マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート31 聖夜の裏側

 聖夜なんて関係ないRTA、はーじまーるよー。

 

 ハロウィンからそこそこ経過した結果、クリスマスですよクリスマス! 

 各種特殊イベントが各地で発生する一大ロス地帯です。下手に動くと神浜魔法少女のコミュニケーション能力をフルに発揮されて楽しい幸せなクリスマスを過ごしてしまいます。

 

 なのでイベントの発生するタイミングと行動スケジュールを把握しておかないと自由行動が取れません。全力で逃げ回りつつ、今回の目的を達成しましょう。

 

 まず電話は絶対に出ません。もしも相手がエミリー先生ならそれだけで引き込まれます。りかれんの邪魔なんてしてしまったらもはや明日香る(動詞)しかありません。

 

 では早速外に行きたいところですが……本日の友情助っ人ガチャの結果発表といきましょう。というかまだ続いてるのかこのイベント(困惑)。

 

 本日の友情助っ人ガチャはなんと! 今回! 遂に!

 

「電話切ってたな? 外行くにしてもアタシが着くまで待てって……」

 

 南凪の至宝、みゃーこ先輩です! 

 戦闘においては抜群の安定感を誇りますが、いかんせん街中での行動を抑制されがちなのが難点ですね。帆奈ちゃんも勝手に付いてきますし参りましたね、どうも。

 まあ今回は街を移動するだけなのでその辺の心配はありません。二人と神浜を駆け巡りましょう。

 

 本命は午後なので午前中は雫ちゃんの家にイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 

 移動中暇なのでクリスマスの危険地帯について……お話しします。みんなは……クリスマスイベントって知ってるかな? 発生して大幅にロスると最悪神浜が壊滅するんだって。嫌だねぇ。

 

 危険な場所の例としてはみかづき荘関連ですね。恒例行事でクリスマスパーティーをするのでチームみかづき荘とかもれトライアングルが必ず街にいます。万々歳はもちろんケーキ屋に近づいてもいけません。冬場なのに露出度の高いサンタのコスプレをしたレナちゃんにエンカウントしてしまいます。

 我らがミナギーランドにミナギーシーも危険ですし、相談所にも迂闊に近寄れません。信頼度を高めるチャートの都合上そこら中にイベントフラグが転がっています。(フラグの数は)110弱でしょうねぇ、最近測ってないからわからないですけど。

 なので普段とは逆に人通りのない道を選びますよそりゃあねぇ。

 

 

 オッス(冷やかし)。

 というわけで着きましたが入店はしません。この周辺に目的の彼女がいるはずです。

 

「……あ、くれはちゃん」

 

 おうどうしたあやか元気ねぇな! HHEM村が廃村にでもなったか!

 街を探索するついでに見ておきたかったのが彼女の様子ですね。落ち込んでるようなら間違いなく雫ちゃんに避けられてます。話してそれを聞き出しておきましょう。

 

「謝りたいのに連絡しても返事くれなくて、こうしてお店に行ってもいなくて……」

「そうかアイツまで……困ったらアタシに相談するか相談所に行け。いいな?」

 

 要約するとミタマサァン……のダーツの旅があったんですけど……日本海溝に当たって無神経さに怒って出て行ってマギウスに洗脳されて(散々)……ということでした。マギウスの翼に加入したところは皆さん知らないんですけどね(照れ)。

 

 こうして確認できればいいでしょう。あとは時々あやかに話しかけて雫ちゃんから返事か来てるかどうかで判断します。

 じゃあ次は栄区にでも行って待機してましょうか……おっと向こうから来るのは神浜市立大附属の制服三人組じゃないですか。

 

「あー! くれはさん!」

「電話したんですよ? 最近元気ないから一緒にいられないかって」

 

 げえーっ! 団地組! 

 このまま誘われると行く先は必然的に大東区! クリスマス中にあそこは絶対にダメです。せっかくひみかちゃんの誘いをキャンセルしたりなぎたんからの呼び出しも断ったのに、突然失礼……されて街中なのにボスクラスの敵とエンカウントしかねません。

 

「師匠と一緒にどうですか?」

 

 断れ! 全力の否定力を見せてやれくれはちゃん! あ、でもあやかは連れて行ってくださいね。その方が安全なので。

 

「……なにかあったら言ってね」

 

 や゛さ゛し゛い゛な゛あ゛み゛と゛ち゛ゃ゛ん゛。

 そう心配しなくてもこの先出番があるから安心してくれよな~頼むよ~。だから離せ! やめろー! 大東区に連れてこうとするなもうガバりたくなーい! 

