マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート85 束の間の平穏

 

 

 結菜さんとケリをつけるRTA、はーじまーるよー。

 

 ビルから飛び降りて猛ダッシュしていたら、なぜかラピヌお姉さまと団地組とかごめちゃんがついてきてしまいました。危険とか関係ねぇんだよそんなもん!

 かごめちゃんをこの戦場にいさせると非常に危険なので、ちょっと離れた場所で団地組にガードしていてもらいましょう。ダメだって言っても離れておくんだよオウ!

 

「で、でも……」

「くれはさんって~……一度言い出すとなかなか聞かないから」

「いざとなったらせいかのワープで駆けつけるので、無茶はしないでくださいね?」

「水の届かない壁の向こう側とかに行かれると無理なので、そこだけは……」

 

 大丈夫だってヘーキヘーキ安心しろよ~。

 あとラピヌお姉さまはさっさと二木市の駅に向かってくれよな!

 

「なんで?」

 

 逆になんでついてくるんですかね……(困惑)。

 

 なにせそろそろ事前の準備が効いてくる頃。神浜の援軍到着イベントも仕込んであるぜぇ~?

 本来なぎたんとみゃーこ先輩は二木市決戦に来てくれませんが、今回は不参加フラグをいくつか折ったので普通に来れます。あえて第二陣にしてもらうことでミスドの虚をつくわけですね。

 

 特に、ラピヌお姉さまとみゃーこ先輩の年齢詐称ちびっこコンボは凶悪です。

 魔眼で変身解除した隙に先輩特性の薬をこれ吸ってみな……とばかりにサーッと服用させて即気絶。これ毒じゃないかって? なんのこったよ(すっとぼけ)。

 

「ほーん……それ考えたのあの片目の? ミヌゥみたいだねぇ」

 

 もちろんこんな作戦くれはちゃんのかしこさじゃ思いつくわけないので、なぎたんに情報だけ与えてなんとかしてもらいました。東のリーダーだぜ、それぐらいできるできるできる気持ちの問題だ!

 

 周囲の準備が済んだら結菜さんとエンカウントするだけなので、じゃ、流しますね……。

 

「帆秋……ッ!」

 

 というわけで対プロミストブラッドの最終戦、『魔法少女 紅晴結菜』戦の開始です。

 第二部第7章『トワイライト・レムナント』の終了条件は彼女に関するものなので、さっさとぶつかって終わらせちゃいましょう。

 

 ご存じの通り結菜さんは元から強く、固有魔法が強化されたハードモードでは単騎で勝つのは至難の業です。くれはちゃんなんか秒ですよ秒!

 勝てるって言ったのに勝てねぇのはおかしいじゃねぇかよお前オォン!? と叱られてしまうので、ネタばらししましょう。

 

 今までくれはちゃんの固有魔法は『停止』だと言っていました。ステータスにもそう書いてあります。

 

 これ、本人がそう思っているだけです。

 

 やちよさんがイベントを通過しないと『希望を受け継ぐ力』と表示されないように、一部の固有魔法には同様の正体隠しが設定される場合があります。特定のイベントを発生させることで気づき、いわゆる真名解放と正しい使い方をすることで本領発揮のパワーアップが起きるわけですね。

 別に踏む必要はないのでこのまま行きますが、上振れしてくれればくれはちゃん強化計画に入るんだけどな~。

 

 じゃあ結局この魔法はなんなんだよ! 誰か説明してくれよぉ!(デデデン)

 まま、そう焦んないで。

 

 こいつの正体は『対象確定』。結菜さんの『対象変更』の対となる固有魔法です。

 物凄い……(笑)なんか、チート? なの? というわけでもなく、『停止』くんから本質は変わってないので効果は同じです。凄くねぇ(落胆)。

 

 最初の固有魔法設定での願いの内容と、"くれは"と名付けていることとで確実に『対象確定』を呼び出せるので確認の手間はいりません。ここミスったら完走なんてできないってそれ一番言われてるから。そのための『停止』チャートって感じでぇ……。

