マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
次のイベントの準備を進めるRTA、はーじまーるよー。
「調整屋にようこそ~! ちょうど空いてるからすぐに始められるわよ~」
ではさっそく、アザレアまでに獲得したグリーフシードやら経験値やらでステータスを上げます。もちろん攻撃力と速度以外いりません。あまりにも極端だと心配されますがヘーキヘーキ。
体力や防御力は当然多いほど安定しますが、後半使用する最終手段の妨げになるので使い魔の攻撃が痛くなってきたらでいいでしょう。
この今までも何回か出てきたいつも調整屋にいる人は、八雲みたまさんです。ステータスの割り振りや便利アイテムを売ってくれるサポート枠ですが、信頼度をそれはもう恐ろしく上げてひたすらグリーフシードを貢ぐことでやっと好き勝手に連れ出せるようになります。ですが別に強くはありません。通常プレイのやり込み要素みたいな人ですね。
なお、調整屋で販売されるアイテムの類は使いません。普通にプレイするなら活用するといいですが、入手のための手間と付随するロスが大きすぎます。もちろん買うわけね―よ! 詰まなきゃ絶対ムリだぜ!
「見て見て! ペスカトーレを作ってみたの!」
会話中、たまに料理を食べるように言われますが無視します。これを食べると良くて一日ロス、最悪の場合長期間に及ぶデバフ効果を受けます。
食べて♡
嫌です……。
なんで?(純粋)
という感じで見られますが無視します。奴はカレーを作ると言ったのにルーでカレーの絵を描くレベルのわけがわからない腕をしています。あまりにも無謀です。
ですがそれでも会話を続けているのには理由があります。
「おかしいわねぇ、ちゃんと料理教室で勉強したんだけど……」
このように誰かと料理に関して話していると『ウォールナッツの料理教室』の情報を手に入れられることがあります。これがアザレア終了時に必要だったので、ひたすらみたまさんに話し続けていたんですね。
別に帆秋ちゃんの料理の腕はどうでもいいんですが、この料理教室では参加する期間によって様々な魔法少女の信頼度を上げることができます。もちろんまなかちゃんも上がります。上がり幅も大きくうまあじです。
というわけでウォールナッツにのりこめー!
「……帆秋くれは」
今の期間に出会えるのは、先日散々刃をぶつけ合った静海このはです。
アザレアの行動次第では信頼度が下がっているのでその回復、そして今後のための信頼度上げに来ました。
彼女も相当な料理下手です。葉月がいないと夕飯がスーパーの弁当になる辺りでもう……あっ(察し)。
「どういったご関係なんですか? あまり空気を悪くされると困るんですが……」
大丈夫だってまなかちゃん、ヘーキヘーキ安心しろよ~。ここは適当に誤魔化せば大丈夫です。そんなことよりとっとと始めようぜ! 腹が空いちまうよ。
料理ミニゲーム的なものが始まりますが、もちろん最速で失敗し続けます。大成功すると料理の腕が上がりますが失敗しても信頼度の上昇値は同じなのでこのほうが早いです。
なお、ここでこのはが作る料理はなにをどうしても失敗します。まなかちゃんが手伝ってくれますがどうあがいても無理です。優しい目で見守りましょう。
ミニゲーム終わり! 閉廷! 評価は最低です。当たり前だよなあ?
このはが作った料理は見た目は普通ですが、食べるとデバフを受けるなにかです。普通にプレイするなら食べてはいけません。放っておくとウォールナッツの評判低下を恐れたまなかちゃんが全部食べてくれるのでそれを待つのがいいでしょう。
しかしRTAなので先に全部食べます。これがまなかちゃんとこのはの信頼度が一番上昇する行動です。
デバフを受けても回復するのでみたまさんの劇物より遥かにマシです。(覚悟)キメてるんだろ? (食べて)くれよ……。
いただきまーす。うん、おいしい!(強がり)
一応自分のソウルジェムを見ておきましょう。下手するとストレスで濁ってます。こんなんで魔女化したら親が泣きますよ!