 

 なんか帆奈ちゃんが退散させてくれました。あ~ら良い子だねアンタ! これも一つ屋根の下で暮らしてるおかげですね。

 

 帆奈ちゃんといえば『暗示』を使えるとこで使っていきたいんですが、ボス戦に連れてくわけじゃありませんしもう日頃の経験値稼ぎが加速するぐらいしかないですね。迂闊に使えば各魔法少女の信頼度がガタ落ちでワルプルギス戦が辛くなりますし。

 一応うまくフラグを立てることができれば終盤の安定に使えますが、そのためにはまず今日の目的を達成しないといけません。

 

 その目的ですが、クリスマスシーズンにある人物と遭遇することです。 (期間限定キャラは)これはキツイですよ。じゃあすぐ上(恒常)に上げるから。

 

 栄区の並木通りに着いたら適当に見て回りましょう。

 神浜は修羅の国なので誘拐犯や強盗、爆弾魔ぐらい歩けばいます。特に、ちゃんと発生しているなら絶対にいます。狙いは竹細工実演イベントをやっている場所です。

 

「くれは、あの人だかりって……」

 

 よう見つけた! 乗り込めー!

 ヘイそこの一般モブ! なんの騒ぎだい!

 

「あのビルに爆弾が仕掛けられたんだって! それで爆発して……!」

 

 はいこれ! 間違いなくマギウス側のクリスマスイベントである『アリナが街にやってくる』です。その爆発したビルに突っ込むぞ! 

 

「あんたが行く必要ないでしょ!?」

「お前はここにいろ!」

 

 流行らせ! 流行らせコラ! お前ら魔法少女だからなお前!(意味不明) お前ら二人なんかに負けるわけないだろお前!

 

「あれって……デスサンタさん?」

「噂の死神少女だよね……? 誰かを助けてるし本物だ!」

 

 なんだこっち側に出てくるなら焦る必要はありませんでしたね。

 モブ学生たちが言っていますが、みふゆさんを抱き抱えつつ空を駆けているあれこそ死神少女クリスマス・デス・カリブー。ここで確認にしておきたかったホーリーアリナです。

 ここで見ておくことでいち早く『ウワサとの融合』というキーワードを入手することができます。本来なら次の第6章か第7章で手に入るものですね。この段階で知っておけば本来手に入る第6章で別の情報を入手することができるので、栄区に来る必要があったんですね。

 

 ところであのアリナ先輩、全身真っ白で仮装パーティーに来たみたいな見た目をしていて明らかにいつもと違います。それも当然。彼女は今、毛皮神のウワサを着込んでいる状態です。合体してるから! 合体してるから不安!

 

 このウワサは寿命と引き換えに心を暖めるもので、そのエネルギーを集めようと走り回っているのですが、なんと別のウワサがくっついて邪魔をしています。それはクリスマス限定の『ハッピースタンプのうわさ』です。こいつは物騒な事を考えてるやつの行動を全てハッピーな出来事に変えてしまうというとんでもないやつです。

 

 なので存在が物騒なアリナ先輩はクリスマス期間中はやることなすこと全てが他人を幸せにしてしまう全身幸運状態です。こいつすげぇ正義のヒーローだぜ? 

 このまま追いかけると修羅の国神浜を救済する姿を見ることができますが、こちらに気付かれるとアウトなので帰りましょう。マジやべー、見つからなくてよかったぜ。このあとまだ移動こなさなきゃなんねえからな。

 

 あとはブロッサムに行くぐらいなので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十二月の冷たい空気の中、アタシは彼女を待ち続けていた。

 待ち合わせの時刻は夜。時期的にアルバイトが忙しくなるそうでこの時間しか空いてないそうだ。もっとも、多忙なのに今日の為に時間を割いてくれた以上、文句を言うつもりは毛頭ない。

 

 立ちながら考えていたのは様々なこと。はて、次の化学イベントはいつだったか。衣美里が今度合コンを開くなんて言ってたような。

 そんな取り留めの無いことを思い浮かべたのは暇潰しのためか、それとも『それ』を考えたくないが故の逃避か。答えが出る前に待ち人は来たのだからもう意味もない。

 

 大東学院の制服。凛とした印象とは裏腹にアタシよりもほんの少し高いだけの目線。和泉十七夜だ。やちよと同じく、帆秋を通じていつからか親密になっていた。

 

「待ったか」

「いや。……喫茶店でいいか? 代金はアタシが出す」

「助かる。その言葉に甘えさせてもらおう」

 

