マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート37 偽りに彩られ神浜 後編

 『魔女化』という運命を知ったのは、あの記憶ミュージアムでの出来事の後だった。

 

 なにが起きたのかをいろはちゃんたちから詳しく聞いたことは間違いだったわけじゃない。でも、ほむらちゃんも、さやかちゃんも、わたしも、タイミングが悪かったのかもしれない。

 帆秋さんが瓦礫に消えたってことだけでも衝撃が大きかったのに、それを知ったときはもう自分の立っている場所さえよくわからなかったんだ。

 

 みんなを不幸にする魔女を倒し続けてきたのに、自分がそれになるだなんて。

 こんなのってないよ。

 怖い。想像したくない。

 

 ……だけど、怖いからって希望を捨てたくない。

 帆秋さんだってその後戻ってきてくれたんだ。ここで諦めちゃったら本当に終わりだよ。

 

 それに魔女化を回避できる方法は存在するんだ。

 神浜で起きるドッペルっていう現象があるってことも聞いた。多分、マミさんはそれを知ってマギウスの翼に接触したんじゃないかなって思う。

 だから、魔女化を避けられるんだったらマギウスの翼に協力してもいいかもしれないなんて思ったりもした。

 

 でも、さやかちゃんが言ってたみたいにマミさんがおかしくなってて、いろはちゃんの友達を洗脳したり、帆秋さんを危険な目にあわせたところを信じきれない。

 

 魔女にならなくても、不幸な人を増やすようになってしまったら同じだから。

 自分たち以外の魔法少女や普通の人はどうなってもいいだなんて、誰かを犠牲にして助かるなんて絶対に間違ってる。

 

 その気持ちは見滝原でマミさんに直接出会ったときにもっと強くなった。

 だって、返す言葉のところどころに本心が見えるみたいで、苦しそうだったんだ。

 

 だからわたしは――

 

「まどか、ねえ、まどかってば」

「……あっ、ごめん。なんだっけ」

「帆秋さんからの電話の話。……結構危ないことになってるみたいだけどさ、あたしは行くよ。助けられるかもしれないなら、ここで待ってられない」

 

 そうだ。帆秋さんからさやかちゃんに電話があって、マミさんがまた出てくるかもしれないから来て欲しいって話だったんだ。マミさんのことを考えたら魔女化のことを思い出してぼんやりとしてた。

 

 もちろんわたしも行く。あんなマミさんを放っておいたままにしておけない。

 でも、ほむらちゃんは心配そうな顔をしていた。

 

「……危ないよ。魔法少女を狙ってきてるんだよ。無事でいられないかもしれないのに……!」

 

 それは本当にわたしたちのために言ってるんだって、すぐわかった。

 

「ごめんね、ほむらちゃん。心配してくれてるのはちゃんとわかってる。でもね、わたしは、わたしにできることをするために行くの。見て見ぬフリをするなんてできないもん」

「あたしも同じ。足手まといになるかもしれないけどさ」

 

 強要はしない。

 心配する通り危ないし、傷ついてほしくはないから。

 

 少しの間誰もなにも言わずに時間が過ぎて、ほむらちゃんは静かにわたしたちの手を取った。

 そして言ったの。「私も行く」って。

 

「なにもせず、待ってるだけなのは嫌だから……。それに、二人を守りたいの」

 

 マミさんを助けたいって気持ちは同じで、私たちに傷ついてほしくなかった気持ちも同じなんだってなんとなくわかってた。

 謝るなんてズルいよね。意見を変えさせちゃったかもしれない。

 でもそのワガママを受け入れてくれて、隣を歩いてくれるほむらちゃんがわたしはなにより嬉しかったんだ。

 

 

 

 

 

 

「なんだ、全員来たんだ」

 

 夜の神浜の駅でわたしたちを待っていたのは杏子ちゃんだった。

 何度か会ったことはあるし、この前助けてくれた。だからお互いを知らないわけじゃないけど、わたしたちを寄せ付けないでいつも一人で戦ってる、そんな人。唯一、さやかちゃんだけは近づけていたみたいだったけど……。

 

