マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート84 トワイライト・レムナント 後編

 

 

 この決戦を決めた時から覚悟をしていた。

 

 既に、カタコンベに眠る皆の前で誓った。

 二木市という始まりの場所で、やってきた神浜の魔法少女たちを皆殺しにする。だからこそ血を流し、恨みを晴らしつくす意味がある。

 

 こうして目の前に集ったプロミストブラッドのメンバーたちも意志は同じ。

 誰もかもが忘れることのないように結成時のごとく鉄骨を鳴らして協調を示している。樹里も、アオも、ひかるも、さくやも、らんかも。虎屋町、竜ケ崎、蛇の宮の魔法少女たちすべてが、恨みを晴らそうとしているの。

 

 ならば応えるべきだ。いいえ、応えなければならない。

 

「聞きなさい……ユニオンと時女一族を潰す作戦を――」

 

 既に彼女たちには二木市で待つことを通達してある。乗ってこなければ神浜に赴かないといけない不利な勝負だったものの、こちらが後先を考えない奇襲に出る危険性を鑑みれば、ここでケリをつけにくるだろうと思っていた。事実、動きがあったと報告がある。

 

 乗り込んでくるのだから向こうだって考える頭はある。地理的に有利な私たちに自由に動かれたら一網打尽にされることぐらいわかっているはずで、されど、甘い性格からして片っ端から殺していく作戦も取るはずがない。

 ならば少数で侵入し、キモチの腕輪を持つ私、樹里、アオを重点的に狙ってくる可能性が高い。誰か1人でも捕まえられれば交渉の材料にできるとでも考えているんでしょう。

 

 もし全員で固まっていたならばこちらは奇襲で迎え撃つ。

 ひとりかふたりを発見したら囲んで各個撃破。

 それよりも人数が多ければ、分断の後やはり潰す。

 

 地の利も情報網もこちらにある。仕掛けた罠や魔法少女の人数だって不安要素は薄く、殲滅は難しい話じゃない。

 既に何度もシミュレーションは行った。想定する動きへの対処法だって考えた。何度も何度も何度も繰り返して、限界ギリギリまで策を練り続けた。

 

 それでも尚、作戦を誤ったときのことがいつまでも心に重い束縛をする。

 私の計算が狂ったせいで、皆に苦しい思いをさせてしまった。庇わせて命を散らせてしまった。そんな後悔が泥のように溢れ出して全身を浸からせていく。

 

 わかってる……わかってるのよぉ、血の盟約を結んだ日から殺すことをいとわず地獄へと堕ちるつもりでいた。なのに、自分たちに被害が出て欲しくないなんて傲慢だってのも、引っ張って来た私のせいだとも……。

 

 だから私は鬼になった。

 憎まず、嫉まず、利己的にならず、なによりも誰かのためであり、世の平和と安寧を願い続ける……先輩が遺したその理念を捨て、どこまでも利己的で、誰かの平和よりも仲間の安寧を願い続けた。

 

 誤った道を選んだ咎も、すべての責任も、この先の二木市を作るために飲み込む。今だって恨み妬むあの子たちの声が聞こえ続けているのに、ここで止まることなんて許されるはずがない。

 

 だから、あの魔法少女――過去を思い出させる帆秋くれはと決別しなければ、いつまでも囚われ続ける。

 

 そんな感情を表情から読み取ったのか、樹里がニヒッと笑った。

 

「問題は帆秋だろ。あいつ、どこで出てくるかわかったもんじゃないぞ。案外、喉笛を食いちぎろうとそこの路地裏にいたりしてな」

「そうねぇ、確認が必要だわぁ」

「……いや冗談だっての、そこまで命知らずじゃないだろ」

 

 困惑した表情だったものの、"ありえない"などと切り捨てられない。ここまで何度も邪魔をしてきた帆秋がその手段を取らないとどうして言える。今も神浜マギアユニオンには入っていないとはいえ、単独でも来るに違いない。

 

 となれば……やはり、考えていた手段を使うのが良い。

 

「樹里、アオ……私にキモチの石を預けなさい」

「……本気か?」

「いきなりクライマックスってこと?」

 

 1人に集中することは、翻弄するメリットと、私がやられれば終わりというデメリットが挙げられる。取り返すにしろ、リーダーがやられれば出番をくじかれて不利になってしまう。リスクの大きい作戦に違いない。

 けれど……できればの話でしょう?

