マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート17 セーラー服とメイド服

 

 状況確認を怠らないRTA、はーじまーるよー。

 

 いやあ強制発生は強敵でしたね。(くれはちゃんのイベントを)やられてしまいました。まさかこんなに強引だとは思わなかったんでね、次回は(回避を)お願いします。

 

 おかげでこのみちゃんとの予定が強制的に入ってしまいました。簡単に説得できたと思ったらこれとかなかなか……難しいねんな。

 しかしくれはちゃんのイベント、条件的には帆奈ちゃんを生存させないと発生しないタイプでしたね。この分だと残りも似たような期間限定系かもしれません。一度でも逃せば不可能になるので変なことをしなければこれ以上発生しないでしょう。やったぜ。

 

 それで入ってしまった予定ですが、せっかくなので利用します。ちょうど普段行かない場所に用事があるのでそこに連れて行けばいいでしょう。帆奈ちゃんは知り合いの魔法少女に預かってもらって合流しましょ。

 

 今日タァイムはどう? 待った? 待たない?

 

「ううん、私も今来たところだから」

 

 あ~ら良い子だねアンタ! 

 ちなみにここまで信頼度があると遅れても大丈夫です。本人の性格もあるので、その辺りはチャートを確認するようにちゃーんと確認しておきましょう。

 

 じゃあ早速出かけるぜ! 楽しみにしててくれよな!

 

 

 

 

 

 たのもー!

 

「むっ、帆秋か」

 

 当然メイドカフェです。

 あ、そうだ(唐突)。なぎたんの信頼度が上がって呼び方が変わりました。細かい点ですが嬉しい仕様ですね。

 

 なぜ来たかと言いますと、みとちゃんの『なぎたん』呼びの理由を解明するためです。

 それともう一つ。前も言いましたが、実はなぎたんがメイドカフェでアルバイトをした後にピーヒョロ姉妹がマギウスの翼に加入します。電波を用いた勧誘が始まるのも確認できますね。なのでその辺の情報も会話で出てこないかという狙いもあります。

 

「こ、ここ、こういうお店だったんだ……」

 

 来たことないとかウッソだろお前!? 『駆けだしメイド十七夜』は終了していなかった……?

 このイベントはなぎたんがメイドとして働く理由が関係するものなのですが、RTA的には特に必要ないのでスルーしてました。成功でも失敗でもここで働いたということさえわかれば問題ありません。しかしなぎたんがホールにいるので成功してるとは思いますが、このみちゃんが参加しなくても成功するのか……(困惑)。

 

「帆秋の知り合いは来たことがあるぞ。確か画伯……御園君とも知り合いだったな?」

 

 これにはかりんちゃん以外にもおそらく団地組も含まれています。この辺は結構ランダムですが、かりんちゃんは必ずここに来ます。ここまでに出会えていないならひたすらメイドカフェに通うのもいいですね。

 

 メイドカフェなので注文して適当に会話を進めますが……特に情報が出ません。こんなんじゃデートになんないよ~。なぎたん呼びの理由はここで働いてる時点でわかりましたがそれだけです。この場合はピーヒョロ姉妹を探しに水名区か工匠区でまた張り込むことになります。

 

「……帆秋、バイトの後に来てくれ。話したいことがある」

 

 行きます行きます(食い気味)。耳打ちしてくれて助かりました。下手にこのみちゃんに聞かれたら余計な情報を与えてしまう可能性があります。

 

 これで用は済みました。あとは適当にこのみちゃんを連れ回しつつ、やれることをこなしていきましょう。まあ、ゲーセンでしょうね。(優しいのでどこに行っても)すぐ嬉しがられますけどもね。

 

 では夜に予定があるのでこの辺で切り上げます。あのさ、俺……明日バイトなんだよね。

 

「うん、じゃあまた明日!」

 

 そうだった(小並感)。

 

 

 

 そういうわけでなぎたんに会いに来ました。さすがにもうメイド服ではないです。

 おうおうこんな夜に何の用じゃ!

 

「最近、神浜で魔女の活動が活発になっていることには気づいているな? その警告は東の魔法少女には自分から、西の魔法少女には七海から言えるが……帆秋には都と協力して他を任せたい」

 

 なんすかそれ(予想外)。やっぱ南凪だからみゃーこ先輩に任せた方が良いと思います。

 とか言ってたら急ぐように言われました。凄いねぇ、脅威はどのくらいあるかな?

 

「それと……『マギウスの翼』という組織が現れた」

 

 来た、来た、来たなぁっ!?

