マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート89 続く記し

 

 飲食ができなきゃ、人は4日ぐらいしか生きられない。

 スマートフォンで調べた情報がドキリと胸を跳ねさせる。

 

 ネオマギウスの騒動は魔法少女たちの活躍によってあっという間に解決した。

 だけど、もしあのまま電波望遠鏡から電波が放たれていたら、私も含めて、魔法少女じゃない人たちが苦しむことになっただろう。赤ちゃんとかお年寄りの人、病気の人なんて区別もなく、1日だって持たない人がいたかもしれなくて、ほんの少し先にある地獄絵図を想像してしまう。

 

「……本当に良かった」

 

 出来事を手記に纏めて文字を刻むたび、もしもの結末を想像して避けられたことに安堵する。

 

 崩壊させるのが魔法少女なら、それを止められるのも魔法少女。

 たとえひめなさんの作戦が実行されていたとしても、フェリシアさんの『忘却』に類する魔法を駆使すれば、神浜市そのものの記憶をリセットすることで解除できていたかもしれない。

 

 ただ、それは最終手段。

 止められる間にどんなことが起きるかわからないし、失ってしまった命は戻らない。

 

 令さんと取材を続けていくうちに、わかったことがある。

 

 時女一族や午前0時のフォークロアのみなさんは社会との繋がりがあった。広め方を間違えれば、彼女たちと同じく魔法少女が利用され、迫害される未来が待っている。

 逆に、ネオマギウスのように恐怖と暴力で上に立つやり方では、取り返しのつかない事態が起きる。

 

 じゃあ、広めることが魔法少女の総意なのかと問われたら、それもまた疑問だった。

 善意は時に悪意に繋がり、幸せな未来を信じたいという曖昧な言葉で引き金を引いて良いと思えなかった。

 

 調整屋の人たちが願ったという負の願いは知られたくないはず。

 プロミストブラッドが経験した争いみたいに、魔法少女同士の戦いが始まることだってある。

 

 みんなの幸せは違うからこそ衝突して、単純な結果にはならない。想い合うからこそ起きる悲劇もある。

 

 キュゥべえに奪われた自動浄化システムを取り戻す方法もだ。

 そのためには小さなキュゥべえかういちゃんがコアにならなくちゃいけない。でもそれって……本当に良いのかな。本当に、誰かが犠牲にならなきゃ手に入れられないのかな。

 

 すべてが上手くいく解決策なんて思い浮かばない。

 それこそ奇跡を願うしか方法がない気さえする。

 

 それでも――それでも、希望を信じるのなら、私はどうすべきか。

 

 この先の出来事こそ、私、佐鳥かごめの新たな記し。

 魔法少女を伝える意味と助けたいものへの想いを抱き、はじまりの日への恩返しを決めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 平穏が訪れるRTA、はーじまーるよー。

 

 まあすぐ終わるんですけどね(無粋)。

 前回は無事にネオマギウスの騒動を最小限で終わらせました。チャート通りじゃないだろって? なんのこったよ(走者の屑)。

 

 さすがにこんな終盤まで来ると、序盤~中盤にかけてやらかしたガバが変な結果を作り上げます。

 長時間RTAなので多少のことは許容範囲内ですが、みなさんはこうならないようチャートをちゃーんと守って走り切りましょう。その場その場でリカバリーしてるところだぞ!

 

「――でね、胡桃さんにも言われたのよ。例えば自分の料理の技術が上手すぎるせいで下手な人を傷つけたり、攻められたりすることがあるんじゃないか……って聞いたら、それは上から目線の傲慢な思い上がりでしかないって」

 

 とはいえチョー平和な時期なことに変わりなく。

 今はなにかイベントをこなさないと進まない待ち時間でしかないので、莉愛様がクソ真面目なこと言ってるのを高速で聞き流しています。

 

 これもかごめちゃんのインタビューがまだ継続中なため。どこ行ってもかごめちゃんが付いてくるので、ついでに取材も踏んでしまうというありさまです。休憩時間かぁ?

