マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
朝起きると、カーテンを開けて日の光を全身に浴びる。
日常の行動でみかづき荘での一日が始まって、起きたみんなと「おはよう」って言葉を交わすとなんだか安心する。最近はういもすっかりと馴染んでいて、教えたり手伝ったりすることが少なくなるのは少し寂しいけど、誇らしくも思うんだ。
そして、今日はちょっと特別。
全員でみかづき荘を出発して、鶴乃ちゃんと合流して向かった先は栄区の緑地公園。辺り一面に緑が広がる大きい場所だ。吹く風は心地良いし気持ちの良い天気で、私たちを祝福してくれてるみたい。
……今日、私はここで多くの魔法少女に宣言する。困ったときは手を差し出し、辛いときには支え合う互助組織が正式に設立するんだ。
やちよさん、十七夜さん、ひなのさんが私が宣言したほうが良いって推薦してくれたんだから、責任があっても気後れはしない。昔の私ならどうだったかな。一歩引いていたのかも。
本当に、色んなことがあった。直感を信じて神浜に来て、色んな人と出会って、みかづき荘に住むようになって……そんなに昔の話じゃないのに、今ではずっと遠くの思い出みたい。
私が感じたことや考えたことは誰しも同じ。集まってくれた魔法少女のみんなもそれぞれ胸に秘めた想いがあるはず。
「まだもう少し時間があるわね。それまで自由行動にしましょうか」
「わたし、灯花ちゃんたちと話してくるね!」
灯花ちゃん、ねむちゃん、桜子ちゃんのもとに走るういを見送って、一旦気持ちを落ち着けた。
ここに来ているのは参加するって言ってくれた人たちばかり。ももこさんやみとちゃんたちも来ている。中には顔を会わせただけの人や知らない人もいるけど、それだけ多くの魔法少女が集まってくれてるんだ。
「本当に人がいっぱいですね……あ、まなかさん……」
周りを見渡してみると、今まで協力してくれた人たちの姿が見えた。
さなちゃんと同じ水名女学園の人にはお世話になってることが多い。まなかちゃんは結成記念パーティーの準備をしてくれてるし、明日香さんは今後、話し合いをする時には竜真館の道場を貸してくれると協力を約束してくれた。
その中の一角に、ひなのさんや十七夜さんたちと一緒にいる人がいた。南凪の生徒でふわふわとした淡い栗色の髪が特徴的なあの人。
「くれはさん! ……と、えーと……ト、トビラさん」
「阿、見、莉、愛よ!」
「そうよ、いろは」
そう、くれはさんと話していたのは阿見莉愛さんだ。なぜか毎回間違っちゃう。スマホの連絡先の表示もおかしいから、あんまり機械に詳しくない私が変なことしちゃったかなって思ったこともあった。
二人が話してたのは静海このはさんたちのこと。彼女たちは何回か協力してくれたことを覚えている。葉月さんはういの訓練に付き合ってくれたり、あやめちゃんはフェリシアちゃんと仲が良いからどことなく近い距離の人たち。
でも、彼女たちはこの場にいない。その理由はフェリシアちゃんがよく知っていた。
「あやめんとこは来ないんだろ? オレ、聞いたぞ」
「自由参加だからね。無理強いはできないよ」
彼女たちには彼女たちなりの考えがある。
鶴乃ちゃんの言う通り、参加するしないは本人の自由になっている。できることならみんなに入って欲しいけど……無理やりはダメ。ちゃんと話をして、自分で決めないときっと後悔しちゃう。
その他にも、みくらさんたちや、ゆきかさんもそう。アリナさんは微妙な立ち位置みたい。元マギウスの灯花ちゃんとねむちゃんは参加してるけど、まだ誰も答えを聞いてない。
「あとはななかさんもですよね」
「あら、帆秋さんがいるものですから来るものかと」
「私も参加しないわよ」
「そうよね。参加しない――え? ええーっ!?」
なんて、びっくりした声が莉愛さんと私から飛び出る。
確かに参加するかどうかは聞いてなかったし、ななかさんとこのはさんが参加しないのならそれもありえる。でも、くれはさんは参加するような気がしていた。
「ちょっとどういうことよ! 私はてっきり参加するものだと思ってたんだけど!?」
