マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
どうして全神祭で遊ぶ必要があるんですかのRTA、はーじまーるよー。
夏と言えば燦様も大好きなお祭りですが、神浜にも当然あります。
それが全神祭であり、『全神祭で遊ぼう!』はお祭りで遊ぶ魔法少女たちのイベントです。常日頃から命のやり取りをする魔法少女にしては珍しく平和なイベントだなぁオイ。フランスで毎回壊滅の危機に陥っていたとは思えねぇな?
まだ神浜が無事ならば、みたまさんから魔法少女のために花火の特等席を河川敷に確保したとの連絡が入っていることでしょう。
神浜の全魔法少女を集めても大丈夫だなんて無茶なこと言っちゃってさあ……誇らしくないのかよ? ユニオン外のモブも合わせたらとんでもない数いるのにすげえ自信だぜ。
まあそんなお誘いは無視だ無視! 余計なイベント踏んでたらRTAになんねーよ!
なんて普段なら言ってるところ、イベントの対象エリアは神浜全土のためああ逃れられない! 悲しみに暮れつつ、せめてもの抵抗で最短で終わらせましょう。
とはいえ悪いことばかりでもなく、この日は市外からも大勢人が集まることになり、夜間も人の目が多くなります。
つまり争いは強制停止。プロミストブラッドの面々とのエンカウントもなくなるので闇討ちを気にしないでいいのは嬉しいですね、ええ。
「――ってことでね、ブロッサムのおばさんも良いって言ってくれたし、ななかさんに協力してもらって華心流とコラボするんだけど……くれはさんはどうする? 人手は足りてるけれど」
エンカウントしない(魔法少女とエンカウントしないとは言っていない)。
道端でこのみちゃんとブロッサムの会話が始まっていたのもそういうことです。やめろやめろこれ以上信頼度を上げるな!
このように『全神祭で遊ぼう!』は見滝原組も含めてほぼすべての魔法少女にイベントが存在する超ロス危険地帯です。
街全体がデコレーションされ各地の商店街では企画が目白押し。あやしずと団地組の散策やエミリーの相談所改め休憩所に行くのもお楽しみ要素でしょう。なんかこのみちゃんは組長とコラボしたりするらしいっすよ?
イベント上の目標としては、小さな白タヌキと一緒に花火職人のために協力してあげようみたいなことを通知されますがパーフェクトスルー。放っておくのが最良です。むしろ余計なイベントを踏まなくなりますし、通常プレイでも魔法少女との交流が優先されがちなのでモキュに悲しい現在……。
というわけで申し訳ないが余計なお誘いもNG。悲しいけどこれってRTAなのよね。
「うん、くれはさん大変そうだもんね。……楽しんできてね?」
このみちゃんの優しさ感じるんでしたよね?
では帰宅してネルゾー! デッデッデデデデ カーン!(安眠妨害)
◇
やってきました全神祭当日。
相変わらず帆奈ちゃんはどっか行きましたが、ラピヌお姉さまはクーラーの効いた部屋でダウンしています。動いてないのに暑い日本の夏は危険な領域に突入していた……?
「あ゛~……あ゛つ゛い゛~……コルボー、ミヌゥ~……」
溶けてるウサギは紗枝ちゃんと真里愛さんになんとかしてもらいましょう。イヤって言うまでアイスを口に放り込んで元気になったらお祭りを堪能してもらうからな? 喜ぶんやど?
ではではくれはちゃんはステージのあるメイン会場を目指して神浜を直進あるのみ。
今までどこにいたんだと言いたくなるモブの山をかきわけて高速で歩む姿は迷惑客そのもの。やめようね!