へっ、今日のところはこのぐらいにしといてやる! 終わったのでさっさと帰りましょう。
おはよーございまーす!
本日は先を見越して莉愛様と会っておきましょう。実はあのほむほむが一番最初に神浜で出会うのは彼女です。時折こうして話しておくことで見滝原勢の来訪タイミングを察知できます。凄ェ! さすが莉愛様ァ!
そういうわけでまたウォールナッツです。料理教室に一度参加しているのでこれを話題にしましょう。
「大変な目に遭ったみたいね、この阿見莉愛を呼んでくださればいいものを!」
「ウォールナッツも昨日は大変でしたけどね……。でも、あの昏倒事件の噂がなくなって良かったですよ」
料理教室ではなくアザレアが話題になっちゃいました。そういえばあのタイミングで会えると思ってなかったので完全にスルーしてましたね。(オリチャーを発動できなくて)未熟です……。(莉愛様の出番は)120(分後)ぐらいじゃないっすか?
「このみさんも元気になったみたいで。あ、この前お友達の方と一緒に来店されましたよ。帆秋さんの話も出てたかと思います」
これは……このみちゃんが狙われたことでブロッサム組が全員アザレアに関与した結果ですね。むしろ三人の仲が深まったと考えたら結果的にプラスかもしれません。そういうことにします。
「そうだ、今度静海このはさんに会ったら伝えてください。料理を食べた人の笑顔を想像してみて、と」
まなかちゃんの熱いフォロー感じるんでしたよね?
これ以上話してても他の話題が出そうにないので帰ります。更紗帆奈に気をつけろよ! じゃあな!
この後は明日香の信頼度を……上げたかったんですが、ななか組・アザレア組とファミレスにいます。なあんで帆秋ちゃんが連行されてるんですかねぇ。
「帆秋さんには他の地区の意見を伺うために来てもらいました。いわゆるアドバイザーです」
あ、そっかぁ……アザレアで関わりすぎましたねこれは。
適当なこと言ってさっさと切り上げさせま……いや、オリチャー発動! この状況を利用して予定を早めましょう。
そうと決まればアザレア組と帰宅します。家が逆方向ですがその程度なら特に問題ありません。そんなことより集中して魔女を探しましょう。
いました。おうこのは! 一狩り行こうぜ!
というわけで魔女戦となりますが、魔女自体に用はないのでパパパっと片付けちゃいます。
……このはの料理デバフがまだ残ってましたね。速度落ちてるけどまあ大丈夫やろ。
とか言ってたらこの攻撃はちょっと避けられませんね。帆秋ちゃんの紙耐久だと満身創痍待ったなしです。なのであやめを盾にします。
「あやめーっ!」からのBADENDの印象が強いため忘れがちですが、つつじの家の存続を願った彼女の固有魔法は『無敵化』です。実際は防御力の飛躍的上昇ですがそれでもチートです。不意打ち、魔力切れ以外なら全て防げる神浜のメイン盾その1です。
「あちし、ガードッ!!」
ね、簡単でしょう? アザレア組はみんな強いので味方にするとかなり頼れます。解説イクゾオオオオオ!
『静海 このは』は双頭槍で戦う近・中距離の魔法少女です。『幻惑』は霧を使ったものなので味方にも影響が出ますが、水というか蝶のエフェクトで攻撃するのでもう見栄えが良いんじゃ。本人のステータスの高さもあるので、困ったら連れておけばいいでしょう。
『遊佐 葉月』は全距離対応型です。すごいわね。鹿角鈎という鉤爪が付いた二本の斧のようなもので近接、投げて中距離、遠距離には雷を飛ばします。固有魔法の『身体スキャン』で弱点も見つけてくれます。有能です。
『三栗 あやめ』は近距離型です。龍頭大铡刀というデカい・重い・強いの三拍子揃った武器を使うところが性格を表してますね。実演しましたが、固有魔法の『無敵化』はワルプルギスの夜の攻撃ですら耐えられます。普通の魔女なら余裕です。いざとなればあやめの背後に逃げましょう。
この三人は互いの連携に長けているので、余計な手出しはしないほうが上手く動いてくれます。合わせられる自信がなければサポートに徹しておくほうがいいでしょう。特に今の帆秋ちゃんは攻撃力が高いだけのお荷物なのでさっさと倒してもらいます。
あ、倒しました? グリーフシードを受け取って、どうぞ。
結界が消えたのでそろそろ……。
「間に合わなかったかー!」
来ましたね。このはが料理教室に参加する期間中、彼女が魔女結界で戦闘した後に『
今は出会えただけでいいので帰ります。この後、このはとひみかのイベントがありますがロスなのでスルー。こいつ途中で帰宅方向変えるとかすげえ挙動不審だぜ?