「私もそうかと……」
私たちの声を聞いて、十七夜さんやひなのさんがくれはさんを呆れた目で見る。
「言ってなかったのか」
「言ってなかったわ」
「お前なぁ……」
なんでも、二人は前から知っていたらしい。
ひなのさんが魔法少女相手に受けてた相談では、まだ元マギウスのことが信じられない人やまた組織に入るのがイヤな人がいたそうで、互助組織に入らない人っていうのはくれはさんも存在を聞いていたそうだ。
特に、東にはそういう子が多いみたい。元羽根の人たちが多いというのもあるけど、東側を束ねる十七夜さんの話を聞くと、昔から続く東西の関係が影響してるのかもしれない。神浜出身じゃない私でも簡単に解決するものじゃないってことはわかる。
だから、一度は驚いたけど、くれはさんが参加しない理由もわかる気がするんだ。
「敵対するわけじゃない。みんなに助けてもらった恩だってある。だから……みんなを助けたいのよ。今、ここにいない子も」
さっきの参加しない子たち。彼女たちにも手を差し伸べたい気持ちは私以上に大きいはず。今まで私を助けてくれたように、誰かを助けるんだと思う。
「私だけじゃない。ななかもこのはも、困ったときには同じ魔法少女として協力すると約束してるわ。今まで通りよ。それに、本当の意味でみんながひとつに纏まったら私も加わるわ。立場は違うけど……それまで、一緒に頑張りましょう」
「はいっ」と返事をして、差し伸べられた手を私は握った。
私たちだからできること。くれはさんだからできること。どっちが正しいとかはなくて、きっとどちらも必要なことなんだ。
鏡写しのように分かたれてもその根っこは同じ。一度間違えても終わりじゃないから、その間違いを再び起こさないように、立ち直れるように、協力し合う。別々の場所にいるようでも、手は繋がれていた。
「……あなたのことですもの、考えがあってのことでしょう? この阿見莉愛、いずれ肩を並べる日を楽しみに待っておりますわ!」
「ええ」
「あ、でも観鳥さんたちには……」
あの三人と喫茶店で話した日のことを考えると、言ってなかったらちょっと大変なことになりそう。帆奈ちゃんはここにいないけど、観鳥さんは郁美さんと、このみさんはかえでちゃんと一緒に来ている。
けれど、ちょうどすぐそこにいる二人は知ってたという顔。微笑みながらくれはさんを見ていた。
「私はかこちゃんから聞いてたよ?」
「観鳥さんはあきらさんからね。この分だと帆奈ちゃんには美雨さんが教えたんじゃないかな」
「ちょーっと待った―! 令ちゃん、ほんと? ほんとにいいの!?」
人の波をかき分けて、背後から急にやってきたのは元黒羽根の牧野郁美さん。ういにせがまれて着たメイド服をくれた人だ。私の中ではそのイメージが強いけど、観鳥さんにとってはマギウスの翼に入るきっかけになった人なんだって。それから一緒に行動してたことも多いみたい。
「観鳥さんは元白羽根で、しかも広報部をやってたからね。立場上色々あるのさ。それに牧野チャンは心配しすぎ。観鳥さんたちの関係はそんなにやわじゃないよ」
「なら良かった。変に我慢してるかもって心配で……」
「素、出てるよ」
「なんのこと~?」
郁美さんのその、素の部分が出ることがある姿はくれはさんに似てる。
クールで怖そうに見えても、本当は優しくてどこか抜けてる人。決戦の日からはそんな姿を見ることが多くなった。
観鳥さんに郁美さんが話しかけたように、このみさんにはかえでちゃんが話しかけていた。
「このみちゃんはいいの? かこちゃんもそっちなんでしょ?」
「うん、私もブロッサムで会えるし、それに……ふふ、また家に泊まりに来てね? お母さんも楽しみにしてるから」
「いやいやもう回数で差が出てる。今度は観鳥さんの番」
「……くれはさん、どっちにする?」
「保留――」
「ダメ」
「ダメだね」
「こ、今回は私の家で……」
そうだよね。くれはさんは多分そう言うと思ってた。いつもの調子なら『いいじゃない別に』って言いそうなんだけど、こういうことには弱いみたい。前より少しはわかるようになってきたかな?
