マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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正義と真実、神浜最後の逆転 中編①

 翌日、観鳥さんたちが向かったのは『水徳湯』という銭湯だった。

 立地は水徳商店街に近い。昔ながらの店構えをしていて、そこそこ有名。遠くから見ても大きな煙突が目立つ。

 

 あの銭湯が事件の起きた結界があった場所だ。なにか手がかりがあるかもしれないと、準備日に帆秋さんと一緒に捜査に来たわけさ。今日からちょうど三連休だったし、こうして朝から出向けたのは大きい。

 

 弁護側なのにどうして捜査してるのかって? そりゃあ、魔法少女だからとでも言っておこう。もとより本職じゃないんだ。人手が足りないし、時間もない。本来は警察がやる仕事でもやらざるを得ないわけだ。捏造があったらどうするなんて心配は、なんでもアリな魔法が存在している時点で、ねぇ。

 

「他にも来ている人がいるって聞いたけど、あの二人かしら」

「みたいだね」

 

 既に入り口に到着していたその二人は、観鳥さんらに気づくと一人が走って近寄ってきて、もう一人が追いかけるように走ってきた。

 

「お待ちしていました、くれはさん!」

「明日香が妙に張り切っちゃってて……また早とちりして思い込みをしなきゃいいけど。もちろん、私もやる気はあるけどね」

 

 それは、水名女学園の竜城明日香さんと、神浜市立大附属学校の美凪ささらさんだ。

 二人はもともと正義感が強く、人助けとあれば快く力を貸す人たちだと聞いている。今回も協力を要請していたようで、手伝ってくれるようだ。

 

 竜城さんのその調子はいつものこととして、帆秋さんが視線を向けたのは美凪さんだった。

 

「杏子には会った?」

「今は調整屋にいるんでしょ? 行ったかってことなら、行ってないけど……どうかした?」

「あなたの固有魔法なら悪かどうか判断できるかと思って」

 

 なるほど、帆秋さんらしい。交友関係の広さが影響して、多くの固有魔法を知っているから出た問いなんだろう。

 なにも事件で使おうとしたのは今回だけじゃなく、神浜現代美術館で魔女による窃盗事件が起きた際、彼女の魔法で魔女を引き寄せて解決したらしい。ワルプルギスの夜と戦った時も、海へ引き寄せるのに活用されていた。

 

 彼女の持つ魔法は、申告通りなら悪に属するものを引き寄せる『挑発』。

 だったら、逆に言えば反応すれば悪ということになる。佐倉さんに反応しなかったら……と、いうところまで帆秋さんが考えていたかは定かじゃないけれど、美凪さんの表情からして、現実はそんなに簡単にいかないようだ。

 

「うーん……正直、私もよくわからないんだ。証拠にはならないと思う。魔女とか使い魔は不幸をばら撒く悪だってわかりやすいけど、人間に効くかどうかなんて試したことないし」

「そうなの?」

「観鳥さんの意見としては、本人の認識によるんじゃないかな。ななかさんの魔法だって、あの人の敵を判断するものだろう? そうじゃなかったら、そもそも悪とはなにかとか……哲学みたいな話になる」

「かもね……ごめん、あんまり役立てそうにない」

「いいのよ。あなたが謝る必要はないわ」

 

 その通り、この世が善悪二元論で済むわけないのは当然のこと。割り切れない曖昧な事象に溢れてるんだから結局は主観による。観鳥さんも激写された側から見れば悪だからね。

 まあ、そんな小難しい話はどうでもいいんだ。議論をしたいわけじゃない。

 

「とはいえ私たちは捜査に来ているわけです。ここは本来の役目で頑張りましょう! 必ずや、証拠を見つけ出してみせます!」

「うん、そうだね。私たちは先に中を見てみるよ。なにかあれば連絡するから」

 

 そう言うと、二人は横開きの扉を開けて店内に入っていった。 

 竜城さんはかなり気合が入ってたけど、まさか男湯を探そうとはしないよね。結界があったのはボイラー室って話だし。……一応、後で確認しておこう。

 

 観鳥さんたちはとりあえず、水徳湯をぐるりと一回りするように歩く。周囲は他の建物に隣接している場所以外は塀に囲まれているだけで、なんの変哲もない。

 

 一見すると意味がないようなことをしてるけど、遊んでる暇はないからね。ちゃんとある。

 なにしろ、ももこさんたちは正面の入り口から入ったわけじゃないんだ。反応が中にあるのに入り口が閉まってたから、裏口の近くの塀を飛び越えて入ったらしい。そちらに鍵はかかってなかったようで、そのままボイラー室に向かって結界へ入ったら……事件と遭遇したわけだ。

 問題はどうして佐倉さんがいたか。これも本人は教えてくれなかった。

 

