マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート15 散花愁章 前編

 

 魔法少女に連絡を取り続けるRTA、はーじまーるよー。

 

 鈴音の一件以降随分と平和です。嵐の前の静けさってやつならいいんですが……。

 平穏は気持ちいいですね(建前)、タイム的に気持ちよくはない!(本音)

 

 とっとと成功させるべきイベントが発生してくれないと困ります。最終盤で一気に全部とかやられたら無理です。

 

 そういうわけでおーす観鳥さん! なんか情報ない?

 

「……珍しい。今日はブロッサムじゃないんだね。最近は特に聞いてないけど」

 

 (イベントは)ダメみたいですね。

 今下手に動くわけにはいかないしどうすっかなー俺もなー。近場で信頼度を上げるかゲーセンでリズム力を鍛えるかのどっちかですね。

 

 

 ではゲーセンにでも……おっと電話。みゃーこ先輩です。

 もしもーし。

 

「帆秋、衣美里が倒れた。怪我は無いみたいだが……週末の化学イベントは中止にするかもしれん」

 

 おっ、やべぇ、110番だな! いやちょっと待ってください。これはもしかして……もしかするかもしれませんよ?

 ってまた電話です。

 

「ほ、帆秋さん! 今ウォールナッツですけど、胡桃さんが倒れてるみたいで!」

 

「くれセンパイ!? れんちゃんが!」

 

「帆秋さん……このみちゃんとかえでちゃんが……!」

 

 あーもう(通話履歴が)めちゃくちゃだよ。これもうどこから手をつければわかんねえな?

 

 神浜の魔法少女がえらいことになってますが、これはもう間違いなく失敗してはいけないイベントその4『散花愁章』です。

 以前も解説しましたがここで確実に『更紗(さらさ) 帆奈(はんな)』に登場してもらいます。この絶好の機会を逃すと雲隠れされ、神浜で混乱を招きます。

 

 このイベントはこのようにコンビの片方やチームメンバーが狙われます。他の場合だとまさらに対するこころ、雫ちゃんに対するあやかとかですね。

 帆秋ちゃんはなぜかまたこのみちゃんがやられてしまいました。信頼度は観鳥さんも高いはずなんですが……お前ひょっとして……あいつのことが好きなのか?(青春)

 

 この混沌とした事態を引き起こしたのがその帆奈です。

 彼女の固有魔法、『上書き』は一度に一つだけですが、近くにいる魔法少女の固有魔法をコピーします。鈴音に似ていますが、倒した魔女限定のような制限もない強力な魔法です。

 

 そのため、このイベントでは絶対に美雨を帆奈に会わせてはいけません。序盤なら大丈夫ですが、終盤だと対鈴音で猛威を振るった『偽装』をコピーされて逃げられる恐れがあります(3敗)。

 

「行こう、帆秋さん。これはあの昏倒事件に関係してるかもしれない」

 

 観鳥さんの言う通り、まずは倒れたという魔法少女の状態を聞きに行きましょう。場所はまあ……みゃーこ先輩のとこにしときましょうか。参京区に行くのが一番早いというだけですね。

 

 

 警察だ!(挨拶)

 相談所に来ましたがみゃーこ先輩しかいません。いつも大体誰かいるのに寂しくて悲しいなぁ……。エミリー先生の仇、とってやるぜ!

 

「……来たか。調査だな?」

「うん。……今はもう病院みたいだね。帆秋さん、どうする?」

 

 当然聞けることを全部聞いておきます。エミリー先生のその日の行動、発見時の状態、みゃーこ先輩のアリバイも確認しておきましょう。他の魔法少女に疑われたときに使えます。

 ここでは確認を済ませればそれ以上用はありません。次の場所に向かって話を聞くか、調整屋に行きたいところですね。

 

 でもまた電話です。(料金は)お、大丈夫か大丈夫か。

 

「……夕方、水名神社に来てくれる? 今何が起きているかあなたなら知っているでしょ?」

 

 やちよさん! 七海やちよさんじゃないか! 随分と久しぶりですが、呼び出し食らったので素直に従いましょう。

 水名神社にイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 既にやちよさんとこのはがいますね。アザレア組……あっ(察し)。

 

「くれはまで呼ばれたの? 七海やちよ、これは……」

「単刀直入に言うわ。昏倒事件がまた起きた。しかも今度は噂通りの状態になっているのが七人よ」

「七人!? なんでそんなに……!」

 

 14万!?(お約束)。

 やちよさんもなかなか行動が早いですね。ももこ辺りから連絡を受けて行動しているんでしょう。

 

 聞いた話を合わせて考えますと、今回狙われたのはエミリー先生、こころ、あやか、まなかちゃん、かえでちゃん、れんちゃん、このみちゃん……多すぎ……多すぎない?

