マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

6 / 141
パート6 そしてアザレアの花咲く 後編

 このは、アタシ、そしてあやめ。アタシらは児童養護施設『つつじの家』で出会って育った。

 それぞれ理由があって来たんだ。初めはみんな心の傷があったり、困惑したりして親しむことなんてできなかった。

 

 でも、そんなアタシらに親身になってくれたのが院長先生だった。接してくれる姿にだんだんと打ち解けて、他の子供たちとも仲良くなって、つつじの家はかけがいのないものになっていったんだ。

 

 ……そう、幸せだったんだ。

 国政で決められた改定プログラムによってつつじの家が取り潰されるって話になって、心労で院長先生が倒れて、亡くなるまで。

 

 所詮は子供だったアタシらに出来ることはなかった。改定プログラムに関与する政治家や、企業の利権のきな臭い噂、副院長がこの話を持ち込んだことまで調べたのに。

 結局、話は手の届かない場所で進んでいく。それを実感させられた。

 

 その想いのまま迎えた、つつじの家での最後の夜。アイツにあった。白い犬のような猫のようなよくわからない生き物、キュゥべえに。

 

 魔女を倒す『魔法少女』になる代わりに、どんな奇跡も叶えられる。

 はっきり言って、煙に巻くような言い方といい怪しさしかない。けど、つつじの家を守るためにどんな手段にもすがりたかったアタシらは、相談して三つの願いを決めた。

 

 あやめが願ったのは、この先同じことが起きないように『つつじの家の将来的な存続』 。

 このはは、同じ苦しみを味わう子供たちが出ないように『つつじの家を取り潰そうとした要因の排除』を 。

 そしてアタシは『つつじの家に関わる人から私たちの記録を消す』と。普通の生活じゃなくなるアタシらはもうここにはいられない。悲しかったけれど、二人がいれば耐えられる。

 

 この奇跡は叶って、関与した政治家や企業の不正は明るみに出て処罰された。副院長も追い出された。つつじの家は守られたんだ。

 

「私たちはこれからも一緒よ……! 何があっても、私たちだけで! 私たちだけで生きていくの……!」

 

 その言葉は、アタシらを結束させた。もう普通じゃない。このはほど拒絶していたわけじゃなかったけど、信じられるのは自分たちだけだ。ずっと協力して生きていくことを覚悟した。

 

 それからは魔女を探して神浜を出て各地を転々として、今度は逆に、神浜に魔女が増えてきているって聞いて戻ってきたんだ。

 

 思えば、最初の転機は『常盤 ななか』のチームに偶然出会ったときだったんだ。

 神浜を離れていたんだから探りを入れて、情報を仕入れたほうが良いって思ったんだけどさ。このははやっぱり誰も信用できないみたいで、自ら交渉に出てきっぱりと距離を置くことを伝えた。互いに干渉しないようにって、念を押すみたいに付け加えて。

 

 だけど、相手側にいた緑髪の子のあやめを見る視線が気になった。なんだか、つつじの家にいた頃に似たようなものを見た気がしたから。

 

 気がかりが間違いじゃないって気づいたのは、町の中で偶然あやめと一緒にいるその子を見つけた時。あやめは「じょうほうしゅうしゅう!」なんて言うけど、仲良く話して笑いあうその姿を見れば、友達になったんだってすぐわかった。

 

 常盤ななかと距離を置いてる以上、互いにバレたら面倒なことになる。でも、自覚はしてないだろうけど嬉しそうなあやめを見たら、“会うな”なんて言えるわけないよ。

 

 その友達の『夏目 かこ』ともう一人、紹介してもらった元気な子――『深月 フェリシア』はあやめと随分と仲が良い。フェリシアちゃんに張り合うあやめと、それをなだめるかこちゃんという姿を見かけることもあった。……ああいう関係じゃなかったけど、なんだか昔を思い出す。

 

 このはは接触を良くは思わないだろうけど、アタシがどうにか維持する。どちらにせよ、神浜の情報を得るための情報源がいるんだ。この接点は有益なはず……そう、信じてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日もしないうちに、新たな火種が舞い込んできた。夕飯の買い物をした帰り道、想像できないものが来たんだ。

 

「遊佐葉月ね」

 

