マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
景色が流れていく。周囲の目を気にしてる暇なくただ走る。
どうしても今、伝えないといけないことがある。
やちよさんに夕飯までには戻りますって言ったけれど、心の中の優先度は伝えることが前面になっていて、みかづき荘を出たときにはもう、他のことは考えていなかったように思う。
「はぁっ、はぁ……」
駅を出てからどれぐらい走ったのか。その場所――周囲の大きな家よりも更に大きな家に辿り着くのは比較的簡単だった。目印となるものがなくても、お屋敷みたいな家はわかりやすい。以前も同じような感覚がしたのを覚えている。
けれど門の前まで来て、重大なことに気がついた。
彼女は今日いるのかな。いつもどこかを走り回っているのに、家にいるほうが珍しいんじゃないかなって、本当にいまさらなことがこのタイミングで浮かんできた。
スマートフォンで連絡すれば良かったのに、操作に慣れてもこれじゃ変わらないよね。
そんなふと湧いて出た不安は、現代的なインターホンを通して聞こえた声でかき消された。
「どうしたの、いろは」
落ち着いて、平然とした透き通るようなそれ。いつも変わらないくれはさんが、私が会いたかった相手だ。
「そろそろ雨が降りそうだから早く入って」という言葉に甘えて中に入れてもらうと、不思議なことに他に誰もいなかった。もちろんこの広い家を全部見たわけじゃない。ただ、いつもいるであろう空間に、彼女一人だけというのが、ひどく違和感を生み出すものだった。
帆奈ちゃんやラピヌちゃんはどうしたんだろう。聞いても「出かけてる」としか返ってこない。
勧められたふかふかのソファに座ると、目の前のローテーブルを挟んだ向かい側のソファにくれはさんが座った。彼女は私をじーっと見て、話しだすのを待ってるみたい。
「直接伝えたかったことがあるんです」
言うべきだと思っていた気持ちに嘘はないのに、走り疲れて渇いているのか、それとも直接口にすることを戸惑っているのか、おずおずと言葉が喉で止まって出てこない。
ひとつ深呼吸をすれば、理由は明確に浮かび上がる。
私が今から言うことは、彼女にお姉さんの死を再度伝えることと同じ。
ういに置き換えてみたら、残酷なことに違いないのだから。
「さくやさんから聞きました。くれはさんのお姉さんは、結菜さんを攻撃から庇ったそうです。作戦を誤って引き起こしたことだから、間接的でも自分が殺したのだと責めて言ってるだけだって」
「そう」
……それだけ。
戸惑いや驚きといった感情はなにひとつなくて、まっすぐ前を向いているだけ。
たった一言にもっと悪い感情が込められているのかもしれない。あるいは、魔法を使ったのかもしれない。確認する方法がないことが心を焦らせた。
いつの間にか振り出した雨は強くて、近くの窓に叩きつけられる音が聞こえる。
だけど私は、話を続けるしかなかった。
「だから、二人が争う必要はないんです……大切に思っていたことに違いはないじゃないですか。きっと、わかりあえるはずなんです」
「本当にそう思うの? 姉さんは、私を置いていったのに」
それだけは、なにも言えなかった。
殺した殺さなかったじゃない。たとえ理由がわかったとしても、絶対に変えられない事実がそこにある。ナイフのように向けられた言葉に、
だけど結菜さんとくれはさん、2人の想いはきっと同じで、立場が違うからぶつかりあっているだけなんだ。守りたいものがそれぞれあって、どちらも一番の障害になってしまっているだけで……。
「くれはさん、私、決めたことがあるんです」
覚悟を決めてソファから立った。
もうひとつ、言わなきゃいけないことが私にはある。
「グループって、ひとりひとりが集まってできてるんです。だから、みんなの想いを無視しちゃいけない。それはプロミストブラッドの人たちもそうなんです。きっと、結菜さんにも彼女自身の考えがある。そう思うから……私は戦いたくないんです」
