マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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NEXT CONNECTION 中編②

 実のところ、亜里紗は午前中に学校を抜け出していた。

 遥香との念話で一人にしておいてほしいと言ったことは嘘ではない。だからこそ授業を受ける気になどなるはずもなかった。

 

 魔法少女の身体能力に任せて窓から飛び出ようものなら千里がうるさく叱ってくるというのに、今日は静かで張り合いがない。制服のまま街に出ても念話すら来ない。昔に戻ったようだ。

 ゲームセンターに行っても良かったが、昨日の出来事を思い出すと自然と足は別方向へ。『詩音』の表札がある家に来ていた。

 

「……って、なにしてんのよアタシ」

 

 他人の家の前で立ち止まり、見上げるなど不審者そのものではないか。

 第一、このまま千里と出会ってどうするというのか。珍しく休んだのを心配して来たなんて面と向かって言えないし、抜け出して来たことが丸わかりだ。それに亜里紗だって事実を受け入れられたわけではない。

 

 やはり適当に時間を潰そうと振り返ると、ちょうど通行人がいる。眼鏡をかけた男性であった。

 

「お客さんかな? もしかしてチサトの……」

「あ、いや、その……」

 

 口ぶりからして彼が千里の父親だろう。少し雰囲気が近い。

 そう思うと、亜里紗はなんとなく、いたたまれなくなった。

 

 直接の面識はなかったが、どういう人物なのかは千里から聞いていた。彼が『願い』の理由だということまで一方的に知っている。

 走って逃げたらさらに変だと思って言葉の続きを待つと、どうやら千里は出掛けたらしい。どこに行ったかまでは知らないようだ。

 

 家に上がって待っていてもいいという誘いを断って、亜里紗はまた歩き出す。

 

(あれがチサトのパパか……)

 

 思い出すのはそれを聞いた日のことだった。

 

 詩音千里が願ったのは父親の更生。

 絵本作家だった父の本は最初は注目を浴びていたが、段々と売れなくなり、遂にはどこも出版してくれなくなった。酒を飲み家族に当たり散らしても、母はまた絵本を描いてくれることを信じて働いて支え続けていた。その無理がたたり、母は身体を壊して亡くなった。さらに荒れた父の怒りの矛先は当然、千里だ。

 

 そこで千里はキュゥべえに願った。優しくて立派な父親に更生させてほしいと。今では家事を二人で協力して行っていたり、先ほどの雰囲気から言って叶っているのだろう。

 

 ただ、絵本を描くことはなくなった。

 かつて千里が亜里紗に吐露したのはその後悔だった。暴力を受けてもなお、彼女は父親を変えてしまったことを気にしていた。

 

 だから亜里紗は「チサトは悪くないじゃない」と彼女を肯定した。特別なにか考えがあったわけではない。単純に、そう思ったからそう言っただけだ。

 うぬぼれてるわけではないが、きっと、千里はその『願い』を今は後悔していない。価値を見出せているはずだ。

 

 そう考えると、亜里紗は自分がみじめに思えた。

 

 一年前の亜里紗は今のような不良で快活な少女ではなかった。髪型はおさげで、一人称も"私"。はっきりと意見を出せない負ける側の人間だったと自分では思っている。だからずっと一人だったし、イジメられていた。

 

 そして、待っていたかのようにキュゥべえが現れた。  

 亜里紗の『願い』は、強くなって皆を見返すこと。言い換えれば魔法少女になること自体だ。だから固有魔法も『身体強化』というシンプルなものになっている。ただ純粋に力を求めた結果だろう。

 それゆえ、魔法少女の真実を知った時には心の底から後悔した。願った当時はそれ以外に考えられなかったのに、今思い返せばなんてバカなことをしたのかと自分を責めた。人を辞めてまで手に入れた、たった一度の奇跡をそんなもののために使ってしまったのだから。

 

 今が変わっても『願い』は変えられない。自分に降りかかる運命もそのままだ。泣き疲れてもずっと、その棘は心に刺さり続けている。鈴音の行いが少しは理解できるような気さえしていた。

 

 俯きながら歩いているとさらに気分が落ち込んでいくようだが、顔を上げる気にもならない。

 しかし、そのおかげで気づけたことがあった。

 

「これ……」

 

 通り道から離れた場所に魔法少女の反応を感じた。これは千里のものだ。

 

 亜里紗は顔を上げた。

 今度は逆に自分のこの感情を吐き出したら、彼女はなんと言ってくれるのだろう。そのぼやけた願望を持ってそちらに近づく。もう大体のことは知られている。昨日だって送ってもらっていて、散々泣き顔を見られていた。今さら隠すことはない。

 

 千里を見つけたのは廃工場だった。魔法少女の青い衣装で背中を向けている。向こうも亜里紗の接近を感知しているはずだが振り向かない。

 

「なーにやってんのよ。魔女の反応なんてないでしょ? いそうだけど」

 

 自主練か、はたまた鬱憤晴らしか。その答えは振り向きざまに向けられた青い銃が示していた。

 銃弾が亜里紗の足元を弾く。反射的に変身して鎌を構えてしまうも、すぐに腕を下げた。その行動を見る目が冷たかったからだ。

 