 この分だと対応するみゃーこ先輩、まさら、雫ちゃん、莉愛様、レナ、ももこ、梨花ちゃんが動きそうです。このみちゃんはほら、かえでちゃんとかこちゃんなので……。

 

「……今日の葉月さんの行動を教えて」

「いいけど……少し前のことで話があるからってななかさんのところへ行っただけよ。それと帆秋さんにも用があるからってブロッサムに行って、あとは次の料理教室の内容をウォールナッツに聞きに行くって……」

「……参京区の相談所。ブロッサム。ウォールナッツ。被害者は全員そのどれかに関係しているか、そこの近くで見つかっているわ」

「なにが言いたいの?」

 

 なんで葉月の行く先々に被害者がいるんでしょうねぇ。

 雲行きが怪しい……怪しくない?(すっとぼけ)

 

「落ち着いて聞いて。今疑われているのは葉月さんらよ。関係性をよく知らない子たちの間で前の噂が再燃してる。そしてもう一つ……あなたたちを一番追いかけているのが帆秋さん、あなただという噂もある」

 

 えぇ……(困惑)。こっちの噂は特に関係するものじゃないんですが……でもよく考えると帆秋ちゃんって被害者全員と知り合いですね。なんだこいつの交友関係の広さ……そりゃなにも知らないと一番疑われるか怒ってるかのどちらかだと思われますね。

 もちろん違うと否定しておきましょう。ここまで散々このはとの信頼度を上げているので信じてくれます。

 そしてここで帆秋ちゃんのその無駄に広い交友関係が活きてきます。モブ魔法少女までは止められませんが、知り合いの魔法少女ならアザレア組への疑いを止められます。

 

 そんな感じで今日のとこはお開きです。明日から知り合いに片っ端から説明します。ここからしばらくアザレア組と連絡を取るのが難しくなるので気をつけましょう。

 

 

 

 おはよーございまーす!

 本日は観鳥さんと調査を……。

 

 まーた電話です。履歴がもうすっげーことになってんぞ。

 

「帆秋さん、葉月さんの件でお話があります。調整屋に来ていただけますか」

 

 ななか怖いでしょう……。呼び出しされまくるとか厄日だわ!

 でもあの組長なので最優先で向かいます。というか場所が調整屋なので好都合です。どうせ行くところでした。

 

「いらっしゃ~い。あ、もう来てるわよー」

「……今起きていることについて、お聞きしたいことがあります」

 

 ななか組長が昏倒事件についての推測を話す場面ですね。ななか組が結成された理由が『飛蝗』と呼ばれる同一の魔女を倒すためということも言われますが、ここの内容は特に必要ないのでスルーして大丈夫です。

 

 ここで必要なのはみたまさんから『暗示』を使う魔法少女がいたという話を聞くことです。

 この『暗示』は他人や魔女を従わせられるものです。同系統だと『洗脳』や『言霊』などがありますが、『暗示』は命令を聞かせる以外の制限が無いに等しく、強制力まで非常に高い厄介な固有魔法ですね。

 

「帆秋さん。あなたに聞きたいのはこの人物に覚えがないかどうかです。多くの魔法少女と知り合っているあなたであれば聞き覚えがあるのではないですか?」

 

 あるわけないんだよなぁ……。みたまさんが誰から教えてもらったかを言ってくれるので、その子を教えてくれた人物、『和泉(いずみ) 十七夜(かなぎ)』にななか組長が会うようにすればここは大丈夫です。

 

 では展開的にこの『暗示』を使う魔法少女を探すことになりますが……別に組長に付いていかなくていいです。組長から話を聞いた十七夜ことなぎたんが行動を起こすので、後日、神浜大東団地に向かいます。こうすることで別行動の時間を作れます。

 

 

 

 オッス元気かみとちゃん! 団地組が心配だったから団地に来たんだよ!(先輩魔法少女の鑑)

 

 予想通り団地組以外にもう一人いますね。大東学院の制服ですし間違いありません。超イケメン魔法少女和泉十七夜さんです。

 しかし、みとちゃんが『なぎたん』と呼んでいますね。これは彼女がメイドカフェで働き始めているということです。……ということは『駆け出しメイド十七夜』が終了している可能性もあるわけで、つまりあのピーヒョロ姉妹がもう白羽根になっているかもしれません。マギウスの翼がそろそろ増え始めますね。

