マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

119 / 141
パート80 ノット・ディペンデンスブルー

 

 

 無事に観鳥さんを助けられたRTA、はーじまーるよー。

 

 神浜監獄での戦いは再走回避とチャート上の行動が見事に噛み合った最良のものでした。

 キモチは出揃う。ミスドのショートカットをすべて潰す。闇討ちも回避。こんな良いこと滅多になかったよ?

 

 それじゃペレネル先生のカトラスをしまい……と、片手動きませんね。

 ドッペルで回復はしたものの、無茶したせいで傷が治りきってません。

 

 ソウルジェムにダメージを負うと回復不可の様々な悪影響を受けます。

 HPがまともに回復しなくなったり、穢れがより増えるようになったり、日常で用いる人間としての能力値が減少したりもうめちゃくちゃや。

 

 しかし、くれはちゃんの性能を思い出してみましょう。

 元から当たれば退場の紙装甲なのでHPは飾り。穢れが増えてもドッペルでカバー。日常イベントの成功なんて必要ないので能力値減も意味なし。

 

 なので、ソウルジェムの耐久値が0にならない限りなんの問題もありません。なんの問題ですか? ヒビが入らなければまだマシだから安心してくれよな~頼むよ~。

 

「ごめん、帆秋さん……無茶しなければ、こんなことには……」

「あー……確かに令が先走ったのが原因だ。だけどな、オマエの気持ちもよーくわかるぞ。コイツのためにしてやりたいことだったはずだ」

「令ちゃん……」

 

 ぜんぜん冷え空気じゃんお前!

 しょうがねぇなぁ、場を暖めてやるか!

 

 もしもーし、紗枝ちゃん元気? 朗報お願いします!

 

『うん、こっちは大丈夫だから。えっ、あっ……本当に大丈夫だよ? 怪我はしたけど酷くないし、調整屋さんに行けば治るから』

 

 とまあ、組長たちがうまくやってくれたそうですが……さすがに強かったらしく、いくらか負傷したそうですね。退場してたらリセだぞリセ! 生きてて良かった~って思うわけ。

 

「オマエの選択は間違ってない。どっちかしか選べないんだ。もしオマエがいなかったら――いや、言うことじゃないな」

 

 みゃーこ先輩が急に慰めてくれました。神的に良い先輩なんだよなぁ。

 とまあ、ドッペルで穢れが全回復したものの、怪我の影響かまた増え始めてるので追いグリーフシード。

 

「オ、オマエその手……オイ隠せ、今見られたらマズい。令はアタシがなんとかする。今すぐ調整屋に行って見てもらえ、いいな?」

 

 おっどうしました? 調整屋行ってる暇なんかないんだよなぁ……。

 それにソウルジェムにダメージがある状態でみたまさんに調整を受けるとイベント発生。調整屋驚異の情報網で信頼度を結んだキャラすべてにバラまかれ、戦わせてもらえなくなります。

 

 もし調整が必要ならピュエラケアのリヴィアさんに頼むといいですね、ええ。とはいえ彼女もソウルジェムの破損までは治せないので情報がバラまかれないだけです。

 

 一応、ソウルジェムの回復手段はありますが……フラグを立てておかないと自由使用が解禁されるのが最終章。ルートによっては出てきすらしません。遅すぎるッピ!

 

 そんなわけでくれはちゃんにはこのまま突っ張ってもらいます。

 これで第二部第4章『彼方の群青』も完全に終わりっ!

 

 では心苦しくもみゃーこ先輩の忠告をガン無視して帰りましょう。

 

「くれはさん、ゆっくり休んでください。あとは……ううん、この先は、私たちがなんとかしますから」

 

 いろはちゃんの優しさ感じるんでしたよね?

 ありがたく受け入れて家にまいりまーす。

 

 

 

 ~少女移動中~

 

 

 

「くれはっ!」

 

 帰宅したらいきなり帆奈ちゃんダイブ。

 そういや帰ってましたけど、いざ神浜監獄したので連れていけませんでしたね。

 

「全部聞いた。また無茶して……あれ? あんた、その手――包帯巻いてんの?」

 

 隠していれば面倒な話にもなりませんし、落とされてないだけマシだってそれ一番言われてるゾ。

 さすがに欠損したら調整屋さんに行かないといけなくなります。カトラス二刀流ができないとDPS低いからね、しょうがないね。

 

 しかしこの程度ならば、ソウルジェムダメージによる回復阻害があろうと、汎用的な回復魔法に魔力を回せばそのうち治ります。しばらく戦闘しないのでそれで間に合います。

 帆奈ちゃんをなだめてさっさと寝ましょう。お姉さまを見習って健康優良児になるんぜよ!

