マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート75 内なる常夜の夜明け 後編

 

 さっさと帰宅するRTA、はーじまーるよー。

 

 カタコンベで戦闘開始したと思ったらイベント踏んだwwwww微ロスwwwww草生やすな。

 まあいいや。大いなる短縮のための小さなロスは許しましょう。話で終わってくれるなら誤差だよ誤差!

 

 無駄に戦闘してカタコンベを壊さない理由もちゃーんとあります。

 ミスドに対して超有利カード、カタコンベ通報がいつでも使用可能だからです。

 リカバリーにも交渉にも突っ込める伝家の宝刀。すいませんあの、二木市で死体遺棄事件が起こってるんですよ、早く来てください! 

 

 また、結菜さんと出会った時点でもう1つの有利カードも使用可能です。

 実は彼女、二木市長の娘。遠く離れた神浜市で夜な夜な歩き回ってる姿をスマホに収めてバラまき、しよう! バラされたくなければ……わかってるんやろな?

 

 まあこの辺の社会的ダメージ手法は迂闊にやると残党が後先考えずに襲って来るので、タイミングには気をつけましょう。

 

「……甘いわねぇ」

 

 あっ終わりました?

 じゃあ結菜さんの許しも出たので、さっさと離脱して帰りましょう。

 

 

 

 

 ~少女移動中~

 

 

 

 

「くれはさん……! 無事でしたか!?」

 

 今から雫ちゃんワープで帰る様子のいろはちゃんと合流。

 途中でうららも見かけましたし、後ろにはラピヌお姉さまを回収してくれた帆奈ちゃんもいます。これで万事OKだわ。第3章、完!

 

「……怖かった」

「プロミストブラッドの紅晴結菜、強敵だったわね」

「教官がそこまで言うなんて……」

「ですです!」

 

 じゃあ雫ちゃん、ネオマギウスのみなさんも一緒に連れ帰ってくださいね。

 

「え? あの、帰らないんですか?」

 

 さっき帰ると言ったな。あれは嘘だ。

 

 第二部第3章『内なる常夜の夜明け』は確かに救出完了の時点で終わりました。

 だがしかし、魔法少女に安息は許されず問題はここから。

 

 なんとこの後、二木市でローカルアイドル大集合のお祭り企画が行われます。

 そして、当然のごとくさゆさゆが来ます。うせやろ? この抗争の中の中で?

 

 アイドルの鑑的行動ではありますが、魔法少女としては非常に危険。神浜の魔法少女は見せしめに始末されてしまうので、ミスドに運良くさゆさゆのファンがいないと刀剣愛ドルがサヨナラ! ついでにレナちゃんもメンタルがアア、オワッタ……!

 

 さゆさゆが必要ないチャートならいいんですが、彼女には終盤やってもらうことがあるので絶対に防ぎます。だからアイドル活動に付いて行けるレベルの信頼度が必要だったんですね。行ったり来たりするのはロスなので現地集合な! 

 

「いやもうすぐ夜だよ? 二木を調べたいあんたの気持ちもわかるけど、帰ろうよ」

「帆奈ちゃんの言う通りです……くれはさん、なにかあったんですよね。だからこそ、みんなで戻りましょう」

 

 なんの問題ですか? なんの問題もないね。

 

「……言ったでしょ、あんたをこんな場所で1人にさせたくない」

「んー……おねーちゃん、ちょっと関心しないかな」

 

 ちょ、ちょっとズレてるかな……(困惑)。

 来ていたやちよさんやなぎたんにも圧をかけられ始めました。しょうがないので一旦帰宅しましょう。こうなったら水名からさゆさゆをストーキングでカバーします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電車に乗られ~二木市に戻って来た~。

 ローカルアイドルでも電車移動って辛いな、サム。

 

 笑いごとではなく、神浜市内も電車移動するとお金がかかります。遠い二木市なんて学生のお小遣いには大打撃です。なんでこんな世知辛いんすかね~やめたくなりますよ~魔法少女~。

 

 もちろん二木市からの来客も同様なので、プロミストブラッドが使用しているミラーズのショートカットを破壊すると彼女たちに致命的な経済ダメージ。そうそう神浜市に来れなくなります。復讐するのにいいのかそれで……(困惑)。

 

 とまあ、前述の通り直接戦わなくても社会的・経済的ダメージで勝つこともできます。俺らみたいな魔法少女もんがよぉ、社会ルールを利用しちゃいかんのか?

