マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
いろはちゃんの行動を気にするRTA、はーじまーるよー。
メインストーリーが始まっているにも関わらず、本日はまたブロッサムです。金策はいつだって必要だからね、仕方ないね。
前回開始した『はじまりのいろは』は、いろはちゃんが記憶を取り戻せばクリアとなるのでもう終わっています。なので宝崎市に一旦帰ったんじゃないですかね。
というわけで次は第2章『うわさの絶交ルール』です。これはかもれトライアングルといろはちゃんが揃うことで開始します。今回はももこちゃんと会わせているので勝手に発生するのですが……既にかえでちゃんが勤務中にもかかわらず元気がないので、もう秒読みですね。
なお、これはスルーして大丈夫です。スタート時期を本編開始時にした場合のウワサ関係のチュートリアル的な位置にある都合上、ハードでもやちよさんがいれば突破してくれます。さりげなーく動向だけ確認しておきましょう。
なので第2章の間はほぼ自由に行動できます。かえでちゃんとレナちゃんの絶交に慌てふためくいろはちゃんを見るのもいいですが、そんなことよりも今後のための根回しに走り回りましょう。
「……くれはさん、大丈夫?」
このみちゃんはスルーして組長に電話します。すみませーん帆秋ですけどぉ……次の会合、まーだ時間かかりそうですかねー? お耳に入れたいことが……あ、すぐにみなさんに連絡をすると。やっぱり組長は頼りになるってはっきりわかんだね。
じゃあ金策に戻りましょう。いい加減この場面も見飽きてきましたが、もう少しの辛抱です。チームみかづき荘が揃う頃には長らくお世話になったブロッサムともおさらばですね。
というわけで鍛え上げた接客力、見せてやるぜ!
おはよーございまーす!
組長が会合をセッティングしてくれた日になったので向かいましょう。もちろん帆奈ちゃんも連れて行きます。今日は? ウォールナッツ貸切の日!
オッス元気か!(入店)
こうしてわざわざ会う理由ですが、マギウスの翼の情報を共有するためです。既に魔女化を知られていますし、万が一にもななか組やアザレア組が敵に回られると厄介なので根回しが必要なんですね。
この二つのチームは結構簡単に防げます。ちゃんと考える時間と余裕があるタイミングで情報を与えればマギウスの翼と敵対してくれるとか、(魔法少女として)肝がデカいんすかね? 実力もデカいですよ。
くれはちゃんから話す内容ですが、この前ちょうどピーヒョロ姉妹の姉が深いところまで教えてくれてたので、事前に全部組長に教えておきます。すると言いたいことを全部言ってくれるので会話が短縮されるんですね。知力カンストか?
「魔女化を防げる手段があるのなら協力もやぶさかではありません。しかし――その手段の安全性とトップの思想がわからなければ話は別です」
(ドッペルとかどう考えても危ないし、マギウスは今あんな感じなので)当たり前だよなあ? まあくれはちゃんはドッペル使いまくりなんですけど。
話がマギウスの翼への対抗策を考えるものになればもう大丈夫です。こうなれば対マギウスの翼の名目でななか組とアザレア組に協力を要請できるので適宜利用していきましょう。
残りの話は適当に聞き流していいです。終わったら即座に次の行動に移ります。
というわけでももこちゃんに電話しましょ。ここでは用事がない日を聞くだけで十分です。
「あー……それなんだけど、今ちょっと立て込んでて。レナがさ……」
ストーリーが進んでいた場合、こんな感じで普段とは異なる反応をされます。ちょうどレナちゃんとかえでちゃんが絶交した辺りですね。あの二人は相当仲がいいのでいつものことだよいつものこと!
そんなことより、この時期に神浜に来るマミさんの対処のほうが大事です。最悪の場合、力技でウワサを倒してしまってかえでちゃんやレナちゃんが退場する羽目になります。
そうなるとももこちゃんはメンタルがやられるわ、やちよさんは強制的にいろはちゃんを帰すわでストーリーが進まなくなってしまいます。なのでウワサが不幸にも黄色の魔法少女に遭遇してしまわないように誘導しましょう。
問題はマミさんと出会う方法ですね。(安定したチャートは)案外少ないっす……。確実なのは見滝原からエスコートすることですが、時間がかかりますしそこまで行くなら一日見滝原に留めておいたほうがいいでしょう。
しかし、今回は幸運なことに一度出会えています。その際に信頼度を上げて連絡先を交換しているので確実に会えるって寸法じゃ! さやかちゃんとみゃーこ先輩ありがとー! フラーッシュ!
