マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート71 微笑みと火花

 

 キモチ戦をスルーするRTA、はーじまーるよー。

 

 第二部第2章『微笑みと火花』ですが、やらなくていいです。

 

 プロミストブラッドはネオマギウスを吸収していないため、神浜の土地勘や情報が少なく、この章の結菜さんたちはキモチ戦にしか現れません。楽ですね。

 市内でのランダムエンカウントも少ない。妨害イベントも許容範囲内に収まる。お前なかなか~良い感じじゃねぇか。

 

 それにユニオンはやちよさん、なぎたん、みふゆさんが揃っているので、ハードモードでもそうそう負けません。

 注目もくれはちゃんが稼いでいます。闇討ちされるのはこいつだけです。お前が盾になるんだよ!

 

 スタンプラリーをしたり、中央区でピュエラケアと出会ったり、ユニオンと時女が共同でキモチを探したり、そこにミスドが来たりと第2章の内容自体はありますが……特に関わりません。タイム伸びるからね仕方ないね。

 

 そんなことより必要なのは、この時期に神浜に来る『里見(さとみ) 那由他(なゆた)』と出会い、一緒にいる『氷室(ひむろ) ラビ』と遭遇することです。

 手っ取り早く家に突撃してインターホンを連打してもいいのですが、スーパー使用人ラビさんに通報されるのでダメだな!

 

 なのであした屋で出会ったみかげちゃんにみたまさん経由で会うか、里見那由他が訪れる里見メディカルセンターで面会のふりをして張り込むのが良いですね、ええ。

 

 ここでみたまさんと会うとメインストーリーに巻き込まれる可能性が高いため、済ませなくてはならない行動をしつつ、里見メディカルセンターを往復するのがベストです。お前が行くのは駄菓子屋ではない……病院だ!

 

 そんなわけで到着しましたが……。

 

「ねーねー、いつまでここにいるの?」

 

 北養区山中を駆け回っていたラピヌと行動ルートが一致してしまいました。

 こういう時は売店に連れ込み、くれはちゃんの生活費と引き換えに待機していてもらいましょう。

 

 

 

 ~少女張り込み中~

 

 

 

 

 ぜんぜんこない(ロス)。

 いつものランダム要素くんがかなり邪魔をしているっぽいですね。プランBで行きましょう。プランBのBは"特攻(ぶっこみ)"だオラァ!

 

 おっと電話。

 

『アタシだ、都だ。ちょっと竜真館まで来い』

 

 なんとマジトーンのみゃーこ先輩に呼び出されてしまいました。不思議ですね。

 実のところ、プランBの仕込みは終わってるので素直にホイホイと出向きましょう。ラピヌは遊び疲れたら帰ってくるでしょ(適当)。

 

 竜真館に来た途端、なぎたん、やちよさん、いろはちゃん、みゃーこ先輩のユニオン中枢部がずらっといるんだもん。ビックリしたよ。

 

「来たか、帆秋」

「帆秋さん、どうして呼ばれたかわかってるわよね」

「だいたいのことは観鳥さんに聞きました……」

「アタシの擁護は期待するなよ、ってお前……」 

 

 あれーおかしいね空気が冷えてるねー。

 

 そりゃあもちろん、単独でプロミストブラッドの拠点に殴り込みをかけ新聞沙汰にし、挙句の果てにネオマギウスに加入してしまったため、神浜マギアユニオン全体の信頼度がダウンしているせいですね。各キャラの信頼度にもデバフがかかり中です。

 

 なぎたんは微妙な表情で十七夜どうしたァ!? と言いたくなりますが、仕打ちを考えたら当たり前だよなぁ?

 拠点殴り込み直前までいたことで信頼度にデバフがかかったのですが、時雨ちゃんとはぐむんの東連れまわしツアーでリカバリーしたので差でやられたのでしょう。生きてる証拠だよ。

 

 くれはちゃんは右から左にお説教を受けてるでしょうが無視だ無視!