 

 なお、このなぎたんは東の顔役です。アイサツをしないとスゴイ・シツレイなので懇切丁寧に挨拶しておきます。

 

「久しいな帆秋君、団地で偶然会って以来か。観鳥君は息災か?」

 

 なぎたんはなに言ってんでしょうね。帆秋ちゃんの経歴になぎたんはいなかったはずですけど見落としました? ……やっぱりないですね。どこかで会いましたっけ? まま、ええやろ。

 

 この人が団地に来た理由は『暗示』の魔法を持つ『瀬奈 みこと』を探すためです。記憶がおぼろげでみたまさんと話したことでやっと思い出したらしく、住んでいたはずの団地に来たんですね。

 しかし、彼女は家族ごと失踪しています。12号棟の話と被りますが、あの家族の名字は瀬奈ではありません。ますますわかりません。

 

 しかもなぎたんはまだなにか忘れているようです。『暗示』がかけられている可能性があることを示唆してあげましょう。関係することを見れば思い出すことを示してあげれば信じてくれるので、団地の時に調べた失踪した子の団地への思いを聞かせてあげます。

 

「……そうだ、瀬奈君からもう一人魔法少女を紹介されたんだ……!」

 

 これでなぎたんの記憶が一つ戻ります。ですが一々こんなことをやってられないので一気にやっちゃいましょう。みとちゃんの『心を繋ぐ力』で直接記憶を見れば万事解決です。みとちゃん! 好きッス!

 

 

 わぁ、これがなぎたんの記憶の中ですかー。団地の屋上がありますねー。こんなに一発で来れるなんて思わなかったぁ。

 ここは黒い霧で隠されていたところで、向こうに記憶のなぎたんがいるんだ。今から、そこへ行こうよ。

 

 

「あれが記憶の中の十七夜さんだね! じゃあ話してるのが……」

 

 瀬奈みことですねぇ、ええ。その隣にいるのは一体誰なんでしょうね(すっとぼけ)。

 しかし『暗示』のせいでわかりません、なぎたんが固有魔法の『読心』を使って無理やり知ろうとしますが、同系統の魔法の影響でみとちゃんの魔法が解けてしまいます。

 

 それでも、たった六文字ですが記憶を引き出すことに成功します。それが『サラサハンナ』です。一体誰なんでしょうね(すっとぼけ)。

 

 あとは調整屋でなぎたんにかけられた『暗示』を解除するだけです。ここまで来ればもうちょっとですね。

 

 みとちゃんに話しかけられましたが今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二度目の昏倒事件を聞いた私は、あきらさん、美雨さん、かこさんの三人に連絡を取りました。結果は全員無事。とりあえずは一安心でしたが、すぐに集合して状況を確認することにしたのです。

 

 集まった面々から話を聞くと、既に数人の知り合いの魔法少女が被害に遭っているらしく、その中には一度目に狙われたこのみさんまで含まれていました。

 

「……知っているとは思うが今疑われているのは静海このはたちヨ」

「私はこのはさんらが犯人とは思えません……一度目も疑われてるのに……。それにこの前は葉月さんとも協力したんですよね!? なのに事件を起こすなんておかしいです!」

「ボクも同じだよ。絶対に誰かが裏にいる。エミリー先生だって狙われたんだ……真相を突き止めようよ!」

「落ち着くネ。私情じゃなくて、事実で判断すべきヨ」

 

 確かに二人とも私情が先行していますが……今回に限っては賛成するべきでしょう。

 そもそもこの一連の事件、裏になにかがいるのは一度目の事件からわかっていました。そのときはまだボヤけたイメージでしたが、今は確かに私の固有魔法が反応している。

 

 これは、私たち四人が追う魔女『飛蝗』が関与していると。

 

 華心流の高弟を惑わせ、常盤家から全てを。私から父を奪った。

 かこさんの家の地上げを行わせ、遂には放火させた。

 あきらさんの後輩や多くの人間を毒牙にかけた。

 美雨さんが属する蒼海幣を脅威にさらした。

 

 関与を告げれば、全員が目の色を変えた。そう、それだけの相手なのです。

 だからこそ、もう一つ告げねばなりません。しかしここではなく――

 

「帆秋さん、葉月さんの件でお話があります。調整屋に来ていただけますか」

 