 けれど杏子ちゃんは、そんな口ぶりと今までの印象とは裏腹に嬉しそうでもあった。

 

「くれははアンタらのことを頼りにしてたんだよ。来なきゃ困るってまで言ってたらしいし」

「……そこまで?」

「マミを助けるには心を通わせられるやつが必要だってこと。ならアンタらが一番だろ」

 

 それはどこか自分を責めるような言い方でちょっと悲しい。

 だって、あの時杏子ちゃんが言った言葉は――

 

『誰かのために戦って皆を救うのが、巴マミの誇りだろ! それすら――忘れたのかよ!』

 

 あの言い方はマミさんの誇りを知っているってことで、今でも強く想ってたんだってことだと思う。だからわたしたちを助けてくれたんだ。

 その気持ちを伝えないと。マミさんが離れてしまったって思ってても、そうじゃないってことを直接ぶつけなきゃ。

 

「だったら、一緒に行こうよ」

「まどかの言う通りだよ。……そりゃ、仲良しごっこはイヤだって前に言ってたのは覚えてる。でも今は――」

「いいよ。つーか元からそのつもり」

 

 視線を横に逸らして言ったそれにわたしたちは顔を見合わせて、意味を理解すると一斉に駆け寄った。

 

「な、なんだよ! 変なこと言ったか!?」

「嬉しいよ、嬉しいけどさ! 断られるんじゃないかって少し思ってて!」

「今までの佐倉さんなら迎えに来ただけかなって……」

「あー……そういうこと」

 

 すると杏子ちゃんはやっぱり少し恥ずかしそうにしたけど、こっちをしっかりと見て確かな言葉で言った。

 

「仲間だとか情だとかそういうのは捨てたもんだと思ってたんだけどさ。単純な話だったんだ。あたしが気にくわないからアイツらをぶっ潰す、それまでの協力関係ってやつ」

 

 なんだかそれもらしいな、ってちょっと思ったけれど。みんな気持ちは同じなんだって感じられて、とっても嬉しかった。

 

「……そういえば、なんで杏子が迎えに? 偶然会ったの?」

 

 なんでもないように教えてくれたのは、今は魔女が多い神浜を拠点にしてることと、力を貸す代わりに帆秋さんに寝食を提供してもらってること。

 ……あれ、それって。

 

「帆秋さんのとこに住んでんの!?」

「成り行きだよ成り行き」

「なんかすごいことになってる……そうだ、連絡連絡――は、圏外……?」

 

 さやかちゃんの声に驚いてわたしも携帯を見ると、確かに圏外って表示されてた。

 しかもその瞬間、周囲を照らす明かりが一斉に消えた。周りから停電だって騒ぐ人の声が聞こえる。

 

「本当に起きやがった……。おい、行くぞ」

 

 予想できてたのかな? 焦らずに先導してくれる杏子ちゃんの背中を見て気を引き締めた。嬉しいこととか楽しいことだけじゃない。今この神浜には異変が起きていて、その中にマミさんがいるんだ。

 ぎゅっ、と自分の手同士を密かに握りしめて気持ちを変える。きっと大丈夫だって信じたいから。

 

 そうして連れていってくれたのは人通りが少ない道に佇む廃墟。

 ここになにがあるのかな、って思って少し心配だったけど、記憶ミュージアムの時に出会った魔法少女の人が出てきてくれて少し安心できた。

 

 それはボーイッシュな雰囲気の人。確か、志伸あきらさんだ。

 

「話は聞いてるよ。帆秋さんたちはマミさんたちと戦ってる。案内するからついてきて!」

「待って、今マミちゃんって言った!?」

 

 あきらさんの後ろ、どこかに続くドアが開いて、わたしと同じくらいの身長で髪型も似ている子が出てきた。その子はさやかちゃんが知っている。前に神浜に行ったとき出会ったって言ってた綾野梨花ちゃん。

 でも、彼女にくっつくようにして離れない白いイメージの子はわたしたちの誰も知らなかった。

 

「よくわかんないけど、マミちゃんが敵になってるんでしょ!? それで心を通じさせなきゃいけないって話はあたしも知ってる! だから――」

「梨花ちゃん……っ! 今は、行かないで……!」

 