 

「純粋に自分を守るための欲求が、無自覚に他者を傷つける価値観となる。魔法少女の願いは、ある意味では今までの自分を否定することなのかもしれない。だからこそ……あなたが契約する時が来たら、納得できるあなた自身の願いを叶えなさいな」

「私自身の、願い……」

「ええ、この阿見莉愛、応援してますわ」 

 

 終わりを見せないインタビューもそろそろ終わり! クライマックスに参りまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「付いて来たいってしつこいから許可したがな。アタシは今でも反対してるぞ。そりゃ、一時期ネオマギウスにいたオマエは気になるだろうけどなぁ……」

 

 南凪でみゃーこ先輩と合流し、呼び出しを受けたラピヌお姉さまを道中あした屋で回収したりしましたが、そんなこんなで調整屋に向かうところ。

 今は事件を起こしたひめなと裏にいた華々莉の調査中らしいっすよ。情報聞き出しに行きませんか? 行きましょうよ!

 

 と、着くまで聞き取りに向かう理由を解説でもしておきます。

 

 第10章が終わった今、グループ同士の抗争は完全に終結しました。

 キモチの石もあとは逃走中のアオちゃんを確保するだけ。第二部の主題の内容はもうクリアしたも同然です。

 

 アオちゃん追跡には結菜さんさんたちプロミストブラッドを送り込み、責任を取ってもらいましょう。

 湯国市までの行脚に付いていくとキモチ空間で14年の子育て開始。赤ちゃんのアオちゃんやお母さん(結菜)とママ(樹里)、煌里ひかる28歳無職という面白メンバーが見られますが、14年なんて大ロスどころの話じゃないのでパーフェクトスルー。普通プレイで見て、どうぞ。

 

 じゃあもう一人の紅晴ちゃんがお母さんを頑張ればエンディングに入れるか? 入れません。

 メインシナリオ進行くんが『日常を楽しもう』なんて明るいこと表示しながら余裕の態度を崩さないのがその証拠。第一部は第10章で終わったからとぼけちゃってぇ……。

 

 キモチの石が8つ集まれば白タヌキをぶっ飛ばすだけなので、進行次第では実際に終わりも可能なものの、それでは条件未達成のノーマルエンド。

 今回のレギュレーションは鏡の魔女撃破ルートなため第10章を超えたその先、ラストダンジョンのミラーズに挑まなければなりません。

 

 もう想定外のロスは十分堪能したよ……、

 再走待ったなしの後顧の憂いはすべて断っておく必要があるわけで、用があるのはもちろん……おう! やってるかい!

 

「くれりんマジ久々じゃん!」

「オマエらほとんど話したことないんじゃなかったのか?」

「一時期ネオマギウスにいたんだからマイメンっしょ★」

 

 (ひめなの信頼度が)良いぜぇ……。

 

 ネオマギを抜ける直前に言いましたが、事前にしていたお膳立てでひめなの信頼度は自動的に上がります。他のネームドネオマギメンバーと良好な関係を築いており、第1章でモブを助けたことでグループ全体の信頼度も高いため、彼女も引っ張られて上がるわけですね。

 

 このぐらいあれば物の貸し借りができるレベルでしょうし条件達成、ヨシ!

 

「だから、マツリにわかるわけないでしょ!?」

「わからないからマツリはわかりたいの!」

「あ゛~もう! お前たち双子なんでしょ!?」

 

 隣は聞き取りどころか姉妹喧嘩にラピヌが割り込んでますがスルーだスルー。

 華々莉を放っておくのはマズいと知られてるため、変身解除能力がバレているうちのラピヌお姉さまは駆り出され、魔法解除要員の千里と共に華々莉の監視のアルバイト中。忙しい!

 

 便利ユニット2人を占有して堂々巡りの言い合いが続くのでリカバリーは必須ですね、ええ。あとでみとさんに心を繋げてもらいましょう。華々莉説得ルートが開けます。やっぱすげえや。

 

「なぁみたま……アレ大丈夫なのか?」

「ずっとあんな感じでねぇ。かと言って彼女の固有魔法は厄介だから帰すわけにも行かないし。十七夜は"自分に考えがあるから抑えていてくれ"なんて言ってたけど……」

「へぇ~なぎりんが?」

「なっ……なぎりん!? うぐっ、衣美里を相手にしてる気分になってきたぞ」

 

 なぎたんナイスゥ! この様子だとみとさんを連れてきてくれそうです。うまいぞ短縮。

 

 色々と積み重ねてきた最終盤では、みなさん他の魔法少女とその能力を知っているためこのように勝手に解決に動いてくれるわけだぜ。

 第一部が始まる前なんて散々でしたね。くれはちゃんが引き合わせないとイベント失敗してたりしたのに圧倒的な成長を実感するけどな~俺もな~。くれはちゃんもういらねぇな!