 

「ああ、うん……まだ早いけど、疲れてるよねそりゃ。ゆっくり休んでてよ……」

 

 今度は帆奈ちゃんの優しさ感じるんでしたよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

「おはよー」

 

 起きたら隣でラピヌお姉さまがよだれ垂らして寝ていたりしましたが朝です。 

 

 観鳥さん経由で無茶したことがバレたようで、もうプロミストブラッドと戦うなとスマホに警告が来ていますがヨシ。これで決戦まで対ミスドイベントをすべてスルーできます。だから結菜さんとぶつかっておく必要があったんですね。

 

 本日はお誘いを受けているのでホイホイと向かいましょう。

 目指すは新西区……ではなく、さらに遠く宝崎市。その途中、ちょっとだけ宝崎順心学園を見てからの重役出勤だぜ。

 

「やってきましたね、宝崎市♪」

 

 そしてお誘いを受けた相手はなんと栗栖アレクサンドラ。

 ひめな、時雨ちゃん、はぐむんが燦様の試験を受けるということで、せっかくですから見送りでもどうですかと呼ばれました。嬉しいこと言ってくれるじゃないの。

 

「ぼくにできるかな……」

「私チャンも頑張るから一緒に頑張ろ★」

「そうは言いますけど……あの教官の出す試験は一筋縄ではいかないと思います」

「それに、ぼくはまだあなたをリーダーだって認めてない……」

 

 こっちもこっちで空気が冷えてんなぁオイ。

 しかし時雨ちゃんの反応はこれが正常。くれはちゃんへの信頼度が無駄に高いことのほうがガバでした。慣れ合う気はないのではぐむんぐらい低くて良かったから(良心)。

 

 彼女たちの行動こそ、第3章以降第4章未満かつひめな加入後に発生する『ディペンデンスブルー』。

 今回はスケジュールの進行が遅れて第4章後となりましたが、このイベントは本来、燦様とミユリをネオマギウスに正式加入させるために必要なものです。

 

 内容としては、ひめなとしぐはぐが宝崎市と神浜市を行ったり来たりして近頃起きている事件の解決で頑張る……というものですが、ここにあした屋で出会った飾利潤と関係キャラ『三輪(みわ) みつね』が関わってきます。彼女たちも解決のために手伝ってくれるお助け役です。

 

 わぁ、これが味方魔法少女ですかー いろんな要素がありますねー。こんなに手厚く揃ってるとは思わなかったぁ。

 宝崎市で活躍した、その素敵なヒーロー活動を見せてよ。

 すぐ解決しますよ。

 

 なんてあっさりいくわけもなく、事件の原因は実はみつねちゃん。

 彼女の固有魔法『改竄』が無意識の間に発動。認識を変えて事件を引き起こし解決するマッチポンプだったわけですね。

 

 この事実が暴かれるとメンバー全員の認識を改竄して逃亡。自責の念から事件で成長した魔女を自分一人で倒しに行く……のですが、Are you you care "HIPのYOU"(ああいう勇気は「匹夫の勇」)。またも子守の魔女なのでみつねちゃんに勝ち目はありません!

 

 ネオマギウスと潤さんが到着すれば勝てますが、代わりに潤さんが退場。なんらかの方法で進行ルートを変えないとみつねちゃんか潤さんの二択を迫られることになります。

 

 とまあこっちは原因知ってますし、『停止』で『改竄』を無効化できるくれはちゃんがいれば超スピードで解決するんですが、かかる時間が長いし用事があるので行きません。潤さんを助けたかったけどな~俺もな~(諦念)。

 

 潤は親の転勤の都合で神浜の外に出るので、その間にどこに行ってたか次第で派生したりしますが……まあ今回は関係ないですね。

 

「それではここで失礼しますね♪」

「おけまる~」

「えっ、一緒に行かないんですか? くれはさんは抜けたし、わかってましたけど……」

 