「……本気?」
「はい。欲張りかもしれないけれど、誰かの希望も救いも否定しないで、ひとつひとつを叶えられるように、みんなが生きられる世界を作りたいんです。前も言った通り、本当はみんなを助けるなんてよくわかってません。その方法も、具体的な手段も……」
"でも"と付け加えて、私はくれはさんの手を握った。
「誰かが誰かを傷つけようとする想いだけは、否定します。否定できます。それだけは、絶対に間違ってると思うから」
「いろは、あなた……」
このあたたかな手は傷つけあうためのものじゃない。初めて神浜市に来たときに助けてくれて、それからもずっとずっと力を貸してくれた優しい力を私は信じたい。
そんな手が血まみれになるなんて思いたくなくて、神浜監獄で2人が戦っていると聞いたとき、胸に突き刺さる痛みがより深くなったのだから。
「きっともうすぐ、プロミストブラッドの人たちは最後の勝負をしてきます。キモチの腕輪を賭けてホームの二木市で戦おうとすると、みんなが予想してました」
この情報を口にしたのは私の独断。やちよさんには「帆秋さんには伝えないように」と念を押して言われていたし、十七夜さんには「帆秋には伝えるな。もっとも、環君のことだからな」と見透かされているようだった。ひなのさんからは……「アイツは教えなくてもどうせ来る」だっけ。
……うん。ひなのさんの意見もよくわかる。
やっぱり、くれはさんはたった一人でも二木市に行く気がするんだ。前もそうだったから。
「くれはさんって、もうプロミストブラッドと戦っちゃいけないって言われてますよね」
「ええ」
「でも……来ちゃいますよね」
「聞いたから。聞かなくても行ったと思うけど」
「ならせめて、私を信じてください。結菜さんを殺さないって、約束してくれませんか」
どうしても行くのなら、私たちと一緒にいて欲しい。
そして結菜さんと殺し合うなんて結末を避けて欲しい。
大降りの雨の音が強くなる。雷さえ混じり始める。
彼女の"約束"を待って、待って、待ち続けてた。
「私は――」
雷が、近くに落ちた。
◆
ミスドと決着をつけるRTA、はーじまーるよー。
先日いろはちゃんが家にやってきたりしましたが、お話が長いのでさっさとお帰りいただきました。この期に及んで神浜マギアユニオンには加入しないので申し訳ナス!
そういう本日は一向に復興する気配がない中央区にやってきております。
もちろんかごめちゃん同伴です。あとアルちゃんとリィちゃんもいるとか戦闘力の低いメンバーでパーティが埋まってやはりヤバイ。
「あの、こっちって……」
いいから付いてくるんだよオウ!
立ち入り禁止区域だから誰かに見られないですかね……? なんて心配は初心者だけ。どうせ見つからないので堂々と侵入します。
移動中解説しておくと、第6章終了後、ついに第7章『トワイライト・レムナント』が開始します。
こいつはプロミストブラッド敵対ルートでの決戦となる章です。自身がプロミストブラッドに所属している場合や、他の勢力と大きく敵対していると章タイトルと展開が変わりますが、今回はしっかり原作ルート。再現のために動くのも面白みがあってええぞ! ええぞ!
突入条件はキモチの石が8つ出現しており、プロミストブラッドが1つ以上持っていること、神浜市と二木市のショートカット2つが破壊されているか使用不可能なことなどなど。
なんにせよ神浜マギアユニオン&時女一族VSプロミストブラッドという、戦力差も甚だしい本拠地戦に持ち込まれてるので本気で来ます。覚悟ガンギマリなんだよなぁ。
相手は札害(マイルドな表現)もいとわないため、神浜魔法少女に被害が出るのは免れません。ハードモードなのでむしろ全員無事なほうが難しいでしょう。ここまでの進行次第ではレナちゃんがらんかにバッサリやられることもあるって……怖いですよ?