 ももこさんの言っていた、塀が一か所だけ小さな門になっていて鍵がかかっている場所に着くと、確かに裏口が確認できた。こっちは従業員用みたいで普通の扉だ。

 ちょっと確認してみたいけど……観鳥さんたちは本物の弁護士どころか警察ですらないから、うっかり他人に見られたら騒ぎになりかねない。

 

 だから、こっそり行く。本物じゃないからね。十七夜さんに知られたら不法侵入と言われるだろうけど、観鳥さんはこういうほうが得意なんだ。

 

 ただ、魔法少女の身体能力に任せて飛び越えたらよりいっそう驚かれるし、どうするかな。

 

「観鳥、キャタツがあるわよ」

 

 すると、帆秋さんが立てかけてあったそれを指さした。

 

「良いね。でも、ハシゴでしょ。折りたたんだらそうなるだけで」

「キャタツ」

「ハシゴ」

「……観鳥が言うならそうなんでしょうね。行きましょう」

 

 そう言うやいなや周囲を気にせず塀を飛び越えていった。あ、使わないんだ。

 色々と考えてた観鳥さんが馬鹿らしくなってきたし、続こう。二人揃って不審者と呼ばれるのも悪くない。

 

 さっと飛び越えて降り立った裏口の周りはそんなに広くなかった。

 この空間、槍を振り回せばどうしたって当たる。しかし佐倉さんは特に抵抗することもなく、こちらからももこさんに連れられて行ったそうだ。

 

 なにか目ぼしい物はないかと見渡すと、すぐ近くに立て看板が置かれているのが目に入った。

 

「『今日は銭湯貸し切りデー』……イベントかしら」

「使ってないときはこっちに置いてるのかな。なんにせよ関係なさそうだ」

 

 次に注目したのはやっぱり裏口そのもの。今日は鍵がかかっているようで開かない。むぅ、できればボイラー室までのルートを追ってみたかったけど仕方がない。

 他に目立ったものもないし、一応人通りを確認してから通りに戻った。

 

 特に収穫はなかった。今度は正面の入り口から入って忍び込んでみようか、なんて話しながら歩いていると、帆秋さんのスマートフォンに着信。相手は用件だけを伝えて手短に切ったようで、すぐに内容を教えてくれた。

 

「被害者が誰かわかったらしいわ。それと、もう一人の目撃者も来たって」

 

 と、素っ気なく言ったけど、微妙な感情の揺らぎを観鳥さんは感じ取った。

 それも当然だろう。無罪を信じていて弁護まですると決めてはいても、被害者の存在を無視することはできない。偶然顔見知りでなかっただけで、彼女たちもまた誰かの友人。帆秋さんだって、会っていれば手を差し伸べていたはずだ。

 

 もう一人の目撃者も別の意味で無視できない。ももこさんたちが見たのは犯行の結果でも、こっちはもしかしたら犯行の瞬間を見たのかもしれない。重要な証言になる。

 

「そうと決まれば調整屋に移動しようか。裏口は開かないし、ここは竜城さんたちに任せれば十分だ」

「でも、事件現場じゃない」

「正確に言えば存在した結界の中だね。まったく調べないわけにはいかないけど、魔法少女絡みなんだから人を重要視すべきじゃないかな」

「そうなのね」

 

 結局のところ、観鳥さんとしては移動経路がわかればいい。凶器が転がってるわけないし、指紋を調べるなんて科学捜査もできないからね。……いや、ひなのさんならできたかな?

 

 とにかく、これは魔法少女らしい手段を使ってもそう。あまり多くは調べられない。

 

 例えば、魔力パターン。人に指紋があるように、魔法少女・魔女には固有の波長がある。本来は結界内ではぐれたときに探したり、一度遭遇した魔女を追いかけたりするものだけど、身を隠した敵を探すのにも使えるんだ。

 ただ……今回はあまり役に立ちそうにない。その場にいなかった、やってなかったことを証明するのに、いる証拠を持ち出しても仕方がないだろう。それに、これは今現在の場所を特定するもの。過去には適用できない。

 

 加えて言うなら、観鳥さんの撮影も同じ。『シャッターチャンスを逃さない』と願っていても、写真は今しか切り取れないんだ。

 他にも、江利さんの『行動予測』や保澄ちゃんの『空間結合』は犯人を追い詰めるのには使えるけど、探し当てるのには使えない。前者は今から少し先の未来予測だし、情報がいる。後者はいったいどこに跳べばいいんだか。

 やっぱり捜査は足だね。地道な手段が大事なんだ。

 

 竜城さんたちに移動することを伝えたら、店員さんから貰ったというチラシをくれた。『みんなで楽しい水徳湯! お風呂は庶民のエンターテインメント!』と書かれている。なんだろうこれ。