 と、ネオマギウスに加入していない場合は確定でここでサヨナラ。

 サーシャもディペンデンスブルーにはついてきません。あれれ~? ネオマギウス所属なのにおかしいぞ~? と通常プレイなら思うところですね。

 

 くれはちゃんが見送りなんて無駄な行動に来た理由はここ。

 確実にサーシャが現れ、一人になる状況だからです。

 

 サーシャとうららの信頼度が上がってねぇじゃねぇかオラァ! とお叱りを受けそうでしたがちゃーんとチャートに書いてあるんだよなぁ(激ウマギャグ)。

 

 商店街で買い物するラビさんとほぼ時女一族と化している旭殿とは簡単に出会えて信頼度を上げられるのですが、前半後半と敵になりがちなミスドとネオマギにいるうららとサーシャはなかなか……難しいねんな。

 

 じゃあ見送りも済んだしよぉ……サ店に行こうぜ!

 

「はいっ、私も話したいことがあったので」

 

 呼んだのは向こうなので色々聞いてきますが、そこは流して本命の話をしましょう。

 

 ここでサーシャの尋問タイム♪

 以前調べた情報だけでは、ラビさんの実家が湯国市であること、そこで開催されたフェストがあること、うららが関係していることしか突き付けられません。これだけでは「そうなんですね♪」で終わってしまいます。おお~……ガードがキツいぜ。

 

 発言ひとつひとつを揺さぶる時間なんてないので初手で正解を当てます。

 突破方法はサーシャと旭が湯国市に関係している情報を一緒に突き付けることです。

 

 というわけで、僅かな時間を見つけて涼子さんに頼み、霧峰村の資料からの三浦家のことを確認してもらいました。

 すると、三浦家の源流は"朱鷺"であり分かれて苗字を変えていること、朱鷺集落は湯国市に編入されたことの2つがわかります。『朱鷺集落』は以前出てきたワードですが、時女ルートかフォークロアルートの場合はこちらから旭殿に辿り着くことになりますね。どちらにせよ旭殿と湯国市の関係ゲット。

 

 ここまではいいものの、やはり一番ガードが固いのがサーシャ。

 しかし、そのためのくれはちゃん? あとそのための学校?

 

 サーシャと彼女が恋した先生の因縁の場所は~? 

 そう! 南凪!

 

 そもそも神浜市がサーシャの通う湯の花国際中学・高等学校の修学旅行先となっており、先生方はその下見に来ます。偶然にもサーシャが出くわし、願いの結果や初恋に区切りをつけるのですが……その場所こそ、南凪の海浜公園です。ついでにフォークロアへの定期連絡もこの場所。良い偶然だぁ(歓喜)。

 

 こちらは紗枝ちゃんにラピヌお姉さまの監視ついでにたびたび海浜公園に派遣し、目撃してもらっています。そのため神浜魔法少女ファイルのサーシャの項目には既に『学校:湯の花国際中学・高等学校』の確定情報が。

 

 まあ、ひめなと一緒にいれば、第5章のタイミングで海浜公園に乗り込むことでサーシャの所属を直接知ることもできますが、待ってられないんじゃい!

 

 サーシャさ~ん? 俺知ってるんですよぉ~?

 サーシャさんの連絡してる、毎週連絡してるアレって、南凪でしょ?

 

「え?」

 

 良いんですかァ~? バラしちゃいますよォ~~?

 

「……わかりました。ついてきてください」

 

 交渉成立です。ラビさんに会わせてくれるそうですの。

 これじゃ脅迫みたいですが、くれはちゃんはそんなつもり一切ないから問題ないんだよなぁ(畜生)。本人にしてみたら知ってること話したらなんか教えてくれたぐらいじゃないっすか?

 

 南凪にまいりまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました海浜公園。

 那由他さん家に突撃家庭訪問すると手間が省けたのですが、それではラビさんの信頼度爆下がりなのでサーシャに呼んでもらいました。

 

「帆秋くれは……」

「ごめんなさい、ラビちゃん……バレてしまいました」

 

 不思議なことにいきなり反抗的な態度を取られています。なんで?

 

 まあいいや(走者の屑)。

 どうせ今からやることで感情が一転攻勢。練り上げられたチャート、見せてやるぜ!