 言葉も早々に人の少ないその喫茶店に入って、適当に注文する。今日は世間話をするわけでもないのだから本当になんでもいい。アイツのことを思えば味わうという行為すら苦々しいんだ。

 

「帆秋のことはどこまで知ってる?」

「ドッペルを躊躇いなく使うこと。味覚を失ったこと。殊更様子がおかしいこと。外に出ている部分は知っていると思ってくれていい。『読心』を使ったわけでもないから内面はさっぱりだがな。無理矢理やるものでもないし、『停止』を使われれば自分の魔法や相野君の魔法も効かん」

 

 そう話を続ける十七夜は、より一層深刻な声で言った。

 

「味覚については八雲に聞いたが……ソウルジェムと身体のリンクに影響が出てるかもしれない、と。普通ならここまで状態が悪くなる前に無意識にドッペルを止めるはず。折れた腕で殴り続けてるようなものだ」

「……このままだとどうなる」

「良くて身体を操作できなくなり、悪ければドッペルが戻らずに動き続ける」

「それじゃ魔女化と変わらんだろ……!」

 

 あのドッペルとやらに良いイメージはなかったが、ますます信じられなくなっていく。

 そもそも穢れを溜めること自体精神に悪影響を与えるはずだ。いくら浄化されるとはいえそこまでに疲労した心はそのまま。帆秋のようなペースで使い続ければ、癒える間もなく振り回された魂は僅かづつでも蝕まれていって、悪影響が顔を見せ始める。

 

 そして、アイツがそこまでする理由は。

 

「理由は観鳥君だろうな。他ならぬ都が紹介して直接相談を受けたのだから、彼女が東の生まれで苦しんだことは自分だって知っている。他の東の魔法少女と同じで彼女もマギウスの翼に行ったと見て間違いない。ウワサとやらを追っているのもそれだろう。……すまない、自分が気づくべきだった」

「……違う。アタシが遅かったんだ」

 

 そうだ。あの二人が距離を置いてる時点でわかったはずなんだ。

 

 帆秋がどれだけ令を気にかけていたかを知らないアタシじゃない。偶然街で見かけた子が落ち込んでるようだから助けてほしいと言われて、それが令だった時は驚いたがアイツにアタシ以外の魔法少女の知り合いが出来たようで嬉しかった。

 

 なんせ令の悪口を言ってるヤツに無言の圧をかけたり、観鳥報を掲示するのを手伝ってたり、自らネタになるような行動を取り始めたりしてたんだ。メロン好きなのは元かららしいが。

 なのに令の反応を本人じゃなくてアタシに聞きに来る辺り本当に不器用なヤツ。

 

「一つ聞きたい。帆秋の無鉄砲さとは一人で抱え込むことではないのか?」

 

 それは違うとすぐに否定すると十七夜は怪訝な顔をした。抱え込むのなら周囲の人間が手を貸してやれるってことを教えればいいだけ。本当に厄介なことにそうじゃない。

 

「一人で突っ走るヤツじゃないんだ。取れる全力を持って助けようとするアイツは頼れる人間に見えるだろ。実際それで成功してるし、助けられた人間だって多い。だがな、二回目の昏倒事件を覚えてるだろ?」

「……ああ。多くの魔法少女の力を借りて更紗君に手を伸ばす姿は美しく見えた」

「帆奈に聞いたよ。アイツ、ソウルジェムが濁るのを意に介さずに『停止』を使ってた。当時はドッペルがないから魔女化するってわかってたのにだ」

「――っ」

 

 ここまで話せば気づくこと。

 そう、アイツは自分すら手段の一つとして考えてるんだ。帆奈を助けるのにそれが一番可能性が高かったから選択したんだろう。その結果どうなるのかを考えもせずに。

 令がいる時はそれを止めてくれていた。だが、それが外れた今。

 

「きっかけが必要なんだ。なにか、アイツの思考と行動を変えるような強烈なものが」

 

 

 

 

 

 その日の帆秋の監視を立候補したのは義務感と他の魔法少女への配慮からだった。

 

 以前から無茶をしないか見ていてくれないかと周囲に呼びかけていたが、こうして毎日のように誰かが見ている状況になったのは味覚を失っていると聞いた時から。それで今はななかとこのはたちを中心に一部の知っている魔法少女が付き添っている。

 

 南凪の周辺は勝手知ったる庭みたいなもんだが、この高級住宅街には用もないし見慣れない景色が続く。その中の一際大きいのがアイツの家だ。

 その割に帆奈以外はリビングまでしか入ったことがなく、知っている範囲は非常に狭い。

 