 

 そしてこの魔法、対となる魔法だけあり、結菜さんが強化されればされるほど釣り合うように強化されます。絶対詰まない安心設計でいいですね、ええ。こんなところじゃなくてもっと他のところを安心させろ(豹変)。

 

「『対象変更』!」

 

 と、結菜さんが固有魔法を使ったらこちらも『停止』を発動。

 打ち消すためには"対象"を合わせないといけませんが、考える必要も見切りする必要もなく、今まで通りの使い方で自分を止めます。一騎打ちなので絶対自分に対象変更されるため勝手に打ち消します。だからひとりで戦う必要があったんですね。

 

 すると凶悪な必中防御無視バフが消えるので、単純なステータス勝負になります。

 それでもくれはちゃんじゃ勝てないだろって? いや無理かわかんないだろう!(鼓舞)

 

「あなたに! 鬼になるしかなかった私の気持ちなんてわかるはずが!」

 

 いや無理だろ(諦め)。

 

 くれはちゃんはたった一撃当たっただけでHPが吹き飛ぶのに、こっちは結菜さんにダメージがロクに入りません。

 パワー全振りなのになんで? という答えは単純。もう素のレベル差が激しいので特化型が特化になっておらず、相手からしてみたら普通程度になっています。(弱すぎて)笑っちゃうんすよね。

 

 普通はこうならないために最低限の経験値稼ぎをチャートに組み込みますが、その辺を吹っ飛ばして短縮するのが今回採用した強化カトラスとマギア習得です。

 なかなかの綱渡りですし、カトラスの使い所さんはちゃーんと見極めましょう。あとさっさとマギア覚えろ(素)。

 

 幸い、廃ビル倒壊イベントを起こすと先に進むので、そのタイミングまでどうにか耐え抜きます。

 当たったら? リセだよリセ! アハハ、ハハ……あっぶえ!! 片腕ぐらいくれてやらぁ!

 

 さて、倒壊イベントが起きたあとはそのまま戦闘が終わってくれたらいいんですが……。

 

「があ、あぁあ……っ!?」

 

 そんなこと許してもらえるわけがな~い。続けて第二形態、結菜さんキモチ暴走フォーム戦開始(絶望)。

 これは結菜さんがキモチを所持していることと、プラスでもマイナスでもいいので彼女と関係のあるキャラが大ダメージもしくは退場などで強制発生します。お? そういう、関係だったのか……。

 

 発生させるつもりのないイベントが発生したのはガバでは? と言われたら……ん、そうですね(諦念)。

 普通ならリセするところですが、ちょうどこの辺でアレを使わないといけなかったので使っちゃいましょう。

 

「∴ひかる――ダメ ̄殺シタクナ_――」

 

 ハァ……すごいねぇ(畏怖)。やっぱ右利きだから、右の方が若干ダメージが太いと思います。

 この状態の結菜さんの一撃は凶悪で、くれはちゃん10人分ぐらいのHPを刈り取ってきます。防御系魔法少女なら一発ぐらいは耐えられないこともないですが……。

 

「∵ト ̄マレ_!」

 

 なんて言ってる場合じゃねぇや。くれはちゃんがロックオン!

 誰かー! 誰か助けて―!(チラッ)

 

 ……せいかの水流来ませんね。

 倒壊の時は来たんですけど、今ひかるを助けるのに使っちゃったみたいです。

 

 こういう時のためにちょっと離れた場所で待機してもらってたんですけどいやちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします! アアアアアアアア!