さゆさゆの歌声が聞こえ始めたら到着。スペシャルゲストォ……としてステージでライブやってます。
彼女を始め、ここには多くの魔法少女がいますが、まずは同行者枠を確保しましょう。
全神祭の開催中は、普段のパーティー枠とは別に自由にキャラを連れ歩くことができます。
まなかちゃんやつむぎちゃんを選べば食べ物のお店で反応してくれたり、莉愛様と共に珍道中をするのも面白いですね(本音)。いやロスるから面白くない!(本音)
とはいえ誰を選んでも会話は発生。毎回お誘いを受けてたら全身ロス状態に陥り再走の二文字を叩きつけられることでしょう。なのでさっさと同行枠を埋めておくに越したことはありません。余計に話しかけられず、2人はどういう集まりなんだっけ? と聞かれても散策ゥ……で済みます。
お店をやっている魔法少女以外なら誰でもいいので適当に誰か~! 誰かいませんか~!
「フッ……イミテーション・クール。
そして天は鳴き、大地は震えるだろうね。
相変わらず塁ちゃんがなに言ってるかわかりませんがナイスゥ!
「燦様燦様! あの脚ですぅ!」
「この人混みでよくわかるわね」
なんて言ってたら謎エンカウントの微ロス。火祭りじゃないのに祭りと聞きつけて我慢できずにやってきたのか神楽燦教官とミユリです。もうネオマギから足洗ったんだからやーめてくださいよほんと!
「あれ? ミユリちゃん……?」
「えっ、あ、あれ、塁さん?」
「ミユの知り合い? ああ、私は帆秋を探してたのよ。ネオマギウスを抜けるって聞いたから」
そういや呼び出し場所に教官いませんでしたね。宝崎に帰ってんたでしょう。
「藍家ひめな、彼女には試験を受けてもらうことにしたの。最近宝崎市で小さな事件や事故が増えててね、その対応で実力を見せてもらう。それさえ解決すれば火祭り開催の問題もなくなるし一石二鳥だわ」
「ですです、燦様が認めればまたネオマギウスで戦うことになるですぅ」
あっふーん……(スルー)。
あもしもし? あもしもし? あすいません、あの、メイン会場に、変態脚フェチ屋がちょっと入り込んでるんですけど……あ話はわかったんで今すぐ連れてってください。お願いします!
「あーいたいた! 水樹~!」
とか言ってたら別方向から来ました。
塁ちゃんに引き寄せられた三穂野監督と……ああん?
「Hi! お元気デスか?」
「あら、くれは嬢」
こちらはアシュリーとお久しぶりのペレネル先生ですね。
あれからまだ神浜にいたようですが、こちらからアプローチしてないので特にイベントはありません。自由に行動してます。つい最近は……アシュリーハウスに隠れとったのか? (邪魔しないならなんでも)ええぞ! ええぞ!
ちなみにアシュリーハウスは江戸間で60畳ワンルームという大陸スケールです。ハリウッドの映画監督と有名女優の娘だからってなんだあのでっかいモノ……。
「あ、あわ、あわわ……」
「ミユもアレだし私たちはそろそろ行くわ。次は敵同士でないといいけれど、ね」
さっさと帰ってくれてウレシイ……ウレシイ……。
まあ次は敵同士なんですけどね、初見さん。出会ったらみゃーこ先輩のヤクを吸わせて昏倒させてやろうじゃねぇかげっへっへ。
「せっかくデスし、みんなで見て回りまショウ!」
「もしかして二人のお邪魔だったかしら」
「おっ、おお、おっおおおお邪魔!?」
「また帆秋さんが変なこと言ったんだろうなぁ……」
(急に人が増えて)ちょ、ちょっと横暴ですね……。
まあいいや。2人も5人も変わんねぇよ誤差だよ誤差! おう、ついてきな!
ではパパっと見て回りましょう。
全神祭は行動回数で進行していくので、最速で終わらせるコツは短いイベントを選んでいくことです。そのために選択肢が集中したメイン会場に来ているわけですね。
例えばそこ。なんかゆきかちゃんがすげえメイド服になってます。ランダムイベントが影響した結果発生した進行ポイントです。
「む、あれはまさしく、
ペレネル先生が妙なこと言い出しましたがパーフェクトスルー。1つ!
「そうそう、そこで理子ちゃんが――あれ、あそこ、吉良先輩がいますね」
はい次! 三穂野監督サーチだ!
発見したのはねむちゃん、かこちゃん、てまりちゃんという読書マニアに本を押し付けられる静香ちゃんですね。2つ!
