マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
見滝原勢を探すRTA、はーじまーるよー。
前回は無事にキリカから逃げ切れて良かったですね。情報を持ち帰ってくれれば織莉子は神浜を危険だと判断して見滝原だけで活動します。まどか狙いが怖いところですが、第5章に入っていろはちゃんとの繋がりができれば様子見をしてくれるから安心!
しかし問題は、二人が会うのには偶然の要素が大きいということです。まどかは放っておくとなかなか神浜に来ませんし、来てもいつまでもすれ違い続けて第6章辺りでいろはちゃんが退場する恐れがあります。
だから二人を会いたきゃ会わせてやるよ。ここで利用するために、見滝原勢を探す必要があったんですね。
まどほむのどちらかに会えてれば一番手っ取り早かったのですが、今回はさやかちゃんに会えてるのでそっちにします。経由すれば会ってくれるし誤差だよ誤差!
というわけでハロハロー? さやかちゃん? まず神浜さぁ……観光名所が色々あんだけど……見てかない?
「え、案内してくれるの!? ちょうど次どこ行こうかなって思ってたとこだし……お言葉に甘えちゃおっかな?」
お、マミさんまだ言ってねぇのか? 神浜に行くなと伝えてあれば渋るはずですが、あっさりと返事が来ましたね。まあ渋られても昼ならヘーキヘーキ、ヘーキだから、思い出欲しいでしょ? という感じで言えばさやかちゃんなら来ます。
明日には来てくれるなんてRTAの味方みたいだぁ……。うまいぞスケジュール把握(空気)。なのでもう寝ようぜ。
おはよーございまーす!
「ね、ねえくれは……」
おう帆奈ちゃんは今回はお休みな! しかし、一人で行くわけではありません。
キリカから逃げた際、ソウルジェムが限界ギリギリだったのとデバフかかりまくり状態だったので友好的な魔法少女が一定期間同行するイベントが発生しました。これは本来は初心者救済イベントなのですが、迂闊にドッペルを使えなくなるのでRTA的にはマイナスイベントです。
ただし、第4章以降は話が違います。ここからは下手すると黒羽根白羽根の強襲がありうるので、ドッペルを使う予定のない外出時には人前で変身させられない帆奈ちゃん以外にも常に誰かにいてほしいところです。
モブ魔法少女が相手でも対人戦最弱のくれはちゃんが囲まれたら勝てるわけないだろ! いい加減にしろ! というのと、うっかり札害(マイルドな表現)しちゃうと精神に大ダメージを負って行動制限がかかるかもしれないので……。
というわけでヒャッハー! 助っ人ガチャだぜぇ!
今日はスペシャルゲストォ……大体わかってるだろうけど……まー、味方を増やすと、すごい心強いんだけど……(安堵)。
「帆秋、どこ行くつもりネ」
純美雨! ンハッ!
学校は中央学園ですがホームは南凪なので彼女でしょうねぇ、ええ(満足)。武闘派ですし戦力として申し分ありません。いざとなれば蒼海幣にも頼れますからね。
では早速、帆奈ちゃんを預けたら待ち合わせ場所に向かいましょう。いざ中央区。
「あっ、帆秋さーん! 今日もクールですね~……なんて! そっちの人が、えーと……み、みあめさん?」
「
見てくださいあのさやかちゃんを! 今日もなんだかんだで絶好調ですね。
青と青で青がダブってしまいましたが、こういうのでいいんだよこういうので。
というわけで、観光という名目で連れて行くのは中央区に存在する電波塔です。エミリー先生と話していればここから見る夜景が綺麗だという情報はいつの間にか手に入っています。魔法少女だけじゃなくて観光スポットも詳しいとかやっぱりエミリー先生を……最高やな!