 

「一旦退きますよ」

 

 生きてる~!(略)

 なんとペレネル先生が防いだうえワープして助けてくれました。フランス行っておいて良かった~って思うわけ。カトラス貰ったあとも残ってもらうチャートのほうが良いですねこれ。

 

 ビルが倒壊すると敵も味方もなんだかんだで集合します。

 そして急に共同戦線が築かれましたが、これは『心を繋げる力』により一瞬で情報共有を済ませたためです。『散花愁章』の時にやりましたね。やらないとこの期に及んで互いに戦い始めるとか難易度が上がっちゃうヤバイヤバイ……。

 

 しかもキモチ暴走フォームに正面から勝てるわけもなく、『対象変更』と組み合わせた回避不可即退場攻撃が飛んでくるので、任せるとソウルジェムがパリンパリンと割られてしまいます。

 一見さんお断りの難易度なんてやだ怖い……やめてください……頼れない仲間なんてフヨウラ!

 

「くれは嬢! やはり、その魔法は――!」

 

 というわけで今こそ強化カトラス発動。

 限界を超えた軌道で結菜さんの攻撃を全部避けて接近します。どれだけ攻撃力が高くても当たらなきゃ意味ないんだヨネ。

 

「離レ――アナタ――死_――」

 

 止める対象はキモチそのもの。状態を確定させることで一切の変化を拒絶し、供給される魔力も侵食も止めます。

 

 そして全身縛り上げてしまえばこっちのもの。

 一騎打ちで勝つと言いましたがこれでも実質勝ちです。くれはちゃんが魔女化寸前まで痛めつけてやるからな、わかったか!?

 

 というわけでいろはちゃん、あとはどうにかしろ(無責任)。

 

 

 

 

  

 

 

 

 おはよーございまーす!(徹夜)

 

 帰って来たぜ神浜市。

 三人揃って朝帰りなんてこんな姿……親が見たら泣きますよ。みんなもう親なんていないけど。

 

「ねえ、やっぱさ、その脚……」

「帰ってくるだけでも大変だったよね」

 

 強化カトラスを使用したため、当然のようにソウルジェムにダメージが入りました。

 耐久値は残り僅か。自動回復や身体の維持、精神の安定性に明らかな問題が出る領域です。もはやダメージの治りが非常に遅く、結菜さん戦で消費したHPがぜんぜん戻ってません。

 

 既に傍目から見てもお前身体状態おかしいよ……と言われてしまうありさま。

 同居中の2人は戦わせてくれないし、監視がいないとまともに外にも出してくれないことでしょう。

 

「ペレネルは後で来るって言ってたし、もう寝てて。家のことはあたしがやっとくから」

「お前が倒れると私たちが困るんだからね!」

 

 あっ、いいっすよ(快諾)。

 

 要するにこの先のイベントのほとんどに関わらないでいいということです。

 だいたいの下準備も済みましたし、最低限やることをやればクリアまで一直線なのでヘーキヘーキ。

 

 それにここまでソウルジェムが損傷していると魔法少女として戦うのも限界ギリギリ。つまり、くれはちゃんの最後が近いわけです。

 魔法少女としての最後の姿としての意味……ver.Finalがそこまで近づいてきました。大きな花火をあげてやるからな? 喜ぶんやど?

 

 じゃあそれまで、平穏を堪能してもらおうかな(慈悲)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きたかしらぁ」

 

 なんで?

 

 起きたら~結菜さんがいる~。

 母親になるにはちょっと早い……早くない?

 

 まあ結菜さんの無事が確認できたので細かいことは良しとしましょう。

 

 和解後、プロミストブラッド内部がどれだけ反発するかはネームド魔法少女の退場数で決まります。

 1人だけならば結菜さんがなんとかしてくれますが、複数人退場していると説得がかなり厳しくなり、そもそも結菜さんが退場してると拒むことを知らない破壊集団の誕生。平和!? なに言ってんのよ~! とばかりに神浜にお邪魔するわよされて大惨事です。

 

 それ以外に用はないし会話してるとロスなのでしばらく聞き流して外行こうぜ。

 

「……だ、そうだけど」

「いや、ペレネルが来るって――」

 

 知らねーよ、そんなのとばかりに家から脱出。

 じゃあ探索に行くかぁ! しょうがねぇなぁ!

