マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート45 お月見は優雅な茶会のあとで 前編

 自らトラブルに飛び込むRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は塁ちゃんと顔見知りになっておきましたが、今回も同様に新しい魔法少女と出会いに行きます。本命の下準備だけどな!

 

 というわけでやってきました。まずは水名女学園です。

 ここに所属する魔法少女は第一部でも散々出会いましたね。そのうちの一人を正門で待ち伏せしましょう。一応お嬢様学校なので工匠学舎のように準備なしで突撃すると警察沙汰になってロスります。やめようね!

 

「あら、帆秋さん。この阿見莉愛に用でも?」

 

 違います。

 ですが、知り合いが出てきたのはちょうど良いですね。おう莉愛様! ゆきかちゃん知らねぇかい!?

 

「七瀬さん? 先ほどご帰宅なされるのを見ましたが……」

 

 そういうことは早く言わねぇかロスするだろォン!?

 じゃあな! しばらくしたら用があるからそれまで元気でな! 

 

 下校したとなれば次に行く場所は運が絡みます。直帰してるかもしれませんし、どこかで魔女と戦っているのかもしれません。

 

 しかし、この第一部終了後かつ第二部開始前のチョー平和な時期なら高確率でゲームセンターにいます。お前……ひょっとして無類のメダルゲーム大好きガールか?

 

 少女ゲーセン捜索中……。

 

「あっ、くれはさん。今日も一緒にメダルゲームやりますか?」

 

 え、なにそれは……いましたけど、なんかセリフが妙に親密なものになってます。

 

 アッ!(超速理解) 神浜魔法少女ファイルチェック! 信頼度が上がってるぅぅぅ! 勝手に順位を上げてきてるぅぅぅ!! どこまでもチャートの安定を壊してきやがる七瀬ゆきかァッ!!

 

 落ち着きました。

 これはスキップの間に起きたことが原因でしょう。勢いでゆきかちゃんのせいにしましたが、くれはちゃんのせいかもしれませんね。

 

 まあいいです。どうせ第二部はゆきかちゃんのイベントに頼ること前提なので多少は大目に見ましょう。

 なぜならば彼女を経由することで、聖リリアンナ学園に属する魔法少女への接触があっという間に行えます。同じくリリアンナの灯花ちゃんはそういう効果が一切ないおガキ様なので、ゆきかちゃんを利用するとかなり短縮できてうまあじです。

 

 さて、次は水名とリリアンナの生徒会同士の交流会について聞き出しましょう。

 

「それなら明日ですが……どうかしたんですか?」

 

 この交流会がゆきかちゃんの主役イベント『お月見は優雅な茶会のあとで』となります。成功させることでリリアンナの魔法少女たちと交友関係を結ぶことが可能で、第二部本編に入ってからも有利な効果を得ることが可能です。パパパっと終わらせてしまいましょう。

 

 この辺で発生するのは間違いないですが、スケジュール調整で日付が変わるので参加者に聞くのが一番です。今回は明日ですね。

 さっそく下準備をします。しかーし走り回って予定を入れるだけなので倍速だ倍速。

 

 くれはちゃんが駆けずり回っている間……現在の目標について簡単にご紹介します。

 

 まだ第二部は始まっていませんが、この段階で第一章以降の短縮のために行動することができます。今やってるのなんかそうですね。神浜マギアユニオン以外の他勢力の影響度に関係します。

 

 また、強化イベントのフラグもこの辺に転がっています。確実に回収しておきましょうね~。

 

 しかし……一番重要なのは、また神浜が壊滅の危機に陥ることです。防がなきゃ(使命感)。

 まあ放置すると神浜どころか世界そのものが終わるんですけどね。その対策が第一です。詳しくは始まったら解説しますします。

 

 な ん で 等 速 に 戻 す 必 要 が あ る ん で す か ?

 

 ガバではありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 いつもの無駄に広いくれはちゃんハウスに戻ってきた場面ですが、ここは解説が必要だと思ったので戻しました。配慮に長けた走者の鑑(自画自賛)。

 

「おかえりー」

 

 もはや見慣れた光景ですね。帆奈ちゃんがソファにいます。杏子ちゃんとゆまちゃんはどっか行ったので住んでません。オタッシャデー!

 

「今日は早かったじゃん。なに? あたしに会いたかったとか~?」

 

 そうだよ(肯定)。

 じゃあ、脱げ。服だよ服! お洋服!

