マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート2 踊るかりん捜査線

 

 ぬすっとを追いかけるRTA、はーじまるよー。

 

 前回、魔女との戦いの疲れからか、不幸にも黒塗りの魔法少女にグリーフシードを盗まれて現在命の危機に瀕しています。他の魔法少女を探すか魔女を探すか迷いましたが、この辺でかえでちゃんに会える可能性があることに気づいていますね。

 では観鳥さんと二手に分かれてどうにか探し出しましょう。こんな突発的じゃなければ監視しておいたんだけどなー俺もなー。

 

 しかしここでオリチャー発動! 起きてしまったものは仕方ありません。難易度ハードはそういうものです。むしろかりんちゃんの信頼度を上げることができると考えましょう。

 

 そうと決まれば直角カーブを決めておもむろに本屋に入店します。そして『怪盗少女マジカルきりん』の単行本を購入します。

 かりんちゃんの信頼度を上げるのは簡単です。この単行本で『マジきりトーク』をすればぐんぐん上がります。だから今買っておいたんですね。命の危機だってのに本屋で買い物するとかこいつすげえ挙動不審だぜ?

 

(いた! 新西区のほう!)

 

 観鳥さんが念話で位置を教えてくれましたね。買い物してる間に見つけてくれたようです。

 見つからなかった場合は魔女を狩ってもよかったのですが、危険なので見つかってなによりです。え、テリトリー? バレなきゃ大丈夫です。他の魔法少女もやったんだからさ(同調圧力)。

 

 『怪盗少女マジカルきりん』を鞄から少しはみ出るように配置してからイクゾー!

 

 

 

 

 

 現場(ヤマ)に到着です。

 おっす観鳥さん犯人(ホシ)はどこだい!

 

「今誰かと話してるみたいだ。突入する?」

 

 どれどれ、まずは確認しましょう。迂闊に突撃したら痛い目を見ます。

 かりんちゃんヨシ! そしてかえでちゃんです! 一兎を追って二兎を得ました。(上手くいきすぎて)笑っちゃうんすよね。

 って立ち去ろうとしてるじゃないか(困惑)。警察だ! 何が目的だ!

 

 いや観鳥さんに任せるのがベターなのになんで固有魔法で止めてるんですかね……(ガバ)。

 まま、ええやろ。観鳥さんは周囲を見ててください。このタイミングで竜城明日香とかに来られると取り返しのつかない勘違いされそうなので。

 

 地面に落下したかりんちゃんを問い詰めます。お説教タイムです。正義の刃、覚悟しろ!

 

 おいゴルァ! 降りろ! グリーフシード持ってんのかコラ。おいゴルァグリーフシード見せろ。あくしろよ。お前誰のグリーフシード盗んだと思ってんだこの野郎。

 ソウルジェムが濁っとるやん! どうしてくれんのこれ。ソウルジェムを浄化したかったから魔女を倒したの!(順序逆転) グリーフシード……グリーフシードを盗んだの? この中の中(神浜)で? 魔法少女だからっつっても盗んだらあかんやろ。わかる? この罪の重さ(哲学)。

 

「ご、ごめんなさい……なの……」

 

 ん? 今なんでもするって……言ってない? 言ったことにします。

 じゃあお姉さんとマジきりトークしよっか。単行本も新刊もカバーもたくさん(1冊)あるよ。

 

 

 

 

 逃げられました。なんで?

 

 信頼度上がりませんでしたね。そもそも会話にすらなりませんでした。むしろ下がった疑惑があります。これじゃ帆秋ちゃんが途中で漫画買ってきただけじゃないか(呆れ)。

 

(帆秋さん! 怪盗かりんなら今追いかけてる!)

 

 観鳥さんは真面目ですね。今から追いかける意味はないので帰ってきてもらいます。

 おうかえでちゃん! グリーフシード使うけどいいよな!

 

「ふゆぅ……私なら大丈夫だから、これ使ってください」

 

 いい子ですね。お願いしたら譲ってくれました。

 では早速。はぁ~生き返るわぁ~。

 

 回復したので会話してみましょう。じゃあまず、名前を教えてくれるかな?

