マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート26 ウワサの守り人

 

 推して参るRTA、はーじまーるよー。

 

 オッス(初手入店)。

 というわけで調整屋です。(来るのは)シュー……三日か四日ぐらいですね。

 

「くれはちゃん、疲れた顔をしてるわよ? あまり無理はしないようにね」

 

 デバフがかかりすぎているとこんなことを言われますが、この身は常在戦場の意志の体現。RTA的に余裕はないのでスルーします。

 

 ここに来てみたまさんと会話している理由は一つ。マミさんが来ていないかの確認です。第5章までに来たかどうかで少し動きが変わるので、(気をつけたほうが)イーヨー……。

 とにかく第5章に行ければマミさんの行動を気にする必要がなくなるので多少は楽になります。もう少しの辛抱です。

 

 そんなわけで第4章『ウワサの守り人』です。今までと異なり、この辺からウワサに対処しないとチームみかづき荘が危険になります。

 これの発生タイミングはまちまちで、いろはちゃんが『ミザリーウォーターのうわさ』に遭遇して不幸の水を飲んだら発生という運ゲーです。一応参京区でひたすら連れ回せば発生確率を上昇させることができますが、いろはちゃんを利用して発生させようとすると時間がかかります。

 

 ですが、今回ばかりはなかなか発生せずとも問題ありません。せっかちじゃないのも悪いことじゃない(走者の屑)。

 

 というのも、第4章開始前に『佐倉(さくら) 杏子(きょうこ)』が神浜にやってきます。メインストーリーが始まって動きにくくなる前に出会ってしまいましょう。

 

 彼女の移動ルートは結構まちまちで、新西区にいるかと思えば北養区にいたりします。傾向としては食べ物が関わるエリアに出やすいですがあまりあてになりません。

 なので、狙うのは調整屋です。杏子ちゃんとフェリシアが出会った場合には必ずここに来ます。そしてこの行動が発生すると、風が吹けば桶屋が儲かる理論でなぜかいろはちゃんが水を飲みます。

 つまりフェリシアを引き連れていれば発生タイミングを調整することができるんですね。

 

 というわけでフェリシアを見かけていないか、かこちゃんやあやめに確認します。もしもーし。あ、見てない。ハロハロー? なるほど見てない。じゃあ明日香、どう? はえ〜見てないと。

 

 ダメだな!(超速理解)

 仕方がないので飲食店を回りましょう。運が良ければ杏子ちゃんと遭遇できますし、その間にフェリシアの目撃情報が来るかもしれません。

 

 

 おうやってるかい!(万々歳)

 

「いろはちゃん、今日は!?」

「はい! 中華そば……ってこれ普通のラーメンと同じじゃ……」

「気持ちが違うんだよ!」

 

 お前漫才やってんじゃねえんだぞ! 

 ちなみにいろはちゃんは常連だという柊さんを待つために連日万々歳に通っているので会うのは簡単です。なんか前にくれはちゃんも似たようなことしてましたね。

 

 ここはハズレみたいなので次行きましょう。あまり時間をかけると閉めようとする扉を足で止められます。

 

 そうは言っても、さすがに東までは行かないのであとは雫ちゃんの家とか喫茶店を回るしかないです。一応ウォールナッツに行っておきますが、まなかちゃんが杏子ちゃんと遭遇しない限りここには来ないので可能性は低いでしょう。いなきゃゲーセンですね。

 

 

 というわけで着きました。もう水名の制服が見えてますがまなかちゃんとか莉愛様やろ……な? そうだと言え!

 

「あ、よく会いますねっ!」

「知り合い?」

 

 たまさかゆきかァッ! またお前はトラブルを背負い込んでるな!? でも杏子ちゃん連れてるので……なんで?

 ア!(スタッカート) わかったぞ杏子ちゃんを引き寄せて水名繋がりでウォールナッツに連れ込んだな!? 偶然来てなかったらロス案件じゃねえか!

 

「ええ、急に来たんですよ。腕が振るえて良い機会でしたが」

 

 ちなみにまなかちゃんですが、水名の生徒会の交流パーティーの料理を作ったり役員の生徒にチョコを頼まれたりと生徒会と結構関係があります。

 ところで、ゆきかは毎年生徒会役員です。なるほどぉ……効果的な関係ですね。バキィ!!(チャートが壊れる音)

 

 まあそれは不承不承ながら了承します。

 

「ふーん、あんたも魔法少女なんだ。確かに多いね」

 

 ヒュー! 見ろよ新鮮な杏子ちゃんだ! 