 

「くれはさんも来てくれるなんて心強いですぅ!」

「みんなでいると移動するだけでも楽しいですね、莉愛ちゃん」

「え、ええ……」

 

 三人はどういう集まりなんだっけ? とばかりに、さゆさゆ以外にも麻友と莉愛様がいますね。

 マネージャーが体調不良を起こし、あわやぽわぽわしたアイドルを単独で送り込まないといけなくなるところを手伝ってくれている魔法少女の鑑なんだよなぁ。

 

「……はあ、あなたが護衛に来てくれて助かるわ。三人だけじゃ正直不安だったのよ、だって敵地の中心じゃない。沙優希さんを一人で行かせるわけにもいかないし」

 

 さゆさゆと麻友は危機感に欠けていますがさすが莉愛様ァ! 

 危険を把握しつつ、友人を心配して陰ながら守ろうと自ら赴くとか神的に良い人だから……。

 

 もっとも、さすがのプロミストブラッドも一般人の前では手を出してきません。駅から会場まで移動してさゆさゆの勇姿を応援しようじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくものこのこと!」

「昨日の今日で攻めてくるとはいい度胸だな!」

「ちょ、ちょっと帆秋さん! あなたなにしたわけ!?」

 

 ショートカットしようと路地裏に入ったら囲まれてしまいました。困りましたねぇ。

 カタコンベにお邪魔しただけなのにちょっと反応が極端じゃな~い? これもうわかんねぇな、お前どう?

 

 なんて言ってる場合ではありません。早いとこ移動しましょう。

 じゃあ解決策を出してやるか! しょうがねぇなあ!

 

 ではいつもの合体技。くれはちゃんが魔力反応を止めて、莉愛様が視界から隠蔽する完全ステルス発動です。

 

「わぁ、やっぱり便利ですねぇ~」

「これで安心ですね」

「いいえ、油断しないで。無限にできるわけじゃないんだから……!」

 

 悪意に反応するちゃるの固有魔法のように、他の手段でのサーチを受けたらさすがにバレますが、一般モブ相手にそんな心配はフヨウラ!

 さゆさゆを会場に送り届けたら一般後方腕組みファンがごとく待機してイベントスキップ。あとは送り返すだけだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神浜に帰ってきたらきたでネオマギウスから呼び出し。忙しい!

 二木市から直でネオマギ拠点の大ホールに移動なんてムーブを繰り出しつつ、この呼び出しについて解説しましょう。

 

 第二部第1章以降、ネオマギウスの影響力や所属するモブの数といった勢力パラメータが低く解散の危機となると、強化イベントが発生します。弱いのを知らずにネオマギルートに入った魔法少女のための救済用でもありますね。

 

 他のグループにも似たようなイベントはありますが、ネオマギ特有の発生条件は『リーダーがいないこと』。

 時雨ちゃんとはぐむんはあくまでも創設者であり、燦様とミユリは未だ仮加入の状態。くれはちゃんがリーダーにならないのはこの阻害をしないためです。

 

「あ、く、くれはさん……」

「急にこの人たちが来て……」

「へえ~あなたが? よろ~★」

「ひめちゃんともどもよろしくお願いしますね」

 

 出たぜ! 得意げな紫色の極上スマイル。

 まったくさー、こっちは織莉子の警告を受けてるんだぜ! 

 

 彼女がネオマギウスのリーダーとなる紫色の魔法少女こと『藍家(あいか) ひめな』。そして隣にいるのが『栗栖(くるす) アレクサンドラ』。

 この二人こそ、ネオマギの影響力が低いかつリーダーが定まっていない状態だと現れる存在です。戦力も増やしてくれるぜ。

 

 彼女らが登場しない場合は時雨ちゃんがそのままリーダーとなり、頭角を現すルートになりますが、今回は関係ないので自分でプレイして、どうぞ。

 

「なんでぼくたちのとこに来たの……」

「私チャンさ、魔法少女至上主義の話を聞いてマジアガったんだよね」

 

 (魔法少女至上主義)キメてるんだろ? (上に立って)くれよ……。

 