 

「私の『対象変更』の前には誰も敵わない。いざとなれば最後の賭けだってしてやるわぁ。どんな手だって使うのよぉ……」

 

 もっとも倒れてはいけないリーダーが、プロミストブラッドの4つのキモチすべてを持っていたら否が応でも注目する。たとえ罠だとわかっていても、私を倒さない限り争いが終わらないのであれば狙うしかない。

 

 ――これで、少しでも。

 

「結菜さん……ひかるは最期まで付いていくっすよ」

 

 ……ひかる。

 

 ここが私の死地。

 

 手に持つグリーフシードこそ、誰かが生き抜いてきた証であり、私の残りの命。 

 そのすべてを燃やし尽くしてでも、必ずこの街に平和を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わかっちゃあいたが、敵の本拠地に乗り込むってのは不利な作戦だ。

 プロミストブラッドは元々、あたしら時女一族と神浜マギアユニオンより圧倒的に対魔法少女の経験値と組んできた戦略の数が多い。魔女との戦いなら散々やってきたが、こればっかりは、なぁ?

 

 鈴鹿サンとの対決で技術の差ってヤツを実感した。

 大将たちの時女一心流ってのがあるが、そりゃまた別物だ。

 

 こっちの作戦は指揮を執る頭を叩くって言葉にすれば簡単なもんだ。メンバーの動きが乱れるのもあるし、なにも全員倒さなくてもキモチの腕輪を持つ相手を倒して奪えば勝ち。殺さずにって条件がある以上、こだわらない相手のほうが有利なことに違いないが……。

 

 そんなことを考えて夜闇に紛れて駆けてる間にどれだけ経ったか。来た時は人の気配で騒がしかった周囲が嫌な静けさに包まれていた。

 

「あたしひとりか……」

 

 時女は時女で行動してたものの、完全に分断された。途中までは旭が一緒だったが「涼子殿は先に!」なんて囮を引き受けて行っちまったんだ。

 人通りが多い道に行って一般人に紛れれば向こうは手を出せねぇだろうが、それはこっちの矜持が廃るってもんで、やるヤツはいないだろう。

 

 あたしももちろんそうで、人っ子一人いない通り道に差し掛かって足を止めた。

 ひとり、魔法少女が姿を現す。

 

「で、ここであんたが出てくるんだな」

「狙ってたわけじゃないんだけどね、宿命かな」

 

 ああ、同感だ――そう言ったのは、鈴鹿サンだったんだからな。

 顔を見合わせた時、不思議と互いに驚きはなかった。ただ、この時が来たかって寂しさにも似た感情が包んだだけだ。

 

 鈴鹿サンは得物の短剣を向けて、あたしは警策を構えた。

 

「簡単に死なないでよ……!」

「当たり前だ!」

 

 互いの武器がぶつかり合う。

 

 死なないし、殺されない。

 そう約束した。鈴鹿サンは本気で殺しに来て、あたしはそれに全力で抗う――それも、この決戦の場でどれだけ持つか。

 

 あの時みてぇに全部耐えきって鈴鹿サンが負けを認めてくれればいい。

 だけどよ、動きを見りゃわかんだ。現実は互いに手を抜くことなんてできない。加速した短剣は知ってるものより数段速く、抉りこむように急所を狙ってくる。気を抜けば一瞬で串刺しにされるに違いない。手加減なんてできるものか。

 

 ……終わらない戦いなんてもんはない。

 特に、こういう個人同士の対決は呆けるほどあっさりと終わっちまう。

 

 わかりきってたことだ。既に絶交した敵同士なんだから、次に会う時は殺し合いになる。確実にどちらが死ぬ定めだって言ってもいい。

 