 それは帆秋さんが欲しがってたからあげて、観鳥さんたちは水徳湯を後にしたのだった。

 

「聞いた? 佐倉っていう槍を使う赤い魔法少女が水徳湯で魔法少女を殺しちゃったんだって」

「聞いた聞いた。物凄く狂暴なんだってね。皆殺しにしてやったって言ってたみたいで、色々と潰れてたらしいよ……でも、そんな名前だっけ?」

「間違いないよ。友達が言ってたもん」

 

 途中耳にした、件の噂を気にしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日ぶりにやってきた調整屋は、入り口近くに張り紙がしてあった。『裁判の準備中。明日まで営業短縮』と、固い言い方ながらも丸みを帯びた手書きの可愛らしい文字が大きく書かれている。

 

 その理由は、みたまさんからちょっと愚痴っぽく聞かされた。

 

「ほら、調整屋さんって中立を謳ってたじゃない。だから十七夜が容疑者を置いておくならここが良いって言ったんだけどねぇ、まるで留置所みたいな扱いだわ。ちょっとした営業妨害よぉ」

「あはは……」

 

 確かに、逃げるかもしれない容疑者を置いておくには適さないだろう。『調整』の応用で魔法少女相手なら戦えるらしいけど、みたまさん自身の戦闘能力がそれほど高くないんだから不安が残る。ましてや、相手は佐倉さん。本人に今は逃げる気がないから穏便に済んでいるだけだ。

 かと言って、じゃあどこに? と言われても困る。生憎と代替案は出せそうにない。

 

 悩みの当人は、裏にある控室のような生活感のある部屋で退屈そうにしていた。

 

「ゆまが心配してるって、帆奈が言ってたわ」

「どっちにしろ明日か明後日までだろ。ちょっと待つだけだって言っといてよ」

「でも」

「帆秋さん、今は……」

「色々とわたしが話さないといけないことがあるわ。そうだ、お茶入れてくるからちょっと待ってて」

 

 みたまさんはいそいそとすぐ近くのキッチンに行った。

 

 あれ、お茶を任せてもいいのかな。普段の料理のことを考えるとマズい気がする。彼女のことだから絵の具で色付けをしてきそうだ。

 心配は口に出ていたようで、帆秋さんが真顔で答えてくれた。

 

「絵の具はもう入れないわよ。前は入れてたけど」

「やっぱな……。余計なモンはあたしがキッチンから取り除いといたけど、まだケチャップとかマスタード入れてきそうだ……」

 

 予想は的中して、運んできたティーカップと並んで予想したとおりの調味料が置かれていた。事前に入れてないだけ成長しているのかもしれない。

 言うまでもなく調味料は遠慮して、少し離れた場所に佐倉さんが移動してから、ソファに座ったみたまさんと観鳥さんたちが向かい合った。ようやく話が聞けそうだ。

 

 ……っと、その前に。

 

「重要そうな話は観鳥さんが録音しておくよ」

 

 取り出したのは胸ポケットに入れているICレコーダー。普段から取材用に持ち歩いてるんだ。

 

「さすがね観鳥」

「ありがとう。でも、帆秋さんは知ってるでしょ?」

「そうだった」

「もう話してもいいかしら?」

 

 そう言って、まずみたまさんが教えてくれたのは被害者のことだった。

 

「亡くなったのは『比嘉 栄亜』、『石屋 美毬』って子たちよ。ただ、十七夜もやちよさんも知らないみたいだったのよね」

「じゃあ市外の子か、それとも魔法少女になり立てかしら」

 

 帆秋さんが聞いたことは一つか二つ過程を飛ばしている。

 まず聞くべきなのは、どうして“その子たちを知らないとわかったのか”。そして、知らないのに“なぜ名前がわかっているのか”だ。

 

 それを観鳥さんが聞くと、みたまさんは少し悲しそうな顔をした。

 

「見たことないかって、みとちゃんの魔法でももこの記憶を覗かせてもらったの。そうしたらその子たち、調整屋の噂を聞いて朝に来てくれた子で、メモしてあったのよ。それで、わたしが名前を十七夜たちに教えて確認を取ったの。魔法少女っていつも死と隣り合わせなのはわかってるけど、ねぇ……」

 

 目をつぶって、紅茶を飲んだ。

 

 ……まったく、魔法少女の最期なんて難儀なものだ。

 結界ごと消えたんじゃ、一般人の間じゃ謎の行方不明扱いだろう。親族に亡くなったことを伝えようにも伝えられない。なぜ知ってるのかと本物の警察に事情聴取されてしまうかもしれないし、今回のように誰も知らないということもある。

 