 ひめなの行動について簡単に解説しましょう。

 彼女は自ら命を断った幼馴染の彼ピを願いで頭の中に意思を残したのですが、周囲から見たら虚空に話しかける狂人の出来上がり。生前は陽キャと陰キャで不相応だと言われ、今度は信じてもらえません。自由な恋愛を周囲に認めて欲しいので、魔法少女至上主義を利用し一般人と魔法少女の天辺に立とうとしています。

 

 ただ、どうもヒコくんの考える策や行動は生前とかけ離れた悪辣なものが多く、本当にヒコくんかどうか怪しいですがそれは関係ないのでヒコくんということにしておきましょう。

 

 つまりよくよく考えると、やはり彼女にとっても魔法少女至上主義は手段であり、最終的な目的ではありません。

 なので、別の手段を提示してやると行動を抑制できるわけです。

 

「えっなになに?」

 

 まずうちさぁ……固有魔法あんだけど、聞いてかない?

 駆使すれば暗示も洗脳も肉体作成も頭の中のヒコくんを取り出すこともできるって魔法少女スゴイ! 固有魔法の可能性がこんなに広いなんてショック!

 

「うえっ、マ!?」

「魔法少女ってそんなことできるんだ……」

「……ぼくには、そんなのできない」

「だけど私チャン決めちゃったんだよね、世界を覆さないと認めてくれないって」

 

 もっとも、彼女たちはまだ子供。例の白タヌキがターゲットにしたように感情的な存在で、だからこそ魔法少女になったわけです。

 まだまだ自分の周囲の見える世界だけがこの世のすべてであり、若さ特有の全能感の前ではベターな理論なんて通用しません。ベストを尽くせば結果は出せる(至言)。

 

 しかしここがポイント。

 あくまでも"周囲"なので、彼女の傍に魔法の存在を知っている魔法少女たちがいれば解決します。

 

 特にその鍵となるのは……はいそこ!

 

「どうかしましたか?」

 

 とぼけちゃってぇ……。

 新参ぶってたのにさ、サーシャはひめなと神浜を落とすのが趣味のプロ級魔法少女だ!

 

 以前言いましたが、栗栖アレクサンドラことサーシャは『午前0時のフォークロア』のメンバーです。

 

 そもそもなぜひめなが魔法少女至上主義を知ったか。それは彼女が教えたから。

 思いっきり争いに干渉してるんですがそれは大丈夫なんですかね? という疑問も、恋の仲間への大胆な干渉は女の子の特権ということでスルー。

 

 しかし困ったことに、加入後に彼女がネオマギウスから離れるとひめなの行動が過激化まっしぐら。神浜がまた壊滅の危機に陥ります。なので織莉子が言っていた紫色の魔法少女とはひめなのことで間違いありません。

 事前に問題を解決できていればいるほど、起こす悪事の規模が小さくなり一気に短縮されるわけですが……どうしてそんなにRTAを困らせるんですか?

 

 けしからん、私が活を、入れてやる。とばかりにカトラスを光らせ、壊滅の原因になりうる彼女を阻止すると、時雨ちゃんが覚醒しない限りネオマギウスは崩壊一直線です。色々とフラグも消し飛び不完全燃焼のノーマルエンドにいち早く辿り着きます。別レギュなら常套手段ですね。

 

 けどこれそのレギュじゃないのよね。サーシャの管理をしつつ、さらにはひめなの信頼度を必ず上げなくてはなりません。

 具体的に言うと物の貸し借りができるレベルまで必要です。そのためのネオマギウス? そのための加入って感じで? というか加入しないと信頼度上げが間に合わないんだよなぁ。

 

 しかし時間がない。余裕もない。困りましたよね。

 これ以上ネオマギウスにいるわけにもいかず、やらないと大ロス待ったなし。もう十分だ! もう十分だろう……。

 

 なので、ここまでのネオマギウスでの行動が効くわけです。

 メンバーを集め、羽根たちの結束を高めておいたため、最初からネオマギウスは動くことが可能。このような好条件を満たすように動くと、その分がひめなへの信頼度にプラスされます。

 

 もっとも、やりすぎると来なくなるのでギリギリの見極めが重要です。見てくださいよこの手際! 調整はねぇ、自信あるのよぉ(一般通過八雲みたま)。

 

 ではここからのネオマギウスはひめなにバトンタッチ。

 抜ける理由を間違えると信頼度がガバガバどころかボロボロになりますが、今回は良い選択肢があります。

 

「え、ぬ、抜けるって、なんで……!?」

「ぼくが、弱いから……?」

 

 違う違う違う違う……。

 

 ただ脱退するだけでは時雨ちゃんが泣き始めたりもう大変。

 じゃあもっともらしい理由をぶちこんでやるぜ!

