マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート90 滅びへ至る決まりきった理由 前編

 

 ラスボスと相対するRTA、はーじまーるよー。

 

 やってきました南凪の海岸。海釣りスポットは快晴でとっても良い天気★

 えー本日、素敵なスマートフォン破壊会の実行役を担当させていただきます、出張破壊人の帆秋です。どうぞよろしくお願いします。

 

「アタシは確認のために来たんだが、すぐ終わるしオマエらまで来なくても……」

「私たちもひめちゃんの証明を見たかったんです♪」

 

 出たぜ! 得意気なサーシャの極上スマイル。まったくさー、自分でケリつけに来てんじゃねーよ!(賞賛)

 

 主役のひめなを除き、サーシャの他に来ているのは時雨ちゃんとはぐむん、お目付け役のみゃーこ先輩ですね。

 ひめながソロで捨てる場合が多いので今回は人数増量版。燦ミユは宝崎市に帰ったんじゃないですかね、まだ聞いてないからわかんないですけど。

 

 この人数だと受け渡しよりも実力行使が一番! 信頼度はあるので結果は変わりません。より早くなるだけです。

 

「よーし、じゃあ、みんな見ててね」

 

 しまってこォー! ひめちゃんまだ1回表。試合は始まったばっかりよ!

 大きく振りかぶって投げようとしたら、ここがポイント。いつでも変身できるように待機しておきましょう。チャンスは一瞬です。

 

「ひめちゃんファイトー♪」

 

 まだか……?

 

「私、こういう時に転んじゃうんだよね……」

 

 長くないか……?

 

「ぼくも自信ない……」

 

 スローボールか……?

 

「よしっ!」

 

 はいここ! 空飛ぶスマホをロックオン!

 くれはちゃんの残る魔力をフル使用し、『対象確定』の全力を用いてあのスマホをぶった斬る!

 

 フランスでも似たようなことやりましたが、全力で発動することにより白紙の予言書と同じ効果を発生させます。

 すると、ひめなのスマホを壊したという事実が確定事項として歴史に止められ、この時間軸以降は絶対に使用できなくなります。タイムパラドクスが起きようと世界改変しようと絶対にこのスマホは壊れます。絶対に絶対です。

 

 代償として穢れが急上昇。魔法の想定内の行動なのでソウルジェムへのダメージはありませんが、蓄積分が精神へさらなる悪影響を及ぼすことでしょう。まあ知ったこっちゃねぇですけど。

 

 相変わらず泳げないのでみゃーこ先輩に海から引き上げてもらいつつ……あっグリーフシード使っていただける? 使っていただけるそうです。良かったぁ~時雨くん来ていて。

 

「あっぶなぁ……しぐりんよく間に合ったね」

「いつかグリーフシードを返そうと思ってて、持ってて良かっ――」

 

 ああん? なんかイベント踏みましたね。

 

「この瞬間を待ってたの」

 

 あっ(察し)。

 

 突如視界が暗転。

 精神空間へ参りまーす。

 

「んふふっ……そっか、あの喫茶店だね」

 

 急に現れたテーブル席! そして目の前には謎の魔法少女!

 

 慌てんな……慌てんなよ……今リセするのは二流。オリチャーを走り切るのが一流よ。

 終盤戦は今までの総決算のため想定外の事象が起きがち。起きたイベントのリカバリーがなによりも重要です。事前準備と絆パワーで乗り切れるならそれに越したことはありません。

 

 ここは様子見してみましょう。このパターンはもしかして……もしかするかもしれませんよ?

 

「こうやって直接話したかったの。ずっと、ずっと見てたから」

 

 妙にくれはちゃんに馴れ馴れしくてなんだお前!? とお思いの方もいるでしょうし、話してる間に解説しておきましょう。

 

 黒いドレスの彼女の名前は『瀬奈(せな) みこと』。単刀直入に言うと鏡の魔女でラスボスです。

 そう、よりにもよって、隠されていた初期交友関係にいた彼女こそ、第二部における最後の敵でした。第一部では牙を剥かなかった関係がこんな所で効いてくるんすねぇ。

 

 『暗示』だと思っていた固有魔法の正体は『移植』であり、魔女化の際、帆奈ちゃんの記憶の領域に精神を移植して人格だけ生き延びました。その後も宿主を転々として暗躍し続けたしぶといやつだぜ。どうして帆奈ちゃんから動く必要があるんですか?

