マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート21 Rumors in Disguise 前編

 恐怖が舞い戻るRTA、はーじまーるよー。

 

 今日はブロッサムです(いつもの)。

 ですが、いつもとは違ってここ数日は必ずかこちゃんがいる日にバイトをしに来ています。今までそんなに上がってないので連日一緒にいようが問題ありません。

 ちなみにこのみちゃんはまず間違いなくいるのでやっぱり勝手に上がります。もう十分堪能したよ……。

 

 かこちゃんを執拗に狙う不審者行動を続けている理由は『Rumors in Disguise』対策です。『CROSS CONNECTION』が発生してしまった以上、これも発生します。こちらも成功させないと最悪の場合にはななか組全員+αが退場する大惨事を引き起こします。

 

 このイベント最大の問題点は、あの天乃鈴音がまた襲来することです。鈴音に勝てるわけないだろ! いい加減にしろ!

 

 幸いなのは発生時期を想定できることですね。そもそも今回の原因である『キリサキさん』は魔法少女たちに鈴音の存在を警告するために組長が流した噂で、それが『ウワサ』と混じって大変なことになったというのが『Rumors in Disguise』です。

 

 もういつもの会合でこの話を聞いてますし、実際に失踪した人まで出てきたという噂も聞こえ始めたのでフラグは立っています。なので不必要に期間を重ねる必要はなく、かこちゃんの信頼度が上がりすぎるということにはなりません。

 

 あとはイベント発生を確認したらとっととウワサをとっちめましょう。ホオズキ市の魔法少女より早く倒すことを目標にしときましょ。

 ただし『日向(ひなた) 茉莉(まつり)』と鈴音が遭遇したら撤退です。それ以上関わると危険なので、どうしても行く必要があるなら帆奈ちゃんでも送り込みましょう。

 

 

 まあしばらくは通常業務ですけどね! そこにかこちゃんはいますし、まだまだ大丈夫でしょう。一応、後で次の会合がいつかという名目で組長に連絡して無事かどうか確認しておきます。

 

 しかし、このイベントでやりたいこともあるので早いとこ起きてほしいですね。あんまり遅いようなら適当に誰かを連れてその辺の結界でやりますが、余計な手間がかかりますしリセットの危険性もゼロではないので是非ともここで済ませておきたいです。

 

 

 それよりも今はブロッサムだな! アルバイトに集中する学生の鑑(自画自賛)。

 らっしゃっせー! 一名様ご案内でーす!

 

「……帆秋くれは」

 

 はえ~茜ヶ咲中学の制服ですね。市外からもお客さんが来るなんてブロッサムは人気だなぁ。

 なーんて、鈴音さんじゃないっすか。やっぱ椿をお求め……じゃねぇ! なにが目的だ! 首か!? 命か!?

 

 

 あっ(察し)。

 そういえばマミさんに生きてるってことが知られてましたね。それが白タヌキ経由で今度は鈴音に伝わっていたのかもしれません。やっぱ一匹ぐらい始末してきたほうがいいんじゃねぇか?

 

「くれはさん、下がってて……」

 

 や゛さ゛し゛い゛な゛ぁ゛こ゛の゛み゛ち゛ゃ゛ん゛。

 さすがにこんな一般人がいる中で襲ってこないから大丈夫だってヘーキヘーキ安心しろよ~? でも万が一ってこともあるのでこのみちゃんを抑えて前に出ましょう。

 

 このみちゃんがなんか言ってますがスルーです。かこちゃんも下がっててくれよな!

 

「キュゥべえから話は聞いた。別に魔法少女を増やそうとしているわけじゃないって。それと――」

 

 なんかアイツが誤解を解いてくれたみたいですね。キュゥべえは言わなかったり誤魔化したりしますけど嘘は言わないので信じてくれたんでしょう。でも白タヌキはやっぱり許さん。

 というか最優先の目標じゃなくなったってだけで、相変わらず鈴音は殺しに来ます。見てくださいよ! 魔力パターンは覚えたからキリサキさんの調査をした後で殺せばいいかと考えてる顔ですよこれ!

 

「キリサキさんの噂の調査に協力してほしい」

 

 なんで?

 

 『CROSS CONNECTION』の時に鈴音と友好的になって信頼度を上げておけばこうして協力を依頼されますが、あれはどう考えても血みどろの殺し合いでした。どこに友好的になる要素があるんじゃ言うてみぃ!