でも、このままだとくれはさんが押し切られてしまいそう。泊まるだけの話だったのがいつの間にか旅行になってる。
ういに聞かせられそうにない内容になる前に、見かねたやちよさんが助け船を出した。
「ところで他の南凪の子は? 今日は来てるみたいだけど」
「それなら――」
「めぐるは参加しますよ? 真里愛さんもですよね」
「ええ、他の学校の知り合いもいるし」
答える前に本人たちが答えてしまった。まったく状況が変わってない。
いやむしろ悪化してる……? くれはさんは遂に顔が赤くなり始めちゃったし……。
「それよりもくれは選手、どなたを選ぶんですか!? さあ、どうぞ!」
「あらあら、モテモテね。……責任、取ったほうが良いと思うわよ?」
「│くれは、覚悟を決めたほうがいい。あと私は令が良いと思う│」
遠くにいた桜子ちゃんまでこっちに来ていて、これは……あ、あれ? もしかして南凪の人たち、観鳥さんに協力してるんじゃ……。
あ、ダメですくれはさん。そんな目で見られても私にはどうしようもないんです。かえでちゃんはこのみさんの側だし、ひなのさんと十七夜さんは見てるだけで収拾がつかなくなりそうな……。
「アリナ先輩! ほら、くれはさんなの!」
状況を変えたのは、かりんちゃんの声。手を繋いで引っ張ってきてるのはアリナさんだ。
なんとか連れてくるって言っていたけど、本当に無理やり連れてきたみたいで機嫌が悪い。あの人を相手にできるのはかりんちゃんぐらいかなぁ……。
そのアリナさんがくれはさんに近づくと、空気が変わった。
「アリナ……」
「……くれは」
前みたいに互いを見つめてる。また近づいて――
「礼を言うわ」
「はぁ? 知らないワケ」
特になにも起こらなかった。
「絶対また喧嘩すると思ったの……」
「毎回顔を合わせたら喧嘩とか、馬鹿の一つ覚えだヨネ」
「この前はしてたの」
「……」
「いない時にも文句言ってるの」
「フールガール」
「でも、それがアリナ先輩らしいの!」
不思議なことに、そう言われたアリナさんは満更でもなさそうだった。ふん、とそっぽを向いたかと思えばすたすたとこの場を離れていって、ちょっと離れた場所にある木に背中を預けただけで去ろうとはしていない。
彼女が来たことでくれはさんも少し落ち着いたみたい。普段の真顔に戻っていた。
「そろそろ始まるでしょう? 私はこれで」
「じゃあ明日、学校でね」
「ブロッサムで待ってるね」
「え、ええ……」
みんなに見送られながらくれはさんは別の場所へと向かっていく。これから用事があるらしい。そういうところも、彼女らしいなって思うの。
言っていた通りに、もう時間だ。
「さて、いろは。準備はいい?」
「ちょっと緊張しますけど……これからのことを思えば、大丈夫です」
そして、私はみんなの前に立った。
見えるのは色んな人たち。
神浜市立大附属学校。水名女学園。参京院教育学園。中央学園。栄総合学園。南凪自由学園。工匠学舎。大東学院。聖リリアンナ学園。
それ以外にもいる。みんな今日この日のために来てくれている。
始まりはみんなの小さな悩みだったのが、大きな流れに乗ってここまで来た。
私たちが目的とするのは、かつては敵だったマギウスの目的と同じ。自動浄化システムを拡大して、魔法少女を魔女化という呪縛から解放すること。
ただし、誰も犠牲にすることはなく、キュゥべえとの共存をも目指す。それがマギウスを否定した私たちの責任でもある。それに、綺麗事だとしても、夢を描かなくちゃより良い明日を夢見ることができないと思うから。
やちよさんと一緒にみんなに想いを伝えて、共有して、私は告げた。
「――ここに、『神浜マギアユニオン』の設立を宣言します!」
……なんて、今はやってるんだろうね。
あたしは朝から買い出しとかしてるから知らないけど、駅に迎えに行ったくれはから聞いたから多分そう。
家に戻って中に入ると、いつも通りの杏子とゆまの他に七人も出迎えがいる。あはっ! あいつらはあいつらで好きにやってるんだから、あたしらだって好きにやるってこと!