「待ってたわよ。連続殺人事件の犯人。そして、キリサキさんの正体……!」

「……は?」

「とぼけても無駄。死因の切り傷はその鎌でやったんでしょう? 魔法少女ばかりを狙って……許せない」

「ちょっとチサト、なに言ってんのよ。冗談キツいわ」

 

 千里はこういった冗談を言わない。そうでもなくとも向けられる殺気からして冗談などではない。状況が理解できずに思考がフリーズする。それでも、咄嗟に念話をするという判断はできた。

 

(ハルカ、マツリ! 誰でもいいから答えて! チサトがおかしい! こっちに――)

 

 次の銃弾は頬を掠った。

 

「これでもまだ白を切るのね」

「な、なに言ってんの……」

「あなたの罪、ここで償いなさい」

 

 冷たい銃身が亜里紗に突きつけられる。

 

 これは、違う。

 亜里紗の知る千里であるが違う。風紀委員で、真面目で、優しいあの千里にしてはあまりにも容赦がなさすぎる。

 

 次に撃ってきた銃弾は、避けなければ眉間を撃ち抜いていた。今だって躊躇なく攻撃してきている。

 

「やろうってんなら!」

 

 しかし、迎え撃つために前方に飛び込んだ。

 ごちゃごちゃ考えるのは性に合わない。もとよりここを離れる選択肢は亜里紗にはない。逃げるのはありえないし、どういうことか聞き出さないと気が済まない。

 

 それに一つ別の可能性を思い浮かべていた。神浜市では他人の姿で出てくる謎の存在がいた。魔法少女をコピーする魔女もいるらしい。それに類するなにかが千里を騙っているほうがありえる。だとすれば殊更逃げ出すなどありえなかった。

 

 絶え間なく放たれる銃弾を鎌で弾き続ける。距離を詰めたところで千里の戦闘力が落ちるわけではないが、まずは当てられる範囲に行かなければ話にならない。

 これが魔女との戦いであれば『身体強化』を使って高速で接近するだろう。だが、それをすれば途端に不利になる。『身体強化』は魔法の効果。すぐに千里に消されてただだた無駄に体力と魔力を消費するだけだ。実際、それで一度負けているのだから同じ轍を二度は踏まない。

 

 首尾よく近づけたなら手足を狙って鎌を振るう。ソウルジェムが本体だと知った今では胸元にあるそれに近い部位を攻撃するのは戸惑う。かと言って、手足の一本ぐらいなら刈っても大丈夫とも思っていない。

 

 振る速度は速いが避けられ続ける。そのまま攻め続けるも、矛盾する行為が隙となった。振り下ろした瞬間に外側から押さえつけられて銃身が亜里紗の目の前に来る。顔をずらすもそちらは囮。迫る膝蹴りに距離を取るしかなかった。

 

「……アンタ、本物じゃん」

 

 幾度も攻防を続ければ嫌でもわかる。動きも癖も全て同じだ。偽者という線は消えた。

 

「なにわけのわからないことを……」

「本当にアタシのこと覚えてないわけ?」

「当たり前でしょ!」

「じゃあ、アンタなんなら知ってるの!?」

「アンタアンタって、さっきから馴れ馴れしい! 知ってるわよ、ソウルジェムのことだって! 手加減ばっかりして……!」

 

 千里は己のソウルジェムを見た。先ほどからの亜里紗の攻撃が意図的にそこを外しているのに気づいていたのだろう。どうやらそういう記憶は同じらしい。

 

「やってることも理解できなくはない。こんな悲しみを広げないで済むのなら、それもいいのかもしれない。でも、キュゥべえがいる限り終わらないって気づかないの!?」

「アタシに言われても知るわけないでしょうが……!」

「……もう、容赦はしないわよ」

 

 千里の攻撃が一段と激しくなった。先ほどのように避けると、避けた先に銃弾がある。明らかに殺意が増した。

 それに、もう一つ違う点がある。

 

「ウソ……っ!」

 

 跳弾が背後から迫ってきたのに気づいて血の気が引いた。今までは人体の急所を狙うだけだったからまだ良かった。亜里紗のソウルジェムの位置は背中。千里は本気で殺しに来ている。

 鎌を一回転させるようにして弾くと、ちょうど互いの視線がぶつかった。

 

「それをやったら同じでしょ……殺すとか、チサトらしくない」

「……魔法少女が魔女を生むなら、みんな死ぬしかない」

「それがアンタが出した結論ってわけ!?」

 

 亜里紗の顔が歪む。ぎり、と音を立てて歯噛みした。

 やはりおかしい。さきほどから一貫性がない。記憶があったりなかったり、鈴音を否定するようで肯定する。これが魔女の仕業だとしたら今すぐその魔女をぶっ潰したいと心の底から憤怒した。

 

