マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
朝一番でリリアンナに乗り込むRTA、はーじまーるよー。
やってきました絢爛豪華なお嬢様学校聖リリアンナ学園。入り口からしてフランスを思い出す城の構えをしており、校内が広すぎることでタイムを阻む強敵ですわ。
それにしてもリリアンナはいいな。通うお嬢様たちはみんな、まるで「部外者を見ないのがエチケット」って感じでいてくれる。それともくれはちゃんの格好が激マブのモロ南凪JKだから目をそらすのかな(笑)。
「ちょっと君……」
警備員までにじり寄って来たのでそろそろ笑いごとでなくなりますが、お馴染みのアレで乗り切ります。ヘイ、黒塗りの高級車!
「ごきげんよう、くれはさん。いらっしゃるとわかっていればお迎えに上がりましたのに」
執事やメイドを引き連れて登場した我らがかはるん。
偶然(すっとぼけ)出会ったと言い訳して、言われるがまま放課後に会う約束を取り付けたら移動しましょう。
今から急いで南凪に戻るのでじゃあな!
◇
授業を速攻で流して放課後になったので今回の目的を説明しましょう。
キモチの石集めがスタートした後、香春ゆうなが巴マミとの出会いが原因で魔法少女になっている場合、『空ろな心に咲く花は』というイベントが発生します。今後もかはるんに頑張ってもらうためには成功させておく必要があるねんな……。
それだけでイベントなんて踏んでるんじゃねーよ! と叱られてしまうのでメリットをもう一つご紹介します。
お金持ちの特権ウォールナッツ貸し切りに呼ばれたのは、かはるんくれはちゃん以外にも柚希姉妹にゆきかちゃんのいつものリリアンナメンバー(水名入り)ですが、そこに森の妖精らしき魔法少女が混ざってますよねぇ。
「こちら、青葉ちかさんですわ」
「あ、青葉ちかです……!」
お前と出会いたかったんだよ! ナイスでーす(レ)。
揃いも揃ってお嬢様なのであれか? 見せかけで超ビビッてるな?
そんな『
ちなみに、クシュちゃんが吸血鬼だと勘違いされる原因でもあります。すっげぇ山奥だからさ、誰も気づかないんだぜ? えぇ?
「今日お呼びした理由は、みなさんにお聞きしたいことがあるのです。キモチの宝石……というものをご存知ですか?」
「宝石って普通のじゃない……のよね?」
「そうですとも。調整屋さんで小耳に挟んだのですが、神浜に眠る聖なる宝石を手に入れた魔法少女は、人々を救いに導く大いなる力を手に入れるのだとか!」
このように想像マシマシの理由でキモチの石集めを手伝って欲しいと言われますが、くれはちゃんにそんな暇はないですね、ええ。
要するに、マミさんもキモチの石でホーリーマミとなって聖女になっていたのでないかと思ったかはるんが、近づくためにも石を手に入れてみようとするイベントです。
イベントが失敗判定になるとリリアンナ勢が本格的にキモチ戦に参戦。時雨ちゃんなんか「ぼくたちと敵対するってこと……?」なんて言い始めてマークされてしまいます。戦力差からして時雨ちゃんのほうが危険です。ただでさえ人数が多いのにこれ以上は管理できないっピ!
もっとも、イベントクリア判定にキモチは関係ないのでやっぱりキモチ戦はやりません。
必要なのはキモチの石の説明とマミさんの説明ですが……もうだいたい終わってるやん! ウォールナッツでの会話でマミさんを知っていることを伝えているため、宝石集めなんて必要ねぇんだよとばかりに超スピード!? でイベント完。
「……ふふ、そうですね。やはり楽にはいきません。自分を磨いていきませんと」
なんか物分かり良いんですけどそれは大丈夫なんですかね?
この後は成功確定のイベントを進行させるだけなので適当に流します。
じゃあ明日集合な!
◇
オッス(現地集合)。やってるかい!