 

 まあ、まだくれはちゃんにしかできないことがあるので、このまま聞き出しましょう。

 よーよー姫さんよぉ! 使ってない仕掛けとかあるんじゃないっすかぁ!?

 

「うん、あるある」

「ハァ!?」

 

 ここですここ! これが知りたいわけ!

 変電所に仕掛けた精神操作魔法は『ソウルジェムを砕いて』以外にも予備が複数存在します。ハードモードでこれを見落としたが最後、ひめなが改心してなかったり残党がスマホワンポチで何度目かわからない神浜市全滅! なんでこんなデストラップ仕掛けるんですか?

 

「わたしたちも聞いたのよぉ~、でも変電所のほうを千里ちゃんが解除すればもう使えないじゃない?」

「それはそうだが……一応スマホも壊しといたほうがいいだろ」

「ゴメンそれはマジ無理! みんなとの思い出入ってるから!」

「バックアップはあるみたいだけど、ねえ?」

 

 お前言える立場かオォン!?

 というツッコミは横に置いておいて、ひめなは破壊しようとしないので誰かが代わってやる必要があります。

 拗らせていると信頼度が高めのキャラでしか変われないので、物の貸し借りができるレベルが必要だったんですね。そのためにネオマギウスに入ったんだからなぁ……わざわざ序盤から(大きなお世話)。楽しかったぜェ、お前らとの友情ごっこォ!!

 

「今調べられてる最中だし、それ終わったら壊すのは無理だけど海に捨てに行くって」

「まあ使えなくなるなら良いのか? うーむ……」

 

 というわけで、これでスマホを海に捨てる話が聞けました。あとは全部聞き流してイーヨー……。

 今破壊すると全員からの信頼度爆下がりなところ、実際に捨てるタイミングなら問題ありません。

 

 それに海と言えば当然南凪。

 第10章終了後にフォークロアが南凪の水族館で今までの事情を説明したり、なんやかんやで南凪で起きるイベントが多いので、家があると大変便利。ポイ捨て現場に参上して横取り破壊するのにロスもないわけです。

 

 スマホと共に信頼を壊しに行くので今回はここまでです。ご質問ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば、最初に抱いたのは違和感だった。

 

 神浜マギアユニオン結成の後、次から次へと神浜市へと魔法少女たちの悪意が押し寄せている。

 今までの因果が起こした結果と偶然の産物と言ってしまえばそうなんだろうが、藍家ひめなの件といい、どうしてもその一言で済ませられない流れがあるような気がしていた。

 

 アタシの考えすぎならいい。

 だが、もっと大きななにか。それこそ魔法少女の願いが引き起こすような、目に見えない運命とでも言うべきものがあるのなら、本当に存在しているのならば、出所はどこだ?

 

 ……わからん。考えすぎか?

 

「│ひなの、難しい顔してる。ここ最近ずっとだけど│」

「色々起きすぎててなぁ。ようやく肩の荷が下りそうだってのに」

 

 はぁ、とため息をつくのも何度目か。

 今日の化学部部室にはアタシと桜子がいた。

 

 魔女ともウワサとも違う謎の存在が現れたっていう報告から、くれはがプロミストブラッドとぶつかって、旧車両基地が崩壊した頃からこの戦いは始まった。既に頭が痛くなる内容だ。

 

 他のグループも神浜に集まってきて、キモチの石を8つ集めたら自動浄化システムが奪えるなんてキュゥべえが言うものだから奪い合いが始まり……始まり――

 

「……言うほど奪い合ってた記憶がないな」

「│キモチの石の話?│」

「結局、神浜マギアユニオンとプロミストブラッドの戦いがほとんどだったしな」

 

 時女一族とはずっと同盟関係で、ネオマギウスも最近になって表に出始めたから、実質的に争う相手は一つのみ。キュゥべえが望んだような事態とはかなり違ったんじゃないだろうか。

 

 それと、良くも悪くも拠点を破壊したのが大きかったんだろう。

 二木市にういちゃんが攫われることもあったが、解決したあとはキモチを探すことがメインになってたみたいで、全面的にぶつかることはほとんどなかった。神浜監獄でのことを除いて。

 

 そう考えると、さらに言えば神浜マギアユニオンとプロミストブラッドの戦いよりも、紅晴結菜と帆秋くれはの争いの面が大きかったのかもしれない。結局、最初から最後までアイツが関わり続けていた。

 