 

「えっ……うん……あんたが言うなら……」

 

 間違えました。

 もう南凪自由学園に転校してるのでどっかに保管してましたね。帆奈ちゃんは元々水名の学生なので制服を持ってます。とっとと出すんだよぉ!

 

「なら最初から言ってよ紛らわしい……はいこれ。……また着るの? あんまりサイズ合ってないのにさぁ」

 

 ねんがんの みずなせいふく を てにいれたぞ!

 

 これで変装すればいかに水名と言えど問題なく乗り込めます。ぜんぜんガバ警備じゃんお前! 笑っちゃうぜぇ~!

 今回はチャート通り帆奈ちゃんから入手しましたが、水名の知り合いなら誰でもいいです。水名全滅なんて超展開に発展してたらまさらに透明化で連れて行ってもらいましょう。

 

 なお、同じ手を使えば聖リリアンナ学園以外は不審者扱いされなくなります。工匠の時のように急ぐ必要もないねんな……。

 そのリリアンナは超お嬢様学校なのでセキュリティが半端ではありません。制服を着て正面突破もできないのでこうしてゆきかちゃんを経由してるんですね。

 

 制服潜入法も紹介したので、帆奈ちゃんに頼み事をしてから倍速にしましょう。南凪のくれはちゃん、加速します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日経過して当日となりました。

 普段通り学校には行きますが、着るのは水名の制服です。南凪は自由なのでこれぐらいヘーキヘーキ。

 

 校内で発生する交友イベント等は全部スルーして放課後になったら最速で駅にダッシュ。直角コーナーのインコースを攻めて改札を走り抜けましょう。こうするとちょうど水名行きの電車に乗れます。しかし駆け込み乗車をしてはいけない(戒め)。

 

 

 わぁ、これが水名女学園ですかー。色んな魔法少女がいますねー。こんなに揃ってるとは思わなかったぁ。

 ここは正門で、向こうに、校舎があるんだ。今から、そこへ行こうよ。

 

 

 というわけで正々堂々と正面突破します。おじゃましまーす。

 突入したら真っ先に高等部三年生の教室を目指してHere We Go(ネイティブ)。

 

「くれはちゃんですぅ! あれ、どうして制服を? 麻友ちゃん、知ってますぅ?」

「うーん、莉愛ちゃんならわかるかも。私も今日会おうって話しか聞いてないし……」

 

 まずは史乃沙優希と梢麻友のお二人です。どういった性能かは以前にも解説しましたが、会話での信頼度上げ中は暇なのでおさらいしましょう。

 

 さゆさゆは固有魔法『魔力提供』により味方に魔力を渡すことができます。なので基本的には後衛でソロライブしててもらうのがいいですね(レナちゃん並みの感想)。一応本人も戦えますが、他に味方がいるのならサポートに徹してもらったほうがいいです。

 

 麻友は第一部で活躍した、鉄壁の防御を誇る固有魔法『攻撃不可』の持ち主です。どっかの燃費極悪『停止』くんとは違って攻撃を止めることに特化しているので使い勝手がいいですね。主に大人数での戦闘によく効くんですよ。

 

 しかーし、当然のことながら第一部で知り合った魔法少女のほとんどが神浜マギアユニオン所属となります。今後の展開が荒ぶると協力できなくなるので頼り切るのはやめようね! 走り切れる安定したチャート、お願いします!

 

「それで、沙優希たちへの用ってお話することだったんですか~?」

 

 そうだよ(肯定)。特にさゆさゆの信頼度はアイドル活動に付いて行けるレベルがあれば安心です。最後の追い上げをしておきたいですからね。

 だが用は済んだ。じゃあな!

 

 

 お次はこちら、中等部二年生の教室です。

 

「むっ、意外と早かったですねくれはさん。南凪から来るのならもう少し時間が――って、ちょっと待ってくださいよ! なんで校内にいるんですかウチの制服着てるんですか!?」

 

 まなかちゃんに会いたかったからだよ! 

 ところでまなかちゃん、さなちゃん以外の同学年のお友だちとか……いらっしゃらないんですか?(無礼)

 

「つい最近なら『若菜(わかな) つむぎ』さんという方が……じゃありませんよ、スルーしないでください」

「まあいいじゃありませんか。帆秋さんにも考えがあってのことでしょう?」

「げっ、先輩いつの間に」

「段々失礼になってくわねこの後輩……」

 

 なんか莉愛様が勝手に増えてますが大したことではありません。

 収穫は『若菜 つむぎ』の名前を聞けたことです。彼女は神浜マギアユニオンのイベント『桜の轍』に参加すれば高確率で出会えますが、まなかちゃんと知り合っているのなら聞いたほうが早く出会えます。

 

 彼女は特別役割があるわけではないのですが……第二部では交友関係にある魔法少女の数を増やすことが重要です。今日はいないみたいなので後日知りあっておきましょう。

 

 もう信頼度は十分稼いでいるので、ここで必要以上に会話する必要はありません。

 特に莉愛様の信頼度を無駄に上げるとギャグに片足突っ込んだ変なルートに突入する恐れがあります。突入したら? 再走だよ再走!