 

「あの時一緒にいたサイドテールの子が言ってたわ。神浜じゃ魔法少女は魔女化しないって。その真偽を確かめたいから……それに、貴方は魔女化で失った人がいるって聞いた」

 

 あっ、これかぁ!(超速理解)

 

 信頼度がストップしてもなお助けてくれるとか、良い後輩を持ったなぁ……。みゃーこ先輩は頼れるしやっぱり南凪は最高じゃないか!

 それに経歴ガバによって生まれた過去のおかげでちょっと優先度が低くなってますね。まあどちらにせよ殺しにくるんですけど!

 

 これで少しは安心ですが……でもアレですね。鈴音と行動を共にするのは心強いですが、他の魔法少女と下手に会えませんね。明日香と出会ったら絶対に勘違いされます。そうでなくとも信頼度が下がりそうです。

 

 ……いやちょっと待てよ? 鈴音がマギウスの翼の目的とドッペルの存在を知ると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウオアアアアアアアアアアアアアアア!!

 マギウスの翼に鈴音が増えるルートになるじゃねえか! ねーもう無理無理無理! 勝てるわけない!

 

 作戦変更! 作戦変更です! 茉莉と鈴音を絶対に会わせて全部忘れてもらってホオズキ市に強制送還します! オラ行くぞ鈴音! とっととイベントを進行させるんだよ!

 

 あ、このみちゃんも来ます? かこちゃんは……そういえばかこちゃんがいるのに鈴音がいますね。一応組長に電話してみましょうか。

 

 もしもーし、留守ですね。あきらと美雨もです。かこちゃんがいないときに『キリサキさんのうわさ』に遭遇したのかもしれません。じゃあかこちゃんには別の方向から三人を探してもらいましょう。仮にウワサとエンカウントしても、ウワサのルール的に大体は大丈夫です。

 

 と、言うのもこのウワサは"名前"がキーになっているものです。

 名前を聞いてくるこいつは、このウワサの本当の名前である『スズノネ』を答えないといけません。間違えると記憶を切り裂かれ、答えられないと取り込まれます。そして取り込んだ者の姿でまた聞いてきますが、その時は今の姿の人物の名前を答えなければならず、答えるとその人物を解放できます。

 

 つまりななか組を知っているメンバーならなんの問題もありません。むしろさっさと解放できて本体を引き摺り出せます。

 そうすればあとは探索パートで『スズノネ』に辿り着くだけです。ななか組はこれがわからないタイミングで遭遇したので取り込まれているんですね。

 

 鈴音がここにいるのであれば、ホオズキ市の魔法少女四人が来ています。『(かなで) 遥香(はるか)』と『詩音 千里』なら初期は中央区の中央図書館に行けばいますが……目当ての『日向 茉莉』と『成見 亜里紗』はかなりランダムに移動します。

 なのでここは大人しくイベントを進行させましょう。遥香に必要な情報を渡せば『スズノネ』に辿り着いてくれます。その段階で鈴音がいれば、イベント終了後に強制送還されるのでこれを狙うわけですね。

 

 そんなわけで鈴音とこのみちゃんという謎の組み合わせで神浜を移動しましょう。情報を集めるためには中央区がオススメです。一応変身してから路地裏を中心に探します。

 

 

 少女捜索中……。

 

 

 美術館でスピード解決をした、あのときの刺激が素敵だった。もう一度味わってみたかったんです(空振り)。

 こうなったら次は参京区です。イベントが中間地点ぐらいに来ているならこっちのはずですからね。

 

「ポ、ポマードポマードポマード! って違うこれは口裂け女! ……あれ? くれはさんにこのみさんも一緒?」

 

 あいみがいました。キリサキさんはコートを着てるって情報が流れてるので思いっきり鈴音が勘違いされてますね。まあ勘違いとも言えないんですけどね!

 

 彼女がいたなら好都合ですね。このまま保護してホオズキ市のメンバーと合流しましょう。おそらく夏希とかのこも一緒にいます。

 ちなみにここで保護しないと、重要な情報を掴んだばかりに中盤で退場する映画でありがちなパターンの動きを見事に決めて取り込まれます。あいみが気づいたことが『スズノネ』への鍵になるので、誰にも情報を渡せなかった場合はかなり遠回りな解決をするハメになります。注意しましょう。

 

 というわけでさっさと路地裏から出たいんですが、今鈴の音が聞こえましたね。

 

「私の鈴じゃない……!」

「う、後ろ! いる!」

 

 おっとキリサキ=サンのエントリーだ!

