マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート70 オマエにずっと手を振る

 

 涼子さんと歩くRTA、はーじまーるよー。

 クラスメイトの彼女と一緒に帰ることにはなんの苦労もありません。帰りに買い食い行こうぜ!

 

「いきなり魔法少女とかち合ったんだってな? お前さんも破天荒なやつだなぁ!」

 

 なっはっはっと笑いながら両手に肉まんを持つ涼子さんを引き連れてる理由はただひとつ。他の時女一族のメンバーと出会いたい!

 ユニオンとはもう出会ってるでしょうが、くれはちゃんに面識はないです。あ、ない。

 

「この前うちの大将がな、マップを作ったとかで神浜に慣れてない分家のを案内してたんだ。それで親睦を――おっと、紹介してなかったか?」

 

 はいここ!

 

 どうやら時女一族が神浜で行動するために必要な探索イベントが行われていたようです。

 各地から集結した時女っ子の中には、都会での生活に慣れておらず、電車にすらまともに乗れない子もいます。大将もそうだったからね、仕方ないね。

 

 なので探索イベントが発生しないと支障が出ます。田舎魔法少女は戦闘のことしか考えないのか(偏見)。

 

 事前に時女一族のメンバーと出会えていない場合は夏希ちゃんをひたすら連れ回すことになるのですが、今回は南凪パワーで短縮。パパパっと涼子さんに約束を取り付けておいてもらいましょう。

 

「そりゃあいい。霧峰村にも連れてこうか?」

 

 申し訳ないが村行きは大ロスなのでNG。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました水徳寺。

 時女一族の拠点となっているこの場所は、敵対状態で侵入するとてんやわんやの大騒ぎになってしまいます。アンブッシュ怖いでしょう……。

 

 にしてもどんだけ広いんでしょうねこの寺。分家まで寝泊りしてるので下手すると迷います。

 

 平常時もモブの見張りはいますが、今回は涼子さんの連絡で通れまおっと……さっそくエンカウントだぜ。

 

「帆秋くれはさんですね? 涼子さんから話は聞いています。私が案内いたしますね」

 

 笑顔で迎えてくれたのは住職ではなく、水色の髪でしかも魔法少女っぽい。

 いきなりのご挨拶をしてくれたのは時女一族の『土岐(とき) すなお』。見ての通りのナイスバディな時女一族のサブリーダーのような魔法少女です。でもこいつすげぇアサシンだぜ?

 

「こちらです。静香、ちゃる、連れてきましたよ」

「あなたが……」

 

 出たぜ! すなおちゃんと彼女たち二人が今回の目的!

 

 和風黒髪ツインテールのほうが『時女 (ときめ) 静香(しずか)』。

 彼女は時女一族の本家であり、リーダーです。カタカナがひらがなになるわ来たばっかりだと改札に通せんぼされるわと田舎らしさが出てしまうのはご愛嬌。パワーで解決しがちなところがあるので注意しましょう。申し訳ないが斬ってから考えるのはNG。

 

 そして小さくて髪を一本結んでるほうが『広江(ひろえ) ちはる』。

 "ちゃる"と呼ばれて語尾が"だよぅ"になりがちな子ですね。時女一族スタートの場合、結成イベントの実質主人公でもあるため、彼女と行動することも多いでしょう。ちゃる幼馴染ルートがあるってこれマジ?

 

「環さんからだいたいのことは聞いたけど、直接会えて良かったわ。色んな人からあなたのことを聞くから神浜を知るためにも話してみたかったの」

「わたしも! すっごく頼りになる人だってみんな言ってたよぅ!」

「不審者、とも言ってましたが……」

 

 じゃあ魔法少女ファイルにチェック入ったんで帰りますね。

 なんて直帰行動を普通ならするところですが、このまま泊まり込みとしゃれこもうぜ。

 

 というのも、このチャートでは涼子さん以外の時女一族の面々と信頼度を上げる時間がありません。多く関われないのならここで一気に稼いでしまおうという策です。

 

 さらに今後の章のための対処もしておかないと、後半はくれはちゃんが不眠不休で走り続けるハメとなりタイムも体力も酷い有様になってしまいます。ただでさえ第二部は複雑なのにやってられねぇぜ。

 

 主に対象は本家の静香ちゃんです。彼女は外との繋がりを断った集落で暮らしていたため純粋で、義務教育も完全には受けてません。

 つまるところ影響されやすく、悪は滅すべき思想になるとユニオンどころか時女を離脱し、本家が離脱したのではなく分家が離脱したとまで言い始めます。悪堕ちか~?