 

 では二人と別れて校舎の外へ。正門が見える位置にまで移動します。

 オススメは茂みの中です。ここなら余計な会話イベントが発生せず、確実にターゲットのいる場所を確認することができます。

 

 人の流れが見える見える……。時間からしてそろそろでしょう。水名の一般モブ学生が待機してますからね。

 

「ごきげんよう、ようこそ水名女学園へ」

「はじめましてー」

 

 おっほっほっほ~元気だ。

 あのベレー帽が特徴的な制服二人組がリリアンナの子です。金髪ショートカットのほうが姉の『柚希(ゆずき) ほとり』、金髪ツインテールが妹の『柚希 りおん』。双子ですね。

 交流会の予定ではここにもう一人いますが、イベントの都合上遅れてきます。今はスルーしておきましょう。

 

 ところで、くれはちゃんチョップはパンチ力、くれはちゃんカトラスは岩砕く、くれはちゃんアイなら超視力です。遠距離でも的確にりおんちゃんの指を確認することができるってこれマジ?

 

「りっ、りおん……なにか視線感じない……?」

「な……いくらほとりんが可愛いからって……!」

 

 いかん、危ない危ない危ない……。

 目的は達したので逃げましょう。すたこらさっさー。

 

 今度は旧校舎に向けて怪しまれないように移動中ですが、今の行為について……お話しします。

 指を確認したのは当然、りおんちゃんが魔法少女になっているかどうかの確認です。ゆきかちゃんがここにいない時点でほぼ魔法少女じゃないこと確定ですが、それでミスすることもあるので確認は重要(1敗)。指輪があったらリセットしましょう。

 

 では所定の位置に待機しまして……この場所で明日以降のスケジュールを埋めていきます。

 あもしもし? あ、もしもし? 組長っすか? 会合を……もう予定してる。さすが組長! 頼りになるぜ! じゃけん、ブロッサムへのお休みも連絡しておきましょうね~。だからもうブロッサムは十分だって言ってんじゃねぇか(棒読み)。

 

 これで埋められるところは埋めましたね。あーさっぱりした。

 

 そしてなんとなく旧校舎を見てみましょう。

 

「えっ……こ、校舎が!」

「崩れたの!?」

 

 モブのみなさんが驚いている通り、なんと丸ごと倒壊してしまいました。おっ、やべぇ119番だな!

 まあ電話なんかする暇ないので瓦礫の山の中に突撃します。生存者を探す魔法少女の鑑なんだよなぁ……。

 

 キリが良いので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 可愛いものって、好き。

 あたしが好きなのはテディベアにドールハウス。オシャレすることだって好き。ピンクのシュシュにふわふわのクマちゃんもお気に入りなのは間違いない。可愛いものはなんでも好きだから当然と言えば当然よね。

 

 でも、もーっと好きなのは、双子のお姉ちゃんの柚希ほとり。

 性格が可愛い。くりくりとした目が可愛い。あたしと同じ髪色でもショートにしてるのが可愛い。

 可愛さを引き立たせるためにお洋服を選んであげたり、寄り付く変なのを追い払ってあげたりしてる。他にも色々やってあげてたっくさん愛情を注いでる。

 

 だから、ほとりんはあたしのもの。可愛いって言っていいのはあたしだけ。あたしとの用事を優先すべきだし、言いつけは絶対に守らなきゃ。

 だーいすきなほとりんは、あたしの気持ちぜんぜんわかってくれないけど、この想いは本物なの。

 

 行動は朝起きてすぐ。

 ほとりんとは別の部屋(同じでいいのにパパとママが別にした)だから、準備をしたらすぐに会いに行くの。ほとりんは日曜日の朝に寝坊したくないって言うから、普段から絶対起きてる。だからこそ、きちんと時間かけておめかししてあげないと。

 