 

 第二部に入ってからというもの、魔法少女の誰かが記憶喪失になったりしますが、このキャラを確認しておくことが重要です。

 

 ノーマルまでならアリナ先輩固定なものの、平和なライフをエンジョイしてるので違います。

 目下一番怪しいのはネオマギウスでしょう。急に行動が変わったりするのはそういう証拠だぜ?

 

 とはいえ見落としをすると詰むので、第8章までの間に、多くの魔法少女の情報を持っているみたまさんとリヴィアさんにチェックを入れておきましょう。大ロスを未然に防ぐ走者の鑑なんだよなぁ(自画自賛)。

 

「あ、くれはさん。お花を見にきたの?」

 

 新西区に入った途端このみちゃんイベントを踏んだので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼻をくすぐる潮風が、先輩と海に行く約束を思い出させる。

 朝早くに家を出て、付いていくと宣言したひかるを連れて電車に乗った。そうしてしばらく揺られて、この海に近い街にやってきたのは、思い出に浸るためと言ってしまえば嘘にはならないのだろう。

 

「神浜に来て大丈夫っすかね、昨日の今日っすけど……」

「表立って攻撃はして来ないわぁ、向こうも聞きたいことがあるでしょうし」

 

 さくやとらんかから神浜に行っても大丈夫だという連絡があった。

 神浜マギアユニオンとしてもこれ以上争う気はないはず。手を出してまた争いになるより、話し合いで今後の方針を定めたいのは彼女たちにとって当然でしょう。

 

 とは言ったものの、プロミストブラッドのリーダーとして神浜に赴くのはまた別の日。

 今日はただ一人の魔法少女、紅晴結菜として来ている。

 

 辿り着いた大きな家は私の実家を思わせるもの。

 連絡を入れた時は怪訝な声色だった更紗帆奈は私たちを出迎えると、相も変わらず警戒するような視線を隠さなかった。

 

「……言ったけど、いきなり来ても信じられないって」

「でしょうねぇ、私も昨日まで争ってた敵が来たら不意打ちを疑うわぁ」

「ひかるも逆の立場なら警戒してるっす」

 

 証明もなしに他人に信じて欲しいと言っても無駄でしょう。事前の根回し、交渉もなしにそれができるのは一種の特殊技能。カリスマといわれる類のもので、目の前の少女に効くとは思えなかった。

 

「ひかる」

「ちゃんと持ってるっす」

「なにその箱……うわっ、メロン」

 

 思い出というものはひとつ思い出すと連鎖的に浮かび上がるもの。

 かつて帆秋るいが妹のことを話すとき、決まってメロンの話もしていた。曰く、いつの間にか好物になっていたそうで事あるごとに食べていたのだとか。あの真顔が微笑みすらしていたらしい。

 

 好物と言っても限度はあり、手土産に大きな効果は期待していなかったものの――更紗帆奈が冷蔵庫の中を見せてきて、冷や汗が流れた。

 

「ほ、ほとんどメロンっす……ジュースにアイスに、あっ、メロンパンまであるっす!」

「ここまでとは思わなかったわぁ……」

 

 好きの領域ではなく、水や空気と同じなんじゃないかしらぁ……。

 他の食材もあるからして本当にそれだけではないでしょうけれど、この有様ではメロンを見た時の反応もよくわかった。

 

「悪かったわぁ……アレンジレシピを教えるから自由に使いなさぁい」

「……あんた、料理できるんだ」

「プロには負けるけど、一応ねぇ」

 

 そうして、本当に全部食べ切れているのか不思議な量のメロン類の活用方法を考えていると、帆秋が姿を現した。

 

「起きたかしらぁ」

「……結菜?」

 

 不思議そうな顔を見せたのは、更紗帆奈が伝えていなかったからだろう。帰ってきてからすぐ休んだようで、起きてきたのもやっと今だそうだ。

 