 背筋に氷を当てられたような声に思わず振り向く。

 見えたのは淡い栗色の少しふわふわしたロングヘア。聖リリアンナのある北養区かこの辺……水名で見かけるようなお嬢様然とした人だった。だけど着ている服は青いセーラー服。南凪自由学園だ。この場所にも、もちろんアタシにもなんの縁もない。冷静な呼び掛けとは対照的に白い肌にはじんわりと汗が浮かんでいて、すぐにアタシを探していたんだと合点がいった。

 

「……なんですか~? そんな血相変えて」

 

 なにを考えているにせよ、迂闊な対応をするわけにはいかない。そう考えて口を開いたんだけど、途中で後悔した。こっちを見る目があまりにも鋭い。下手に話すことこそ迂闊だったと思わせるほどには力強いものだ。

 

 それに気圧されたアタシは、肩を掴まれるまで大した反応ができなかった。少し痛いと感じる程度の力をかける手には、魔法少女の証である指輪。理由はわからないけれど、なにか良くない事態に巻き込まれている。このはとあやめの問題もあるのに、アタシが余計な話を持ち込むわけには――

 

「手がかりが見つかったからってのはわかるけどさ……強引だって……」

 

 その手をどけてくれたのもまた、南凪の生徒だった。アタシと同じような髪色、髪型。助かったとは思ったけど、持っているカメラと『ゴシップ部』の腕章が目に入ると、すぐに改めた。

 

 まいったな。カメラを持っているほうはまだ話が通じそうだけど、どちらにせよ、ろくなことになりそうにない。これじゃ買い物帰りだからって言ってもすぐ逃してくれるとは思えない。適当に話だけ聞いておくしかない。

 

 食材が傷まないか気にしながら近くの喫茶店に入ったアタシに告げられたのは、神浜で魔法少女が次々に倒れているという噂だった。魔法少女が魔法でやっているんじゃないかと考えられていることも聞いた。

 そして、その犯人としてアタシらが疑われていることも。しかも、この帆秋くれはという人は友達がその被害にあったのだと。そりゃ、探されるなぁ。

 

「やってない、って言っても信じてくれないでしょ?」

「ええ。その確信がないもの」

「観鳥さんとしては、真実を知るまではグレーだね」

 

 でも自分たちから無実ですなんて喧伝するのも、ねぇ。ムキになっても余計に怪しまれる。

 どうしたものかと考える前に、帆秋くれはと名乗った彼女は言った。

 

「だから、調査に協力してほしい。あなたにとっては疑いを晴らすことになるし、三人組の中の小さい子が私の知り合いの知り合いの知り合いだから関係はないとは言わせないわ」

「それほぼ無関係だよ……」

 

 いきなりなにを言うかと思えば、あやめが友達になったかこちゃんの知り合いの知り合いってことらしい。アタシもそれは遠い関係だと思うけど……。

 

 でも、なにも考えずに言っているように見えて、唯一の懸念だった弱点を突いてきた。

 

 つつじの家を出て、初めてあやめに同年代の友達が出来たんだ。常盤ななかとは距離を置いているけれど、それぐらいならと見守ってきた関係が根も葉もない噂で壊されるかもしれない。

 この話を聞いたときにその可能性を考えた。それを出されると、ね。

 

「……わかった。アタシらも探ってみるよ。疑いをかけられたままじゃいられない」

 

 協力も考えてるけど、この場はこれで退く。いくらあやめとその友達のことを知ってたとしても、まだ信じられない。もう少し情報がいる。もっと頼れる情報筋がないと……。

 

 これで話は終わりってことで席を立ったアタシを、帆秋くれははクリームソーダをマドラーでかき混ぜながら呼び止めた。

 

「あなたに会わせたい人がいる。他の二人に言ってもいいけど、本格的に動くのは会ってみてからにして」

 

 最後に言われた言葉を少し信じる気になったのは、かこちゃんに呼び出されて、あやめとフェリシアちゃんに同じ話を聞かされてからだった。

 あやめも知ってるんじゃ、このはの耳に入れるしかない。帆秋くれはが接触してきたことを話すと、意外にも冷静な答えが返って来た。

 

「とりあえず、様子見でいいわ。その帆秋くれはが噂を流している可能性もあるでしょう?」

 

 このはの言う通りそれが一番怖い。噂は事実でも、本当に彼女に被害にあった友人がいるかもわからないんだ。まだ、信用は出来ない。

 

 次に状況が変わったのは、アタシたちを探して七海やちよが現れてからだ。

 彼女のことはこの神浜にいる以上、聞いたことぐらいある。西の魔法少女の顔役で最古参。多分このはより年上のベテランだ。

 