「い、いいって……朝から色々やりすぎだよ……」

「なに言ってるの、朝だからやるの。オシャレがしっかり決まると気分もよくなるでしょ?」

「そうかなぁ」

「そうよ。……ん、その指輪」

 

 左手の中指に指輪なんてしてたかしら。輝く宝石は黄色くて、太陽みたいに明るいそれはシトリンかトパーズだと思う。

 あたしがそれに気づくと、ほとりんは急に焦り出した。

 

「こっ、これは……へ、変なのじゃないから……!」

「わかってるわ」

「もしかして……りおんも?」

「遂にほとりんもオシャレに目覚めたのね!」

「あ、うん……そういうことでいいよ……」

 

 なんか反応が変ね。せっかくだからって、いつもより一段上のセットをしてあげたのに喜んでない。ほとりんのためにやってあげてるんだから間違いなんてないのに。

 

 なんて朝はいいけど、学校に着いたらほとりんとは離れ離れになっちゃう。どうして別々のクラスなんかにしたのかしら。

 休み時間になったらすぐ隣のクラスに行ってるから会えないわけじゃないんだけど、あたしはずっと傍にいたいの。

 

 本当に、思い通りにならないことばっかり。

 ほとりんは勉強でわからないことがあったらあたしじゃなくて同じクラスの子に聞くし。教える権利があるのはあたしなのに。

 というか、そんなの授業を聞いてればわかる話じゃない。効率よく練習すればなんだってできるでしょ? わからないならその効率を教えてあげるって言ってるのに、どうして避けるのよ。

 

 こういうとき、お人形さんはあたしの言うことをなんでも聞いてくれる。着せたい服だけを着てくれて、文句もなんにも言わない。与えた愛をそのまま受け入れてくれて、なんだって思い通り。あーあ、全部こうならいいのに。

 

 その日課は、聖リリアンナ学園と水名女学園の生徒会同士の交流会の日も同じだった。

 いつものように朝が来て、学校に行く。ちょっと違うのは、その後に水名に行ったことぐらいかしら。あたしたちは生徒会の役員だからこういう活動もする、その一環だった。

 

「ごきげんよう、ようこそ水名女学園へ」

「はじめましてー」

 

 二人で挨拶するけど、ほとりんはおどおどしていた。

 

「ほとりん、ちょっとしっかりしてよね。保護者のあたしが恥かくじゃない」

「だっ、だってぇ……」

 

 知らない人と話すのがそんなに緊張するのかしら。可愛いけど、それじゃ困るわ。

 まあ、本当は三人で挨拶する予定だったから、その分余計に気負いしてるのかも。可愛いけど。

 

 それで自家用ジェットが止められる滑走路があるかどうかを聞いて調整してると、ほとりんがもっと怯えた表情であたしの袖を引っ張った。可愛いけど、伸びるからやめてよね。可愛いけど。

 

「りっ、りおん……なにか視線感じない……?」

「な……いくらほとりんが可愛いからって……!」

 

 ほとりんが指差す方向には誰か一人ぐらいなら隠れられそうな茂みがあった。

 さては盗撮かと思ったけど、敷地内だし水名もお嬢様学校。そんなことはないはず。でも、まさか……ほとりんの可愛さを、このあたしに黙って堪能しようとしてた……? 

 

 きっ、と睨みを利かせる。そのまま一秒、二秒……なにもない。

 

「気のせいだったのかしら……」

 

 ほとりんは虫が大の苦手だから、飛んできそうなところに恐怖を覚えたのかも。

 結局、特に変化もないし案内されて校内へ。

 

 一通り見た感想としては、こんな感じかってところ。

 リリアンナは洋風なんだけど、水名は和風。メインに使ってる校舎は新しいものらしいからオモムキなんてないけど、雰囲気って言うのかしら。茶道部とか華道部、筝曲部で有名だし、伝統のある学校ってあたりがリリアンナと違う点なのね。まあ、水名区にあるから当たり前か。

 

 途中、綺麗なブロンドの髪でモデルみたいな人や、明るめアッシュベージュの髪をしたクールな人を見かけた。背筋がピンと伸びてカッコいい歩き方をする、ああいうタイプのお嬢様っぽい人はウチにいそう。二人共普段からケアに相当気を使っているのは一目でわかった。特に、クールなほうはどれだけ手間をかけてるんだろう。ちょっと話してみたいわね。

 

「なんだかワクワクするね。リリアンナとぜんぜん違って、見てて楽しいな」

「あんまりキョロキョロしないでよ。ちゃんと生徒会役員らしくしなきゃ」

「そっ、そうだね……気をつける」

 