「本日はよろしくお願いいたしますわ」
「私とほとりんもいるわよ」
「ゆ、ゆきかさんはどうしても用事があるらしくて……」
ゆきかちゃんの所属は水名なのにリリアンナみたいな扱いになってるんですがそれは大丈夫なんですかね?
彼女は黒羽根同士の繋がりではぐむんと面識があるので、くれはちゃんがネオマギウスに入ったことで確認にでも行ったんでしょう。
ちかちゃんは涼子さんに頼んで別行動してもらっています。
戦力やサバイバル能力は頼もしいのですが、実は彼女は時女一族。キモチの石を集めるという話を聞いて自ら密偵を買って出ます。
まあ今回はこの人たちもう集める気ないんですが……時女一族のイベントに引っかかりやすくなるのでリスクは下げるべきですね。釣りイベが始まってお魚さんが悔しがっても困るぜ。
「で、今日はなんで集まったの?」
「もちろん、世のため人のため……人助けのためですわ」
「なるほど……だからくれはさんが!」
というわけで他キャラの信頼度を上げつつイベントを終わらせましょう。
もちろん移動はかはるんマネーパワーでリムジンです。ちゃっちゃといくぞ!
はいまずは水名区! 妙に挙動不審なちゃる!
「と、等々力耕一バッジ、なくして……」
常に付けているバッジをなくしたちゃるは意気消沈。同じ物を買って与えても思い出が含まれてないのでダメです。お金じゃ買えないものもありますねぇ!
しょうがねぇなぁ、見つけてやるか! おう行こうぜかはるん! 失せ物探しだ!
「ええ、必ずや見つけましょう!」
とはいえいちいち行動ルートを確認する必要も交番で落とし物を確認する必要なく、正解は近くの駄菓子屋。はい解決!
続けて工匠区! 矢宵板金工場に颯爽登場、かのこ元気か!
「わっ、くれはさんと……この前のリリアンナのお嬢様たち!」
キノコアクセサリーをデザインして売り出そうとしたのに父親に認められないという状況ですが……失敗して傷ついてほしくないという親バカなだけなので、説得すればそれで解決!
たったこれだけの行動でちゃるや柚希姉妹との信頼度も稼げてええのか?(一般通過リヴィア・メディロス)
はい次は北養区! おっと里見メディカルセンター。
「くれはさん、先日も言いましたが、いえ、ご無理はなさらずに……」
なんの問題ですか? なんの問題もないね。
午前の最後は里見メディカルセンターの子供たちの慰問会に訪れましょう。リリアンナの生徒会のみなさんは定期的に来てるらしいっすよ。
「では以前のようにわたくしが伴奏いたしましょうか」
かはるんはお嬢様なのでピアノの演奏も歌も抜群に上手いです。歌を注文されてもなんのその。
そこにくれはちゃんが学童保育でのアルバイトで鍛えたテクニックを加え入れることで大成功に導くことができます。コイツにこんな才能があったとはなぁ~。
「ウソ、かはるんが上手いのは知ってたけど……」
「すごいやくれはさん! やっぱりお嬢様なんだ!」
賞賛が気持ちいいですね(本音)、いや余計な会話はロスだから気持ちよくない!(本音)
にしても……ちょっとソウルジェムの濁りが早いですね。変なところでドッペルとならないようにちゃーんと注意してグリーフシード使っときましょう。
じゃあついでに人助けのトドメ刺してやるか!
まず神浜さぁ……東西問題あんだけど、解決してかない?
「それは……」
「なにそれ?」
「ボクたちは北養区だからかな……」
東西問題とは、東側が低く見られるという神浜に根差した問題であり、第二部終盤までずっと影響してしまう大問題です。
魔法少女より一般人側の問題であり、例えばいろはちゃんなど神浜に来て日が浅いキャラや、神浜外キャラなど一般人と関わりがないキャラではまったく干渉できません。東側の魔法少女と関わりが少ない場合も同様で意識しないとなかなか……難しいねんな。なのに重要人物のメンタルを傷つけるとかどうしてそんなに困らせるんですか?