我が南凪が誇るミナギーランドもいいですがかなりお金を持ってかれますし、たい焼き釣りをした岬は立地がね……。
なによりこの電波塔こそ、第5章のポイントとなる場所です。ここをまどかに教えといてくれれば勝手にいろはちゃんと合流しといてくれるってわけだぜ! あ、来そうにないなら誘導はしておきましょう(1敗)。
わぁ、これが電波塔ですかー。色んな景色がありますねー。こんなに見えるとは思わなかったぁ。
ここは展望台で、上から飛び降りると、ひとりぼっちの最果てがあるんだ。後で、そこへ行こうよ。
さやかちゃんがここに来ればもう展望台に用はないのでエレベーターで帰りましょ。この綺麗な中央区の景色を今のうちに見ておくのもいいですけど、タイムの都合上キャンセルだ。
次に見るべきなのは塔脚です。『ひとりぼっちの最果て』に関するホームページのパスワードが書かれているので確認しておきましょう。もたもたしているとピーヒョロ姉妹が消しに来ます。
ちゃんとウワサが存在しているのを確認してから飛び降りないとミンチになるので、確認する必要があったんですね(2敗)。
確認しました? 確認しましたね?
この辺気をつけてください、(アン)ブッシュがありますから。
「……帆秋くれはだな?」
「ここになんの用?」
うわあ……これは黒羽根ですね。これは黒羽根で、ああ、こっちは黒羽根ですね。間違いない。なんだこれは……たまげたなあ(すっとぼけ)。
なんとこの場所、確定で黒羽根が出てきます。さやかちゃんに会わせておくことでマギウスの翼の存在を実感させて行動パターンを変化させることができるので、このように利用してあげましょう。
「……下がってるネ。私一人で十分ヨ」
「た、戦うの!?」
いいっすかぁ!? 謝謝茄子!
なんて一人戦わせるのをさやかちゃんが見逃してくれるわけがないので、変身して応戦しましょう。ジュージューになるまで痛めつけてやるからなぁ?
そういえば黒羽根とまともに戦うのは初めてですね。前回は数の暴力で片付けたので一応美雨と合わせて解説しておきます。
『純 美雨』は爪を武器にする近距離タイプの魔法少女です。伊達に3年ぐらい魔法少女をやってないのでステータスは高いのですが、いかんせん固有魔法の『偽装』が直接戦闘に影響しないので得手不得手の相手がハッキリしてますね。その分『偽装』は完全チートだしいいですぅ!
彼女と組むなら遠距離攻撃系の魔法少女がいいでしょう。蒼海幣ルートを選んだ場合に自分がそうなる確率は110弱%でしょうねぇ、ええ。ここにいるのは全員近接系だがな!
そして『黒羽根』ですが、黒いフードの下はその辺のモブ魔法少女のみなさんです。一人じゃ魔女を狩るのも難しいような方なのでステータスは低いですし、個人を特定されないために固有魔法やそれぞれの得物も使わないので、(実に対処しやすくて)笑っちゃうんすよね。
遠距離からは鎖、近距離は剣みたいなもので攻撃してきますが耐久力も火力もありません。結構でも囲まれると疲れますねこれ。
というわけで適当に応戦しましょう。くれはちゃんの馬鹿げた攻撃力ではさっくり体を切断してしまうので武器を叩き落とすぐらいに抑えます。
でも美雨とさやかちゃんが勝手に気絶させたり戦意を削いでくれたりしてますね。流石に、どちらも近距離スピード型なだけはある。
こんな感じでパパパッと戦えばそのうち帰ります。じゃあな!
戦闘終了で魔力がもう……ビショビショだよ。なんでこんなキツイんすかね~やめたくなりますよ魔法少女~。まあ下手に動くとすぐ濁るのでほぼ立ってただけですが。
じゃあ次行こうぜ。日が暮れちまうよ!
「ねえもしかして、魔法少女を襲う魔法少女って今の?」
「アレはもっと強い。今のは神浜にしかいないから気にすることじゃないネ」
「そっか……」
あれ~全然反応がないですね。お前空気が重いなぁ? じゃあくれはちゃんが空気を変えてやるか! しょうがねぇなぁ。
さやかちゃんお昼腹減りませんか? 腹減ったなぁ(自演)。この辺にぃ、名物の中華料理屋、建ってるらしいっすよ。じゃけん今すぐ行きましょうね~。
「……帆秋、本気で言ってるのカ?」
「え、そんな反応するってB級グルメとか?」
百聞は一見に如かずという名セリフを知らないのかよ? このまま参京区に乗り込めー!