「むふっ、これも読むといい」
「わあっ古屋敷大八郎先生の『フクロモモンガの憂鬱』! 良いですよね、推理サスペンスなのにSFと時代劇の要素もあって!」
「モモンガシリーズはどれも名筆ですね。私も好きですよ」
「え、ええ、頑張るわ……」
珍しいことに静香ちゃんが眼鏡かけてますね。すげえインテリになったなぁ……(他人事)。
遠巻きにちゃるとすなおちゃんが笑顔で見てるのでまあ大丈夫でしょう。INTのレベリングを行う彼女はさておき次だ次!
さて次は……おっと、見知った2人発見伝。
「今日も帆秋さんは大人数だねぇ。……佐鳥ちゃん?」
「ご、ごめんなさい、こんなに人がいると、まだちょっと緊張が……」
かごめちゃんを連れた観鳥さんです。これは先日密かに手配しておいた結果に違いありません。
ここまでにかごめちゃんが取材を終えていない魔法少女がいる場合、そのほとんどがここで完了できます。ただし、彼女の人見知りが改善しているか頼れる誰かが傍にいないとまったく進みません。だから日頃から観鳥さんを配置しておく必要があったんですね。
その手記完成しなかったら再走だからそのまま頑張ってくれよな!
「あらあら、みんな偶然ねぇ」
ああん? 見計らったかのように唐突にみたまさんが来ました。織莉子がいつ狙ってくるかわからないのに笑顔を見せてるすげーやつだ。
いつもなにかイベントを運んでくる調整屋も、全神祭となれば穏やかそのもの。既にイベントが発生してるから! 発生してるから安心!
「ちょっと頼まれてることがあってねぇ、くれはちゃんにプレゼントがあるのよぉ。はい、ペアチケットたくさん。2人で行くと良いことあるわよ~」
いやちょっと……冗談はよしてくれ(タメ口)。
「ああ、なるほど……水樹、ここはしょうがないよ」
「なっ、なにが……!?
「Oh! そういう関係だったのデスか!?」
「ではくれは嬢、また」
「わた、私も、このみさんのところに誘われていて……」
う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
八雲ォ! どうしてくれるんだこの状況よォ! チャートが壊れてんだよなぁオイ!! 織莉子ー! 織莉子早く来てくれー!!
落ち着きました。
これは信頼度が一番高いキャラと発生するものですね。つまり同行者が観鳥さんに強制変更です。よりによってこんなもん引くな(屑運)。
長々としたイベント踏みましたが今さら戻れません。これ以外はうまいこと行ってるのでより悪い結果を引いてしまっては元も子もありませんし、近くのお祈りポイントでロスするのが目に見えています。
えっ、ここからリカバリーを!? できらぁ!
まず、かごめちゃんはこのみちゃんに任せましょう。マンドラゴラくんも花みたいなもんやし。
そして観鳥さんとの行動は最速で最短で終わらせればいいんだよ上等だろ!
こうなればひたすら会話で飛ばします。大量の魔法少女がいる河川敷も危険なため行きません。ん? どんな気持ちや?