 ははは! 今まで交友関係を広げてきたくれはちゃんなら名前を答えるなど朝飯前! 今のうちに解放してくれるわ!

 

 ではさっそく今の姿が誰かクイズに答えましょう。さーて今回は……。

 

 

 

 誰?

 

「――じゃあ、あなたも」

 

 はい『停止』ィ! これで魔力が続く限りはキリサキさんの侵食を止められます。

 HELP! HELP! キリサキさん許して。

 

 というかお前これモブ魔法少女じゃねえか! こんなのわかるわけないだろいい加減にしろ!

 鈴音ェ! お前はオレにとっての新たな光だ! あいみと一緒に逃げろォ! あ、それで茉莉ちゃんと合流して助けに来てくださいね。

 

 

 ……行きました? このみちゃんだけになりましたね?

 じゃあもう慌てる演技もいいでしょう。くれはちゃんには悪いですが作戦通りです。

 

 モブ魔法少女の見た目の場合、大体は『スズノネ』本体です。どうあがいても今は答えられません。わざと間違えて記憶を切り裂かれると行動に支障が出るので、普通なら一目散に逃げるのがいいでしょう。

 

 ですが、この状況はチャンスです。

 『キリサキさんのうわさ』相手にくれはちゃんが素手で勝てるわけがありませんが、一撃死などの命の危険がなく、魔力を消費できる程度には強く、かつ絶対に助けが入って離脱できるという場面はアレの大チャンスです。魔力をガンガン使いましょう。

 

 消費しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近は『天乃 スズネ』の一件や昏倒事件が嘘みたいに平和だった。

 相変わらずのくれはさんやあの帆奈ちゃんに思うところはあるけれど、以前の魔法少女としての生活が戻って来たみたい。

 だから今日もこうしてブロッサムでいつもの時間を過ごしている。

 

 でも、変わったこともあって。気がつけば魔法少女の知り合いは驚くほどに増えていたの。 最初はかえでちゃんやかこちゃん、それにくれはさんぐらいだったのに、事件が起きるたびに増えていって……神浜にはこんなに魔法少女がいるんだなぁって教えられちゃった。

 

 ……ふふ、その事件にはいつもあなたがいたよね。

 かこちゃんと話をしているあなた。クールで、でも抜けてるところのある、大事な人。

 

 

 けれどもその平穏を崩したのは、またもあの脅威だった。

 

 店に入ってきたのは神浜の学校じゃない制服を着た女の子。

 忘れもしない。服が違くてもあれはあの夜、私たちを襲った魔法少女。『天乃 スズネ』がそこにいる。

 

「くれはさん、下がってて……」

 

 思い出すのは鋭利な刃がくれはさんを襲う姿。もし、間に合ってなかったら。もし、まさらさんが来てくれなかったら。そのもしもが悪夢となって何度も私を苦しめたんだ。

 もう二度とあんなことは起こさせない。守らせて、じゃない。私が守るんだ。

 

「いいのよ。相手も白昼堂々とは来ないわ。それに、私が守るから」

 

 ……どうして、あなたの背中が見えるの?

 危ないって言ってもそれは変わらない。なんでって思っても私の足は前に出ない。それとは裏腹に胸の鼓動が高まるのが実感できた。

 

 ――言えないよ、嬉しかったなんて。

 

 

 少し離れた場所で二人だけで会話をしているのを見ることしかできない。かこちゃんになにか言わなきゃいけないのに、目を離せない。

 結局、かこちゃんに彼女があの『天乃 スズネ』だと語ったのは、天乃鈴音本人だった。

 

 彼女が求めてきたのは最近噂になってる『キリサキさん』の調査への協力。神浜を調べた結果、色んな魔法少女と知り合いのくれはさんから情報収集するのが一番だって思ったみたい。

 

 そんなことできるはずがない。だって私たちは彼女に襲われた被害者で、今にもあの剣が振られないかと気が気でないのに。

 でも、あなたはきっと承諾する。それがたまらなく心を締め付ける。

 

「こ、このみさん……顔が怖いです……気持ちはわかりますが、落ち着いてください……」

「……このみ、私は協力することにする。けどあなたは無理しなくていい。待っててくれれば――」

「待てない。私も付いていくから」

 

 最初から側にいられたらって思ったことは何回もあった。だから、考えるよりも先にその言葉が口をついて出たのは当たり前。なんて思われてもいい。怖いけど、ただ待つことのほうがもっと怖いから。

 

 

 