 その七海やちよが現れたときは驚いたけど、最初から敵意は感じなかった。もう回復したらしいけど、『十咎 ももこ』という被害者と同じ現場に居て、魔力パターンを覚えていたからアタシらじゃないって気づけたそうだ。

 

 判明しているもう一人の被害者も教えてくれたけど、それが『春名 このみ』だった。帆秋くれはとの話でも出てきた名前でウラがとれてしまった。

 そのことはこのはにも伝えていた。だから、家に戻った後に接触することを伝えようとしたんだけど、遮ったのもこのは自身だった。

 

「七海やちよと出会って思ったの。神浜を出ましょう。今までのようにリセットして、三人でまた暮らすべきよ」

「そ、それじゃあ!」

「……あやめ? どうしたの?」

 

 その場はアタシがなんとか収めた。別の場所で同じようなことが起きたらまた移動するのか、それの繰り返しになるんじゃないかってね。このはとしても、疑いをかけられたままじゃいられないってことに同意してくれたのは良かった。

 

 でも、あんまり時間はない。このはは少し前に不自然にぼーっとしてて、それが魔法少女に幻覚をかけられたかもしれないなんてこともあってピリピリしている。どうしても疑いが晴れないならこのはの言う通りに神浜を出るしかなくなる。それだけは、ダメだ。

 

 ……ここまで事態が動いてから、最後に帆秋くれはに言われた言葉に頼るのが一番だと気づいた。ぞっとするぐらい、今の状況に的確だ。

 もし言われてなかったら、アタシはどうしてた? 噂を探り、疑いを晴らすための情報源を探してたはず。もしかすると、アタシに会わせたい人っていうのは……。

 

 

 

 

 

 

「おーい、観鳥さんはここだよー」

 

 受け取った連絡先に連絡して、くれはさんに日時と場所を指定されたんだけど、いたのはカメラを持っていたほう。観鳥さんだった。

 

「くれはさんは?」

「別行動。もう来るってさ。ほら」

 

 示した方向からは確かに、南凪の制服を着たくれはさんが歩いてきていた。だけど、その隣にいる神浜市立大附属の人は見覚えがない。なにか縁でもあるのか、やっぱりアタシと似た髪色に髪型だ。

 

「まさか、かえでの友達に呼び出されるとは思わなかったよ」

「いいでしょ別に。観鳥、後は頼むわ」

「え? えぇ……もういないし……」

 

 この場をセッティングした本人はアタシらを一人ずつ見るとどこかに行ってしまって、とりあえず近場の喫茶店で話をすることにした。

 対面に座ったのは神浜市立大附属の人。その人はアタシの顔を見ると、神妙な面持ちで口を開いた。

 

「……遊佐葉月さん? アタシは十咎ももこ。やちよさんと帆秋さんからあんたたちの件は聞いてる」

 

 これは……予想はしてたけど、随分な人を連れてきたね。彼女こそ七海やちよが言っていた被害を受けた本人。もう一人がまだ眠っている以上、判明している被害者で話を聞ける唯一の存在だ。アタシもどうにか出会えないかと考えてた矢先だ。ってことはアタシの目的も知ってるんだろうなー、なんて思う。

 

「遊佐さんには二回目になっちゃうけどさ、今日来てもらったのは噂の調査の協力を頼みたいんだ」

 

 そのことに異論はない。だから来たんだし。でもアタシがよくても、十咎ももこさんがどう思うかは別だろう。事実、快諾するなんて様子じゃないし厳しい顔だ。

 

「調査に協力するのには賛成だよ。でも、アタシはまだあんたらがシロだとは思ってない。自分の目で見極めるまでは信じられない。それでもあんたは協力する……?」

「……自分たちは犯人じゃない。だから、一緒に調査して見極めてくれませんか。真実を」

 

 今言えるのはこれだけ。ただ信じてくれることを願ってその瞳を見た。射抜くような視線は一旦まぶたで覆い隠されて、ゆっくりと開く。

 

「……わかった! アタシは信じる」

 

 さっきまでの剣幕は何処へやら。親しみやすい人柄が見えるような笑顔で「ももこでいい」って言ってくれた。急に距離を詰めてきたのは驚いたけど、これならアタシも素が出せるなー。

 

「これで協力関係は成立だね。じゃ、具体的に何をするかなんだけど」

 