 

「秋野かえでです。新西区の……」

 

 みなさんもうご存知でしょうが彼女が『秋野 かえで』です。気弱で優しい女の子ですがやるときはやりますし、トゲのある言葉も言います。良い性格ですね。

 よっぽどのことがなければ『十咎(とがめ) ももこ』、『水波(みなみ) レナ』と一緒にチームを組んでいます。いわゆる『かもれトライアングル』です。

 

 私はかえでちゃんの隣(水名)の隣(栄)の隣の区(南凪)の魔法少女。ほら、これで知らない人じゃなくなったよ。

 じゃあお姉さんと連絡先交換しよっか。スマホもメアドもSNSもたくさんあるよ(デジタルネイティブ)。

 

 このように魔法少女同士だと簡単に連絡先の交換ができます。(安全意識が)未熟です……。

 

 ここで目ざとく鞄のモカウサギマスコットを見ておきましょう。これを確認できればかもれトライアングルが問題なく存在していることを確認できますし、次回の会話でモカウサギを話題にできます。帆秋ちゃんの趣味がどんどん面白いことになってるが大丈夫か?

 

「さっきの子、大丈夫かな……」

 

 や゛さ゛し゛い゛な゛ぁ゛か゛え゛で゛ち゛ ゃ゛ん゛。

 じゃ、三角形(かもれトライアングル)にならせて助け合わねえか? ということを促します。

 そりゃ説教された相手よりかえでちゃんのほうが話しやすいでしょう。モカウサギも確認できたのでかりんちゃんのケアはかもれトライアングルに任せます。

 

 というか、かりんちゃんに関わりすぎてはいけません。気をつけないと経歴の地雷、神浜のやべーやつことアリナ先輩にアートの素材にされます。微妙な距離感が大事です(3敗)。間違っても親友になんてなっちゃダメだぞ!

 

 

 これでかえでちゃんと出会えましたがまだまだ信頼度が足りません。同じ魔法少女のよしみで連絡先交換はしましたが、今日はここまでが限界です。

 

 というか観鳥さんは何やってるんですかね……電話しましょ。

 すみませ~ん、帆秋ですけど~まぁ~だ時間かかりそうですかね~?

 

「ごめん迷った! 今駅にいるよ」

 

 (ここまでかなり複雑に移動してきたので戻れないのは)当たり前だよなあ? しかしこちらは何度もプレイしているので地理はバッチリです。しょうがねぇなあ、迎えに行ってやるか!

 

 オッス(到着)。せっかく新西区にいるので、ちょっと寄り道して早めにモカウサギさんをゲットしてきました。これで信頼度ドン! さらに倍! です。遅れてすまんな。

 それでは電車に乗って帰宅しましょう。こういうところは魔法少女も庶民的ですね。観鳥さんは大東区なので途中でお別れです。

 帆秋ちゃんの帰宅シーンをただ見ていても暇なのでみ~な~さ~ま~の~た~め~に~。

 

 

 

 

 

 

 

 前回飛ばした『願い』について解説します。

 

 魔法少女の契約をする際に叶えられる願いは千差万別です。因果の量にもよりますが、宇宙改変クラスの願いから年頃の女の子らしい願いまでなんでも(なんでもとは言っていない)叶えてくれます。

 

 こいつは最初に設定した内容によって固有魔法や衣装などが決まるため大変重要です。物によっては願いと固有魔法で二重に有利な効果が発生するものもあります。

 まとめきれないほど多種多様なので、迷って選べずにランダムを選択した結果、どうしようもない固有魔法になった方も多いかと思います。

 

 今回の願いは『大人になりたくない』ですが、これ、実はゲーム的になんの意味もありません。そのせいか固有魔法が強めになります。

 なんせ何ヶ月過ぎようと一定値から年齢や学年は変化しません。ここ魔女結界の中か? まあ変化するとやちよさんが普通に20歳超えたりみゃーこ先輩が卒業しちゃうので仕方ないね。

 