 これは捜査においても障害になる。死因はソウルジェムの破損一択なのがわかりやすいと言えばわかりやすいけれど、刺殺・撲殺・絞殺といった原因をすっとばして死がやってきてるのだから、むしろ犯人がわかりにくくなってしまう。

 それに、魔法少女はいとも簡単に傷を治せてしまう。わかりやすい怪我なんてすぐに消えてしまうんだ。観鳥さんが犯人なら、遺体の傷を治療して傷跡の情報を消すね。抵抗されて自分が傷を負っていても同じ。そんなものはなかったことにしてしまえばいい。

 

 だから、みたまさんが会っていて、名前を聞いていたことは僥倖だ。

 たったこれだけの情報でも……調べるのなら、この取っ掛かりを活かすしかない。

 

「その子たち、制服は着てた?」

「私服だったわ。わたしもわざわざ、どこの学校かなんて聞くようなことしないし、世間話の中にもわかるようなことはなかったわねぇ。参京区に行くとは言ってたけど、それは水徳湯のことだろうし……」

「じゃあ他に名前を知っている人はいるのかしら」

「それに関しては十七夜が動いてくれてるみたいよ。ただ、まだ見つかってないみたい」

 

 他にもいくらか質問をしたけど、特別重要な情報はなかった。

 強いて言えば、東を中心に聞き込みをするだろう十七夜さんがまだ見つけていないということは、彼女たちは東側の魔法少女ではないのかもしれない。もっとも、どこの魔法少女かがわかってもあんまり関係ないんだけど。

 

「となると、あとはもう一人の目撃者か……」

「来たって言ってたのにいないわね」

「そうなのよねぇ、杏子ちゃんが顔を見せたら帰っちゃったの」

 

 ……そりゃそうだ。話をしに行って、自由にしてる容疑者が顔を見せたら逃げ出すよ。

 やっぱり、調整屋を留置所代わりにするのはダメだね。迂闊に集合場所に使えなくなる。

 

 その代わりというか、話すべき内容のほうは聞いておいたらしい。

 

 まず、もう一人の目撃者の名前は『棒島 乃子』。

 こちらは東側の魔法少女で、最近神浜に引っ越してきたそうだ。だから東西の関係には詳しくない。東側、というのも便宜上の話だ。

 

 彼女はももこさんたちよりも先に被害者が倒れているのを見ていた。しかも、その近くに佐倉さんが一人でいるのも見ている。結界が消えた後じゃない。事件現場にいた証拠だ。

 そんなものだから、怖くなって結界から逃げ出したらしい。ももこさんたちとはどこかですれ違ったんだろう。結界内ならおかしい話でもない。

 

 みたまさんはそれ以上のことは聞いていない。というより、これで全てだそうだ。

 持ってきた紅茶もなくなり、いかにも話し終えたという雰囲気だ。

 

「これで杏子ちゃんが無罪になればいいんだけど……難しいかしら」

「あん……? アンタもそっち側?」

 

 ここに来て、遠くから眺めていた佐倉さんが声を発した。

 

「こういう時に中立はいいのかよ」

「調整屋の掟とわたし自身の感情は別よ。一緒にくれはちゃんを助けに行った仲だもの。絶対の証拠がない限り、故意にやったとは思えないわ。それに……一つの可能性に固執するのは嫌なのよ」

「……ああ、そう。お人好しがここにもいやがった」

「ふふふ、そうかもしれないわね」

 

 あの二人、帆秋さんがミラーズに連れ去られた時になにかあったのかな。帆奈ちゃんを信じて待つことを選んだ観鳥さんにはあずかり知らぬところだ。

 

 協力してくれたみたまさんにお礼を言って、席を立った。

 明日までにもう少し調べておきたい。早いところ次の調査へ向かおう。

 

 けど、帆秋さんが引き止めて調整屋の一か所を指さした。

 

「観鳥、あれ見て」

「なにかあった? ……ん? ん?」

 

 思わず二度見した。設置されている縦長のパンフレットスタンドに置いてあるチラシ、水徳湯で貰ったのと同じじゃないか。

 それだけじゃない。華心流いけばな展、千秋屋、牧野チャンのメイドカフェまである。どれもそこそこの量があるけど、一番多いのは万々歳のものだった。ポップには『ご自由にお持ちください』とまで書かれている。みたまさんのサインが入ったチラシを持っていけば魔法少女にサービスしてくれるそうだけど、減らない理由は……言わないでおこう。

 

 にしても、なんでこんなものがあるのかな。前は見かけなかったと思うけど。

 

「私が提案したの」

 

 聞くまでもなく、帆秋さんが自信を持って言った。

 今、理由に思い至った。帆秋さんって、どういうわけか自室にたくさんチラシがあるんだ。前に見せてもらったことがある。ひなのさんがやっている科学教室とか、ウォールナッツの料理教室のも持っていたはずだ。