じゃあ電話を……向こうからかかってきやがった! だがうろたえん、うろたえんぞ。さてはまた白タヌキの入れ知恵だな?
「実は今、神浜にいるのだけど……」
行きます行きます(食い気味)。向こうから来てくれるなんて断る理由もないですからね。話がややこしくなるので帆奈ちゃんはエミリー先生にでも預けておきましょう。戦闘時以外はソウルジェムを預かってるのでその辺は今まで通りですね。
というわけで迎えに……あれはレナちゃん! レナちゃんじゃないか! しかも結界に入って行ったうえにマミさんまで突入してます。
おいなにやってんだおい~? くれはちゃんも混ぜてくれや! 楽しそうだね~! おっ、(攻撃の間隔が)空いてんじゃ~ん! やっちゃいますか!? やっちゃいましょうよ! くれはちゃん! ぼけっとしてたレナちゃん! 市外の魔法少女! って感じでぇ……。
なんて言っていたらマミさんが速攻で倒してくれました。(強すぎて)ブルッちゃうよ……。
ついでにレナちゃんの様子を確認しつつ……。
「……助けてなんて言ってないでしょ」
お、そうだな。このあとゲーセン辺りで捕まるだろうレナちゃんは放っておきます。いいですかマミさんこの子はこういう子なんです。
というわけで合流したらそれはもう露骨に新西区から遠ざけましょう。まず神浜さぁ……喫茶店あんだけど、寄ってかない? あ、いいっすね~(自作自演)。
「あ、くれはちゃん! 新作ができたんだけどどう? 見てく?」
「やるなら外でやってね……」
今回は雫ちゃんの実家の喫茶店にやってきました。ここで雫ちゃんとマミさんを会わせておくとこの先ちょっと安心できるので遠ざけるついでです。(本走の内容に合わせたチャート変更)綺麗でしょ? ガバがないでしょだって。
ではここにマミさんをできるだけ引き止めつつ、有用な情報を聞き出しましょう。
マミさんとお茶をするのは良いですね、ええ。常にこう……ピシッと! チャートを保っとくのが。あ~絶対会話しますよそりゃ。これ話楽しいだろうなぁ。
おっと、誰か近づいて来ますね。会話中に参加してくるのは知り合いになっているキャラのはずですが……水名の……。
「あーっ! くれはさん! わたし、この前大変だったんですよっ。あ、でもアレはアレで……」
う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
またお前か七瀬ゆきかァッ! やめろ近づくな会話をして信頼度を上げようとするなああああああああ!!
やべぇよ……やべぇよ……黒羽根と後の黒羽根と後の幹部クラスに囲まれてるよ……ここは敵の本拠地か?
「大変だった? じゃあありがたい変化だったね! ささ、何頼む? オススメは酢飯ね。推す、酢飯……!」
「酢飯……そういう選択も……」
「その、冗談だと思うわよ?」
いや僕もう大いに感謝ですね。あやかがひたすら会話を引き延ばしてくれています。ゆきかを引きつけてくれているとはお前……そういう、関係だったのか……(青春)。
ひたすらギャグを聞きつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
その日は、五人で結界の中にいた。
使い魔を倒したら暴走し始めた羊のような魔女を相手に正面から戦うのは不利。そう判断した私はあやめに攻撃を防いでもらって、幻惑に使う霧で周囲を包む。
「このはさん、行けます!」
「作戦通りでいいんだね?」
せいかさんと葉月の言葉を肯定すると、想定通り視界が移り変わった。
水から水へ移動できる固有魔法……それは私の幻惑の副作用の霧でも発動できた。それはつまり、一度霧で包んでしまえば幻惑で翻弄しながら四方八方から多重攻撃を仕掛けられるということ。味方への影響もある私の固有魔法を最大限活かせる戦法だった。
振るうと蝶の舞う槍で一撃、二撃と着実に魔女にダメージを与えていく。そして動きを止めた瞬間。
「たあぁぁぁぁっ!!」
空から青紫の炎が振り落とされる。盾を投げ捨てて両手持ちにした剣は易々と魔女を切り裂いていって、燃え上がる炎と共に結界が消えたことが私たちの勝利を示していた。
「れいらすげー! でもそれ、サークルなんちゃらじゃなかった?」
「途中で恥ずかしくなっちゃって……せいかがノリノリだったから三人で考えたんだけど、まだ慣れがね……」