「昨日は他のメンバーへの説明や治療で落ち着いて話せなかったでしょぅ? あなたが聞きたいことを話そうと思って」

「そう、なら座って。帆奈、ラピヌは?」

「遊びに行った」

「ならいいわ」

 

 そうして、彼女と私の穏やかな対話が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しゃくりと歯を立てる。

 若干溶けかけたアイスは心地良い音と共に口の中に転がり、作り物のメロンの味が広がった。

 

「表面上、私とあなたが似てるのは名前だけねぇ」

「そうね」

 

 アイスは好きだ。だけど、メロンに特別な思い入れはない。

 食べ物といえば、帆秋は料理がまったくできないそう。勉強も下から数えたほうが早いそうで、こういうところはまったく似ていない。

 

 そんな他愛のない前置きをいくつかしたあと、心の準備ができたとばかりに帆秋はその本題を口にした。

 

「それで、姉さんはなにを願ったの?」

  

 魔法少女はみな、"願い"を叶えている。日常にある小さなことでも、世界を揺るがす大きなことでも、大なり小なり世界に変化を与える奇跡だ。

 親しい者がそれをなにに使ったかというのは、特に興味を惹かれる内容に決まっている。

 

 アイスを飲み込み、間違った言葉を使わないように潤した声で答えた。

 

「『妹たちの病気を治して』。そう願ったらしいわぁ」

 

 帆秋の雰囲気が変わった。

 病気の対象に自分が含まれている困惑か、やはり、彼女の思う姿が一致していたことの喜びなのだろうか。

 

 なおさら、ここで言葉を止める理由がなくなった。

 

「彼女は、"自由を選んで逃げた"のだと言っていたのよぉ」

「逃げた……? 私たちから?」

「……もしかしたら、魔女と戦うことになるとわかっていたから、あなたたちを危険に近づけたくなくて神浜を離れたのかもしれない。けれども本当に、親に決められたレールじゃなくて自由が欲しかったのかもしれない。最後にあなたたちに手向けを渡して」

 

 今となっては彼女が辛そうにしていた理由がなんだったのかはわからないけれど、無暗に他人を傷つけるような選択をしないと思う。

 あるいは、そう願いたかったのかもしれない。目の前にいる、似ていないけども似ている存在に、己と先輩を重ねて。

 

 同席していたひかると帆奈は、なにも言わなかった。

 ただ、帆秋の言葉を待った。

 

「……姉さんはやっぱり、助けてくれていた」

「あんた……」

 

 言葉だけなら前向きで嬉しそうに思えた。

 けれども、歪む真顔に込められた感情と、零れ落ちそうな水がまったく違う意味を示している。

 

「みんな、子供なのよぉ」

 

 慰めるつもりではなく、自分への自戒の意味を込めてそう言った。

 

「自分の周りが世界のすべてで、それ以外は関係なくどうなったっていい。存在を知ってはいるけれども見えてはいない。だから周囲が終わればそれは世界の終わりと同じ。食い止めるためならどれだけ過激なこともするわよねぇ」

「姉さんがそうだって言いたいの。……魔法少女って、そういうものでしょ」

「ええ、私たちもそうやって生きてるのよぉ」

 

 それだけに、より遠くを見られる存在は素晴らしい。そうありたいと思うし、私だって二木市の未来のためを思い描いてきた。

 

 けれど……遠くを見すぎて大事な物を失ってはむしろより大きな悲しみを生む。

 私も、もう少しでその奈落に陥るところだった。

 

「私たちは魔法少女の中で言えば年長者。だからこそ、しなくちゃいけないことがあるの」

「……わからないわ」

 

 "もう、姉さんと同い年なのに"と付け加えて、うつむいた。

 

「ひかる、帰るわよぉ」

「こっ、このタイミングでっすか!? もう少し、こう……」

「これ以上は彼女が考えることよぉ」

「……引っ掻き回していっちゃってさ」

 