 

「これからは魔法少女同士で協調していく時代ってことで、調整屋さんでも色々と紹介してるのよ~。前からやってた魔法少女の紹介の発展版みたいなものねぇ」

「だから帆秋さんの知り合い関係が多いのか……」

 

 これは今度、観鳥報を置かせてもらってもいいかもしれない。普段は校内に張り出してるぐらいだし、見てくれる人が増えるかも。

 

 だけど、それはそれ。今は事件のことが先決だ。

 これからもう一度水徳商店街に行くという帆秋さんと一旦別れて、観鳥さんは取材という自らの役割を果たしに行く。さ、まずは、ももこさん辺りかな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北養区。

 多くの自然を抱えるこの地域は、里見メディカルセンターや聖リリアンナ学園といった建物が点在する。かの老舗洋食店、ウォールナッツもここだ。同じ神浜でも街並みがまったく違う。まさに、()()()上流階級御用達の世界といったところだ。

 

 観鳥さんたちが向かったのは山奥の一角、暴風かなにかで木々が薙ぎ倒されている場所だ。なにもないように見えるこの場所こそ、桜子さん――『万年桜のうわさ』が保持するウワサ結界の入り口であり、かつて存在したホテル・フェントホープの跡地となる。

 

 以前と同じように入り口を通ると、視界が一転して、青空の下、桜が舞う草原が広がった。

 美麗な景色に混じる、ある意味で歪なのは大きな桜の前に建てられた大法廷だ。人がそこそこいる傍聴席の前、正面の一段高くなった裁判長の席には既に桜子さんがいる。左右に設置された長机が検事と弁護士の席だけど、まだ誰もいない。弁護士は隣にいるから当たり前でも、十七夜さんがいないのは予想外だな。

 

「来たか」

 

 と、思っていたらすぐ近くにいた。観鳥さんたちを待っていたらしい。

 

「二人とも、今日はよろしく頼むぞ。この裁判、君たちが無実を追求し、自分が罪を追究する。結果がどうあろうと、真実に辿り着けることを望んでいる」

「私もよ。今日で解決して、流れてる噂は断ち切るわ」

「うむ。被害者の名前が出ないように情報統制はしておいたが……佐倉君に関しては今もそのままだからな。もしも無実なら、この判決が覆す切っ掛けになるだろう」

 

 今の十七夜さんの言葉、聞き捨てならない単語があった。

 

「ちょっと、十七夜さん。情報統制って……」

「八雲が言ってなかったか? 余計な混乱を招かないようにそこは伏せて捜査をしていたのだが」

「名前を出さないでどうやって――……ああ、『読心』か」

「流石だな、観鳥君」

 

 神浜で一年以上魔法少女をやっていれば、誰でも知っていると思うけどね。

 

 これまでに聞いた情報から推測するに、十七夜さんの『読心』は考えていることを読む以外にも、心の底から欲しい情報を探し出すことができるらしい。荒れ狂う川に流れる小枝を取るようなものらしいし、隠し通されれば取れないらしいけど、その程度の苦難、十七夜さんならやるだろう。道理でなかなか進んでないわけだ。

 

 捜査の結果、探した範囲では被害者の二人の名前を聞いたことがある魔法少女はいなかったそうだ。事前に渡された資料にも書かれている。この分だと市外の魔法少女かもしれないな。

 

 軽い情報交換も済ませて、打ち合わせもしたいから弁護側の席に移動しようとした時、帆秋さんが鞄から一枚の紙を取り出した。よくある印刷用紙になにか写っている。

 

「ところで十七夜、これキャタツよね」

 

 ……えぇ……? 今聞く?

 それに、写ってるのはどうみてもハシゴだし。

 

「まだ言ってるの? ハシゴだって」

「言葉の違いか……うむ、まとめてキャシゴでいいんじゃないか? しかし、どうやら緊張はしていないみたいだな、安心したぞ」

 

 いや、この人は素だと思う。 

 なんだか観鳥さんも肩の力が抜けたけど、帆秋さんは本気で弁護する気なのは間違いないし、だからこそサポートしよう。改めてそう思った。

 

 向かって右手にある弁護側の席に座ると、その気持ちがより強くなる。証言台がよく見えるのも一助になっているのかもしれない。あそこに今日立つのは……あれ? 

 

「帆秋さん、今日の証人について知ってるかな。事前の資料になかったし、打ち合わせもしてないよね?」

「ショウニン?」

 

 ダメだ。そこからだ。

 仕方がないから前の裁判でも証人がいたことを説明して、事件に関する重要な発言……証言をする人だと教えた。

 すると、思い出したらしい。最初はなにかを承認すると思っていたそうだ。……なんで?