 梨花ちゃんがわたしなら、その子はほむらちゃんに被って見えた。傍から見たらこう見えていたのかもしれない。ほむらちゃんにこんな気持ちを思わせていたのかもって心が痛む。

 これは自分を棚に上げてることと同じだけど、傍にいてあげてほしいななんて思ってしまった。

 

 梨花ちゃんはこっちを見た後、その子を抱き寄せてゆっくりと言った。

 

「……わかった。あたしはれんちゃんの隣にいるよ。さやかちゃん。それにみんな、お願い。あたしの気持ちも届けて」

「いいの?」

「うん。今はそれが良いんだ」

「……任せて! マミさんはあたしらがなんとかするから、その子についててあげてよ」

 

 短い間の出来事だったけど、それでわかったことがある。

 マミさんはわたしたちだけじゃなくて、もっと多くの人が気にかけてるんだって。

 

 夜の闇の中、次はあきらさんの背中を追うわたしに怯えはなかった。

 怖いって気持ちが全部消えたわけじゃない。ただ、みんなの想いを届けなきゃって想いが上回ったんだ。

 

 町は停電で静まり返ってる。人が一人もいないわけじゃないけど、時々見かける黒羽根の人たちと合わせたら魔法少女のほうが多いなんて不思議な状況。

 

「あそこだ!」

 

 黒い空に、星と混じっていくつかの光が見える。飛行機とかの光に見えたけど、それは違うってビルを上って近づいていくとはっきりとわかった。

 だって、空に浮かんでいるのは幾千ものマスケット銃だ。それが張った弾幕を、同じくらいの数の弓から放たれた緑の矢が撃ち落としてるんだ。その中には槍も混じっていて、銃自体を壊していってる。その戦いの光だったんだ。

 

 すごく広いヘリポートには二つの勢力がいる。

 あきらさんが言っていた通り、帆秋さんを始めとしたやちよさんもいるグループ。

 そしてその何倍もの数がいる黒羽根と白羽根。その奥にいるのが――

 

「マミさん!」

 

 いつもの衣装じゃなくて、白いヴェールを纏っていてもわたしには誰だかすぐにわかった。

 けれど、普段とは違うってことを証明してるみたいに、なにもかも真っ白にしてしまう強い光みたいな魔力の大きさを感じる。しかもそれは魔法少女のものじゃないし、魔女のものでもない変な感覚だった。

 

 お互いに消耗してて戦いは中盤を過ぎた頃に見える。向こうは羽根の人たちが倒れているだけでマミさんはまだ余裕みたい。

 

「……杏子」

「くれはの言った通り、連れてきたぞ。あとは心を繋げればウワサを剥がせるんだろ?」

「いや少し待て。七海、天乃君と協力して奴の銃撃を抑えてくれ」

 

 鞭を持って指揮を執るのが似合っている人は和泉十七夜さんっていうらしい。

 その人の指示通りにやちよさんと灰色のコートの人が弾幕を突破して接近戦をして、それを矢とすごい威力の砲撃が援護している。こっちが押している今ならマミさんの攻撃が飛んでこないみたい。

 

「で、どういうことなんだ」

「うむ。今の彼女はウワサに心が塗り潰されている。繋げるにしても、一旦心を引き戻して間隙を作る必要がある」

「……来てもらって良かった。……まどか、ほむら、さやか、杏子。お願い。マミの心を戻せるのはあなたたちしかいないの」

 

 手短にだけど、他にも教えてもらったことはある。

 ウワサと融合していること。文字通りに心が通い合っていれば剥がせること。心を繋げる魔法があるから、それさえできればマミさんを取り戻せること。

 

 そうと決まれば、わたしたちがやることは決まっていた。

 

「せいかが近くまで跳ばすからそこで声をかけて。少しでも隙ができればみとが繋げる」

 

 青い髪の人がマミさんにまで届く水流を放つと、急にマミさんが近くに見える位置にまで移動した。これがそのワープなんだ。

 そう、すぐ近くにマミさんがいる。あの時は消えてしまったその姿が。 

 