 

 重要なのはプロミストブラッドの注目がくれはちゃんに集まっていることと、本拠地に総出で乗り込んだこと。まったく戦力にならなかったしぐはぐの二人には巻き込まれる怖さをよーく理解してもらいました。

 

「えっ、所属してたらむしろぼくたちが危険だから……?」

「でもやっぱり弱いから……だよね」

「まあまあ、守るためなんですから」

「私チャンさ、来たばっかだから事情よくわかんないけど……くれりんはマジで心配してるんだと思うよ?」

「いきなりあだ名で呼んでる……ぼく、キライだ……」

 

 よし、楽しく話せたな。

 じゃあお膳立てしといたから後よろしくな!

 

 これでフォークロアメンバー全員とも出会えましたし良いことづくめ。

 サーシャとうららの信頼度はどうするかというと今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラピヌが二木市にいる。

 

 それがわかったのは、くれはがスマートフォンを持たせていたからだ。ピンク色な割に頑丈さが取り柄の子供向けタイプだったと思う。

 普段からどこほっつき歩いてるかわからないから、あたしや紗枝の監視を抜けてどっか行ったときには毎回それで探してた。壊さないのは……宣言した通り、立場がちょっとはわかってるんだろう。

 

 くれはは「手分けして探しましょう」って言ったけど、画面を見ればどこにいるかは一発だ。マギウスに連れてかれた時もこうやって探したんだし、いい加減操作も慣れてる。

 

 あいつは、ラピヌを探したい気持ちと、自分の姉の足跡を辿りたい気持ちで迷ってたんだろう。

 

 1人にさせたくない。本当はネオマギウスの奴らにも任せたくなんかない。

 けれど、あたしがラピヌを連れ戻すことで自由にさせてやれる。思うままに気が済むまで探させてやれる。そのことが、なによりも許容できる理由だった。

 

 そんなことを考えつつ、時々立ち止まり、手元の画面を確認しながら歩みを進めると、表示通りの場所にピンク色の姿があった。

 

「あーいたいた」

「ん? あっ、帆奈じゃん」

 

 見た限り傷はない。本人も元気そうだ。

 周囲に魔力反応も目立った姿もないことを確認して、そこでやっと警戒を解く。

 プロミストブラッドがラピヌの周囲に潜んでいて、奇襲される場合を考えれば注意はいくらしてもいい。あたしらを誘き寄せるために連れてったのなら、くれはを遠ざけることはむしろ安全に繋がる……はずだ。

 

 まあ、一番心配なのはこいつを放っておいて、取り返しのつかないことをやられることなんだけど。思い浮かぶイメージはうっかり魔法少女のソウルジェムを割ったり、一般人をバラバラにする姿だ。

 ああ、やりそう。おぼろげになってる記憶の中で、そんなことしてた覚えあるし。

 

 だけどラピヌは、あたしに手を差し出した。

 

「じゃあ、ほら」

「なに? お小遣いならくれはから貰ってよ」

「違うって。ここには自動浄化システムってのがないんでしょー? だったら危ないし、私が引っ張ってく。おねーちゃんは魔女になっても戻れるし」

 

 なんてことないように言うけど、それがどれだけの異常かわかってんのかな。

 魔法少女が魔女になるのは一方通行で、知ってるヤツなら不本意ながら誰もが理解している最悪の真実。それでツレを失ったなんてなったら、羨望の的か憎悪の対象になる。誰しもが興味を持つさながら歩く火種だ。

 

 そういうこともあって、ラピヌの固有魔法は誰にもバラしてない。

 もっとも、言ったところで600年前の魔法少女だという事実と共に、易々と信じられるわけがない。実際に目にして覚えてなければあたしだって鼻で笑ってたところだ。頭に花でも咲かせてるんじゃないかってね?