 ネオマギウスにいる間はずっとこんな感じなので気にするだけ無駄です。次行こうぜ。

 

「――事情はわかったわよ。だけど余計な手出しはやめなさい」

「君の気持ちを理解しているつもりだ。宮尾君と安積君、東の子を頼むぞ」

「本当にそれだけなのかな……」

「なんかコイツ隠してないか……?」

 

 終わったらななか組長とこのはと会いましょう。

 神浜マギアユニオンに直々に呼び出されたとあれば、二人にも影響が出ます。自分たちのチームと家族を守りたいから信頼度が下がるのは当たり前でこれは痛いですね、これは痛い……。

 

「そうですか……私たちは自分の安全を最優先します。一旦会合も取りやめて距離を置きましょう」

「私も家族を守らせてもらう。一度プロミストブラッドの魔法少女にも遭遇したし、厄介事には巻き込まれたくないのよ、最近は中立を証明するために用心棒を始めたの」

 

 はいここ!

 

 このはから中立の護衛の話が聞くことが目的です。

 彼女たちの用心棒稼業で依頼されるのが里見那由他の警護。つまりアザレア組と関係を持っていれば、ここまでにどれだけ運が悪くともメインストーリーに関わらずに遭遇できます。良い仲間を持ったなぁ……。

 

 第2章の間はこのイベントをキーにすると簡単に進みます。しかも会合が開かれることがなくなり、時間を取られることもありません。だから騒がれる必要があったんですね。

 

「ただ、手が足りないときは声をかけてくださいね」

「……私が先に言おうと思ってたのだけど」

 

 なんか信頼度ぜんぜん減ってない……減ってなくない?

 まあいいや。このはを追いかけてイクゾー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてついて来るのよ」

「えー、このは嬉しそうじゃん! あちしわかる!」

「最近は会えないこと多かったからね~」

 

 つつじシスターズに黙って付いていくと、そこにいたのはマミさん同様中学三年生とは思えない系の魔法少女!

 

「里見那由他ですの。今日はよろしくお願いしますの」

 

 語尾がですのの彼女こそ里見のなゆたん。

 名字でお分かりの通り、灯花ちゃんの従姉妹です。灯花ちゃんパパが里見メディカルセンターの院長で、その弟が民俗学者の里見太助。なゆたんパパですね。

  

 彼女は行方不明の父親の手がかりとなる灯花ちゃんパパに会おうとするのですが、本来第2章では護衛を頼みません。里見メディカルセンターに行こうとしたらやっぱり帰ってなんやかんやでプロミストブラッドを騙ったと勘違いされて襲われるという散々な目に遭います。その結果、第3章で護衛を頼むんですね。

 

 しかし、今回はミスドの影響力を下げた結果、神浜で幅を利かせていないのでメインの襲撃は起こりません。

 そこで世間を騒がす爆発事故。謎のウサギの魔法少女(すっとぼけ)によって起こされたことを知ると、危ないだろうからと護衛を頼むので早めに遭遇することができます。

 

「知り合いの魔法少女はいるにはいるんですの。ただ少し不在にしていて……帰りを待つまで中断したくなかったんですの」

 

 と、逆に氷室ラビと出会うタイミングが遅くなるので一長一短ですね。

 攻めるチャートならなゆたんに出会うのを運任せにしてもいいんですが、まず完走しろ(走者の鑑)。

 

 しかし神浜……第二部……護衛イベント……なにも起きないはずもなく、平和な空間に唐突なエンカウント。

 

「お前たちはこの前の……!」

「あの服、プロミストブラッドね」

「またあちしたちを狙いに来たなー!?」

 

 モブに遭遇しましたが運が悪いとかではありません。護衛イベント内に含まれてる戦闘なので想定内です。これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 そしてこの戦闘、すぐに向こう側の援軍が来ます。

 

「待った、ここで叩いてもなんにもならないよ。本当にユニオンじゃないかなんてわからないけどさ」

「さくやさん……!」

「まあユニオンなら意味は――って、その武器、カトラス……っ!?」

 