「鹿目さんに暁美さん……美樹さんに佐倉さんまで……」

 

 ほんの少しだけ驚いた表情を見せたけど、すぐに微笑む。見知った頼もしさなんてものはない。ただただ、その役を演じているみたいだった。

 

「フッ、フフフ。ちょうど良かったわ。あなたたちもマギウスの翼に入らない? 神浜の内外から集まった魔法少女と同じように」

「その答えは前に言いました。わたしにはわからないって!」

「……そう、残念ね。私たちの崇高な目的も、マギウスの才能も理解できないなんて」

 

 生成された銃の攻撃がわたしに向けられる。やっぱり、速い。

 でもそれは突き出された槍に叩き落されて、飛んできた緑の矢で消えた。

 

「おい、なにやってんだマミ! アンタの後輩のことすら見えてねえのか!」

「皆を救うために手を尽くしているだけよ。フフフッ、救いに導いているだけなんだから」

 

 近距離だからか次はリボンが伸びて拘束しようとしてくる。

 けれど、前みたいな硬さはないみたいでカッターみたいな剣とさやかちゃんの剣が切断した。

 

「逆よ。みんな、あなたを助けに来てるの」

「……なに言ってるの。助けるのは私よ。……いえ、こんな、私が……?」

「見滝原にも神浜にも、マミさんを助けたいと思ってる人がいるんです! だから!」

 

 マミさんの背中から伸びる花みたいなものが魔力を溜めてなにかを撃とうとしてる。その速度も速すぎる。ダメ、あれはわたしたちに受けきれるものじゃない。

 

「ほむらちゃん!」

「うんっ!」

 

 手を繋いでくれたほむらちゃんが時間を止める。

 止まった時の中で射線上の人たちをどかして、また時間が動き出した。

 

 物凄い音と共に砲弾がさっきまでいた場所を通り過ぎていく。それは黒い衣装の子が放った砲撃で勢いを消されて、七色の炎を振るう子に両断されてやっと姿を消した。

 

「どうしてわかってくれないの……魔法少女を解放することを……」

「そうね、私とあなたは理解し合えないわ。けど、その子たちがいるの。――帆秋さん! 今よ!」

 

 やちよさんが放った槍が合図となって、わたしたちは水に沈むような感覚を全身に受けた。

 深く潜っていくようなそれは海を泳いでいるみたいだけど、経験したことがない。

 

 ……これが、マミさんの心の中だっていうの?

 赤い、赤い世界が全て。

 

 その中に、たった一滴だけ零れたみたいな透明な空間があった。

 窓のようにも見えたそれから流れてくるのはマミさんの感情。

 

『魔法少女になって命を繋いだ私。それからの人生はなんだったの?』

『誰かのために戦って皆を救うこと。それが私の誇りだったのに、魔法少女が魔女になるだなんて』

『私はなんのために生きていたの? 私たちが殺してきたものはなんだったの?』

『私のことを慕ってくれる彼女たちのこともこの宿命に巻き込んでしまった』

 

 それは恐怖と後悔。

 いつも強くて頼りになるマミさんが、そんなことを思ってたなんて想像もしてなかった。おとぎ話の魔法少女のように万能じゃない、現実に生きてる一人の魔法少女なのに。

 どんな人でも寂しさや怖さを感じることはあるんだって、そんな当たり前のことに気づけなかったんだ。

 

「……ごめんなさい、私がこの運命に巻き込んだのよ」

 

 そこには制服姿の見慣れたマミさんがいた。さっきまでのとは違う、本心の姿だ。

 

 巻き込んだって言うけれど、この道を決めたのはわたし。

 選ばなければ得られなかったものがあった。怖いことはあるけど、マミさんが悪いだなんて思ってない。

 

「でも……」

「一緒に戦ってくれる後輩ができたって喜んでくれてたじゃないですか。マミさんはひとりぼっちなんかじゃないんです」

 

 ほむらちゃんの心が聞こえる。

 完璧で無敵で絶対に負けない人だなんて思ってなくて、わたしたちと一緒なんだって知ってたんだ。

 