 彼女もステータスがとんでもないことになっています。風見野もやべえな。ところで風見野市にぃ、うまいラーメン屋、あるらしいっすよ。おっ、そうだな(無視)。

 

「あの、神浜を調べるならわたしよりもくれはさんが良いかと……」

「くれは? ……あー、あんたが帆秋くれはか。一応話は聞いてるよ」

 

 この様子だとマミさんが神浜の情報を伝えた時にくれはちゃんのことも教えてます。事前に会っておくと杏子ちゃんと会った際に話がスムーズに進んでいいですね。

 普段は一緒に行動してくれない彼女ですが、ここでは一時的な協力関係であることを強調すれば第4章開始までの僅かな間だけ付いてきてくれます。多分優しいんだと思うんですけど(名推理)。

 

 それではゆきかに別れを告げて杏子ちゃんと出かけましょう。彼女は神浜に魔女を狩りに来てますが、噂に関しても調べようとしています。そういう特異な現象が魔女に関係しているかもしれないからですね。なのでかこつけてフェリシアと引き合わせましょう。

 

 ヘイ杏子ちゃん! 今はなにを探してるんだい!

 

「特別これ、ってもんじゃないよ。ただ『花咲か少女』って噂を聞いただけ」

 

 なるほどぉ……少女が歩いた跡に花が咲いて、周りには花びらが降って……とかいう噂ですね。

 確かに不思議な話ですが、該当しそうな人がいます。というわけで新西区に行きましょう。手がかりやるから付いて来い!

 

 

 もちろんブロッサムです(いつか帰る場所)。

 お分かりかと思いますが、その噂はこのみちゃんが大量の花を運んでただけの話です。噂なんてこんなもんだぜ?

 

「なるほどね、花咲か少女……普通の話だったってわけだ」

「……くれはさん、また誰かを助けてるの?」

「また……?」

 

 なんか空気がやべぇな! 撤退じゃ撤退!

 っておうどうしたかこちゃん!

 

「ちょうど連絡しようと思ってたんです。フェリシアちゃん、今は休憩室にいますよ」

 

 杏子ちゃんとフェリシア、ヨシ! 

 じゃあ呼んでもらったら適当な理由で帰りましょう。あとは二人で仲良くな!

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

 というわけで、なんやかんやでいろはちゃんが水を飲んだので第4章『ウワサの守り人』が始まりました。開始してから24時間が経過すると別ルートに行ってしまう可能性があるので速攻で片付けましょう。

 

 なお、今回はななか組とアザレア組を呼びません。もれなくフェリシアと交友関係にあるかこちゃんとあやめが付いてくるからですね。いろはちゃんが『友達がちゃんといるんだ』なんて思ってみかづき荘に引き込まないルートに分岐する可能性があります。

 

 まずは話を聞きに行きましょう。なにをするにしてもいろはちゃんの様子確認からです。

 

 

 オッス(万々歳)。

 

「あ、くれはー!」

「フェリシアちゃん、知り合いだったの?」

「おう! お得意様ってやつだぞ!」

 

 こんな感じで万々歳にいる時は既にフェリシアが合流しています。水を配っていた『フクロウ印の給水屋』を探した後ですね。

 

「……帆秋さん、ひょっとしてあなたもウワサを?」

 

 当たり前だよなぁ?

 手伝うと言いだせば、参京区で水を飲んだあとから謎の紙が降ってくるという情報が得られます。ああこれはウワサですね間違いないたまげたなぁ。

 しかし、やちよさんが妙に協力的ですね。もうちょっとツンツンしてそうなもんですが。

 

 話を聞いていけばこのウワサの調査をすることになります。手分けしての探索パートに突入です。

 

 ですがこっちは一人なので心許ねぇなぁ。直接戦闘になる場合は帆奈ちゃんを連れていけないのが痛いですね……これは痛い。

 というわけで誰かを呼んできましょう。誰にするのかと言いますと……。

 

「今日はどうしたの? あ、この前はハイキングイベント教えてくれてありがとうね」

「……結構歯ごたえがあったわね。あのクイズ」

「見せてもらったやつ? 私じゃムリーって感じのだったアレ?」

 

 こころ、まさら、あいみの中央学園トリオです。フェリシアも中央学園ですしちょうどいいですね! ちなみにフェリシアは知り合いがいるとちゃんと学校に行きます。そうなると行動が把握しやすくなるのでうまあじです。

 まあ正直言って戦力があってデメリットがなければ誰でもいいんですが、今回は途中で利用できることが起きたのでこの人選です。

 

 ところで、今回のクリア条件は非常に簡単です。参京区にいる『ミザリーウォーターのうわさ』の本体を倒せばそれで終わりっ!