 

 もちろん発生するとロスなので事前に封じておきます。

 そのための散策? あとそのための休日? 神浜を案内するという名目で今日一日付き合ってもらうぜ!

 

「そうね……南凪区のほうはあまり行ってないし、涼子の学校があるところだものね!」

 

 と、ドキドキワクワク南凪観光ツアーの前に、道中必ず静香ちゃんの固有魔法『阻止』の話を聞いておきましょう。

 

「私の魔法?」

「静香ちゃんの魔法はね――」

 

 くれはちゃんの『停止』となんだか似ていますが、こちらは燃費も使い勝手も上。水流の流れを阻止することや、透明な壁を作って移動を阻止すること、魔法の発動を事前に阻止も可能です。対象を直接認識しなくてもとりあえず阻止でも効きますし、文字通り阻止に特化していますね。ぜんぜん止められない『停止』くんはさあ……恥ずかしくないの?

 

 聞いてる間にオッス(到着)。

 時女三人組を引き連れてやってきたのは~ブロッサムの次に見た学童保育~。

 

「あら、くれはちゃんと……お友達?」

 

 移動ルートの途中にあるので無駄なく入れるなんて良い立地だぁ……。

 

 ここで静香ちゃんと真里愛さんを会わせておきましょう。ザ・事前に絵本で情操教育!

 

 そして今後は暇さえあればかこちゃん、ねむちゃん、てまりちゃんなどの文系魔法少女を連日総出でぶつけ、本大好きのビブリオマニアになってもらいます。できなきゃリセです。

 やらなくてもさなちゃんの絵本で解決するのですが、いかんせんタイミングが遅いので先にやってしまいましょう。

 

 もちろんいきなり読めとは言えないので、こうやって案内の名目で教えておけば勝手に話が繋がります。

 

「あっ、この絵本知ってる!」

「有名なものはだいだいあるみたいですね」

「やっぱり都会って物がたくさんあるのね」

 

 ちなみに、かこちゃんの実家の夏目書房など本関係の場所でアルバイトすると賢さも上がります。お金も貰えてパラメータも上がる。これってぇ……勲章ですよ? まあくれはちゃんに賢さはいらないんですが。

 

 このあとは財布を解放して色々やるのでじゃ、流しますね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南凪区か~ら出た途端水徳寺の中に仮面のモブがずらっと登場。帰ってきました。

 

 もう夕飯時ですね。帆奈ちゃんとラピヌお姉さまは好きにやってるので家のほうはどうでもいいんですが……なんか時女一族に足んねぇよなぁ?

 すみませへ~ん! 帆秋ですけどぉ……涼子さんま~だ時間かかりそうですかね~?

 

「待たせたな! メシだぞー!」

「わー! 涼子ちゃんのご飯だ!」

「おう、焼肉だ! 今日はくれはも来てるんだ。どんどん食べてくれ!」

 

 お前寺で肉食っていいのかよォ! 良いんです。

 涼子さんは僧侶じゃないので肉も食べます。それどころか好物ってこれマジ?

 

 しかし、このタイミングだともしや……。

 

「今日はいつも以上に食べるわね」

「餓死しかけたからな! 一緒に食おうと思って朝と昼抜いたら魔女と出会っちまってなぁ、予定外に体力使ったんだ」

 

 あっ(察し)。

 このまま話を聞いてみましょう。それもしかして誰か魔法少女と出会ってませんかね~? 結構良い脚してるけどなにかスポーツやってたの? 

