マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート4 組長捜索第三次遠征

 ひたすら組長を探すRTA、はーじまーるよー。

 

 今日もブロッサムでバイトです。

 ですが、全然かこちゃんとエンカウントしません。かえでちゃんは現在かりんちゃんと仲良くやってるらしく、それしか話してくれません。

 なんでこんなにキツいんすかねぇ~も~……やめたくなりますよ~バイトォ~。汗がもう……ビショビショだよ。

 

「くれはさん。これかえでちゃんから貰ったんだけど、一緒に行かない?」

 

 これは『華心流いけばな展のチラシ』です! やったぜ。

 『竜城(たつき) 明日香(あすか)』から手に入れるルートが一般的ですが、今回はななか組長 → かこちゃん → かえでちゃん → このみちゃんのルートで渡ってきましたね。ほぼしりとりです。これだからブロッサムはやめられねえぜ(手のひら返し)。

 もちろん行きます。二つ返事です。

 

 というわけで、ななか組長捜索第三次遠征です。

 この時期に『華心流いけばな展のチラシ』を手に入れれば展覧会でななか組長に出会えます。手に入れたルートから魔法少女だともわかってくれます。

 ここまでお膳立てされて出会えないなんて走者失格です。それでは展覧会にイクゾー!

 

 

 わぁ、これがいけばな展ですかー。色んな花がありますねー。こんなに美しいとは思わなかったぁ。

 ここは展示で、向こうに、生け花体験の申し込み用紙があるんだ。後で、そこへ行こうよ。

 

 

 いなかった(走者失格)。

 なんで? 普通に見学して普通に帰っちゃいました。

 

 ちょっとマズいですね。今のところななか組長、あきら、美雨、かこちゃん、誰とも会えてません。

 ななか組長はご覧の有様。あきらは最近忙しい。美雨は南凪区で魔女狩りしててもエンカウントしない。かこちゃんもブロッサムで出会えない。散々です。

 

 おかしい……おかしいぞ……なんでななか組とエンカウントできないんだ……?

 ななか組本当に無事か? 誰か欠けてたら再走だぞ? まだ『Rumors in Disguise』は発生しないはずですが……マジ震えてきやがった……怖いです……。

 

 最終手段として校門で遭遇するまで張り付いててもいいですが、初対面での信頼度が最悪になりますし、帆秋ちゃんの出席日数が犠牲になって結果として補習でロスしてしまいます。いくら自由な南凪でも限界があります。

 

 いやちょっと待ってください……これってもしかして、もしかするかも知れませんよ?

 

 閃きました。ななか組四人と出会えないということは、揃って行動している可能性が高いです。

 となると、放課後の時間帯に新西区・参京区・中央区からどこかに集まっているのでしょう。そこを狙います。所属メンバーの半分(四人中二人)がいますし、狙いは参京区です。

 

 どこを探すかというとファミレスです。特にドリンクバーに近い席を重点的に探します。ななか組の行動具合によっては既にななか組長がドリンクバーの虜になっているはずですね。

 そうと決まれば行動開始です。ファミレスのハシゴだぜ!

 

 たのもー! たのもー! たのもー!

 あれー、おかしいね誰もいないね。これで何軒目でしょう。

 

 もういい加減誰かしら見つかっても……いや、あの金髪は……ドア様! 『阿見(あみ) 莉愛(りあ)』様じゃないか! チャンス!

 妙にフラフラしているところを見ると『胡桃(くるみ) まなか』と出会っていないか、まなかちゃんの用事で試食会が開かれていないかのどちらかですね。無茶なダイエットをする彼女はたまにこうなります。

 

「こ、このっ阿見莉愛になにか!?」

 

 空腹であることに気づくと、飲食店に案内することや飲食に関係するアイテムをプレゼントをすることができます。が、それは罠で信頼度が下がります。特にこの大量に所持しているファミレスクーポン券などはダメダメです。ここは心配するだけにして去りましょう。

 

 しかし珍しいですね。このタイミングで出会えたのは好都合です。名前も自分で言ってくれたので、後でエミリー先生に正式に紹介してもらいましょう。ドア様もとい莉愛様にはこの後大事な役目があるので、以降は余裕があれば優先的に信頼度を上げておきます。

 じゃあ続き、イクゾー!

