マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート3 組長捜索第二次遠征

 組長を探すRTA、はーじまーるよー。

 

 ではさっそく、ななか組の組長『常盤 ななか』の捜索を始めます。

 

 彼女は直接会おうとするとその難易度が跳ね上がるキャラです。特定のイベントや誰かから紹介されない限りはほぼ見つかりません。偶然会えたとしてもいきなり話しかけても応対されませんし、自分から魔法少女であるとバラすことはほぼありません。

 

 よって、チームメンバーであり魔法少女であると紹介してくれる『志伸(しのぶ) あきら』、『(チュン) 美雨(メイユイ)』、『夏目 かこ』のいずれかから経由してタイムの短縮を狙います。

 狙いはかこちゃんとあきらが同等、次点で美雨です。かこちゃんと交友関係を築けるように手は打ったので、次はあきらを狙いましょう。

 

 一応今なら直接会ったとしても、ブロッサムでバイトしていることを話せば聡明な組長はかこちゃんと知り合いだと察してくれることもあります(会ってない)。ですが安定第一で経由チャートです。

 

 

 放課後になったことで自由行動を開始できますが……このタイミングはなにかイベントが発生しやすいです。同じクラス内に魔法少女がいたら特に起こりやすいですね。今回はモブ魔法少女がいなくて良かったーって思うわけ。

 

「帆秋、ちょっといいか?」

 

 とか言ってたらみゃーこ先輩です。なんでしょうね。

 

「今度小学生向けの化学イベントをやるんだが、手伝ってくれないか? 会わせたいヤツもいるんだ」

 

 あ、いいっすよ(快諾)。

 これは信頼度イベントの一つですね。実は先日一緒に帰ったことで条件を満たしておきました。経験値がうまあじな上に魔法少女と出会える重要なイベントです。だから南凪のことが好きだったんだよ!(愛校心)

 

 ここで出会えるのは確定で『木崎(きさき) 衣美里(えみり)』です。彼女であればあきらと知り合いの可能性がかなり高く、簡単に出会えるでしょう。これも組長捜索の一歩だぜ!

 

 では、それまでは南凪区で美雨との遭遇を狙って魔女を狩っていましょう。彼女の学校は中央学園ですが、出身は南凪の同志なので会えることがあります。(単純な作業は)早送りだ。

 

 

 

 

 休日なのに小学校からおはよーございまーす!

 

 美雨とは出会えず(屑運)、日が変わりまして本日はみゃーこ先輩の化学イベント当日です。

 二人が待ち合わせ場所に来るタイミングは結構前後するので事前に待機してきました。そんなところリアルにしなくていいから(良心)。

 

「おっはよーにゃん! ほら、みゃーこ先輩も。はい続けて、せーの!」

「おっは……って何やらすんだ! 普通に言えばいいだろ普通に」

 

 来ましたね。コミュニケーション能力の化身、エミリー先生こと『木崎 衣美里』です。相談所を開いた後の彼女に会っておけばかなりの数の魔法少女と知り合えます。彼女自身も簡単に出会えますので通常プレイ時にもオススメです。

 

 この先ガバっても彼女がいればリカバリーできる箇所があるので大事にしましょう。代替可能ですがワルプルギス戦でも二つほど役割をこなせます。

 というより基本的に魔法少女が生存していればいるほど有利になるので帆秋ちゃんには頑張ってもらいます。止まるんじゃない、犬のように駆け巡るんだ!

 

 集まってきた子供達の相手をして、みゃーこ先輩の準備を手伝った後は化学イベントが始まるのでチャートを横目に確認しつつ流していきます。

 ついでに今のうちに神浜魔法少女ファイルでエミリー先生の魔法少女歴を確認しておきましょう。魔法少女歴によってはこのイベントの動き方を変えます。

 今回は……短すぎィ! ほぼ新人です。これ相談所もまだかもしれんな。

 

 参加した子供たちの様子がおかしくなった辺りが止めどきです。みゃーこ先輩が魔女の口づけを確認してくれるので従いましょう。

 

「とにかく、急いで大元の魔女を見つけ出すぞ! 全員散開だ!」

 

 (魔女が)出たわね。散開だよ散開。

 分かれて探すように言われますが、ここはエミリー先生を守るように行動します。信頼度イベントの発生が早かったためまだ魔法少女として日が浅く、一人で行動させると大変危険です。退場されたらソウルジェムが濁るねんこれじゃあ!