行先は邪魔されないように2人だけの場所にしましょう。あっちょうどある? 良かった~観鳥さん呼んで。
離れられない観鳥さん以外の干渉がなければもう大丈夫です。花火さえ見られればイベントクリア確定となります。
ちなみに、2人で花火を見る選択肢はまさらとこころもやるので当然可能です。
「今日は八雲さんに感謝しないと。観鳥さんも楽しかったよ」
なんのこったよ(素)。
あっそうだ(唐突)。
夏のイベントも通り過ぎて、そろそろ第4章が始まる頃なので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
帆秋さんからの連絡はいつも簡素だ。
普段の喋り方そのままで送ってくるものだからギャップもなにもなく、『明日駅前で集合』とか『今日のテストあなたが教えてくれたところが出たわ』とか感嘆符もなにもない。
それが逆にイメージ通りで良いなんて話も聞くし、観鳥さんも同意だ。たまに遊びに行った先かなにかで真顔でピースの自撮りを送ってくるのも彼女らしくて、相変わらずだなぁと思ったことは何度もある。
最近は佐鳥ちゃんの『魔法少女のことを手記に纏める』手伝いの関係で、スケジュールの連絡が多い。異様な交友関係の広さで次から次へと魔法少女を呼んでくる姿は頼もしいことこの上なく、かごめちゃんも驚いていた。
だけど身勝手なもので、直接言葉を交わしたい欲求があった。
らしくないけどさ、画面上の文字だけでは得られないものが欲しかったんだ。桐野さんといるときに偶然出会って、ますますその気持ちは強くなった。
会おうと思えば学校で会える。ふらりと家に立ち寄ってみても良い。
けど、それじゃ、示しがつかないじゃないか。
互いに決めた道で、なにを今さらと言われても仕方ない。
世界は綺麗事だけじゃ回らない。いつか一緒にいられなくなる日はきっと来る。そんな日を思うと――自分はなにをやっているんだと、殴りつけてやりたくなるんだよ。
ひとりの学生としての生活、魔法少女としての使命、白羽根としてのケジメ、ユニオンの活動。そんなものをすべて放り投げてしまえたら……なんて、無責任でプライドも信念もない行動はできない。だいたい、それらがあって"観鳥令"がいる。
そうやってどっちかに割り切れたのならもっと楽だった。
けれどもそう単純ではなく、人は万華鏡のように色んな側面を持って生きる。ああ、その中に帆秋さんの色がなくなるのは……寂しかったんだ。
「あの……」
きっと、そんな迷いの感情を読み取られたのだろう。隣を歩く佐鳥ちゃんが見上げた視線は、疑問の色を宿していた。
夏休みの間は取材もよく進む。今日もまた、観鳥さんはその手伝いで一緒に行動していた。
「ひとつ聞きたいことがあって……」
「ん? いいよ、暴く側が暴かれるのを断固拒否なんてフェアじゃないからね。さてさて佐鳥ちゃんはどんな質問をするのかな」
「そ、そんな深いことじゃないですよ? ……くれはさんとはどういう関係なんですか? よく考えたら、お二人のことよく知らないなって」
意気揚々と答えようとして――珍しく、言葉に詰まった。
改めて自分と帆秋さんの関係を考えると、なんだろう。
学生としては先輩と後輩。魔法少女としては戦友。そんな表向きの肩書はいくらでも並べられる。そう答えても良い。
だけど、観鳥令という自分は彼女をなんと思っているのか。本質はそれだ。
「……大切な人だよ」
混ざりきったイメージは解像度を上げることはなく、そんな、月並みな言葉しか出なかった。
◇
「だから、そこで良い感じに調整屋さんが偶然にもふたりと遭遇。それでいいわよね」
「いやバレるだろ……」
「じゃあももこは他に案があるの?」
「……ない」
そんな会話が観鳥さんの前で繰り広げられる。
急に調整屋に呼ばれたかと思えば、既にそこそこの数の魔法少女がいた。ひなの先輩にまなかちゃんや阿見さんの姿もあって、その中にいた桐野さんはこっちに気づくと人の良い笑みを見せて手を振った。
こんな大所帯でなにをする気だろうか。
近く全神祭があるけれどその関係かな、観鳥さんが必要なら写真係とか?