 さやかちゃんの心が聞こえる。

 同じ運命を背負うわたしたちを頼ってほしいって。梨花ちゃんや帆秋さんみたいに、他にもマミさんが頼れる人はいるって。

 

 杏子ちゃんの心が聞こえる。

 マミさんの誇りはマミさんだけのものだって。これ以上利用させるんじゃないって励ましてる。

 

 わたしだってそうだよ。

 魔法少女としてまだまだで全然頼りにならないこんなわたしでも、なにか一つでもマミさんの役に立てるとしたら、それはとっても嬉しいなって。

 

 透明な空間が広がっていく。赤い世界が追い出されていく。

 

「……そうよ。私はマギウスのやり方を認められなかったはず。でもそれを塗り潰されて、認めてしまった」

「だったら、一緒にやり直しましょう。いろはちゃんも言ってたんです。一度間違えても終わりじゃないって」

「……本当に、これから私と一緒に戦ってくれるの? 傍に居てくれるの?」

 

 その答えは、わたしたち全員が繋いだ手が示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が射す。透明な空間が視界を覆い尽くして、ヘリポートの上に戻ってきていた。

 

 わたしたちの目の前にいるのは、心の中のような制服姿のいつものマミさんだ。白いヴェールも王冠もない。

 その代わりに、マミさんの姿を赤く塗り潰したようなシルエットが向こうにいる。多分あれが融合してたウワサなんだ。

 

「私……本当にウワサに……」

「戻ったんですよね!? マミさんなんですよね!」

「……ええ、ありがとう。全部、聞こえてたわ」

 

 戻ってきたんだ。マミさんを取り戻せたんだ!

 笑顔になって手を挙げて喜びそうになるけど、それをぐっとこらえて弓を構えた。

 

 だってあのウワサは妙な笑い声をあげて、こっちに銃口を向けている。まだ終わってない。

 

 でも、誰よりも先にウワサに近づいたのはそのマミさんだった。

 ブラウスとスカートにベレー帽やコルセット。よく知る姿に変身して、わたしたちに振り返って言ったんだ。

 

「私を助けるために頑張ってくれたんだもの。今度は私に頼ってちょうだい」

 

 駆け出して、誰も追いつけない速度でウワサに急接近する。

 偽物のマスケット銃がマミさんを狙って弾幕を張るけれど、その動きに翻弄されている。

 

「戦うことと魔女化への恐怖は残ってる。もうなにも恐くない、なんて言えないわ」

 

 さらに弾幕が厚くなる。その中には威力の高い弾丸まで混じり始めた。

 

「でもね、今の私はかつての誇りを取り戻した私。魔法少女としての宿命とも向き合えるようになった私……」

 

 本物のマスケット銃から放たれた銃弾が偽物の銃を撃ち落とした。向こうは宙に浮かんだ数丁から連射してるのに、マミさんは大量に生成した銃を何度も持ち替えて撃つだけで全部に対応してる。

 

 その一歩一歩確かに進んでく姿は今まで憧れてた姿で、これからは隣にいてくれる姿。

 

「負い目も苦しみもあるけれど、翻弄されるだけの弱い自分じゃなくなったから!」

 

 ウワサは空を飛んで逃げようとするけれど、伸びたリボンが動きを止めた。

 それは魔女を拘束して守ってくれた、いつだって未来を繋ぎ止めるための魔法。

 

 そして、一番頼りにしていたあの攻撃が放たれる。

 

 人よりも遥かに大きいその銃の一撃は。

 死と隣り合わせの戦いから逃げ出したくなるわたしたちを奮い立たせてくれた、それこそは。

 

「――ティロ・フィナーレッ!」

 

 夜空に輝くその弾丸は、星と同じく煌いていて。

 最初に憧れた魔法少女の象徴は、空気を裂いて、音と振動を共に周囲に届けて、ウワサに風穴を開けた。

 

 そして、戻ってきたわたしたちの先輩で、仲間で、友達は、少し恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに言ったんだ。

 

「これからも、よろしくね」

「……はい!」

 

 今度は確かに手を握って、ここにいるって確かめるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意図しないイベントに発生されたRTA、はーじまーるよー。

 

 前回、団地で融合ウワサの群れと戦っていたら発生させるつもりのないイベントに発生されました。

 このメンバーを見てください! この数! え!? 想定してた数じゃないでしょこれ!