 『キリサキさん』の噂はななかさんが中心に流したものだった。昏倒事件の時、帆奈ちゃんが噂を巧妙に流していたことを思い出して実行したみたい。鈴音さんの犯行への注意喚起も含めて……という理由。

 だから『鈴の音がどこからか聞こえてくる』とか『名前を聞かれる』とかの特徴が含まれてて、刃物を持って切り裂いてくるって手段まで本物と被せてある。

 

 不可解なのは、噂が伝わっていく内に内容が変わって失踪する人が出てきたこと。『記憶を切り裂かれる』だけだったはずなのに、いつの間にか『答えられないとキリサキさんになる』なんて尾ひれが付いていた。

 

 それで実際に行方不明者が出始めて……ななかさんたちが調べるってかこちゃんは言ってたけど、電話をしても出ない。心配だからかこちゃんはそっちを探すって言って手分けすることになった。

 

 私たちが探すのは基本的に路地裏。正直に鈴音さんが信じられないと言ったら、まずは噂のキリサキさんと一度遭遇してみるということになったから。

 本物がいるのに出てきたらそれはきっと噂に乗じてる誰かのはず。上手くいけばその場で取り押さえられる。

 

「そこ右。それでこの辺は全部よ」

「わかった」

 

 けれど、なんでくれはさんはあんなに落ち着いてるんだろう。その人は本物のキリサキさんだって知らないわけじゃないのに、どうしてそこまで信じられるのかな。

 

 ……実は、その理由に少し気づき始めてたんだ。確かにくれはさんは優しいし、困ったことがあったら助けてくれる人。

 でも、それは誰にでも向けられるものなんだ。どこまでも広く、分け隔てなく与えられるもの。だから命を狙ってきた彼女もくれはさんの中では同じ対象。他の魔法少女のみんなと変わらない、守るべきで失いたくない人なんだ。こころさんが言ってた。鈴音さんと戦ってる時も、致命傷は避けるようにしてたって。

 

 そう、私も、『他の魔法少女』なんだ。

 きっと、本当の意味で彼女に近づけているのは帆奈ちゃん、観鳥さん、ひなのさんだけ。そこに一線がある。私じゃ届かないなにかが。

 

「どうかした? 行くわよ」

 

 その声はやっぱりいつも通り。鈴音さんに背中を見せてても心配なんてしてなかった。

 

 

 

 

 キリサキさんの噂を話す人は見つかれど、なかなか遭遇しない。何度か休憩を挟みつつも私たちは参京区まで来ていた。

 

「……あの相談所という場所はどう? 人が集まるらしいけど」

「あなたが本物だって気づかれたら厄介なことになるわよ。魔力パターンを知ってるこころとまさらがいる可能性もあるし」

「なら鈴音さんだけ離れた位置で待っててもらうのは?」

 

 もう路地裏を探すのにも限界が見えてきた。

 でもなにもしなかったら後手に回っちゃうから、と次の手段を考えながら歩いてる時だった。

 

「ポ、ポマードポマードポマード! って違うこれは口裂け女! ……あれ? くれはさんにこのみさんも一緒?」

 

 偶然出会ったのはキリサキさんじゃなく、あいみちゃん。くれはさんと一緒にいる姿を見たことがあるから知っていた。

 なんでも、友達――あきらさんが急に連絡が取れなくなったから、他の友達と協力して探してるみたい。

 

「……そう、夏希とかのこまで」

「うん、めっちゃ心配だからみんなで探してて……」

 

 本当に知り合いが多いんだなぁ。私の知らない人までいつの間にかくれはさんを知っていて、輪が広がってる。……その全員を、手伝おうとしてるのかな。

 

 あいみちゃんは誰かが話してた噂の内容を書き留めてたら気づいたことがあったんだって。私たちは最初から噂の内容を知っていたから、そういえばそんなことをしてなかった。

 

「ここねここ、『お名前教えてくださいな』ってとこ。これ最初は自分の名前を答えればいいのかなって思ってたんだけど、正しくなければ切られちゃうし答えられないとキリサキさんになっちゃうってなんかおかしいなって思ったの」

「……もし自分の名前でいいのならここまで騒がれることはない、と?」

「そうそれ! だってそれならみんな正解するでしょ?」

 

 言われてみるとなにかおかしい。

 そもそもこれって都市伝説そのものみたいだし、人間ができることなの? 魔法少女でも理由がわからないし、魔女だったらこんな手段は取らないはず……。

 最初の噂と鈴音さんに共通する部分はあるけれど、まるで別のなにかが混ざっているかのよう。こうして鈴の音が聞こえる点は確かに同じ……鈴の、音?