 亜里紗は『願い』に価値を見出せてはいないが、魔法少女になってから起きたこと自体には感謝している。特に、詩音千里と出会えたことに。

 力を得ても好き勝手に振舞うばかりで孤独だった亜里紗に手を伸ばしてくれたのは千里だ。世界を変えるのに力のあるなしは関係なく、自分自身の問題だと気づかせてくれたのも千里。茉莉と遥香に会わせてくれて四人でチームを組むようになったことさえ。

 

 もしも、鈴音と戦った千里が死んでいたら。きっと昔に戻っていた。力を思うがままに振るって、満たされぬ渇きを再び味わうこととなっていただろう。

 

 だがまだ千里はそこにいる。様子がおかしくとも、生きている。ならば動ける。これは亜里紗に限った話ではない。例えここにいるのが茉莉でも、遥香でも、そうしただろうと亜里紗は信じている。

 

「忘れたんなら思い出させてやる! 立ち回りも、能力の使い方も! 全部アンタが教えてくれたんだって!」

「……もう話すことはないわ」

 

 向かい合ったまま両者が二丁拳銃と鎌を構える。

 

「チサト相手に使うことになるとは思わなかった……」

「来る……ぐッ!?」

 

 頭を抑えた千里が一瞬の隙を見せる。

 先に動いたのは亜里紗だった。

 

「見てなさいよ……――『最大出力(フルブースト)』ッ!!」

 

 全身に魔法が流れる。限界を越えた余剰魔力が桃色の稲妻となって放出され始めた。

 この『最大出力(フルブースト)』は飛躍的に身体能力を向上させるが、代償として著しく体力と魔力を消耗する。倒れるだけで済めばいいが、最悪――。ゆえに、この使い方を千里からは禁止されていた。それでも元に戻す覚悟を込めるにはこれしかないと決意した。

 

 もう亜里紗は昔のままではない。千里に負け、茉莉と遥香と出会って四人で戦っていくうちに理解できていた。己と味方の優位性と弱点は熟知している。

 

 ここまで『身体強化』を使わなかったのは効果を消されると知っていたから。

 ならば、消される前にケリをつければいい。千里の魔法の弱点はそこ。いくら相性最悪の魔法を持っていようと、自動発動でないのだから対象を認識できなければ意味がない。むやみやたらに発動される前に攻撃を叩き込む。

 

 亜里紗が一歩踏み込む。既に眼前。この速度に千里は反応できない。それも当然だろう。これは、あの鈴音でさえ追いつけない境地なのだから。

 

「今すぐ戻してやる! だから喰らえぇぇぇッ!!」

 

 なにも根拠はない。それでもこの奇妙な状態は戻してみせる。

 飛び込んで放った蹴りが千里を吹き飛ばす。地面に落下するよりも速く地を駆けて追いつくと、鎌の柄を思いっきり叩きつけて地面に倒した。そこに馬乗りになって、鎌をソウルジェムへと近づける。時間にしてみれば数秒もないことだった。

 

 全身を走る稲妻が消える。一手遅れて千里の魔法が発動していた。

 

「……は、はは……詰みよ……! 大人しく――」

「まだ甘いって、アリサ」

「んなっ!?」

 

 足首を掴んで捻られる。魔法少女の力でそれをやれば放り出すことは簡単だ。またも二人の間に距離ができる。

 位置は仕切り直し。されど、体力と魔力の消耗が大きい。これ以上の戦闘を続けたら――と、亜里紗の脳裏にあの光景が過ぎった。異形となった椿と、叫ぶ鈴音。

 

「……一旦退かせてもらうわ」

 

 それを思うと、背を向けて去っていく千里を追いかけることができなかった。

 

「チサト……」

 

 遅れて出て行った方向に向かう。もう誰もいない。

 遠くを見つめる亜里紗が気づいたのは足元にグリーフシードが転がっていることだった。

 

「はん、アイツも焦ってるんじゃん。逃げるのに必死だったんだ」

 

 おおかた回復しようとして落としたのだろう。最後に見た時はまだ余裕があったというのに几帳面なことだと、自分のソウルジェムに使いながらひとりごちる。

 

 あの鈴音もまだ許してはいない。だが、それよりも。

 

「どこの誰だか知らないけど、よくもチサトを弄ってくれたわね……絶対、ぶっ潰す……!」

 

 変身を解除した亜里紗はまた、歩き出す。いまだに連絡のつかない遥香と茉莉を探そうと街に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 図書館で魔女の結界に引きずりこまれた遥香の戦況は芳しくなかった。

 

 まず相性。プレゼントボックスのような魔女の攻撃は黒い水による遠距離主体で近距離武器の遥香では対処しにくい。双剣形態ならば衝撃波を飛ばせるが、補助的なもので肝心の威力がない。

 次に、単独であること。遥香の固有魔法は『魅了』。契約の根底にあった自分を見て欲しいという欲が象徴された、対象の攻撃を自分に引き付ける魔法。一人で正面から戦うには意味がなかった。

 

 攻撃を避け続けるばかりの状況に不安が増していく。撤退しようにも出口らしきものは閉ざされているし、最深部から戻るまでに使い魔の群れと戦うことになるだろう。

 ずるずると戦闘を引き延ばしていけばソウルジェムの穢れが増していく。目の前の魔女が元は自分と同じ存在だと思うと、それがまた動きを鈍くした。

 