しかしなんと、くれはちゃんは関われます。
そもそも観鳥さんがこの問題を苦にしていたり、なぎたんとの信頼度が高いため話題に出すことが可能なんですね。
そして忘れがちですかこの香春ゆうな様、柚希姉妹同様あの聖リリアンナ学園の生徒会です。あの(畏れ多い)。
生徒会を中心に、市議会にすら影響する世界有数の香春グループのパワーと魔法少女同士の繋がりを用いて北のリリアンナから西の水名、南の南凪から東の大東に働きかけ仲立ちすることで一足早く神浜学生会議の誕生を進めることができるって寸法よ。
もちろんそんな簡単に解決するわけないだろ! いい加減にしろ! とのご指摘ももっとも。
さらに必要になるのは『あした屋ポイント』。ちゃーんと今まで貯めときました。
東西の子供たちが集うこの場所こそ鍵です。潤やみかげちゃんへの信頼度、あした屋での行動回数で決まります。なので手っ取り早く稼ぐため、バカみたいな回数くじ引きをしていました。
これをしないと急に半グレがポップしたり暴力団がピンポイントで狙ってきたりして、みたまさん共々なぎたんがユニオンから離脱。†常闇淑女ダークみたま†と†常闇騎士ダークなぎたん†と化しダークサイドに堕ちろ! 堕ちたな……。
そのせいでただでさえやることが多くロスの温床ばかりの第10章が大惨事。
くれはちゃんが神浜を3日ほど駆け巡ることになり、しかも突破率2割か微妙です。そんな運頼みのチャートやってられねぇしリセ地獄だし私いじけちゃうし。
防ぐためにも第8章までに署名活動を進めていきましょう。頼むなかはるん!
「わかりましたわ。今も苦しむ人たちがいるのは目を逸らしてはいけない事実ですもの」
そして残念なお知らせ。
くれはちゃんのかしこさではこれ以上東西問題なんて考えられないので、残りはみなさんに期待しましょう。オナシャス!
あとは帰宅するだけなので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
「ごきげんよう、くれはさん。いらっしゃるとわかっていればお迎えに上がりましたのに」
わたくしが声をかけた相手はやはり、いつもの真顔で「ゆうな」と名前を呼びました。
彼女との出会いはいつも唐突でありながら、まるで運命が導いているかのよう。
そう、元々今日のご予定が空いていればお誘いしようと思っていたのです。急ではあるものの、なんとなく予感がしたものですから。
くれはさんであれば『キモチの石』の存在を知っている。
調整屋さんで知ったそれさえを用いれば……と。あの方に近づくため、少しでもできることはないかと考えた結果でした。
事実、くれはさんは情報を持っていて、放課後に集まってもらったみなさんの前で言ったのです。
「マミとキモチの石は関係ないわよ」
と。
なんと衝撃的。
なんと簡潔な言葉。
さっぱりとした切り口により、すぐさまわたくしの考えは否定されてしまいました。
「……ふふ、そうですね。やはり楽にはいきません。自分を磨いていきませんと」
されど、既にわかっていたのです。
そのような手段を使っても"本物"にはなれない。力のありなしは関係なく、憧れはあっても、わたくしはわたくしにできることを――
『他の誰でもない、あなたを必要としてるんです』
思い出したのはバレンタインデーの前日のことでした。
実のところ、行きつけの紅茶専門店でマミ様と出会ったことがあるのです。
偶然にも互いにブレンドの18番を注文したことで気づいた縁でした。
