マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート49 少女吸血鬼の噂

 いつもの放課後RTA、はーじまーるよー。

 

 序盤特有の信頼度上げに奔走している時期ですが、自由行動時に観鳥さんが近くにいる場合は話を聞いてみましょう。第一部でもあったイベントを教えてくれるやつですね。

 

「帆秋さん、こんな話知ってる? "少女吸血鬼"だってさ」

 

 来た、来た、来たなぁ!?

 この情報を待っていました。来ずに第二部に突入したらリセどころか再走だったので一安心ですね。

 

 少女吸血鬼のうわさを今や懐かしい神浜うわさファイルにイン! 本来の意味のうわさもイッパイイッパイホシイ……。

 なお、これは聖リリアンナ学園と工匠学舎の魔法少女の知り合いが一定数以上だと入手しやすくなります。なので序盤ではその二校を中心にするチャートにしているわけです。運頼りのチャートとか正気か?(自問自答)

 

「なんでも北養区の山奥の郊外から市外にかけて人の生き血をすする吸血鬼が出没するらしいんだ。時間帯はもちろん夜。出所はオカルトサイトだから眉唾ものだけど、面白いしね」

 

 ずいぶん調査したな……まるでオカルト博士だ。

 観鳥さんはリトルグレイみたいなマスコットをカバンに付けてるので結構オカルトも好きなんじゃないですかね? いや好きじゃないかもしれない。どっこいどっこいですね、どっこいどっこい。

 

 フラグも立ったので準備万端、さっさと進めてイクゾー!!

 

「ちょっと待って。場所わかってる?」

 

 チャート通りだし試走してるから大丈夫だってヘーキヘーキ安心しろよ~。

 それじゃあ改めて窓から飛び降りて短縮しつつ……。

 

「ええーっ!? くれはちゃんが落ちてきた!?」

 

 あっ牧野さん! ご無沙汰じゃないですか~。

 

「よっと」

「うわわ、令ちゃんまで!」

「うちじゃいつもの光景扱いされるから大丈夫だよ」

 

 ちょっと予想外ですね。今回は他にメンバーを増やすつもりはありませんが……。

 

「話はしてたんだけど、牧野チャンも気になるらしくてね、付いてきてくれるって。それに帆秋さんに任せると目的地に一直線か変な寄り道ばっかりするかのどっちかだからねぇ」

「くみがバッチリ案内しちゃうよ~! 北養区じゃくれはちゃんが噂になってて令ちゃん大変そうだし」

「またウォールナッツに連日通ってたんでしょ? ひなのさんが呆れてたよ」

 

 ここはリセ……しません。

 必要ない時にトラブル運んでくる七瀬ゆきかと比べたらいくみんは非常に安全です。それにイベントに頼ること前提に組んでいた以上、今回みたいな関係するランダム発生も……まあ……いいだろ、いいよな! いいってことにしようぜ。

 

 ではいざ北養区。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました北養区山中。フェントホープとの関係もあって元々が羽根のキャラがいると迷いません。

 ここでのイベントは夜にならないと発生しないため、道中雫ちゃん家とウォールナッツで時間を飛ばしています。時間スキップもできる、信頼度も上げられる、バフもかかる、やっぱり……飲食店を最高やな!

 

「ふええ、真っ暗だよぉ~! くみ怖~い!」

「月明かりって言っても暗いねぇ。ライトは持ってるけど」

「さっすが令ちゃん!」

「伊達に取材やってないさ」

 

 さっさく吸血鬼少女探しスタートですが、まともに探すと日が明けちまうよ! やめだやめ!