「そういえば元気に叫んでたねー。あやめもなにか考える?」
「ファイヤー! って感じのがいい!」
こうして他の魔法少女と協力することも今は珍しくない。一度目の昏倒事件の前からは考えられなかったことで、私たち三人以外の外の世界を信じてみると言ったあの日から確かに前に進めているんだろう。
特に協力することが多いのが、ななかさんたちのチームとれいらさんたちだ。以前から付き合いがあるのだから当然と言えば当然。だけれど、最近はれいらさんたちに連携を教えることが多かった。今回のように彼女たち三人が揃っていないときは個人個人の技を鍛えることに重点を置いている。
魔女退治の後はいつもなら反省会でもするのだけど、今日は先約があった。ななかさんたちとの会合だ。
それは定期的なものではなく急な呼び出しだった。似たようなことならスズネの件の時に葉月だけが参加したことがあったけれど、それよりも計画性がある動きだと三人で言い合ったことは記憶に新しい。
れいらさんとせいかさんの二人と別れて向かった場所はウォールナッツ。普段は人で賑わうそこはひっそりと静まり返っていた。今にも降り出しそうな暗い空模様の下、店内から漏れ出す光が営業中なのだとかすかに示している。
中には既にななかさんたちとくれは、そして更紗帆奈がいた。
帆奈は未だに私たちを睨むように見てくるけどもう慣れたもの。今さら蒸し返す話でもないしそのまま席に着いた。
対面に座るななかさんは笑みを浮かべていない。年下だとわかっていても、その冷徹さに私の口調も鋭くなった。
「……ウォールナッツを貸し切ってまでする話なんでしょ」
「ええ、今回の内容はファミレスでは話せません。こう言うでしょう? 壁に耳あり障子に目あり、と」
そう前置きすると、全員を見渡したあとに一拍置いて言った。
「お集まりいただいた理由は一つ。マギウスの翼について、です」
初めて聞いたその名前。なんでもマギウスの翼とは、魔法少女を魔女化の運命から解放するための組織だという。神浜でキュゥべえを見なくなった時期から現れて、規模を段々と増しているらしい。
……魔女化から解放される。その言葉に一瞬だけ心が揺れた。
ソウルジェムが濁りきったらどうなるのか。そしてそれがどれだけの悲しみを生み出すかはすぐ近くにいる二人が知っているし、想像に難くない。私だって葉月とあやめをその運命から解放できるのならそうしたいと思った。けれど。
「魔女化を防げる手段があるのなら協力もやぶさかではありません。しかし――その手段の安全性とトップの思想がわからなければ話は別です」
なにもわからない組織に私たちの運命を預けることはできない。
そこに集う魔法少女を否定はしない。その選択に至る苦悩を理解できないわけじゃないから。
ただ、ななかさんが随分と内情をすらすらと話すことが気になった。
「……随分と詳しいみたいだけど?」
「そこにいる帆秋さんが勧誘を受けたそうで。聞いた話を全部聞かせてくれました」
「くれはマジで!? あちしも会ってみたいー!」
考えてみれば、ここにいる魔法少女の中で誰を勧誘するかとなれば彼女になるのは当然だろう。どこかから親友を魔女化によって失っていると知られたら当然なびくと思われる。そうでなくとも、多くの魔法少女と交友関係のある彼女を引き入れるメリットは大きい。彼女がいるというそれだけの理由で、天秤が傾くことだってあるかもしれない。
けど、彼女を知っているのなら直接勧誘しても無駄だとわかるはず。今も隣で大人しくしている更紗帆奈の存在がそれを証明している。守りたいもののために強くあれるのだから。
ななかさんが言った話はそのくれはだけではなく、大東区の十七夜さんから聞いたものも含まれていた。
わかっているだけで水名女学園と工匠学舎。既にそこにはマギウスの翼がいる。くれはに聞くとそれ以外に確認が取れている場所はないみたいだったけど、東の魔法少女はその多くが理念に協調して参加していると考えていい。
話し合った結果、私たちは揃ってマギウスの翼に懐疑的な目を向けた。その理由は複数ある。
まず『マギウス』と呼ばれる存在が不明であること。自分たちの運命を見も知らぬ誰かに預けるなどできない。
そして魔女化を防ぐシステムの存在。そもそもどうやってこれを仕組んだのか。神浜市のみに限定されているから範囲を広げると言うが、それこそ手段がわからない。