 そして得られる固有魔法『停止』は強力です。強敵にはほぼ通用しませんが敵の動きを止めたりするだけでなく、他の物体を止めることもできる汎用性の高い能力です。マイルドほむらちゃんです。

 ただし魔力の消費も激しいので乱用は禁物(しないとは言っていない)。ドッペルシステムが解禁されるまで地獄の綱渡りです。解禁されれば一転、攻勢に出て即座にドッペルを撃てるようになります。

 

 

 まだ着かないので前回する余裕がなかった観鳥さんの能力について……お話しします。

 

 観鳥さんの武器はバズーカです。遠距離攻撃が基本なのでチームを組む場合は近距離武器の方が射程的にいいですね。帆秋ちゃんは遠距離は辛いもんなぁ……なので良い組み合わせです。

 彼女は攻撃を必中にする固有魔法の他に、撮影した相手を写真に閉じ込める魔法を持っています。両方便利ですがその分素の火力が控えめです。

 総じて可もなく不可もなく、という感じです。一般魔法少女ですね。

 

 しかし、彼女は走者必見の『珍しいことに会いやすい体質』という能力を持っています。数値などは存在しないフレーバー的な要素だと思われてきましたが、統計の結果、確かに観鳥さんと行動していると僅かですがイベントの発生確率が上がっているのです。

 絶対視できるものではありませんがありがたいですね。やっぱり……南凪を……最高やな!(愛校心)

 

 キリがいいところで自宅に着きました。おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

 おはようございまーす!

 

 本日は休日なので午前はパトロールに行きましょう。グリーフシードは足りないとマズいですが、余る分にはいくらあっても構いません。回復はもちろん、調整屋でステータスを更に上げる際に必要になります。

 学生と魔法少女の二重生活は……なかなか……辛いねんな。悲しいかな。これはな、誰でもそうなるんや(宿命)。

 

 世の無常を嘆いたら午後は遠出です。いざ新西。

 

 

 

 途中で魔女とエンカウントしたりして夕方になっちゃいましたが昨日ぶりの新西区です。

 かえでちゃんとは一度会ったので、次は『フラワーショップ・ブロッサム』での遭遇を狙います。二回目以降の遭遇であればブロッサムで大丈夫です。ここが一回目だと普通に店員として応対されます。

 

 まだアルバイトをしていなかったり、ちょうどいない日の可能性もありますがそういう場合は店主のおばさんか高確率でいる『春名(はるな) このみ』に聞いてみましょう。かえでちゃんの名前を出せるようになっているので少なくとも情報収集はできます。

 

「あ! 昨日の!」

 

 いました。一門にあるまじき剛運ですね。反動が怖いです。

 

 今日はねー……あのー、帆秋ちゃんの……すごい大切な、友達の誕生日なので(大嘘)。

 奮発してブロッサム来たんで、是非、いいお花期待してます!

 

「そうなんだ……じゃあちょっと待ってて! 私よりもこのみちゃんのほうが詳しいから!」

 

 来た理由を間違えましたように見えますが大丈夫です。ついでにこのみちゃんとも会っておきます。ここまで来たなら後は焦らず確実に信頼度を上げていきましょう。

 

 実はこのブロッサムはかなりうまあじです。バイトもできる魔法少女とも出会えるビキビキビキニ1・2・3(レ)。

 

 おっとこのみちゃんが来ました。彼女はこの店の店長さんの病気を治すことを願ったぐらい優しくて花が大好きな人です。今回はそこにつけこみます(ド畜生)。

 具体的に言うと性格による補正効果とかえでちゃん経由効果でバイトの応募が簡単に通ります。

 

 おうこのみちゃん! ここで働かせてください!