 

「ああ、脚が引き締まっててスゲェのがいたんだよ。陸上やってるって言ってたしありゃあ金剛力士像が如しだな! パンもくれたし良いヤツだ!」

 

 はい確定! 

 現在涼子さんは『オマエにずっと手を振る』というイベント中です。

 

 これは涼子さんとプロミストブラッドに所属する『鈴鹿(すずか) さくや』とのイベントで、敵対関係ながらも二人の信頼度が上昇します。進展次第じゃあ所属グループが変わることもあるらしいっすよ?

 さくやの金剛力士像のような脚にギリシャ彫刻のようなガタイがコラージュできれぱ完璧なんだよな!(和洋折衷)

 

 つまるところ、チャートに大きく影響しないのでどうでもいいです。

 プロミストブラッドと絶賛敵対中のくれはちゃんが前に出たら問答無用で刺されますし、さくやは一応神浜市立大附属に潜入中なので、情報がないと見破ることができません。

 

 この後は寝不足かつ、靴を履いてなかったさくやがイジメを受けているのではないかと判断し、涼子さんは附属に乗り込みます。

 次の日もまた乗り込み陸上部の生徒と協力したり、スニーカーを探したり、大変ですね(他人事)。薄情なようですが、あらゆるイベント全部に関わってたらRTAじゃないってそれ一番言われてるから。

 

 じゃあ夜会話して寝ますね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

 さっそく涼子さんとちゃるを連れて附属に乗り込みましょう。関わってるって? なんのこったよ(すっとぼけ)。

 

 思いつきで行動してるわけじゃなく、調査に失敗して変なルートに入られても困るので、援軍送って短縮からチャート通りに動く判断をしたまでです。

  

「"失せ物探しは探偵の第一歩だよ、ちはる君"……わたしの中の等々力耕一もそう言ってるよ!」

「頼むぜ名探偵。隠されてんなら見つけねぇとな!」

 

 まず、時女一族からちゃるを連れて来ることで涼子さんのブレーキ役になってもらいます。

 そして部外者くれはちゃんご一行が校庭で好き勝手してることで騒ぎが起きるので、そこを連絡。ハロハロー? ささらんこっち来て?

 

「……うん、くれはさんかなって気はしてた。どうしたのこれ」

 

 ささらの名字は美凪なので実質南凪。南凪パワーで攻略しましょう。

 彼女はバドミントン部兼任の生徒会メンバー。引き連れていれば校内でそうそう問題になることはありません。

 

 というわけで二人を涼子さんに預けてくれはちゃんは次に行きましょう。じゃあな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神浜を駆け巡って戻ってきました水徳寺。

 くれはちゃんがたった一晩で家に帰るわけないんだよなぁ……あっつ~! 静香ちゃん、風呂入ってさっぱりしましょうよ。

 

「その前にひと汗流したいって? ええ、いいわよ。とれーにんぐね!」

 

 技量もなにもないくれはちゃんでも時女一心流とぶつかれば多少は成長します。明日香の竜真館で信頼度上げのついでに学んでたのは薙刀だからね、仕方ないね。

 

 夜になるまで修行するので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしの人生を変えたのは、たったひとつの電話だった。

 衛星写真にすら載らない深い森にある時女一族の里の存在や、自分がその分家だってこと。そして"(かんなぎ)"――魔法少女が本当にこの世界にいて、時女一族は裏から日本を守ってたってこと。色々な真実を知るきっかけは、そんなひとつのもの。

 

 広江家の伝統で古典を勉強させられてたのも意味があったり、ハッとさせられることもあった。

 真実っていうのは案外近くに転がってるものなんだって等々力さんも言ってたけれど、わたしをびっくりさせるには十分すぎたんだ。

 

 そんな時女一族の里、霧峰村では静香ちゃんやすなおちゃんと出会ったり、とっても大変な事件が起きたり……とても一言じゃ言い切れない。色んな人の歴史と想いが交じった出来事だった。

 

 でも神浜に来た理由は簡単だ。

 自分たちが悪鬼――他のところでは魔女って言うらしいけど、いずれそれになるって聞かされたわたしたちは回避手段を探した。そこでキュゥべえに聞いたら自動浄化システムっていうのがあるって言うんだ。

 

 だから時女一族は都会に出向いたんだけど……。

 

 神浜マギアユニオン。

 プロミストブラッド。

 ネオマギウス。

 

 なんてグループが他にもあって、8つのキモチの石を集めたら自動浄化システムが手に入るとかなんとか! もう大変だよぅ!