 

「なるほど、今はどこもこんな感じで神浜の魔法少女は調整屋に集まってるんだ……。私たちが下手に動くよりも――」

「チサトー、そんなの後で考えればいいじゃない。とりあえず集まればいいじゃん」

「マツリもそう思うな。夏希ちゃんとかあいみちゃんもいるんでしょ?」

「そうね……ここはみんなで協力しましょう? スズネも、いいわよね?」

「ええ」

 

 ブルー! ピンク! グリーン! イエロー! シルバー! ホオズキ市の戦隊がエントリーだ!

 

 なんで?

 別にフラグ立ててなかったと思うんですけど……誰かが勝手に動いたな? 正直、鈴音の姿が見えたときはくれはちゃんの首を切断しにきたかと思いました。

 

 で、こっちは……。

 

「なんか大変な時に来ちゃったなぁ……」

「戻ったほうが――って、かずみ!」

「みとちゃーん!」

「かずみちゃーん!」

 

 はああああぁぁぁぁっ……!!(畏怖) こっちにもガバの衝撃が来たぁ!

 やべーパワーを持ってる二人が再会を喜んでるようですがこっちはそれどころじゃねえんだよ!

 

 この場でのロスを抑えられたことは事実ですが、行動を管理しないといけないメンバーが増えてしまいました。確かに全員強力なので、この先のチャートに急遽組み込めば更なる短縮が目指せることは間違いないですが……。まあ多少違っても誤差だよ誤差!

 

 『受信ペンダントのうわさ』? 奴さん、みとさんとかずみちゃんが消し飛ばしたよ。

 ここに数を集めてたのが仇となったな! まあ倒して正気にしても襲ってくるやつは襲ってくるんですが。 

 

 じゃあマギウスに特別な稽古つけてやるか! チャートに入れてやるから来い!(調整屋行き)

 

 

 

 というわけで調整屋でメンバー編成を行い、やちよさんとなぎたんと合流しました。

 なお、やっぱり組長が良い感じに防衛をしてくれていたので待機メンバーに被害はありません。この後のこともあるので連れていく魔法少女以外は外には出ないでもらって力を温存していてもらいましょう。

 

 この第8章のボス戦ですが、時間経過したあと街中を歩いていれば発生します。適当に黒羽根を追いかければなんと、そこにマミさんがいるんですね。

 その発生方法の都合上、下手すると目撃者多数の状況での戦闘になってしまいます。かと言って地下にすると今度はマジで瓦礫の下敷きになってしまいます。困ったもんじゃい!

 

 なので屋上を飛び移りつつ、黒羽根を追い込むように高いビルに誘導しましょう。そこのヘリポートが目的地です。

 マミさんと戦うときに記憶ミュージアムの時のように柱や壁の瓦礫に気を使わなくていいということもありますし、足場の関係で地面に当たるように撃ってこなくなるので回避しやすくなるわけですね。

 

「……来たのね」

 

 階段か~ら出た途端ヘリポートの上に黒羽根と白羽根がずらっといるんだもん。ビックリしたよ。

 では『神浜聖女 巴マミ』戦です。あ~もう絶対辛酸を舐めさせますよそりゃ。

 

 前回は地獄みたいな戦いをさせてくれましたが、今回はちゃんと勝てる戦いです。

 大きく違う点は一緒に戦ってくれる魔法少女が多い点ですね。ではご紹介しましょう。

 

 まずはみなさんご存知、団地組です。

 

 過剰なレベリングによりベテランと並んでも遜色ない実力を身につけたみとさんならホーリーマミさん相手でも正面から戦えます。むしろオーバーキルしない分対黒羽根よりも戦えます。さらに『心を繋げる力』によりウワサを剥がせる最終兵器です。

 