 あたしだって死んでやるつもりはない。心のままに生きて生きて生き続けてやる。

 だがそれは、鈴鹿サンを殺さねぇと達成されない矛盾した先にある。あたしが死なないし、殺されないためには、殺すのが最大の達成方法なんて、あたしらしくもないことばかり思い浮かぶ。

  

 本当にそれでいいのか。

 あたしはあたしを通すために、それほどまでに鈴鹿サンを殺したいのか。

 

 定めか。約束か。それとも――

 

「気を抜くなッ!」

「ぐっ!?」

 

 放った炎の目くらましは効果がなかったようで、空気を裂いて顔の横を刃が走った。

 

 考えが纏まらない。ガサツで不器用なあたしには難しいことはわからない。

 思考を捨てて、警策を持つ手に力を込めて思うままに振るう。短剣を弾いて距離ができた。

 

 そうすると不思議と思考がすっきりし始めて、ふと、くれはの言葉が浮かんできた。

 

『そうね、それは……良いことよ。私も死なない。死なないし、殺されない。けど、私に力があれば、もっと――』

 

 あの時続けた言葉は、『誰も死なせないし、殺させない』だった。

 そいつは自分が生き続けることをさらに超えた夢物語みたいな遠い遠い目的。なにかを捨てなければ届かない、理想の果てだ。

 

 じゃあ、どうする。

 

(……なんて、決まってるよな) 

 

 いつだってそうだった。自分がどうとか、世界がどうとか、そういうもんじゃなくて、あたしがなにをしたいか。なにを守りたいかだ。母ちゃん譲りのこの気持ちは変わらない。

 

 ただひとつ、変わるとすれば、そこに自己犠牲の言葉はない。

 親友になりたい気持ちは今も強く心に宿っている。戦って疲れたあと、もう一度どっかで飯でも食えれば良いななんて戦場に似つかわしくないことだって真剣に思ってる。

 

 ただ、想いだけじゃ、そこに至る道筋が一向に見えねぇんだ。

 

 もう何回か身体を刺された。振るう手に入る力が弱くなってるのがわかる。魔力だって使ったんだからなおさらソウルジェムが濁り始めている。

 それは鈴鹿サンだって同じだ。警策の打撃が着実に手足にダメージを蓄積させていて、最初のスピードに比べたら断然捉えられるし、あれだけ『加速』すれば魔力の事情だって似たようなもんだ。

 

 魔女化して死ぬか? それとも、鈴鹿サンに殺されるか?

 どっちもできねぇ選べねぇなら、せめて鈴鹿サンが魔女になる前に約束を果たすべきなんじゃあないのか?

 

 ……なんて、穢れがまともな思考を鈍らせて、妥協点に引き込もうと浸食してきやがる。

 

 腕が、脚が、次が放てる最後の一撃だと告げている。 

 向こうの表情も似たようなもんで、低く短剣を構えた。

 

 全力を込めて跳ぶ。速度が警策に上乗せされれば妥協のない威力が生まれる。

 辿り着く先のわからない一撃は、確実に鈴鹿サンのソウルジェムへと叩き込まれる――

 

「んなッ――!」

「まさか……!」

 

 だが、妙な手ごたえだ。

 あたしらの間に物理的な障害が割って入ったと気づくのにそう時間はかからなかった。

 

「我たちにできることはないと諦念していたら、あと一歩が、届かなかったでありますな……」

「っ、う……痛いんよ」

 

 警策を旭が、短剣をプロミストブラッドのうららが、それぞれ受け止めていた。

 無事なような言い方だが、今のはいくら旭とはいえ耐えきれるわけがない。現に、まともに受けた腕はあれじゃ銃が撃てないだろうに。

 

「涼子殿、ここからは……我が相手であります」

 

 だってのに、あたしに向ける目には()()()()()()()()()。歯を食いしばって退く気はないと訴えかけてきている。銃の先に付いてるナイフを外すと逆手に構えて、まだ戦うつもりだ。

 