雫ちゃんも『対象変更』の呪いを受けたそうなので奇襲作戦もできず大変でしょうねぇ、ええ。
そんなこともあり、互助組織であるユニオンは不要な犠牲を避けるために主要メンバー以外を連れて行こうとしません。ネームド全員で乗り込んだら一方的すぎるからね、仕方ないね。
神浜マギアユニオンルートならば来いオラァ! と無慈悲の強制招集を受けてしまいますが、入ってないのでくれはちゃんは別に行かなくても構いません。
もうミスドとは戦うなと連絡も入ってますし、参戦を断ることによるデメリットはありません。むしろ無理やり突撃したほうがなんだお前!? と驚かれてしまいます。参加しなくていいから(良心)。
そしてくれはちゃんは素直で約束を守る良い子なので、ちゃーんと従いユニオン時女連合軍には参加しません。
おう、やってるかい!
「おー、あんたか。ちょうどそろそろ呼びに行こうと思って……かごめちゃんまでいるなんてますます都合ええなぁ」
着きました。ピュエラケア拠点のケアトレーラーです。
リヴィアさんは椅子に座って優雅に読書していました。本日も活動中みてぇだぜ。
「私たちを呼びに?」
「せや。自分ら、神浜マギアユニオンとプロミストブラッドの動向は知っとるやろ。どないするつもりか聞きたかったんや」
行きますねぇ! 行きます行きます。
ホラ、かごめちゃんも見てないでこっち来てホラ……なんて説得する必要もなく、かごめちゃんは絶対に二木市に行きます。どんなに止めようが戦場に行く困った鋼の意志を持っているので、あの手この手を駆使して絶対に行きます。なんだお前(畏怖)。
というわけで、対ミスドの決戦にはもう1つ参加するグループがあり、それがピュエラケアです。彼女たちはかごめちゃんをカバーするために一緒に二木市に来てくれます。自ら危険にダイブする魔法少女を放っておけるわけないだろオォン!?
つまりこの戦い、メインの戦い以外にも自らゲームオーバー条件を満たそうとするかごめちゃんに注意せねばならず、ハードモードでは気づいたら詰んでいた状況になりかねません。
ネームド魔法少女が次々と奇襲と道連れ攻撃に沈んでいく中、ようやくプロミストブラッドを倒したと安心した次の瞬間かごめちゃんがやられたらもう気が狂う!(3敗)
ただでさえ大変なのにこんなことまで対応してたら完走なんてできません。
そこで以前話した追加の盾役魔法少女の投入です。そのためにペレネル先生を呼んだんだからなぁ……わざわざフランスから(大嘘)。
「ふむふむむ!」
「"私が守るよ"と月出里が申しております。お一人にはしません」
よいかかごめ。我々はマイティ・クロスという魔法陣形で戦う。リヴィアが中心に立ち、防御力の高いペレネルが前衛、両脇を月出里とヨヅルが固める。お前はリヴィアの後ろに立つ。お前のポジションが一番安全だ。安心して見物しろ。
「私は……くれはさんに来て欲しいです」
行くって言ってるだろオォン!?
ピュエラケアには色んなメリットが入っていることはガタイで分析済み。ついていけば主要イベントをすっ飛ばしつつ参加することが可能です。ユニオン時女連合軍には参加しません(第三勢力で参加しないとは言っていない)。
「じゃあそのペレネルっちゅー魔法少女も含めて6人分やな。よし、電車代ぐらいは出したる」
あっそっすかぁ!?
これが少なくとも車を運転できる年齢以上のリヴィアさんのポケットマネー。電車代でひいこら言ってる学生にはできない余力です。
でも大丈夫っすよ。電車でちんたら行っていたら時間がかかりますし、当然駅から出たところを狙われます。向こう側に地の利があるのに正面から行ったらマズいですよ!
じゃあどうするかと言うと……思い出してみましょう。
二木市に行った時、川、ありましたよね?
ハロハロー? せいか元気?
『えっ、あの、急にどうしたんですか……』
雫ちゃんを潰して安堵してるところ悪いが……ワープ持ち魔法少女はまだいるぜ!