デバフの効果時間を確認しつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
◆
それは葉月が委員会で遅くなると伝えた日だった。
「今日は出前でも取りなよ」という言葉に甘えるわけにいかない。いくら葉月がおごると言っても余計な出費は避けるべき。それにあやめには私の手料理を食べさせたことがないし、ちょうど良い機会だと思ったの。
……まさか、あんなことになるなんて。
「うう、このはぁ……」
「あ、あやめーっ!」
ああ、なんてこと!
あやめは料理を食べてから急に具合が悪くなって、冷や汗をかいていた。見るからに体調が悪いしとても苦しそうだ。
どうしようかと焦っている間に玄関から駆け込んできたのは葉月。
「くっ、間に合わなかった! あやめ、どれだけ食べたの!?」
「ぜ、全部……」
「全部ぅ!?」
「だ、だって、あやめはおいしいって……」
「……もう、手遅れだよ。はい水」
勢いよく水を飲み込むあやめを見て気づいた。
出前を勧めたのって、そういうことだったの……! これを危惧して伝えてた時間より早く帰ってきたわけね。
「……少しは上達してると思ったのよ」
「ああ、うん……このはにだって出来ないことがあって当然だよ。アタシも株とか資産運用とかさっぱりだしねー……ほら、料理ならアタシがやるからさ。このはは今まで通り――」
「諦めないわ」
「えっ」
「諦めてたまるものですか……! 葉月、あやめ。絶対に二人を満足させてみせるから!」
(……あちし、無事でいられるかなぁ)
それから私は料理研究を続けた。なにも意地だけではない。もしまた葉月が料理できないときがあった場合、私が料理をできたら出費が浮くじゃない。
もちろん器具は揃えてある。包丁、計量スプーン、ボウル、ザル、ピーラー、カッター、おろし金その他色々。これで道具がないから出来ないという不足はない。
加えてあらゆる書籍から得たこの『料理理論』。今の私ならば――!
「さあ葉月。これが料理理論の粋を結集した甘みたっぷりカツオだしオムレツよ」
「こ、このは……オムレツは青くないよ……? それにこのカリフラワーはありえないほど甘いし、卵は固かったり柔らかかったり……」
「ええ、色や食感のメリハリを重視してみたの。五感全てを対比で刺激する料理よ。……葉月? は、葉月ーっ!」
倒れた葉月を前に、自分でもその料理を食べた私の意識はそこで途絶えた。
諦めずに研究を続ける私に衝撃を与えたのは、最近通い始めた調整屋で聞こえた会話だ。
「見て見て! ペスカトーレを作ってみたの!」
「……みたま。この赤色は?」
「鷹の爪と七味唐辛子とケチャップとイチゴジャムとあと赤い食べ物をミキサーにかけたの。でもちょっと色が薄いかなって思ってすこーし足したわ~」
「なにを」
「ふふふ、え・の・ぐ!」
「絵の具は、絵の具だけは止めて……それがなければまだ気絶するレベルで済むから……」
何をどうしたらそんな料理が出来上がるの……!? いや、絵の具を入れたらもはやそれは料理じゃない。ただの毒物よ!