 

 調整屋で私たちを迎えたのは、みたまさんといつものように落ち着き払った帆秋さんでした。今回はこのみさんだけではなく、他にも多くの知り合いが狙われたというのに変わらないその姿は頼もしささえ覚えます。

 

 私たちが『飛蝗』を追っていることや今起きていることの共有を済ませたあと、まず告げたのは()()()()()()()()()()()()についてです。

 

 確かに『飛蝗』は存在します。私たちが受けた被害も全てその仕業です。しかし……それは、魔女に操られた人物によるもの。この事件に潜んでいるのなら、魔法少女のみを狙って昏倒させ続けるなどという真似をするでしょうか。もっと一般人に被害が出るようなやり方になるはずです。

 

 そう、魔女にしては()()()()()()()。かつてこのはさんが見たという幻覚、流された噂、追われるように仕向ける手口……全てが回りくどく、魔女らしくない。

 

「あっ! もしかして……魔女を操る魔法少女がいるって考えてる!?」

「……ご明察」

 

 それはつまり、魔女を操り害をなす裏切り者とも言える存在がいること。その可能性に気づいたみなさんの表情は信じられないものを見たような表情でした。

 

 そして、この魔法少女はこのはさんたちではない。そもそも私の『敵』だと反応していませんし、三人の固有魔法では不可能なのですから。

 

「お聞きしますが……」

「そういう子がいるかって話でしょ? 残念だけど知らないわよ~、くれはちゃんもよね?」

「ええ、知ってたらもう問い詰めてるわ」

 

 この返答は想定内でした。知っていたならすでに情報が知らされていてもおかしくないのですから。それに前の一件での帆秋さんを見れば、犯人を知っていたら即座に向かっていると想像できます。

 ゆえに、本命は『人心を操る魔法かそれに類する力』を持つ魔法少女がいないかどうかを伺うことでした。その結果、しばらく悩んでいたみたまさんから『暗示』を使う魔法少女がいたことを聞き出せたのです。

 

 そして、今ここに帆秋さんを呼んでいた理由がそれでした。

 

「帆秋さん。あなたに聞きたいのはこの人物に覚えがないかどうかです。多くの魔法少女と知り合っているあなたであれば聞き覚えがあるのではないですか?」

「……ない」

 

 否定の言葉は歯切れが悪い。……嘘をついているわけではないでしょう。彼女は真顔で冷静ですが、嘘かそれに類することを言うと、もしくは誤魔化そうとすると目が泳いで露呈するのですから。

 ……それにその顔は、痛々しいほどに悲しみを帯びていたのです。

 

 

 その後、その人物を教えてくれた人を教えると言うみたまさんに紹介されたのが『和泉 十七夜』さんでした。

 メイドカフェでアルバイトをしている十七夜さんが話してくださったのが、『瀬奈 みこと』という魔法少女と『暗示』という魔法。彼女は悪事を働くような人間ではないが、家族ごと失踪してしまっていること。そして、彼女が住んでいた場所だと伝えられたのが――『神浜大東団地』だったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 その日、私はあの頃のように団地の公園で二人に会っていた。

 でも、話の内容はいつも通りじゃない。噂になっている昏倒事件のことだった。

 

 一度目に起きたっていう事件のことは知らない。れいらと私はもちろん、せいかだって魔法少女になってたかわからない。だから噂通りにこのはさんたちが犯人だとは思えなかった。

 

 被害を受けたって人たちは、私たちが知っている人もいた。

 あのおいしいケーキの作り方をれいらに教えてくれたまなか先生。せいかが人見知りを克服しようとして話したあやかさん。そして、あの日海浜公園で偶然出会ったこのみさん。

 

 その人たちだけじゃない。みんな優しくて良い人。このはさんたちだって同じ。

 だから私たちは真犯人を見つけよう! って決めたんだ。

 

 けどどう動こうか、って話になったときにれいらが言った。

 

「それとね、もう一つ聞いたことがあるの。最近、変わった子が団地に出入りしてるんだって」

「ねえ、それくれはさんじゃ……」

「いやさすがに二回も不審者みたいなことはしないと……思えない……」

「だよねー……」

 

 確かに三人ともそう思ったけど、現れ始めたのがこのはさんの噂を聞いたときと近くて、しかもその人は12号棟の失踪事件のことを質問してたって聞いてやっぱり違うなってなった。だって一緒に調べたことだし、わからないことがあれば私たちに聞けばいいんだもん。