 

 なんてことをしていたら向こう側に十七夜さんが立っていた。確認したら開廷の時刻が迫っているじゃないか。

 仕方ない。準備できた証拠品はいくらかある。事前に桜子さんを通して、資料が検事側にも通っているはずだ。行き当たりばったりだけど、それでどうにかしよう。

 

「│静粛に│」

 

 コンコンと、木槌の音が鳴った。

 あれは日本じゃ使われてないそうだけど、桜子さんが雰囲気作りのために用意したのだろう。イメージ効果は強力で、ざわざわとしていた傍聴席が静まり返った。

 

「│これより、被告人佐倉杏子の裁判を行う。二人とも、準備は?│」

「弁護側、準備完了しているわ」

「検察側、問題ない」

 

 観鳥さんはあくまでも助手。帆秋さんが代表して答えた。

 向こう側は十七夜さん一人だけど……その白い衣装が気になって仕方ない。

 

「その前に一ついいかな。どうして十七夜さんは変身したのさ」

 

 まあ、想像がつく。

 

「君が思っていることが正解だ。『読心』を使えるようにしている。無論、常に使っているわけではないし、この距離だが……余計なことは考えるなよ? 自分相手に嘘をつくなら心の底まで嘘をつけ」

 

 武器にしている馬上鞭を持ち出して、右目のモノクルを輝かせた。

 もとより嘘を吐くつもりはない。ただ、これじゃハッタリは通じないだろうな。

 

「│検事、冒頭陳述を│」

「任された。聞いてくれ」

 

 ……始まった。

 

 十七夜さんが話し始めたのは、事件の成り行きだ。

 

 佐倉さんは一人で水徳商店街を散策中、魔女の反応を感知したため、水徳湯のボイラー室へ侵入し、結界へ入った。そこで被害者『比嘉 栄亜』、『石屋 美毬』を殺害。このタイミングで魔女は倒されていたと推測される。

 

 結界が消える前、『棒島 乃子』が倒れている被害者と立っている佐倉さんを目撃。

 その後、ももこさんたちが被害者を発見し、ボイラー室に戻った後、近くにいた佐倉さんを問い詰めて、犯人だと自供した……ということになっている。

 

 本来は殺害方法も言うんだろうけど、それはソウルジェムの破損に決まっている。

 それよりも問題は、動機だ。十七夜さんはどう説明づけるんだ?

 

「被告は一切の動機を語らないが、可能性が高いものとしては『返り討ち』だと思われる。本人に動機がないのなら向こうにあるというわけだ。被告は器物損壊や窃盗を行った過去があり、なにかしらで恨みを買ったのだろう。二人がかりならばと襲い掛かったが……それでも届かなかった」

「待った」

 

 言いたいことがあって思わず声をかけた。

 今回は円滑に進められる範疇でならこういうことも許されている。使えるだけ使おう。

 

「だったらさ、正当防衛が適用されるんじゃないのかな。殺されるか殺すかだったんだ」

「そうだな。普通は、そうだろう」

 

 この反応。まるで待っていたかのようだ。

 

「ここで問題となるのが、被告が『皆殺しにしてやった』と楽しそうに発言したという噂が流れていることだ。この噂は事実であり、実際に聞いた者がいる。よって、自分が問い詰めたいのは被告に殺意があったかどうかだ。これを確かめない限りは神浜に流れる噂は残り続けるだろう」

 

 なるほど。動機はあくまでも前座で、こちらを主張したかったらしい。

 

 この後は弁護側の冒頭弁論だけど……魔法少女裁判という特殊性から省略される。

 裁判長がウワサである桜子さんだからというのがあるけど、帆秋さんがまともにできる気がしないのが一番の理由な気もする。

 

 というか、その帆秋さんはもしかして……。

 

「……だ、大丈夫。わかってるわよ」

「だと思った」

 

 目が泳いでいた。絶対に理解していないよ、これ。

 マギウス裁判で同じく助手をしていたいろはちゃんは相当頑張ってたようだ。

 

 しょうがないから簡単に説明することにした。

 大前提として、重要なのは『確認できる事実』だ。なんでもアリの魔法少女なんだから後出しで考えてたらキリがない。誰もがわかる事実に対して罪を考えることになる。

 

 被害者がいることと、『皆殺しにしてやった』という発言は事実。

 実際にやったかどうかは自供しかないからわからない。ただ、もしも実行を証明する証拠が出てしまったら、ほぼ確実に有罪となる。

 

 さらに観鳥さんたちにとって問題なのは、少しでも疑念を残してしまったら佐倉さんへの噂が消えないということだ。マギウス裁判の時のように罪を軽くすることが目的じゃない。完璧な無罪を勝ち取るしかないんだ。

 