というわけでやってきました中華飯店万々歳。
昔ながらの店構えから繰り出される料理は正に味の平均点。ご飯なんでもいいときに重宝すると某レナさんも言っております。出前も中華だとばかりにやっておりますがやはり一番は入店、入店であります。さあくれはちゃん入った! おっとどうしたことだ謎のブロンド美少女がアルバイトをしているぞ! これか! これが目当てなのかー!
「いろはならもう少ししたら来るって言ってたぞ」
フェリシアがそう言うなら大丈夫ですね。
目当てはこっちなのでさやかちゃんと会わせておきましょう。ついでに変なメールが来てないかとかも聞いておきたいところです。
ところでいつもの万々歳ですが、ここに美雨を連れて来ると会話が発生します。鶴乃ちゃんが飛び込んできたのが合図です。
「美雨先生だ! 万々歳に来てくれるなんて!」
「先生? なんだそれ」
「美雨先生はね、拳法の師匠なんだよ! 前も修行させてくれたんだ!」
「先生はやめるネ。それにあれは……いや、納得してるならいいヨ」
「すげー! デカゴンボールみてぇじゃん! ……って、そっちのは?」
「そっち? あ、あたしか!」
魔法少女ですよ、美樹さやかっていうんです。見滝原なんかで、活動しているんですよ。主に、色恋沙汰に、よく効きます。なるほどぉ……効果的な人選ですね。
コミニュケーション能力抜群な鶴乃ちゃんならこれでも大体わかってくれるでしょう。ヨシ!
噂によると、この店、中華飯店らしいネ。で、料理はいつも、50点らしいじゃないの。だから今日はちょっとその味を堪能してもらうということで、覚悟してもらうからね。
おう、さやかちゃんに万々歳の味を見せてやりな!
「エビチリ酢豚か……いや今週一番出てるカレーうどんか……!」
「ここ中華料理屋だよね?」
なにを出しても50点の運命から逃られないので無駄アルヨ。諦めるアル。
いろはちゃんが来るまで待つぞ、と言いつつ……。
「まずくはない、まずくはないんだけど……」
「……50点としか言いようがないネ」
「そっかー、やっぱり本場は厳しいね!」
「50点なのはいつもだろー?」
ここはどうしようもないので食事シーンを見ていましょう。これを専門用語でロスと言います。
前にも言いましたが、万々歳で食事しようがなんの効果もないのでくれはちゃんは食べません。ブロッサムのお金は別の使い所さん!? があるからね、仕方ないね。
「あ、くれはさん……」
いろはちゃんが来ましたね。あとはさやかちゃんといい感じに話しておいてくれれば、次に神浜に来ると連絡が来た時にいろはちゃんに押し付けられます。
これで第5章はうまくいくでしょう。ここで出来た関係は後生大事に持っておきたいですね、5章だけに(激ウマギャグ)。
「なんだかやちよさんが気にしてましたよ。やっぱり、この前のウワサのことが……」
お、そうだな(適当)。
あのさ、くれはちゃん……そろそろバイトなんだよね。と、用も済んだのでブロッサムをダシにお別れしましょう。ブロッサムに着けばこのみちゃんがいますから美雨も帰りますしね。
その後は帰ると言いつつ一人になったらドッペルで稼ぎをするだけなので早送りでお送りします。
おはよーおはよー(別パターン)。
本日の友情ガチャはこのみちゃんです。昨日のバイトが効いてますねこれ。
もう信頼度は十分ですし、戦闘力も美雨と比べると頼りないので彼女に来られても仕方がないんですが……余裕があればかこちゃんやかえでちゃんに会ってもいいかもしれませんね。
え、じゃあブロッサム行けばいいじゃん。ブロッサム行かないよ、今日はウォールナッツ行く(鋼の意思)。もちろんまなかちゃんに用があるからですね。
というわけで来ましたが……もう既に嫌なものが見えてますね。
水名の制服! 金髪! まなかちゃんの関係者!
七瀬ゆきかは嫌だ……七瀬ゆきかは嫌だ……七瀬ゆきかは勘弁してくださいお願いしますほんとこれ以上信頼度上げられたら無理ですってほんといやマジで無理ですって無理だって言ってんだろォ!