「しまっ――」

 

 判断が遅かった。避けきれない。

 衝撃に備えて体勢を整えるも、来た感触は見た目そのままの水に落ちる感覚だった。

 

 気づくと周囲は一面の黒。ところどころに目を模したマークが浮かび、それが一様に遥香を見つめる。手足を動かして逃げようにも水を掻くばかり。ダブルセイバーを振るっても水の抵抗を感じるだけで効いている様子はない。不思議なことに呼吸はできるが、それが逆に危機感を募らせた。

 

 ある意味では予想通りに次の攻撃が始まる。暗い闇に浮かび上がるのは遥香の過去。姉への嫉妬と後悔を一から思い出させようとしている。

 遥香はキュゥべえから聞いていた。ソウルジェムの穢れは精神面の不調でも増えていくと。ならばこれは精神へダメージを与えることで同族に引き込もうとする魔女の策略。乗り越えられない過去と加速度的に増していく魔女化への恐れが一緒くたに襲う。周囲の水を吸い込むように、ソウルジェムがみるみる黒くなっていく。

 

 しかし、黒の空間に光が射しこんだ。

 

「ハルカぁぁっ!!」

 

 それはガントレットから放たれた光だ。頭部の飾りに円を浮かべて『探知』をフル作動させた茉莉が自ら魔女に突っ込んできていた。

 茉莉は同じように光を射出する。それを推力に遥香に近づくと、背を向けてから振り向いて言った。

 

「大丈夫、マツリに任せて」

 

 両手のガントレットが二人の前に緑色をした球状のフィールドを作り出した。そこに光が溢れ、内部を駆けまわってはひたすら衝撃を生み出す。水中に似たこの場所でそれを行ったのは直感。ただ、こうすればより強い推力となって脱出できる気がした。

 十分にエネルギーが溜まったと見るや否や、茉莉は遥香を抱き抱える。フィールドを割った光が背中に強い衝撃を与えて、外へと押し出した。

 

 黒い水が降り注ぐなか着地すると、既に結界の崩壊が始まっている。どうやら黒い水とは魔女本体の内部だったらしく、茉莉の脱出方法がそのまま致命傷を負わせたらしい。

 二人はそのまま崩壊を見届けると、元の場所から少し離れた薄暗い書庫のような場所にいた。

 

 ぺたりと座り込む遥香のソウルジェムを見て、茉莉はすぐに持ってきていたグリーフシードを使う。  

 

「……ありがとう。でも、スズネと話に行ったんじゃ……」

「そのつもりだったけど、ぐにゃ~ってして気が変わったんだ。きっとハルカが心配するだろうなって」

 

 遥香の表情はほんの少しだけ柔らかくなったが、すぐにこわばったものに戻ってしまう。

 それに、少ない言葉でも茉莉の聞き慣れた声ではない。だからその隣に座って話してくれるのを待った。茉莉が手を握ると、小さく震えていた。

 

「見たのね」

「うん」

 

 黒い水の中では遥香の記憶が映し出されていた。突入した茉莉が見たものも同じ。夕暮れの公園でブランコに座る幼い遥香。キュゥべえに願った内容。そして、その結果どう行動したのか。全て見てしまった。

 

「幻滅したでしょう? 完璧な生徒会長なんてまやかしなの。偉いことを言っておいて実態はこれ。結局、私は完璧なんかじゃない……そうしなきゃ心が保てなかっただけの、自分勝手な人間なのよ」

「ハルカ……」

「ごめんなさい。自分のためにあなたたちのリーダーとして好き勝手にしていた。チームから抜けたいと思うのなら、そうしてくれて構わない。いえ、解散を――」

「違う、違うよ!」

 

 茉莉は遥香の両肩を掴んだ。今まで見ていた憧憬よりも小さいそれに、はっとする。気がつけば裏もなにもない本音が口をついて出ていた。

 

「マツリはハルカが好きだよ。たとえアリサみたいに寝坊したり勉強が嫌いだってサボってても。マツリはね、完璧だから好きなんじゃないの。一緒にいてくれる優しいありのままが好きなんだ」

「……あなたにはわからないかもしれないけど、それが自分勝手なの。その優しさも結局は我が身可愛さの保身なんだから」

「だから、なに」

「え?」

「テスト前とか、ハルカは大丈夫なのに付き合って教えてくれた。アリサとマツリはとっても感謝してるんだ。チサトだって、嬉しそうだった。それだけじゃない! 自分勝手な行為だと思ってても、助けてくれたことは嘘じゃない!」

 

 それはまっすぐな言葉だった。痛いくらいの眩しさが、遥香にとっては過去に置いて忘れてきたもののようで、耳に浸透していく。

 

「きっとね、誰かを助けるのは全部自分勝手なんだよ。助けてほしくないって思ってる人でも、マツリが助けたいと思ったら助けるもん。チサトが前に言ってたよ。どんなに力があっても一人じゃどうにもならないことがあるって。それって、魔法少女としてだけじゃない、人が生きることそのものだと思うんだ」