 

 これを待っていました。くれはちゃんはここでこの名前を初めて聞くことになりますね。

 奴らとはこれから散々戦うことになります。早めに情報を仕入れておけばメインストーリーに入った際に有利に動くことができるので狙っていたんですね。魔女の増加より警戒すべきはこちらです。

 

「魔女化という運命から魔法少女を解放すると謳っているようだが、手段も規模もわからない。注意してほしい」

 

 あ、いいっすよ(快諾)。もう間違いありませんね。勧誘が始まっています。

 今後はモブ魔法少女に黒羽根や白羽根が混じり始めます。基本的に固まって行動してるので余計なちょっかいは出さずにおきましょう。いくら一般モブ魔法少女とはいえ、紙装甲のくれはちゃんでは囲んで殴られると厳しいものがあります。

 

 そしてなぎたんのおかげで『マギウスの翼』という用語を使えるようになりました。今後はこの用語を鍵にストーリーを進めていくことになります。ですがRTAなので必要なところしか使いません。

 あとこの先、なぎたんに友好的にしておくと便利な場面があるので協力は惜しまない方針も伝えておきます。

 

 それさえやればもう用はありません。帆奈ちゃんも待たせてるのでさっさと帰りましょ。

 じゃあな! マギウスってやつらに気をつけろよ!

 

 

 

 

 放課後ですがおはよーございまーす!

 

 本日は久しぶりのブロッサムです(予定調和)。心なしかこのみちゃんも喜んでますね。もう信頼度は十分堪能したよ……。

 

 ちなみに帆奈ちゃんはやっぱり預けてます。さすがにブロッサムに連れてっても仕方がないので、しょうがないね(レ)。

 今頃みゃーこ先輩が勉強を教えてるんじゃないでしょうか。くれはちゃんと同じクラスになってますが学年が違うので授業内容が結構違いますしね。それとも元水名は伊達じゃないってことで南凪より進んでるかもしれません。でも南凪は自由があるから……。

 

 いい加減同じ風景を見続けるのも苦痛だと思うので早送りでお送りします。

 20人以上、30人以下? 何人の接客したかわかんねえ。

 

 じゃあ俺、ギャラもらって帰るから(給料日)。

 

 しかし新西区から参京区に行って帰るのは地味に遠回りですね。帆奈ちゃんは相談所にいるらしいので引き取りに行きますが、駅から水徳商店街に行くのもちょっとありますからね。とっとと帰ろうぜ! 日が暮れちまうよ!

 

 おっとぉ!? 路地裏から急に出現するのは心臓に悪いからヤメロォ! 辻斬りか!?

 

「……帆秋さん」

 

 観鳥さん! 観鳥令さんじゃないか! こんな夕暮れにどうしたんだい!

 なんかイベントが発生してるみたいなので大人しく付いていきましょう。下手に動いて大ロスするよりマシです。

 

 まあこのタイミングだとマギウスの翼への勧誘イベントですね。観鳥さんは魔法少女の真実を知った後にマギウスの翼に加入しますが、その際に信頼度が高いキャラを勧誘します。

 

 もちろん拒否です。マギウスルートには特有のうまあじがあるのですが今回は利用しません。くれはちゃんの否定力、見せてやるぜ!

 ちなみにここまで信頼度が高いと引き止めることもできますが、退場した場合と同じく巡り巡ってマギウスの翼が強化される可能性があるのでやめておきましょう。

 

 なお他の魔法少女が勧誘してくる場合もありますが、観鳥さんだと拒否してもあっさり進みます。これは彼女が自分の道は自分で決めるという信念を持っているからですね。互いの道が違っただけという話で済みます。やっぱり……南凪を……最高やな!(愛校心)

 

 では帰っていく後ろ姿を見つつきちんと確認をしておきましょう。

 

 神浜魔法少女ファイルの観鳥さんの項目を確認すると信頼度表示に×が付いています。ストップの意味です。この先、観鳥さんとは信頼度イベントが発生しません。誘っても来てくれませんし、校内で会おうにもまったく会えません。悲しいなぁ……。

 

 それと今後は調整屋でドッペルや魔女化の話をするのはやめておきましょう。みたまさん経由でマギウスの翼に情報が渡り、また勧誘イベントが発生してロスしてしまいます。

 

 奴らが動き始めていることを確認できたので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日、帆秋と出会ったのは本当に偶然だ。

 

 今ならわかるが、暗示をかけられた後に遅れてやってきた帆秋と遭遇していた。

 メロンパンが詰まったビニール袋を持ってたからすぐに想像がついた。ああ、彼女が観鳥君の言っていた先輩なのだと。

 

 それからまた団地で再会するまでの間も、幾度か噂話を耳にした。

 