「あら、帆秋さん!」
凄ェ! さすが莉愛様ァ!
こんなところで水名の恩恵にあずかるとはな。確かに。
まあ……莉愛様でも……かまへんか……。一応まなかちゃんも呼んで話をしましょう。
この行動の理由ですが、第5章の間、水名の学生に話を聞くと行方不明になっている学生の話を聞くことができます。これを聞いておくと探索パートを飛ばすことができるので、間違いなくウォールナッツにいるまなかちゃんに会いに来たんですね。
「そういえばそんな噂があったわ。中央区の『電波少女』がそうなんじゃないかって、都市伝説みたいな話も結構聞くわね」
「……それ、多分『二葉 さな』さんのことだと思います」
へえぇっ!? その名前出るの早くなぁい?
まなかちゃんが予想外のこと言い出したので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
ひゅう、と冷たい風が吹いた。
赤や黄色の葉は地面に落ちて踏みつけられたのか泥に塗れている。それと寒々しい曇り空が、否応なしに時間の流れを突きつけているようだった。
「ねえ、ほむらちゃん。放課後はどうしよっか」
今、横を歩く彼女。
こんな私にも声をかけてくれた温かい彼女。
その命の灯火を、消させなんてしない。
この先訪れる『ワルプルギスの夜』を今度こそ越えてみせる。死ぬことも、魔女化もさせずに、鹿目さんを助けてみせる。
その覚悟を持って繰り返した世界は今までは同じだった。私の行動が影響を与えて変わることはあっても、それ以外は変わらないと思っていた。
けれどそれは聞き覚えのない声で、時間が止まった世界で私に語りかけたんだ。
『運命を変えたいなら神浜市に来て。この町で魔法少女は救われるから』
壊れた機械のように同じ言葉を繰り返すその少女の言うことを全部信じたわけじゃない。
でも、あの運命を否定するためならその得体の知れない話にだって縋りたくなった。
彼女の言う神浜市には何度か行ったことがある。普通の学生としては休日に鹿目さんとファッション街に行って、魔法少女としては違法組織から銃器を調達したりそのついでに射撃練習をしたりした場所。本当に銃があるなんて最初は驚いたけど、いつの間にか気にしなくなった。そんな、息抜きにも準備にも使ってた普通の都市。
そうとしか思っていなかったから、巴さんの言うことに驚くことになった。
「神浜市には行かないで」
放課後に誘われたカフェで言われたのは、明確な否定の言葉だった。
その口調は強く、食べていたふわふわとしたパンケーキの甘さを忘れてしまう。私に向ける顔は魔法少女として見せる先輩のそれ。
「なんでこう言ったかって言うとね……暁美さん、行こうと思ってなかった?」
「そ、それは……なんで……」
確かにあの少女を見た時から本格的に調べてみる価値はあるって考え始めてた。でも、口に出してはいなかったはず。
されど、うろたえた私の姿は肯定と同じ意味を持っていたんだろう。巴さんは一転して穏やかな笑みを見せると、落ち着かせるように柔らかく言葉を続けた。
「勘よ。とにかく、今は行かないこと」
「でもマミさん、神浜の魔女って強いし数も多いですけど、他の魔法少女も活動してるし、そんなに特別危険な場所ってことは――」
「状況が違うの」
巴さんが説明してくれたのは四つ。
魔女の力が鹿目さんが言うよりも増していること。巴さんなら対処できる範囲の強さでも、私たちじゃどうなるかわからないから。
それと魔法少女を襲う魔法少女に遭遇したこと。前に聞いたものとは別の魔法少女みたいだったけど、こっちも強力な存在らしい。
これらは納得するかは別にして、十分理解できるものだった。
問題は、『ウワサ』という都市伝説のようなものが形になった存在がいることと――『ドッペル』と呼ばれている現象のことだ。
ウワサは魔女に似ているらしく、魔法少女や魔女が引き起こしているものかもしれないと巴さんは言った。確かに固有魔法は千差万別で、私の『時間操作』のようにそれに特化した魔法があればできてもおかしくない。
でもドッペルは、おかしい。