 

「うん! かえでちゃんから事情は聞いたよ。お店が忙しいときだけでも手伝ってくれたら嬉しいし、同じ魔法少女の知り合いが増えるのも大歓迎! アルバイトの件は私から言っておくね」

 

 ね、簡単でしょう? 突如襲来した帆秋ちゃんを即通すとかこのみちゃんの権限がなんか凄いですが、これからも度々お世話になるのでありがたく恩恵を受けましょう。

 

 なお、ブロッサムでバイトをする理由の一つは『夏目(なつめ) かこ』と遭遇できる可能性があるからです。

 今の段階では影も形もないので名前を出して聞くことができませんが、彼女もブロッサムでバイトしていると思うのでそのうち出会えます。

 彼女の実家である古書店、『夏目書房』に行ってもいいのですが、かえでちゃんと同じ理由で普通に店員対応で会話が発展しません。

 

 ではなぜかこちゃんを狙っているかと言いますと……『常盤(ときわ) ななか』との遭遇が次の目標だからです。理由は後々。今回はその第一次遠征でもあります。

 バイト中に会えればいいのですが、確率を高めるために別の方法でのアプローチもしましょう。一つの方法に頼るのはHIPのYOU。本当の走者とは別のものだ……(ブーメラン)。

 

 他の理由はモカウサギの野郎です(屑運)。クレーンゲームの地獄を垣間見て残金が悲しいことになっています。撤退ラインをちゃーんとチャートに書いておきましょう。

 

 

 そういうわけでこのみちゃんに花を選んでもらったので今日のところは帰ります。ありがとな。頑張りやバイト。

 

 良い収穫でしたね。こりゃ好タイムあるで。

 暗くなる前に帰りま……待ってください。あの小さくて緑色の髪をした女の子は……!

 

「帆秋じゃないか。どうしたんだその花」

 

 惜しいですね。小さくて緑ですが、一般通過みゃーこ先輩です。さすがに幸運は続きません。

 

 ちなみに奮発して買った花は自宅に置いておくと、枯れるまでソウルジェムの穢れが溜まる速度をほんの少し軽減してくれます。このようなアイテムは複数ありますが、全部揃えても劇的な効果にはなりません。気休めです。

 ちょうどいたみゃーこ先輩にプレゼントして信頼度の足しにしてもいいんですが、固有魔法を乱発する以上気休めでも穢れの方が重要です。信頼度は一緒に行動すれば上がるからヘーキヘーキ。

 

 みゃーこ先輩と帰宅するところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今夜の獲物は……うん、決めた。この人なの。

 『帆秋 くれは』。見たときはいつも真顔でちょっと怖いけど、仲間を集めてるわけでもないし、良い人なんて噂は聞いたことがない狙い目なの。

 

 助ける魔法少女は神浜のへっぽこ魔法少女『秋野 かえで』。なんだか名前も似てるしちょうど良いの。

 

「待っているのだ、へっぽこさん!」

 

 こうしてわたしは今日も『怪盗かりん』として活動するの。

 強い魔法少女は自力でグリーフシードを手に入れられる。けどひとりじゃ手に入れられなくて苦労している魔法少女だっているの。

 だから、わたしがグリーフシードをみんなに分けるの。そうすればみんな幸せだから。

 

 

 

 

 ……と、思ってたの。

 

 あの人、他の魔法少女を助けてた。

 もう一人の魔法少女は見たことがなかったけど、その表情からは『ありがとう』って気持ちがわかっちゃったの。助けてもらったことが本当に嬉しそうだった。

 

 気がついたら、わたしの手の中にはグリーフシードがあったの。お約束のトリックオアトリートも言わずに固有魔法で手に入れちゃっていた。

 

「……持ってきちゃったの」

 

 なんだかモヤモヤした気持ちでいっぱいだけど……仕方ないの。強い魔法少女が手を組んだらひとりで生きていく魔法少女が困るの。二人ならすぐグリーフシードも手に入るだろうし……。

 うん、とりあえずこれはへっぽこさんに渡すの。

 

 

 場所はわかってる。だからさっき言えなかった分のお約束はきちんとやるの。

 やっぱりいた『秋野 かえで』にこっそり近づいて……。

 

「トリックオアトリート……」

「だ、誰!?」

「トリックオアトリート……」

「まさかオバケ……!?」

 

 違うの。わたしは、いや――

 