 

 そんな彼女がメインシナリオに関わり始める鍵となるのがホーリーアリナ戦。その際はアリナ先輩の中におり、イブと接続して大量の魔力を得たことで本格的に行動し始めます。

 逆に言うとアリナ先輩が退場していてホリナ戦が発生しないと第二部は第10章で終わりです。やっぱあのアーティスト人類のためにもさっさと倒しておくべきじゃねぇか?

 

 元々帆奈ちゃんを引きずり回すチャートである以上、彼女が介入してくるのは織り込み済みですが……なんだなんだお前そんなくれはちゃんに興味あんのかよ~!?

 

「ねぇ、くれはちゃん。一緒にこの世界を滅ぼそうよ。帆奈ちゃんも賛成してくれるよ。三人であの頃みたいにやろう?」

 

 おっとすべての魔法少女の敵エンド発見伝。 

 いきなり物騒なこと言い出した理由は明確。現在の彼女は魔女そのものではないものの、離れていても本体の魔女の悪意と絶望に影響されてなかなか厄介なことになってるねんな……。

 

 今までの展開とルートによって理由や経緯は様々ですが、総じて鏡の魔女となった彼女はその強大な力で世界を滅ぼそうとします。なんでこの世界滅亡の危機ばっか起きるんですかね?

 

 先ほどのスマホ解体ショーもそのため。お手軽滅び発生装置なのでひめな自身やその他モブ以外にも瀬奈みことが利用します。

 海に投げ捨てたところで過去に戻れるミラーズワープがあれば回収も余裕なんだよな! 壊してもすり替えで対応できるミラーズの悪用スゴイ! 未来のせなみこがこんなにズルいなんてショック!

 

 とまあ、普通にやってたらあのスマホが原因で魔法少女全滅。ついでに人類も全滅です。

 スマホを落としただけなのにゲームオーバーとかやってられねえぜ。

 

 捨てても壊してもダメならどうしろってんだよ! 救いはないんですか!?

 まま、そう焦んないで。

 

 実はスマホによって魔法少女が全員悪夢に囚われるほうが正規ルートです。

 これでラビさんがまた諦念し始めてパーフェクトキモチフォーム化。体調が悪そうどころじゃない氷室ラビ(キモチver)との戦闘が開始。4つの結菜さんであの強さだったのに8つなんて勝てるわけねーよ! 

 

 なんて言いたいところ、このイベントを経ることでいろはちゃんがういちゃんとモキュとキモチを吸収して合体できるようになります。お助けフォームです。まあモキュを狙撃されると合体できなくなるんですけどね。コイツいつも足引っ張ってんな?

 

 難易度ノーマルまでならこっちのルート確定ですし、流れに身を任せてもクリアまで導いてくれるのですが、これは難易度ハード。

 代償として魔法少女全滅だったり、やり直しイベントが起きたり、こんな終盤だっていうのにちょっとミスったらリセの困難の道を歩かされます。

 

 なので、『対象確定』を持つくれはちゃんが壊して干渉を封じ、こちらのルートを断ち切る必要があったんですね。この辺のイベントをすべて吹っ飛ばすので超短縮できてあ~うめぇなぁ!

 

 ただし、このスマホ破壊IFルートも良いことばかりではなく。短縮できる代わりに鏡の魔女を自力で倒さないといけなくなる高難易度ルートとなっております。正規エンドでもないので初回プレイではまったくオススメできません!

 

 しかしストーリーではなくタイムを至上とするRTAではレギュレーションを満たしていればそれでヨシ。そのための手段も用意してあるからな? 喜ぶんやど?