 

「どうしたの帆秋さん、行こう」

「そっちに道ないけど……ちょ、ちょっと!?」

 

 正解は山道を突っ切ることです。

 ひたすら全速前進、Here we go(ネイティブ)。

 

 

 少女疾走中……。

 

 

 最短距離で着きました。ここかぁ~…ここが里かぁ……。

 

「は、はぁ……待ってぇ~……」

「帆秋さんが本気で走ったらいくら魔法少女でもキツいんだって……あれ? 今、光が……なにか反射した?」

 

 これですこれ! これが欲しかったわけ。

 くれはちゃんの知識じゃ判別ができないので、技能持ちの観鳥さんがここで輝くわけです。拾って、どうぞ。

 

「小さいけどデジタルカメラだね。なんでこんなところに」

「ここに誰か来てたってことだよね? 落とし物なら届けないと」

「いや、ちょっと気になる……」

 

 不思議ですねぇ、じゃあ周囲を見てやるか! しょうがねぇなぁ!

 はいしばらくダッシュ! おもむろに茂みにダイブ!

 

「ひええっ!? ――はっ、イミテーションクールッ!?」

 

 というわけでいました。塁ちゃんです。

 なんと彼女、少女吸血鬼の噂が発生した後、最速でここに探しに来ます。争い激しいオカルトRTAの走者メリ?

 

「変な声がしたけど……その人は?」

 

 かくかくしかじかで工匠学舎の友人ですと伝えれば、大人な二人はすぐわかってくれます。これがレナちゃんとかだと信頼度の高さで話がこじれたりするので気をつけましょう。

 あとは塁ちゃんが事情を説明してくれればOK。謎の音が聞こえたと教えてくれたらすぐに魔力を探知しましょう。

 

「どうしたの~? そんな怖い顔して、して……本当に魔力の反応がある!?」

「あ、ほんとだ」

「うーん、さっきの様子と今……」

 

 後は全員を引き連れて魔力を追ってみましょう。

 魔法少女4人、夜、山中……なにも起きないはずもなく……。

 

「その、魔女の結界が……」

 

 塁ちゃんが見つけてくれましたね。ようやった! それでこそ魔法少女や。

 少女吸血鬼のうわさ発生後、夜間のタイミングで北養区の魔女結界に入ると先客がいます。

 

「……あれ? クシュちゃん!?」

「郁美さん?」

 

 探していた彼女こそ『入名(いりな) クシュ』ちゃん。素の状態でかなりのステータスの高さを持つ高性能二刀流魔法少女です。

 近接型の魔法少女ですが、特筆すべきはその固有魔法。なんと斬った相手から魔力を吸収して回復できます。自動浄化システムがない場合は必要なグリーフシード数を軽減できるので、メインアタッカーに据えるため開幕早々リリアンナ周辺を徘徊するお嬢様走者がたびたび出現することで有名ですわよ。

 

 無駄に高性能な魔法少女(アリナ先輩)にありがちな性格がアレということもなく、話せばちゃんとわかってくれるとても良い子です。

 しかし悲しいかなバランス調整の波。願いの影響で強制的な昼夜逆転体質になってしまっており、夕方から早朝の夜の間しか出会えません。確実に探し当てるため、このイベントを利用する必要があったんですね。

 

 見ての通りいくみんと面識ができているということは、第一部で『Only Dreamers』が発生していたんでしょう。遭遇しませんでしたね。

 

 『Only Dreamers』はクシュちゃんの主役イベントですので、結果さえ見ればチャートに組み込んでもいいのですが……観鳥さんがマギウスの翼入りするぐらいの時系列なので隙間がなく、あの(みなさんご存知)七瀬ゆきかが強制参加してくるので彼女とも面識ができてしまいます。ガバるから第一部では会いたくないんですよ!

 

 なお、少女吸血鬼と言われてるのは彼女です。八重歯なのと、ミニトマトが好きで持ち歩いていることが原因で、これらはきちんと手順を踏めば推測してくれますが、色々すっ飛ばしてるのでわかりません。悲しいなあ……。

 

「それじゃ、粛清を始めるね」

「――まさか、君も"集いし者"か。フッ……いいだろう、僕も名乗ろうじゃないか」

「えっ、え? つど……?」

「なんでもないです……」

 

 はい全員で突撃! クシュちゃんくれはちゃんが前衛、塁ちゃんいくみんが中衛、観鳥さんが後衛とちょうど良いメンバーです。

 とは言うものの、明らかにパワーに差がありまくり性能差ありまくり。クシュちゃんも塁ちゃんも、マギウス時代から今までほぼソロで戦っていた猛者なので仕方ありません。なんで生き残れてるんだかわかんねえ。