 それでいいのよ、それで。

 広々とした生徒会室でのお茶会も、あたしの言う通りにしていれば間違いないの。おいしいクッキーを食べて、香りの良い紅茶を飲んで、笑顔を見せてくれればいい。

 

 でもそれは、あたしだけに向けるべき。

 水名の生徒会長に向けられたほとりんの表情は、ほんとは全部あたしのものなの。生まれてからずっと一緒で、これから先も一緒のあたしだけがその権利がある。多少の自制心と場を考慮する理性はあるけれど、これ以上は絶対に譲れない。

 

 時間が経つにつれてあたしとほとりんの距離は縮まっていった。元から隣の席でも、じりじりと寄って、“わかってるわよね?”って圧をかける。

 

「ほとりちゃんとりおんちゃんは本当に仲が良いんですね」

「あっ……他の人からもそう見えるんだ。なんだか、嬉しいな……」

「当ったり前じゃない! あたしはほとりんがだーいすきなんだから!」

 

 少し照れながら言うほとりんに、ちょっと満足した。

 

 だから、気づかなかったの。

 生徒会室でのお茶会の後、旧校舎で茶道部の実演をするから移動した時、ほとりんがいなくなってたことに。

 

 どこかで迷子になったのかもって、手分けして探そうとした。あたしなら迷うことなんてないし、早く見つけてあげないと泣いちゃうかもしれないじゃない。

 

 でも――それが、間違いだったのよ。

 

「なによこれ……」

 

 階段を上ったあたしは、奇妙な世界にいた。空はちかちかと極彩色に輝いて、地面は色が反転した石が敷き詰められている。積み上げられてる石からして、まるで賽の河原ってやつじゃない。

 こんな気味が悪いもの、悪夢ですら見たことない。むしろ現実だって認識してしまう。

 

 来た道を戻ろうにも背後は壁に変わってしまっている。

 もっとも、いくら怖くてもあたしが戻ることはない。だってほとりんの声が聞こえたんだから。

 

 前の方から聞こえたそれは、勇ましくも弱々しいほとりんの掛け声。きっとまた特撮の番組で見た言葉を言って自分を鼓舞してるんでしょ。ほとりんは虫だけじゃなく幽霊もダメな怖がりで、肝試しなんて到底無理なんだから、あたしが行ってあげなきゃ。

 

「りっ、りおん!?」

 

 ほら、いた。

 ……でも、なによあの戦隊モノみたいなコスプレ。

 一応前に見たことがある。宿泊研修の時に一瞬だけ着ていて、すぐに制服に戻っていた。結局その後のごたごたで聞けなかったし、暗かったし疲れてたから見間違えたんだとばかり思ってたけど……。

 

 目の前の大きな化け物は一体、なに?

 

 ベルみたいなそれは空中に浮いている。紙か鉄のような腕が二本伸びて、動いている。あんなの生き物じゃない。

 そんなのを前にしたら足がすくむ。あたしでさえこうなのだから、ほとりんは――

 

「な、なにやってるのよ……危ないから逃げないと……」

「うん、だから、りおんは逃げて」

 

 あたしの前に見える背中は震えていた。

 聞こえた声だって、偉そうなこと言っておいて恐怖の感情が透けてる。

 

 その時、あの化け物がこっちを認識したのか、腕を振り上げて赤ちゃんみたいな大音量の叫び声をあげた。音の振動が肌に叩きつけられる。反射的に耳を塞いでも鼓膜が破られそうで、立ってすらいられない。

 

 だってのに、ほとりんは平気そうにそのまま立っていて、どこかから現れた羽根みたいな白いローブを着た人と話してる。それで振り向くと、「しっかり掴まってて!」と言って、あたしをお姫様抱っこで抱えて走り出した。

 

 速い。どんどんさっきの場所から遠ざかっていく。あのほとりんが、あたしを抱えられるだけでもありえないのに、こんなに速く走れるなんて。

 

「もうちょっとで出口だから……!」

「……うん」

 

 いつもなら『今まで隠してたの』とか、『凄いじゃない』とか言うんだと思う。でも、理解できないことが起きすぎて頭がいっぱいだった。

 それに、なんだか懐かしかった。まるでちっちゃい頃みたいだ。いつだって側にいてくれた、あたしのことを守ってくれるヒーローにまた会えた。いつの間にか頭から抜け落ちていた、頼れるお姉ちゃんの姿があったんだ。

 

 ちょっと先に光が見える。あれが出口なんだろう。

 実際、そこに触れるとさっきまでいた旧校舎に飛び出した。

 

「つ、着いた……!」

「……帰って来れたのね」

 

 はあ、と安堵の息を吐く。

 あたしを下ろしたほとりんもなんとなく嬉しそう。らしくなく緊張してむっと閉じた口が緩んで――すぐに驚いたものに変わった。

 

 次の瞬間、さっきの比じゃない衝撃があたしたちを襲った。音なんかじゃない。暴風みたいに、吹き飛ばされる……!