「じゃあ十七夜が殺意を確認したがってるのは……」

「確認が取れてしまえばそこで決着だから、かな。否定できれば有利になるけど、失敗したら終わり。まったく、本当に容赦がないよ」

 

 それでいて、十七夜さんは自分のメンツとか勝ち負けにこだわってるわけじゃない。開廷前の言葉通りに、正義を為すために真実を求めてるんだ。

 もっとも、観鳥さんも同じ。例え醜く苦しいものでも、真実を見逃すつもりはない。

 

 そこで桜子さんがまた木槌をコンコンと鳴らした。

 こうやって話している間に、次に行われる証人尋問の準備が整ったらしい。

 

「│それでは証人、前へ│」

 

 最初に呼ばれる証人は被告人である佐倉さんか、ももこさん、もしくはもう一人の目撃者である棒島さんとやらだろう。事件をよく知っている人が選ばれるって、ちょっと調べたから知ってる。

 

「はい! この竜城明日香にお任せください!」

「明日香だけど」

「被告人でも目撃者でもない第三者の捜査結果による証言。俯瞰するには重要だろう」

「言われてみればそうね」

「……そうかな? いや、そうなのかも……」

 

 まあ、観鳥さんも裁判に詳しいわけじゃないし……いいのか。

 証人尋問は台本があるって見た気がしたんだけど、魔法少女の裁判だし細かいことは置いておこう。

 

「私が証言するのは現場についてですが……事件の起きた水徳湯を調べた結果、重大なことが判明したのです!」

「それってなにかしら」

「帆秋、口を挟むと進まんぞ」

「│あまりにも遅延行為をするとペナルティを与えることになる│」

 

 こういう“待った”はダメらしい。

 帆秋さんの「私にだけ当たりが強くないかしら」という言葉は無視されてそのまま証言が続く。

 

「なんと、事件当日の午後は貸し切りの状態だったのです! 水徳商店街の企画でイベントを行っていたようで、その時刻になると扉がロックされて、一定時間が経過するかボタンを押されるかしないと開かなくなるそうです」

 

 裏口にあったあの『今日は銭湯貸し切りデー』のことだろう。にしても、ロックまでするとか、なんてはた迷惑な……。

 

「杏子さんは学校に通っていません。ならば、午前中に入り口から入ってボイラー室に行けたはずです!」

「……竜城君、つまり?」

「つまり! 完全に外と遮断されたこの状況では、事前に内部にいた魔法少女の犯行しかありえないのです! 被害者のお二人も偶然中にいたのでしょう。そして結界で鉢合わせした……いいえ、むしろ狙われていることに感づいて誘い込んだのです。証拠隠滅が容易い結界内に! さあ、さあ、さあ、おとなしく認めて償いましょう!」

 

 うん……うん?

 この証言、完全に佐倉さんがやったという認識での発言だ。そういえば、必ず証拠を見つけるとか言っていたような。……思い込みかな。

 

 そのまま通れば計画性があったということになる。

 もちろんそんなわけはない。色々と指摘したいことはあるけど、確実に矛盾している明らかな部分がある。まずはそこを指摘して、この可能性を消そう。

 

「帆秋さん、今の――」

「わかってるわ」

 

 そう言うと帆秋さんは証拠品が書かれた資料ではなく、自分の鞄を漁って一枚のチラシを取り出した。あれは……す、水徳湯のチラシ……。

 

「証言は、このチラシの内容と完全に矛盾しているわ!」

 

 思いっきりつきつけて、叫んだ。

 静かな傍聴席がより静かになった気がする。

 

「│……どこが?│」

「帆秋……」

「と、とりあえず異議を申し立てる!」

「│とりあえず、異議は却下します。不用意な発言はしないように│」

 

 まいったな、早とちりで勘違いしやすいのはウチも同じみたいだ。

 

「よく考えて。竜城さんの証言、誰も入れなかったことが前提になってる。でも、そうじゃない。目撃者はいるし、どうやって外に出たのさ」

「……言われてみればそうね。どうして間違えたのかしら」

 

 帆秋さんは今度は落ち着いて、ゆっくりと竜城さんに指摘した。

 

「『完全に外と遮断された』……それはおかしいわ」

「いいえ、そうなのです! ネタバレになるからとなかなか教えてくれませんでしたが、完全にロックされると聞きだしたのですから!」

「ももこたちが入ったのは()()。当時は鍵が開いていて、正面の入り口が閉まっていてもそちらからは侵入可能だったのよ」

「……裏口? さ、ささらさん……?」

 

 振り向いた竜城さんに、傍聴席に座っていた美凪さんが静かに頷いた。

 

「言ったはずなんだけど、杏子さんを犯人だと思い込んだ結果、頭から抜け落ちたのかも……」

「思い込み!? ……この竜城明日香、一生の不覚です!! かくなるうえは自害を!」

「ストーップ! あの、もう明日香を連れて行っていいですよね!?」

 