 これですよ、鈴鹿さくやっていうんです。涼子さんなんかと関連イベントがあるんですよ。

 彼女は固有魔法『加速』と短剣を使う高速戦闘型なのでくれはちゃんとは奇しくも同じ構え。戦うとどっこいどっこいの戦いですが……。

 

「カトラスって、まさかあいつが拠点を襲った魔法少女の……!」

「どうしますさくやさん!?」

「……撤退しよう。聞いた話じゃ正面からじゃ勝てない。なにより、戦うのは私たちじゃないほうが良い」

 

 さくや? 今道端で襲撃犯と遭遇して戦闘になっています。すぐ撤退できますか?

 と、そんな感じで勝手に帰ってくれます。戦いすぎると連動して涼子さんの信頼度が下がるので勝手に戻ってくれて良かった~って思うわけ。

 

「すげーっ! 逃げてった!」

「新聞で見たけど随分派手にやったのね」

「爆発事故を起こしたのあなただったんですの……?」

 

 なんのこったよ(すっとぼけ)。

 この後は里見メディカルセンターに送り届けて灯花パパと後日会う約束を取り付けるだけなのでもう帰ります。じゃあな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 里見とくればまた里見。

 やってきました灯花ちゃん別荘ハウスもといみっふの家(本人不在)。本日はここで会う約束をしています。

 

 ちなみに、灯花ちゃんをなゆたんにぶつけると、民俗学を嘲笑い始めなゆたんのこともバカにしてクッソ煽り始めるのでロスります。信頼度は下がるわイベントは進まないわでもう気が狂う! 

 

 この後は自由時間を使ってミラーズに潜り、ターミナルさん!? がある階層まで進むのですが……ヘイ灯花ちゃん! ミラーズの探索状況は!?

 

「変なこと聞くにゃー。ターミナルって名付けたって知ってるでしょー?」

 

 でしょうね。

 『魔女たちのパラドクス』のときに言ってたことは真実です。めちゃくちゃ短縮しました。

  

 魔女結界の中でも『果てなしのミラーズ』は、特に階層が多くバカみたいに複雑です。

 出現するコピー魔法少女は使用する魔法によっては即お陀仏の危険さえもあり、できれば潜りたくない場所ですので第一部では完全にスルーしてました。第一部前のイベント『呼び水となりて綻び』に関わってないのもそういう理由ですね。

 

 しかし、第二部では多くの鏡が浮かぶ中継地点、通称"ターミナル"までは探索しないとメインストーリーに悪影響を及ぼします。

 具体的には、第6章中までに見つけられないとユニオン側に大きな被害が発生し、第7章以降のストーリーが変化。(奇襲手段を把握できず良い様にやられるなんて)未熟です……。

 

 ですが今回は探索が終わってます。

 理由としては開始時期選択のスキップ中の内容でしょう。こういう大ロスを消してくれるメリットがあるからやめられねぇんですよね。地続きでやるレギュもありますがただでさえ長時間ランダム要素多めRTAで苦行なのにいやーキツイっす。

 

「ところで……ネオマギウスの勧誘受けたよね? みんなびっくりしてたよー? くふふ、驚きすぎておかしー、今までの行動をちょっと考えたらわかることだと思うんだけどにゃー。どうせわたくしの言うことも聞かないしね」

 

 こんな感じにグループ自体の信頼度が下がっても、内部のキャラの信頼度は下がらなかったりします。特にユニオンはぼんやりした繋がりしかないので多少無理してもいいですね、ええ。

 

「でも、敵対しないでね。いろはお姉さまはそういうのは望んでないよ。だから――」

 

 話の途中ですが用は済みましたし、さっさと帰るので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まったのは、キモチの石を巡る争いだった。

 

 神浜に揃った4つのグループ――

 

 私たち神浜マギアユニオン。

 ユニオンに協力してくれる時女一族。

 神浜に恨みを持つプロミストブラッド。

 マギウスにもう一度導いてもらおうとするネオマギウス。

 