「我こそは! ハロウィンが生んだ魔法少女! 怪盗かりん!」

 

 決まったのだ。

 

「今日は貴様にグリーフシードをやろう。トリックアンドトリート!」

「え、え?」

「石でも草でもなんでもいいから我に渡すのだ。……よし、確かに受け取った。……こほん、お菓子をくれたらイタズラしちゃうぞ! グリーフシードをあげるというイタズラを!」

「そ、そんな、わたし、なにもしてないのに貰えないよ」

「そう言わずに受け取るのだ!」

 

 すぐに受け取ってくれる魔法少女もいるが、こういう魔法少女もいる。だが我にかかればすぐに渡せるのだ。

 

「では、さらばなのだー! はっはっは――なのっ!」

 

 いつもなら簡単にジャンプで移動できるのに、今日は何かにぶつかったみたいな感触。上から落とされたみたいに地面に落ちちゃったの。

 

「あなたが怪盗かりんね。探したわ」

「えっ!? な、なんで……!」

 

 落ちたわたしに駆け寄ってきたのは帆秋くれは。でも見られてないはずなの。固有魔法で盗んだだけで姿を見せてないし、見つかるはずがないの。

 

「これ、あなたでしょ? 観鳥が怪盗かりんの窃盗現場なんてシャッターチャンスを逃すはずがないし」

 

 でも、スマートフォンで見せてきた写真にはわたしがバッチリ写ってたの。あの人、そんな魔法を持ってたなんて知らなかったの。

 まずいの。今までは逃げ切れてたのに、これじゃ……。

 

「魔力は限界だし、魔女に殺されるところだったわ」

「ご、ごめんなさい……なの……」

 

 他人事みたいに言ってるけど、すごく体調が悪そうなの。顔は青いし、肩で息をしてるの。なにかグリーフシードとかソウルジェムって言ってるみたいだけど聞き取れないし……。

 心配だけど……逃げるなら今なの!

 

 今度は邪魔されずにジャンプできたの。早くここから離れようとして全速力で走ったけど、わたしの後ろから他の魔法少女の反応。

 

「待て! 観鳥さんから逃げられるとでも!」

 

 あの人と一緒にいた魔法少女なの。結構移動したけどまだついてくる。絶対に捕まるわけにはいかな――

 

「撮らせてもらったよ。怪盗かりん」

 

 その魔法少女が急に近づいたと思ったら、わたしは行き止まりに追い詰められてたの。

 多分、固有魔法……なの。

 

「別に取って食おうってわけじゃない。ただ観鳥さんは真実を知りたいんだ。なんでグリーフシードを盗んだかをね」

「……魔法少女を助けるためなの。魔女と戦えないような子どもに、分け与えるの」

「なるほどね。弱い魔法少女のためにってのはわからないでもないよ。魔女との戦いはキツいし命懸けなのにそうしなきゃ生きてけない。確かに助けにはなってるのかもね」

 

 理由を話してもわかってもらえないかと思ってたの。強い魔法少女なんだから、グリーフシードは簡単に手に入るんだと思ってて。

 

「わかってくれるの?」

「観鳥さんとしてはね。でも、魔法少女としては見過ごせない。いくら強い魔法少女でも魔力が無かったら魔女に殺されるんだ。キミが盗んだグリーフシードが残り少ない魔力を使って命からがら手に入れた一個だったら、間接的に殺してたかもしれない」

「そ、そんなつもりは――」

「なくても、そういうことをしてたってことだよ」

 

 そう言われて気にかかったのは体調が悪そうだったあの人。あれがまさにその状況だったんじゃないかって、気づいちゃったの。ソウルジェムが濁りきったら魔法が使えなくなっちゃう。今にも倒れそうな姿で魔女を倒せるわけがないの。

 

 ……じゃあ、わたしは、弱い魔法少女を助けるために強い魔法少女をああやって殺してたの?

 

 

 ちがう。

 ちがうの。怪盗かりんは、そうじゃないの。そんなのじゃない。

 わたしは『マジカルきりん』みたいに、誰にも頼らずひとりで戦い抜いてみんなに元気を与えたかっただけなの。

 

 魔女と戦うのが怖くて、グリーフシードを盗むわたしが?