そしてちょうど同じ時期、聖リリアンナ学園の生徒会が定期的に行っている慰問会で里見メディカルセンターに訪れました。目的地はホスピス。最先端の医療でも治せぬ病はあり、少しでも苦しみを和らげようと最期を安静に過ごす場所です。
すると、家族共々紅茶専門店の近くで変な空間に迷い込んだという話をする子がいたのです。
変な空間とは魔女結界。助けてくれたのはリボンを使う魔法のお姉さん。間違いなく、マミ様でしょう。
しかし持ってきた紅茶とクッキーで、わたくしがマミ様だと彼女に勘違いされてしまったのでした。
またも紅茶専門店で再会したマミ様に確認すると、やはりその子を助けていたと。
これはゆっくりと誤解を解き、いずれは出会ってもらわなければと思っていたところ……容態が急変したのもその時でした。
病院からの連絡では、彼女がわたくしの名前を呼ぶのだという。
されど脚は動かずすぐに向かうという判断はできなかった。
本当に助けたのは自分ではない。
畏れ多い。代わりなどできない。
そう躊躇うわたくしに、彼女は言いました。
『その声に応えられるのは世界で一人だけ。他の誰にも代わりはできないんです』
そう、代わりが必要なのではない。誰かになることが目的なのではない。
香春グループのお嬢様でも、聖リリアンナの生徒会長でも、"巴マミ"でもなく、一個人の"香春ゆうな"が必要とされていたのです――
「さあ、そうと決まれば」
パン、と手を叩いて話題を一転。
もう憧れるだけの造花ではないのですから、わたくしはわたくしとして、できることをいたしましょう。
せっかく集まっていただいた皆様のためにできることはないかと見渡すと、既に場は盛り上がっているようでした。
「あっ、あの……くれはさんは、ネオマギウスって組織に入ったんですよね?」
「ふふん、ちょっと親近感湧くわね。私たちもマギウスの翼だったし」
「正直わたしも驚いてます。まさか似たような立場になるとは……ああいえ! わたしは元黒羽根ですし、白羽根どころか梓センパイのような立場のくれはさんにはおこがましいんですけども」
「私みふゆだったの」
「ええっ!? 涼子さんからは聞いてませんよ!?」
「忘れてたのかしら」
そう、わたくしたちには既に、共通の話があるのですから。
◇
車の窓から流れる景色は神浜の道行く方々を映していく。
翌日のことでした。
憧れからではなく、自ら人の悩みに気づき助けることができればと。協力を仰ぎほとりさんとりおんさん、そしてくれはさんにも来ていただいたのです。
その理由は初めて出会ったウォールナッツでのまなかさんの言葉でした。
『そうですね。ほんっとーに、この人は困ってる人を見過ごせないというか、神浜中を駆け巡って誰かを助けてるんですよ』
言い方は呆れ半分ながらも確かな信頼が見て取れるもの。
これまでの付き合いで、それが事実だと確信もしておりました。きっと彼女であれば良い先達となっていただけるのではないかと。
ともすれば迷惑がられる行為にも快諾してくださったくれはさんには惜しみない感謝を。
実際に困っている方が見つからなくとも、それは平和な証拠であり望むべきこと。それよりかは彼女の行動からなにかを学び取り、自分の中に刻み込めればと思ってのことでした。
しかし――驚くべきことに! くれはさんの指示通りにリムジンを走らせてもらうと、必ずそこには困っている方がいるのです!
水名区ではちかさんのお知り合いだという広江ちはるさん。
工匠区では以前ショッピングの際にお会いになったという矢宵かのこさん。
まるで事前に知っていたかのように的確な問題把握により、あっという間に解決してみせるなど、まさしく……プロフェッショナル!