 

「――でね、帆秋くれは進化計画って名前にしてみたの。鏡を通して色んな絶望を見たら、きっと賛成してくれる。こんな世界滅ぼしたほうが良いって思うはず」

 

 ああ^~良いすっねぇ^~! くれはちゃんをとことん追い込めるだけ追い込もうぜ?

 くれはちゃんver.Final化計画と名前も被ってて良い具合だぜ。

 

 スマホ破壊ルートだと下振れした場合の精神への追い込み具合が心配だったんですよね。あと1イベント分ぐらい足りなさそうでしたし、その場合はモブに魔女化してもらう手間がかかり微ロス。それが咄嗟の判断でリカバリーできたってワケ(一般通過アリナ・グレイ)。

 

「じゃあ、くれはちゃんの心の中で大きな領域を占めてるこれから見よっか」

 

 もう待ちきれないよ! 早く見せてくれ!

 死なない程度にいい感じに魂を痛めつけてくれよな~頼むよ~。

 

 ほらここがどこだかわかるかよオイ? おいほら見てみろよ? 誰も来ねぇぜここ。すっげぇ心の中だからさ。誰も助けに来ないんだぜお前? えぇ? 絶対助からねぇので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はずっと演じていた。

 嘘で塗り固めた理想の自分を演じ続けていた。

 

 ごく普通の家庭で育った、明るく元気な瀬奈みこと。

 

 その理想に満ちた嘘に浸り続けて、真実を覆い隠す。

 母は奔放な父に苦しめられ、ひもじく、あまりご飯も食べられないのがほんとうの私だ。こんな姿を知られたら敬遠されてしまうと、誰にも本当のことを言えなかった。

 

 それは魔法少女になってからも同じ。帆奈ちゃんやくれはちゃんと出会ってからも、私は"私"を演じて隠し続けた。

 

 帆奈ちゃんは警戒心が強くていっつも腕を組んでいた。信じられないものを見るように私を探っていたけど、そんな敵意は乗り越えて次第に距離が縮まっていく気がした。

 

 くれはちゃんも人を寄せ付けない雰囲気があったかなぁ。メロンってわかりやすい点があったから、食べた『暗示』を自分にかけたりして会話を合わせてたから仲が深まったと思う。

 

 友達と普通に遊んで、家に呼んでみたりなんかして、魔女退治ってちょっと特殊なことを除けば普通の日常。そんな毎日が過ぎていく夢みたいな日々――

 

 ……二人の思い出は、偽りの私との思い出だ。

 捨てられたくなくて、無理やりにでも共通点を見つけて仲良くして、利用価値のある魔法少女だとアピールし続けていた。

 

 重ね続けた偽りは、次第に姿を溶かして透明にしていく。もはや求めるものを映す鏡でしかなく、真実の私は空っぽになったままなにも持っていない。

 

 それを自覚していたのだから、もっと早くこの状況に立ち向かえれば良かった。殻を破り、これが本当の私だと、変わった姿を胸を張って打ち明けられたのなら良かった。

 

 

 でも、なにもかも――遅すぎた。

 

 

 不安と焦りに苛まれ、魔女退治にのめり込んでいった結果、ソウルジェムは急速に穢れを貯めこんでいったんだ。

 元々、家の外に出ている間はずっと自分に『暗示』をかけていた。魔法少女としては魔力を使いすぎの部類だったのだと思う。そこにさらに他の要因を上乗せしたら……当たり前、だよね。

 

 魔女化する瞬間はとても怖かった。全身が冷えていって、苦しくて、混乱する心が死を実感していた。

 それなのに夕暮れの世界はキラキラとただ眩しくて……ああ、辛いことや悲しいことから目を逸らさずに生きていれば、もっと早くこの美しさに気づけたっていうのに。なんでいつも、こうなんだろう。

 

 ……声が聞こえたのはその時。

 

『わたしは神浜を滅ぼす存在になりたい』

 

 神浜市を恨み妬む憎悪の声。すべてが壊れてしまえばいいと()()誰かの声。

 