 

 そんなこんなで魔女を一刀両断。あっという間でした。

 ほぼトドメ刺してないので他のメンバーに経験値がいきましたね。もうくれはちゃんに稼ぎは必要ないのでこれでOKです。

 

 イベントの最後に会話がありますが聞き流してこのまま帰りましょ。なんかガサガサ音がしますが、動物かなにかでしょ(適当)。

 

「――しっ、死相が!」

 

 は?

 

「魔女の口づけ!?」

 

 は?

 

 ぐええええ! ぽっと出のモブにくれはちゃんのHPがかなり削られた!

 包丁を上向きにしてざっくり! 肋骨の下狙われましたねこれ。オイオイ殺し屋かコイツ。

 

 魔法少女とはいえ構造は人間なので普通にダメージを受けます。ムービー包丁は怖いですね。

 固有魔法が回復の魔法少女がいないと危ないかもしれませんが、まあ『停止』くんで止めれば大丈夫……あっ。

 

 ここ神浜市の境だわwwwww下手したら魔女化するわwwwww。

 草生やすな。

 

 これはクシュちゃんの関係ではなく『鏡が映すほんとうの私』というイベントの冒頭部分です。開始位置が北養区なのでちょうど重なってたみたいですね。ハードモード特有のイベント重ね掛けが起こるとかこんなんじゃRTAになんないよ~。

 

 まあいいや。

 どうせこの後発生させるつもりだったのでこのまま続けましょう。気絶ワープが使えれば帰りの時間が短縮されるし誤差だよ誤差!

 急いで搬送されるので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入り口に繋がる広い鈍色の道と周囲の芝生。

 所々にある木々と街灯。

 それらを抜けた先に見えるガラス張りの校舎。

 

 それが、南凪自由学園。

 令ちゃんをはじめとして、知り合いが多く通っている場所だ。

 

 こうして見渡すと地面の緑と夕焼けが調和して、友達と別れたあとの帰り道みたいでちょっと寂し気。青空が見えるときは青春って感じで、もっと爽やかとしてるんだろうな。

 

 生徒じゃないくみが来てるのは、令ちゃんの取材についていくから。

 魔法少女だしいまさらな話だけど、令ちゃんだって中学生だし、夜に山奥に行くって聞いてちょっと心配だったんだ。危ないことがあったら大変だもん。

 

 でも、今の令ちゃんはしっかりしてる。ひとりでも大丈夫だろうなって信頼がどこかにある。じゃあ魔女が出てきたらって考えても、それでも。

 

「"私"も、もっと強くなれたらなぁ」

 

 なんとなく空を見上げると、雲の切れ間から眩しい光が見えた。

 

「あの時も、こんなだったっけ」

 

 ゆみが憧れて、くみが追いかける夢。ふたりが繋いだ大事なものだって、気づいたときのこと。それを思い出したら、くよくよなんてしてられないよね。

 そう、くみがマギウスの翼に入るきっかけになった『友杞 ゆみ』は元気にしてる。ドッペルを出したときは本当に心配だったけど、今は――

 

 その時。

 ガラッと勢いよく窓が開けられる音。青白のなにかが上から落ちて来て、スタッと着地した。

 

「ええーっ!? くれはちゃんが落ちてきた!?」

「よっと」

「うわわ、令ちゃんまで!」

「うちじゃいつもの光景扱いされるから大丈夫だよ」

 

 なんて言うけど、下校中の生徒たちからすごい目で見られてる。やっぱり南凪でも普通じゃないんじゃないかなぁ。

 

 という感想とは裏腹に、人が集まったりすることもなく、くみたちはそのまま出発できた。

 電車で北養区まで行っても狙いの時間じゃない。休憩したりはしたけど、写真に撮れることもなく……撮れるようなことが起きたのは、真っ暗な山道に入ってからだった。

 

「どうしたの帆秋さん、行こう」

「じゃあ先に行くわ。ついてきて」

「そっちに道ないけど……ちょ、ちょっと!?」

 

 ネタにはなると思う。思うけど!