 

「う~ん……」

 

 時女一族だって分家の人たちも加えてすごい人数になってきてる。

 その人たちのことも覚えて、村の特産品とか観光のこと、神浜でこれからやることも考えてってパンクしそう。

 

 頭を悩ませる出来事の清涼剤になったのは、涼子ちゃんの友達を紹介するって話だった。

 

 涼子ちゃんっていうのは、先に神浜で活動してくれていたお寺育ちの分家の人。ちょっと驚く行動もあるけれど、とっても頼れるんだ。

 転校したって言って見せてくれた制服は青と白のセーラー服で、通ってる海沿いの街並みにとっても似合うな~って思ったのをよーく覚えてる。

 

 友達ってどんな人なんだろうな、気が合うって言ってたし似たような感じなのかな。

 そんなことを考えること数日。ついに、爽やかな制服を着た人がもう一人現れた。

 

「こちらです。静香、ちゃる、連れてきましたよ」

「あなたが……」

 

 帆秋くれはという人に、静香ちゃんが驚いたような声をあげたのも無理ない。

 だって、とびっきり綺麗なんだ! 神浜に来てからたくさんの人を目にしたけど滅多にいない。髪はふわふわだし、目はキリリとクール。立ってるだけなのに雰囲気が都会! って感じですごいや。

 

 でも一番良かったなって思ったのは、固有魔法が微塵も悪意を感じさせなかったこと。

 

 わたしは魔法少女になってからというもの、悪意を臭いで感じることができるようになった。

 まるで探偵の勘みたいで気に入ってるけど、慣れてないからか自動で発動しちゃうのが問題で、人混みの中に入っちゃうと悪意で気分が悪くなっちゃうんだ。

 

 だから同時に納得した。確かに涼子ちゃんの友達だ。悪い人なわけないもん。

 

 でもそれは……ちょっと変なところもだった!

 

「私が南凪を案内するわ」

「そうね……南凪区のほうはあまり行ってないし、涼子の学校があるところだものね!」

「あと今日泊まるから」

「ええ! ……ええ!?」

 

 急に水徳寺に泊まるって言い始めたり、我が道を進むって言うのか、そういうところまで涼子ちゃんの友達っぽい!

 

 もっとも、頼れるところも同じ。南凪区の案内はすごい的確だった。

 

 南凪区は見るところが多い。中華街があったり、高級住宅街があったり、市外でも時々名前を聞くほど有名だから、わたしも南凪区のことはちょっとだけ知ってた。

 

 それに……ミナギーランドがあるんだもの!

 それは隣接するミナギーシーと合わせて有名な神浜市のテーマパークで、クリスマスはなかなかチケットが取れないほど大人気! ミナギーシーホテルは空港からの直通バスも出てる超人気スポット! 松宮市にいた頃にも旅行で行った話を聞いたり、お土産を買ってきた子がいたもん。

 

 けどね、そういう目立つところだけじゃない、実際に住んでる人の目線で街を見られたんだ。

 

 学校とか保育園とか、観光地じゃないけど、わたしたちが守るのはそういう暮らし。静香ちゃんが分家の子たちを案内して見せたかった景色と同じなんだ。

 

 きっとくれはさんも、そういうのを見せたくて誘ったんだと思う。

 そう思うとなんだか嬉しくて、同じ方向を向いてるって思えるよね。

 