 

 凝り固まっていた認識に光が触れた。誰にもその理由を言えなかった今までの行為を肯定してくれたようで、遥香の目じりに涙が浮かんだ。うまく呼吸できなくて嗚咽が漏れた。

 

「それでも、私が願ったことは許されるものじゃない……」

 

 しかし認識が変わろうと、過去はずっと遥香を責め立てる。姉を消したことは未来永劫変わらない。期待されていた分の重みがそのままのしかかってくる。

 茉莉は手を離して座りなおすと、薄暗い天井を見上げて言った。

 

「……マツリね、一人っ子だからお姉さんの気持ちはわからない。いなくなった人のことも。でも、妹の気持ちは少しわかるんだ。ここにいる、ハルカのことだって」

 

 少しわかるという理由はチームの中で一番年下だからだろう。遥香自身、幼い自分に姉はこうやって接していたと思い出すこともあった。

 

「魔法少女の真実とか、魔女化とか、重たいことはいっぱいある。でも、マツリたちならきっと乗り越えられるよ! チサトとアリサに話しづらいならマツリがサポートする。みんなで考えよう。考えて、生きるんだ」

 

 無責任だ。なんの解決にもなっていないし、ならない。だが、その計画性のなさに賭けてみたいと遥香にしてはらしくなく、そう思った。だから、息を吐く。今までの重みは変わっていないが、支える力が増えたように感じた。

 そして横を見ると、茉莉が微笑んでいた。

 

「どうして、私にそこまでしてくれるの」

「……"誰か困っている人がいたら、助けてあげてくださいね"。誰に言われたのかは覚えてないんだけど、マツリの中ではとっても大切な言葉なんだ。だからマツリも、誰かを助けたい」

 

 茉莉は魔女化のこともソウルジェムの真実も同じタイミングで知った。されど、こうして手を伸ばすことができる。

 

 希望と絶望の相転移。それには絶望から希望への引き上げも含む。

 姉が好きだったからこそ嫉妬を生み出したように、一度絶望の淵に立った遥香が希望へと引き寄せられるのは必然であった。

 

 それに、気持ちが前向きになったことで思い出したことがあった。神浜市で訪れた神浜現代美術館。記憶を手繰って出てきた名前は梢麻友。確か、アルバイトをしている人だったと遥香は覚えていた。

 

『くれはちゃんと出会ったんですか? 彼女は――』

 

 呼んでもいないのに現れては勝手に助けていく人の話を聞いた。それはまさしく、自分勝手。なのに空穂夏希や江利あいみが言う印象は"それでも良い人"。なんだか、それが今の自分と重なるようで重ならない。

 

「……そうね、私たちはこれからじゃない」

 

 だから遥香はもう少し世界を見てみることにした。はたして姉は本当に全て万能だったのだろうか。完璧であることは、過去を見ているようで向き合っていなかったのかもしれない。

 

 遥香は立ち上がると、壁にかけてあった時計で時間を確認した。

 

「閉館時間ギリギリよ。出ましょう?」

「……うん!」

 

 それは茉莉のよく知る声であった。出口を探して見つからないように外に出るなんて行為は滅多にないことだったが、それが茉莉をさらに笑顔にさせる。

 

 外はもう日が落ちている。随分と長く図書館にいたようだ。

 並んで歩く帰り道。広々とした公園に差し掛かったあたりで、先に口を開いたのは茉莉だった。

 

「あの黒い水、マツリも聞こえたものがあるんだ。ひょっとしたらハルカにも聞こえてたかな?」

「私は自分ので精一杯だったわ。どんなものだったの?」

「絵本の読み聞かせ。それで思い出したんだ。昔、読んでもらったお気に入りの絵本があったの。……ハルカは知ってるでしょ? マツリの『願い』」

 

 茉莉が願ったのは『視力の回復』。生まれてからずっと目が見えなかった茉莉はキュゥべえと契約して魔法少女になってから世界を見たのだと、遥香に語ってくれたことがあった。"聞こえた"と言ったのは、記憶に映像がなかったからだろう。

 確かめるために契約する前の話かと遥香が問いかけると、茉莉は首を縦に振った。その行為が、なにかを繋げた。

 

「……読み聞かせ、よね。その声、誰だか覚えてる?」

「それはパパが……違う、あの声は女の人だった……あれは……」

 

 茉莉のその話で遥香も思い出した。そもそもなぜ図書館に来たのか。その理由を。

 

 今にして思えばなにかがおかしい。遥香が調べに来た理由はキュゥべえが見せた映像にある。目的が鈴音を倒させることならば、魔女化は教えないことが一番良い。不信感を抱かせずに勝手に潰しあうだろう。それがかえって警戒させてしまっている。

 

 遥香は考えを巡らせる。

 キュゥべえが言ったことは二つ。『被害が増えていくのは望むことじゃない』。『同調して味方するかもしれないが、遥香たちはしない』。昔、契約した時の経験と魔法少女の真実を黙っていたことから、キュゥべえは意図的に隠し事をすると確信していた。これにもきっと裏がある。