 だってくれはちゃん、斜面とかも躊躇いなく進むんだよ!? ずささーって滑り落ちてくし、本気で走ってるのか結構速い。くみ追いつけないよ~!

 

「は、はぁ……待ってぇ~……」

「帆秋さんが本気で走ったらいくら魔法少女でもキツいんだって……あれ? 今、光が……なにか反射した?」

 

 なんて、途中で令ちゃんが見つけたのはデジタルカメラだった。

 

「ここに誰か来てたってことだよね? 落とし物なら届けないと」

「いや、ちょっと気になる……」

「これ、塁のよ」

「るい?」

「友達」

「また知り合い増やしてるし……」

 

 その"るい"ちゃんのがどうしてこんなところにって思ったら、くれはちゃんはまた全力疾走。次はどこまで行くんだろうって急いで追いかけたら、今度は茂みに飛び込んでた。も、もうくみ驚かないよ!

 

「ひええっ!? ――はっ、イミテーションクールッ!?」

「無事?」

「ふふ、もちろんさ。この程度、覇王たる僕にはなんともない。しかし、暗闇の帳でめぐり逢えたことは幸運だったな」

「そうね、真っ暗なのは怖いわよね」

 

 うん、正直に言うとね、ちょっと驚いた。こんな山奥にくみたち以外に人がいるなんて思ってなかったもん。

 

 彼女がその水樹塁ちゃん。

 特徴的な話し方は、くれはちゃん以外がいることに気づくと普通に戻っちゃった。個性的だからそのままで良いとくみは思うけどなぁ。「牧野チャンも似たようなものだよね」って言われたけど、なんのことかくみわかんな~い!

 

 同じく魔法少女で、"少女吸血鬼"を探しに来たら急な物音にびっくりして隠れてたんだとか。

 木々を踏むような茂みを揺するような謎の音がしたって言うけど、それくれはちゃんが走った音じゃないかな?

 

 でも、魔力の反応があったのも事実だ。

 こういう人の来ない山奥はね、危険なんだ。魔女の口づけを受けた人が連れてこられて、自殺させられちゃったりする。

 

 くみは魔法少女としては弱いし、マギウスの翼にいたこともある。けど、だからってみんなが傷ついていいわけない。できることはしなきゃ。

 

 気持ちを切り替えて4人で魔力を辿ってみると、やっぱり魔女の結界が。

 入るとそこには別の魔力反応。魔法少女のものだった。

 

「誰っ……!?」

「おっと、怪しいか怪しくないかで言ったら怪しいのが観鳥さんたちだけど、君に危害を加えるつもりはないよ」

 

 令ちゃんらしい言い方だなぁって思いながら確認すると、思ってもみない姿に声が出た。

 

「……あれ? クシュちゃん!?」

「郁美さん?」

 

 くみの名前を呼んだ子が着ていたのは白を基調とした赤と黒の装飾が目立つ衣装。それにコウモリの髪飾りと剣がふたつずつ。間違いない。聖リリアンナ学園の『入名 クシュ』ちゃんだ。

 

「牧野チャンの知り合いだったの?」

「うん、まだ黒羽根になりたての頃に聖リリアンナで会ったんだ」

「あの時はお世話になりました」

 

 "あの時"っていうのは、くみとクシュちゃんとゆきかちゃんが『ユメミカガミのウワサ』に巻き込まれた時のこと。実はゆきかちゃんもその時に初めて出会った。でも彼女はまだ黒羽根じゃなかったから、再会した時はびっくりしちゃったな。

 

「ふたりの知り合いなら観鳥さんにも会わせてくれたら良かったのに」

「ええと、それはね……私、『願い』の影響で――」

 

 クシュちゃんは太陽が出てる間は寝ちゃうんだ。夕方になんとか起きられても、普通の人が午前3時に起きて動き始めるみたいにとっても眠いらしい。

 けど、「影響が私だけで良かった」とも言っていた。太陽がなくなって朝の来ない世界になっていたら、人が住めなくなっちゃうからって。

 