「出しゃばってでも、誰かにもう死んでほしくないんよ。さくやさんにはいっぱい恩があるから邪魔はしたくないけど、でも……!」

 

 あっちもそうだ。痛みに震えながらも、あたしらに背を向けて鈴鹿サンと向かい合っている。

 意地だ。なにかはわからねぇが、あたしらに譲れないもんがあるように、このふたりにも信じたいもんがあるに違いない。

 

「なら、私も手伝いましょう」

 

 なんて、今度はまた別人の声だ。 

 ぞろぞろと4人も現れて、なぜかピュエラケアがいるし、先頭のは……。

 

「……ラ、ラビ?」

「なんでここにいるのん!?」

「はて、お二人とは初対面のはずですが。私はたまたま通りがかっただけです」

「せやなぁ、私らも中立として来ただけやし。敵同士のアンタらが揃って同じ反応してるのが不思議なだけや」 

「しかしその口調――ああ、了解であります」

「わ、わかったんよ」

 

 途端に旭とうららは物知り顔になって、唐突な介入の内容次第なんだろうが……状況が混沌としてきた。

 

「ふむふむ……」

「確かに……ケガが酷いですね。治療ならさせていただきますが」

「そういうことや。そこの二人はまだやるんか? やるって言っても力づくで止めさせて――ああ、調整屋だからって戦えないわけちゃうで。むしろ魔法少女との戦いならソウルジェムを引っ掻き回せるからなぁ」

 

 詳しいことがわからなくても、降って湧いた光に全身に活力が漲るようだった。体力が回復したわけじゃないのに気力が溢れてきやがる。

 今この瞬間、あたしも鈴鹿サンも死なねぇ、第三の道が拓けているかもしれねぇんだ。

 

 互いに本気でぶつかった。それに違いはないのだから。

 

「さすがに、ここから6人相手にするのは無理か……」

「もしかしてその勘定に入ってない1人はあたしか? そいつぁ嬉しいね」

「はぁ!? 誰が……!」

 

 こうなってしまえば、ばつの悪い顔を向けられるのも心地良いもんだ。この痛みさえなければ鈴鹿サンに大声で笑っていたに違いない。

 

 ああ、それとももうすぐ……さくやって呼べるのかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっさとプロミストブラッドを倒すRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は二木市に乗り込んだところですが、ペレネル先生が絶賛警戒網を展開中です。お前マジシャンみてぇだな?

 

「あれは……南津涼子と鈴鹿さくやが向かい合っている? それに、旭とうららが走って……」

 

 こっちにもイベントの衝撃が来たぁ!

 

 御覧の通り、涼子さんとさくやはこの第7章で戦うことになります。スタート地点が真逆でも運命に導かれるかのように最短でぶつかる謎のシンクロを見せつけてくれるわけだぜ。

 それだけなら別にいいのですが、この勝負を放っておくとなぜかどっちかが退場するか、相打ちになってしまいます。なんだっててめえはそう命に対して執着がねえんだ?(叱咤激励)

 

 寺生まれなのでだいたいは涼子さんが勝ち、その後のメンタル回復も超スピードで終了するあっさり目の展開なので、そうなればRTA的には許容範囲。相打ちも心情を除けばタァイム的に問題ありません。

 

 問題はさくやが勝った場合。トラウマが再発して精神がチョーS(さいあく)だよな!

 ダメージ次第じゃ魔女化してプロミストブラッドのみなさんへ精神ダメージを引き継ぎ、心がガタガタボロボロ壊れまくって壊滅!

 

 プロミストブラッドには勝ちたいだけで潰したいわけじゃありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 それに1グループでも欠けたらリカバリーできなくなりますし、はまだ 再走したくないのだ わかってるのか おい!

 

 というわけでラビさんとピュエラケアのみなさんはそっち行ってくれよな!