 

 そもそもあの映像。見せるのは魔女化のシーンだけでもいいはずだ。それがなぜか日常の風景まで混じっている。

 まるで、ヒントを与えるかのように。

 

「……マツリ、一つ聞きたいのだけど」

 

 その答えの一端を遥香は既に持っていた。結界に飲み込まれる直前、どうにか制服の胸ポケットにしまったメモを取り出して広げる。書かれていた名前は『日向 源次郎』。茉莉の父親だった。

 

「スズネと一緒にいたツバキという女性は、おそらく美琴椿という名前なの。記録じゃあなたの家で住み込みで働いていたことになってる」

「……え」

「もしかして、彼女に読んでもらったんじゃないかしら?」

 

 聞き取り調査を受けていたのは茉莉の父。行方不明になった時期的にも年齢と当てはまる。調査の結果と茉莉の言葉から導き出したことだ。

 

「わからない……でも……」 

 

 映像で見た椿の笑顔が、茉莉の脳裏を過ぎった。

 

 ここまで茉莉が絶望も失意もせずに行動できたのには理由がある。心にまったくの影響がなかったわけではないが、それを上回る『応援』が未だに激励を続けていた。 

 忘れているなにかがある。思い出さなければいけない。その一心で茉莉は奮い立っている。本来ならばそこで留まるはずの想起は、全力を込めた魔法が押し上げて記憶の蓋をこじ開ける。

 

 笑顔。

 なぜ、鈴音に向けられるそれを見ると得も言われぬ感情が湧き出るのか。

 

 黒い水で聞こえた声。

 どこか懐かしく、自分以外にも向けられたような言い方。

 

 遥香の調査。

 それはきっと、間違いではないとどこか確信を持っていて。

 

 魔法少女。

 『視力の回復』を願う前、自分はどうやって暮らしていたのか。

 

 美琴椿。

 その名前に聞き覚えがある。

 

 失踪。

 新聞にも載っているそれ。警察が家に来た気がする。

 

 そして、姉。

 どうして妹の気持ちがわかるのか。

 

『誰か困っている人がいたら、助けてあげてくださいね』

 

 全て、繋がった。

 

「そうだ、神浜で――!」

「早いなぁ……余計なことしすぎだよ」

 

 背後。第三者の声が混じった。

 

「ただいま」

 

 暗い夜道に現れたのは茉莉そっくりの少女。違いと言えば長い髪を二つの輪っかにした天女のような髪型と髪色。そして、正反対の蔑むような目つき。紫の魔法少女の衣装に身を包んだ、誰かがいた。

 彼女が発するのは殺気ではない。しかし友好的でもない。どろどろとした悪意が押し寄せてくるようだった。

 

「誰なの……!」

「答える意味はないかなぁ」

 

 少女が指を向けると、遥香はその場に崩れ落ちた。

 

「ハ、ハルカ……?」

「……? あれ、なんで私こんなところに……」

 

 すぐに起き上がるも、不思議そうな顔で周囲を見渡す。ここにいる茉莉と少女が一切見えていないらしく、茉莉がどれだけ呼び掛けても聞こえてもいない。手を握っても無意識に振り払ってくる。この場から去っていく遥香を止める術はなかった。

 

「なにが……」

「認識阻害と記憶操作。まあ、忘れてもらっただけだよ。マツリの必死な説得も決意も、マツリごとぜーんぶ。立ち直られると困るんだよねぇ。そのまま魔女化してもらうのが一番なのに」

「なんで……なんでこんなことするの!? カガリ!」

 

 少女――『日向(ひなた) 華々莉(かがり)』は、にたりと笑った。

 

「どいつもこいつも、ずーっと邪魔するんだもん」

 

 全てを思い出した今なら、茉莉にもその意味がわかった。華々莉は、茉莉の双子の姉は復讐のために動いている。ここで止めないといけない。変身する判断を下したのは一瞬だった。

 

「勘違いしないでね? 大事な妹と戦う気はないよ。マツリは記憶を消すだけにしてあげたでしょぉ? もう少しだけ待っててくれれば、全部終わるから」

「……マツリは? まさか……チサトとアリサにもなにかしたの?」

「今頃どっちか殺しちゃってるんじゃない? マツリたち、ずっと固まっててスズネちゃんが狙いにくそうだよ。もう少しバラけてくれなきゃ」

 

 次の言葉を紡ぐ前にガントレットが華々莉に向けられる。光が収束し始めていて、いつでも撃てるようになっていた。

 それを見て、華々莉は嫌な笑顔を向けた。

 

「ねえ、マツリ……なんであなたまで計画の邪魔するのかなぁ……大事な妹でも、限界があるんだよ?」

「だったらもう止めて。こんなこと、これ以上――」

「だーめ。おやすみ」

 

 指が空気を弾く音。それで、茉莉の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向華々莉は、天乃鈴音に復讐するためだけに魔法少女になった。

 