 

 少女散策中……。

 

 ファミレスはもう十分だ! もう十分だろう! ドリンクバーは十分堪能したよ……。

 さすがにファミレス以外も見てますが、見つかりません。もう会えなかった場合のチャートに切り替える必要があるかもしれません。

 

 もう何度目かのダイナミック入店をしてますがそろそろ撤退の判断を……。

 いやちょっと待ってください……これってもしかして、もしかするかも知れませんよ?(二回目)

 

「……どうかしましたか?」

 

 見つかったー! アーッハッハッハッハッハ! 見つけられたー! ハッハッハッハ! 生きてるぅー! 見つかったーハッハッ生きてる! ハッハッ! あー生きてるよ!

 

 落ち着きました。

 やっぱりドリンクバーでしたね。ハシゴした甲斐がありました。

 彼女こそ、本RTAにおいてトップクラスの重要度を誇る『常盤 ななか』組長です。チームメンバーも籠手にソウルジェム付けてる人、チャイニーズマフィア、13歳キラーと個性的ですね。

 強い・頼れる・組長の三拍子揃った彼女ですが、この人これでも中学三年生です。うせやろ……?

 

 さっそくチラシと指輪を見せましょう。すぐ気づいてくれます。

 これでななか組長との面識ができました。一度会っておくかどうかでこの後の動き方が変わるので重要です。というかこれじゃただのサクサクプレイじゃないか……。

 

「では私はこれで。今は少々立て込んでいまして……またお会いしましょう」

 

 席に戻って行きました。もう用はな……フェリシアァッ!? 席にフェリシアがいるじゃねえか!

 あ、そっかあ……全然出会えなかったのは、『深月(みつき) フェリシア』がななか組に雇われていたからみたいですね。

 この時期はフェリシアのフォローでななか組全員が本来とは別の行動をします。この期間もまちまちです。大体は即日解雇のはずですがこういうパターンもあります。しかも今回は微妙に発生が遅いです。やめてくれよ……(絶望)。

 

 とりあえず目標は達しました。フェリシアが解雇されたぐらいにまた連絡しておきましょう。

 

 

 

 今日もブロッサムでバイトです。学生・魔法少女・ブロッサムの三重生活です。

 いかにサボるかっちゅーのも仕事のうちや……すいません減給は許してくださいバイトはしますから!

 

 そういえばエミリー先生に確認を取りましたが、まなかちゃんと莉愛様は出会っているそうです。ついでにその場にいた『美凪(みなぎ) ささら』と『竜城 明日香』に知り合っておきました。

 いいですね、流れが来てます。明日香にも重要な仕事があるので、ここで稼いだお金を使ってガンガン信頼度を上げておきましょう。優先度は誰よりも高いです。

 

 しかしチャートの都合上ブロッサムでバイトし続けていますが、金策なら他にも手段があります。水徳商店街や神浜現代美術館、千秋屋などですね。ステータスが要求されますが金額だけならミナギーランド、ミナギーシーがオススメです。

 

「くれはさん、あれ!」

 

 おうどうしたこのみちゃん! 確認してみましょう。

 どうやら魔女の口づけみたいですね。経験値にも出会えるなんてやっぱりブロッサムは最高じゃないか!(手のひらクルクル)

 

 こうなったらバイトをしている場合ではありません。魔法少女たるもの、魔女結界を探しに行くべきです! ちなみにこの間も時給は発生します。

 

 

 結界はこ↑こ↓。突撃じゃー!

 

 ところで、このみちゃんとは初めて一緒に戦いますね。

 『春名 このみ』は鋏を使って戦う近距離系魔法少女です。一応鋏を飛ばしたりはできます。固有魔法は『花を持たせる力』で、簡単に言うと次の攻撃やバフ等の効果を上昇させます。普通だな! 逆に言えばオーソドックスで癖のない魔法少女ですね。プレイヤーがどんなにアレでも合わせてくれるので初心者にはオススメです。

 

 二人で突き進めばあっという間に……他の魔法少女の反応がありますね。これは誰か来る来る……イベントが見えるぜ。

 

「お待ちなさい! この阿見莉愛が参りましたわ!」

「ちょ、急ぎすぎですよ!」

 

 あみめさん(莉愛様)! あみめさんとまなかちゃんじゃないか!