 

「……ありがとうございます」

「私らがいれば多少の怪我はなんとかなるしなぁ」

「ふむんむ!」

「はい、さっそく行きましょう」

 

 このように、安全攻略の鍵は的確にメンバーを配置することです。

 二木市のおける戦いは当然のように神浜マギアユニオン&時女一族連合のほうが不利です。分断各個撃破戦法に対して正攻法で戦うには魔法少女の選抜が重要でしょう。

 

 今回は遠隔テレビなんて便利なものがありますが、通常白羽の矢が立つのはなんと江利あいみ。かなり前『散花愁章』でやったように、かごめちゃんに宿る『風の伝道師のうわさ』からの戦場情報を渡せば固有魔法の『行動予測』で策を暴いてくれます。

 あとは蛍を連れてきて、寝ないように16連射で叩き起こしつつ作戦を展開すれば良いですね、ええ。

 

 実際に動かす戦闘要員は、指揮能力が高めなチームリーダー格の魔法少女を主体に3人以上で複数パーティを組むのがオススメ。分断なんか絶対されねぇ(鋼の意志)。

 ウワサなので魔女化しない桜子ちゃんなんか連れて行くと一方的に勝てるので無双、しよう!

 

 しかしこれはRTA。もっと手っ取り早い方法でケリをつけましょう。

 

 手段は超シンプル。

 結菜さんと一騎打ちして勝ちます。以上。

 

 「は?」とか「バカじゃねぇの(嘲笑)」とか「なるほど完璧な作戦っスね―――ッ 不可能だという点に目をつぶればよぉ~~~!」とか聞こえてきそうですが勝てるもんは勝てるんじゃい!

 それに土地勘があるのはプロミストブラッドだけの特権じゃねぇぜ!?(チャートガン見)

 

 確かに強化された結菜さんは『対象変更』がありえないレベルのチート固有魔法になっていますが、もちろん想定内の事象。関係性を利用する前提な以上、これぐらいチャートに組み込んでなきゃ走れないんだよなぁ。そのためのくれはちゃん強化計画って感じでぇ……。

 

 邪魔する変な横やりが入らないよう、ユニオン時女のみなさんには頑張っていただきましょう。あっ連れてきた人たちはかごめちゃんをガードしてもらってて……。

 

「……くれはさんも、行くんですよね?」 

「いつ魔女化するかわからないんだからさー、おねーちゃんもついてくからね?」

「わた、私も、行きますっ!」

 

 あっそっかぁ……そういう、関係だったのか……。

 ここで大人しく観戦しててくれよな~頼むよ~と言いつつ高層ビルから飛び降りたので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅晴結菜が、その金棒と『対象変更』という度が過ぎた固有魔法で追い立てている。

 そんな様子が空中に浮かんだ映像に入り込んで、隣にいたくれはが前に出た。屋上の縁に立って、今すぐにでも飛び降りそうだ。

 

 自分の知ってる魔法少女たちが、いいや、たとえ知らない魔法少女でも、傷つけられることを黙って見て見ぬフリなんてできるはずがない。

 

「……くれはさんも、行くんですよね?」 

「いつ魔女化するかわからないんだからさー、おねーちゃんもついてくからね?」

「わた、私も、行きますっ!」

 

 とか言うけどさ、この高さだよ。魔法で止められるくれは以外が飛び降りたらパンッって地面に弾けるに決まってる。

 ラピヌはわかってても言うだろうし、かごめは目の前しか見えてないんだろうけど。

 

 だけどそれは止める理由にならず、団地の青色のやつの水で6人まるっと飛んでった。団地のやつらはかごめのお守りだってね。

 

 となると、ここに残ったのはたった2人だけだ。 

 

「それで帆奈嬢、行かなくてよいのですか?」

「いいんだよ。あたしがこれ以上近くにいたら……あいつは前に進めない」

 

 理由は己の決心ともうひとつ。

 あのフランスでの出来事は所々記憶が薄れているけれども、このペレネル・フラメルとかいう錬金術師は胡散臭いところがあるとは覚えている。

 

 だいたい、こいつがこんな魔法使わなければわざわざあいつらは飛び出していない。一応かごめの保護をくれはに頼まれていたってのに、それは渡りに船の建前で、見せることが目的みたいだ。

 

 こいつはいったい、なにを考えている?