 南凪の不審者。料理教室の破壊者。化学イベントで後ろから見てる人。メロンパンのお得意様。ウォールナッツに週7で通う奴。ドリンクバーをハシゴする女。赤点ギリギリ。良いのは見た目だけ。……最後の方はただの悪口が混ざってるとは思うが。

 

 一度だけしか会っていない自分ではそこまで不思議な人物だとは思えなかった。

 確かに、更紗帆奈の一件で直接見た姿は前と違って逼迫していた。それが奇行を生み出す原因だとは結びつけられなかったが、不思議という点では理解ができる。

 

 更紗君のソウルジェムを預かり、あまつさえ一つ屋根の下で暮らすことを即断するなどその最もたるものだろう。いくら友人とはいえ、何度も神浜を混乱させた犯人なのだから。

 

 次に彼女と会ったのは、アルバイトをしているメイドカフェでだった。

 

「こ、ここ、こういうお店だったんだ……」

「十七夜。偶然ね」

 

 春名君を連れた彼女は、幾分か落ち着いたように見える。ちょうど自分が対応することになったのは幸運だったのだろう。伝えねばならないこともあるのだから。

 

「席まで案内する。ついてきてくれ」

「十七夜さん、手慣れてますね……」

「ここではメイドのなぎたんだ。普段もそれで構わないぞ」

「よろしく頼むわ、なぎたん」

「え、ええ……?」

 

 うむ。今ではこうしてメイドさんとしての仕事をこなしているが、最初は大事なことを理解できていなかったのだ。

 

 軽作業、コンビニ、イベントスタッフ、惣菜コーナーと多くのアルバイトをしてきたが、このメイドカフェのホールでメイドさんをしているのは金額に惹かれたからだ。これでまた少し家族に楽をさせられるのであれば、その選択をするのは当然のこと。間違っているものではないと言い切れるが、その心だけではメイドさんとしては成り立たないものだったのだ。

 

 最初に来店してくれた伊吹君達には悪いことをした。あの頃の自分はただ接客すればいいだけだと考えていて、終いには桑水君を気絶させてしまったのだから。

 

「ご主人の知り合いは来たことがあるぞ。確か画伯……御園君とも知り合いだったな?」

 

 そう、自分の足りないものを知る切欠を与えてくれたのは画伯――『御園 かりん』だ。

 

『自分の道は自分で決めるの! メイドさんに必要な心に寄り添うって多分そういうことなの!  大事なのは押し付けることじゃなくて、アドバイスをして相手の気持ちを考えることなの!』

 

 自分もそれで成長できたからと、笑顔で伝えてくれた姿は燦々と輝いていた。明るい表情は久しく忘れていた気持ちを思い出させてくれたのだ。

 

 彼女は一人じゃ魔女に敵わないと感じてチームで戦うようになったらしいが、いつの間にかチームの誰よりも強くなっていたらしい。だったら今度は自分が他の魔法少女を助けたいと基本的には一人で活動しているそうだ。……今の状況下では危険だから止めておくように伝えるべきだが。

 

 そんな画伯のおかげで自分は今ここで働いているのだ。彼女を成長させてくれた誰かにはいつか礼を言わねばならん。

 

 画伯の思いに応えるように注文を伺うと、帆秋は「しゅわしゅわくり~むソーダ」と即答した。最初から決めていたのだろう。メニューのその部分しか見ていない。

 しかし品揃えには自信があるのだ。大量の選択肢を前に春名君はまだ悩んでいるようだった。メイドさんならこんなときどうするかは決まっている。

 

「確か花が好きだったな……このページのハーブティーはどうだ?」

「わあ、こんなにあるんだ……!」

「オススメはメイドさんの特選ハーブティーだぞ」

 

 少し悩んだあと、それにするという返答。

 二人分の飲み物を持ってきたあと、定番のゲームでもするかどうか聞くが……帆秋に腕相撲を選択されたら流石に厳しいものがある。自分も全力で対応するが、最悪テーブルが割れるかもしれない。

 しかし、選択したのは『あっちこっちホイ』。あっちこっちの時は指を見て、ホイの時だけ別の方向を見る奥の深いゲームだ。真顔で視線を悟らせない動きに苦戦したが、全力勝負を挑まれてはこちらも負けるわけにはいかない。

 

 ……激戦だった。相野君程の実力者がいるとはな。

 

「なぎたんさんみたいなメイドさんって他にいるのかな……」

「自分のようなメイドをクーデレメイドというらしいぞ。何故こう呼ばれるのかはわからないが……ご主人は想像がつくか?」

「いえ、まったく。少なくとも私とは関係ない」

「……うん、くれはさんはちょっと違うと思う」

 