「でもなんで私の家なの」
「いいじゃない。広いし」
そう言ったのはこのは。葉月やあやめと一緒にソファに座ってて、帰ってきたあたしらと向かい合ってた。
他にもななかたちがいる。監視してた時の経験からか随分と家の構造に詳しい。いろはの時みたいに案内しないでいいのは楽。
「今後は会合をここでやることもあるヨ。喫茶店、ウォールナッツ、どこに目と耳があるかわからないネ」
くれはは許可してるけど、ちょっとむかつく。あんたらの家じゃないっての。
座ってメロンソーダを飲み始めたくれはは、緑地公園での出来事について話し始めた。
あたしは来る途中に大体聞いたからどうでもいいんだけど、やっぱり気になるやつは気になるみたいで、かことあきらの質問が一番多かったかな。フェリシアとか衣美里がどうとかそんな感じ。
意外かもしれないけど、その二人を気にしてたのはあの常盤ななかだった。
「お二人共、良かったのですか? チームの方針としては参加しないことにしていますが、個人となれば別ですよ」
珍しく、心配するような声だった。
あいつはさ、ああ見えても仲間ってのを信じてる。だから聞いたんだと思う。
「今さらなに言ってるのさ。ななかも言ったでしょ? ボクら、チームだよ」
「はい……私たちが加入しないでいることに意味があるのなら、その選択をしたいです……!」
「……ふふ、わかりました」
元々あたしへの復讐のために集めたはずなのにね。なんでこうなってるんだか。あんたも、あたしも。
なんて柄にもないこと考えたら、あの小動物の顔が思い浮かんだ。
「そういえばあいつは? ほら、みととか、れいらとかせいか。あんた散々連れ回してたでしょ」
「彼女たちも加入組よ」
まあ、だろうね。言葉が通じればわかりあえるとか、通じなくても心を繋げれば理解しあえるとか言って、みんなが仲良くできたらいいなんて綺麗事を口にできるやつだもの。そりゃ、あの神浜マギアユニオンの理念に一致する。……それを否定する気もないけど。
その後もしばらくいつもの会合みたいに互助組織の話が続いて、大体終わったかなって時。くれはがそれに気づいた。今まで偶然にも死角に置いてあった箱に。
「……は、葉月……そのクーラーボックス……」
「お察しの通り、このはお手製のメロンアイスだよ」
「今後の話はここまでにして、休憩にしましょう」
取り出したのは緑のアイス。どこまで凝ったのか店で売ってるようなのが出てきた。前は毒々しかったけど、爽やかな色になってる。
テーブルにそれが並べられて、空気が死んだ。誰が最初に手を出すかで無言のせめぎ合いが起きてる。え、あたし? 食べるわけないじゃん。くれはに食べさせようとわざわざ置く位置を指定したんだし。
「食べないならあたしらからいただくよ」
あ。
って思ったのも一瞬。杏子とゆまがスプーンで口に運んだ。そういやこの二人が来てからこのはの料理のことを話してなかった気がする。
けど、一口、二口って食べてく二人に異変は起きなかった。
「おいしい!」
「妙に警戒してるからみたまと同類かと思ったけど、うまいじゃん」
「はあ!? だってこいつのだよ!?」
まさかと思って食べてみると確かにおいしい。癪だけど、料理をするようになったからよくわかる。これ、本気だ。
ちらりとこのはを見ると、得意気だった。葉月とあやめは苦笑いしてるけど。
「かなり頑張ってたからね~……おかげで親子丼とメロンアイスだけは大丈夫になったんだ」
「あちし、もう味見はイヤだよ……」
「アタシもしばらくアイスはいいかな……」
「二人には本当に感謝してる。……さあ、くれは」
あいつは自分からアイスを食べた。それで、目を見開いたかと思えば、真顔が崩れた。
「……おいしい」
「やっと、あなたの驚く顔が見れたわ」
あれは本当においしいものを食べた時の言い方。あたしだって何回かしか聞いてない。