なんて思っていたのは、想定をはるかに上回る一部分を除いた正解だ。
まさかこの人たち全員、観鳥さんと帆秋さんに二人っきりの時間を与えようと画策してたなんて思うわけないじゃないか。
見ればここにいる面々は特に帆秋さんと親しい人ばかり。彼女に元気になってもらいたいそうで、観鳥さんに白羽の矢が立ったらしい。それぞれ全神祭で予定があるだろうにこんなこと良いんだろうか。
「ほら、くれはちゃん最近……辛そうじゃない。みんな心配してるのよ」
「えっ?」
「この前の創作料理大会の時も前みたいな行動したそうだし……」
八雲さんの言葉には真実味が含まれていて、嘘をついている様子はない。
写真を通して見る姿に違和感はなくとも雰囲気に出ることはある。少し離れていた間に、そこまで帆秋さんは変わってしまったのだろうか。
「……やっぱり、そういうことなのかな」
スマートフォンに向いた意識が先日送られてきたある文面を思い出させた。
帆奈ちゃんの言っていた、家での様子と二木市での出来事はおおむね正しかったらしい。
そんな気持ちを抱きつつ日常は過ぎていき、全神祭はすぐにやってきた。
元からいくらか予定はあるし、帆秋さんに佐鳥ちゃんのことを頼まれている。
八雲さんの言う"作戦開始"まで時間はあるわけで、彼女と合流すると緊張しながらも楽しみにしているようだった。なんでもブロッサムとななかさんの華心流が共同で華道の体験教室を開催しているらしく、誘われているらしい。
「えーと、最後の花火の時は……移動でしたよね?」
「そうそう、良い場所があるらしい」
河川敷に大きく場所を取ったそうだけど、「せっかくなら二人っきりがいいでしょう?」と別の場所を指定された。このみさんが手を回してくれたらしくて、どうやらブロッサムの伝手で確保できたとか。
そういえば、帆秋さんはこのみさんと花火を見に行ったことがあると聞いた。
あの2人は同い年だし、ブロッサムでのバイトの帰りに遊びに行ったとか、そういう理由もあるんだろう。
その話を知った時、普段の観鳥さんらしくもなく、少しばかり嫉妬した。
言葉だけなら醜いものだ。人間を独占すべきじゃないし、まず感謝すべきなんだ。
だけどまあ、湧き出る感情を自覚して受け入れて、そういう感情を自覚するとむしろ口角が上がった。飄々としたイメージを作り上げているつもりでも、ああ、観鳥さんはやっぱり"私"なんだなと。
私にとって彼女は、いつまでも輝いている。
あの日あの時、手を繋いでくれたこと。離れても、何度でも、また隣にいてくれること。言葉にすればそれだけでも、行動を伴って心を満たしてくれた大きな出来事なのだから。
それを信じているからこそ、ネオマギウスに行っても彼女は変わらないという最後の証明を持って待てた。
だけど、実際に帆秋さんと改めて正面から向き合うと――己を恥じた。
工匠の人たちやかごめちゃんと離れて、二人っきりになってからは特にだ。
「どうかしたの」
今一度、鏡を見ているようだった。
魔女化の真実を知って、帆秋さんの力になりたいと思ったあの日の自分がそこにいた。
表面上の違いはまったくない。だけど、言われた通りに辛そうで、確かになにかが違う。
嫉妬とか、待つとか、そんな感情より先に寄り添うべきだった。
「大丈夫?」と言葉数が少なくなった観鳥さんを気遣うように言うけれど、これで平然としていられるほうがどうかしている。
帆秋さんのほうが大丈夫なわけがない。どれだけ『停止』で心を止めたところで、プロミストブラッドが現れてからの出来事は着実に帆秋さんを苦しめ続けているっていうのに。
悟られないように一言二言交わすと、見て回ろうかと歩き出す。
いくつかの出店を見て回り、最終的にたどり着いたのは河川敷から少し離れた場所だ。周囲に人はあまりおらず、見晴らしも良い。穴場とはこういう場所を言うんだろうね。
時間的にもそろそろ花火が打ち上げられる。
少し待とうと近場のベンチに座ると、無言の時間になった。
……なにを言うべきだろう。
花火が打ち上るまでの僅かな時間に、なにを言えるだろう。