 事の始まりは日向家で働いていた美琴椿が去っていったことだ。早くに母親を亡くした姉妹にとって椿は第二の母親のようなもの。懐いていた二人にはいなくなったことが信じられなかった。

 

 探しに行こうとするも茉莉は目が見えない。華々莉が妹を心配して連れていくいかないの喧嘩になり、そこに目をつけたのが――

 

「ねぇ、キュゥべえ」

「なんだいカガリ」

 

 茉莉を気絶させた後、華々莉はホオズキ市を一望できるビルの屋上に移動していた。深夜であっても街は輝いている。その光が華々莉の瞳に映った。

 

「映像を見せてって言ったのは私だけど、余計なものまで見せてないかなぁ?」

「なにが余計かはボクとキミで認識が違う。答えられないよ」

「怪しいのは昔から変わんないね」

「ボクから言えるのは一つ。交わした協力関係を忘れてないだろうね」

「脅しのつもり?」

 

 華々莉がキュゥべえと交わしたのは、魔女化してエネルギーとなる代わりに鈴音を追い詰める手伝いをしろというものだった。華々莉は魔法少女としての適正が高く、鈴音が殺して消滅した得られるはずだったエネルギーの代替になれるとキュゥべえも承諾している。

 

「計画は破綻している。今の鈴音を見ればわかるだろう? まだ余裕があるじゃないか。そして、神浜市で起きた出来事がキミの存在へと近づけているんだ。時間切れも契約の破棄の条件だと思って欲しいな」

「そうかなぁ。もう結構進んでるよ。感情がないとそんなこともわかんないのかな」

 

 軽い口調だったが内心は真逆。

 全ては、天乃鈴音が悪い。

 

 椿が日向家から去っていったのは、鈴音を保護したから。

 椿が魔女化したのは、鈴音を優先してグリーフシードを使わなかったから。

 椿がなにも遺してくれなかったのは、鈴音が奪い取っていったから。

 

 全て、全て、全て、鈴音のせいだ。だから華々莉はキュゥべえと契約した。

 お誂え向きに精神を弄れる魔法を手に入れて、記憶と精神構造を書き換えて暗殺者に仕立て上げた。魔法少女を自らの手で殺させて孤独に陥らせ、椿が受けた苦しみと共に魔女化させたい。そのためにずっと暗躍している。

 

 だというのに、またも鈴音は思い通りに動かない。

 

 魔法少女を殺そうと神浜市に向かったまでは良かった。だが、簡単に魔法で騙されて撃退されてしまった。

 二度目だってそう。殺せないだけならまだしも、茉莉は封じられた記憶を取り戻してしまうし、鈴音と出会ってしまう。それに記憶を弄る対象が多すぎて満足のいく書き換えができなかった。それもまた、最初に鈴音が首尾良く殺せていれば起きなかったこと。

 

 華々莉を支配し、突き動かしているのは半ば言いがかりじみた感情だ。

 そして、同じくその感情で動いている者がいた。

 

「いるんでしょ」

「気づいてたんだ~?」

 

 彼女もまた、鈴音が呼び寄せた。

 華々莉と同じく紫の魔法少女衣装を纏う、更紗帆奈がそこにいた。

 

「……にしても、姿は出してなかったと思うんだけどぉ。よくわかったね」

「詩音千里の頭を弄って、奏遥香のもとに魔女を送り込んだなんて派手に動けばバレるでしょ? あはっ、考えもしなかった?」

 

 二人の間に漂う不穏な気配を感じ取ったキュゥべえがその場を離れようとする。見逃されるはずもなく、帆奈が杖から放った紫の稲妻に焼き焦がされた。

 

「神浜じゃ魔女を操ってたんだって? 私もできるって教えてくれて、感謝しないと。でも……スズネちゃんを殺そうとしたのは許せないかなぁ。なんでそこまで狙うの? 関係ないでしょ?」

「あんたにとっての椿とやらと同じかなぁ」

「ふーん」

 

 華々莉は一瞬だけ思考の海に沈んだ。なぜこいつがツバキの名前を知っているのかと考えを巡らせる。

 鈴音の監視をする一方で、茉莉たちの動向はキュゥべえから聞いている。目の前の邪魔者は夜にしか現れず、映像を流した場にもいなかった。情報を入手できる手段は少ないはず。考えても堂々巡りが続く。確実な結果が出ない以上は遥香のように調べたのだと当たりをつけるしかなかった。

 

「ていうかあんたおかしいって。そんな回りくどいことしてさぁ。殺るなら殺るでさっくりやればいいのに」

「おかしいのはそっちでしょ。他の街にまで首突っ込んできて」

「は?」

「はぁ?」

 

 二人の衣装や考え方が似ていても根本的な部分が違う。

 そもそも帆奈の価値観自体はまとも。凶行に及んでいた頃でさえ、その方が面白いからと異常を理解する理性はあった。

 対して華々莉の価値観は鈴音への復讐で狂っている。その偏執ぶりは元からとも言えるだろう。異常を異常と思わず、心から正しい行為だと信じ切っている。

 

 それゆえ、帆奈が杖を構えて、華々莉がチャクラムを取り出すのは当然だった。

 