 恨み節をぶつけられようとも、同じ部分があるからこそ、これ以上踏み込みたくなかった。

 あなたがあなたの答えを見つけられるために手を貸すのはやぶさかじゃないけれど、それは誰かに教えられるものじゃないのだから。

 

「だけど、最後にひとつだけいいかしらぁ。気になっていたことがあるのよぉ。あなたの妹は病気で亡くなったそうだけど――」

 

 

 

 

 

「だったら、『妹たちの病気を治して』で治っているはずじゃないかしらぁ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝起きて、ピコンってスマートフォンに通知が来ていたと気づいたとき、不安でいっぱいだった。

 くれはさんが二木市に行ったのは知っている。観鳥さんも心配していたし、私もそのことで頭がいっぱいで、寝れたのはほんの少しの時間だけ。

 

 けれどもその内容はくれはさんの無事を示す写真と、プロミストブラッドとの戦いが和解で終わったって連絡で、緊張が一気にほぐれたのを感じた。

 その気持ちが表に出ていたのか、今日のブロッサムでのアルバイトはとってもうまくいっていたと思う。おばさんにも褒められちゃった。

 

 そういうこともあって、お店の前に彼女の姿が見えたときは嬉しかったんだ。

 

「あ、くれはさん。お花を見にきたの?」

「あなたに会いに来たの。終わったら、家に着いて行っていいかしら」

「――え!? う、うん! もちろん!」

 

 急な誘いについつい焦ってしまったものの、くれはさんの様子を見て気を引き締めた。

 真顔の奥にあの頃みたいな暗さがある。動きづらそうな脚と腕が、私の胸に悲痛という重石を乗せてのしかかり、このままじゃいけない気持ちが溢れ出してきた。

 

 病院でも調整屋でもなく、近くにいる帆奈ちゃんでも、大切な後輩である観鳥さんでもなく、私に向けられた理由はしっかりとわかる。

 

 あの日――『また辛くなったらそのときは全部話して』と、私は確かにそう言った。

 その約束を、彼女は覚えていたんだ。

 

 おばさんに事情を話して早めに上がると、脚をかばうように歩くくれはさんと一緒にゆっくりと家に向かった。部屋に入るまでに結構かかったけれど、そんなことは私にとってどうでもいい。

 

 大事なのは、くれはさんが話してくれたこと。

 彼女のお姉さんと妹さんと、その不安のことだ。

 

 クッションに座ったくれはさんは、一連のことを教えてくれたあと、うつむいたまま言葉を続けた。

 

「姉さんが嘘を言ったのか、それとも、妹まで私を偽っていたのか……少しでも良いほうに考えたくて、きっと私たちのために離れていったんだと思うようにした。でも……だったら私は、そんな想いを踏みにじって魔法少女になって……」

 

 いつもとぜんぜん違う姿は本音を見せてくれているようで、頼ってくれた嬉しさと、彼女に降りかかった事態に苦しくなった。

 

 それはくれはさんが優しいから思ってしまうんだよって伝えても、解決しない。

 お姉さんと妹さんが悪いんだよ、あなたは悪くないよなんて言ってしまえば、むしろ彼女を苦しめる。

 

 真実がどうであろうと、起きてしまった事実が延々と彼女を縛り付けているみたい。これじゃ、どこに行っても答えなんてない。なんの明かりもない暗闇に放り出されたような心細さが胸をいっぱいにしてしまう。

 

 みんなを助けられないちっぽけな力しか持たない私には……その悲しみを、ほんの少しでも引き受けることしかできないんだ。

 

「でも、ね。私たちはくれはさんが魔法少女になってくれたから出会えた。だからきっと今を生きているの。それだけは変わらない……そう思いたい」

「魔法少女だから、希望を信じられる。まだ、助けられる……」

 

 私に聞かせるんじゃなくて自分に言うように、くれはさんは小さな声でそう言った。

 それが遠くに行ってしまったように見えて、思わず彼女の腕を掴んだ。

 