でも、絵の具がなくても気絶するレベルって、もしかして、私の料理はこれと同等なの? そんな、そんな馬鹿な話が……私は食材しか使ってないわよ。
失意に暮れる私に救いを与えたのも、聞こえた言葉。
それは『料理教室』。あのレベルの人でも教えてくれるなら行けるだろう。そして私なら少なくともあんなことにはならない。上達が見込める。
しかも、家に戻った私にあやめがそのチラシを渡してくれたのだ。開催する場所はなんと名店ウォールナッツ。プロが見てくれるならきっと大丈夫。二人だって笑顔で喜んでくれた。
(食べるのはアタシらじゃないからね……)
(試食しなくて済むし……)
待ってて二人とも。私は料理を克服するわ!
ついに来た料理教室当日。
講師として現れたのは小さな子だった。あやめよりかは大人っぽいけれど、まだまだ子供らしさが残っている。けれどここはウォールナッツ、見かけで判断してはいけない。
「今日、料理講師をする胡桃まなかです!」
胡桃まなか。つまり、まなか先生ね。
心の中で師と決めたとき、横から視線を感じた。あの淡い栗色の髪は、間違いない。
「……帆秋くれは」
「静海このは」
「あ、あわわわわ……なんですかこの空間! 今だけは阿見先輩がいてほしい!」
いけない、ぶつかり合う視線に気づいたまなか先生が慌てている。
「どういったご関係なんですか? あまり空気を悪くされると困るんですが……」
言われてみると、私自身と帆秋くれはの関係性は言葉にするのが難しい。葉月ほど仲が良いわけでもないし、あやめみたいに同じ友達がいて知り合ったわけでもない。むしろ水名神社で戦ってあまり良く思われてないはず。
言葉に詰まっていると帆秋くれはが答えた。
「強敵と書いてライバルと読む友よ」
「最近少年漫画でも読みました?」
ね、と言わんばかりに真顔で目をしばたたかせていた。どうやら悪く思ってないらしい。イメージと違うその姿に毒気を抜かれた私はそれに同意する。
納得したまなか先生は「それならいいですが……」と言って戻って説明を始めた。
まずは切り方などの基本技術から始めるらしい。それなら私もできる。
「切り方が危なっかしい! 包丁はカトラスじゃないんですよ!」
「なんで卵を握り潰してるんですか!」
「調理する前に食材を食べるなーっ!」
……そう思ってたけど、基本は奥が深いのね。はっきり言って散々な結果だったけど、まなか先生が何度も口出ししたくれはよりは何倍もマシだとは思う。……あんなに忌憚のない言葉を言えるなんて、まなか先生とくれはは知り合いなのかしら。
「帆秋さん、一つ聞きたいんですが……料理したことあります?」
「……わ、私だってメロンソーダなら作れるわよ。ファミレスにもあるんだし……まずメロンを買ってきて……」
「メロンソーダにメロン果汁は入っていません。あれは着色料と甘味料です。うちのはメロンジュースなのできちんと使っていますが」
「……知ってたわ」
(……この顔、知らなかったのね)
明らかにテンションが下がったくれはから目を離して、まなか先生は私に告げた。さすがにあれほどではないが切り方や卵の割り方がまだまだらしい。そう言って教えてくれた中には料理理論に含まれていたものもあった。やはりプロだ。
「帆秋さんはもう置いといて……課題料理を作りましょう。練習あるのみです。とにかく作って問題点を一つずつ解決しましょう!」
「は、はい! まなか先生!」
「私もやるわ」
「……いいですけど、無理はしないでくださいよ?」
私は本番に強いタイプ。きっとできる。
「燃えてる! 燃えてますよ! なんでずっと強火なんですか!」
「これは米……? 何故液状に……?」
「どうやったらレードルが千切れるんです……!?」
……できる、できるはずよ。くれはよりはマシ……!