 

「そう警戒しなくても。一緒に戦った仲でしょう? まあ、あなたにとっては数か月前の話でも、私にとっては600年前なのだから感覚が違うのはわかりますが……」

 

 ペレネルが指をくいっと動かすと、映る映像の1つが大きくなる。

 それはくれはと結菜が相対している様子で、周囲には見守るように他の魔法少女たちが立っている。

 

「って、ひとりで戦う気……!?」

 

 どんな想いを抱いてるのかはわかってる。だけど、いくらなんでも無茶だ。

 観鳥とかから『対象変更』の効果については聞いている。名前だけじゃなんてことのない魔法に思えるけれど、その実態は真逆の凶悪な性質を持っている。

 

 攻撃の対象を変えれば、どこにいてもなにを殴っても攻撃が当たる。

 受ける攻撃だって対象を変えれば、そのまま跳ね返したり同士討ちさせることだってできてしまう。

 移動する方向なんて概念も変えられるなんて、どうすればいい。

 あたかも呪いのように逃さず殺すその魔法を相手にしては、くれはがどれだけ速くても関係ない。

 

 覚悟が揺らぐ。一方的に嬲られる姿なんて見たくない。

 だけどここで手を貸しちゃ、あたしとあいつは……"その時"がより悲しくなる。

 

 そんなあたしの感情をまったく気にした様子もなく、ペレネルは至極当然のように言った。

 

「彼女なら対抗できますよ」

 

 ……なに言ってんの?

 慰めや煽りでもない言い方が、余計に怒りを募らせる。

 

 戦力差ぐらいわかってるだろうに、なんでそんなことが言えるのか。

 

「今の紅晴結菜に対抗できる魔法少女は数少ない。たまたま、帆秋くれはがその中の1人なのよ」

「だから、なんで言えるわけ。あの変なカトラスを使えっての?」

「いいえ。アレは本来、単なる魔力軽減のためだけに渡したのよ。ああいう使い方ができるとまでは予想外だったわ」

 

 観鳥が言うには、あのカトラスを持ってる間に血みたいな紅の稲妻が走っていたという。

 ああいう使い方がなにかは知らないけど、不吉なものだってのはわかる。

 

 だけど、それでもないのなら、ペレネルはなにに期待してる?

 

「錬金術師は真理を解き明かし、光も闇もなく、ただそのあり方を観察する者。時にそう言った目を向けられるのも慣れていますので」

 

 睨みつける視線に対して、人の良い微笑みが返ってきては、拍子抜けするしかなかった。

 

「あなたには言っても良いでしょう。はっきりと噓偽りなく話せば、くれは嬢に恩はあるものの、こうして近くに来てまで助力する理由はありませんでした。私はかつての時の出会い人。彼女にとっても思い出の中の存在でいいでしょうから」

「……でも、あんたはこうしてここにいる」

「同じ、ですよ。あなたと同じ」

 

 ペレネルは映像に向けていた身体をあたしの方へと向ける。

 

「世界はまた、闇に飲み込まれようとしている。仇なす存在が確かにいる。だから調査をしていたの」

 

 心臓を掴まれたようで、なにも言えなかった。

 そうだと認めてしまえば、覚悟していた終わりが近づいてくるようで、途端に足が止まってしまう気がした。

 

 そんなあたしの様子を見てか、こいつは顎に手を当てて「ふむ」と考え込んでから話を続けた。

 

「ひとつ、言っていなかったことがあります。"賢者の石"と"真なる賢者の石"は別物だと。確かに、今の賢者の石も願いを叶える力を持つ触媒でしょう。もしもの世界さえ作り出せるかもしれない。ですが――それでは、魔法少女の願いのほうが強いのです」

 

 急に『賢者の石』とやらの話に移って、真剣味がさらに増したように思う。

 さっきまでのはこれに至るまでの本題だとあたしにもわかった。

 

「私たちが望んだのはさらなる真髄。タイムパラドクスや世界改変すら無視する強力な事実を現実に存在させる概念。不可能を可能にするピースでした」

「……それが、あるって?」

「ええ」

 