 通常プレイだと毎回別の場所にいるコイツを探す探索パートを楽しむところですが、今回は最初から判断できる方法があります。短縮だ短縮。

 

 じゃあ出発だぜ! ついてきな!

 

 

 

 ウワサと遭遇したのは参京区なのになんで水名区に来てるんでしょうね(すっとぼけ)。もちろん用があるからです。

 

「……あの人を尾行するの?」

 

 見てくださいよあの顔! 悪いことする人の顔じゃないでしょ! まあ白羽根なんですけど。

 

 というわけでピーヒョロ姉妹の姉を尾行すれば勝手にその場所を教えてくれるって寸法です。彼女がマギウスの翼であると事前にわかっていなければ無理ですが、自らバラしてくれたので利用します。ガバの功名だな!

 しかも組長から彼女を参京院教育学園の近くで見かけたとも聞いています。このはからも別の学校の生徒を見かけることがあるとも来てますね。ここまで情報が揃ってる以上、尾行してもなんの問題もありません。

 

 今まで鍛えたくれはちゃんの尾行スキルを活用してもいいですが、大人しくまさらに任せましょう。向かった先はやっぱり参京院で、その地下に『ミザリーウォーターのうわさ』があることまで突き止めてくれます。

 

 じゃあ全部いろはちゃんに伝えて乗り込めー!

 

 地下水路を進むことになりますが、ここからはモブ黒羽根とエンカウントするので気をつけて進みましょう。と言ってもいろはちゃん、やちよさん、鶴乃ちゃん、フェリシア、くれはちゃんと中央学園トリオを加えた八人という数の暴力なので気にする必要もないんですけどね。

 

「ま、待て!」

 

 ああいう勇気はHIPのYOU。本当の勇気とは別のものだ……。

 

 なんだかんだで『黒羽根』と戦うのも初めてですね。対人戦になるので普段とは異なる戦い方が必要です。下手に大ダメージを与えるとこっちの穢れが増えますし、ソウルジェムを誤って砕こうものなら大惨事待ったなしの厄介な相手です。

 

 ところでみなさんお忘れかもしれませんが、くれはちゃんは対人戦鬼弱魔法少女です。特に数が多い黒羽根相手では『停止』で一人一人止めていたら消費がマッハです。ですが固有魔法なしで戦ったら鍛え上げた攻撃力で簡単にスプラッタな現場を生み出してしまいます。

 つまり、勝てはしますが被害甚大です。戦うだけロスですね。

 

 なので味方に頼ります。であえであえー!

 おっほっほっほ~余裕だ(レ)。

 

 なお、途中でフェリシアが黒羽根に雇われそうになるイベントが発生しますが、ここまでにくれはちゃんが良い値段で雇ってたので効かねぇんだよ! お金のパワーは凄いわね。

 

 それとそろそろあの方にも出てきてもらいましょう。後ろだ!

 

「赤いねーちゃん!」

「あなた……」

 

 杏子ちゃんが水を飲んでいた場合、いろはちゃんかフェリシアを尾行して噂を探ろうとするのでこの辺まで引き連れてから姿を現してもらいます。するとしばらく付いて来てくれるのでさらに戦力が上乗せです。もう負ける気しねえな?

 

 道なりに進んで広い場所に出ると白羽根が二人待ち構えてます。まるでボスみたいだぁ……(直喩)。なにか言い始めますがくれはちゃんは面識あるんですよね。

 

「マギウスの翼、白羽根『天音 月夜』にございます」

「マギウスの翼、白羽根『天音 月咲』だよ」

「……笛が武器? 気をつけてみんな! この場所は音が反響する!」

 

 サンキューこころちゃん! じゃ、止めますね……。

 

 天音姉妹の厄介な点は音で行動を阻害するところです。なので『停止』で音を止めればただの一般魔法少女です。『笛花共鳴』はまた原理が違いますが大人数相手には使えないので問題ないですね、ええ(満足)。

 

 それではいろはちゃん、鶴乃ちゃん、フェリシア、まさら、杏子ちゃんにはウワサ本体に向かってもらいましょう。ここは任せて先に行けぇ!