 それが魔女と化すだけの"私"をこの世界に引き止めた。

 瀬奈みことが消えることを祝うように煌めくこの街を、悲しみへと生まれ落としたこの日常を、滅ぼしてやろう――そのために生きようと、強く願わせたんだ。

 

 今まで命令を聞かせるだけの『暗示』だと思っていた固有魔法が開花したのもその瞬間。

 その実態は"瀬奈みこと"という人格を他者に『移植』するもので、今までは命令の形だけを与えていたんだと思う。肉体と魂の檻から解き放たれてこそ真の力が使えるなんて、不思議だよね。

 

 そして、生き延びるために近くにいた帆奈ちゃんに『移植』した――のだけど。どういうわけか、そこには既に私の"想い"があった。今にして思えば、帆奈ちゃんの『上書き』も本当はもっと別の力があったんだろう。

 

 魔法少女の真実を知ったからといっても、あそこまで帆奈ちゃんの様子が変わるのはおかしい。

 微弱な精神が一人分の器に入り込むだけなら影響は少なかったはず。だけど二つもの異物を抱えちゃ、帆奈ちゃんの精神にも魔女がもたらす悪影響が出始めていたんだ。

 

『いるんでしょ、帆奈』

『……あは――』

 

 二人が争うのを見るのは嫌だった。

 ここにいるよって声をかけても届かない。もうやめてって話しても止まらない。

 

 私がいなくなったことで変わっていく二人がなによりも怖くて、そうさせてしまう世界が憎かった。

 

 争い合う"結果"を見たくなくて、気づいたら、帆奈ちゃんから離れて宿主を変えていた。

 擦り減っていく心のようにいつか消え去る定めだった精神は、偶然にもアリナ・グレイに宿り、彼女がイブと接続した時に強大な魔力を受けて、表に出られるほどの力を取り戻したんだ。

 

 たぶん、私が私でなくなっていったのは、その時だった。

 恨み、妬み、嫌悪、憎しみ、敵意。魔女になった魂は、寄生して離れた人格もそんな絶望で染め上げていく。着実に、確実に、同じく擦り減っていった"瀬奈みこと"を滅びを求めるだけの存在にしていった。

 

 んふふっ……それから、目が覚めたみたいだったの。

 世界を滅ぼせるような強い感覚と、それを果たせる力を得た悦びが私にとっての"真実"。生まれ変わったような認識だった。

 

 けれど唯一残っていた残滓は……やっぱり、帆奈ちゃんとくれはちゃんのこと。

 今となっても大切なことに違いはないし、一緒にいられるのならそうしたい。彼女たちを傷つける存在がいたら真っ先に滅ぼしたい。

 

 "想い"の私がやったことは、くれはちゃんを幸せにできるならいいかなって思ったけど、消すなんて困るから他の魔法少女たちを誘導した。株分けの魔女の深部をターミナルに通したり、使い魔で歴史研究部の人たちを誘ってみたりね?

 

 結界を操って神浜市と二木市を繋げるショートカットを用意したのもそう。プロミストブラッドの人たちはマギウスに恨みを持っていたし、なによりマギウスはくれはちゃんを苦しめた。だから死んじゃえばいいなって思ってやった。

 

 日向華々莉の時も同じ。だって帆奈ちゃんと戦って怪我させたんでしょ? だからムカついて、心に忍び込んで適当に記憶を隠してめちゃくちゃにした。

 そしたら……んふふっ、藍家ひめなを操ったり、神浜を滅ぼそうとしてくれたのはちょうど良かったけど。

 

 でも、なんでかな、くれはちゃんも帆奈ちゃんも、ぜんぜん喜んでくれないんだ。

 鏡を通して見る二人はどんどん傷ついていって、悲しそうで――あぁ、早く助けなきゃ……って、思ったの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつかグリーフシードを返そうと思ってて、持ってて良かっ――」

 

 魔力を使って宿主を操る。手を伸ばす。

 目的はソウルジェムに触れて私を直接『移植』すること。ただこの瞬間、この一瞬が待ち遠しくて、傍にいられるタイミングを狙っていた。

 