 

 咄嗟に振り向くと、そこにいたのは見知らぬ誰か。他のみんなも気づいたみたいでそれを見つめてる。人の姿をしているけど、魔女に似た雰囲気を感じる。本当にいたんだ……!

 

「名前を教えて……」

 

 ゆっくりとしたその言葉とは裏腹に動きが速い。もう、すぐそばに来ていてその手を私に向けている。

 けどその手が届く前に横から伸びた手が抑えた。

 

「く、くれはさん!?」

「……こいつ、力も速度もおかしい。今のうちに行って」

 

 狙う対象を変えてくれはさんの袖に食い込むそれの指は、見るだけでも相当な力だってことがわかる。だからすぐに手をかけて引き剥がそうとしたのにびくともしない。

 すぐ側にいるくれはさんが私に離れるように言う。でも、そんなこと!

 

「名前を教えて。名前を教えて。名前を教えて」

「知るわけないでしょ、あなたなんて……!」

「――じゃあ、あなたも。キリサキさん、ね。キリサキさん、キリサキさんキリサキさんキリサキさ」

 

 壊れた機械みたいに同じことを繰り返す言葉が途切れた。がたがたと動いていた手も止まってる。私はこの現象を知っている。何度も見たことがある!

 すぐにくれはさんのソウルジェムを見るとそれはやっぱり、『停止』だった。

 

「鈴音! あいみを連れて商店街に!」

「……わかったわ」

「ちょ、離して……!」

 

 鈴音さんに連れられてあいみちゃんが離れていく。ここにいるのはキリサキさんと私たちだけ。

 

「今なら安全に逃げられるから。さ、あなたも」

「……置いてけないよ」

 

 置いて逃げるなんてできるわけがない。だってあなたはずっと助けてくれたのに、私は助けちゃダメなんてそんなのおかしいよ。

 なんで、そこまで拒むの。あの時言ってくれた『失いたくないから』って言葉は私だって同じなのに!

 

 こうやって止まってしまったらもう引き剥がせない。くれはさんが意志を曲げるはずがない。……置いていくか、ソウルジェムが濁るのを待つか。その二択しかないなんて思いたくない。

 

 

 それは私の思いが反応したのか、それともキリサキさんが抵抗したのか。急に周囲の景色が変わった。これは結界のはずなんだけど、なにかが違う。

 『停止』の効果が切れたみたいでキリサキさんの腕が今度は私に近づく――でも、これ。

 

「このみ!」

 

 私を掴もうとしたわけじゃない。吹き飛ばされて、体に痛みを感じてからやっとわかった。殴られたんだ。痛いけど、魔法少女として戦ってたんだよ。これぐらいならまだ大丈夫。

 でも……魔女じゃないけどこんなに力があるなんて、やっぱり人じゃない。

 

「……だったら」

 

 鋏を魔力で作って構える。……手を剥がせないなら、その腕ごと切ってしまえばいい。人じゃないなら大丈夫、私ならできる。

 けれど、そんな私の決意はこっちを見るくれはさんの顔を見たら消えてしまった。

 

「――」

 

 どうしてそんな顔をするの。私は無事なのに、なぜ悲しんでるの。

 ぽつりぽつりと声が聞こえる。「違う」、「守りたくて」、「与えたくて」……全部、自分自身に言い聞かせるように刺々しくて重々しい。

 

 穢れの侵食の速度が、見るからに上がった。チョーカーに付いているそれが言葉を吸い込んでいるようにどこまでも黒く沈んでいく。

 違う、私だってあなたを助けたくて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 『それ』は魔女じゃない。けれど魔法少女でもなければキリサキさんでもない。

 

 

 

 くれはさんの背中から伸びる『それ』は悍ましい釣鐘で。

 

 己が生誕を誇示するかのような金切り声を上げて。

 

 

 おどろおどろしい奇怪な羽根を、広げた。

 

 

 




■今回の内容
 『Rumors in Disguise』

■鈴音
 帰ってきた恐怖の魔法少女。こないで。
 誤解が解けたので他の魔法少女と同対応に。

■あいみ
 既にあきらと出会っているので行動が早い。
 かなり重要。

■ホオズキ市の魔法少女
 前回から2名様追加。
 このメンバーがほぼ退場するってうせやろ?

■白タヌキ
 お前は一体どっちの味方なんだ……?
 効率化を図る走者の味方。

■アレ
 時期的にもう大丈夫。



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