 

「ま、待つでございます!」

「ここは通さな――」

 

 音と天音姉妹は別判定なので今度は足を止めましょう。これは消費が多いので五人が通り抜けられそうならすぐに解除します。

 

 ところでここのウワサですが、実は特効になる魔法少女はすぐそばにいます。

 

 ご存知、ないのですか!? 彼女こそ、願いで宝くじの一等を当てて八億円を掴み、万々歳で笑顔を見せ続けている、最強魔法少女、由比鶴乃ちゃんです!

 

 そんな彼女の固有魔法はズバリ『幸運』です。不幸の水を飲んだとしても効果を打ち消します。

 今回はいろはちゃん、フェリシア、杏子ちゃんの前に立ってもらう役です。本来は不幸の効果でなにもないのに転んだり、降ってくる岩がホーミングしたりして妨害されます。

 ですが、鶴乃ちゃんがいれば転びもしなければ岩が勝手に明後日の方向に飛んでいくので悠々とウワサ本体まで近づけます。それに手下の攻撃が避けれなさそうなら、まさらが透明化でターゲットを外してくれます。そのための人選ですね。

 

 それでは『白羽根 天音姉妹』戦ですが……。

 

「だったら直接……!」

「――やらせない!」

「あ、危ないでございます!」

「銃なんて卑怯だよー!」

「そう言われても……」

 

 くれはちゃんを狙って動こうとしてもあいみが牽制、こころちゃんが盾になってくれるので大丈夫です。さらにやちよさんもいますし、(防人としての仕事は)お、大丈夫か大丈夫か。

 

 ウワサ討伐組も鶴乃ちゃんとまさらという強力コンビが追加でいるのですぐに帰ってきます。

 天音姉妹を追いつめるとドッペルを出してきますが、ウワサを倒すまで限定なのでこのように速攻で片付けるとスキップできるんですね。

 

 そしてイベントが入ります。遂にみふゆさんが姿を現す場面です。ここで付いてくる黒羽根は時々ネームド魔法少女が混ざっているので探してみるのも面白いですね。でもゆきかはもう勘弁な!

 

「……本物のみふゆなの?」

「魔女やウワサ、ましてや幻覚でもありません。信じてくれますよね、やっちゃん」

 

 ここの話はみかづき荘ルートだと聞いておくべきですが、特に関係ないので聞き流してさっさと帰りましょう。だからやちよさん引き止めないで帰らせて! もう夕方ですよ家に帆奈ちゃん置いてきてるんですよ!

 

 杏子ちゃんが引き剥がしてくれました。やったぜ。じゃあこのまま帰りましょうか。

 

 と、杏子ちゃんが付いてきますね。おっとわざわざ会話か? おうどうした!

 

「あんたがなにを願ったかなんて知らないけど、その力は自分のために使いなよ。命賭けてる時ぐらいさ」

 

 やっぱり……優しさを……最高やな! 地味に信頼度が上がって良いですね、ええ(満足)。

 

 遂にマギウスの翼と正面衝突したので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう! この前ね、偶然隼人くんを本屋で見かけてね!」

「う、うん……」

 

 それは、さしたる理由もなく喫茶店にいたときのこと。こころが話に相槌を打ち、あいみがいつものように妄想に入るかどうかという瀬戸際に彼女は現れた。

 

「ちょっといいかしら」

 

 帆秋くれは。天乃スズネの襲撃からなにかと縁のある存在で、時折私たちを登山や海、プール等に誘っては抜けた部分を見せる魔法少女の知り合いの一人。

 いつも唐突に現れるものだから私を含めて特に気にすることはない。彼女を交えて会話をするだけだ。

 

 ただ、彼女を見ると思い出すことがある。観鳥令と春名このみという、あの夜にこころと並んでいた二人を。

 

 彼女たちとの繋がりは薄い。しかし、帆秋さんとその二人の関係性にはシンパシーを感じていた。心のどこかで私たちを他人から見たらああ見えるのかもしれないと思っていたのかもしれない。

 

 それだけに、つい最近見かけた観鳥さんの姿は記憶のイメージとかけ離れて見えた。

 自分一人で入った結界。そこにいた彼女は白いローブを着て、色違いの黒いローブの魔法少女たちを率いていた。上下関係が透けて見えるそれは友人関係という言葉では正しくないだろう。