 話し合った結果決まったのは、私たちが『噂の出処』を探すこと。この噂をバラまいたのが犯人のはず。気の遠くなる作業かもしれないけど、糸を辿るように追っていけば見つけられる。

 観鳥さんは帆秋さんに「他の被害者を探して」って言われてるらしく、情報交換はするけど基本的には別行動をするらしい。

 

「というか、その帆秋さんは?」

「二人が協力することが決まったら電話して、としか聞いてないよ。変なことしてないといいけど……」

 

 あの様子じゃ相当焦ってるんだと思う。アタシだって、このはやあやめが狙われてまだ目覚めないなんて事態になったら抑えきれないよ。ももこの友達が一応フォローしといてくれるって話だけど……。

 そんな気持ちの中、その日から情報収集は始まったんだ。

 

 

 

 

 

 それから三日。家を空けて申し訳ないという気持ちとなかなか調査が進展しない焦燥感が入り混じったままその日の情報収集も終わろうとしていた。

 

「今日もダメかあ。どうしても糸が切れるみたいに途切れるね」

「……ここまで来ると不気味だねー。アタシらを何が狙ってるんだか……」

 

 たった三日。されど、三日だ。動ける時間は全部調査に回してもこれだ。最初は順調に追えてもどんどん噂が曖昧になって追えなくなってしまう。これは撹乱のためで、本来の目的は別にあるんじゃないかってぐらい巧妙だった。

 ……それに、成果を伝えられないのが続いてだんだんとこのはがいらだってるように見える。

 

 今日はもう戻ろう。そう考えたとき、ももこのスマホが鳴った。

 

「おー、かえで。どうした? え、レナが……!?」

「どうしたの?」

「ごめん! うちのレナがこのはさんに突っかかったみたいだ! 場所は水名神社、止めに行こう!」

 

 それは恐れていたことだった。

 このはには調査をしているとは伝えているが、それがももこと一緒とは言っていない。こっちはこのは、ももこたちには水波レナという引き合わせたら少しマズいことになる組み合わせがあったからだ。

 

 ……いや、ひょっとするとここがタイミングなのかもしれない。これ以上このはに隠し続けるのは危険だ。布石を打つために走りながらかこちゃんに連絡した。水名神社に魔女が出たから手伝ってと嘘までついて。

 

 急いだけれど、どんどん事態は緊迫しているみたいだった。その場には他にあやめと何故かくれはさん、それにやちよさんもいるという。ここにアタシらが着いたら本当にもう隠し事はできない。

 

(マズイよ葉月……! なんかこのはがおかしい……早く来て! あちしじゃ止めらんない!)

 

 あやめからの念話も要領を得ないものになってる。良くない状況になってるんだ。

 

「あやめ! 今どうなってる!?」

(このはが、魔法少女を全員叩き潰すって……!)

「どうなってんの……!?」

 

 明らかに正気じゃない。このはだってそんな行為を実行に移したらどうなるかわからないはずがない。頭を過ぎったのは前にこのはが言っていた『幻覚』のこと。でも、そんなことをじっくり考える余裕はなかった。

 

 

 

 なんとか水名神社に着いたとき見えたのは、このはがくれはさんに攻撃を仕掛けている姿だった。蝶の羽根を模した水色の槍が、鳥の羽根を模したカトラスに弾き返される。やちよさんと一緒に対応しているみたいだけど、下手に傷つけられないからか防戦一方だ。

 

「ちょっと待った!」

「来たわね、葉月。……待って、その隣にいるのは……」

「ももこちゃん! ってあれ、隣の人は……」

 

 声を上げたアタシらに注目が集まる。

 取り返しのつかない事態になる前に止められて良かった。……ここからはアタシの出番だ。

 

「ももこ……十咎ももこ!? どうしてその人と一緒にいるの、葉月!」

「……葉月」

「大丈夫。アタシが説明する」

 

 犯人探しに協力している。そう言ったら事情を知っている人以外は驚いた。特にこのはの顔は……直視しづらい。

 私たち以外は信用しないって言ったのに。なんで勝手に。そんな言葉がアタシを糾弾する。ゴメン、でも……アタシらはこのままじゃダメなんだ。

 

「このは、聞いてほしい。アタシが思ってることを」

 

 アタシは思いの丈をぶつけた。

 そう、アタシらはもっと外と向き合うべきなんだ。小さい頃から周囲の事情に振り回されてきたからこのはの言うことはわかる。でも、信じられる人間はアタシら三人以外にもいるはずなんだ。つつじの家にいたときだって、院長先生や他の子供たちがいた。この数日で出会った人たちだって……!