 

 帆秋ちゃんの説得が成功すればそのままついて行けますが……失敗しました。まあ大丈夫です。

 

 では結界を探しに行きましょう。

 場所はランダムですがだいたい似たような位置にあります。ですが、このイベントは最速で辿り着こうと既にエミリー先生が見つけてます。なんだその発見速度……。

 ついていければ同時に発見できますが、今回は分かれたので即エミリー先生を尾行します。見つかったら偶然と言っておけばヘーキヘーキ。追うとわかりますが迷いなしに進んでます。直行です。

 

(見つけた! 結界見つけたよ!)

 

 あーあたしもー!

 背中が見える位置ですが念話で応対します。

 

 行ったみたいですね。じゃあこっちも連絡してから行きましょう。

 

 魔女結界にイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 今回一緒に戦う魔法少女は二人っ! ベテラン魔法少女と新人魔法少女。まだ入りたての魔女結界は、この猛攻に耐えられるのでしょうか。それでは、ご覧ください(解説)。

 

 『都 ひなの』は固有魔法『化学爆発』を用いた試験管やフラスコを投げて攻撃するので中距離・遠距離が得意なキャラです。投擲という仕様上、接近されると不利ですがそこは大ベテランのみゃーこ先輩。近距離だろうがそのまま殴るので問題なく戦えます。ステータスも全体的に高く、非常に頼れる存在です。なんか芸術的(爆発)! これって……(南凪の)勲章ですよ?

 

 『木崎 衣美里』は小悪魔的な尻尾……尻尾ォ!? を使って戦う近距離・中距離系魔法少女です。矢も出ます。

 固有魔法の『チャーム』はターゲットをエミリー先生に引きつけます。基本はこれで引き寄せつつ戦ってもらいましょう。ただし、今回のように開始時期によっては魔法少女になりたてでステータスが低いのできちんと確認が必要です。

 

 まあみゃーこ先輩はまだ来てないのでお見せできませんが、絶賛戦闘中のエミリー先生はこの通りです。

 

「くれっち! はやーい!」

 

 せやろ? 

 じゃあパパパッと使い魔を片付けて先に進みます。何体かは『停止』で止めてエミリー先生の経験値にしましょう。

 

 道なりに進んでいくと見えるあれが最深部の入り口です。みゃーこ先輩を待つ必要なんかねえんだよ! 突撃ー!

 

(結界に入った! 今どこだ!)

「最深部に突入したよー!」

(……は、早いな)

「だよねー。って、くれっちあれ! 学校の先生じゃん!」

 

 普段は真面目でやさしい教師……しかしいったん魔女に操られると被害を出そうとするマッドサイエンティストに大変身! エミリー先生が発見したのはそんな感じの教師です。放っておくと薬品を混ぜ合わせて有毒ガスを発生させます。

 本来なら彼女がこのことをみゃーこ先輩に伝えますが、発生が早かったせいでエミリー先生には薬品の知識がありません。情報を伝えられないので代わりに伝えておきましょう。帆秋ちゃんの説明力、見せてやるぜ!

 ちなみにどんな薬品かというと、混ぜれば混ぜるほど反応して……危ない!(テーレッテレー!) って感じのです。

 

「バッ、馬鹿! お前ら今すぐそこを離れろ!」

 

 伝わったみたいです。(説明が)あ~うめぇなあ!