 

 じゃあまずその人を調べてみよう! ってまた決めて、団地の中を歩いてみる。

 こうして歩くのも久しぶりで楽しくて、気がついたら団地の商店街に着いてた。

 

 けどそれで正解。なんでも今、その変わった子が喫茶店のマスターから話を聞いてるんだって。

 だから待ち伏せしてたんだけど、喫茶店から出てきたのは――

 

「な、なぎたんだーっ!」

「相野君? それに二人まで……自分に用か?」

 

 私はなぎたんって呼んでるけど、この『和泉 十七夜』さんはメイドカフェで出会ったメイドさんなんだ! ひみかさんと同じ大東学院だからかそれからも何回か出会ってる魔法少女の知り合いなの。

 

 なぎたんは『瀬奈 みこと』っていう私たちよりも先に魔法少女になった団地に住んでる子を探してた。『暗示』ってすごい魔法を持ってる子。

 その子は急に消えちゃったんだって。でも失踪事件の家の子は『瀬奈』じゃない。ニュースでもやってたことだからなぎたんもそれは知ってたんだけど、それでも手がかりがないかと思って調べてたみたい。

 

 ……けど、その子のことは初めて聞いた。先に魔法少女がいたなんて知らなかったし、なぎたんの力にはなれなさそう。

 

 そう思った時、前に何度か感じた視線をまた背中に受けた。

 

「……先客ね」

 

 聞き覚えのある声に振り向くと、そこにいたのはやっぱりくれはさん! またメロンパンが詰まったビニール袋を持っていて、れいらが苦笑いしてた。

 やっぱり調査に来たのかなって思ったんだけど、その姿を見て一番最初に声をかけたのはなぎたんだった。

 

「久しいな帆秋君、団地で偶然会って以来か。観鳥君は息災か?」

「くれはさん、なぎたんと知り合いなの?」

「あー、そう言われるとそうっぽいよね……」

「……誰?」

「むっ、確かに一度しか会ってないが……そう言われると心外だぞ」

「いや本当に」

 

 人違いじゃないかって聞くくれはさんだったけど、その時もメロンパンを持ってたらしいからやっぱり間違いじゃないみたい。そんな特徴に当てはまる人って他にいないと思うなぁ。

 

 真顔で首をかしげて納得がいかないみたいだったけど、くれはさんはなぎたんの話を聞いた。それは私たちと同じ内容だったけど、失踪事件の辺りで引っかかることがあったみたい。

 

「それ、『暗示』がかかってるってことはない? 消えたと思い込まされてるとか」

「……自分もそう考えていた。最初は八雲から話を聞いて思い出したんだ。なにか関係することがあればもう少しわかるかもしれん」

 

 でもそんなものあったかなって思ったんだけど、くれはさんが失踪した子を見れるものがないかって聞いてれいらが気づいた。そうだ、その子が映ってる動画があったんだ!

 その子が別人だって思い込まされてるのかもしれないし、少しでも思い出せればってスマホでそれを見せた。

 

 動画がだんだんと進んで、その子が言うのは団地が好きな理由。

 

 公園での友達との楽しいおしゃべり。

 夕方になると漂う美味しそうな匂い。

 屋上から見渡す気持ちのいい景色。

 

 なぎたんが反応したのは最後の言葉だった。

 頭を押さえてて、見るからに具合が悪そう。汗もひどくて、せいかが差し出したハンカチを受け取りながらゆっくりと言ったんだ。

 

「……そうだ、瀬奈君からもう一人魔法少女を紹介されたんだ……!」

 

 これではっきりした。やっぱりなぎたんは『暗示』で記憶を封じられてるんだ!

 そしてピカーンと閃く。魔法の力と記憶なら私が力になれるかもしれない! 前にれいらとせいかと心を繋いだ他にも、くれはさんの記憶を覗いたりもできた。だったら直接見てみれば……!

 

 閃きを伝えたら、れいらとせいかはその手があったか! って感じで納得してなぎたんは驚いた。くれはさんは……うん、変わってない。

 

 そうと決まれば即行動。さっそく手を繋いで魔法を使った。

 

 なぎたんの心の中に沈んでく。関係するところ以外は見ないことって言われたから慎重に探してみようとしたんだけど、団地の記憶の近くで明らかにおかしなところがあった。それは黒い霧で包まれてるとこ! ……黒い霧?