 

 三人だけで暮らしてて、忘れてたんだ。心を許せる人がいたってことを。

 

「……やめて、やめてよ。私たちは、三人で……いつも三人だけで……!」

 

 このはの目に光る涙が、どれだけアタシとあやめを大切に思っているかを示していた。……そっか、怖いんだ。外と関わって、つつじの家のときみたいにアタシらの関係が壊れるのが。

 

 静寂が神社に満ちる。それを動かしたのはくれはさんが小さな声であやめの名前を呼んでからだった。

 意を決した声であやめが言ったのは、自分にも隠し事があるということ。そして、この神浜で友達が出来たということ。

 

「アタシもさ、あやめとその友達が会っている光景を見て、ようやく気づけたんだ。信じられる人はいるってことに」

「……私たち、まだ出会ったばかりでしょ? もう少し時間をかければ互いのことを理解できるんじゃないかしら」

 

 やちよさんの言葉が全てだ。アタシらにはまだまだ時間がいる。それをももこや他の人たちも受け入れてくれる。今まで後ろを付いてくるだけだったあやめが進んでいることを見たからか、このはは少し気を落ち着けたみたいだった。

 

「葉月さーん! ……あれ? あの、魔女が出たって聞いて……」

「か、かこ!?」

 

 ちょうど連絡しておいたかこちゃんが来てくれた。フェリシアちゃんのほうは連絡がつかなかったけど……これでこのはに紹介できる。

 でも、遠くから聞こえる声はまだあった。

 

「かこー! 呼んだかー!」

「……これはまた、みなさんお揃いで」

「常盤ななか……!」

 

 もしかして、とくれはさんを見ると深く頷いた。

 

「私が連絡したわ。フェリシアを連れてきて、と」

「なるほど。帆秋さん、後でお話があります」

「……て、手短に頼むわ」

 

 アタシがかこちゃんを呼んだように、くれはさんがフェリシアちゃんを呼んでいたんだ。常盤ななかに連れてこさせた意味はわからないけれど……。

 

「そう、二人も。あやめに友達がいたのね」

「あ、あのっ! 夏目かこです! ……フェリシアちゃん」

「オレは深月フェリシア! あやめの友達だぞ!」

 

 ……ああやって、屈託なく伝えられるのは強いなぁ。駆け引きとか読み合いとか考え始めたのはいつ頃からだっけ。

 

 少し表情の柔らかくなったこのはは、二人があやめのことを大切な友達だと笑顔で伝えるのを見て、より微笑んだ。

 

「……ふぅ、かこさん。フェリシアさん。これからもあやめをよろしくね」

「そ、それって……!」

 

 認めてくれた。信じてくれる気になったんだ。アタシら以外の世界を。

 その意味に気づいたあやめはかこちゃんとフェリシアちゃんに駆け寄って喜んでいる。握手して、輪になって微笑ましく。

 

「というかあやめ! 神浜から出てったらオレとの決着はどうすんだ!」

「なにをー!」

「ふ、二人とも……」

 

 少し元気すぎる友達も。それを止めてくれる友達も。

 

「あれはアタシらにはなかった関係だよ」

「……対等に喧嘩して、張り合って、それを止めてくれる友達がいる……成長、してたのね。……葉月。私はあやめみたいにすぐには変われない……でも、信じるわ。この神浜で」

「うん。少しづつ、ね」

「ええ……それにしても、友達か……私に友達って……」

「いるじゃん。ここにさ」

「……そうだった。あなたは、私の初めての友達よ」

 

 そんな当たり前のことがなんだかおかしくなって、笑いあって、再確認できた。……このは。やっぱり、初めてつつじの家で会ったときからアタシらは友達だよ。ずっと、これからも離れることのない。

 

 

 

 

 

「肝心な件がまだよ」

 

 ……そうだね。もう少し浸ってたいけど、くれはさんの言う通りまだ終わってない。

 ここからは年上のアタシらの出番だ。あやめたちには先に帰ってもらって、今一度情報を交換することにした。

 

「常盤ななか……もう互いに干渉しないと伝えたけれど……」

「ええ、お話は伺っております。手を取り合えるのならばそうしましょう」

 