そう、超強化されたせいかであれば『水から水へ移動する力』でタダで全員二木市に飛べます。地点が限定されるのがデメリットですが、相手に伝わってない情報なうえ、川のどこを見張ればいいのかこれもうわかんねぇな。
そしてれいらとみとさんも招集。戦闘力はもちろん、『浄化の炎』による広範囲ヒールでソウルジェム破損や魔女化以外ならなんとかなり、いざとなれば『心を繋げる力』で強制介入できます。
バレていると超強化された『対象変更』で対策されるので、今までの章で彼女たちを積極的に活用しなかったんですね。
「となると9人かぁ、結構な大所帯やなぁ」
あっおい待てぃ(南凪っ子)。
今回キモチくんが仕事してないだけで、本来は各グループから12人選出されるゾ。ならこっちもあと3人ぐらい増やさないと釣り合わないのは当たり前だよなぁ?
なので当日は家にいる魔法少女も連れて行きます。
帆奈ちゃんは『影の操作』の固有魔法の熟練により、影から影へ移動できるようになっており、広範囲高拘束さえ可能なので複数人を抑え込むのは容易。
加えて、変身を強制解除し、たとえ魔女化しようが問題ないラピヌお姉さまがいれば、その身を盾にしてもらうことさえできます。ラピヌお姉さまガードの前にはどんな攻撃も通じねぇぜ?
今回は作戦の都合上連れていきませんが、決戦は夜なのでクシュちゃんに無双してもらったり、ゆきかちゃんを放り込んで勝手に暴れさせておけばなんとかなったりもします。
後先考えないなら変身可能な灯花ちゃんを連れてきて『ネオ・ジェネシス☆彡』で一般人諸共焼き払えばいいだけです。二木市のすべてが燃えるにゃー。
まあこれやると敵味方全員から袋叩きなんですけど(散々)。
じゃあラストメンバーはどなたかと言うと……はーいラビさんお元気?
『どうかしましたか』
おう二木市までついてくるんだよ、あくしろよ。
『……はい?』
本来第7章ではまだなゆたんと神浜で仲良くやっていますが、この辺のイベントは超スピード!? で消化したのでフリー状態です。
他のフォークロアメンバーは旭殿とうららは決戦に参加、サーシャはネオマギに潜入中。つまりラビさんだけはやることがなく自由に動かせるわけですね。
だからってついてくるわけないだろ! いい加減にしろ!
と、お思いの方もいるかと思います。
しかしフォークロア、自由に動くだけで諦念の根源が揺らぐようであれば信じるに値しないと、もともと個人個人が自由に動くことが許可されています。ひめな関係で抗争が大変なことになってる気がするのは横に置いておきましょう。
そして太助がなゆたんの想いが籠った重いビンタ(激ウマギャグ)を食らった今、ラビさんもまた希望と未来を信じる心を諦めていないと思い始めています。
湯国市での過去を必然や運命ではなく、偶然と思うようになれれば完全解決。自分の手で争い止めんだよ! この先頭に立ついろはちゃんみたいによぉ! 諦めるかどうかは自分が決めること(至言)。
実利としてはこの辺で『概念強化』も確認しておきたいので戦闘に引っ張り出す必要があるねんな……。
「おぉ~……これで12人。相変わらずどんな交友関係しとんのや」
あとはカチコミ当日を待つだけなので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
「かごめ、手を」
「は、はいっ」
くれはさんの手を借りて、よいしょって瓦礫を乗り越えたら一息つく。
復興のボランティアのひとたちが頑張ってるけれど、中央区が昔みたいな姿を取り戻すのにはまだ時間がかかりそう。傾いたビルも、ひび割れた地面もそのままで、気が遠くなる。
ここはまだ立ち入りが禁止されていて、危ない場所。でも、それで怯えるわけにもいかない。
もうすぐ、神浜マギアユニオンとプロミストブラッドの決戦が始まる。