帆秋さんに勇気づけられるのは簡単なのに、いざ自分の番となるとなにも思いつかなかった。
だから言えたのは、自分の欲望にすぎない。
「……ユニオンに来ない?」
「どうして」
「ネオマギウスはリーダーができたんでしょ? 帆秋さんがやりたいことはわかってるけどさ、そっちは任せてユニオンの管轄で行動して欲しい」
ユニオンに入っていない子のために未加入だった彼女に、この言葉は酷だ。信念を崩す結果になるかもしれない。
なにも考えなしに傷つけるわけじゃない。打算的なことを言えば、彼女の存在自体がユニオンの活発化へ繋がる。未加入の子もネオマギウスの子だって来るかもしれない。本人は気にしてないかもしれないけれど、いつの間にか影響力がある存在になっていたんだ。
だけど本質は、そんなことよりもっと私的な欲望。
近くにいてくれれば、もっと一緒にいられる。ただ、それだけだ。
「でも、私はみんなを助けたくてユニオンには……いいえ」
帆秋さんは、そこで言葉を止めた。
少し黙ってから、見えない星を見上げて言った。
「わからなくなった。そうなりたい、できるようになりたいと思ってた。でも、わからなくなったの」
「それは……」
「私、姉さんのようになりたかった。姉さんみたいに優しくて、みんなを助けられる人になりたかったの。だから全部は無理だって諦めて、助けられるはずのものを手放すことだけはしたくなかった。でも、姉さんは……私を……」
過ぎ去ってしまった今、観鳥さんがなにを言っても事実は変えられない。
それも、仔細は帆奈ちゃんから伝わっていた。
端的に言えば帆秋さんのお姉さんは家族を手放した。もし魔法少女の彼女が傍にいたのなら、帆秋さんはきっと願わなかったはずだ。隣にいる……ただそれだけで人は救われるのだから。
気づけば、初めてなりたいものを聞いた気がする。
なりたいものとは、欲しいものと同義だ。それそのものだけじゃなく、構成する要素を求めた結果に近い。魔法少女が願いを叶えるとき、夢を叶えるのなら『〇〇になりたい』と願うこともあるだろう。観鳥さんだって、シャッターチャンスを逃さない存在になりたかった。
だけど、帆秋さんの願いは真逆の『大人になりたくない』というものだ。
そんな彼女が姉のようになりたかったというのは、とても難儀に思えた。あるいは――初めからなれないと矛盾を突き付けられているようで、悲しくなった。
"私"の思う"帆秋くれは"とは、彼女の姉でも妹でもない。
ただ一言、そう伝えられればいいのに、"観鳥さん"としての装いを外すと、とても言えなかった。あなたの憧れを捨てろと言うようで、慣れ親しんだ演技で言うような言葉じゃなく、素の自分で向き合うのにはあまりにもちっぽけだったんだ。
そうこうしている間に聞き慣れない音が耳に届き、破裂する音と共に人々の歓声が聞こえた。
日常の中にある非日常を前に、誰しもが空を見上げる。それは観鳥さんたちも同じだ。
「花火、上がったね」
「綺麗ね」
返ってくる言葉はいつも通りで、心の平穏が取り戻されているようだった。
その『行為』を止めさせるためには、平和が来てくれたら良い。争いが早く終わってくれれば、裏切られた心労に向き合うことも、奔走する理由もない。ドッペルと同じだ。必要がなければいい。
――ああ、そうか。
だから今できる対処法は、彼女の周囲を穏やかな日常で彩ることなんだ。一番近くにいた自信があったのに、遠くを見つめすぎてそんなことさえ気づかなかった。調整屋にいたみんなも、八雲さんも、わかってたんだ。
じゃあ――観鳥さんらしく、ね。
おもむろに立ち上がると、常に大事に持ってるカメラを構えた。
これは、"私"でもあり"観鳥さん"でもある。常に変わらない1シーンだ。
「私も撮る?」
「花火の写真なんだけどなぁ」
……そうだ、こういう関係でいられたらいい。
他愛のない話をして、当たり前のように近くにて、一緒に楽しめたらのなら。
と、1枚1枚を写真に収めるたびに気持ちが高まっていく。
「さっきの話じゃないけどさ、魔法少女になる前、そう、たとえばもっと昔……小学生の頃とか、なりたかったものがあるんじゃない?」
「あるわよ」
「聞いてみたいな」