 初めはどうなることかと思ってたななかさんとの関係も修復できそうで、噂の調査も弾むかと思ったけどやっぱりそう上手くはいかない。アタシとももこが調査内容を報告してるとき、ななかさんが気づいたんだ。

 

「被害にあった魔法少女のうち二人はわかっている……ですが、他の被害にあった魔法少女は? 帆秋さん、観鳥さんからは何と?」

「なにも。まだ一人も見つかってないわ」

 

 ……まさか。観鳥さんは()()()()()がいないか探るように言われていたはずだ。

 

「他に被害者はいない……?」

「はい。その可能性があります。最初からこのはさんたちを陥れようとした何者かがいる……そう考えるのが自然では?」

「ももこはすぐに起きてるけど、このみは長く眠ってたわよ」

「だから不可解なのよ。なぜその二人だけなのか……この件は今後も調べるわ。時折情報交換しましょう。あなたもよ、帆秋さん」

「……ええ」

 

 『幻覚』の件にこの一件。いまだに謎は深まるばかりだ。まだアタシらに降りかかることもあるだろう。

 

 

 ……でも、悪いことばかりじゃない。

 

 ななかさんたちとの関係は良好。情報交換以外にプライベートで会うことだってある。

 あやめはかこちゃんとフェリシアちゃんとよく一緒に遊んでるみたいだし。

 

 くれはさんに観鳥さんは時々、かな。参京区にいるわけじゃないからあんまり出会えないんだ。

 けど、目覚めたっていう春名このみさんにも会ってくれはさんがどんな感じで行動してたかを伝えたりもした。あの詰め寄り方を話したときは相当驚いてたねー。「そこまで心配してくれたんだ……」って感じに赤くもなってた。

 

 

 同じ魔法少女同士で、協力して魔女を追う。それって同じ境遇の仲間ってことだよね。

 ……そう、ここが、アタシら三人にとっての新しい『つつじの家』なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このはを説得するRTAはーじまーるよー。

 

 

 それではもう少し準備をした後、仕込みを回収して説得に向けて動き出しましょう。

 

 葉月が昏睡事件を探ろうとした場合、情報源として会おうとするのが被害者本人です。このみちゃんはまだ寝てるので今回はももこですね。会える人物がいなければ被害者と面識のある人物が対象になります。かえでちゃん、レナ、帆秋ちゃんとかです。

 

 しかし葉月はももことの連絡手段を持ちません。なのでかこちゃんから得た情報だけで会おうとするのですがこれでは時間がかかりますし、成功率も低いです。取る手段が下駄箱に手紙なので絶対に会えるとは限りません。

 

 そこで両者と面識を作っておいた帆秋ちゃんと観鳥さんが引き合わせます。遭遇した時に連絡先は渡してあります。ももこは帆秋ちゃんでいいですが、葉月は出会い方がアレだったので観鳥さんに連れてきてもらいましょう。

 ちなみにここでももこと協力させるか、他の協力者を連れてこないとなんやかんやで珍しく葉月が死にます。

 

 そして引き合わせた結果がこちらになります。

 見てください。金髪ポニテと金髪サイドテと金髪サイドテが同じ空間にいます。しかもイケメンばっかです。レアです。邪魔しちゃいけませんね。ここはもう平気なので次の場所に向かいましょう。

 

 これで早ければ今日から葉月が情報収集に動き出します。

 こちらは観鳥さんからの報告を待つ間、ななか組長に電話してかこちゃんの位置を聞き出します。理由はなんでもいいです。これでその場所がわからないと返答が返ってくればOKです。探しに行きましょう。

 

 このイベント中、組長が行動を把握していないときは大体は公園であやめとフェリシアに会っています。後はそこを見つけるだけですが、今はそこまでで大丈夫です。記憶力がある方はこの場所をしっかり覚えておきましょう。私はチャートに書き込みます(半ギレ)。

 

 そんなことしてたら電話です。

 

「……帆秋さん? うん、二人とも協力してくれるって。無茶はしないでよ……」

 

 情報収集が始まりましたね。この期間が長すぎるとこのはに見つかってなんやかんやであやめが死にます。しかし、このはのフラストレーションを溜めるためにも最低でも三日は必要です。

 なお、観鳥さんに他の被害者について調べてもらっているので帆秋ちゃんが調査する必要は一切ありません。ここは記憶しておいた公園にリストラされたサラリーマンのごとく通いつつ大人しく待ちます。