 その後もメイドさんとしての接客は続いた。楽しんでくれているようで良かったぞ。

 だが、二人が入店してきた時から変わらぬ懸念がある。

 

「あまり表で言うべきことではないが……更紗君は今どうしてる」

「ひなの先輩が預かってるわ。今頃水徳商店街に行っているはずよ」

「そうか。だが注意はしておいてくれ」

「……帆奈は大丈夫よ」

「あの、二人とも。あのね、すごい大事なお話なのはわかるんだけどね。その、ハートのストローを咥えた人とメイド服の人が話してると雰囲気が、ね?」

 

 あの時に言ったな。同じ運命を背負う、と。その意志は玲瓏たるものだ。

 運命は遺伝と境遇と偶然の産物。遺伝は変えられん。だが、境遇と偶然はまだ変えられる。……そう信じたいが、されどその道は険しい。神浜に根付いた東西の意識と同じように。

 

 その身を捨てる覚悟はあるか? 悪意というものは朧気で些細な物事から生まれ、どこまでも粘り着く泥。誰しもが秘めるそれをお前は背負えるのか?

 八雲を知ればわかるだろう。人は、良くも悪くも変わるものだと。お前は更紗帆奈を引き寄せるのか? それとも――

 

「なぎたーん! 写真お願いしまーす!」

「うむ。なぎたんにお任せ、だぞ!」

 

 ……やはり、ここで話すべきことではないな。メイドさんとしてもその選択はしてはいけない。

 

「帆秋、バイトの後に来てくれ。話したいことがある」

 

 

 

 

 

 

 耳打ちした通り、帆秋は一人で夜の公園にやってきた。更紗君はどうしたかと聞くと、ソウルジェムが身体を操作できるギリギリの範囲で待機させているようだった。

 

 最初に話したのは最近の魔女についてだ。段々とその数と力を増してきている。前々からその傾向はあったが、特に顕著だ。眞尾君や団地の三人は既に伝えたが誰もが実感している。

 

 前の一件で七海とは連絡を取るようになり、この話はしてある。だが中央は手薄。まだこのことを知らない魔法少女を救うためにも都と協力して伝えてほしいと伝えると、少し悩んでいるようだった。

 余計な混乱を引き起こすかもしれない、という不安は理解できる。しかし知らなかったことで命を失う者を出すわけにはいかない。今できる最善を果たさねばならないのだ。

 

 最後には首を縦に振ってくれた帆秋には感謝しなければ。今からする話のためにも。

 

「それと……『マギウスの翼』という組織が現れた」

 

 自分がその名を聞いたのは先日のこと。魔法少女になる前からの知り合いから勧誘されたのだ。

 魔女になりたくない、まだ叶えたいことがあると言う彼女は手段もわからない夢物語に乗せられていた。誰しも魔女化の真実に耐えられるものではないとは思っていたが、マギウスの翼とやらはその感情を利用して何かを行おうとしている。だから諭そうとしたが、言葉は届かなかった。

 彼女はすがりたかったのだ。東で育った境遇から解放されないなら、せめて魔女化の運命からは解放されたかったのだから。……ここでもそれか、と思ったものだ。

 

 その組織についてわかっているだけのことを共有している間、帆秋は目の色一つ変えなかった。

 

 彼女は親友を魔女化により失っている。二人だけで話したかったのもそれが理由だ。

 ――自分は、彼女も『マギウスの翼』にすがってしまうのではないかと危惧していた。もう二度と同じ理由で友人を失いたくないと、彼女ならば思うのではないかと考えていたのだ。

 しかし、恐ろしいほどに平然としている。今更そんな話は関係ないと言わんばかりの目で見つめてくる。

 

「帆秋、一つだけ聞かせて欲しい。……君はマギウスの翼を信じるか?」

「いいえ。そんなあやふやなものに私たちの運命を預けられるわけないでしょ」

 

 やはり、覚悟を決めているのだな。背負うというあの言葉はでまかせの類ではない。

 

 そして帆秋は境遇を変えるため、神浜を守るために協力をしてくれると言ってくれた。その言葉、嬉しくは思うが……何か不吉な予感が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 後日、更紗君の様子が気になった自分は水徳商店街にやってきていた。聞いた話では相談所の近くで魔法少女が集まっているのだとか。

 実際、そこには更紗君を始めとして多くの魔法少女がいた。中には都や伊吹君らの姿まである。

 

「邪魔するぞ。様子を見にきたのだが……」

「なぎたんだー!」

「なぎたん……? あ、十七夜さんか!」

 