 こいつは乱入イベントですね。近くに魔法少女がいるとたまにこうして参戦してくれます。紹介してもらう手間が省けました。

 

「こっ、この前のっ……!」

「あ、先日の。そちらの方は……」

「……ってあなたは!」

「先輩? どうかしたんですか?」

 

 この前の遭遇が効いてますね。知っている魔法少女のほうが乱入の確率が上がります。それにこのみちゃんは以前にも会っていたみたいです。

 というわけで、この四人で戦うことになりました。

 

 せっかくなので解説しますと、『阿見 莉愛』は弓を使う遠距離型の魔法少女です。まともに戦ってくれれば強いのですが、信頼度が高くないとこちらの言うことを聞かずに自分が一番目立つように行動します。固有魔法の『隠蔽』もまず使いません。ですが、それをサポートする形で行動すればいいだけの話なのでプレイヤーの腕の見せ所さん!?

 ちなみに、まともに戦うと『隠蔽』でステルスしつつ的確に弱点を狙い撃つ超有能と化します。なんだよ……結構……強ぇじゃねぇか……。

 

 『胡桃 まなか』は近・中距離型の魔法少女なのですが……武器がフライパンとかウッソだろお前!? これで殴ったり火の玉を飛ばしたりしますが、いかんせん素の攻撃力が貧弱です。しかし固有魔法の『伝播』は非常に強力で、使用した状態での攻撃は全体攻撃となります。使い魔とか一掃です。回復も全体化するのでサポーターとしてお世話になった方も多いかと思います。

 

 ぶっちゃけこの二人は結構癖があります。強いことは間違いないんですが、一緒に戦うには慣れが必要です。特に今の段階では莉愛様が勝手に行動するので帆秋ちゃんを含めた三人でサポートしましょう。

 道中の使い魔は普通に戦っていればOKです。魔女戦では莉愛様の弓が確実に当たるように時々『停止』で止めます。特に莉愛様が合図を出したら、ひたすら斬っておいた位置に誘導してトドメを刺させます。

 

「楽勝! でしたわね!」

 

 凄ェ! さすがベア(莉愛)様ァ!

 ここは全力で褒めちぎります。今の時期からこうして信頼度を高めておきましょう。

 

 では連絡先を交換してこのまま……そういえばバイト中でした。このみちゃんに連れられて強制的に帰らされます。じゃあな!

 ちなみにレア(莉愛)様の連絡先を見ると表示すらバグっています。名前を間違えられるのも『隠蔽』が作用しているのかもしれません。

 

 

 

 終わりました! バイト終わりましたね! 今日は帰宅せずに連絡入れて会いに行きましょう。え、このみちゃんも来る? まま、ええやろ。

 

 今は北養区の洋食屋『ウォールナッツ』にいるみたいです。まなかちゃんの実家です。近くには『ピーナッツ』という別の店があるので間違えないようにしましょう。

 

「きぃーっ! 打倒七海やちよ! 次こそは負けない!」

「すみません先輩は今ちょっとアレな状態なんです……」

 

 なんかあったみたいですね。勝手にライバル視しているため、どこかでやちよさんと出会うとよくこうなります。ほんとは大ファンなのでテンションも上がってる上がってる。

 こういうときは褒めちぎりましょう。信頼度も上がります。

 

 なお、この前『怪盗少女マジカルきりん』を買ったときに莉愛様が載ってるファッション雑誌『BiBi』も買っておきました。これでイチコロです。先輩が出てますよ、先輩が。

 

「それは……来月号には遂に私が載る『BiBi』!」

 

 まだだった(ガバ)。しかし機嫌が良くなったので結果オーライです。

 

 このウォールナッツも今後入り浸ることになります。誰かと来れば信頼度にボーナスがかかりますし、料理を食べることでバフもかかるので良い関係を築いておきましょう。明日は明日香ですね。明日だけに(激ウマギャグ)。

 

 後は少々話をして帰りましょう。一日に上げられる信頼度には限度があります。それ以上はただのロスです。

 

 

 

 店を出るとぉ~魔女結界だった~。なんで?

 他三人もいます。奇襲を仕掛けたつもりでしょうがこちらには魔法少女が四人揃っています。四人に勝てるわけないだろ! パパパっと片付けてやりますよ。

 

 前回通り莉愛様をサポートする陣形で……反応があります。乱入です。

 

「……またあなた?」

「な、七海! 七海やちよ!?」

 

 出たわね。ベテラン魔法少女(19歳)で頼れる存在、『七海(ななみ) やちよ』です。食においては右に出るものはおらず、スーパーのポイント10倍デーを見逃さない凄いお方です。戦闘力と生存力も半端じゃありません。

 

 莉愛様はやちよさんがいるとより目立とうとして行動パターンが変わります。これをサポートしてもいいんですが……今日のところはやちよさんにとっとと倒してもらいましょう。

 

 『停止』で止めて……もう終わってる! いくら五人で殴ってるからって早すぎるっピ!