 

「団地の屋上……ここだ。間違いない!」

「すごいよみと……! 一発なんて!」

「う、うん……」

「あれが記憶の中の十七夜さんだね! じゃあ話してるのが!」

 

 なぎたんが言った。昔のなぎたんと一緒にいるあの女の子が『瀬奈 みこと』なんだって。

 その子は結界で偶然出会って助けてもらったみたいでお礼を言ってた。でも話してる内容が時々聞こえないんだ。音にノイズが入るみたいに途切れちゃう。

 

『だよね――。私の魔法、どういう使い方があるか今一緒に研究してて――この子――もうすぐ――』

「誰だ……誰がそこにいる!」

 

 姿がないけど、間違いなく誰かがいるんだ。でもなぎたんが変身して魔法を使ったら弾かれたみたいに現実に戻っちゃった。

 なんでもなぎたんは『読心』って魔法を持ってて、それで記憶の中の自分の心を読もうとしたから反発して解けちゃったらしい。けど、少しだけは読めたんだって。

 

「六文字。『サラサハンナ』とだけだが、確かに聞こえたぞ」

「……これで調査が進展したわ。みと、お手柄よ」

 

 それは人の名前みたいな言葉だった。わかっただけ進んだんだろうけど……。

 くれはさんはそれで用が済んだみたいですぐに帰ろうとしたけど、私が呼び止めた。まだ、見てみなきゃいけないものがある気がする。だから言わないと。

 

「なぎたんの記憶の黒い霧なんだけど……実はくれはさんの心の中でも見たんだ」

「……え?」

「あの時はよくわからなかったんだけど、今なら同じものだってわかるんだ。その記憶に『サラサハンナ』の手がかりがあるかも!」

「……うむ。もしかすると、それで自分を忘れていたのかもしれない。やってみる価値はあるぞ」

 

 珍しく困惑するくれはさんの手を取ってみんなと繋ぐ。そして、魔法を使った。

 

 

 それで飛び込んだら……あの魔法少女になった日、屋上で見たものと同じ。やっぱり団地のイメージの近くに黒い霧がある。だから入ったんだけど――

 

 

 見えたのは、途切れ途切れに聞こえる誰かの声とバラバラの景色。どこかの路地裏、喫茶店、屋上。そのどれにもくれはさんがいて、他にも誰かがいる。

 

『私たち――って言ったでしょ? それでこの人は――。私と――だよ? ――三人で――』

 

『遅い――もう――お前――いい加減――』

 

『あ――なんで――手遅れ――』

 

 そして最後に見えたのは、魔法少女みたいな子が魔女に変わる瞬間だった。

 あまりにも信じられない光景で魔法が制御できなくなって、すぐに世界が現実に引き戻された。

 

 

「ね、ねえ、アレなんなの!? なんで魔法少女から魔女が!」

 

 わからない。わからないよ。

 

 でも、わからないけど怖いものに怯えるよりも、わかってるものが変わったことのほうが身近に感じられて怖かった。

 だって、いつも真顔でクールに見えるくれはさんがその表情を崩していたんだ。顔が青ざめて、汗がすごくて今にも倒れそう。

 

「……そう、だった。帆奈、みこと……私は、あなたたちを……!」

 

 最後に風に消えるように聞こえたのは、「救いたかった」というか細い声だった。

 

 

 




■今回の内容
 『散花愁章』

■更紗 帆奈
 コピー能力持ち魔法少女。神浜のやべーやつ。
 ななか組が結成されたのもアザレア組が昏倒事件に巻き込まれたのも団地組が魔法少女になったのも全部こいつのせい。

■瀬奈 みこと
 帆奈と仲良くできた良い人。しかし立ち絵がモブ。
 団地に住んでて屋上が好きで魔女化した。

■帆秋ちゃん
 開始前に友好関係を築いておくというミラクルを起こす魔法少女の鑑。
 だから無駄に狙われた。やっぱりダメじゃないか(呆れ)。

■名前の由来
 帆秋くれは = 更紗「帆」奈+「秋」野かえで +「紅晴」結菜
 不穏要素で挟まれるかえでちゃん。

■なんで解けたの?
 ・一度だけ会ったなぎたんですら思い出すので何度も会ってた人の記憶へは効力が弱まるはず。
 ・関連することを聞くと思い出す。『瀬奈 みこと』と『サラサハンナ』がクリティカル。
 ・みとちゃんのおかげ。
 ・友情パワー。
 ・話の都合。
 ちなみにここに前回の千里がいると一瞬で解決する。バランスブレイカー。


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