 キュゥべえが彼女たちの目の前で自動浄化システムの手に入れ方を説明したのは、なにか考えがあってなんだろう。

 

 『キモチ』と呼ばれる大きな怪物を倒して、キモチの石をブレスレットと一緒に手に入れる。8つ全部手に入れられたら自動浄化システムを奪える……そんなことを聞かされたら、プロミストブラッドの人たちは躍起になって戦おうとするだろうから。

 

 私たちを睨む目を思い出すと、ずっと考えてしまうことがある。

 あの時――マギウスだった頃の灯花ちゃんとねむちゃんの作戦をそのまま受け入れていたら、どうなってただろう。

 

 神浜の人たちを犠牲にして、ワルプルギスの夜をイブに食べさせて、自動浄化システムを完成させる。マギウスの翼に集まっていた子たちの想いや魔法少女の未来を考えたら、犠牲を払ってでもそうすべきだったのかもしれない。

 

 だけど私は、ういを失うことが一番怖くて、一番イヤだった。

 

 大切な家族で、離れることなんて考えられない妹。

 存在を誰にも信じられなくても、誰も覚えてなくても、「お姉ちゃん」と呼ぶ声と思い出だけは絶対に間違いじゃないって思えた。

 だからういのために以前の私じゃできない行動ができて、みかづき荘のみんなにも出会えたんだもの。

 

 ……そう、これは私が選んだ結果なんだ。

 ういを選ばず、自動浄化システムが完成していたら起こらなかったかもしれない争い。1人を選んだ結果の、答え。

 

 今度こそはみんなを助ける方法を選べるように、慣れないリーダーの立場でも目一杯頑張るつもりで――いや、頑張らないといけないの。神浜だけじゃなくて他のグループの人たちも助けられるような、最善の結果を今度こそ掴み取るために。

 

「……いろはさん、通りすぎちゃってますよ」

「えっ!?」

 

 かごめちゃんの声でハッと気がつく。いけない、考えすぎちゃった。

 ちょっと戻ってぴたりと足を止めたのは竜真館。振り返ると、ここまで付いて来てくれたかごめちゃんの姿が見えた。

 

 彼女のことは私も知っている。以前、結界に入ったときに偶然巻き込まれていたのを見つけて助けたんだ。

 

「ここからはひとりになっちゃうけど、大丈夫?」

「は、はい……やってみます。すぐ令さんも来てくれるっていうので」

 

 彼女は私やくれはさんが相手だと普通に話せるんだけど、他の人には抱えているアルちゃんを通してしか話せない。

 魔法少女たちを記録するためにインタビューって言ってもなかなか難しいから、買って出てくれた観鳥さんについていってもらってるんだけど……。

 

「くれはさん、どんなスケジュール組んでるんだろう……」

 

 毎日毎日違う魔法少女と出会えるように組まれていて、かごめちゃんはずいぶん大変そう。

 昨日は新西区、今日は水名区と場所もバラバラだし、本当に交友関係が謎な人なんだなぁって思う。

 

 私の中の彼女のイメージは、そういう部分や変な行動をするところもあって、初めて会ってから随分と変わっている。近寄りがたい魔法少女、クールな魔法少女、親しみやすい魔法少女ってプラスの方向に。

 

 それだけに今日、竜真館に呼ばれた理由が気になって仕方なかった。

 環いろはとしてじゃなく神浜マギアユニオンのリーダーとして、くれはさんを問い詰めるために呼ばれるなんて考えたこともない。ニュースにもなった東で起きた爆発事故にかかわってるだなんて、問題を起こすにしてももっと違う方向だと思ってた。

 

 しかも、今のくれはさんはネオマギウスに入っている。結成式の時に言った彼女のしたいことに違いはないけど、灯花ちゃんたちを狙ってるグループだ。

 

 色んな不安を抱えながらも、姿を見せたくれはさんは――

 

「なんでメロンアイス食べてるんですか?」

「ラピヌに買ったら当たってもう1本付いてきたの」

 

 拍子抜けするぐらいに、いつも通りだった。

 