 くれはちゃんの心は他の人と違って奥底に潜り込むことが難しい。異物が押し出されるように跳ね返されちゃう。だけど穢れに満ちて消耗しきった今ならば、私ととてもよく似ていて、そう苦労せず隙間に入り込めた。

 

 暗闇を抜けて見えてきたのは、よく知った光景だった。

 

「んふふっ……そっか、あの喫茶店だね」

 

 そこはモダンな雰囲気でお洒落な内装のいつもの場所。人気のある店だけど、私の他にはくれはちゃんだけしかいない。煩わしさがない素敵な空間だ。

 いつの間にか私の目の前にオレンジジュースがあって、くれはちゃんの前には当然メロンクリームソーダ。あとはここに帆奈ちゃんがいて、大人なブラックコーヒーを頼めばいつも通り。

 

「……みこと」

「そうだよ。こうやって直接話したかったの。ずっと、ずっと見てたから」

 

 通じ合って思わず微笑んだ。

 私が言葉を返すと反応してくれることが、とても嬉しい。

 

 青みがかった黒い瞳がとても綺麗に私を映す。自分を失い世界を憎んでいる同類の瞳が合わせ鏡のように反射し合った。

 

 初めてくれはちゃんと出会ったとき、そこに私がいた気がしたのは間違いじゃない。

 

 彼女の家庭環境は私とは真逆のものだった。嫉妬したのは事実だ。両親の仲が良くて、姉妹がいて、裕福な家庭なんて私が望んだそのものなんだから、仲良くなれるはずもない。私たちのことを『暗示』で忘れさせて、乗っ取ることさえ考えたはずだ。

 

 だけど不思議と害するつもりはなくて、"仲間"になれる存在だと感じていた。

 鏡の魔女になったあと、その力で過去を見た。そしてその幸せが崩れていったという答えを知ったとき……ああ、どこも同じなんだなって思った。

 

 なによりも、くれはちゃんが姉と妹を演じさせられていたことが、演じないと生きていけなかった、そうするしかなかった自分と重なっていたんだろう。今でさえ、くれはちゃんは姉妹の影を追い続けていて自分を見失っているんだもの。

 

 私たちはただ、幸せになりたいだけ。そうでしょ?

 

「ねぇ、くれはちゃん。一緒にこの世界を滅ぼそうよ。帆奈ちゃんも賛成してくれるよ。三人であの頃みたいにやろう?」

「滅ぼす? あなたなにを言って……」

「だって、この世界は悲しみに満ちてるんだもの」

 

 カランカランと氷をぶつけて、世間話みたいに言葉を次々と続けた。返事は待たなかった。ううん、待つ必要がなかった。

 

「みんな最後は絶望に落ちていくの。私はそんな姿を見たくないし、くれはちゃんや帆奈ちゃんが苦しむなんて絶対に嫌。そもそも、なんでそんな世界があるの? どうして私たちが苦しまないといけないの? ねえ……こんな仕組みを作った世界なんて、いらないでしょ?」

 

「でも安心して。くれはちゃんは優しいから、他人を無暗に傷つけるのを嫌うのは知ってるよ。だから滅ぼすなんて言ってるけど、本当は助けるためなの」

 

「世界を滅ぼしてでも世界を救う。すごいことしちゃおう? んふふっ、どうやってかはね――」

 

 そして、とびっきりの笑顔を見せて言った。

 

「人類が生まれてこなかったことにすれば、誰も絶望で終わらない。始まらなければ、終わらないよね」

 

 それが私が望んだ滅びの計画。憎いこの世界をゼロにして恨みを果たし、私達みたいな悲しみを生まないようにする最良の救済。

 

 もう誰も悲しまず、もう誰も絶望しない。

 だって、最初からそんなものなければいいんだもの。

 

「みことッ!」

 

 くれはちゃんは席を立って私に詰め寄った。

 ちょっとびっくりしたけど、その行動は想定内だ。簡単に認められはしないことも、今まで見てきたからよくわかる。私だって、なんの理由もなく滅ぼそうなんて思わないもん。

 