 

 だから、魔女にさせちゃいけないんだ。

 だいたい、そういう損得以上に……くれはが、望まない。

 

「……はいはい」

 

 手を繋ぐだけで大人しく帰ってくれるならいっか。

 帰りも雫がワープを使うらしい。せいぜい集合場所までの我慢だ。

 

 けど……ワープ、ワープか。

 

 繋いだ紐で引っ張られるみたいに思考に引きずり出されたのは、プロミストブラッドのことだ。

 

 二木市は神浜市から離れている。

 電車で行けるけれど、時間がかかるしお金だって馬鹿にならない。

 だってのに、工匠区に拠点を構えて大人数で来て、それを続けるなんて無理な話だ。社会科見学じゃないんだからさ。あっは、普段の学校とかサボってるわけ?

 

 だけど魔法少女は距離とお金の問題を解決できる。

 雫の固有魔法以外もあの団地の青いやつとかワープする固有魔法を持つ魔法少女はいるし、あたしらが想像もしてないような魔法を持つのがいるかもしれない。

 

 そういうのがいるならいい。むしろそうであって欲しいとさえ思う。

 

 だけど……ミラーズだ。

 前にくれはの騒動があった時、使い魔が成長した個体――株分けの鏡の魔女の結界が、鏡屋敷の本体の結界と繋がってた。

 そして、様々な場所に繋がってる鏡が揃うミラーズのターミナル。

 

 この二つが揃えば、鏡屋敷を経由して、色んな場所に行けるんじゃないか?

 十七夜が読んだって記憶でもそんな情報があった。二木市に結界があれば確定だ。

 

 だからこそ、都合が良すぎる。

 恨みを持ってるやつのとこにショートカットがあるなんて、まるで争いを誘発したいみたいに思える。それも、またくれはの関係だ。

 

 もし……本当に鏡の魔女が瀬奈なのだとしたら、くれはに執着があるのは納得できる。

 でも、理由がわからないんだ。なんでそんなことを――

 

「あっちです! 帆秋の仲間がいました!」

「よし! 樹里サマが先に行く!」

「逃がさないんよ!」

 

 ああ、気が抜けてた。ここは敵地なんだ、探知外から急行してくることだってある。

 ぶんぶんと頭を振って、不安になる余計な考えは消した。

 

 この辺りは人通りが少ないのか周囲に人影はない。だからって表だって攻撃してくるかな~。

 

「ラピヌ」

「いいよー、ちょうど遊びたいところだったんだ……イッヒッヒ!」

「あっは! じゃあ、ちょっとだけ相手してあげよっか……!」

 

 ……あー、これ、どっちが敵だかわかんないね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、雫のもとに全員が集まった。

 みかづき荘のやつらはゲームセンターで環ういを見つけたらしい。そこにはアオってヤツがいたそうだけど、七海やちよや和泉十七夜なんかが総出で来たら勝てないよそりゃ。

 

 もちろんネオマギウスのヤツらと一緒にくれはも戻って来ていた。

 

「……なんかあった?」

「なにが」

 

 だけど、普通だ。あまりにも()()()()()()()()

 ネオマギウスの他の魔法少女はいくらか傷を負っていたり、話してることからしてあいつ――紅晴結菜と相対したってことはわかる。だからおかしい。

 

 出会った頃、こいつが泣いたところなんて見たことなかった。感情が溢れて怒ることなんてありえないとさえ思っていた。

 けれどそんなの見た目だけで、本当は誰よりも感情的なんだ。疑念なんて嘘だ。あいつがあんな呼び方するなんて知らなかったけれど、それだけ。知らない面があるなんて――当たり前、だ。

 

 『停止』を自分に使うなと直接言ってやればいい。

 それは心に刻まれた傷を麻痺させる一時しのぎでしかなくて、なんの解決にもなってないんだって言えばいい。

 

 だけど、それで止まるわけがないんだ。狂ったようにドッペルを使っていた頃と同じで、あたしの言葉はいつだってそこには届かない。

 それにほんの少しでも痛みを止められているのなら、くれはと長くいられるのなら……自分勝手な理由があたしを鈍らせて、止める理由を失わせる。

 

 結局、言えなかった。せいぜい一緒に帰ろうって意味合いの言葉だけだ。

 家に戻って、いつものようにご飯を食べて、いつものように過ごして、寝た。

 

 ふかふかのベッドの中で、この日常が明日も続くように祈る。

 なんにもなかった頃のあたしだったらありえない。瀬奈を失ってから暗闇が怖くなった。

 