 許可を得た美凪さんは、「猪突猛進でそそっかしいだけで良い子なんです」と擁護しながら竜城さんを傍聴席へと連れて行く。コン、と木槌の音が鳴った。

 

「……で、だ。意図とは違ったが、今の証言でわかったことはある。当時、扉はロックされていて、事前に入らなければ裏口からしか出入りできなかったのだ。もっとも、貸し切っていたのは被害者でも被告でもない。それに、被告は一人で裏口から侵入したと資料に書いてある」

 

 貸し切りの情報は水波さんが『変身』で店員になりすまして盗み見てきたそうだ。どうりで昨日、ももこさんに会いに行ったらいなかったわけだ。

 

「ねえ観鳥。裁判のために罪が増えてないかしら」

「観鳥さんたちも似たようなことしてたからなぁ……」

 

 佐倉さんが裏口から入ったというのも本人が言ったらしい。

 被害者の二人がどこから入ったかはわからないけど、おそらく裏口だろう。確かめるには夏目ちゃんに『再現』してもらえれば楽なんだけど、魔力の範囲を超えているそうで、上限を上げられる史乃さんもアイドルの仕事でいなかった。

 

 ……ん? というか、それを知っているのなら、ロックされていたことを十七夜さんは知っているんじゃないか。なんのために言ったんだ?

 

「ここで、裏口以外から入れた可能性を潰してみようではないか。自分たち魔法少女の中には容易く密室を移動できる者がいるだろう」

「雫やせいかの魔法ね」

「うむ、話が早いな」

 

 そうして説明し始めたのは、保澄ちゃんが観鳥さんたちとずっと一緒にいたアリバイ。加えて、事件当日は晴天でせいかちゃんの『水から水へ移動する力』を屋外で使用するには制限があったということだ。銭湯ゆえに内部には飛べても容易に出られなくなる。必要な水を運んでいたら目立つだろう。

 

 彼女たちの魔法は、こと移動に関しては他に類を見ない強力なものだ。本来の意味で固有の魔法とも言える。

 つまるところ、十七夜さんはあくまでも佐倉さんが有罪であるという立場を崩さず、他の魔法少女に余計な噂が飛び火しないようにこの場で証明してくれたわけだ。

 

「検事側としては被告の犯行であると主張を続ける。論点は殺意があったかどうかについてで変わらん。次は『皆殺しにしてやった』という発言を聞いた証人に出てもらおう」

「│わかった。それでは次の証人、前へ│」

 

 あの様子だと、それも当然だと思っているんじゃないかな。

 

 十七夜さんに関して考えるのはここまでにしておこう。

 証言台に立つ、どこにでもいそうな女の子が棒島乃子さんだそうだ。……彼女、もう一人の目撃者じゃなかったか? いや、今は彼女の証言を聞く時だ。

 

「魔女の反応を感じて結界を探したんですけど――」

「それではない。今、君に聞きたいのは別のことだ」

「は、はいっ……」

 

 睨みを利かせた十七夜さんの重圧はなかなかのものだろう。棒島さんは怯えて次を話し始めた。

 

「結界で見たことは忘れるようにして、水徳商店街で買い物をしていました。そうしたら聞こえてしまったんです。結界内にいたあの人が、みんなを『皆殺しにしてやった』って、楽しそうに言ってたのを……! そんな人がすぐ近くにいたんですよ!? 買い物は止めてそのまま帰りました……」

 

 これを否定できなければ、こちらが不利だ。

 

「……来たわね」

「崩さないといつまでも疑いは晴れない。やろう」

 

 もっとも、今の短い証言ですら大きな矛盾がある。

 別に難しい話じゃない。どうしてそう思ったのかを考えるのは後。証拠をつきつけてやれば、答えは出る。

 

 それを繰り返せば――真実に、辿り着くわけさ。

 

 

 




■今回の内容
『うん、水徳湯に行こう!』(一部分)

■うん、水徳湯に行こう!
 オリジナルサウンドトラックに付いてくるミニドラマ。
 みかづき荘の面々が水徳湯に行く話。

■なぎたん
 検事どうしたァ!?
 なぎたんまだ証言は二人目、法廷は始まったばっかりよ!

■明日香
 年上の従兄弟を警察官にするために契約している。なので警察役に。
 なお、叔父(従兄弟の父)は神浜市長選で不正を働き、公職選挙法違反をやらかしている。

■ICレコーダー
 観鳥さんが胸ポケットにいつも忍ばせているアイテム。
 よく見るとLive2Dにもちゃんと存在する。

■証人
 個性が強いので下手に魔法少女を呼ぶと法廷が混乱する。
 裁判なんてやめましょうよ!


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