「で……最近、くれはのクラスでの様子はどうだった?」

「│そわそわしてたり、変な様子。やっぱりおかしい│」

 

 ここに桜子を呼んだのはそれが理由だ。涼子共々同じクラスだから学校での様子が常にわかるし、紗枝や真理亜にもなるべく一緒にいるようにアタシから頼んでいる。

 

 過保護だって言われようが構わない。

 争いの中で、くれははもうボロボロだ。ソウルジェムにヒビが入ってるだなんていつ死んでもおかしくない。

 

 長年魔法少女をやって、いつの間にか中央のまとめ役を任せられて、何度も()()()()()()ヤツを見てきた。そのたびに胸が痛くなって、いつまでも慣れることがない。

 

 特にくれはは、南凪の中じゃ一番付き合いが長い。

 令よりも前に出会って、今よりももっと冷徹に見えた頃から知っている。神浜全体を通して見たらもっと長く知ってるヤツもいるが、近くにいて関わりがあったのはアイツだ。

 

 アタシはただ……大切な後輩を失いたくないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くれはの「私もひめなに会いに行きたい」という頼みを聞いたのは、一人にしておけなかった理由が大きい。ネオマギウスにいたこともあるし、押さえつけるより行かせてやったほうが良いとも思った。

 

 背の高いコイツと並んで歩いても会話は特にない。雑踏の声の中で妙な静けさがある。

 途中でラピヌを連れてきてからはやかましくなったものの、くれはは変わらなかった。

 

 そうして辿り着いた調整屋の入り口には『臨時休業中 急患さんだけよ~』と気が抜けるいつもの調子の張り紙。いつもの日常が戻ってきた感覚と胸中の心配がどっちつかずだ。

 

「くれりんマジ久々じゃん!」

 

 中に入ると、くれはを見るなり件の藍家ひめなが声をかけてくる。

 

「オマエらほとんど話したことないんじゃなかったのか?」

「一時期ネオマギウスにいたんだからマイメンっしょ★」

「そうかしら」

「そうそう!」

 

 ギャルの相手は衣美里で慣れてるつもりだったが、どうも調子が狂う。

 話はその後、使ってない仕掛けが残ってるとかさらっと大変なことに繋がり、事前に聞き出しておいて良かったと常々思った。

 

「今調べられてる最中だし、それ終わったら壊すのは無理だけど海に捨てに行くって」

「まあ使えなくなるなら良いのか? うーむ……」

 

 問答無用で壊すのが一番な気がしたものの……既に大元が解除されているのならただのスマートフォンにすぎない。

 なら捨てなくてもいいんじゃないか。そう言い出すかと思えば、ひめなは妙に律儀なヤツだった。

 

「私チャンのやろうとしたことはさ、ネオマギのみんなに受け入れられないってわかった。サーシャにもいっぱい叱られたしね。だからスマホを捨てるのは証明。本気だって知ってもらわなきゃ」

 

 リーダーとして収まっていた理由はこういうところなんだろう。

 その真面目な様子なまま、ひめなは言葉を続けた。

 

「でもね、かがりんの件がなくても私チャンはやってたよ。そうでもしなきゃいつまでもあたおか扱いで誰も認めてくれない。世界をひっくり返してやらなきゃ、って」

「そこ、なんであだ名で呼んでんの?」

「似た者同士じゃん★」

 

 ……向こう側で喧嘩してたのによく聞こえるな。

 

 少し離れた場所で、ホオズキ市から来た詩音千里と日向茉莉が見ているのが、ネオマギウスの裏にいたらしい日向華々莉。

 くれはがいた頃よりも全員が過激な方向に進んでいたのは、彼女が持つ精神操作の魔法で記憶を変えていたからだそうだ。恐ろしい仕掛けも彼女の魔法が使われたんだとか。

 

 以前、アタシらの知らないところでホオズキ市に帆奈が乗り込んだことがあった。それに気づいたのはワルプルギスの夜との戦いが終わってからで、ホオズキ市の魔法少女との繋がりが出来たあと。

 その時に『暗示』をかけて眠らせていたらしいが……起きてるってことは外部の影響で起きたか、コピーする魔法を変えたのが原因だろう。

 

 異常に交友関係が広いくれはでも彼女たちは特別親しいわけではないらしく、やはりやかましいラピヌの隣に行くと、黙って話を聞いていた。

 