「やっぱりすごいなぁ、ヒーローみたいに困ってる人の場所がわかってるのかな」
「そんなわけないでしょ。でも、そういう固有魔法だったりするのかしら」
「違うけど」
「ほら違うじゃない……あれ? じゃあどうして?」
「偶然よ」
「そうですわ」
ええ、ええ、わかっておりますとも。
くれはさんの固有の物ではない。
だからといって教えられるのではなく、自ら掴まなければ意味がない。
ゆえに、あえて口にしないのでしょう。その意思を汲み取り、わたくしも閉ざしましょう。
……と、景色は見慣れた北養区のものへと変わっていき、目的の場所に到着したのです。
そう、里見メディカルセンター。
雄大な自然環境の中に建てられた大病院であり、ホスピスでの出来事が記憶に新しいあの場所です。
ここ最近、くれはさんが来ていたことは知っています。
それだけに、ご無理なさらずと声をかけたのです。
「……くれはさん」
「大丈夫よ」
いいえ、そのはずがないのです。
変わらぬ真顔で気丈な振る舞いをしていたとしても、何度も聞いたお姉さんとの関係と、これまでに見たあなたの姿が証明している。
あなたの姉妹は――里見メディカルセンターで亡くなっているのですから。
そのあなたが、悲しい思い出の場所になんの感情も得ないわけがないのです。
しかし、ならばなぜ、自らを痛めつけるように来るのでしょう。
彼女の身になにかあったのでしょうか。なにか、姉妹のことで気になることが。
「私がもっと強かったら、助けられたのかしら。タルトみたいに、病気さえ治せる力があれば……」
聞かせるつもりはなかったのでしょう。とても小さな声でした。
気持ちはわかります。でも、それはきっと違うのです。
すべてを助けられたらとても素晴らしいことですが、ひとりがすべてを救うことはできない。その人間でしかできないこともある。それに……遠くを見て身近なものを見落とすことになっては、いずれ悔やみきれない後悔を抱えてしまう。
憧れる姿が同じだからこそ"するな"とは言えません。
わたくしができることは、陰ながら彼女の負担を減らすことだけです。
その後――くれはさんから聞いた東西問題の話こそ、そうなのでしょう。
中心からは離れた北養区で守られ育てられてきたわたくしたちには遠くの話のようであり、されど見過ごしてはいけない問題ゆえに。
◇
グイっと、私の手が強く引かれる。
「ねーねー、いいでしょー!?」
小さな身体に見合わない力はうちの弟よりも遥かに強く、目の前の小さな子――ラピヌという子が魔法少女だと如実に示していた。
「ダメ、お小遣い渡されてるからその範囲までね」
「えー!? 私お姉ちゃんなんだけど!?」
「はいはい」
なんて軽くあしらうのも何度目か。
「紗枝、あなたに頼みたいの」なんてくれはさんに言われて、アルバイト代も出してくれるって付け加えられたから頷いた。
彼女、お小遣いにアルバイト代とずいぶんお金を使ってるよね。「最近収入があったから大丈夫」だって言ってるけれど……いったいなにでそんなに稼いだのか気になる。危ない仕事とか変な仕事を騙されてやってたら大変だ。私がしっかり注意しないと。
それにしても、この子の相手は結構大変だ。力は強いし奔放だし……というか、これ大丈夫なの? 私だから大丈夫だけど、他の子たちにケガさせない?
そんなことを気にしたのも、今日訪れたのがあした屋だったからだと思う。
このお店は今時珍しい駄菓子屋で佇まいも古め。店主のおばあちゃんがひとりでやってる昔ながらの場所だ。ラピヌちゃんは気に入ってるんだとか。
来てた他の子たちとワーワー言ってるのを横目で注意しつつ、並んでる商品を見ていた。
私としても、駄菓子で安く下の子たちを満足させられるのなら利があるわけだし……なんて考えて、メロンシャーベットを見ていたりしてた。他意はない。うん。
すると、近くに一台のリムジンが止まった。
……いや、もう誰だかわかる。いい加減この展開にも慣れてきた。
「ごきげんよう」
「ああ、ゆうなさん」
出てきてにっこりと笑ってくれたのは、やっぱり香春ゆうなさんだ。
香春グループのご令嬢である彼女は雲の上の存在だけれど、ボランティアの一件以降、くれはさんの関係で出会うことが増えてきたんだ。
彼女との繋がりは絶対に失うわけにいかない。余計な物言いをしないように、仮面を強く被った。
「今日はどうしたんですか? くれはさんなら来てませんが……」
「あした屋でしたか、彼女の妹さんが訪れることがあったと聞いて、わたくしも一度見てみたいと」
……妹?