最後に、なぜ組織立った活動をしているのか。白羽根や黒羽根という魔法少女の個性を限りなく消して動かすそれは、文字通り手駒として扱っているのではないか。
魔法少女の救済を謳うのであれば、それこそ大々的に伝えればいい。手段が正しく目的に誰もが賛同してくれると心の底から信じているのであれば、隠す必要などないのだから。つまり、そこにマギウスが出てこない理由が隠されている。
「しばらくは慎重に探りましょう。数が多いというのはそれだけで厄介ですから」
「あっ、だからファミレスじゃないんですね」
公共の場では誰に聞かれるかわからない。実例を示すように、ちょうどまなか先生が奥から顔を覗かせていた。心配そうな顔をしていて、それに気を使ってかくれはが手を振ると同じように振り返す。
それは気のせいのような軽いものだったけど、くれはの動きがぎこちないものに見えた。人形のように白い肌は以前と変わりないのに一抹の不安を抱く。
以前、調整屋に行った時にくれはの先輩だというひなのさんから言われたことがある。『無茶をしないか見ていてくれないか』と、とても心配した言い方で頼まれたのだ。義務や偽善ではない声が心に響いたのを覚えている。
だから、表面上見て取れなくてもそう聞いた。
「疲れた顔をしているわ。きちんと寝てる?」
「いいでしょ別に」
言葉を切っていつものようにメロンジュースを飲む姿はよく知っている。おそらく違和感は気のせいだったのだろう。やはり真顔だ。ただ、一瞬目を見開くなんて珍しいことがあったのは帆奈が言ったことが原因だろうか。
「つーかさ、くれはが拒否しててもあたしがマギウスの翼に行くとか考えないわけ?」
「ないですね」
「ないよ」
「ないネ」
「ないです……」
「ないわ」
「ないねー……」
「ない!」
間隔を置かずにくれはと帆奈以外全員が言ったその言葉。考えたことは同じだったみたいで、顔を見合わせて思わず笑みがこぼれた。
それが面白くなかったのか、帆奈は小さな声で呟く。
「……あたしがやったこと、覚えてるでしょ。なんで笑えんの」
曰く、そもそも自分が魔女をけしかけなければ魔法少女になることもなかった。仲違いさせようとしたことだってある。魔女化なんてものに悩まなくても良かった、と。
それは、本当に今さらな話で。
「過去は振り返らないとは言いませんが、だから未来を考えないという選択肢はありえません。考えるべきなのは現実に降りかかる災厄にどう対応するかですから」
「まぁ、ボクは遅かれ早かれ巻こまれてたと思うし……」
「私は前から魔法少女だったネ。今さらヨ」
「……私も、後悔はしてません」
魔法少女になったことは自分たちで決めたこと。そこになにか裏があるとは思っていたし、三人で覚悟もした。
「他人を信じること、あなたのおかげで気づけたようなものだから」
「あやめに友達もできたしね」
「あちし、嫌いじゃないよ」
するとよほど効いたのか、遂にはくれはの後ろに隠れてしまった。それがまた重い空気を軽くしたのは言うまでもない。
随分と明るくなってしまった雰囲気は会合の後の自由時間に似ていて、今日はここまでということになった。まなか先生に料理を注文して、その美味しさに感動してまた料理教室に通おうなんて日常を思い出せるほどには普段通り。
だから、ななかさんとくれはだけが隠れて話していたその言葉を聞いた時。その落差で彼女のぎこちなさを生み出す原因に思い当たった。
「……この際ですから言っておきます。あなた一人では限界があることを理解していますか。そしてあなたが倒れた時、誰が悲しむか。その間隙を利用しようとする者もいると知っているのですか?」
初めてその名前を聞いたのは、いつものように一人で魔女を倒した後のことだった。大したことではなく、最近、神浜市に魔女が集まってきているという話をキュゥべえから聞いたついででしかなかったのだけれど。
「マミが神浜市に行くなら帆秋くれはが生きていれば良かったね。彼女なら快く協力してくれたはずだ」
「……その子、魔女に殺されたの?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。重要なのは彼女を失ったことによる損失と結果を確認できないことだよ。彼女は実に多くの魔法少女と良好な関係を築いていた。それはボクたちにとっても有意義だし、キミもそうありたいと思ったことがあるんじゃないのかい」