 ピリピリとしていた空気が柔らかくなって、やちよさんと十七夜さんが顔を見合わせる。そしてひなのさんは頭を抱えてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、問い詰めるというよりかは雑談みたいな感じで話は進んだ。

 

 出た結論は、いつもの助けたかった行動による事故。

 戦いの中、ラピヌって子を見ていなかった監督不行き届きが大きいという判断で、よりいっそう注意することを言い渡された。

 

 そのラピヌって子はいつの間にかくれはさんと一緒に住んでいた子だ。

 出自を聞いたりもしたけど「600年ぐらい前の魔法少女よ」ってはぐらかして教えてくれない。くれはさんは嘘をつくとバレるから本気でそう思い込んでるのかもしれないけれど、さすがにありえない。

 

 じゃあそんな戦闘になった原因はと言うと、プロミストブラッドの人たちがネオマギウスの白羽根の人を殺そうとしていて、止めに入ったそうだ。

 そう聞くと納得がいく。戦った理由も今ネオマギウスにいる理由も、守りたかったからという、らしい答えが見える。

 

 だけど同時に、自分でもよくわからない違和感があった。

 くれはさんはいつも通りで行動も理解できるのに、なにか雰囲気が違うような気がして仕方がなかったんだ。彼女ならプロミストブラッドの人たちとも和解するような手段を取るはずなのに、一向にその気配が見えないことに不安を抱いていたのかもしれない。

 

 竜真館を出たあと、そういった事情を説明した相手は灯花ちゃんだった。

 

「ふーん……」

「灯花ちゃんはどう思う? なにか変じゃないかなって」

「行動に変なところはないにゃー、普段の行動からしたら当然の結果だよ」

 

 私よりもずっと頭の良い灯花ちゃんが言うのなら間違いないんだろう。

 それでも……と食い下がることを予想していたみたいで、微笑みながら言葉を続けた。

 

「わたくしと会う約束してるけど、会うかにゃー?」

 

 ありがたい言葉にもちろん頷く。

 「お姉さまを見たらすぐ帰っちゃうかも」ってことだから別の部屋で待ち続けてしばらく。外から人が入ってくる気配がして、くれはさんと灯花ちゃんの話し声が聞こえ始めた。

 

「だから――話せるように呼んじゃったー! くふふっ」

 

 あれが姿を現す合図だ。

 急いで飛び出ると、既にくれはさんは帰ろうとしていた。

 

「待ってください!」

 

 やっぱりだ。まだ灯花ちゃんが話してるのに、打ち切って帰るなんておかしい。まるで聞かれたくないことがあるみたいに見えてしまう。

 

「くれはさん、なにか私たちに隠してませんか!? 協力できることだったら協力します。今までずっと助けてきてくれたじゃないですか、だから……」

 

 こういう時、肯定ならすぐに「いいわよ」とか「ええ」と言って、否定なら「大丈夫」なんて言うものだと思っていた。少なくとも私が今まで見てきた姿ならそうする。

 

 だけど、くれはさんは悲しそうに目をつむって「ありがとう」と答えたんだ。

 

「みんなのことはわかってる。でも、だけど……これは任せられないから」

 

 淡い栗色の髪がふわりと揺れる。

 私は、それを黙って見ていられなかった。

 

「いいえ、聞かせてもらいます。聞きたいんです! そんな悲しそうにしてる人を放っておけません!」

「……相変わらずね」

 

 くれはさんと視線が合う。引き込まれるような瞳には、疲れの色が見えた。

 

「プロミストブラッドのリーダーとは会った?」

 

 確か、北養区の電子望遠鏡で出会った人だ。偶然にもくれはさんと同じ読みをした名字で、紅晴結菜さんという魔法少女だったと覚えている。

 同じように目の下にクマを作ったあの人の顔を思い浮かべて首を縦に振ると、くれはさんは重々しく言った。

 

「私の姉は、彼女に殺されたらしいの」

 

 ……え?