 

「りおんっ!」

 

 伸ばされた手は、あたしを()()()()()()

 

 身体が宙に浮いて回る。

 ぐるぐると視界が回ってなにも考えられない。

 全身になにかがぶつかって、痛みが増えていく。

 ただただ落ちる浮遊感。

 全身に衝撃。

 数々の不快感は、そこで一旦止まった。

 

 ……自分が今、どうなっているのか。

 手足が重い。思うように動かせない。動かそうとすると鈍い痛みが走る。

 辺り一面を砂煙が覆い尽くしている。目が痛い。吸い込んでしまった煙が喉を刺激する。

 

「つぅ……なん、なのよ……」

 

 周囲に転がる瓦礫に木片、そして落ちた感覚からして、旧校舎が倒壊したんだと思う。

 あたしたちは四階にいたはずなのに、この程度の怪我で済んだのは運が良かった……のかしら。

 

 ……そうだ、ほとりん。あの瞬間、あたしを押し出したほとりんはどこ?

 視界が悪いけど、少なくとも周囲にはいない。痛む脚を引きずって、動かないほうの腕を庇いながら辺りを探す。

 

 急がないと。鼻にはなにかが焼ける臭いまでしてきて、パチパチと燃える音まで聞こえ始めた。煙に黒色が混じり出して、瓦礫の中に段々と赤色が増えていく。

 

 でもあたしが見つけたその赤は、自分から流れる赤によく似た色。

 

「ウソ……」

 

 ほとりんは、いた。

 

 下半身が瓦礫に潰されていた。地面との隙間は僅かもなく、赤色が広がっていく。ボロボロの上半身は力なく倒れて青ざめている。

 あたしだって、バカじゃないからわかる。呼吸はしているみたいでもこれは致命傷。どうやったって、助けられない。

 

 ――死ぬの? ほとりんが?

 

「ウソよ……」

 

 そんなのおかしい。なんでほとりんが死ななきゃいけないの。

 

 まだやりたいことがたくさんあるの。一緒に行きたい場所も食べたいものもいっぱいあるのよ。もっと喜ぶ顔が見たい。成長する姿を見たい。もっと、もっと、もっと!

 

「誰か、誰でもいいから……助けなさいよ……ほとりんが死んじゃう……」

 

 でも。

 もう無理だって、理解したくないのにわかってしまう。震える手で握り締めたほとりんの手に力がないの。なにもできない。あたしは涙を流すしか、できることがない。

 

 火の燃える音が大きくなっていく。流す涙さえ乾かしてしまうほど、強く。

 だというのに、あたしはここから動く気なんてさらさらなかった。

 

 このまま一緒にいれば、結果は見える。

 だっていうのに瓦礫を踏みしめる音。誰かが来た。

 

「あなたたち……!」

 

 それは、途中で見かけたアッシュベージュの髪をしたクールな人だった。あたしを見た後にほとりんを見ると、一瞬で緑の衣装に着替えて駆け寄ってくる。

 

「彼女は私が治療するから!」

「……なに言ってるのよ、今さら応急処置なんてしたところで間に合うわけがないのに……」

 

 それでも彼女は倒れるほとりんに手をかざす。すると、炎の赤とは違う、紅の淡い光が現れた。それは本当にほんの少しだけだけど、傷を癒している。さっきからずっと頭が混乱しているから、あまり不思議に思わなかった。

 

「う、うぅ……」

「ほとりん!」

 

 それに、ほとりんの声が聞こえたんだから。

 苦しそうなうめき声でも、意識が戻ったことに違いはない。確かに回復してるのよ。

 

「りおん……?」

「そう、あたしよ。あたしが側にいるから……大丈夫だからね」

「……手、握ってて……ぼやけて、あんまり見えない……」

 

 もちろん。望むならずっと握り続けてあげる。

 この人が治療させ続けていれば、もしかしたら――そう思った時、視界に白い生き物が入ってきた。

 

「これ以上はキミのためにも止めたほうがいい。間に合わないだろう」

 

 ……魔法少女? 間に合わない?