 

 ……ほんとは気づいてたの。悪いこと、ズルいことだって。でも自分を誤魔化してた。普通の人を助ける魔法少女から魔法少女を助ける怪盗になっただけだって。変わったのはそれだけだって思ってたの。

 でも、目の当たりにした今ならわかるの。わたしはきりんちゃんじゃない。『マジカルきりん』を汚してしまった。

 心がぐしゃぐしゃになって、溢れる涙を止められない。

 

「う、ひっぐ……う……」

「あー……その、ごめん。泣かせるつもりはなかったんだ」

「ちがうの……ひぐ、あなたじゃないの……わたしが、悪いの……うぅ……」

 

 わたしが泣き止むまでその人――観鳥令さんは一緒に待っててくれたの。落ち着いたら自販機でジュースを買ってきて「お詫び」って言って渡してくれた優しい人。

 こんな優しい人がちょっと怖いあの人の仲間だなんてびっくりしたの。

 

「ああ……うん、帆秋さんってすぐにどこか行くからあまり知られてないのかもね」

 

 笑いながらそう言った観鳥さんが、あの人に振り回される姿を考えたら少し笑っちゃったの。

 そのはずみで、真実を知りたいって言ってたことも思い出したの。そのことを聞くと今度は苦笑いが返ってきたの。

 

「どうするの? や、やっぱりみんなに知らせるの?」

「『怪盗かりん』の真実を撮るってつもりだったんだけどねー……キミ、名前は?」

「え? 御園かりんなの。……も、もしかしてあの人に教えるの!?」

「いや帆秋さんからは"追わなくていいから帰ってきなさい"って言われて――ごめん電話だ。念話の届かない範囲に行ったと思われたかな……もしもし? ごめん迷った! 今駅にいるよ」

 

 焦ったわたしにもその意味はわかったの。

 観鳥さんが言った言葉は嘘なの。駅はここから反対側だし、あの人と会った場所とも逆方向なの。

 

「あの、今の……」

「じゃあね。観鳥さんは駅にいなきゃいけなくなったんだ。『怪盗かりん』じゃなくて『御園かりん』に用はないよ。観鳥さんも腕が鈍ったかなー」

「そ、それはほんとのことじゃないの!」

「そうかもね。だけど飛ばし記事なんてゴメンなんだ。次会ったときにでも『怪盗かりん』の真実を取材させてよ。……ま、拒否しても真実を暴くけどね」

 

 心の底から笑ったみたいな笑顔。

 多分、この時の笑顔をわたしは忘れないの。

 

「……ありがとう、なの」

「なんのことやら。……って帆秋さんまた電話? もしもし? 途中でゲームセンター寄ってくって? いやもう夜だし補導されるって。え、もういる? 一万円注ぎ込んだ? なにやって――」

 

 あの人と話しながら去っていく後ろ姿は、とても輝いて見えたの。

 

 

 

 

 

 次の日、学校はお休みだけどわたしは部室に行ったの。

 昨日のことをよく思い出して、これからどうすべきかを考えたら漫画を描きたくなって、それを先輩に見てもらいたかったの。

 

「ふーん、少しは成長したと思うんですケド。絵はまったくだけど失意の中の主人公、アリナ的に好きなワケ。今にもレボリューションを起こそうとする姿。新たなステージに登ろうとしてるヨネ」

「時間がなくて描ききれてないけどまだ続きがあるの! 待っててほしいの!」

「いいけど、邪魔はしないでヨネ」

 

 アリナ先輩もこう言っているしやっぱりあの考えで合ってると思ったの。

 だからその後すぐに町に出て、『秋野かえで』がいるかもしれない場所を走り回ったの。

 

 昨日いた場所、学校の近く、魔女がいそうなところ。

 そして、ようやく見つけたの。でもわたしを見たら向こうから走ってきたの。

 