「ねえ、そもそも……なんでカガリはネオマギウスの人たちを狙ったの? 理由がないよね?」

「そんなの、マツリたちが寄ってたかって反撃してきたからでしょぅ?」

「マツリの言う通りよ。私たちだけ狙えばいいのに、わざわざ回りくどい方法を使うの?」

「だーかーらー、そうでもしないとスズネちゃんを……」

 

 そこで、日向華々莉は黙り込んだ。

 

「……なんで? どうして?」

 

 その場逃れの嘘の演技にしてはあまりにも真に迫っていた。

 アタシらでもそう思ったんだ。双子の妹の茉莉は心配そうな表情で近寄って手を伸ばした。

 

「カガリ……」

「起きた時、スズネちゃんを殺したいと思った。だけど今のままじゃまた返り討ちになるから、操れるコマが欲しくて……」

「それじゃ私チャンたちに魔法少女至上主義をやらせる意味なくない?」

 

 ひめなの言うことももっともで、寄り道をせずにそのまま目的を果たせばいい。

 言葉と実際の行動が不思議と噛み合わない。本人が一番それを疑問に思っているようだった。

 

「誰かが、私を操って魔法をかけさせた……? それで自分も含めて記憶をイジった? 気づかないうちに? いや――忘れていた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、ひめながスマートフォンを捨てると聞き、アタシらは海辺に来ていた。

 砂浜ではなくコンクリートの地面の先は泳ぐようなエリアじゃなく釣りスポット。魔法少女の腕力ならここから投げ捨てるだけでも彼方に飛ぶだろう。

 

「アタシは確認のために来たんだが、すぐ終わるしオマエらまで来なくても……」

「私たちもひめちゃんの証明を見たかったんです♪」

 

 と言ったのは栗栖アレクサンドラ。後ろには宮尾時雨に安積はぐむの姿もある。

 彼女たちはネオマギウスのやり方に反対したと聞く。言われてみれば、証明にはうってつけの面々だろう。

 

「でも、くれはさんまで来てるなんて思わなかったよね」

「うん、ぼくたちから離れて抜けたのはずっと前だったから……けど、ちょっと嬉しい」

 

 もちろんというか、当然というか……やっぱり、くれはは来た。

 

「……オマエも見たかったのか?」

「時雨とはぐむは私が関わったことだから」

 

 ああ、そう言うと思ったよ。

 どこか様子がおかしくても、根底の部分は同じに見える。そういうヤツだからみんな心配してるんだ。

 

「よーし、じゃあ、みんな見ててね」

 

 ひめなは足場のあるギリギリの場所まで行くと、振り向いて手を振った。

 

 アタシらは肩を並べて、それに三者三様の反応を返す。

 

「ひめちゃんファイトー♪」

「私、こういう時に転んじゃうんだよね……」

「ぼくも自信ない……」

 

 まあ、投げるまで長いのはいいだろう。そういうもんだ。

 待ってる間、いまだ気になり続けている違和感の正体を探ろうと思考の海に沈んだ。

 

 この違和感は、なにかに似ている。

 

 一見すればまったく繋がりのない点同士。されどそれぞれを結べる中心点が存在し、その正体が欠けているような歯抜けの気持ち悪さ。

 

 そうだ――帆奈が昏倒事件を起こした時の感覚じゃないか。

 

 あれだって、常盤ななかが集めた魔法少女たちに起きた出来事と、静海このはたちの出来事、大東団地での事件と、まるでかけ離れているものばかりだった。その後起きた魔法少女が昏倒する事件も、それ単体で見れば繋がりなんてない。

 

 ただ、アタシがこれらの事件をよく知っている理由こそが、すべての事件をくっつける中心点だった。

 

 アタシの後輩。帆秋くれは。

 更紗帆奈が起こした原因は彼女にあり、その周囲で起きていたのも関わり続けていたのも当然の帰結。惹かれ合うようにななかとこのはが出会ったのも運命ってヤツだったのかもしれない。

 

 じゃあ、今のこの状況は? 似た感覚は、なにを指し示している?

 

 もし、"犯人"がいるのなら、理由と結果の中に必ず人為的なものが含まれているはずだ。

 より悪辣に、より都合良く、事を運ぼうとしたなにかがあるんじゃないか?

 

 プロミストブラッドがマギウスに恨みを持ったことじゃなく、二木市と神浜市を繋ぐミラーズのショートカットがあったこと。

 藍家ひめなが凶行に乗り出したことじゃなく、日向華々莉が関わっていたこと。

 

 そして……どうして、夏頃から帆奈は単独行動を繰り返してるんだ?