 そしてペレネルは、星の見えない曇った夜空を見上げて言った。

 

「帆秋くれはがフランスに呼ばれたのは偶然でも策略でもなかった」

 

 遠く、とても遠くの届かないものを想うようにその表情は願うもので、どこか似ている。

 心の中で振り上げていた拳が下がり、なにより、言葉の真意が気になった。

 

「思えば、あの固有魔法は最初からおかしな点が多かったのよ。時女静香の『阻止』と似ているのに、タルト以上の燃費の悪さをしていたり、タイムパラドクスによる記憶の忘却さえ防げてしまう性能。これを普通と呼べるほど魔法少女は特別じゃない」

 

 そりゃ確かに、あの『停止』っていう固有魔法には変なところがある。

 だけどあたしらはずっと使い方を見てきたし研究もした。それ以上のことはないはずなんだ。

 

 ……本当に?

 タルトとリズにコピーした『復元』を使ったとき、『停止』をかけたら急速に効果が高まっていなかったか?

 

 いや、そもそも――なんで、ラピヌを引きずり出しただけで現代に連れてこれたんだ?

 

「未来の道具であるスマートフォンに、歴史を確定する魔法が宿ったことを不思議だと思いませんでしたか? そもそも、その魔法とはいったい? 『観測し記録することで証拠となり、その過去が存在した事実が確定する』魔法とはどういうものか、考えたことはありますか?」

 

 あたしの疑問とペレネルの問いかけがひとつひとつ合致して大きな謎とその答えになっていく。

 まさか、いや――

 

「写真を撮ることは現実を写し取り、記録すること。証拠とすることです。ある人物が強く抱いたこの概念のイメージが結びついて、一番身近にあったスマートフォンとなったと私は推測します」

 

 あたしらの周囲にいる人物で写真が関わるのは観鳥令。

 そして、あいつを強く想い、あのフランスにいたのは。

 

 ペレネルは、目を開いた。

 

「そう、帆秋くれはの固有魔法の本質は()()()()()()()()()

 

 いつの間にか雲が流れていて、夜空には小さな星が光っていた。

 

「物理的な干渉だけでなく、時空の揺らぎや外部からのあらゆる干渉を跳ね除けて状態そのものをを確定させる魔法。自身だけでなく選択した対象に効力を発するそれを、『停止』ではなく他の名前で呼ぶのなら――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『対象確定』と、そう呼ぶべきです」

 

 

 

 




■今回の内容
 第二部第7章『トワイライト・レムナント』

■さくや
 なんやかんやで生存ルート。
 涼子さんが少々思うところがあり、旭殿とうららが既に最終章モードなので一撃を受けようが立ち上がって時間を稼いだあたりが要因。

■『対象確定』
 "くれは"と名付けたため発生した『対象変更』の対となる固有魔法。『停止』くんの真の姿。ランダム要素も変更も絶対許さないのでガチャとかに強い。
 『対象変更』に対しては同系統の魔法の反発同様、互いに互いの効果を打ち消し合う。ハードモードでどれだけ結菜さんが強化されようが絶対にリセットせず詰まない理由。

 『パート67 前書きは靴音と一緒に 後編』での
 "概念にまで干渉可能であり、願いの影響により発生した事象も変更可能"
 "発動には対象を認識しなければなりませんが、視界外でも可能"
 はおおむね『停止』も同じ。

■結菜さん
 よりにもよって対になるメタ魔法が相手にいる。
 だから名前にくれはを付けておく必要があったんですね。

■くれはちゃん
 もちろん自分がそんな魔法を持ってることをまったく知らない。
 本人としては勝算なんてまったく考えてないし策略もなにもない。こいつに持たせてていいのか?

■ペレネル先生
 最初からずっと研究のために近づいていた。
 "賢者の石"と"真なる賢者の石"は別物なんてそんな設定はないし、たるマギイベントにくれはちゃんも観鳥さんも関係ない。二次創作! 二次創作です!

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