 

 結界が消えますが、今のやちよさんはRTA走者のようにとっとと帰ってしまうので連絡先を入手できません。追従して帰りましょ。

 

 そういえば魔女がいたのにソウルジェムが反応しませんでしたね。バグか? まま、ええやろ。

 

 

 ウォールナッツから帰宅しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『フラワーショップ・ブロッサム』。私がアルバイトをしている、魔法少女になった理由があるお花屋さん。最近はかこちゃんにかえでちゃんって知り合いが増えたと思ったら、くれはさんも増えてなんだが賑やか。

 

「これ、かこちゃんが知り合いの魔法少女に渡してって言ってくれたの。今度展覧会があるんだって」

 

 かえでちゃんから受け取ったのは『華心流いけばな展』のチラシ。生け花の展覧会って、ワクワクしちゃう。かえでちゃんは最近知り合ったかりんちゃんって魔法少女の子と忙しいみたいだし、くれはさんを誘ってみようかな。

 

 そう思って声をかけたんだけど……。

 

「くれはさん。これかえでちゃんから貰ったんだけど、一緒に行かない?」

「いいわよ」

 

 迷う間もなく返事が返ってきた。とても早くてびっくり。

 早いのはそれだけじゃない。くれはさんは前にも働いていたみたいにお仕事もすぐ覚えてくれて手際も良い。私のほうが先輩なのに憧れちゃう。

 

 

 それから数日。二人で行った『華心流いけばな展』は、私の想像よりもすっごく綺麗なものだった。あまりにも長く見すぎてて、くれはさんを待たせちゃったかなって思ったけど、くれはさんも探るみたいによく見てた。

 

 帰り道に感想を言い合ったら、私が気づかなかったところまで見てたみたいで色々と教えてくれたの。すごい。私だって何度も見なきゃわからないだろうなってところに気づくなんて。

 

 ……こうしてると、私が魔法少女だってことを忘れちゃう。

 みんなを不幸にする魔女を倒すのは大切だけど命懸け。普通に学校に行って、普通に放課後を過ごす生活に未練がないって言ったらウソになるけど、それでも魔法少女になったことを後悔なんてしていない。 

 魔法少女になったから私に花の魅力を教えてくれた店長さんを助けられた。こうしてブロッサムでのアルバイトだって続けられている。魔法少女だから会えた人たちもいる。魔女と戦うのを怖いと思うときもあるけど、みんながいれば大丈夫。

 

 

 だからその日も、様子がおかしい人を見てすぐに気づけた。

 魔女の口づけ。魔女に操られている人に浮かぶ印。今はアルバイト中だけど……止めないと!

 

 それで結界を見つけて入ったんだけど……。

 

「お待ちなさい! この阿見莉愛が参りましたわ!」

「ちょ、急ぎすぎですよ!」

 

 私たちの後ろから、前に偶然にも一緒に戦った人たちが来た。

 あの変わった人はちょっと苦手かも。強いことには強いけど、最後の一撃を取られたことで怒ってた。そんなに気にすることなのかな……。

 

 くれはさんにどう伝えようか迷ったけれど、どうやら出会ったことがあるみたい。その変わった人がくれはさんを見て驚いていた。

 

「ああ、あなたね。今日は大丈夫?」

「……また何かやらかしました?」

「な、なな、なんでもないわよ!」

 

 明らかに焦ってる。自信満々でプライドが高い人だと思ってたけど、違うのかな。

 

(言えるものですか! 最近試食会がなかったから空腹でフラフラしてたなんて!)

「せんぱーい、心の声が念話で漏れてますよ。また無理なことしてまなかがいなかったらどうするつもりなんですか。終わったらメガ盛りオムライス作りますから」

 

 うん、違う。なんだか少し親近感が湧いた。

 そのおかげで使い魔は簡単に倒すことができた。くれはさんが『停止』で止めてくれて狙いがつけやすかったのもある。

 ただ、変わった人……莉愛さんが対抗意識を燃やしてた。

 

「あ、あの闘い方……美しい! 一切無駄のない動きでまるで踊っているかの――はっ、こ、この私が負けてなるものですか!」

「ダメだぁ……また悪い癖が……」

 