穢れが溜まったソウルジェムが引き起こすのは魔女化という不可逆の現象だ。だから命を繋ぐために魔女を倒してグリーフシードを使うなんて矛盾したシステムが存在している。それが奴らの目的だから。
そのシステムを崩すような存在。神浜にキュゥべえが入れなくなっている事実。
魔女と違う存在と、魔女化のような現象。
そして、運命を変えるという言葉と魔法少女が救われるという意味。
点と点が私の中で繋がり始めていた。その裏に求めるものがあるような気がしてならない。
「もう少し調べたら、安全かどうかもきっとわかるわ。だから少しだけ待っててちょうだい」
「でも危険な場所なんですよね……?」
「大丈夫よ。向こうで調査に協力してくれる人もいるし、なにより、あなたたちと美樹さんっていう後輩がいるんだもの。やられるわけにいかないわ」
巴さんの言葉からは、私たちのためと労わる気持ちはきちんと感じられた。
だけど、なんと言われようと神浜に向かうことはもう決めている。
これは今までになかった現象。あまりにも都合が良すぎる気しても調べないわけにはいかない。
――そう、それから、神浜に向かった巴さんが姿を見せなくなったとしても。
学校に来てないと聞いた時は調査が長引いているだけだと思っていた。一日くらいなら向こうにいることもあるだろうと。だけど、何日も来ないのはおかしい。鹿目さんと一緒に家を見に行ったら、一度も戻ってないようで郵便物が溜まっていた。
頭を過ったのは死。いくら熟練の魔法少女だと言っても、彼女が無敵の存在でないことはよく理解している。でも、そう簡単に負ける人でもない。帰ってこれない理由があったとしたら、それほどの存在がいるのだと覚悟を決めたほうがいい。
家を見に行った帰り道に考えていたのは、そんなことだった。
「マミさん、どうしちゃったのかな……」
心配するその声を聞いてはっとした。
私、どこか遠くから見ているような考え方をしていた。巴さんが亡くなる姿を見たことが初めてじゃないからって、割り切れてるわけじゃないのに。
割り切れないのは鹿目さんだって同じ。心配だけで終わるはずがない。
「……ほむらちゃん、わたしね、神浜に行ってみようと思う」
「けど巴さんが……」
「だからだよ。マミさんがトラブルに巻き込まれたなら助けないと!」
……きっと、そう言うと思ってた。
だからごめんなさいって心の中で謝りながら言ったんだ。
「ダメだよ……それだけ危険な場所なら私たちじゃどうしようもないよ……。それに鹿目さんまで帰ってこれなくなっちゃったら……」
「それは……」
私は行こうとしてるのに止めるなんて、自分勝手でわがままな意見をどうか許してほしい。
あの街はきっと私が探しているなにかがあるんだ。あなたを救うための鍵になるものが。
だから次の日、一言も言わずに電車に乗って神浜市を訪れた。
一人の私が踏み込んだ駅はどこか淀んでいた。何回か来たことのあるはずなのに、危険だと聞いたからか印象が違う。行き交う人の顔も暗いものに見えてきて、私を追い返そうとしているようにさえ感じられた。まるで魔女の結界の異質さが現実に浸食してるみたいで気味が悪い。
でも、調べるんだ。
怖くても危険でも調べなくちゃいけない。私はそのために来たんだから。
おずおずと一歩を踏み出して、まずは駅を出ようと始めてきたかようにゆっくりと歩きだす。
「ほむらちゃん」
そこで、聞こえるはずのない声が聞こえた。
振り向くと、そこには二人の姿。鹿目さんと美樹さんが、ちょっと怒ったような、そうでもないような表情で私を見ていた。
「美樹さんまで……なんで……」
「どんなとこかはよく分かってるつもりだからさ、一人で行かせられないし」
「心配してくれるのは嬉しいけど、それと同じくらいわたしもほむらちゃんが心配なんだよ?」
どうやら様子がおかしいと思った鹿目さんは、美樹さんに連絡して一緒に探しに来てくれたらしい。私が神浜に行こうと考えた時、巴さんは勘だと誤魔化してくれてたけど、この様子だと顔に出ていたのかもしれない。