ラピヌちゃんが手を出さないか心配ではあったものの――それを超える疑問が私を掴んで離さなかった。
「あれ、一人っ子じゃなかったんだ」
「……くれはさんからは、なにも?」
そんな話は聞いたことがない。クラスも違うし、魔法少女になる前は学校でしか会わなかった。彼女は友達同士の関係の中で自ら進んで家族の話をするようなタイプでもなく、私も特に疑問に思いもしなかった。
仮に、同じことを以前知ったとしても、"そうなんだ"という安易な納得で済ませていたに違いない。
だけど今の私には強く焼き付いている記憶がある。
『家族はどこにいるのッ!』
あの剣幕と想い。
姉妹がいる……とても、それだけで終わらせてはいけない。
だけど、それ以上踏み出す勇気がなかった。彼女のことを知りたいけれど、容易に踏み込みのは、ダメだ。
「少々いいでしょうか」
そんな中、突然知らない声が混じる。
反射的に声がした方向に顔を向けると、そこにいたのは、夕暮れの光で顔に影を作った女性だった。
「こんにちは。いえ、もうこんばんはかしら」
容姿を端的に表せば、理知的であり、白い髪をした外国の人。
にっこりと笑っているものの、眼鏡の奥の目は細く閉じられ、瞳がなにを映しているのかわからない。
香春さんは優雅に「ごきげんよう」と挨拶を返すけど、私を身構えさせるには十分で、いざとなれば変身できるように一挙手一投足に注意を払った。
「おや、勘違いさせてしまった様子。他意はありません、警戒しなくても大丈夫です」
「あなた、誰?」
「ペレネル・フラメルと申します。帆秋くれはの知り合いといえば伝わるかしら」
くれはさんの知り合い。
それは疑いを晴らすには不十分で、疑いをかけるにも決定打にならない言葉だった。
誰も把握できてないほど交友関係が異常に広い彼女ならば、流暢に日本語を話す外国人の知り合いもありえる。だけどもし、それを知っていて利用しようとしているのならば、迂闊なことは言えない。
なにより、私が常日頃仮面を被っている
この女性はなにかを隠している。言葉通りの意味の裏に、探るような、別の意思を持っている。
「それで、わたくしたちになにか御用でしょうか」
「ええ。まずはこの通り」
「私は魔法少女です」と頭の中に声が響く。テレパシーだ。
見せた左手の中指には魔法少女の指輪があり、魔力反応もある。これに疑う余地はなかった。大人の魔法少女っているんだって思ったけど、目の前にいるんだから。
「近しいあなたたちに聞きたいことがあるのです――くれは嬢の『願い』はご存知ですか? そして、そこに至る心境を」
私も、ゆうなさんも、即答しなかった。
単純に私は知らない。
なにを願ったかを聞いたことはないし、彼女の固有魔法から推測するにも限度があるし、気になることではある。
だけど、そんな疑問を通り越した怒りが全身を包み込んだ。
彼女の家族への想い。きっとそれが関係している。
それを、それほど重要なことを、他人が土足で踏み込んでいいわけがないんだ。それこそが私に足りなかった踏み出す勇気であり、傷つけたくない心なんだから。
「……知りませんけど」
「お答えできかねます」
幾ばくかの無音が続き、彼女は「そうですか」とつぶやく。
「不躾な質問で失礼しました。お時間を取らせてしまいましたね」
ただ、それだけ。
去っていく背中はもう夕焼けよりも暗く、夜の闇が覆っていた。
彼女はいったい、なにを目的としてくれはさんを――?