 そんな中、ひとつ気になったのは、くれはさんの魔法――『停止』のことだった。

 名前からして静香ちゃんの『阻止』と似ている。くれはさんも涼子ちゃんから聞いたみたいで似た魔法を持ってるから話してみたかったんだって。

 

 聞いてみると、『停止』は静香ちゃんがやったみたいに物の動きを止められるらしい。

 でも『阻止』は発動とか物理的に止めるとか、そもそも対象を選ばなくても阻止できる。消費する魔力だってぜんぜん違う。くれはさんのは凄い使っちゃうそうだ。

 

 結局、本人も「私もよくわからないもの。止められるから『停止』って言ってるだけよ」って言ってたし、理由もなにも解明できなかった。

 ただ、静香ちゃんは興味深そうで、また話してみたいなんて言ってたなぁ。

 

 ……でも、ね。

 お昼にしましょうって、北養区のウォールナッツってお店に連れてこられたけど――

 

「私一度食べてみたかったものがあるの。この日の本らんち! 巫にふさわしいし、これを全員分!」

 

 えっ。

 

「わかりました。お子さま――いえ、日の本ランチを四人分ですね」

 

 なんて、中学生になってからお子さまランチを食べることになるとは思わなかったよぅ!

 でもあんなに嬉しそうな笑顔を崩すのは忍びない。すなおちゃんも少し頬を染めてるけど微笑んでるだけだし……なんて、思ってたけど。

 

「お、おぉ……!」

 

 運ばれてきたものはなんというか、レベルが違う。たとえるなら子どもの好きなものよくばりプレートデリシャスデラックスだ! わたしの中の等々力耕一も唸っている!

 

「誰しも童心に帰りたいときはありますからね。お子さまはもちろん、年配の方までご満足いただける品を提供するのがウォールナッツです」

「おいしいわね」

「ないふとふぉーくの動きが技のように綺麗だわ……これが都会の作法なのね」

 

 くれはさんが食べてるのを見ると最初から大人向けに作られた料理に見えてくる。

 実際食べてみるとおいしくて、わたしもとっても大好きになったんだ。

 

 それからというもの、夜になったら涼子ちゃんが焼肉をやったり、寝る前になったら急にくれはさんが話しかけてきたり……次の日には大捜索に連れていかれて名探偵なんて言われたり!

 

 くれはさんがまた泊まるって言ったのには驚いたけど、もっと記憶に残ったのは……夜中、涼子ちゃんとくれはさんが話していることを立ち聞きしてしまったことなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水徳寺から見える今日の月は妙に綺麗で、あたしの心を透かして見ているような、あるいは、隠し通せねぇとでも突き付けているようだった。

 

 そうだ、平穏な一日であったとは言えねぇ。

 あたしは今日、プロミストブラッドの鈴鹿さくやと心友――離れていても心で繋がる友になり、絶交したのだから。

 

 さくやが学校で孤立してるように見えたのは、自分でやったことだった。

 

 原因は過去。かつて二木市で起きた血の惨劇っていう戦いは、魔法少女同士の殺し合いだったそうだ。そこで、親友を自ら殺してしまったんだと。だからもう友達を作らず、信じないようにしていたらしい。

 

 悲しみは想像するしかできねぇ。殺す前に無理やり止める方法ならいくらでも思いついてもよ、終わっちまったあとはなんて言えばいいんだ。

 過去は変えられない。イジメられてたわけでもない。孤立も自ら望んでる。あたしにそれは救えねぇ。

 

 だけど、偶然出会った栄総合学園の黒髪の魔法少女から聞いたんだ。智珠らんか……って言ったか。悪夢でろくに眠れてねぇんだって。

 

 ならよ……それだけは解決できる。

 あたしが親友になって、直接ぶつかる。死なないし殺されなきゃいい。そうすれば殺してしまうなんて思い込みの鎖から解き放つことができる。お前さんは前に進めるんだって言ってやれる。

 

 もちろん、言葉だけの意志なんて受け入れてもらえるわけもない。

 証明のためだ。正面から戦って、攻撃は全部耐えきった。あっちも本気でやってもらわなきゃ意味がない。

 