 そしていくらダメージを受けようが、れいらがいる以上すぐに回復できます。自己回復する超性能盾役と化した彼女の後ろにいれば『ティロ・フィナーレ ホーリーナイト』までなら耐えきれます。

 

 問題はあの凶悪な『ティロ・セントドッペリオン』ですが、これは直線的な攻撃なのでいつものせいかのワープで避けられます。接近もできるので攻守揃ってますね。

 

 しかも今回はさらに! なんと! 遂に! 鈴音とかずみちゃんをそのまま追加でパーティに入れてあります。

 鈴音の妙なステータスの高さならばマミさんと接近戦が可能です。それにかずみちゃんの火力なら『ティロ・セントドッペリオン』の勢いを消して相殺可能にまでしてくれます。

 

 外伝主人公二人に続くパーティメンバーは、やちよさんとなぎたんの強力コンビ……。

 

 なぎたんは指揮能力が高いため集団戦に強く、『読心』はみとさんと組み合わせれば味方全員の連携が強化されます。本人のステータスも高いので頼れますね。

 

 さらに、トドメにここでやちよさんです。

 そもそもやちよさんの固有魔法は、死に分かれた仲間の『希望を受け継ぐ』という主人公じみた代物です。かつて同じチームであった雪野かなえと安名メルの力を引き継いでるので、長年魔法少女をやってるのにステータスの低下が起きていないんですね。むしろ上がってます。

 

 今回は違いますが、彼女は大量に対策を用意していない場合の切り札です。その固有魔法で二人分の因果を上乗せして一時的にパワーアップするのでマミさんに対抗できるようになります。

 ただし使い切るとみふゆさんのようにステータスが低下するので使い所さん!? には気をつけましょう。

 なお、今回は安全策としてとっておくのでここでは使いません。単純に強いので連れてきました。

 

 まずはせいかになぎたんとみとさんをマミさんの近くに跳ばしてもらいます。はい心読んで!

 

「巴マミの心は完全にウワサに浸食されている! 『読心』でも狂気の感情しか見えないぞ!」

「……なぎたんの言う通りだ! 鶴乃ちゃんとか黒羽根と違う……!」

 

 そっすかぁ!? 困りましたねぇ……(すっとぼけ)。

 というわけでフラグ立ても済みましたし、一気にウワサを剥がすまでもっていけないので、まずは無力化を目指して戦いましょう(建前)。

 

 マミさんの弾幕はみとさんとやちよさんがなんとかしてくれていますね。鈴音とれいらが接近して牽制もしてくれているのでかなり安定しています。やっぱり……魔法少女の絆を、最高やな!(他力本願)

 

 ではぶっちゃけ手持ち無沙汰なくれはちゃんはなにをするかと言いますと……その辺の羽根の相手をしてましょう。適材適所ですよ適材適所!

 ドッペルはもう一回使っちゃってますし、連打して動けなくなったらリセット不可避なので記憶ミュージアムの時の戦法は使えません。それにこんな頂上決戦に割って入ったら紙装甲かつ対人戦激弱のくれはちゃんでは余裕でゲームオーバーになります。ちょっと眠ってろお前……。

 

 このままでは決着がつかないように見えますが、今は時間稼ぎ中ですので問題ありません。別に直接倒す必要はないですから。

 こんな感じで待っていれば良いだけなので、すげぇよ簡単だから。本当だから簡単簡単。

 

「……帆秋、この反応は」

「まだ電話が通じる頃に呼んでたのよ。まったく、いつも用意がいいんだから」

 

 もう抵抗しても無駄だぞ!(一転攻勢)

 見滝原組のエントリーだ! なぜかあきらもいるぞ!