「あったかもしれないわね。……ただ、こうして魔女が減ってくるとそんなことも言ってられなくなるわ」
「だから行くんだろう? 神浜市に」
その時のキュゥべえの言葉は、なにか含みがあったのだと神浜市を訪れた後に気づいた。
確かに、魔女と簡単に遭遇できた。けれど魔女も使い魔も外のものとは段違いに強い。今は対処できる強さだけど、これが数を増してより強力になったらひとたまりもない。
歩いて反応を見つけるたびに、この街だけに多い理由や活性化の原因を探らなければいけないという思いが強まっていく。このまま放っておいたら、グリーフシードを求めてこの街に集った魔法少女同士の抗争が起きたり、実力が伴わずに魔女に返り討ちにされる子も出てくるはず。きっと、あのくれはという子もその餌食になってしまったのだろう。
だからこそ、鹿目さんたちを近づけるわけにいかない。同じような目に遭わせるものですか。
「……根を詰めすぎたかしら」
そうして、休憩として入った喫茶店で偶然出会った魔法少女が『綾野 梨花』さんだった。見ず知らずの他人だというのに、眩しいほど明るい彼女に引き込まれていつの間にか同じテーブルに。"らしい"話題に疎い私に率先して話題を振ってくれるのはとても話しやすかった。
彼女の言うことは本当に年頃の女の子らしい。非日常で戦い続けた中で、魔法少女の同学年の子とこんな話を気兼ねなくできたのはいつぶりだろうと感慨深く思えた。ゲームセンターの話で彼女を思い出す頃には、「マミちゃん」なんて呼ばれるのにも慣れていた。
だから、その喫茶店で帆秋くれはと出会ったのはまったくもって偶然だった。たまたま同じ日に美樹さんが神浜を訪れていて、たまたま行動を共にして、たまたま同じ喫茶店に入っただけ。でもきっと、運命なんてそんなものなのかもしれない。
彼女への第一印象は、冷徹。スラリと伸びた背と射抜くような眼差しはそう思わせるのには十分で、結界の中でもないのに私に警戒心を抱かせる。隣にいる美樹さんや小学生みたいな子の陽気さが更に異質さを際立たせていた。
……あるいは、同属嫌悪というものかもしれない。それは自分の弱々しさを見せつけられているようだったから。
ゆえに、キュゥべえが言っていたことが間違っていたと私の口が示した。死んだはずじゃ、なんて言ってしまって、場が騒然となるにも関わらず、彼女は他人事のようにそうだったと肯定したのだ。
「かいつまんで説明するとだな――」
小学生みたいな子、もとい私よりも年上のひなのさんが言うには、魔法少女を狙う魔法少女が現れて、戦闘を避けるために一芝居打った結果としてそう伝わっていたらしい。
魔法少女の縄張り争いで戦うことだってあるけど、執拗に命を狙う相手はまた別物。そんな魔法少女がいるなんて考えもしなかった。犯人は現場に戻るなんて言うけど、実際にもう一度来るかもしれない。その危険性を考えたら、またこの街に近づけてはいけない理由が増えた。
ああ、だけど、私はこう言った。
「……帆秋さん、なにか困ったことがあったら言ってね。できる限り力になるから」
だって彼女は、演じているのだろうから。
次に神浜を訪れた時、最初に思い浮かんだのは帆秋さんのことだった。交友関係が広く街に詳しい彼女に協力を頼むのは至極当然なことで、連絡を取る手はすいすいと動く。
快く承諾してくれた彼女は迎えに行くと言ってくれたけど、それも悪い。互いに譲り合いになった後、折衷案として待ち合わせをすることになった。
途中、一人で結界に入っていってピンチな子がいたから思わず助けに入ったり、帆秋さんと喫茶店で休憩したりして感じたことがある。その時々会った子が全て帆秋さんの知り合いで、本当に顔が広いのだと。そして、彼女が頼りにされていてよく誰かを助けているのだと。
いらぬ世話まで焼く姿。危なっかしく見えるそれは、一つの疑問を浮かび上がらせた。それはあの思いを否定したかったのかもしれない。二人だけで街を歩いてる時、聞こうとしたことがあった。
「帆秋さん、あなたには後輩っているのかしら」
「……いるけど、どうして」
「いえ、ただ……」
そこまで言って、なんでもないと唐突に打ち切った。