 何度電話しても繋がらないことが不安を抱かせたが、中から帆秋が疲れた顔を見せるとため息が漏れた。

 

「電話切ってたな? 外行くにしてもアタシが着くまで待てって……」

「いいでしょ別に」

 

 こう言うときは詮索されたくないと思ってることが多い。事実、既に出かける準備を終わらせていたようで危ないところだった。

 

 コイツのこういうところは変わらないが、帆奈の様子は随分と変わった。

 今も帆秋の袖を掴んで離れたくないと意思を示している。丸くなったと思っていたが、これはおそらくは逆。落ち着いていたのがあの頃に戻り始めている。このままではまた事件を起こしかねない危うさが見えていた。

 

「で、今日はどこ行くんだ? どこもクリスマスシーズンだぞ」

「……止めないのね」

「止めても行くなら見てたほうがマシだ」

 

 あきらやかこは止めようとしたことがあるらしいが、無理やり外出していったらしい。余計な軋轢を生じさせたりストレスを増やさせるぐらいならこの方が良いってだけで、全面的に賛同してるわけじゃない。

 

 それで行き先はなぜか雫の実家の喫茶店。直感で察知したのか店の前ではあやかが落ち込んでいた。話を聞いてみると、雫を怒らせてしまったらしい。だが……最近の雫の行動は令が姿をくらます前に似ていて、段々とマギウスの翼の数が増えている証拠を見せつけられているようでもあった。

 その後偶然出会ったれいらたちに誘われても強い口調で拒否したアイツは、誘われるかのように今度は栄区に向かって行って、近くに見えた人通りの前で立ち止まった。

 

 聞こえるのはこんな日に爆弾魔がビルを爆破しただとか。いつの間に神浜はこんなに物騒になったのか。

 普通なら自分の身を案じたり他人の心配をするところだが、アタシの心配はすぐそばにある。案の定、帆秋は人混みをかき分けてそのビルに近づこうとしていた。

 

「あんたが行く必要ないでしょ!?」

「お前はここにいろ!」

 

 先に進まないようになんとか抑え込むと、周囲の声から怪我人が誰もいないことがわかったようで落ち着いた。

 ……段々と見境がなくなってきている。コイツはもう少し状況を判断する思考能力があったはずだ。焦りで止まれないのか、それともソウルジェムが何度も穢れで満たされているからなのかはわからないが、早く手を打たないと取り返しのつかないことになるだろう。

 

 そうして気がつけばもう夕方も過ぎて暗くなってきた。

 コイツが一日中街中を歩き回って最終的にやってきたのはブロッサムだった。今日はかこやかえではいないみたいで、このみがクリスマス用のリースを売っている。店の手作りみたいで時間も時間だからか在庫は残り少ない。

 けど、帆秋がそれに目をくれることもなく。このみと一言二言挨拶を交わすと、少し躊躇いながらもそれを言ったんだ。

 

「……ブロッサム、辞めるわ。急で悪いわね」

「え……?」

「く、くれは? あんたどうしたの?」

「もう、いいの。これからは別の時間に充てるから」

「もういいって……家に飾ってる花、全部ここのでしょ!? ここで働くのは嫌いじゃないって言ってたじゃん……それともそんなに……!」

「……いいよ、帆奈ちゃん。それがくれはさんの決めたことなんでしょ……」

 

 帆奈が詰め寄ってるのはブロッサムやこのみのためじゃないだろう。アイツは単純に帆秋が心配なんだ。一つ一つ、自分が知っている姿と新しく知った姿が失われていくようで。

 

 ……このみは、もう諦めているんだ。何度お前のせいじゃないと言ってもドッペルを初めて見た時のトラウマがずっと消えていない。あの場から帆秋を運ぶ時の自分を責める顔がまだアタシにも焼き付いている。だからそれ以上近づけない。

 

 もう言えるのは、アタシしかいなかった。

 

「おい帆秋……お前いい加減にしろ……!」

 

 『願い』の影響なのかコイツの見た目は変わらない。だがアタシの目に見える淡い栗色の髪はくすんでいて、肌は病的なまでに白く、その青みがかった黒い瞳は虚ろだった。

 言葉にすべきことではないのかもしれない。ここで言うことじゃないのかもしれない。けれど令がいない今、誰かがこの役をやらないともう手遅れになる。

 