 朝から飲まず食わずで調査して、戦って、疲労は限界でも、遂に聞こえた『私の心は本当に救われたから』って言葉だけで、あたしは十分だったんだ。

 空腹を満たすために二人で店に入って、好きなだけ注文して他愛のない話をして。その間だけは普通の友人で。

 

 全部の戦いが終わったら本当の親友になる。

 死なないし、殺されない。

 

 その約束をして――絶交した。さくやではなく、鈴鹿サンと呼ぶ、その仲になるため。

 

「涼子」

 

 月を見上げてそんな物思いにふけてると、凛とした声が聞こえた。

 

 振り返ると想像通りの姿があった。くれはだ。

 今日も泊まっていくらしくて、うちの大将と稽古してたとか。行動が読めないなりに、誰かのためになる行動をしてるのは間違いねぇ。

 

 だけれども、プロミストブラッドのことがあって、心には雲がかかったようなわからなさが満ちている。

 言葉巧みに聞き出すなんてできないガサツなあたしは、直接ぶつけることにしたんだ。

 

「ちょうどいい、聞きたいことがある」

 

 隣に立ったくれはに顔を向ける。相変わらずの真顔は、しっかりとあたしを見ていた。

 

「まだ短い付き合いだけどよ、お前さんは理由もなしに無法をするやつとは思えねぇんだ。魔法少女とかちあったって話……なにか、大事なことがあったんだろ?」

「襲われてた子を助けたかったのよ」

「だろうなぁ」

 

 そりゃそうだ。目の前で誰かが傷つけられてたら、あたしだって飛び込んでたに違いない。

 

 だけどこれは、なんだろうな。それで終わらせちゃいけねぇ気がすンだ。

 令の言葉が引っ掛かっている。『もしも、自分の身を犠牲にしようとしたら絶対に止めて欲しい』って意味が見えた気がした。

 

 "助けること"とは、どういうことか。

 単なる動作じゃねぇ。自分の身にも思い至ることがある。

 

 きっと、あたしが言うべきことは決まってる。

 そんな思考を超越した直感に身を委ねた。身の上話だって前置きをして、自然と口を開いていたんだ。

 

「あたしな、少し前、時女一族のやり方に疑問を持ったことがあるんだ」

「どういう」

「大将はキュゥべえがいたから日の本は救われてきた、だから言う通りに自動浄化システムを受け取ればいいって言ったが……そうじゃねェ、日本のためってのが引っかかったんだ。その大義があれば自分はどうでもいいのかって」

「……自己犠牲は、ダメよ」

 

 くれははそれをわかってる。あたしもそう信じてる。

 だけど、止めて欲しいと言われた理由が妙な含みがある返答を出させたみたいだ。わかってるようでなにか迷っている。そう思えた。

 

 「ああ」と強く重く返答する。抱えてる想いは同じなはずだ。

 

「英雄じみた自己犠牲は偉くて尊いかもしれねェけどよ、残された側はそんなこと思えないんだ。それが、あたしを置いて消えたかーちゃんと重なった」

 

 英雄として身を捧げて人々を救ったとか言われても、誇らしさなんて欠片もなかった。

 その陰であたしは大変な思いをして生きてきたんだ。そんなことよりも、生きて傍にいてくれればとさえ思った。

 

 ただ、浄安寺に残された音声記録では、最期まであたしを気にかけてくれていた。

 おこがましい考えかもしれねぇけど、捧げたくて捧げたわけでも、世界を救いたかったわけでもなくて、あたしのためだったんじゃねぇか……って。

 

「けれども、きっと本人は犠牲とか考えてなくて、守りたいものを守っただけ。それは後先なんて考えなくて、守りたいモン守って、許せないモンを許さなくて……つまりはあたしと同じだったわけだ」

「涼子もそうしたいの?」

「……なんか、あるみたいだな」

「世界でも、国でも、誰かでも。守りたいもののために死んでしまったら、結局は同じなのよ。残される人も、悲しみも……」

 