 

 にしても使い魔多い……多くない? 二人で来たからかみゃーこ先輩よりこっちに戦力を割いてますね。これだと守りながら戦うのは厳しいです。エミリー先生には教師が巻き込まれないように連れて逃げてもらいましょう。

 

 そうこうしているうちに魔女が来ます。毒ガスでやられる前に倒せばいいんだよ上等だろ! まあ本体はソウルジェムなんで割られなきゃあ大丈夫なんですけど(畜生)。

 偶発的に遭遇する魔女はランダムですが、ここは『屋上の魔女』で固定です。下手に足元の使い魔を倒して浮かばせると遠距離攻撃が貧弱な帆秋ちゃんでは届かなくなります。

 しかし、この結界内は貯水タンクが大量に並んでたり椅子や机の塔があります。それを足場にしましょう。

 

 こいつは浮かんだバルーンに付いたフックで切り裂くのが通常攻撃です。よく見て動けば当たりません。クレーンゲームみたいな攻撃しやがって! 怒らせちゃったねぇ! 帆秋ちゃんの事本気で怒らせちゃったねぇ!

 じゃあオラオラ来いよオラァ! ほら動くと当たらないだろ!(回避) 動くと当たらないだろ!!(回避) ヘイヘイどうしたどうした魔女さんよービビってんのかーい!? 

 

 あ、一発貰いました。体力がごっそり持ってかれてます。体力にステータスを振ってないからね、仕方ないね。

 ですがこの程度で怯む帆秋ちゃんではありません! 当たらなければ……スタンしてますね。一気に体力を失うと稀にこうなります。

 

 

 

 

 

 ……死ぬぅぅぅ! 死んじゃうぅぅぅ! リセットは勘弁してくださいお願いしますキュゥべえが何でもしますから! お願い行動デレて! スタン治るまで無意味な行動してて!

 

 とか言ってたらみゃーこ先輩が助けてくれました。神か。

 我ら南凪の魔法少女にかかればなんてことないっすね! へっへっへ、肩お揉みします。

 

 これにて信頼度イベント終了! 終わった後は必ずエミリー先生の連絡先をゲットしてから帰りましょう。ゲットできるタイミングでやっておかないと忘れます(走者の屑)。

 

 

 

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

 いやぁ、屋上の魔女は強敵でしたね……。

 今日も今日とて学生生活です。昨日の今日で学校とか、救いはないんですか!?(レ)

 

「やあ帆秋くれは。久しぶりだね」

 

 まさか足場が崩れて一発貰うとは思いませんでした。足場崩しはやはり有効ですね。遠距離攻撃手段が乏しいというのはこういうときに困ります。観鳥さん連れて来れば良かったんちゃう?

 

「聞いているかな? 今日はキミに言いたいことがあって来たんだ」

 

 ですが、観鳥さんには観鳥さんの行動スケジュールがありますからよっぽど信頼度が高くないと引っ張ってこれません。これは他の魔法少女も同じです。急に人数が必要になった場合を考えると信頼度を上げる意味は十分に、ありまあす!

 

「前もそうだったけどキミはボクを無視するね。まあ聞いてくれるだけでいい。最近のキミの戦いは危なっかしい。キミが魔女に倒されるとボクとしても困るんだ。もう少し落ち着いて戦ったらどうだい?」

 

 白いヤツが何か言ってますが無視します。コイツは時々姿を見せては大事なことを言わないアドバイスをしてロスさせてくるチュートリアルみたいなヤツです。構うだけ時間の無駄なのでほっとけばどこかに行きます。

 

 しかし普段はピクニック気分で魔女狩りしてますがやっぱり危険ですね。こんな世界に少女を放り込みやがってあの白タヌキが……(憤怒)。

 ソウルジェムが砕ける奴は魔法少女だ! ソウルジェムが濁って魔女化する奴はよく訓練された魔法少女だ! ホント魔法少女は地獄だぜ! フゥーハハハァー!

 

 

 

 

 

 ちょっと忘れてましたが、ななか組長捜索第二次遠征です。

 それではエミリー先生に会いに行きましょう。場所は参京区の水徳商店街です。ここに相談所があることは昨日確認済みで、神浜のトラブルシューターと名高いあきらがいる可能性が高いです。

 

 ここかぁ~…ここが水徳商店街かぁ……探すぞぉー! 相談所ありますねぇ! 数日でここまで進めるとは恐ろしいコミュニケーション能力です。

 

 では、たのもー!