でも失敗したこともあるし、まなか先生に伝えないと。
「まなか先生」
「次はなんですか帆秋さん! っと、このはさんでしたか。どうしました?」
「お味噌汁が爆発しましたわ」
「はあっ!? ……わ、わかりました。お味噌汁はまなかが作るので盛り付けをしてください……」
盛り付けならできるわ。……でも、少しぐらいなら手を出してもいいわよね。
そうして遂に料理が出来上がった。ご飯、お味噌汁、焼き鮭の和風だ。あとは味見ね。見ていなさいくれは。
鮭を一口食べたまなか先生の表情がめまぐるしく変わっていく。やはり採点は厳しいのだろう。ご飯で厳しい顔をして、お味噌汁で少し和らいでもまだ結果は出ない。
「どうですか、先生……?」
「……お、おいしいですよ! いやーおいしいなー! 先生も参考にしたいから全部食べますねー!」
「まなか、待ちなさい」
意を決した声で止めたくれはは、まなか先生の手からお味噌汁を奪い取ると一気に飲み干した。それだけじゃない、残りの全てまで! そしてやっぱり真顔のまま、ばたりと倒れた。
「ほ、帆秋さーんっ! なんて無茶を……っ!」
倒れこむくれはを看病するまなか先生。隙を見て、ほんの少し残った余りを食べてみる。
……やっぱり、マズかった。
次の日、常盤ななかとの会合でも料理の件は頭から離れなかった。
私、どうあがいても料理だけはできないのかしら……。
「葉月。このははどうしたネ」
「ちょっと料理で自信なくしちゃっててねー。ほら、今日は取り決めに来たんでしょ」
そうだった。今日は葉月の提案で魔女の取り分についての話し合いをしに来たんだ。
うやむやになっていたけど、最初に出会ったときは私たちが後に来て倒した。横取りという形になったとは言いたくないけど……これが原因で他の魔法少女と争うなんて事態は避けたい。
「狙っている獲物が同じだった場合、どちらが戦うのか。どう対処するのか。グリーフシードの所有権はどうなるのか……多々ありますわね」
「先着順、恨みっこなしってのが七海やちよの言い分。南凪も中央もそれよ。手伝ってくれた魔法少女にお礼としてグリーフシードを渡すこともあるわ」
他の区の意見を聞くため、という名目で連れてこられていたくれはがそう言う。個人同士ならそれでいいかもしれないけれど、問題はチーム同士の衝突でしょう。『先着』の解釈次第では揉めて、一人でも反対意見を持つ人がいたらそこから問題が起きかねない。
結局、私たちの間で結ばれた取り決めは、戦闘に参加した全員がグリーフシードの所有権を持つということだった。あやめやかこちゃんでもわかりやすく、美雨さんが悪く思わない提案。それを考えつくなんて、さすがは葉月ね……!
より細かい場合についてはまた後日ということになった私たちは帰路につく。なぜかくれはも一緒に。……別にいいけれど。
その途中で結界を見つけて魔女と戦ったのだけど、くれはの動きが妙に鈍かった。水名神社で見せた速度が嘘のように鈍重で、あやめが防がなかったら攻撃を受けていた場面もあった。結局、魔女への攻撃は私たち三人のものがほとんど。私が切り裂き、葉月が雷を放ち、あやめが重い一撃を入れたのがトドメとなったのだった。
結界が消えた後、動きが鈍かった理由を聞こうとした時に見知らぬ声が響く。
「間に合わなかったかー!」
走ってきたのは大東学院の制服を着た女の子。あやめより……いえ、まなか先生よりも大人っぽいわね。聞こえた言葉から察した通り、彼女は自分から魔法少女だと言った。
「眞尾 ひみか! 13歳です!」
「13歳!? 同い年だ! よろしくー!」
同い年、同い年……? まあ、あやめはちょっと子供っぽいところがあるから仕方ないわ。そこが可愛いのだけど。
私たちは家族のように暮らしているけれど、彼女は本当に大家族のようだった。妹と弟が合わせて六人。その子たちの面倒を見る長女だというならしっかりしているのも頷ける。
それで話を聞いていたら、自分より年下の子がいるというのが気になるのか、あやめが強く反応していた。……そうね、長い間私たちだけだったから自分が一番小さかったのだったもの。葉月に言われた通り、外に触れて成長しようとしているのね。
「このは! あちし、行ってみてもいい?」
「私は大丈夫ですよ、みんな喜ぶし! あ、帰ったらご飯にするところだったから食べてく? 腕によりをかけちゃうよー?」
……ご飯? それってつまり、家族全員の料理を作っているのはこのひみかさん?