 

「なに言ってるの。魔力が足りなくなって魔女化ならわかるけど……今はドッペルがあるわ。足りなくなることはないはず……」

「いくら魔力があっても無駄だよ。彼女の腰にあるソウルジェム、小さなヒビが入っている。表面だけ治しても意味がない。ハードウェアとソフトウェアの修理方法は違うだろう? ……キミにわかるように言うよ。つまるところ、魔力の応用程度の魔法じゃどうやっても無理だ」

「それでも動けるぐらいになら……」

「先に火の手が回るだろうね。それに、ドッペルをこんなところで使っていいのかい? キミがいなくなる損失のほうが遥かに大きいからやめてほしいな」

「黙れ……! それでも、私は……!」

 

 なにを話しているのかはぜんぜんわからない。でも、良くないことってだけはわかる。

 白い生き物が話すたび、アッシュベージュの髪の人の表情がどんどん苦々しいものになっていく。紅の光が強くなっていくのと対照的に、息が荒くなってた。

 

 それは、ほとりんまで。持ち直したように見えたのは、まやかしだったの?

 

「ねぇ、ボク……りおんを守れたかな……」

 

 微かな、他の音に消えてしまうような声だった。

 でも、あたしには聞こえる。聞き逃すはずがない。

 

 ……ケガがないって言ったらウソ。どこもかしも痛いし、無事なところのほうが少ないんだもの。

 けれど、最初、あたしの前に立ってくれたこと。倒壊する時に押し出してでも助けようとしてくれたこと。全部、守ってくれたんだ。

 

 今のほとりんは焦点があってないのかぼんやりと眺めてるだけ。だったら――

 

「……そうよ。ほとりんのおかげであたしは傷一つないわ」

「良かったぁ……ボクの願い、叶ってた……」

 

 それが、最期の言葉だった。

 ゆっくりと動いていた身体さえ、動かない。

 

 守ってくれても、隣にいてくれなかったら。意味がないじゃない。

 

「……ほとりん? なんで……嫌、イヤよ――お姉ちゃん……っ!」

「――キュゥべえ!」

「協力を求めるなんてキミにしては珍しいね。最近は特にそうだ」

「いいから答えなさい! 契約できるの!?」

「できるよ。むしろ、ボクから提案しようと思ってたんだ」

「……っ……あなた、聞いて」

 

 あたしの両肩に手が乗る。抵抗する気すら今はない。

 

「魔法少女になれば、彼女を助けられるかもしれない」

 

 でも、『助けられる』なんて、ほんの少しの光が見えた。

 

 彼女は言った。この世には魔法少女という、アニメや漫画みたいなのが本当にいるんだって。すぐ近くにいるキュゥべえに叶えてもらいたい願いを告げて、契約する。その願いなら、ほとりんを助けられるのかもしれないと。

 

「……けど本当に最後の手段よ。助けられる代わりに、魔女って化け物と戦わなきゃいけなくなるの。魂は肉体から離れてソウルジェムという宝石になる。それが濁り切れば、同じ魔女になって――」

「いいわよ、そんなの! ほとりんも魔法少女なんでしょ!? だから早く!」

 

 聞いたわけじゃなかったけど、今までの会話からわかる。だからなおさら躊躇う理由なんかない。

 目の前に来たキュゥべえと向かい合う。

 

「さあ、キミはどんな『願い』で魂を輝かせるんだい?」

「あたしは認めない! こんな現実……ほとりんが死ぬなんて、絶対に認めない!」

 

 それがあたしの想いのありったけ。

 魔法少女になったらあの化け物と戦わなきゃいけない? 魂が肉体から離れる? だからなによ。そんなもので、あたしの気持ちを止められると思わないで!

 

 叫んだのと同時に視界が白く染まっていく。

 確信できる。これで、全部――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 毎度お騒がせしております、七瀬ゆきかです。

 今回の出来事は……なんて、いつものようなトラブルもなく、悠々と過ごせておりました。

 

 というのも、本日は水名女学園と聖リリアンナ学園の生徒会同士の交流会がある予定なのですが、生徒会役員のわたしがその準備をスキップできていたのです。

 

 もっとも、サボタージュといった不真面目なことではありません。実は家族とディナーの予定になっていまして、参加できないのに準備を手伝わせるのも忍びないという生徒会長様のご厚意です。

 

 しかし約束まではまだ時間があり、だったらいつもの放課後のようにメダルゲームなどに勤しもうかと考えた次第でして、こうしてゲームセンターにやってきたのでした。

 