「あっ、いたいた! もー、捜したよー。ソウルジェム大丈夫? 昨日は急に落下したけど」

「だ、大丈夫なの。最近は魔女と戦ってないから」

 

 急にそう言われて取り出したけど、思ってたより濁ってたの。それを見た秋野かえではグリーフシードを取り出して浄化しちゃったの。

 一瞬、嫌な予感がしたの。

 

「そのグリーフシード……あの人のなの?」

「あ、ち、違うよ! これは――」

「かえでー! 見つかったかー?」

「もう見つけたんじゃないの? 誰かと話してるわよ」

 

 遠くから来たのは昨日見てない人たち。

 話してみてわかったのはこの二人、十咎先輩と水波先輩は秋野かえで――かえでちゃんと一緒に戦っている仲間だということ。

 へっぽこでもグリーフシードを手に入れられるって、確信したの。

 

 ……きりんちゃんじゃないわたしは一人じゃ魔女に敵わない。だから誰かと協力して戦うの。これがわたしが考えた結果なの。

 

「その……わたしを、チームで一緒に戦わせてくださいなの!」

「うん、いいよ。アタシも同じ提案をしようと思ってたんだ」

 

 急なお願いだったから断られることも覚悟してたの。でも十咎先輩はいいって言ってくれた。水波先輩は最初は反対したけどすぐに許可してくれて、かえでちゃんも喜んでくれたの。

 

 その後はパトロール。

 三人との魔女退治は簡単だったの。協力すればわたしでも魔女を倒せる。そのことが嬉しくて、わたしを捜してくれたかえでちゃんとしばらく一緒にいたの。これからアルバイトなのに無理を言って。

 

 かえでちゃんのアルバイト先、『フラワーショップ・ブロッサム』。そこで出会った春名先輩も魔法少女だったの。休憩室に入れてもらって少しお話しして、この人も優しい人だってわかったの。

 それからすぐにかえでちゃんが春名先輩を呼びに来て、入れ替わりで来たかえでちゃんが言ったの。

 

「昨日のあの人……帆秋さんだっけ? ちょうど来てるよ」

 

 それを聞いて息を呑んだの。あの人には悪いことをしたと思ってるし、ちゃんと謝りたいとも思うの。だけど、まだわたしにはそれができないの。

 だから扉を開けてそーっと外を見たの。不機嫌だったり辛そうだったりしないかって思って。

 

「おいおい、また令に撮られるぞ? 案外その辺にいるかもな」

「今の私はいたって普通よ。やましいことなどないわ」

 

 ……元気みたいで良かったの。

 

「かりんちゃん? 会わなくていいの?」

「……まだあの人とは顔を合わせづらいの」

「そっかあ」

 

 正面から話すにはまだ勇気が足りないの。でも、そのうち話せるようになるはずなの。

 もうわたしは『怪盗かりん』じゃない。心を入れ替えた『魔法少女かりん』、なの!

 




■今回の内容
 御園かりん 魔法少女ストーリー1話『怪盗かりん』
 御園かりん 魔法少女ストーリー2話『魔法少女かりん』

■御園 かりん
 ハロウィンが生んだ魔法少女。なの。
 第一部の出番に反して実はかなり重要なポジション。

■十咎 ももこ
 黄色でチャージディスク3枚の魔法少女。ポニテ。かわいい。
 髪を下ろした姿を漫画やアニメで見られる。かわいい。

■水波 レナ
 青色でアクセルディスク3枚の魔法少女。ツインテツンデレ。
 水着といいサンタ服といい胸元パンパン。

■秋野 かえで
 見た目で木属性とわかる魔法少女。3枚ではない。ふゆぅ。
 本編の最初から最後まで出番がある。意外と毒舌。

■春名 このみ
 花屋の魔法少女。ただし彼女もアルバイト。
 結構魔法少女同士の繋がりがあるらしく色々と出てくる。

■モカウサギ
 かもれトライアングルの友情の証。リアルに発売された。
 かえでの魔法少女ストーリーで登場し、彼女はこれを2つ取るためにクレーンゲームで5000円以上使っていた。帆秋ちゃんは2万使った。



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