 この風船やら何やらで飾り付けられたパーティー会場みたいな一角が『エミリーのお悩み相談所』ですね。寄り合い所を借りて行われているこのお店は、先生と話すと気持ちが楽になると水徳商店街でも話題のアツいスポットです。給与は発生しませんがここで働いていれば魔法少女の知り合いがどんどん増えますし、利用すれば一定時間ソウルジェムの穢れが溜まりにくくなります。

 

 あきらは……いませんね。受付みたいな仕事を担っているはずですが今日はハズレみたいです。しょうがないのでエミリー先生と会話して信頼度を上げておきましょう。

 

「くれっちおっすー! 昨日ぶりじゃーん!」

 

 かなり元気ですね……若い乙女(13歳)のパワーは凄いわね。

 ロスっているように見えますがエミリー先生との会話は他の魔法少女の情報が出る確率が高くうまあじです。特に話題を持ってないのでミナギーランドとかいう名前に反してきちんと南凪区にある遊園地の話でもしておきましょう。

 

「今度はあきらっちも誘おっかなー」

 

 聞きました奥さん? 今名前が出ました。これでもう『あきらっち』という名前を聞くことができます。

 おうエミリー先生! それって誰だい! 今どこ! 近くにいるんじゃない!?

 

「最近忙しいみたいで見てないよー? あきらっちだしー、やっぱ人助けしてるっしょ」

 

 

 

 なんで?

 

 失意に暮れて帰宅しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイツ――『帆秋 くれは』は、アタシの後輩だ。

 化学部に半ば入部しているような状態で、イベントを開催するときには手伝ってもらってる。魔法少女になってから知り合ったヤツだが、イメージはそのときから変わらない。普段クールを気取って時々その仮面が剥がれそうになったり、時折無茶な行動をする目の離せない後輩だ。

 

 そんなアイツはどうやらクラスでも同じ様子らしく、探しに行った教室でも似た印象を受けた。

 

「今度小学生向けの化学イベントをやるんだが、手伝ってくれないか? 会わせたいヤツもいるんだ」

「いいわよ」

 

 こうして二つ返事で承知するところも相変わらずだ。会わせたいヤツが誰かも聞いてこない。豪胆なんだか抜けてるんだか。

 

 会わせたいのは『木崎 衣美里』。魔女結界の中で偶然出会って早々小学生だとか子供だとか小馬鹿にしてきたヤツだが、底抜けに明るくて人を惹きつける才を持ってる。押し切られて化学イベントのアシスタントにするって約束をしてしまったが、帆秋に会わせれば少しは落ち着きってモンを学んでくれるかもしれん。

 ……なにより、こういうヤツはたまに無茶なことをやらかすんだ。似た者同士だろう。

 

 それで早いものでイベント当日。途中で合流した衣美里と一緒に待ち合わせ場所の小学校の校門前に着くと、もう帆秋はいた。随分と早い。衣美里は遠足のテンションで起きたとか言ってたが、アイツもそうだろうか? 

 アタシらを見つけるとこっちに歩いてくるが、先に突っ込んでってのは当然のように衣美里だ。

 

「おっはよーにゃん! ほら、みゃーこ先輩も。はい続けて、せーの!」

「おっは……って何やらすんだ! 普通に言えばいいだろ普通に」

 

 まったく油断も隙もない。初対面の相手にいきなりこれだ。帆秋は相変わらず「おはよう」と返してたが。

 

「そっちは?」

「ああ、まだ紹介してなかったな。コイツはこの前出会った魔法少女の木崎衣美里。神浜附属のだ。今回アシスタントをやらせることになってな……」

「どうもー! 木崎衣美里でーす! 気軽にエミリーって呼んで!」

「帆秋くれは。ひなの先輩と同じ南凪よ」

「くれは……じゃあくれっちだね! くれっちよろしくー!」

「ええ。よろしくエミリー」

「お前本当に動じないな……」

 