 

 思わず口から息が零れる。

 聞こえた言葉の意味をようやく理解して、後悔した。

 

 それはあまりにも、共感できてしまったから。

 

「あーやっぱり。でもおかしいよね、パパ様が言ってたんだよ、最近里見メディカルセンターに南凪の制服を着て不審な行動をする人物がいるって。柱の陰からずーっとエントランスを眺めてたり、売店でたっくさんお菓子買って連れてる子供に渡したり」

 

 変わった空気を気にせず、灯花ちゃんが脈絡のない話をする。

 もっとも、私には思い至らないほど小さな点と点の繋がりが灯花ちゃんにはあって、計算ずくでの発言だったのかもしれない。

 

「それにもう一つ気になることがあるんだって。2年か3年前ぐらいに似たような子をやっぱり里見メディカルセンターでよく見かけて、その子の姉妹は――」

「灯花」

 

 冷たく、暗い、声だった。

 表情が変わるわけでも怒ったわけでもない。よく知る姿となにも変わらないのが、怖かった。

 

 今目の前にいるこの人は、親しみの持てる帆秋くれはさんなんだろうか。

 最初に抱いた近寄りがたい魔法少女という認識は間違っていなかったんじゃないか。

 

「灯花ちゃん……二人っきりにしてくれる? ごめんね」

「……わかったにゃー」

 

 なにか言いたげな灯花ちゃんには別の部屋に移動してもらって、くれはさんと向かい合った。

 

「……悪いわね、気を遣わせて」

「気持ちはわかります……でも、それじゃプロミストブラッドの人たちは」

 

 わずかな魔力の振動を感じる。

 次の瞬間には、くれはさんはいつも通りの声色で言った。 

 

「大丈夫。彼女たちが嘘をついてる可能性だってある、もしかしたら、二木市にまだいるかもしれない」

「え、あの……」

「まだ、決まってない」

 

 まっすぐな瞳がブレもしない。

 

 まるで、他の誰にも信じられなくても、ういは確かに存在してるって信じてた頃の私みたいだ。

 あるいはイブという半魔女になってしまっても取り戻せる方法があるはずと、裏付けもないのに信じたように、まだその可能性に期待している。

 

 それはとても応援したいのに、どうしようもない心配をも抱かせる。

 私もこう見えていたのかもと思うと、彼女の手を握っていた。

 

「きっと見つかります。根拠はないですけど、きっと」

 

 だってくれはさんの手は温かいんだ。それだけは変わらない。

 こんな優しさを持ってる人が救われないなんて、間違ってる。

 

 と、ぐにぐにと手が動いて私の手が揉まれる。確認するような動きだった。

 

「あなたも隠しごと?」

「えっ……!?」

「姉さんもそうだった。私を安心させようと手を握ってくれた。だけど、その裏できっと思うことがあったはずだから」

 

 まるで、私がういにするみたいだ。

 大切な妹の前ではお姉ちゃんでいたい。だから、安心させるために時には隠すこともある。

 

 ……言わせたのなら、私も言わないと平等じゃない。

 

 くれはさんのことは、大人のように頼れる人だと思ってる。

 神浜市で初めて出会った魔法少女のひとりで、宝崎市の頃の繋がりともみかづき荘とも違う。ユニオンに入っていなければ、年齢も学校も違う。

 確かにちょっと変なところはあるけれど、今までずっと助けてくれて、いざって時は必ず正解を出してくれる。

 

 そんな人だからこそ、私は、その言葉を口にできたんだ。

 

「本当は、世界中の魔法少女を助けるなんてよくわからないんです」

 

 最初に大切だったのは、うい。

 そして、灯花ちゃんとねむちゃん。

 

 本当にそれだけだった世界は、みかづき荘のみんなと出会うことで広がっていった。私の頭では考えられず、広げた手じゃ到底届かないほどに。

 

 リーダーとしては誰にも言えない。言ってはいけない弱音。

 窘められても当然なのに、くれはさんはそのまま聞いてくれた。

  