二人に会った私の足どりは軽かった。異国の雰囲気を漂わせていた駅でさえ、よく知るものになっていた。行かせたくないと思ってたのは自分だけじゃないって気づいてたはずなのに、その気持ちを無視して、あまつさえ来てくれて心強く思うなんて。
「というか、神浜に行くんだったらあたしに一声かけてよ。知り合いもいるんだからどーんと任せて!」
「そうだよほむらちゃん。わたしたち、友だちなんだから」
今はただ、二人の言うことを嬉しく思うだけだった。
そうして、美樹さんに先導してもらって神浜を移動することになった。
連絡してくれた人は忙しいみたいで、代わりに紹介された人が神浜を案内してくれるらしい。その人も魔法少女みたいでウワサやドッペルについても知ってるから話が早いだろう、って。私一人で来ていたらこんなスムーズにいかなかったと思う。
その人は『環 いろは』さんというらしい。前に神浜に来た時にご飯を食べた場所で知りあった人で、鹿目さんと似た雰囲気なんだとか。
「……あれ、誰かと話してる? ほらあそこの」
待ち合わせ場所の電波塔に着くと、美樹さんが言うその環さんと誰かが話してる姿が見えた。
それは背の高いサイドポニーの人で、その綺麗な見た目と亜麻色の髪が清廉潔白なイメージを抱かせる。知り合いというわけでもなかったのか、近づく前に去って行った彼女は一度だけ振り返って、その目を私に向けた。
どういうわけか、微かに嫌な気配がした。
おかしな感覚はあっという間に消えて、環さんの優しそうな表情が視界に入る。
「久しぶり、ってほどじゃないかな。今のは?」
「道に迷ったみたいだったから教えてたの。聞かれたのが私の知ってる場所だったから」
笑いながらそう言う環さんからはあの人への悪印象なんて感じない。もうこの頃には、きっと私の思い過ごしだろうと霧散していた。
「それで、巴さんの話だよね。でも――」
最初に連絡をした時にも聞いていたけど、やっぱり巴さんのことは誰も見ていないみたい。だから私たちは調べていただろうウワサについて聞いてみることにしたんだ。
するとわかったのは、環さんたちは今は『電波少女』という噂を調べていて、それが人を閉じ込めるものだということ。巴さんがそこにいるかもしれないし、ウワサについても調べるのにうってつけのものだった。
事情を話して、協力すると決まったのはあっという間。自分たちだけじゃ難しいものでもこの町の人がいれば簡単になるだろうから。
近くのカフェにいる仲間の人のところへ案内するからと付いていく時、ふと疑問に思ったことがある。
巴さんは『向こうで調査に協力してくれる人もいる』と言っていた。でも、環さんは巴さんと一緒に行動したことはないそうだ。むしろあまり良く思われていない気さえするらしい。じゃあ一体、誰が協力者だったのだろう。
その謎を環さんに聞いたつもりだったのに、返ってきたのは二つの声だった。
「くれはさん、じゃないかな」
「帆秋さんかなぁ」
ほぼ同時だったその言葉に二人は顔を見合わせる。
それは同じ人物で、美樹さんが最初に連絡した人。クールで、カッコよくて、どこか抜けているところがある不思議な人ということまで二人の説明は一致した。
姿も声もわからない人のことについて考えられることは殆どなくて、この時は会えたら巴さんのことを聞いてみようとしか思っていなかった。
でも、彼女こそ私の探していた鍵だったんだ。
『停止』という似た固有魔法を持つ、帆秋くれはさんは。
■今回の内容
第一部第5章『ひとりぼっちの最果て』
第5章アナザー『その秘密を知りたい』
■鹿目 まどか
まどか☆マギカの主人公。契約済み。
その主人公力は他の追従を許さず、格の違いを見せつける。登録名『まどか先輩』は別キャラ。
■暁美 ほむら
もう一人の主人公。メガネ状態。
まだまだループ数が足りない模様。
■さやかちゃん
ほんとはまだ出てこないさやかちゃん。
少しぐらい出番増やしても……バレへんか……。
■最後のパンケーキ
第5章アナザーストーリー1話。マミさんのフラグ建築力が唸る。
どこぞの探偵も致命傷になったのでパンケーキは非常に危険。