 

「くれはの言った通り、連れてきたぞ。あとは心を繋げればウワサを剥がせるんだろ?」

 

 勝ったな(確信)。

 この通り、マミさん戦は別に倒さなくとも見滝原組を連れてくれば融合解除の判定タイムに移ります。

 元々杏子ちゃんだけでもいいところまで持っていけるので、総出で説得してダメ押しに心を繋げれば解決します。戦力になってマミさん説得までできるとかもはや、みとさんじゃなくてみと様ですね。

 

 心を繋げる相手ですが、当然見滝原組が最高効率です。

 次点で同じ先輩の立場の魔法少女です。やちよさんやなぎたん、みゃーこ先輩などが主たる面々ですね。難易度ノーマルならやちよさん一人でもなんとかできます。ちなみにこの条件に当てはまらずに成功確率の上がるキャラはなんと、梨花ちゃんとれんちゃんです。

 今回はなぜかくれはちゃんもそこそこ説得確率を上昇できますが……チャート通り見滝原組に行ってもらいましょう。チャートはちゃーんと守ろう(激ウマギャグ)。

 

 よし、せいか跳ばせ!

 後ろで見てるからみんな頑張れよ……(小声)。いや一応サポートはしますけど今度『ティロ・セントドッペリオン』に当たったらマジで死ぬので……。

 

「――帆秋さん! 今よ!」

 

 よっしゃみと様の出番だな! 

 あとはお祈りタイムです。極々低確率を引くことや変なフラグが立ってないことを祈りましょう。

 

 行けるか……?

 

 やっぱりダメか……?

 

「私……本当にウワサに……」

 

 勝った(小並感)。

 しかもマミさん絶好調っすね……。『神浜聖女のうわさ』って結構強いんで待機してたんですけど倒し切っちゃいます?

 

 でもあれですね。味方が多いせいか記憶ミュージアムの時より楽ですね。やっぱり戦いは数だぜ!

 無事にマミさん説得もできましたし良い感じに来ています。あとはフェントホープに突撃してイブとワルプルギスをぶっ飛ばすだけだぜ! こりゃ変なことでも起きない限り好タイムが狙えるぜ!

 

 あとはこの辺の羽根をマミさんがパパパっと説得して、第8章終わりっ!

 あー、さっぱりした。調整屋行きましょうよ~。

 

 調整屋でフェントホープ突入の編成をするので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マミさんと一緒に調整屋に戻ったわたしたちを待っていたのは、ボロボロの人とメイド服の人とマフラーの人。

 

「やっと……見つけました……」

「お願い、令ちゃんを助けて!」

 

 こんなに大勢いる中でも響いたその言葉は、一人に向けられていた。

 そう、わたしたちに連絡をくれた、帆秋くれはさんただ一人に。

 

 急なことはまだ起きる。今度は入り口を勢いよく開けて入ってきた人たちがいた。

 

「道を開けてほしいでございます!」

「大事な話があるんだよー!」

「月咲君!? それに、あの黒い魔法少女……!」

「確かにこの前戦ったけれど。敵じゃないよ」

 

 その三人の後ろからゆっくりと歩いてくる人がいる。

 背が高いせいか他の魔法少女よりも威圧感のある彼女。

 

「こうして会うのは初めてかしら」

 

 その姿は前に一度だけ見たことがあった。

 綺麗な見た目と亜麻色の髪が清廉潔白なイメージを抱かせる、白い魔法少女。

 

 その人と、帆秋さんが見つめあった。

 

 

 

 

 




■今回の内容
 第一部第8章『偽りに彩られ神浜』
 第8章アナザー『ここからもう一度』(一部分)

■まどかさん
 伊達に主人公やってるわけじゃない。
 クラスのみんなには内緒だよ。

■ホーリーマミさん
 神浜聖女のやべーやつ。強い+強い=めっちゃ強い。
 Q. これどうやって倒すの?

■みと様
 多分主人公。好きなものはれいら&せいか。
 A. 敵は強大、圧倒的……ならばどうする相野みとッ! いつだって、貫き抗う言葉は一つッ! 手を繋ごうッ!!

■PMHQ
 遂に揃ったあの人たち。
 マギウス冷えてるか~?

■『希望を受け継ぐ力』
 やちよさんの真の固有魔法。仲間が死ぬと因果を受け継ぐ。
 主人公力が半端じゃない。

■フラワースピーカーのウワサ
 『受信ペンダントのうわさ』の本体。見えないところで消えた。
 妙な人気があるかもしれない粋なヤツ。

■こりゃ変なことでも起きない限り好タイムが狙えるぜ!
 起きた。





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