 これが持続すればいいんだがたまに剥がれる。衣美里曰く、「キャラ崩壊ってやつ?」らしい。

 

 あっと言う間に親しんだ二人を連れてアタシは理科室で準備を始める。非常に、ひっっじょぉーに屈辱的だが、アタシじゃ手の届かない場所に用があるときは帆秋に手伝ってもらい、衣美里には軽く説明をしておく。

 こうして準備をするのはもう慣れっこ。手伝いが必要な分が終わったところで帆秋にはいつも通りに外を任せた。

 

「あれ、みゃーこ先輩ー、外行っちゃったけどくれっちはー? 何役?」

「アイツは事前の準備とか子供たちの誘導。あとトラブった時に場を持たせるために連れてきてるんだ」

「じゃああーしはー?」

「お前は司会とかアタシの手伝い。というかアタシの目の届く範囲にいろ。いいな?」

「それって俺だけを見てろってやつじゃーん! みゃーこ先輩イケメンだー!」

「おーまーえーなー!」

 

 しかし、帆秋の役は重要だ。子供の集中力は短い。開始が遅れたりして一人でも動き出してしまえば他の子も釣られて動き出して止められなくなる。これが結構あることなんだ。

 外を見てみれば、待機している子供になにかしている帆秋がいた。

 

「ねー次やってー!」

「さっきのもう一回ー!」

「何度でもやるわ。焦らないで」

 

 ……いやなにやってんだアイツ。でもなぜか子供受け良いんだよな……間を持たせるのがあんなに上手いヤツ見たことないぞ。

 トラブルが起きたときは頼りになるが今回は順調。あっちに引っ張られすぎるのも良くない。もう始めたほうが良いだろう。とことんやってやるぞと気合を入れて、アタシは宣言する。

 

 

「さぁ……最っ高にエキサイティングなショーの幕開けだ!」

 

 

 子供相手にはやはり見栄えが良い実験。過酸化水素と台所用洗剤を混ぜ合わせたものにヨウ化カリウムを加える。いわゆる『ゾウの歯磨き粉』だ。泡が飛び出る派手な反応はウケが良い。

 衣美里の反応で子供たちのテンションも上がっている。大成功だ。帆秋も心なしか驚いているように……いやお前これ何回も見てるだろ。

 

 しかし調子は順調。なに一つ問題なく進んでいる。衣美里もその明るさが遺憾なく発揮されてる辺り適役だったのかもしれん。

 これなら後半も大丈夫だな、と安堵したとき。少し離れて見てたはずの一人の子供が前に来ていた。

 

「ちょうだい、これ」

 

 持ってたのは別の危険な薬品。これは今回使わないはずだがどこかから持ってきたらしい。こういうことをしないかどうか帆秋に後ろで見させているんだが……。

 

「ちょうだい、これ」

「僕も」

「私も」

「ちょうだい」

 

「ちょうだい」

「これ」

「私もちょうだい」

 

「ちょうだい」

「僕も」

 

 気づけば子供たちが同じことを口走っていた。明らかに正気じゃない。

 

「えっ、ちょ、えぇ!?」

「……首だ! 魔女の口づけ!」

 

 全員に同じ意匠の印が付いている。間違いなく子供たちをターゲットにした魔女の仕業だ。

 だが、一つ気にかかる。

 

「ソウルジェムの反応はなかったはずだ……!」

「私も感じてないわ」

「二人して気づかないって、なんかおかしくない?」

 

 衣美里だけなら初心者ゆえに見逃したということもある。けれど、アタシと帆秋が揃って見逃すなんてありえない。気にはなるが……今は子供たちを助けることが先決だ。

 

「とにかく、急いで大元の魔女を見つけ出すぞ! 全員散開だ!」

「三階? ここもう三階だよー?」

「ちっがーう! 分かれるんだよ! 手分けして探すんだ!」

「あ、そーゆーこと! ……ってええっ!? 手分けって、単独行動ってことじゃん!?」

 