そう聞くと、元気な声で肯定された。残すどころか毎回取り合いになるのだとか。
間違いない。ひみかさんは……料理が得意!
「わ、私も保護者としてついて行かせてもらっても?」
「大歓迎です! このはさんもどうぞ!」
「じゃ、アタシは先に帰って一応夕飯の支度だけしてるよ。食べてきたら朝食にするだけだからさ。くれはさんは?」
「帰るわ。観鳥に勉強を教えてもらう約束があるの」
「観鳥さんのほうが年下じゃなかった……?」
進行方向と逆の方向に帰っていくくれはと、そのまま進む葉月の二人と別れた私たちを迎えてくれたのは、元気いっぱいの子供たちだった。この騒がしさはつつじの家を思い出して、嫌いじゃない。あやめもすぐに馴染んでいた。
子供たちと遊ぶあやめに微笑ましい気持ちになりつつも、私はひみかさんの調理風景をじっと観察する。何か工程に秘密があるのだと、一挙手一投足を見逃さないように。
けれど、そんなことはなかった。失礼かもしれないけど食材に気を使っているわけではない。調理道具も調味料も揃っているわけでもない。……でも、子供たちもあやめもおいしそうに食べている。
その笑顔とひみかさんの喜ぶ顔。それで気づいた。
……そう、一生懸命に心を込めて作ること。つつじの家にいた頃、院長先生の料理は毎日おいしかった。どんな食材や器具、理論を揃えても、それを忘れてたら上手くいかないのね。
「ひみかさん、今日はありがとうございます」
「……? よくわかんないけど、よかったです! また来てくださいね!」
それから数日。ななかさんとの会合でまたくれはと出会った。
彼女は私を見るなり、真顔で言う。
「このは。あなた、料理を食べた人の笑顔を考えたことがある?」
「ふふ、もうそのことに気づいたのよ。……くれは。次こそはあなたを料理で驚かせてあげる。もちろん、いい意味でね」
「……の、のの……望むところよ」
待っていなさい帆秋くれは。親子丼を作れるようになったのよ。今度はあなたの好物を作って驚く顔を見せてもらうわ。
「……ってことらしいよ」
ななかさんたちとの会合で、大体の話が終わった後の自由時間。アタシはそんなことを話していた。反応は上々。あきらさんやかこちゃんが驚く顔が見られた。
「だからこのはさんと帆秋さんがあんなに仲良く……」
「そうそう、料理ってすごいねー」
「料理すげー! 今度フェリシアにも教えよー!」
「うん、うん……!」
「――閃きました。今度は緑茶とメロンソーダを組み合わせてみましょう。同じ緑で調和も取れるはずです」
「……ななか。それは止めといたほうがいいネ」
思い思いのことを話すなんて、ちょっと前のことが嘘みたいに些細な幸せが溢れている。
「……ほんと、平和だね~」
くれはさんの目に怯えの色が混じっていたのは見なかったことにした。
ごめん、親子丼以外はまだダメなんだ。上手くなるまで食べてくれるならそれが一番良いんだ……。
■今回の内容
静海このは 魔法少女ストーリー 1話 『静海このはの弱点』
静海このは 魔法少女ストーリー 2話 『胡桃まなかの受難』
静海このは 魔法少女ストーリー 3話 『眞尾ひみかの教え』
遊佐葉月 魔法少女ストーリー 1話 『会議は揉める』
遊佐葉月 魔法少女ストーリー 2話 『共同作戦!』
■八雲 みたま
マジで17歳の魔法少女。みたまさん。
チーズケーキにケチャップは序の口。奴は絵の具を使う。
■眞尾 ひみか
マジで13歳の魔法少女。ぐう聖。
リリース遅延のピンチを救った英雄。
■ウォールナッツ
まなかちゃんの実家で名店。
しかし料理教室にはやべーやつが来る。