 くれはの言葉には実感が籠っていて、適当な反論をするために言ってるだけじゃないとはすぐにわかった。そもそも、こいつはそんなことしねぇとも。

 

「だから私は自分を犠牲にしないと決めた。でも、そうでしか救えないものがあったのかと思ったの。憧れていた人が、そうだったから」

 

 遠い、遠い目をしていた。

 ここにいない誰か、死んじまった誰かを思い描くように、虚空を見つめていた。

 

 そらが正しいのか正しくないのかなんてわからない。人間は単純にできてない。白か黒かなんて決まりきってねぇ。

 だからこそ、大層な掲げるべきものを胸を張って言えたんだ。

 

「だけどあたしは死なねぇ、殺されねぇ。心のままに生きて生きて生き続けてやる。守りたいもン守って誰も死なないんだ。これなら良いだろ?」

「そうね、それは……良いことよ。私も死なない。死なないし、殺されない。けど、私に力があれば、もっと――」

 

 ああ、お前さんならきっと、いつか迷いを断ち切れる。その答えを見つけられる。

 あたしもそう、信じてンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、くれはは慌ただしく水徳寺から出ていった。

 朝飯ぐらい食ってけばいいのに……ってのは、飲まず食わずで行動してたあたしが言えることじゃねぇな。

 

「あれ、静香ちゃん朝から読書? って、えっ……眼鏡だよぅ!?」

「本を読むときはこうすると良いと聞いたわ」

「もちろん伊達ですよ」

 

 今日も水徳寺では時女一族が騒がしい。

 結局のところ、あたしと本質は相反することのない良い仲間ってことなんだ。

 

「かーっ、大将、よくこんなに読めるな! あたしは無理だ!」

「私も難しいわよ。けど、昔の人の考えを知ることができて、時女のためになるのなら……」

「寝てるよぅ!?」

「お布団に運んでおきましょうか」

「二度寝!?」

 

 良いヤツも悪いヤツも、どんなことだって知らなきゃ始まらねェ。

 大将が霧峰村以外の世界を知って歩んでくのは頼もしい限りだ。

 

 だから、あたしは感謝してんだよ。きっかけをくれたお前さんにな。

 

 




■今回の内容
 『オマエにずっと手を振る』
 『深碧の巫』(一部分)
 『みたまの特訓 静香編』(一部分)
 魔法少女ストーリー 南津涼子 1話『ただの血筋』(一部分)
 魔法少女ストーリー 南津涼子 2話『すれ違う血脈』(一部分)
 魔法少女ストーリー 南津涼子 3話『かけがえのない魂』(一部分)
 メモリア『放課後は大忙し!』

■時女 静香
 時女一族のリーダー。七支刀からビームが出る。
 謎のインテリ静香ちゃんルートへ。これでもう義務教育を受けてないとは言わせない。

■広江 ちはる
 『深碧の巫』では実質主人公の岡っ引魔法少女。~よぅの口調が特徴的。
 ギャラリーには彼女の等々力耕一バッジスチルが大量にある。

■土岐 すなお
 なんだか食べ物の話が多い魔法少女。
 『深碧の巫』では選択肢次第でよくちゃるを殺してしまっている。殺しましょう。

■くれはちゃん
 比較的まともな行動しかしてないので勘違いされている都会人。
 涼子さんのおかげかもしれない。

■鈴鹿 さくや
 プロミストブラッドの魔法少女。固有魔法が『加速』のRTAのお供。
 いつからか神浜市立大附属に潜入している。栄総合学園には……?

■涼子さんの母親
 警察の治安に関する仕事をしていた。故人。
 地下組織とひとりでドンパチやって、外国の工作に見せかけた無差別テロを阻止、戦争を未然に防いだらしい。神浜どころかこの世界危険すぎねぇか?

■ウォールナッツのお子様ランチ
 『Winter Recollection~まだ透明な私たちより~古の物語』に登場する。
 季節イベント特有のよくわからない時系列なため早く登場してもいい。

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