「笑わない?」
「もちろん」
帆秋さんは花火を見て言った。
「……およめさん」
時が止まったようだった。
数度呼吸を繰り返して、言った言葉の意味を頭の中の辞書を開いて思い出す。ああ――そういえば、ウワサと融合した帆秋さんはウェディングドレスを着ていたとか。そんな思考が挟まって四苦八苦しながらも理解した。
それは、なんというか。
可愛らしいというか、言い方が子どもっぽかったなとか、口元が緩んでしまう。
「笑わないって言ったわ」
「ゴ、ゴメン……ちょっとイメージが違いすぎて」
表情は見てなかったけどいつもの真顔で言っていたに違いない。
このみさんが見ていたらなんて言ってただろうか。うん、ブーケとか用意しそうだ。
「ありがとう」
だけど、次に聞こえた言葉は想像してないものだった。
「少し、楽になった。みんながいて、帆奈が家で安らぎをくれて、このみが日常を思い出させてくれる。そして――」
視界から花火が消える。
「あなたがいてくれて、本当に良かった。あなたがいるから、今の私がいるの」
彼女の表情は光に照らされて、より綺麗に輝いて見えた。
それは。
この世界のなによりも愛しくて。
代わりなんてないただひとつのもので。
絶対に、失いたくないものだ。
……待ってて。
私が、あなたの平穏を取り戻してみせるから。
◇
ガラッと勢いよく部室の扉を開けると見慣れた景色が飛び込んできた。
今日もまた、歴史研究部の仮部室には古町先輩と吉良先輩が思い思いの様子で過ごしている。
「いや~全神祭は楽しかったですね!」
「三穂野、それ何回目?」
「まあ、楽しかったのは事実ですが」
帆秋さんと別れたあと、先輩方と合流した私たちは電波塔のお化け屋敷に行っていた。
なんせハリウッドで特殊メイクに携わった方が模型を担当して迫力抜群! 古町先輩も時代考証の良さで頷いていたし、吉良先輩もコンセプトのドラマを褒めていたんだ。アシュリーさんも「オー! ジャパニーズホラー!」なんて言ってて、隣にいる水樹も楽しそうだった。その頃はアシュリーさんの知り合いは……別行動だったかな?
「それで今日はどうします? さすがにそろそろ出せるもの作っておかないと危ない気がするんですが……」
「部活動はしてるけどね、歴史研究部」
「その通りです」
とか言って吉良先輩は本に目を向けた。確かに。
うーん、まあ……いっか。全神祭でインスピレーションも沸いたし、まずは映画を――
「あのー……せいらちゃんいますか?」
と、聞こえたのは水樹の声だった。
扉を少しだけ開けて顔の覗かせた彼女は、私を見るなりすいすいと部室に入ってくる。猫みたいだ。
「実は先生がせいらちゃんを呼んで……て――」
「……水樹? どうしたの?」
「こっ、これ……!」
顔を真っ青にした水樹は震える指で一枚の写真を示す。
それは歴史研究部で歴史モノの映画を撮ろうと魔法少女たちを集めた時の集合写真だ。
「真っ黒で顔が見えない……! し、死んじゃう!」
指差したのは、いつもの真顔でいる帆秋さんの隣。
写真係だからと遠慮していたのに、無理やり連れてこられて苦笑いをしているあの人。
その場所にいるのは――観鳥令さんだった。
■今回の内容
『全神祭で遊ぼう!』
■全神祭で遊ぼう!
3周年記念イベント。記念だけあり色んなキャラが出てくるお祭り。
当然ながらこの地点までに登場していないキャラは本来出てこない。ので、自由に動かせる一大ロスイベント発生オススメポイント。
■小さなキュゥべえ
このイベントの際実装された。攻撃するのはみかづき荘メンバーだがダメージを受けるのはモキュ。なんで?
特に出番が多いわけではない。いつも通りの扱いを受けている。
■フクロモモンガの憂鬱
かこちゃんのMSSで『戦慄のミミゲモモンガ』共々出てくる。
『忘却の輪舞曲は久遠に睡る 前編』で出てきたのは『フォルデルマンハネオモモンガ殺人事件』。妙にシリーズが多い。
■歴史研究部の写真
後日談『忘却の輪舞曲は久遠に睡る』で撮ったらしい。
もちろんくれはちゃんが「隣で撮りましょう」とか言った。
■死相
すべてを分ける最後の分岐点。