定期的に開催されるイベント、キモチ戦では記憶を失ってるのか(すっとぼけ)毎回新たな敵……!? と驚く。RTA的には特に関係ないのでスルー。
 なお、くれはちゃんのパラメータでもっとも高いのは『悲嘆』。
 
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。