「……まあ、そうだろうね。日の光がないと気温がどんどん下がって生きられない世界になる」

「そうなの塁」

「くれはさんはもう少し勉強したほうが良いと思うよ」

 

 クシュちゃんにはクシュちゃんの事情がある。そう願った理由も、人に話してくれる理由も、ね。

 5人も魔法少女が揃えば、もう魔女退治の心配はなかった。

 

 このふたり、すっごく強いんだ。クシュちゃんは知ってたけど、塁ちゃんまで。

 迫り来る使い魔をクシュちゃんは剣、塁ちゃんは鎌みたいな武器で切り裂く。戦い慣れてるみたいで、くみたちの援護もぜんぜん必要ない。

 

「いやはや、すごいね。クシュちゃん、速度が帆秋さんより上だ。踏み込みが見えない」

「令ちゃんがそう言うの!?」

「真実を言ってるだけだよ。ほら、また倒した」

 

 よーく見てみると、剣を構えたら消えて、使い魔の背後にいた。もう倒したんだ。

 じゃあ塁ちゃんはどうかって言うと、こっちはこっちで手からビームを出したり、もうハチャメチャ。

 

 うぅ、魔法少女の才能って、こういうことなんだよねぇ。

 でも、くみも負けてられない。もっと強くなっちゃうよ! 叶えたい夢があるから、やる気はいっぱいあるもん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あのふたりがあっという間に倒してくれて、観鳥さんたちが元の場所に戻るのにそう時間はかからなかった。

 

「さて、と」

 

 これから捜索を再開しようか話し合うみんなをよそに別の方へ足を向ける。

 向かう先は、少し離れた場所にいる塁さんのところだ。

 

「やあ」

「……なにか?」

「あの喋り方でいいよ。観鳥さんも結構好きだし、そういうの」

「聞かれてた……!?」

 

 第一声の反応が良くない。うーん、帆秋さんの知り合いだし、別に変とは思わないんだけど。あっ、もしやあることないこと広めると思われてるとか?

 

「取材中はボイスレコーダーつけてるんだけど、録音されてるかもね」

「お、終わった……広まっちゃう……」

「そうでもないよ。校内に掲示する観鳥報のネタには合わないから」

 

 いくら観鳥さんでもなんでもかんでも記事にはしない。

 ただ、ちょっとばかし悪戯心が湧いた。

 

「けど、真実を伝えるのが信条だからねぇ。スキャンダルやゴシップ、人に知られたくないことを張り出して恥ずかしめるのも日常茶飯事さ。観鳥さんは悪い人間だから、口約束はできないな」

「う、うぐっ」

「だから取引しよう。塁さんの固有魔法を教えてくれないかな」

 

 なぜか彼女はガードが固い。

 妙に仲が良い帆秋さんなら簡単に聞き出せそうでも、取材は観鳥さんの領域だ。自分なりのやり方でやるさ。

 

「……それだけ? なんだか怪しい」

「いやいや、これが重要なんだよ。気づかないうちに知らない固有魔法で全滅してました、なんてイヤだからね。種類を知っておくにこしたことはない」

 

 これは紛れもない観鳥さんの本音だった。

 レナちゃんの『変身』や帆奈ちゃんが持ってた『暗示』といい、存在を知らなければ絡め手や疑心暗鬼で一網打尽になりかねない固有魔法っていうのがある。そのものを知らなくとも、少しでも多く知っておいて推測できるようにしておきたかった。常々危ない場所に突っ込む帆秋さんのためにもね。

 ……もっとも、帆秋さんはなぜか毎回運良く対処できてたりするんだけど。

 

 すると塁さんは、おずおずとしながら話し始めた。

 

「……私のは、死相が見えるの」

 

 それって、死に近い顔つきのことだ。

 

 予想外の内容に詳しく聞いてみると、直接ではなく黒い靄として現れるらしい。絶対ではなく回避できるものだそうだと言うけど、これはとてつもない。

 