 

 フォークロアの秘密を明け透けに暴いた理由は信頼度上げの時間が足りないから……というのがありますが、他にもあります。

 

 それがこの情報をすべて里見那由他に叩きつけること。

 本来なゆたんがフォークロアの存在を知り共に行動するようになるのは第8章ですが、それでは間に合わないので今すぐぶつけるわけです。ラビさんとっとと出てきますの。

 

 というのも、太助とラビさんは延々となゆたんを遠ざけようとするのでまったく話が進みません。そしてラビさんはへたれんぼなのでノロノロズルズル隠しまくって遅延! (娘と大切な人から)逃げんじゃねぇよ!

 

 なゆたんは宇宙の意思がどうとか利用していたなどという話が問題なのではなく、今までの暮らしは嘘だったのかという点にダメージを受けるので、伝えるのが遅いとドッペルを出すほど傷ついてしまいます。一番悪いのはなにも言わなかった太助ェ!

 

 これさえ済めば状況は改善。いかにもな暗躍ムーブしてる彼女たちに特別な力はなく、普通の存在なので正面からぶつかって大丈夫です。

 希望を信じるなゆたんがの説得をしてくれますし、あとは親子水入らずで話させとけばなんとかなります。ラビさんもファミリーみたいなもんやし。

 

「だけど、私は……」

 

 というわけ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ暑い日差し。頬を伝う生温い汗。

 気温への不快感を隠しきれないまま、宝崎の駅にいた。

 

「栗栖さん、暑くない?」

 

 はぐむちゃんがその額に流れる汗をハンカチで拭きながら私に問いかける。「暑いですよ」と返すと「そうだよね」と不思議そうにしていた。

 

「え、は、はぐむん……神浜監獄が倒壊したって」

「ええっ? そこって大東のだよね?」

「うわ~倒壊ってヤバくない?」

 

 なんて、待ち合わせまではほんの少し時間があるからか、時雨ちゃんとはぐむちゃん、そしてひめちゃんは手持ち無沙汰だった。

 

 対して私は、表面上はいつも通りを心掛けていても、どこかぎこちなかったかもしれない。

 宝崎市に見送りには来たものの、神楽燦教官の試験を受けないで、みんながネオマギウスとして活動しようとしているのに別行動をしようとしている。

 

 ひめちゃんには「地元の仲間に声をかけてきますね♪」とは言ったものの……半分の噓をつくのは忍びなかった。

 

 地元とは湯国市。仲間とはもちろん『午前0時のフォークロア』のことで、これから会いに行くんだから言葉通りに見れば嘘でないと言える。

 だけども、ネオマギウスの戦力を集める意味では真っ赤な嘘。自分に隠し通せるはずもなく、よくわかっていた。

 

 信じてくれるひめちゃんに向ける笑顔はこれでいいのかなって、ずっと気にしてる。

 ううん、これで良いはず――そう自分に言い聞かせるばかり。

 

「とりま教官に認められなきゃね★ 私チャンが口先だけじゃないって証明するから」

「やっぱり、キライだ……」

 

 心配なこともあるけど、ひめちゃんなら大丈夫。

 そう思いつつ、賑やかな彼女とは真逆で、ずっと無言のまま汗ひとつかかない真顔を向ける彼女へと振り向いた。

 

 帆秋くれは。私が呼んだ、今日の本当の目的に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 熱さを避けるように入った喫茶店は正解だった。

 空調は調子よく快適な温度を作り出して、注文した飲み物も味が良い。

 くれはちゃんは以前も来たことがあるそうで、このお店を選んだ理由はこういうところを知っていたからからなのかも。

 

 彼女が注文したのは当然のようにメロンソーダで、好物はメロンという情報は合っていた。彼女の容姿と好みは否応なしにアンバランスな魅力を生み出すものの、包帯を巻いたままの手は澄んだ水に一滴の泥を垂らしているようで痛々しい。

 

 今日は暑かったとか、ひめちゃんたちは今頃どうしてるだろうかとか、そんな前置きをいくつかしたあと、私は本題を切り出した。

 

「くれはちゃんは魔法少女至上主義ってどう思いますか?」

「急になに」

「一時でもネオマギウスにいたんですから共感してると思って♪」

「従わせるとか導くとか、そういうのはわからない」

 

 けれど、と付け加えて、彼女はメロンソーダを一口飲んだ。

 

「魔法少女であることに意味はある。そうじゃなきゃ、ダメだった」

 