 急に慌て出すが理由はわかる。魔法少女になり立てで肝が据わってるヤツのほうが少ない。特に、一度でも実際に魔女と戦ってれば一人で行動するのを怖く思っても仕方がないだろう。

 それを見かねてか、帆秋がアタシに耳打ちしてきた。

 

「心配なら一緒に行動するけど。彼女、まだ魔法少女になって日が浅いんでしょう?」

「あまり時間はかけられん。三人で分かれた方が良い。それにいざってときに一人じゃ行動できない魔法少女になられてもアイツのためにならないからな」

 

 だからアタシたちがすべきことは信頼できる存在であることだ。頼れる存在がいる、一人じゃないってことを示してやる。

 らしくなく心配そうに見てくる衣美里に向かい合って、少し見上げる。

 

「一人で行動しても大丈夫だ。ここにはアタシがいる。コイツもいる。何かあったらすっ飛んでくからアタシを信じろ。必ず無事に連れ帰ってやる」

「……みゃーこ先輩。わかった、頑張る!」

 

 珍しく真面目な顔をしたアイツを見届け、アタシたちは三方に分かれた。普段通っていない学校ってのは迷いやすい。これが一番効率的だ。

 

 休日の小学校は普段の騒がしさが嘘のように静まり返っていた。教師もいるはずだが人の気配が消えていて不気味。その中でアタシが二階の捜索をしているとき、念話が届いた。

 

(見つけた! 結界見つけたよ!)

「よくやった! すぐに向かう! 帆秋もいいな!」

(今の位置ならすぐに着く。先行して)

(あいさー!)

 

 アイツがいるなら大丈夫だとは思うが……無茶だけはしてくれるなよ。

 そう願いつつ階段を飛び降りて、『廊下は走るな』なんて張り紙を無視して駆け抜ける。後輩たちだけに任せては先輩の名折れだ。

 

(みゃーこ先輩聞いて聞いて! くれっちすごいよ! もうばっさばっさ? って感じで使い魔倒しちゃってる!)

「ちょ、お前戦闘中だろ! 念話はやめとけ!」

 

 こういうところが新人らしい。そうするだけの余裕があるってことなんだろうが。

 そうしているうちに見つけた。結界だ。

 

「結界に入った! 今どこだ!」

(最深部に突入したよー!)

「……は、早いな」

(だよねー。って、くれっちあれ! 学校の先生じゃん!)

 

 いないと思ったら教師まで巻き込まれてるのか。だがなぜ――そこまで考えて、操られた子供たちを思い出した。

 アイツらはなにを欲しがっていた? 外にいるのが欲しがっていたなら、もう結界内に連れ込まれてるヤツは? もしアタシの予想通りだとしたら、これはマズイ……!

 

「その先生、なんか持ってないか!?」

(すごいみゃーこ先輩! ひょっとしてエスパー? いっぱい持ってるけど……んー? なんか混ぜてる?)

「帆秋、判別できるか?」

(……危なそうなやつね。あの、あれよ。水と……石?)

 

 アイツまだロクに覚えてなかったのか。なんだ水と石って。そんなものいくらでもあるぞ。

 

(あと温泉みたいな感じね)

 

 曖昧な感想だがわからないならそれで考えるしかない。時折来る使い魔を爆破しつつ、全力で思考を回す。

 温泉……硫黄……違う。水、石……まさか、硫化水素か!?

 

「バッ、馬鹿! お前ら今すぐそこを離れろ!」

 

 硫化水素――温泉街で硫黄の臭いとか言われるが、硫黄は無臭。その正体はこれだ。濃度が高ければすぐに死が迫る。量も最深部の広さもわからんが、臭いがしている時点で危険だ。

 有毒ガスの恐ろしさはよく知ってる。アタシが魔法少女になった原因だって実験で出た有毒ガスだ。いくら魔法少女でも呼吸をしている以上、無事では済まない。

 

「やってくれたな……!」

 

 化学に憧れて、死にかけて、魔法少女になって。それでも追い続けるアタシの前でいい度胸だ。化学を使って人の命を奪おうだなんて、このアタシが許すか!