「わからないことだらけなんです。神浜マギアユニオンのリーダーって言っても、自動浄化システムのことも、東西問題も詳しくありません。灯花ちゃんやねむちゃんみたいに頭が良くないし、手段に詳しいわけでもない。ただ、それでも私にできることがあるのならって……諦めたくないだけかもしれません」

 

 計画性がないって言われたら頷くことしかできない。マギウスの計画より良いものを提示できなくて、この場を乗り越えた後にみんなで考えれば良いって思ってしまったんだから、楽観的と思われても仕方ない。

 

 決心はした。リーダーとして頑張ろうとした。

 だけど、責任とみんなの未来という大きな願いと、ういが大切だっていう私だけの願いを天秤に乗せたら今は……本心は、どちらを選ぶのだろう。

 

 流されるまま答えを出せないのは昔の私のようで、心の弱い部分が見えているみたい。

 うい自身がみんなを選択したら、灯花ちゃんとねむちゃんが後押ししたら、本当に、それしか方法がないのだとしたら。きっと、選んでしまう。たくさんを助けるなかで零れる僅かな悲しみが私だけで済むのなら、受け入れると思う。

 

「あなたも悩んでいたのね」

「でも……くれはさんほどじゃないですよ」

「同じよ」

「同じ?」

 

 よくわからない言葉の繋がりに、ちょっと考えた。

 

 くれはさんはお姉さんを殺されたことを、まだ確認していないからと、生存を諦めていない。

 私は、世界中の魔法少女を助けることが、よくわからない。

 

 なんにも繋がりがないように思えるけれど、もしかして。

 

「……諦めたくない、ってことですよね」

 

 わからないってことは、良いことも悪いことも決まっていない。

 だからこそ、少しでも良い方に考えて、諦めちゃいけない。足を止めちゃいけないんだ。

 

 そう思うと、頑張ろうって気持ちが湧いてきた。元気づけるつもりが逆に活力を与えられた気がする。

 

 ただ――もしも、私がくれはさんと同じ状況になったら、そう言えるのかな。

 

 私の両親が、ういが殺されたら。私は落ち着いていられるかな。

 ういのためにって行動してきたことが全部否定されたような答えを叩きつけられたら、私は……。

 

 希望の中に不安を抱えたまま、私は争いが早く終わることを強く望んでいた。

 




■今回の内容 
 第二部第2章『微笑みと火花』
 第二部第3章『内なる常夜の夜明け』(一部分)
 『はじまりは夢を重ねて』(一部分)

■あらすじ(結んでひらいて座談会)
 ・キモチを見つける競争の始まり
 ・各グループによるキモチの石を巡る作戦
 ・父親を探す里見那由他の登場

■里見 那由他
 灯花ちゃんの従姉妹魔法少女。那由多ではない。
 あの世界に時々いる妙にデカい中学生。効果音がいちいち重い。

■ななか・このは
 なぎたんより信頼度が高いのは伊達じゃない。
 非ユニオンなので低下しにくく、またやらかしたぐらいの認識。

■はじまりは夢を重ねて
 新アザレア組イベント。このは・葉月のペアユニット(あやめもいるので実質トリオ)が実装された。命名つつじシスターズ。
 第二部での彼女たちの動きがわかるイベント。今回のは本来は第3章の範囲。今後も各章の合間合間で行動が挟まる。

■アニレコ
 今までういちゃんを助けようとしてきたことはすべて手遅れだったと叩きつけられるいろはちゃんが見られる。「本当は世界中の魔法少女が救われるとかよくわからない」とも言ったり、結構ゲーム版と違う。
 黒江ちゃんの影響かちょっとこっちの要素がインストール。

■2章
 かりんちゃんもアリナ先輩も入院してなかったり、ミスドの影響力が下がったりとかなり変動した。
 しかもなゆたんパート以外を飛ばしたので3章なゆたんパートの内容が含まれている。キモチの石入手だったり起きたことは起きてます。
 
■いろはちゃん
 先にくれはちゃんと出会ってるので紅晴さん呼びではなく結菜さん呼びに。
 距離が縮まってるっす!
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