 

「よしっ!」

 

 ひめなが気合を入れて腕を回した。そして勢いよくスマートフォンが投げられる。

 

「――っ!」

 

 その瞬間、くれはが変身した。

 なにやってんだとか、オマエは戦うなとか言う前に、持ち前の速度を生み出す脚でコンクリートの地面を蹴り上げて跳ねた。

 

 カトラスは既に手に握られ、振りかぶられている。

 魔女との戦闘と比べたら、宙に舞うスマートフォンの速度はなんとも緩やかだ。アタシでさえ視認できるのに、一刀両断できない理由なんてありはしない。

 

 当然のごとくスマートフォンは真っ二つに切断され、くれはと共に海に落ちていく。

 

「ちょっ……くれりんなにしてんの!?」

「それは後だ! アイツ泳げないんだよ!」

「うええっ!?」

 

 突発的な行動を咎めるより先に、海に落ちたくれはを全員で引き上げる。その表情は真顔で考えがまったく読み取れない。口を開きもしなかった。

 

 意味不明の行動を取るのはいつものことだが、ひめなが破壊を望んでいないことは聞いていたはずだ。コイツが理由なく傷つけることをするかと問われれば、全身全霊を以って「しない」と答えられる。

 

 だからこそ、らしくない行為に心配が募った。

 

「オマエな……っ! 黙ってないで今の行動を……!」

「あ、ま……待ってください、ソウルジェムを!」

「な――」

 

 ……真っ黒だった。

 首元にあるソウルジェムは本来の色を完全に失っていて、今にも穢れで完全に満たされようとしている。

 

 自動浄化システムは奪われ、今の神浜市には被膜がない。

 つまり、魔法少女の終わりである魔女化が迫っていた。

 

 なんでだ。

 なんで、こんな急に穢れが増した。

 

(考えてる場合か!)

 

 幸い、手持ちのグリーフシードがある。これで浄化すればいい。

 

「今――!」

 

 アタシと同様の考えに至った人物はもう1人。宮尾時雨だ。

 距離と思考の差から先に動き出したのは向こうで、飛び込むようにくれはのソウルジェムにグリーフシードを重ねる。

 

「……良かったぁ」

 

 穢れを吸い取る光景は何度も見たものだが、今回ほどありがたく見えたことはそうそうない。全身の力がどっと抜けて、グリーフシードを持ったまま座り込んだ。

 

「あっぶなぁ……しぐりんよく間に合ったね」

「いつかグリーフシードを返そうと思ってて、持ってて良かっ――」

 

 途端に声を止めて、時雨がさらにくれはの傍に行った。

 急な行為に全員が疑問符を浮かべた、その時だった。

 

「この瞬間を待ってたの」

 

 時雨じゃない声だった。

 この中の誰も知らない。知るはずのない声。

 

 だが――くれはだけが、その名前を口にした。

 

 "みこと"、と。

 

 




■今回の内容
 第二部第10章アナザー 『向こう側の水面に映る影』(一部分)

■続く記し
 そんな章もアナザーもない。捏造。
 ここから実質の最終編。

■第10章の事件
 原作においては、固有魔法の組み合わせで体調を戻せて記憶も都合良く消せたのでさらっと流されているものの、インターネットに情報は残ってるので日本中を騒がす事件になっており、かなり取り返しのつかない事態になっている。
 これ以外にも魔女を大量にバラまいた結果、魔女の口づけの被害になりかけた人が多かったり、魔法少女全滅のうえ一般人にも被害が出ること待ったなしのヤバい事件。ネオらしくマギウスと似ている。

■華々莉
 『Memorable Flower』にてウワサに巻き込まれたことで美琴椿と再会するが、彼女に諭されてもなお止まらない。大好きもさよならもゴメンももう遅い。「私だけを選んでくれないと」とも言っているので椿からの説得は難儀。
 となると、唯一残る説得ルートが妹の茉莉の存在。すずマギ原作では魔女化前に「マツリは嘘ばっかりだね」と言い本心を信じていない。最後の台詞も鈴音ではなく茉莉に向けたものである。じゃあ心を繋げてやるか!(パワー解決)

 本人が気づかないうちに~は『Memorable Flower』の内容が少々入っている。

■14年
 謎のキモチ空間による謎の解決方法。
 くれはちゃんが入った場合14年間見た目が一切変わらない謎の隣人が増える。
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