「うん、言葉だけじゃ伝わらないよね。私も簡単にわかってもらおうとは思ってないもん」

「私が認めるわけないでしょう……!?」

「ううん、くれはちゃんなら信じてくれるよ。だってくれはちゃんだもん」

 

 じゃじゃーん、と擬音を付けてみて、心の中を操作する。周囲の景色がフッて消えて真っ暗になった。

 今は記憶の領域も自由に操れる。それで信じさせることもできるけれど……友達にそんなことはしたくない。

 

 現実のくれはちゃんの身体は、呼び寄せた株分けの鏡の魔女の結界の最深部に移した。果てなしのミラーズと繋がってるここなら鏡で色んな物が見られる。あとは暗闇に投影するだけだ。

 

「でね、帆秋くれは進化計画って名前にしてみたの。鏡を通して色んな絶望を見たら、きっと賛成してくれる。こんな世界滅ぼしたほうが良いって思うはず」

 

 外から他の魔法少女が入ってきているし、現実じゃそんなに時間はない。

 でもここは心の中。時間なんて概念はなくて、好きなだけくれはちゃんと過去を見渡せる。心配することなんてなにもなかった。

 

「じゃあ、くれはちゃんの心の中で大きな領域を占めてるこれから見よっか」

 

 "それ"を選んだのは単なる気まぐれ。くれはちゃんが気にしてる事柄が、偶然にも鏡が繋がる歴史の先にあっただけのこと。

 

 手を一振りすると周囲の景色がガラっと変わる。

 そこは古い町並みでなんだか昔のヨーロッパみたい。たくさんの人が火を眺めている光景はお祭りみたいだけど、その火の上には磔にされた女の子がいて、だんだんと業火が迫っていた。

 

「え、タ、タルト……?」

 

 ここから始めよう。くれはちゃんと一緒に――()()()()()()()の旅路を。

 

 




■今回の内容
 瀬奈みこと 魔法少女ストーリー 1話『出会ってしまったふたり』(一部分)
 瀬奈みこと 魔法少女ストーリー 2話『偽りの中で』(一部分)
 瀬奈みこと 魔法少女ストーリー 3話『夜になる前に』(一部分)
 第二部第8章『夢のなごりに芽吹く花』(一部分)

■瀬奈 みこと
 鏡の魔女。この小説におけるガバの全てであり、第二部を走らなければならなくなった原因。
 くれはちゃんが帆奈ちゃんの友人だったら面白くない? と迂闊に設定したが最後、名前付きの立ち絵もないモブだったのが実は第二部ラスボスで終盤までの道筋が決まってしまった。なんで?
 
 実際に出てくる前に書いた後日談の内容が奇跡的にだいたい合ってた(鏡の魔女・精神の中にいる・本人にしか見えない・記憶が生んだ人格・ミラーズを動かせる・イブ戦がキー)のでリカバリーできた。リカバリーはねぇ、自信あるんですよ!

■ひめなのスマホ
 この先起きる現象の原因。サーシャがひめなを連れてくるのを止めるとここも止まる。
 物理的に破壊すれば良かった……とは、第二部まとめイベント『むすんでひらいて座談会』でも言われている。なので破壊。

■くれはちゃん
 観鳥さんやみことちゃんなど関係する人物が第二部でイベントが発生することに。
 最初は第一部しか考えてなかったので、名前を被らせた結菜さん以外の第二部のネタが少なくなると思っていたらむしろ増えた。なんで?

■帆奈ちゃんの固有魔法
 本当は『上書き』じゃないだとかそんな設定はない。
 せっかくなので第一部と後日談で出した捏造設定を再利用。二次創作! 二次創作です!

■せなみこの行動
 『さよならさえ言えなかった夕暮れ 後編』で既に想いのコピーみことが「くれはちゃんは失うことに耐えられない。だから失うことのない世界が必要なの。それに、手に入れてないものは失えない」と言っている。
 じゃあ最初から存在しなければいいし、原作通り人類生まれなかったことにするか!
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