 む、そういえばこの呼び方だと通じないこともあるな。どうにも自分の名は一年以上魔法少女をしている者の大半は知っているらしいが……なるほど、これは使えるかもしれん。

 

「あんたか……なに? あたしを見て笑いにでも来たのかな~?」

「笑うものか。平和にやってるようで安心したぞ」

 

 そう言うとそっぽを向いてしまったが、おかげで彼女が何をしているのかをじっくりと観察することができた。

 机には筆記用具に教科書。そしてノート。うむ、これは……勉強会だな! 南凪に行くとなった時は学年の差が心配だったが、これなら多少は追いつけるかもしれん。各々の得意分野で協力する良い姿だ。

 

 これならば問題ない。文字通り邪魔になってしまったようだったのですぐに帰ろうとしたが、それを止めたのは都だ。

 

「……言っておいたほうがいいか……衣美里、ちょっと外すぞ」

「えー! みゃーこ先輩いないと理科が教えらんないよー!」

「じゃあ梨花ちゃんが教えるのはどう? そう、理科だけに!」

「師匠、それは理科と梨花さんをかけて――」

「だーっ! アタシは行くからな!」

 

 騒がしい声を背後に離れた場所に連れて行かれる。

 彼女は先ほどまでの明るい顔ではない。ベテラン魔法少女としての重みを感じさせる姿で自分に問いた。「帆秋の『願い』を知っているか」と。

 

 自分は首を横に振る。

 魔法少女になる際の『願い』は人それぞれ。自ら話す者もいれば、易々と踏み込まれたくない領域の場合もある。自分が帆秋の願いを知らないのも、彼女の性格からして当然のことだった。

 

 そして知っておいてほしいと前置きをして、都は重々しくその口を開いたのだ。

 

「……アイツの願いは『大人になりたくない』だ。そう願った理由は聞いてないけどな」

 

 その時の自分の感情を形容するならば、疑問だろうか。生い立ちやそこに至るまでの心情全てに同じ思いを抱いた。それは大人になることにより発生する責任から逃れるためか。それとも子供でいることに意味があるのか。いくら潜思しても答えの出ないものだった。

 

 ただ、そのような魔法少女は得てして単独行動することはわかる。その懸念は当たっていた。

 

「昔のアイツはアタシと出会うまでずっと一人で戦ってたらしくてな。いつもボロボロだった。令と会ってからは無鉄砲さが鳴りを潜めてきたと思ってたが……帆奈の一件の始まりからまたそれが出てきた」

「……確かに逼迫していたが、最近は戻ってきているのではないか?」

「そうだ。だが念のためにも事情を知っているヤツを増やしたい。今のアイツは一人じゃないから大丈夫だとは思いたいが……もし兆しを感じたら教えてくれ」

 

 そこまで聞いて、あの夜の予兆を思い出した。

 もしかすると、一人でマギウスの翼と戦おうとしているのかもしれん。だがな帆秋……伊吹君から話を聞いた画伯も言っていたぞ。「次はわたしが助けるの」とな。君が誰かを助けるように、自分達も協力を惜しまない。一人で抱え込みすぎるな。

 

 だが、そこまでの心配はいらないのかもしれない。誰よりも彼女に近いのはあの観鳥君だ。きっと異常があれば最初に気づけるのだろうし、最初に止めるのだろう。あの時、君は差し伸ばされた手を受けたのだから。

 

 都との話はそこで終わり、挨拶だけして帰ることになった。

 

「もうあたしも帰るから! 宿題せいぜい頑張りなよ!」

「う~ん……みゃこセンパイと並んでるとどっちが連れてるのかわからない……」

「遅いぞ帆秋ーっ! 早く帰ってこーいっ!」

 

 都の叫び声を背中に受けて、歩き出す。

 ……こんなに騒がしいのだ。君ももうこの一員なのだろう?

 

 

 

 

 




■今回の内容
 『駆け出しメイド十七夜 闊達自在!』(一部分)
 和泉十七夜 魔法少女ストーリー3話 『神浜の一員として』

■和泉 十七夜
 イケメン系魔法少女。一人称は『自分』。エモい。
 名字呼びしたり君付けしたりエモい。

■かりんちゃん
 バタフライエフェクトで成長し続けてた。
 なぎたんイベントを半分以上短縮させる魔法少女の鑑。

■みゃーこ先輩
 最近は帆奈ちゃんの監視という仕事まで増えた。
 くれはちゃんが高頻度で押し付けてくるので胃にダメージ。

■マギウスの翼
 遂に見えてきた奴ら。
 一般通過魔法少女がたくさんいる。

■誰か
 運命を変えたいなら神浜市に来て。
 この町で魔法少女は救われるから。




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