 

「どけどけどけーッ! 邪魔するな!」

 

 アタシの意図に気づいたのかさっきよりも使い魔が多いが、片っ端から爆発させていく。

 そんなことよりもアイツらだ。さっき離れろと言ったがその後応答がない。反応はあるから無事なはずだが、近づいても来ない。

 

「無茶はするなっての……!」

 

 脱出に手間取ってるか応戦してるのか。この際どちらでも構わん。……だから、間に合え!

 

 走り抜いて辿り着いた最深部では、衣美里が教師らしき大人を連れて逃げ回ってて、帆秋が魔女と戦っていた。どちらもボロボロだ。特に帆秋の怪我が酷い。その場でうずくまって、今にも魔女が――そんなこと考えてる場合か! アタシがすべきことはなんだ! 都ひなの!

 

「後輩らに手ェ出したのは――」

 

 試験管とフラスコをありったけ取り出して、一つ一つに全力の『化学爆発』を込める。

 待ってろ、一撃で決めてやるッ!

 

「お前かァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケホッ、ゴホ……みゃ、みゃーこ先輩だぁ……すっ飛んで……来てくれた……」

「……良かった、無事だな。帆秋は?」

「……平気よ」

「まったく、お前らすぐ離れろって言っただろうが……」

 

 アタシの全力攻撃はやりすぎたぐらいの大爆発を起こした。

 その結果、魔女は消滅し、結界も同じく消え去った。その証拠にグリーフシードだって転がってる。

 

 なんで逃げなかったのかを聞くと、使い魔が多くて戦うしかなかったらしい。内部にあった貯水タンクに偶然飛び移ってたのが幸いして、毒ガスの影響をあまり受けずに済んだみたいだ。

 ……だが、帆秋の『停止』があれば逃げる隙を作ることはできたはずだ。前から無理するヤツだとは思ってたがここまでだったか? アタシが間に合ったから良かったものの、危ないところだった。

 

 結局、この後は操られてた教師や子供たちを誤魔化すのに手間取って、そのまま化学イベントを終わらせることにした。なに、命あっての物種だ。子供たちにはまた面白いものを見せてやると約束して、解散したのだった。

 

 

 

 

 後日、帆秋にいい加減薬品を覚えさせようと勉強させるつもりで学校内を探していた。

 だがまったく見つからない。もう放課後だし帰ったか、と日を改めようとしたとき、曲がり角から金髪のサイドテールが見えた。

 

「って、コラァ令! 廊下は走るなー! ……っと、キュゥべえ? スクープでもあったか?」

 

 小学校で自分がやったことを棚に上げた叫びは無視された。表情は見えなかったが随分と速い。少ししてキュゥべえも来たことを考えると、なにか耳寄りな情報でも聞いたんだろう。

 

 魔法少女とキュゥべえ。その組み合わせを見たからか、ふとソウルジェムのことを思い出した。

 

「そういや、なんでソウルジェムが反応しなかったんだか」

 

 やっぱりアレはおかしい。長いこと魔法少女をやってるが今までそんなことはなかった。そういう性質を持った特異な魔女ってだけならいいんだが……。

 いや、考えても答えは出ない。それよりも帆秋だ。連絡を入れて出なかったら覚えさせる量を倍にしておこう。そして次の化学イベントは不完全燃焼で終わった分、盛大にやってやる! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反応が遅れてたし、実験は成功ってワケ」

 

 




■今回の内容
 都ひなの 魔法少女ストーリー1話『凸凹科学実験室』
 都ひなの 魔法少女ストーリー2話『混ぜるな危険』
 都ひなの 魔法少女ストーリー3話『偉大なるみゃーこ先輩』

■木崎 衣美里
 コミュニケーション能力MAXの魔法少女。13歳。
 エミリー先生にかかればキュゥべえがキュべ太郎になる。

■みゃーこ先輩
 イケメン、有能、南凪の誇り。
 なお身長は145cm。

■キュゥべえ
 白い謎生物。営業マン。
 だいたいこいつのせい。



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