 

『危害を加えるつもりはないよ。知らない仲じゃないしね』

 

 私にそう言った彼女は果たして、あの夜見た彼女だったのか。

 

「――ねえ、まさらはどう?」

 

 こころの声が思考の海に沈んでいた身を引き上げる。

 考えながらも話は聞いていた。24時間以内に解決しないといけない『ウワサ』というものに巻き込まれている友人がいるから、手数として私たちを欲していると。

 

「こころが行くなら。……と言っても最初から協力する気でしょう。あいみも」

「もっちろん! 友だちだからね!」

「ね、私たちはいつだって……どうしたの?」

「……なんでもない」

 

 人の事を言えた義理じゃないけど、つくづく彼女は不器用だ。

 

 彼女が私に頼んだのは尾行。帆秋さんの要請で誰かを追うのはこれで二回目になる。一度目は『三栗 あやめ』。そして今回は『天音 月夜』という水名女学園の生徒。ウワサに関係しているかもしれない組織の一員だそうだ。

 

 水名女学園から出てきた天音月夜は、固有魔法で姿を消した私に気づくことなく歩みを進めていき、何故か参京院教育学園の敷地に入っていく。されど校舎に向かうことはなく、淀みない歩みで校庭を通り抜け、生徒には用がないであろう倉庫のような建物が並ぶ場所へ。そして最後は寂れたトンネルで足を止めた。

 

「異常はないでございますか?」

「はい。誰もウワサには近づかせておりません」

 

 立て札によればあの先は地下水路。そんな場所を監視するように立っていたのは、あの黒いローブを着た魔法少女だった。天音月夜に従うその姿は既視感を覚える。彼女が白いローブを着ていれば同じと言ってもいい。

 

(……ここまでね)

 

 これで行き先はわかった。ウワサというものも関係していると知ることができた以上、早急に伝えるべきだ。

 けれど、二人の話の中で聞こえた『帆秋くれは』という言葉が私の足を止めた。

 

「もし、本当にここまで来たら――」

 

 彼女がここまで来たらどうするか。会話はそこで途切れた。

 それがどういった意味を持つものかはわからないけど、向こう側に彼女がいるのなら警戒されていてもおかしくはなく、そういう類のものだと判断した。

 

 戻った先で警戒されている理由を本人に聞くと、あっさりと「自分も勧誘されたから」だと答えが返ってきた。情報を知っているからマークされている。隠すことでもない。とも言う彼女だったけど、その中に観鳥令の名前は出てこない。

 帆秋さんの嘘がすぐにバレるという話は知っている。ならば、本当にそう思っているのだろう。

 

 これ以上聞くことでもないとそこで口を閉じると、調べた情報を元にとんとん拍子に話が進んでいく。

 巻き込まれたという『環 いろは』。昏倒事件の時に協力した『七海 やちよ』と『由比 鶴乃』。傭兵として活動していると聞いた『深月 フェリシア』。目的地に向かう度、段々と増える魔法少女たち。前もそうだったけど、帆秋さんはまた色々と手を伸ばそうとしている。

 

 その四人とずっと背後から付いてきていた『佐倉 杏子』を加えてトンネルを進むと、円状に開けた場所に出た。

 

 そこで待っていたのは、観鳥さんが着ていたものと同じ白いローブ。解放がどうとか言葉を交わしているけど、ここまでに襲いかかってきた黒羽根と同じ敵なのは間違いない。

 だから奇襲に備えてダガーを構えると、その二人はたじろいだ。……対魔法少女ならスズネのように警戒をするべき。これもフェイクだと考えたほうが良い。

 

「……いくら人数がいようと、強い魔法少女だろうとここに来た時点で勝ち目はございません」

「ねー」

「ねー」

 

 白いローブを脱ぎ捨てると、その下の顔はそっくりだった。尾行した天音月夜がまるっきり二人。和装のような魔法少女としての衣装もほぼ同じ。違いは髪型と体型程度。この分だと戦法や使う魔法まで似ているはず。

 

「マギウスの翼、白羽根『天音 月夜』にございます」

「マギウスの翼、白羽根『天音 月咲』だよ」

「……笛が武器? 気をつけてみんな! この場所は音が反響する!」

 