 さてさて、本日も気合を入れて遊びましょう。軽い気持ちじゃ楽しくありません。失うものがメダルでも、真剣勝負に変わりなし。一瞬で全てが消えるかもしれないこの感覚……ふ、ふふ……。

 

 ……と、いうところで、わたしの視界からメダルゲームの筐体が消えました。それどころか騒がしい他のゲームのBGMまでも一切合切なくなってしまった。

 

「あ、あれ……? わたし、さっきまでゲームセンターに……」

 

 代わりに見えたのはいつもの生徒会室の内装。そして、生徒会長の話す声でした。

 

「ではお皿は七瀬さんに……七瀬さん?」

「は、はいっ!」

 

 おかしいです。もしや、先ほどまでのは全て夢?

 いえいえ、わたしは家族と――……約束なんてしましたっけ。特に予定がないから準備を手伝うつもりで……なにもおかしいところはないはず、ですよね?

 

 けれども疑問は消えません。生徒会長に頼まれた仕事のために校内を移動する間もずっとです。

 やっぱり夢じゃないはず。あの感覚は現実そのものでした。あんなのを夢で味わえたら魔法少女になってなかったと思いますし。

 

 ……間違いありません。不思議現象に巻き込まれてますっ!

 

 これはまた、わたしが魔法少女になる時に願った内容が関係しているのでしょう。

 願ったのは『生きている実感がほしい』ということ。どうやら永続的な効果を生み出してしまったようで、常に退屈とは無縁なトラブルが周囲で起こるのです。

 

「と言っても、状況がよくわかりませんし……とりあえず準備を――うわわっ!?」

 

 急にスマートフォンが鳴り出しまして、慌てて確認しました。

 いつもは! いつもはマナーモードにしてたり、電源を切ったりしてるんですよっ!? お嬢様学校ですから! もっと言わせていただければ、両親が過保護で買ってもらえたのはつい最近のことなので、操作に慣れてないんですっ!

 

 そんな自分自身への言い訳はともかく、電話がかかってきているようなので目立たないように隅っこに移動したのでした。

 

「はっ、はい、もしもし……くれはさん? どうしました? ……え、なんでもない? 今から水名に行く? は、はぁ……お待ちしてますね」

 

 一体なんだったんでしょう。くれはさんとは工匠学舎のみなさんと映画を撮り始めた頃から、よく並んでメダルゲームをしています。ですからお誘いだったのかもしれません。

 声の後ろから聞こえた音からしてもう移動しているようですし、会いに来たら事情を説明して帰ってもらうしかありません。

 

 なんて、わたしは暢気なことを考えていました。

 まだ気づいていなかったのです。これから行く先々で影響する、世界の意思を……。

 

 

 

 




■今回の内容
 『お月見は優雅な茶会のあとで』

■お月見は優雅な茶会のあとで
 ゆきかちゃん初登場イベント。第一部の頃から出てた? なんのこったよ(すっとぼけ)。
 なんで前半なのに捏造ばっかでイベントが1割しか進んでないんですか?

■柚希 ほとり
 特撮系魔法少女。こっちが姉。
 りおんちゃんが願わなければ退場している。

■柚希 りおん
 プリキュア系魔法少女。こっちが妹。
 改変前パートを9割ぐらい捏造しても……バレへんか……。

■聖リリアンナ学園
 水名の比ではないマジのお嬢様学校。水名が伝統なのに対して、こちらは企業などのお金持ちお嬢様の雰囲気。
 しかし、属する一般モブですら超善良のお嬢様。ほとりんの特撮趣味も受け入れられる。住む世界が違う。

■高校二年生
 くれはちゃんはここ。結構いい位置。
 他は鶴乃ちゃん、このみちゃん、桜子、莉愛様、月夜ちゃん、月咲ちゃん、このは、美雨、みくら、てまり、みたまさん等が該当する。 

■魔法
 描写からして回復系を固有魔法で持っている魔法少女以外でも治癒魔法や汎用的な魔法は使える、はず。どこまでできるはぜんぜんわからん! 自然回復の範疇なら可能、欠損などの大怪我は回復不可ぐらいのイメージ。
 なお、くれはちゃんは追加取得魔術(劇場版・たるマギ)にステータス振っておらずドッペルも自己回復だけなのでまったくできません。回復してるようでぜんぜん回復してない。

■くれはちゃん絶望再走ポイント
 妹を想う姉を助けられない。



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