 大丈夫かなって思ったけど、でも魔女と戦うときには二人は協力してたように見えたの。

 大振りの攻撃が来て隙ができたらくれはさんがすかさず止めて、そこを莉愛さんが射抜く。そうしたらカトラスで斬って、退避するのを弓で援護する。さっきの莉愛さんじゃなけど、二人で踊ってるみたいだった。最後の攻撃も、示し合わせたみたいに綺麗に決まった。

 

「楽勝! でしたわね!」

「やるわね」

「あなたこそ。よく私の動きについてきましたわ」

 

 な、なんだろ、この空気。今にも握手とかしそうな……。

 思わずまなかちゃんを見ると、困惑した視線が合った。

 

「それにしても綺麗ね。そこらの芸能人よりも遥かに」

「あ、あなた……! わかってるじゃない! ま、この阿見莉愛の美貌を前にしたら当然のことですけど!」

「そうかもね」

 

 ど、どうしちゃったのかな。くれはさんってこんな手放しに褒めるイメージじゃなかったんだけど……。

 またまなかちゃんを見る。やっぱり視線が合った。ち、違うよ!? 私もわからないよ!?

 

 私とまなかちゃんを置いて二人の話はどんどん盛り上がってく。くれはさんは相変わらず真顔だけど。

 ……って、お店! 途中でこっちに来たんだった! 

 くれはさんを引っ張って連れ帰ろうとすると、莉愛さんが声をかけた。

 

「何かあったら私を呼びなさい! すぐに、解決してさしあげますわ!」

「調子良いなあ……」

 

 

 

 ブロッサムに戻った後は何事もなくいつも通り。でも、帰り際にくれはさんが電話をしていた。いつも私と一緒に帰るから待ってたんだけど、今日はちょっと違うみたい。

 

「このみ。これから莉愛に会うけどどうする?」

「え、えっ!? うーん……行こうかな」

 

 あの莉愛さんって人はやっぱりちょっと苦手だけど、せっかく誘ってくれたんだし行くことにする。同じ魔法少女同士話してみたいこともあるから。

 

 くれはさんに連れられて着いたのは北養区の洋食屋さん。この『ウォールナッツ』という名前は私も聞いたことがある。歴史があるお店で名店なんだとか。迷いなく案内されたし、よく来てるのかな。

 

 入ってみると近くのテーブルで莉愛さんがうなだれていた。かと思ったら急に顔を上げる。

 

「きぃーっ! 打倒七海やちよ! 次こそは負けない!」

「すみません先輩は今ちょっとアレな状態なんです……」

 

 説明してくれたのはコックさんの格好をしたまなかちゃん。聞いてみると、ここが実家なんだって。すごいなぁ……。

 

「……あ、来たわね! さあ胡桃さん。今日はパーッとやりますわよ!」

「は、はぁ……何にします?」

「メガ盛りオムライスとメロンジュース」

「さすが! あなたは本当によくわかってらっしゃる!」

「く、くれはさん。食べ過ぎじゃ……」

「……このみ。あなたに一つ言っておくわ。メロンは、別腹よ」

「そっちじゃないよ!?」

「ああ、この人先輩と同じタイプだ……どうりで仲良くなるわけだ……」

 

 まなかちゃんの私を見る目が優しくなってる!? ち、違うよ、くれはさんに迷惑はかけられてないから!

 どうにか誤解を解いて、私は気になった『ウォールナッツケーキ』を注文した。お店の名前が付いてるとやっぱり気になる。それにしても、ケーキまで作れちゃうんだ。私もバレンタインのときはチョコを作るけど、さすがにお店で出せるものじゃないなあ。

 

 少しして、そのケーキがやってきた。くれはさんと莉愛さんが雑誌の話で盛り上がっている横で、一口食べてみる。メープルクリームに、これは……クルミ? そっか、だから『ウォールナッツケーキ』なんだ。

 

「おいしい……」

「でしょう? ウォールナッツはどの料理も一品ですから」

 

 意識せずに出た言葉。幸せな気持ちでいっぱいになった私は気づけば笑顔になっていた。料理は魔法だなんて言うけど本当かもしれない。

 きっとこの料理は花束と一緒。誰かのためにって作られた気持ちが込められているんだ。おいしい料理を食べて喜んでもらいたいって想いが伝わってくる。

 

「……本当においしいです。あの、また来ます。今度は友達も連れて!」

「ありがとうございます! 良い笑顔を見せてくれたんです。いつだって歓迎ですよ!」

 

 ふふ、かこちゃんもかえでちゃんも喜んでくれるだろうなあ。今日は来て良かった。

 隣にいる莉愛さんもおいしそうに料理を食べている。もう私には苦手意識なんてなかった。

 