気の緩みが言わせようとしたそれは、簡単に聞けるものじゃない。親しい間柄でも心の壁が存在するかもしれないのに、日の浅い彼女に問うことは間違ってる。……寂しいや怖いという弱みを見せることができるのかなんて。
少しの静寂の後、先に口を開いたのは帆秋さんだった。
「私の年下や後輩に該当する子はたくさんいるけど、そういう意味じゃない後輩は一人だけよ。最初に手を伸ばした大事な後輩。……最初の親友でもあった」
その口調はあまりにも重々しく、私にのしかかる。
似てはいないのだと否定をしたかったのに、それは以前は気の置けない関係だった彼女を想起させるようで。
だとしたら、やはりあなたは。
――そこで、背後に誰かの気配を感じた。
「あ、しまっ――」
「……お取込み中すみません、どうしてもそちらの方に用があるもので後を追わせていただきました」
曲がり角で立ち止まったからか、後ろから慌てる声が聞こえて声をかけられた。
それはボーイッシュな子と眼鏡をかけた子。帆秋さんの様子が戻っていることと、顔見知りにする反応から、彼女たちにも面識があるのだという理解は早かった。
簡単に自己紹介してくれたのは『常盤 ななか』さんと『志伸 あきら』さん。彼女たちは私の噂を聞いてやってきたのだという。帆秋さんと歩いていたから少し様子を見ようと近くを歩いて見ていたらしい。
尾行していたことを謝られたけど、それよりも気になるのは噂の内容だった。
「そうですね、例えば……見滝原から最強の魔法少女がやって来た、と調整屋で聞きました」
「神浜は噂に尾ひれがついたり勝手に変わったりするのよ。気にしないで」
そうは言うけれど、『正真正銘のバケモノ』だとか『魔女百人斬り』とか噂されている気分は良くない。しかも私の武器は銃だから微妙に違う気もする。……こういう面でも特異な街なのね。
所詮は噂。過大評価をされたくないと誤解を解いてくれないかお願いしたらあっさりと了承してくれた。それも最初からそうなるように仕組んでいたかのように早い。
それだけ言うと、二人は用事があると言って離れていった。
「あの二人、あんなにそそっかしいの?」
「そうじゃないはずだけど。特にななかは」
帆秋さんもなにか思うところがあったのか、首を傾げていた。
なにか怪しいものを感じる。……と言っても、この後は特に変わったこともなかった。一通り調査を終えるまでに彼女たちも再び出会うことはなく、帆秋さんに感謝を告げて見滝原に戻るだけの変化のないもの。
ただ、新西区の建設放棄地で感じた得体の知れない魔力。それを除けばの話だけど。
「なるほど、神浜は随分と不思議な状況になっているみたいだね。特にその得体の知れない魔力が気にかかる。魔女や使い魔でなければ魔法少女でもないって本当かい?」
「それは間違いないわ。次に向かう時はそこを重点的に調べる」
「ボクからもお願いするよ。あの街の情報はいくらあってもいい」
「……帆秋さんから直接聞こうとしたことはないの?」
「彼女は必要な時以外無視するからね。協力的なんだけど、こちらから話すのは難しい。でもキミは上手く接触できているね」
それはまるで私が彼女を利用しているような言い方。時折キュゥべえが見せる変な一面だった。
慣れたことだとこちらも言い返そうかとした私の言葉は胸中で止まる。彼女は、単なる協力者の範疇なのだろうかと。
今までの彼女との出来事を反芻する。それはあまりに短い時間だったけれど、言葉を選んで口にするならば。
「……仲間で、友達だもの」
■今回の内容
第一部第2章『うわさの絶交ルール』
第2章アナザー 『この町だけが違う』
巴マミ 魔法少女ストーリー 3話 『見つめ直す時間』
■ななか組長
困ったら組長に任せておけばどうにかなる。
帆奈ちゃんと会ってもブチ切れにはならなくなった。
■マミさん
見滝原の戦闘力がやべーやつ。マミちゃん。
多分噂は全部合ってる。
■くれはちゃん
「話は聞かなかったことにしておくと言った。
だから観鳥経由で知ったことは何一つ言っていない」
■ピーヒョロ姉妹
情報漏洩の疑い。
ひどいでございます。
■ダメなルート
マミさんがウワサを倒してマジ狂い、見滝原に帰ってったあとももこから助けてくれってメール来るから今から建設放棄地に行って助けてやるよ、魔法少女も何人か調整屋で調達してやるよ、て答え。壊れていく女の子が好きだって言うけど、こんなことしてたらチャートマジに壊れるな。