まあ、味は悪くないから文句はない。でもさぁ……あいつの料理でそんな顔したってのがムカつく。だからくれはの顔を引き寄せて、宣言してやった。
「あたしがこれよりもっとおいしいの作るから!」
「いいわ。その挑戦、受けて立つ」
「くれはに言ってんの!」
絶対にあたしのほうがおいしくなるに決まってる。だって――……それは、言えないけど……。とにかく、負けるはずがない。当のくれはは「メロンソーダも合わせたいわね」なんて言っててぽけーってしてるけど、今に見てなよ。
「そうだ、これからも集まるのならウォーターサーバーみたいなものも欲しくなるわね」
「いっそのこと家にドリンクバーを設置してはどうでしょう?」
「それだわ」
「どうしよう美雨、これ本気で言ってるよ。そのうちボクらの理解の範疇を超えそう」
「……まあ、それだけ平穏が戻ってきたということヨ」
「ななかさん、そういうところあるよね~」
なんだかんだで、ななかも、このはもどっか似てるんだと思う。こういうとことか。だから気が合うんじゃない?
「というか、あんた今金欠でしょ。パンケーキの件で」
「……パンケーキ?」
かこの疑問ももっとも。常日頃アルバイトしてて、最近はまた増やしたくれはのお金がパンケーキで消えたなんて、文字通りおかしな話。
バカだよね~、くれはの知らないとこで杏子がゆまにした約束を律儀に守るのはわかりきってたけどさ、そこに見滝原の連中まで呼ぶんだもん。あたしら四人に更に四人。出費が倍になるわけ。
「いいのよ。ゆまが喜んでくれたから」
「うん、楽しかった!」
ま、本人がこれだし。いいんでしょ。
最近よく会うようになってる七瀬ゆきかってやつはトラブル体質らしいけど、こいつは自分から首突っ込んでくんだから慣れっこなんだ。
そのゆきかはトラブルを起こしてしまうから神浜マギアユニオンに入らないって言ってたらしい。一応ミラーズで共闘した仲だから、ななかやこのはが気にしてた。水名とリリアンナの交流会かなんかで忙しいみたいでタイミングが合わないけど、そのうち話をしてみるんだって。
でもさ、どうでもよくない? これ以上くれはに近づくやつが増えなくてもいいでしょ?
そう思って遠ざけられないかと話してみたら、なぜか話題の中心になっちゃった。
どこで出会ったとか、映画撮影の時に協力したとかそんなの。そん時に『どんなトラブルが起きても必ず助ける』ってくれはが言ったらしくて、全員に呆れられてた。ななかは「後日お話があります」だって。あっは、いい気味。
そんなこんなで、会合のように始まった集まりも、仲の良いやつら同士の会話になってった。
でも、今日はこれで解散ってわけにはいかない。言わなきゃなんないことと聞かなきゃいけないことがある。
「……それで、佐倉さんはいつ頃? 見送りには私たちも参加しますよ」
「寂しくなるわ」
「見送りって……大げさだな。長めの旅行ぐらいのつもりでいてよ」
集まった理由はもう一つ。杏子とゆまがしばらく神浜を出ることを伝えるため。杏子は別にいいって言ってたけど、くれはがどうしてもって言うからななかたちにも伝えたんだ。
「行き先はやっぱり見滝原と、えーと……風見野だっけ? 元々そっちで活動してたんだよね」
「別に魔法少女が移動することは珍しくないけど、テリトリーがどこもあるからね~……大丈夫?」
「そりゃよくわかってるよ。だけど、こいつはちょっと必要なことなんだ」
その内容までは言わなかったけど、あたしらは知ってる。
時々向こうに戻ってるうちに、ゆまの祖父母がいることがわかったんだってさ。ゆまは杏子と一緒にいるって言うし、置いてくつもりなんてないけど、それでも、家族ってとこに思うものがある。だからしばらく神浜を離れて今後の身の振り方を考えてみたいらしい。
それと、杏子は絶対に言わないだろうけど学校に通うことも考えてるだろうね。ゆまも同年代の子たちが通ってて羨ましがってるし。面倒なとこは美雨の『偽装』で解決するからさっさと言えばいいのにね?