「あんたは邪魔しないでいればいいの! あたしが鈴音を殺すのを見てなよ!」

「やらせるわけないでしょ?」

 

 先手を取ったのは華々莉。高速で飛ぶチャクラムが杖を簡単に切断する。

 帆奈は意味をなくした杖を投げ捨てて新しく生成するも、妙な吐き気とめまいが襲ってきて立つのがやっとだった。

 

「あなたの魔法の性質は大体わかってるよ。神浜市じゃ使ってなかったけど、暗示ってとこだよねぇ」

 

 華々莉の魔法少女としての資質は帆奈より遥かに上。それはすなわち、実力差が激しいということだ。『暗示』のサポートなしでは手足が出ない。だから事前に使っていた。

 

「それで頭を弄ってるでしょ。弱いなぁ。反作用って知らないの? 私は自分には使わない。使うのはあなたの頭。一方的に痛みに苦しむだけだよ?」

「それは、あんたも……でしょ……! 魔法を使わなきゃあたしに敵わないくせに……!」

 

 苦しみながらも挑発する帆奈の誘いをわかっていて、華々莉はわざと精神への干渉を解く。そして受け入れるように両手を広げてみせた。

 

「やってみなよ」

「『動くな』」

 

 声に被せて使われた『暗示』は確かに発動した。それでも華々莉は見せつけるようにくるくると回ってみせる。

 

「こんなふうに、ソウルジェムを弄って聴覚をカットすればいいだけでしょ? で、それじゃダメでも――」

 

 新しく生成した紫のレイピアが帆奈を狙う。すんでのところで避けるも、今のは喉と肺を狙う動きであった。

 

 『暗示』は強大な魔法だが、弱点がないわけではない。そんなことはみことと一緒に検証していた帆奈だってよく知っている。命令を聞かせるだけ。それは簡単そうだが、聞かせなければならないのだ。ゆえにくれはは帆奈の口を止めた。戦闘中に複雑な命令を咄嗟に言うことはできないし、喉や肺をやられれば一時的に使用不可になる。華々莉は短い期間にそれを理解していた。

 

 ぶつかり合いをすれば負ける。自身の強化に相手の弱体化もできない。唯一、華々莉の精神操作を無効にできるという優位はあったが、それ以上に不利が多すぎた。

 

 帆奈は赤いマントを翻してジャンプで大きく距離を取る。着地して顔を上げると、ぎしぎしと歯ぎしりをしていて、殺意に溢れた表情が華々莉にも見えた。

 

「覚えてなよ……!」

「せいぜい無様に逃げたら~? 私はあなたなんてどうでもいいんだから」

 

 ひらひらと手を振って、鼻で笑って送り出す。

 そこに嘘はない。邪魔をしなければどうでもいい。最初から狙いは鈴音だけなのだから。

 

 華々莉だけになった屋上に、またも白い影が現れた。焦がされた自分を掃除するタイミングを見計らっていたのだろう。華々莉の冷ややかな目を気にもせず、あっという間に食べ終える。

 

「やれやれ、帆奈がホオズキ市に来るようになってから無意味に消費することが多くなった」

「じゃあ監視しといて。神浜市に入れなくてもホオズキ市はわかるでしょ」

「構わないけど、タイムリミットは近いよ」

「ああ、だったら大丈夫」

 

 口を大きく歪ませて、夜景を背後に宣言した。

 

「始めよっか、スズネちゃんの最後の舞台を」

 

 




■今回の内容
 帆奈ちゃん「鈴音が悪い」
 華々莉「鈴音が悪い」

■日向 華々莉
 遂に出てきたやべーやつ。未実装。
 契約から計画の実行までずっと暗躍していたどこかの誰かみたいな魔法少女。

■鈴音ちゃん
 知らぬところでとてつもなくヤバイ状況。 
 鈴音、なんとかしろ(無責任)。

■茉莉さん
 どうやったら絶望するの?
 ゆまちゃんといい緑色はメンタルがとんでもない。しかも強化済み。

■亜里紗・遥香
 着実にフラグを回避していく人たち。
 下手するとこの辺で死亡・魔女化する。

■詩音 功補
 最近名前が出てきた千里の父親。第2巻にいる。
 マギレコ内でもたびたび話に出てくるどころか『CROSS CONNECTION』で千里と亜里紗が神浜市に行った理由。絵本を描いた人。

■日向 源次郎
 最近名前が出てきた茉莉の父親。ナイスミドル。第3巻にいる。
 ヒゲでオールバック、スーツ。ネクタイは普通。魔法少女にはならない。

■戦闘不能時ボイス
 亜里紗の場合、「チサト……」と千里の名前を呼ぶ。
 他は
 決戦いろは ←→ 決戦やちよ
 月夜ちゃん ←→ 月咲ちゃん
 ほむほむ → まどか
 キリカ → 織莉子
 など。つまり亜里紗にとっての千里はその枠。

■???
 日向茉莉が魔女戦に参加する。
 奏遥香が神浜現代美術館に行っている。
 奏遥香が美琴椿に辿り着く。




 
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