 ……余計なことを考えたくない。

 瀬奈も、くれはも、あたしの知ってる通りの存在で、単なる思い過ごしで、全部が丸く収まればいい。

 

 そうだ。昔と比べたら幸せすぎるほどの、身の丈に合わない当たり前を崩したくなかったんだ。

 永遠なんてない。終わりはいつか来る。その時をできるだけ引き伸ばしたくて、手は閉じたままだった。

 

 翌日、出かけるくれはを見送って、ぼんやりとソファに座った。

 ラピヌがまた遊びに行ったのは覚えてる。だけど気づいたらもう夕方で、あたしも随分とやられてるんだなと思った。

 

 気づけば、くれはが戻って来ていた。

 また買って来たのか冷蔵庫にメロンを入れるの見て、ふと、思っていたことを口にした。

 

「……あたしさ、あのネオマギウスってやつらと組むの止めたほうが良いと思うんだけど」

「抜けた」

「そう、抜けたほうが……は?」

 

 目が覚めて、予想外の言葉にソファから飛び降りた。

 はっきり言って諦め半分の言葉だったからだ。コイツはネオマギウスの羽根を助けたかったから行ってたはず。早々と目的を捨てるわけがないし、あたしが知ってるくれはなら、たとえ死んでも守ろうとするはず。

 

 嫌な汗が流れた。

 ひとつ、否定されたみたいだった。

 

「プロミストブラッドと戦う。私がいるほうが、逆にあの子たちにとって危険だから」

 

 だけど――即座に安堵が押し寄せてきた。 

 その理由は確かに、あたしの信じてるくれはに違いない。いっつも、いつも……くれははあたしを振り回す。

 

 ただ、その結論に至った道筋が気になった。

 

「……あのさ、あんたの姉はどうだったの」

「墓に私がプレゼントした物があった」

 

 ……ああ、やっぱり。

 死んでいたと言わないのは、わかっていても口にしたくないのだろう。

 

「それよりも帆奈、メロン買って来たのだけど食べる?」

 

 それよりもなんて、そんな簡単に済ませられるわけがない。

 なにより他人にメロンをやる気なんて早々なくて、あたしに言わずに勝手に食べてるだろう。

 

 返答しないと、くれははなにも言わずに自分の部屋に行った。

 ドアの向こうから、微かにすすり泣く声が聞こえた。

 

 追いかけようとして――脚が止まった。

 入って慰めの言葉をかけることも、気の利いた喜ばせ方も思いつきやしない。

 

 いいや、そもそもそんな資格ないんだ。

 

 あたしだって魔女に好き勝手させてななかの父親を殺した。変わらない事実だ。

 願ったときもそう。あたしをいじめてた奴らを消したんだ。後悔なんてしてないけど、あんなのでも家族はいた。殺すよりも酷いかもね?

 

 考えたら当たり前のことじゃないか。

 憎く思う相手と同じ存在が、どうして傍にいられるんだ。

 

 ドアは分厚い鉄のように重くて、己の不甲斐なさばかりが増していく。

 ああ、なんであたしは、無力なままなんだろ。

 

 ……ひとりでできることには限度がある。

 自然とくれはから貰ったスマホを弄っていた。

 

 もうすぐ夏休みだ。行動するのに纏まった時間ができる。

 あたしにできないことは他のやつがすればいい。

 

 あたしは、あたしにしかできないことを。

 いつか終わりが来るのなら、せめて、思いついた最高の終わり方を――

 

 

 

 




■今回の内容
 第二部第3章『内なる常夜の夜明け』(一部分)
 第二部第3章アナザー『覚悟を聞かせて』

■藍家 ひめな
 遂に出てきた紫色の魔法少女。話し方が超特徴的★。
 こう見えて14歳なのでその辺を踏まえると思考がわかりやすいかもしれない。

■内なる常夜の夜明け
 RTAなのでユニオンパート以外をだいたいスルーした。
 ぜんぜん夜明けてないが?

■カタコンベ
 後々悪夢内で通報されて警察沙汰になる。周知されるとマズい例。
 世間では行方不明の少女の死体が埋まってるので結菜さんが代表として出頭してしまう。樹里サマは暴れるしでもうめちゃくちゃや。

■帆奈ちゃん
 そういうことする。

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