◇
その数日後のことだった。
「メロンパン食べる?」
「ええ」
あの一件の意味は解明できていないものの、ゆうなさんとは明確な友人関係を築けているし、くれはさんも時々割の良いアルバイトとしてラピヌちゃんの様子見を頼んでくる。
おかげで懐に余裕が出てきて、ちょっとばかりのお礼としてくれはさんにメロンパンをあげていた。
季節は巡り、もうずいぶんと暖かい。
ピクニックにも最適で、一緒にお昼ご飯を食べるには快適だった。
「うちの近くのパン屋さんでね、かなりお得に買えるの。でも味は良いでしょう?」
「今度行くわ」
「そっか、じゃあ案内してあげる」
目を離すと変な場所にフラフラと迷い込みそうだし……とは、口にはしなかった。
本当に心配したのが四割。残りの六割は、居心地の良さだ。
そんな中、近くに歩いてくる知り合いの姿が見えた。
「やっ」
「観鳥」
片手を上げて挨拶をしたのは観鳥令。
彼女は年下なんだけど、独特な一人称と大人びた飄々とした雰囲気から、私もなんとなく観鳥さんと呼んでいる。くれはさんも名字で呼んでるし。
校内新聞の観鳥報のことは有名で、どういう人かは私も知っている。
それに半分新聞部のくれはさんを題材にした記事が時々あるのだから親しい仲なのもわかっている。
そんな彼女は、私を見て親しみのある笑みを見せた。
「良かった良かった。最近は真里愛さんや紗枝さんといい、しっかりした人が帆秋さんの様子を見てくれて嬉しいよ」
「そうかな? あなたもしっかりしてると思うけど」
「ああ、いや……今の立場がね」
言葉を濁したのは神浜マギアユニオンの関係だろう。くれはさんはなぜか別の組織に入ったと聞いた。
立場って、厄介だよね。人の関係を簡単に変えてしまうし、一緒にいたり親しくしすぎると、それはそれで問題が出てきたりする。私も自分の立ち位置は常に把握しておかないと行動に差し支えるし。
されどそんなことを気にした様子もなく、くれはさんは観鳥さんに問いかけた。
「かごめのインタビューは順調?」
「もちろん。伊達に取材の経験を積んでないからね、観鳥さんがいれば問題ないよ。それに帆秋さんがスケジュールを組んでくれるおかげですいすい進むんだ」
「あなただから任せられるの。ありがとう」
すいすいと繋がる会話は深い仲を感じさせた。きっと、二人には私が思う以上のなにかがある。
それを横から見るのは微笑ましいと同時に、ちょっと疎外感があった。
その時――くれはさんのスマートフォンが鳴る。
「かごめから」と彼女が言う。
『た、大変なんですっ! ユニオンの、ういちゃんが攫われたって……!』
表情が、雰囲気が、鋭く冷えたものに変わった。
■今回の内容
香春ゆうな 衣装ストーリー 冬服 『バレンタインストーリー2021』
香春ゆうな 魔法少女ストーリー 2話『失敗は成功のもと」』
■くれはちゃん
『桜の轍』でプリザーブドフラワーの話をしたりなんとなく思ってることがある。
くれはちゃんは造花だが?
■かはるん
実は裏で冬服ストーリーが終わっていたので既に超頼れる存在に。
なお、最速で着くためヘリコプターを手配して里見メディカルセンターに向かった。
■かはるんマネーパワー
金! 権力! 政治!
魔法少女パワーを加えることでだいたいの問題が解決してしまう。それでも解決できないものがある現実って……怖いですよ?
■東西問題
ほぼ第二部の要素なのでアニレコでは省略された結果、なぎたんがちょっと目立つモブぐらいになっていた。
裏でかはるんたちがみかげちゃんと出会ったり、あした屋に訪れたり色々と起こるとか。
■バレンタインストーリー
冬服とセットのイベントストーリー。
バレンタインらしくほんわかしたものもあれば、バレンタインにやるレベルじゃない重いものもある。
■ペレネル先生
原作終了後に神浜参戦なので完全にフリー状態。
細目で眼鏡で丁寧に話す謎の行動をする存在はもう敵なんよ。