魔法少女同士の本気のぶつかり合いの中にリィちゃんが意図的な攻撃からは守ってくれる……とはいえ、こんなふうに街が壊れたらケガするかもしれない。こうして瓦礫を乗り越えるのもやっとで、一般人の私じゃできることに限界がある。
けれど、見届けたい。
ここまで取材をしてきて、魔法少女たちの想いがわかってきた今だからこそ、行く末を知らないといけない。
はたしてくれはさんがその気持ちを知っていたのかはわからない。
ただ、思うことは同じはず。戦っちゃいけないってみんなから言われていても、この決戦を無視することはできないはずで、じっとしてるつもりなんてないことも。
ふたりで肩を並べてしばらく歩くと、崩れた周囲の風景の中に綺麗なトレーラーが泊まっているのが見え始めた。途中からピュエラケアに向かっていることはわかったけど、ひたすら真っ直ぐ進む通り道は知らなかったから……ちょっと心配だったの。
「ん~? おー、あんたか」
リヴィアさんは私たちが来たことに驚いていたから、来ることを伝えていたわけじゃないらしい。ちょうど呼びに行こうと思ってだなんて、こんなにタイミングが良いことってあるんだ。
「せや。自分ら、神浜マギアユニオンとプロミストブラッドの動向は知っとるやろ。どないするつもりか聞きたかったんや」
「……行きます、見届けたいんです」
アルちゃんを通してじゃなくて、自分としての言葉でそう言えた。
するとリヴィアさんは「せやろなぁ」と笑ったんだけど……くれはさんが「行く」って言ったときは、うーんって唸っちゃったんだ。
「気持ちはわかるけどなぁ、八雲から最近は調整も受けてないって聞いとるで。本調子じゃないし、隠したいこととかあるんちゃうか?」
くれはさんはなにも言わない。ただただいつもの真顔で、冷たい雰囲気を纏っているだけ。
それはいつもの様子からしたらあまりにも不自然で、令さんが言っていた意味がわかる気がした。
けれど、話を聞いていた月出里ちゃんが一歩前に出て、ヨヅルさんがその後ろに立った。
「ふむふむむ!」
「"私が守るよ"と月出里が申しております。お一人にはしません」
「……まあ私らがいるし、自ら危険に突っ込むようなのを放っておくほうがマズいしなぁ」
リヴィアさんの視線が私に向けられる。"自分はどうしたい?"と聞かれているみたいだ。
「私は……くれはさんに来て欲しいです」
自分の目的も達成したいワガママなのはわかってる。リヴィアさんの言う通り誰かが見ていないと危ないのも、もちろん。
でも一番の気持ちは、隣にいたいという、単純なもの。
始めて出会った魔法少女で、今まで令さんから話を聞いて、もっと彼女の本質を知りたかった。一緒に取材をすることで、私の思う魔法少女に……近づける気がしたから。
◇
それは本当に一瞬だった。
ピュエラケアの3人と私とくれはさん。それに、くれはさんが呼んだ人たちが7人。その全員を水が包み込んだかと思ったら景色がフッって変わって、ぜんぜん知らない街――たぶん、ここが二木市。その河川敷にいたの。
「と、ととと、到着しました……」
「わ~……やっぱりせいかの魔法はすごいね!」
「うんうん……って、あっ! み、みなさん、さっきも言ったんですけど、せいかは怒ってるわけじゃなくて人見知りで緊張してるだけなんです!」
みんなを連れてきた魔法を使った桑水せいかさんと、その友人の相野みとさんと伊吹れいらさん。
「お気になさらず、くれは嬢といい、勘違いされるというのは誰にでもあることですので」
「はい、本当に……」
何度か出会ったペレネルさんと、少し目が泳いでいる氷室ラビさん。ペレネルさんは以前の約束があるけれど、まさか氷室さんまで来てくれるとは思っていなかった。
「……はあ、二木市にまた来るとはね」
「とりあえず私が前に出ればいいんでしょー? まっかせて、殺さない程度にずばーんざしゅーってやるから」
「だからあたしらは戦わないって」
そして、くれはさんと一緒にいるのが帆奈さんとラピヌちゃん。