 こころの懸念通り、彼女たちは笛を構えて演奏を始めようとした。しかし、音は出ない。こちらには『停止』の魔法を持つ帆秋さんがいるのだから当然の話だ。そんなわかりやすい攻撃手段を使えば音を止められる。

 

「いろは、フェリシア、杏子は先へ。……それと鶴乃も。不幸を操るウワサならあなたの『幸運』が効くはずだから」

「同感だわ、口寄せ神社の時と同じよ。ここは私たちが抑えるから」

 

 けど、それに続く言葉は予想外のもので。

 

「まさらもお願い。耐えるのは得意だから!」

「……でも」

「絶対に向こうのほうが大変だと思うの。大丈夫、私を信じて」

 

 離れたら守ることができない。彼女を傷つけられるのは不快だ。だからここにいる。

 

 ……と、少し前なら思っていたはずだ。

 こころの強さを信じられない私じゃない。今はあいみだっている。側にいることだけが彼女を守ることではないとわかっているからこそ、私はこの選択を肯定できる。

 

「ま、待つでございます!」

「ここは通さな――」

「行くわよ。帆秋さんが止めてる間に」

「は、はい!」

 

 『停止』が効いているようで、まったくその場から動かない二人の横をすり抜けていくのは簡単だった。

 似たような暗い道を進んでいくと突如視界に広がる世界が切り替わる。魔女の結界に似てはいるけど魔力は別。きっとこれがウワサなのだろうと、いろはさんに尋ねて返ってきた返事からしても確かにそうらしい。

 

 奥にいる長靴か角杯のようなのがその本体。ということは、周囲を飛び回るフクロウが使い魔に該当する。こちらに気づいたそれらは一斉に向かってくるけど、これはなんてことはない。それぞれの得物で叩き落とせばいいだけ。

 

 ただ、どこからともなく降ってきた岩が私たちの行く手を阻む。避けようとするとその先に降ってくるのはまるであいみの『行動予測』のよう。動かない本体が狙っているのかと思って姿を消してもなぜか命中させてくる。結界に入ってから辺りに漂う不穏な気配が引き寄せているかのように。

 

「……そっか、これが不幸なら! ちゃらー!」

 

 鶴乃さんの掛け声と共に魔法が発動する。

 『幸運』。目に見えないはずのそれは、確かにここに存在していた。避けられなかった岩が軌道を変えてフクロウに当たり始めている。

 

「みんな、私の後ろに! このまま突っ込むよ!」

「おー!」

「わかりやすくていいじゃん。乗った!」

 

 そう簡単に行けばいいけど、フクロウはまだ飛んできていた。岩を避けてきたそれに当たりそうないろはさんを透明化で狙いを逸らして、フクロウは一閃して消滅させる。

 

「あ、えっと……」

「まさらよ」

「……まさらさん、ありがとうございます!」

 

 彼女を前に私が最後尾になって突撃する。あの杏子さんとフェリシアは直接狙う前の方が向いていそうだから。

 取り巻きを片付けている間もまったく動かない本体は、扇から放たれた炎に焼かれ、巨大なハンマーに叩き潰され、同じく大きな槍で貫かれた。耐久性はあるようだったけどそれらの前には無意味だっただろう。黄金の身体はひび割れて、結界と共に消えた。

 

 薄暗い空間に、私たち以外の気配はない。新手が来る様子も、復活する兆候もなく、勝利したのだと確信できた。

 

「よっしゃー! もうこれで大丈夫なんだな!」

「そうだけど……まだやちよさんたちが戦ってるはずだから戻らなきゃ!」

 

 いろはさんがそう言う頃には私はもう移動していた。ここが元の水路ならそう遠くはないと、出せる全力で来た道を駆け戻る。

 

 ……全員いる。立ち位置や周辺の様子からして戦闘らしいことは起きていなかったらしい。

 けれど相手の数が随分と増えている。黒いローブを着た魔法少女が数人に、それを率いるように立つ一人が立ちはだかっていて、数的有利は失われていた。

 

「あいみ、状況は」

「……よくわかんない。向こうの人たちが『マギウスの翼』らしいけど」

 

 やちよさんと率いる人――みふゆと呼ばれた魔法少女が言葉を交わしていた。旧友であるみたいだけど互いに話は平行線。マギウスの翼に入った者とそれを引き戻そうとする構図が続く。

 