 そうした楽しい時間はあっという間に過ぎて、気づけば外はもう暗い。そろそろ帰らないとって伝えると、くれはさんも同じタイミングで帰るみたいだった。

 

「今日はありがとうございました! また来てくださいね!」

「帆秋さんはどちらにお住まいで? 今度は私が向かいますわ。まだまだ話したいことがありますから!」

 

 莉愛さんはまだ用事があるのかウォールナッツに残るみたいだったけど、私たちを見送りしてくれた。

 それで名残惜しいけれど扉を開けたとき――魔女結界に呑み込まれていた。

 

「結界!? いつの間に!? 今日もう三回目ですよ!?」

 

 くれはさんは横にいる。今のはまなかちゃんだ。莉愛さんもいた。

 突然のことだったけど、私たちは魔法少女。すぐに変身して周囲の様子を見る。既に最深部で魔女がいた。もうこんな近くに……!

 

「私が行く! このみ、サポート!」

「うんっ!」

「行きますわよ胡桃さん! 先ほどのように!」

「また先輩は出しゃばって……」

 

 今日は二回目だけど、魔力はまだ大丈夫。十分に戦える。

 莉愛さんをサポートするまなかちゃんのように、くれはさんを魔女に接近させるために牽制しようとしたけど、背後から他の魔法少女の反応があった。

 

「……またあなた?」

「な、七海! 七海やちよ!?」

 

 声に振り返ると、青い髪で槍を持った綺麗な人がそこにいた。私は詳しくなかったんだけど、莉愛さんが言うにはモデルでライバルらしい。ウォールナッツに来たときに叫んでいた名前だったし、隣で時々名前を言っていたのを覚えてる。

 結界の中で他の魔法少女と出会うことはそこそこあるけど、どうもウォールナッツに来る前にも鉢合わせていたんだって。

 

「莉愛、連戦なんでしょう? ここは協力してさっさと片付けるわよ」

「ぬぐぐ……わ、わかりました! 七海やちよ! いいわね!」

「は、はぁ……? 私は最初からそのつもりだけど……」

 

 こうして五人で戦うことになったんだけど……その人はとても強かった。くれはさんだって相当強いと思ってたけど、もっと速いし、攻撃の威力が全然違う。私だって鋏を飛ばせるけどやちよさんの槍みたいに大量には飛ばせない。こんなに強い人がいるだなんて、知らなかった。

 くれはさんが『停止』を使った戦法をする必要もなく、あっという間に魔女は倒されて世界が普通に戻る。

 

「私は行くわ。グリーフシードはあげる。ストックはあるから」

 

 やちよさんは莉愛さんに詰め寄られてたけど、それだけ言って帰ってしまった。なんだか、出会ったばかりの頃のくれはさんのイメージそのものみたい。

 

 今度こそ二人とお別れしてお家に帰る。くれはさんが住む南凪区は正反対の位置だし、途中で別れた。

 

 ちょっと遅くなっちゃったけど、楽しかったなあ。莉愛さんは変わった人だったけど、話してみたら良い人だって気づけた。まなかちゃんの料理だってとってもおいしい。やちよさんみたいな強い人がいるってことも知れた。今日は良い日かも。

 こんな日が、ずっと続けばいいな。

 

「……あ、れ?」

 

 視界が揺れる。急に貧血みたいにフラついて、立っていられなくなる。

 ……おかしいな。ちょっと……意識が……なん、で……。

 




■今回の内容
 深月フェリシア 魔法少女ストーリー 1話 『オレは傭兵』(一部分)
 竜城明日香 魔法少女ストーリー 3話『最後の手段』(一部分)
 阿見莉愛 魔法少女ストーリー 2話『美しき魔法少女・阿見莉愛』
 阿見莉愛 魔法少女ストーリー 3話『トップモデル・阿見莉愛』

■常盤 ななか
 ななか組組長。
 キュゥべえを怪しんでいたりソウルジェムが何なのか気づいている人。

■阿見 莉愛
 天然モノの美少女を願った魔法少女。莉愛様。
 名前を間違えられるのが定番ネタ。

■胡桃 まなか
 店の料理の味を広める機会を願ったストイック料理人魔法少女。
 一人称が「まなか」。かわいい。

■華心流いけばな展のチラシ
 明日香の魔法少女ストーリーで登場する。
 この一枚が郵送されなかった結果、明日香がフェリシアにハンマーで殴られた曰くつきの品。


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