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

 三日目の今日はこちらも動きます。かえでちゃんに連絡して、今から行くと伝えましょう。ももこが情報収集に動いている間は確定でかえでちゃんとレナが一緒にいます。会ってどうするかというと、帰りが夕方になればどこでもいいんですが……まあお見舞いとかでいいでしょう。

 

 

 オッス(到着)。

 

「ふーん、あんたがかえでの言ってた帆秋くれは?」

「初対面でそれは失礼だよレナちゃん……」

「いいでしょ別に。……って、かりんは? さっきまでいたでしょ?」

「かりんちゃんはまだ会いづらいから先に帰るって」

「はあ? まだそんなこと言ってるの?」

 

 このツンデレツインテその他色々の要素を詰め込んだ欲張りセットみたいなのが『水波 レナ』です。彼女を放っておくとこのはとあやめに突っかかって戦闘になり、悪い方向に転がるとなんやかんやであやめが死にます。

 ですが、かといって会わせないと余計に話がこじれてなんやかんやであやめが死にます。引き合せつつ、不測の事態が起きないように見ていましょう。

 

 というか、かりんちゃんはまだかもれトライアングルにいたんですね。そろそろアリナ先輩の名台詞『こうじゃ……ないだろおおおお!』を言われる頃合いかもしれません。

 

 

 では軽くお見舞いに行った後は……。

 

「うわああああん! このみちゃああん!」

「起きてるじゃない……良かったわね」

「ごめんね、頭を打っただけなんだけど話が大げさになっちゃって……でももう大丈夫! 明日からブロッサムにも出るから!」

 

 早くなあい? ちょっと予定がズレてますが……ま、まあ大丈夫やろ……。

 ちなみに今一番信頼度が高いのがこのみちゃんです。原因は当然、ブロッサムでの連日勤務ですね。次点で最初からそこそこ高い観鳥さんです。

 

 しかし特に話すこともないので時間経過させたら適当に買っておいたプレゼントを渡して帰りましょ。

 

 

 おうかえでちゃん! せっかくだし帰りにスーパーで限定アイス買おうぜ!

 

 というわけで事前に調べておいたスーパーに行きます。

 すると、このはとあやめに出会えます。この期間内はアザレア組の家事担当がいなくなるため、二人が夕飯をスーパーの弁当で済ませるのですが、このスーパーはかえでちゃんが好きな限定アイスの売っているスーパーと同じです。

 

 このちょうど葉月だけがいないタイミングでレナをぶつけることで一気に話が進みます。というか勝手に絡みます。ここで意図的に会わせることでタイムを短縮できるので、下見が必要だったんですね。

 

 わー、レナがこのはに喧嘩を売ったぞーどうなるんだー(棒読み)。

 

 ではここでまた組長に電話します。もしもーし、今あの公園でフェリシアが寝てるんで連れてきてください。かこちゃんが呼んでるんで。はいこれで大丈夫です。一悶着あるとは思いますが、ななか組長なら連れてきてくれます。

 

 

 ずんずん進んでく二人についていくと水名神社に着きます。ここが決戦の地です。

 

 特にすることもないので言い争いを眺めていると、レナとこのはが戦うことになります。レナちゃんはさぁ……。

 別に止めないでも大丈夫ですが、ごく稀にソウルジェムをさっくりやってしまうので、変身して『停止』の準備はしておきましょう。

 

 スーパーの時点でかえでちゃんがやちよさんやももこに連絡してるのですぐに他の面々が来ます。特にやちよさんは近辺で待機してるのかと疑うレベルで早いです。というかもう来ました。

 

 やちよさんが来てもまだ戦い続けてますが、やっぱりすることはないので相変わらず眺めてましょう。時折あやめを確認してすっ転んでたらこのはがあやめを確認しやすいように視線からどきます。

 

「……あ、あやめーっ!」

 

 あやめが死なない場合、この台詞が聞けるのはここだけです。名台詞が回収できるのは優しいですね。

 ここであやめを襲ったのは更紗帆奈でしょうが、帆秋ちゃんは彼女の存在を全く知らないのでわかりません。その辺を全力で攻撃すれば当たるかもしれませんが泳がしておきましょう。

 

「もういい……もういいわ。決めた……疑いを晴らすなんてどうでもいい……」

 

 このようにあやめがすっ転んだ後、このはの様子がおかしくなります。やっぱり下手に手を出さずに見ていましょう。もうすぐです。

 

「……葉月が来る前だけど始めるわよ、あやめ」

「な、なにをさ……」

「私たち以外の魔法少女を全員叩き潰す……!」

 

 急にとんでもないことを口走ったこのはが襲いかかってきます。『魔法少女 静海このは』戦です。多分更紗帆奈のせいだと思うんですけど(名推理)。

 あやめは動かないので、レナ、かえでちゃん、やちよさん、帆秋ちゃんで戦うことになります。といってもイベント戦なので初撃さえ防げれば大丈夫です。

 固有魔法の『幻惑』を用いた奇襲はまずレナ――あっぶぇ! 咄嗟にガードしてなかったら体力がゴリっと減ってたぞ!