「はっきり言うがな、お前は誰かを助けられて気分が良いだろうがそれに振り回されるアタシらは迷惑なんだ! その身勝手さが誰を傷つけたと思ってる! 令はどうして休学した? なんでこのみは悲しそうな顔をしてるんだ? 帆奈がお前から離れようとしない理由を考えたことがあるのか!」

 

 誰かが息を吞む音が聞こえた。

 

「……私、だって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神浜の情報を得てからというもの、わたしの予知の時は着実に近づいていた。

 街中を歩いて構成員に接触し、幹部と肩を並べる立ち位置に来るのにそう時間はかかっていない。

 

「『ハッピースタンプのうわさ』……なんでそんなものがあるワケ!?」

「季節限定で強力な力を持ってますし、反動で落ち込んだり妬んだりしてエネルギーの回収効率が良いみたいです……」

「……これ以上変身したら肝心な時に使えないヨネ」

「そうですか? まだ使えると思いますが」

「……()()()さん」

 

 その名はある種の保険だ。ないよりはマシのおまじない程度。しかしこれで確率が上がるのならしない理由もない。

 声をかけたわたしをアリナ・グレイと梓みふゆが見つめてくる。このまま毛皮神のウワサを着続けてもらえれば手間が省けるのだけど、彼女はやはり否定を視線に込めて睨んでくる。

 

「その帆秋くれはさんの存在は脅威です。放置しておくと……」

「アイツの名前出さないでほしいワケ!」

「どういう意味かわからないわけではないでしょう? 実力のある魔法少女が彼女を中心に一つの勢力を作り上げています。このままだと存続自体が危険では?」

 

 このアリナ・グレイは彼女を異様に敵視している。ゆえに動かしやすい。マギウスの翼もそうだ。解放と梓みふゆという二本の柱で成り立っているのなら、どこを押せばいいかは単純明快。

 そしてこの――表になかなか出てこない残りのマギウスもそう。

 

 参京院教育学園の『(ひいらぎ) ねむ』。聖リリアンナ学園の『里見(さとみ) 灯花(とうか)』。

 目の前にいる二人だって、その目的の足枷になる彼女を疎ましく思っている。

 

「だったら、その頭を潰してしまえばいい。反発されるだろうけど個々に対応すればいいだけだよ」

「ねむ……! 待ってください、味方にできれば……!」

「もうあれは無理だよー? みふゆもわかってるでしょ。魔法少女の真実を知っても抵抗するのなら意見が対立してるんだから」

「でも、どうすると言うんです。彼女が一人になることはありませんよ。それに彼女ほどの実力があれば撤退の判断もできるでしょう。ですから――」

「その場を整えられると言ったら?」

 

 今度は全員がわたしを見る。ここまでも、そしてこれからも手の内。

 キリカは既に行動している。あと必要なことは一つ。

 

「せっかくの協力関係ですから一度ぐらいはわたしの策をお見せしようかと」

「アリナ、アナタ嫌いなんだヨネ。フィクサー気取りでなに考えてるワケ?」

 

 それはもちろん――

 

 

 




■今回の内容
 『みかづき荘のMerry Christmas』
 『アリナが街にやってくる ~ホワイト・クリスマス・ラプソディ~』

■ホーリーアリナ
 突然ソーリーなんですケド。
 驚きの白さ。 

■毛皮神のウワサ
 単独で一般人に危害を加えるやべーやつ。
 燃費が悪い死のトナカイ。

■ハッピースタンプのうわさ
 クリスマス限定のウワサ。
 その分影響力がやべーやつ。
 
■アリナが街にやってくる
 こないで。

■クリスマス・デス・カリブー
 毛皮神のウワサ + ハッピースタンプのうわさ = 神浜聖女二号
 誰がハッピーエンドを迎えようがどうでもいいんですケド。

■ダメなルート
 「クリスマス・イブは3日間くらいあるといいんだよね。だってさぁ、イブの日とかにアリナを見つけられない走者の子とかいっぱいいてかわいそうじゃん!」なんて言っていながら、タイムにとっての本命くん(アリナ)がはたしてイブに現れてくれるかどうかやっぱり気になる。難易度ハードは決して絶対に約束なんかしてくれない。だからくれはちゃんはサンタ服でケーキ販売なんかやっている。
 時間が早かったので、魔法少女の家にプレゼントを置きに突入はできなかったけれど、アリナ・グレイの姿を見つけられる、はずだった!「アリナ先輩、今日は何の日?」「知らないワケ、そんなの」19時58分に大きく見えた短縮チャンスがアリナに無視され、戻ったときにはかりんちゃんと仲良くしていた。




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