「ゆま、なんかあったらあちしに言え! 助けに行く!」
「だいじょーぶ。ゆま、帰ってくるまで泣かない!」
「困ったらいつでも戻ってきて。力を貸すわ」
「元々あたしが力を貸してたはずなんだけどな。……頼りにしてるよ」
まーた安請け合いしてる。
ああやって面倒事を引き込むのは全然変わんない。変な行動はするし、趣味だってどうなってるんだかわかりやしない。
……でも、それが帆秋くれはなんだ。
本当に、運命ってのは不思議だよね。
瀬奈を失って、魔法少女の真実を知って、くれはの記憶を封じて全部壊れちゃえばいいって好き勝手やってたのに、あいつはそれでも手を伸ばして今じゃこんなことになってる。
永遠なんてのはこの世にないけどさ、それでも、もう少しだけ……あんたと一緒にいさせてよ。
「どうかした?」
「……あはっ! なんでもない!」
ねえ、くれは。
1点、独りで突き刺す。
2点、ふたりで切り裂く。
3点、角が取れ始めて、円に向かって丸くなってゆく。
「そういえばくれは、青いリボンが増えてるけど」
「これ? ……前にね、友達がくれたのよ」
魔法少女が紡ぐ柔らかな円。
それは、きっと、また広がっていく。
■最後の内容
『環になって神浜』
■神浜マギアユニオン
神浜の魔法少女たちによる互助組織。
第二部における主人公勢力。
■くれはちゃん
ユニオン未加入ななか組・アザレアルート突入。第二部アナザー組と化した。
メンバーを増やさないと加入しない面倒なタイプの加入条件キャラ。
■ななか・アザレア組
組長とこのはの考えが変わってるので明るめ。
既に第二部第1章アナザーの短縮フラグが見える見える……早いぜ。
■原因
・組長に頼りすぎた。
・ななか組と行動しすぎた。
・このはと料理教室に通うなどイベントを起こしすぎた。
・アザレア組に助けてもらったり家に入れたりしすぎた。
・何度も会合を行っていた。
・そもそも組長とこのはが信頼度トップ10に入っている。
・ゆきか。
・ガバ。
■ななか組の行動
・『新たな風、そして』 組長
・『ユメミルサクラ 前編』 かこちゃん
・『巣立ちは空を見上げて 後編』 美雨
・『忘却の輪舞曲は久遠に眠る 前編』 あきら
■トップ10のみなさん
観鳥さん、帆奈ちゃん、このみちゃん。
みゃーこ先輩、組長、このは、莉愛様、なぎたん、杏子ちゃん、ゆまちゃん。
■ゆきかちゃん
大体の原因。ギリギリでユニオン未加入ルートに引きずり込んだ。
ぐーんと信頼度が上がったが、元々避けてたのでそこそこ程度(20位代)で収まった。ガバ。
■莉愛様
なぎたん以上このは以下? なんでこんな位置にいるのかわからねぇ!
一歩間違えると莉愛様とモデル業に励むルートに突入していた。
■後日談
『ユメミルサクラ』 ~ 『環になって神浜』まで。
本来はここに『巣立ちは空を見上げて』が入るぐらいなのに、結成後のイベント(輪舞曲、桜の轍)が紛れ込んでいるため異様に長い。
おしまい。