 

 安心させたくて、安心したくて……握った手は――冷たかった。

 

 

 お母さんが1階から私を呼ぶ声が聞こえたのはその時だ。なんでも外国人の人が来て、私とくれはさんを呼んでいるのだという。

 怪しいから帰ってもらおうとしたけれど、くれはさんならそういう知り合いもいるかもと思い直したらしい。

 

 その人は眼鏡をかけた細目が特徴的で、ペレネル・フラメルと名乗った。

 

 私も、かごめちゃんから聞いて少しは知っている。二木市に一緒について行って、守ってくれていたそうだ。

 

 そんな彼女を部屋に招くと、くれはさんを見て心底心配そうに、されど強い語調で言った。

 

「くれは嬢、ソウルジェムを見せなさい」

「……カトラスを返すために来たんじゃないの?」

「それもあるわ。だけど……」

「――わかった」

 

 指輪から卵型の見た目に変わったソウルジェムを見て、息を吞んだ。

 ヒビだらけだ。内側の光は薄暗くて、今にも消えてしまいそう。

 

 ソウルジェムは、魔法少女の魂であり、命。

 それじゃ、くれはさんは――!

 

「え、あのっ、これ……!」

「……カトラスを渡すべきでなかったのかもしれません。私のミスでした。今も身体に不調が出ているのでしょう?」

「大丈夫よ、今はちょっと動かしにくいけれど、すぐに治るわ。前もそうだったじゃない」

 

 ペレネルさんは、くれはさんの両肩を掴んだ。

 

「くれは嬢、あなたはもう、戦うことを許可できません。怪我を負えば治りも遅く、精神への悪影響でドッペルもなにが起きるかわからない身体です。ましてや……これ以上、あの赤い光を使えばソウルジェムが完全に破損し、死に至ります」

 

 死ぬ。

 くれはさんが?

 

「……あなたに、死んで欲しくないのよ。私の利益のためではなく、タルトと共に戦ったあなたに、そんな最後を迎えさせたくない。これ以上進行しなければ、普通に暮らす分には問題ないのです」

「それは、魔法少女としての暮らし?」

「いいえ、グリーフシードなどはこちらで用意しましょう。できる限りのサポートはさせていただきます」

 

 考えが纏まらない。

 ペレネルさんの言葉は真剣で、間違っているとも思えない。

 

 だけどくれはさんは、目を見開いて言った。

 

「それじゃ、ダメなのよ」

 

 

 




■今回の内容
 第二部第7章『トワイライト・レムナント』(一部分)

■結菜さん
 『プロミストブラッドの調整屋ジャック』 にて、みたまさんの料理のアレさから冷蔵庫にレシピを貼ったり、ひかるの宿題を見てたことを話すボイスがあった。アーカイブはどこ? ここ……?
 他にも生徒会に入らなかったら料理部に入りたかったなど料理好き。生徒会長で勉強も教えられる。なあ聞いてるか妖怪メロン女。

■雫ちゃん
 本来はこの辺で固有魔法が変化。今までのように無制限にワープできなくなってしまう。今回は基点となる観鳥さんが生存しているので起きません。
 鶴乃ちゃんが18歳から17歳になったことでホームボイスが修正されたり、☆5イラストの露出が抑えられたり(修正前と修正後がある)、なにかと変更に縁のある魔法少女。

■さくや
 さくや? 今神浜に涼子さんが来て指名が入っています。すぐ来れますか? とばかりに元気にやっている。
 彼女が退場していないため、『うららとナイショと送別会』をやると内容が大きく変わる。

■ペレネル先生
 くれはちゃんのカトラスの使い方が想定外すぎてチャートが危うい。普通はソウルジェムにダメージを負う方法なんて使わないんだよなぁ。
 フランスよりも昔と比べたら性格が丸くなってるので作戦はいのちだいじに。

■くれはちゃん
 お前もう魔法少女としてまともに戦えねぇが?
 



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