 くれはちゃんはそこで言葉を止めて、不自然にもコップを持つ手を変えた。

 私の視線が指に向けられていることに気づいたのか、彼女は視線をそらして続ける。

 

「やっぱり同じです。ひめちゃんも、みんなそうなんだと思います。その先に、自分たちが認められる世界があるから……」

「でも私はネオマギウスじゃない」

「……もし、ですよ? このまま彼女たちが敵になったとしたらどうしますか? たとえば、ひめちゃんが助けを求めたら」

「助ける」

 

 即答だった。被せるように言った。

 唐突な質問だったはずなのに、考える間もなく出した答えは、だからといって考えなしに言ったようには思えず、言葉には確かな重みがあるように思う。

 

「ふふっ、そう言ってくれると思ってました♪」

 

 彼女のことはちゃんと調べた。というより……時雨ちゃんを始めとした、ネオマギウスの羽根の子たちが教えてくれた。

 挙げられた過去の行動はどれも善側の行動で、今の言葉にもその積み重ねが見えるみたい。

 

 やっぱり……ラビちゃんの考えすぎ、だよね。

 

「私も聞きたいことがあるのだけど」

「なんでも聞いてください♪」

「氷室ラビ」

「え?」

 

 彼女の口から、出てくるはずのない名前が飛び出てきた。

 

「どこかで聞いたことがあると思ったの。彼女の実家、野菜の販売してるのね。私の家も姉妹の病気が良くなるのならって買っていたのを思い出した。そしてそこは確か、湯国市だったはず」

 

 懐かしむような優しい声に混じる聞き慣れた市名。

 その名前まで出てきては、彼女の口の動きに恐怖するしかなかった。

 

「有愛うらら。二木市で見かけたのだけど、前は湯国市でローカル番組に出てたりしてたらしいわね」

 

 ああ。

 

「三浦旭。彼女って時女一族の分家らしいけど、湯国市にその別れた集落があるそうなの」

 

 ああ――!

 

 ラビちゃんは正しかった。

 次々と私たちの情報が告げられていく。偶然知ったのだとしても、あまりにもピンポイントで知りすぎている。

 

「そしてあなた。南凪の海浜公園で姿を見た人がいるんだけど……湯国市から下見に来てた先生たちもいたらしいわね」

 

 落としそうになったティーカップを、ゆっくりと置いた。

 

「それで、あなたならなにか知ってるんじゃないかって」

 

 言葉通りの意味じゃない。ここまで調べあげておいて、今さら聞く理由なんてない。

 これは脅迫。私たちを逃がすつもりはないと、裏の意味を込めて突き付けてきている。

 

 さっきまでの表情が、鋭く私を睨み付けているようで。

 ……ごめんなさい、もう、隠し通せません。

 

「私たちは『午前0時のフォークロア』。グループの中でただ役割を果たし、戦いの成り行きを見守るだけの存在です。あなたにはもうわかってることでしょうが……」

「初めて知ったわ」

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーシャから連絡があった時は、遂にこの日が来たのだと覚悟した。

 指定された南凪の海浜公園へと向かうと、そこには彼女がいたのだから。

 

「帆秋くれは……」

 

 颯爽とした姿勢で立ち、海風に髪がなびく姿は綺麗なものでも、私を射抜く冷たい視線はひどくおそろしいものだった。

 

「ごめんなさい、ラビちゃん……バレてしまいました」

「サーシャが気にすることはない」

 

 これも大きな力の流れ。自然の摂理に人が抗うことなんてできない。

 彼女がその流れのひとつならば……なおさらだ。責める理由はない。

 

「旭とうららは」

「この場で四人揃うのも……と思ってラビちゃんだけに」

「それでいい」

 

 被害は少ない方が良い。彼女たちならきっと、大丈夫。

 それになるべく隠れる位置に来てはいるものの、この場所は人目がある。特に、敵対しているプロミストブラッドにいるうららが見つかれば危険だろう。

 

「それで……彼女はなぜ私たちに? 経緯を詳しく教えて欲しい」

「さっきまで宝崎市にいたんですが、聞きたいことがあって喫茶店に入ったんです。そこで――」

「サーシャたちと会う前に寄り道したわ」

「え? そうなんですか?」

「宝崎順心学園」

「――っ!?」

 

 それは、那由他の通う学校だ。

 

 ネオマギウスのメンバーの見送りとは聞いていた。

 けれど……本来まったく関係ない場所になぜ向かった?