「ここは退かせてもらいます。……やっちゃん、これ以上追求しないでください。解放に縋る気持ちは変わりませんから……」

「みふゆ……!」

 

 彼女が手伸ばしてもみふゆさんは背を向けるだけだった。それに黒いローブたちと先ほどの天音姉妹が遮るように去ろうとする。

 平行線のまま一歩も踏み出せていないようで、双方に結果が出ないでこのまま収まるかと思った場は、向こうの声でまたかき乱された。

 

「……それと、帆秋くれはさん。これは伝言です。『無茶はしないで』だそうですよ」

「――っ」

 

 去り際に言われたそれは帆秋さんの顔を歪ませる。どんな怪我を負った時よりも酷く、苦しそうで、いつもの真顔が露と消えていた。

 それは彼女に詰め寄るやちよさんも同じだった。最後にかけた言葉が自分にではなかったからというのもその表情の一助になっていたのかもしれない。

 

「帆秋さん、あなたに聞いておきたいことがあるの」

「……なにを」

「観鳥令はどこ? 知ってるんでしょ、あの子がマギウスの翼だって」

「や、やちよさん……!」

「怖い顔してるよ! 落ち着いて!」

 

 いつの間にか合流していた鶴乃さんたちが止めようとしても、彼女の圧は変わらない。こころやあいみが一歩引き下がるほどのそれを間近で受ける心情は私には想像できなかった。

 

 ……微かに魔力を感じる。これは帆秋さんの『停止』が使われた余波の感触に近い。

 

「学校には来てるらしいから」

「なら、どうしてあなたたち二人は疎遠になっているの。今更紗帆奈がいる位置は以前の観鳥さんの立ち位置でしょう?」

「……そんなの、知るわけが――」

「あなたが彼女を大切に思う気持ちはわかるわ。理解できない感情じゃない。でも、あの子は手がかりになるかもしれないのよ……!」

 

 おそらく帆秋さんは知っていて隠そうとしている。そう、彼女のために。

 やちよさんはどうしても別のアプローチが欲しい。それもまた、彼女のために。

 

 私でさえ、こころが関わればどちらの視線に立つこともあるだろう。ゆえにこの話もどちらかが折れることはないと判断できる。諦めることなどできないはず。

 

 結局、その形のない口論は終着を見せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日聞いた話だけど、観鳥さんが姿をくらましたらしい。学校には家庭の都合で休学すると伝わっているとひなのさんが言っていた。

 

 なぜかはわからないけど、その手段を選んだ理由だけはきっと私と同じなのだろう。

 だって、そこだけは変わらないはずだから。

 

 

 




■今回の内容 
 第一部第4章『ウワサの守り人』
 第4章アナザー『アイツから聞いた噂』
 『みたまの特訓 杏子・フェリシア編』(一部分)
 佐倉杏子 魔法少女ストーリー 2話 『魔法少女とクッキング』(一部分)
 佐倉杏子 魔法少女ストーリー 3話 『魔法少女は花より団子』(一部分)

■佐倉 杏子
 いつもの調子の杏子ちゃん。食うかい?
 なんだかんだでフェリシアと仲が良い。

■天音 月夜
 ございます系魔法少女。足をやられる方。
 学校では明槻姓。習い事が多すぎる。

■天音 月咲
 初見で読むのが難しい魔法少女。鳩尾を突かれる方。
 家は工房。家事が多すぎる。

■フェリシア
 これからのみかづき荘には謎のブロンド美少女が現れるらしい。
 三女の月練ではないし、『フェリシアちゃん』は別キャラ。

■ゆきか
 村人Aどころか準レギュラーの座に登りつつある魔法少女。
 チャート破壊はお手の物。

■フクロウ幸運水
 アニメ版のウワサ。飲み続ければ幸運が持続する。
 つまり屑運が消える絶好の稼ぎポイント。ひたすら飲み続ける不審者が現れる。

■ダメなルート
 水を飲んでから24時間が経過してたんで、なんかもう、かなり不幸な出来事のようなカンジになってまっす。ウワサってすぐに解決しないとチャートが崩壊するな? でもゴールを目指して走り続けるぜ。翌章も最初からスッゲーガバってるんで、退場しまくり、黒羽根化しまくり。途中、ホテルのエントランスでマギウスの講習会ってのを、若手の芸術家がやってたんで、鑑賞してたら、「ジョイナス?」って聞いてくるんで、冷やかしに参加。マジすげーアートにされました!




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