魔法少女の実力というのをよく知らない私でも、この中にいるのは安心感がある。
それにリヴィアさん曰く、これだけの魔法少女が揃っていたら正面からプロミストブラッドが来ても対抗できるらしくて「なんの心配もせんでええ、よーく見とき」と背中をポンって押してくれた。
そこから私たちが向かった先は周辺を一望できるぐらい高いビルの屋上。もう暗くなってるとはいえ、一般人の目もあるからゆっくりゆっくりと進んで、最後はせいかさんの魔法で一気にワープした。
「わわ……」
びゅうびゅうと冷たい風が吹く。
眼下に見える街並みは光が灯っていて、普通の人の暮らしがあるんだってよくわかった。まだ働いている人も、これから働く人も、遊んでいる人も、いっぱいいる。
当たり前の日常は誰にでもある。あるべきだと思う。
本当に、これから魔法少女同士が戦うのかな……なんて、今さらなことを思ってしまった。
「少し下がったほうが良いですよ」
「えっ、はい……?」
ペレネルさんはそう言うと、一歩前に出て手をかざした。
その瞬間、私にもなにかが起きたのだとわかった。遅れて、リィちゃんが魔法が使われたと教えてくれる。目にはなにも映らないけれど、他の人たちの反応からしてすごいことみたい。
「周囲に展開したのが魔力反応を遮断する結界。目の前のは遠隔視の魔法をかけた結界。これで近づかれても気づかれず、そもそもこちらから近づく必要もないでしょう」
「……あんた、何者なん?」
「ただのしがない錬金術師ですよ」
「魔法少女が錬金術師を自称してる時点で怪しいなぁ……」
そんなことを言いながら、ペレネルさんが指を動かすと、目の前の空間にテレビみたいに映像が見えた。それと同じものが周囲にいくつか浮かんで、まるで監視カメラのように二木市の色んな場所が映される。
「旭、うらら……」
「ふむむ!?」
「これは驚きました……」
確かにこれなら安全に戦いを見届けることができる。
その中のひとつ、二木市の駅前の映像にいろはさんとさなさんが映っているのを見つけて、胸がどきりとした。
みなさんも到着している。
始まる。
「……リヴィアさんはどうなると思いますか?」
心配を振り払うように、そんな言葉を口にしていた。
「ユニオンが不利。ここは二木市で向こうのホーム。地の利は向こうにあるわけや。誘導、挟撃、奇襲……取れる作戦がいくらでもあるやろな」
「けれど、環いろはたちはそれでも向かった」
リヴィアさんの言葉に続いたのは氷室さんだった。
「彼女は……いいえ、彼女たち神浜マギアユニオンと時女一族は、なるべく被害を出したくない。勝つだけなら全員で徹底的に潰せば勝てるのに、不利とわかっててもなお選んだ。ならこの戦い、私は傍観するつもりで来たけれど――」
それは消えゆくような小さな声でありながら、強い意志を持った言葉。
みんななにかを思ってこの場所にいる。なにかを信じている。
それは――くれはさんも同じ。
「死なないし、殺されないじゃない。これ以上もう誰も、死なせないし、殺させない……」
"どんな手を使っても"。
そう、くれはさんはつぶやいていた。
■今回の内容
第二部第7章『トワイライト・レムナント』
■トワイライト・レムナント
遂に来たプロミストブラッドとの決戦章。
長かった対決もこれで決着。君だけの12人を選抜して勝利してみよう。
■いろはちゃん
主人公なので主人公力が増す。
彼女が説得していないとグリーフシードの消費量がすごいことになる。
■団地組
第一部で超パワーアップしていたのでここでも力を借りることに。
火水木ワープ回復遠距離近距離とパーティバランスが非常に良い。ななか組長のところは4人中3人水なんですが大丈夫なんですかね?
■マイティ・クロス
魔法陣形の1つ。十字のように5人が並ぶ陣形。
一応前衛の防御力が強化されるものの硬いとかそんなことはなく、並んでいるせいでブラストで纏めて吹っ飛ばされてしまう危険性がある。