 

 悪い予想が何度も何度も頭を巡る。

 これは脅し。その気になればいつでも手を下せるとばかりに、彼女は、間違いなく狙ってきている。

 

 気づけば、余裕なんてどこにもなかった。

 

「私が目的ならなんだってする。自由にしてくれていい。だけど、那由他には……!」

「なにもしないけど」

「えっ」

「ほ、本当にごめんなさいラビちゃん……実は……」

 

 その後サーシャが話してくれたのは、帆秋くれはがどのような情報を持っているかとその経路だった。

 聞く限り、無から知りえたわけでもなく、内容を考えれば手がかりがゼロというわけじゃない。必ずなにか繋がりがあってこの結果に辿り着いている。

 

 それはやはり偶然とは思えない並びではあっても、ただ一つだけ……すべてを洗い流すような正解が見えた。

 

「あなたの家の野菜のおかげで、姉さんも妹も、元気を取り戻していた気がするの。ありがとう」

 

 自分を直接褒められたように照れくさく誇らしく、相反して申し訳ない気持ちがあった。

 祖父の野菜が直接、病を治すわけではないとはわかっている。それでも彼女のように信じてくれる人がいるのは、一言では言い表せない感情を抱いてしまう。

 

 私に近づいてくる理由。

 今まで一番わからなかったそれが、糸がほどけるようにするすると解けていく。

 

 と同時に、新たな疑問も浮かんだ。

 

「……では、なぜ私に園芸の本を? あの時はまだ知らなかったのでは」

「あったから」

「行く先々にいたのは」

「偶然」

「私たちを調べ上げていたのは」

「偶然」

「フォークロアを狙う理由は」

「だからフォークロアってなに?」

 

 無言になった。

 私とサーシャは顔を見合わせて、先にテレパシーを送って来たのは向こうだった。

 

(言いたいことはわかります。でも彼女の顔を見てください。まったく嘘をついてるつもりがありません……)

(……仕方がない)

 

 偶然なわけがない。

 わけがない……はず。

 

 だけど、もしかしたら……と、ほんの僅かに残っていたある感情が顔を出し、私は彼女の話を聞くつもりになったのだった――

 

 

 

 




■今回の内容
 『ディペンデンスブルー』(一部分)

■ディペンデンスブルー
 実際は4章前の出来事。グループの歌も流れるのでこれがネオマギウスの結成イベントにあたる。
 サーシャが最初にしか出ないこと、歌に参加してないことから既に怪しまれていた。

■燦様
 ここで青年会に抱いていた気持ちが壊されるとどんな手段を取ってでも現人神になろうとする。
 しかしエンディング先取り火祭り再興確定ルートに入っているので急いでおらず冷静。まあ手を貸してもいいかぐらい。

■サーシャ
 ストーリーガチャという絶対PU魔法少女が出るすり抜けなしガチャで実装された。なお、今のところサーシャだけである。
 実装時はまだフォークロアだとは明言されていなかったが、キャラカードの背景がネオマギウスではなくフォークロアのマークだったので即効バレた過去を持つ。

■サーシャの行動
 ディペンデンスブルーでは地元で仲間を10人ほど集めたらしい(『ディペンデンスブルー』48話)が、メインでは成果を上げていないことになっており(第5章1話)、これと南凪の潮の香りを漂わせていたのがひめながサーシャの行動に疑問を抱く一因になっている。

■くれはちゃん
 彼女が行かなくてもディペンデンスブルーのルートが変わり、あるフラグが立つ条件がある。それは……。
 「それで、あなたならなにか知ってるんじゃないかって」(もしかしたら知り合いだったりする?の意)

■フォークロア
 ゲーム的な都合で制服を着ているのでどこの制服か調べたら一発でバレてしまうのは禁句。
 それぞれ
 ・湯国市立岩切山高等学校(ラビ)
 ・湯国市立湯国学園(旭)
 ・湯国青波学園(うらら) 
 ・湯の花国際中学・高等学校(サーシャ)
 と違う。他のキャラもだがゲーム内のアーカイブの学校欄に書かれている。細かい。 

■なゆたん
 本来事実を知るのはずっとあと。
 時系列的に今は夏かその少しあとだが、ハロウィンイベントの関係で6章で既に11月に近く、第8章まで知らされないなゆたんはそれはそれはショック。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。