 すいまっせへぇ~ん! 帆秋ですけどぉ、(帆秋ちゃん以外を狙うのは)まぁ~だ時間かかりそうですかね~? ってぐらい執拗に狙ってきますね。かえでちゃんとレナとか動けてませんよ。もうやちよさん頼みです。

 

 下手にこのはを傷つけるわけにはいかないのでここは防戦に徹します。やちよさんのガード力に期待しつつ……。

 

「ちょっと待った!」

 

 良かったあ~葉月ちゃん呼んでくれて。かえでちゃんも……(神浜の)ファミリーみたいなもんやし。

 

 葉月とももこが来ればもう大丈夫です。後は眺めてましょう。

 場がいい感じに盛り上がってきたタイミングで、あやめに友達が出来たことを伝えてもらいます。これが一番効きます。こうして友達による説得ができない場合、葉月が説得しますが高確率で失敗します。それでも全員生存とはなりますがアザレア組の関係が修復不可能になるのでダメです。

 

「あの、魔女が出たって聞いて……」

 

 あれはかこちゃんですね。葉月が連絡するであろう彼女が到着することでこのはへの説得の成功率が更に上がります。

 

「かこー! 呼んだかー!」

「……これはまた、みなさんお揃いで」

 

 はいここにフェリシアをドン! 更に説得効果が倍です。同じ空間に金髪ポニテサイドテサイドテおさげです。もはや呪文ですね。

 このななか組長とフェリシアはやちよさん、かこちゃんがなんらかの理由で来れなかった場合のリカバリーになります。ちゃんと来た場合は単純に加速するのでうまあじです。

 

 ここで一応このはのソウルジェムを確認しておきましょう。ここまでの会話や戦闘によっては濁ってます。今魔女化されたらRTAになんねーよ!(1敗)

 

 

 では結果は……説得に成功したみたいですね。工事完了です……。

 

 ここでイベント自体は終了ですが、情報交換会があるので残りましょう。

 ななか組長を呼んできたのはこの話し合いに参加させるためでもあります。ここで伝えておけば余計な手間を省けますし、夜までかかる話し合いを短縮できます。

 さっさと始めようぜ! 日が暮れちまうよ!

 

 

 

 

 おはよーございまーす!

 

 今日もブロッサムです。頑張ろうなこのみちゃん! 

 ……ちょっと様子がおかしいですね。(視線が)アツゥイ!

 

「くれはさん! ふふっ、呼んでみただけ」

 

 お、大丈夫か大丈夫か(信頼度)。

 一応他の金策手段をチャートで確認しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昏倒事件なんてものは最初からなかった。キミは巧妙に噂を流して最初の状況を作り上げた。そして静海このはには『催眠』をかけ……直接襲ったのは十咎ももこと三栗あやめ、そして春名このみだけだ」

 

「ボクが不可解に思うのは春名このみだ。混沌をもたらしたいのなら彼女は襲わなくてもいい。しかも彼女だけは念入りに噂通りにした。これじゃ、むしろ余計な介入を招いて収束を早めてしまったんじゃないのかい?」

 

「……探偵役? それが目的なら、思惑通りなんだろうね」

 

 

 




■今回の内容
 『そしてアザレアの花咲く』

■静海 このは
 メシマズ系魔法少女。青色。
 この頃は絶対に止まらない魔法少女と化してるので怖い。

■三栗 あやめ
 あちし系魔法少女。赤色。
 「あやめーっ!」 からのBAD ENDは実に全BADの半分に近い。

■友達
 攻撃力を上昇させたうえに確率でクリティカルを発生させる殺意の塊。マジカルきりんと組み合わせるとダメージが加速する。

■常盤ななかの言う『お話』
 帆秋ちゃんにとって体育館裏、屋上の類語。
 許されなかった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。