 彼女は未来が見える。

 いや、ある意味――運命が見えるのと同じなんだ。待ち受ける定めを事前に知ることができる。それが日常でも戦闘でもいかにアドバンテージとなるか計り知れない。

 たとえば結界に入る前に見てもらえば危険な子を下がらせることができるし、結界内でも魔女の罠や不意打ちを察知できるかもしれない。撤退の判断にもなる。白羽根だった頃の目線で言えば新人の教育にもってこいだ。

 

「凄いな……」

「え、凄いって、私が……」

「もちろんだよ、こんなに心強い魔法はない。まったく、帆秋さんの近くにいて欲しいぐらいだよ」

 

 そうすればいつかみたいな変な無茶はしなくなるだろうし、事前にわかれば総出で全力で止められる。ま、そんな心配はもうないけどね。

 

「呼んだかしら」

「聞こえてたらしい」

 

 こういうことはよく気づく。

 帆秋さんが「ならそっちに行くわ」と向かって来るのと、塁ちゃんが「じゃ、じゃあ、ちょっと見てみる」と目を凝らしたのはほぼ同時だった。

 

「今は特になにも見えないんじゃ――」

「あ」

 

 死相が、と彼女が叫んだ瞬間だった。

 帆秋さんの南凪の白い制服が、腹部からだんだんと赤くなっていく。日常的な光景に非日常が混ざったようで理解が遅れる。流れるそれが血だと判断できて、茂みの中から現れた男が包丁を突き刺したと気づくのに、数秒かかってしまった。

 

「――っ!」

「よくも!」

 

 ……正直に言おう。この中で最も出遅れたのは観鳥さんだ。

 

 最初に動いたのは塁さん。一瞬の判断で変身して男を蹴飛ばした。その間にクシュちゃんが帆秋さんを回収し、牧野チャンが周囲を警戒してくれていた。

 

 気絶して転がった男に、パッと目に入ったのは魔女の口づけ。魔女はさっき倒したはずなのに、別の魔女の影響を受けていたらしい。北養区はマギウスが保持していた魔女がフェントホープ倒壊の影響で多い。今回も多分それなんだ。

 

「うぅ、見えたのに……わかってたのに……」

「いい、あなたたち、じゃなくて……良かった……大丈夫、私は死なない」

「喋ったらマズいよ……!」

 

 塁さんとクシュちゃんに支えられた帆秋さんは、傷が深かったのか息も絶え絶えだった。呼吸が荒い、顔が青くなってる。初めて見る姿でなくとも、こんなもの、何度も見たくない。

 

 いくら魔法少女でもこのままじゃマズい。観鳥さんも牧野チャンも回復は得意分野じゃあないんだ。塁さんもクシュちゃんもそうらしい。

 マギウスとワルプルギスとの戦いじゃ、他にもたくさんの魔法少女がいたし、総出で簡易の治癒魔法をかければ治せるものもあった。環さんやれいらさん、ゆまちゃんみたいな回復に特化した固有魔法を持っている子もいた。

 

 けど、頭を過るのはあの時の出来事。

 

「死ぬことはないはずなんだ……」

 

 帆秋さんは記憶ミュージアムでの戦いでもっと大きな怪我を負ったことがある。それでソウルジェムが濁って、ドッペルの力で癒していた。他の魔法少女よりも異常に治りが早い彼女かつ、ドッペルの見た目が変わった今なら尚更だ。

 

 そう――()()()()()()()()()()()

 

 今は一刻も早く動くべきだ。やるべきことはわかってる。

 なのに、過去から伸びる見えない手が縛り付けているみたいでなにもできない。またあの頃の帆秋さんに戻ってしまうような恐怖が、思考を鈍らせていた。

 

 なんとか取り出したスマホも、持つ手が震えていてうまく操作できない。今この瞬間も帆秋さんは苦しんでるっていうのに。

 

 そこに手を重ねたのは、牧野チャンだった。

 

「いいんだよ。令ちゃんより年上なんだから、頼ってくれても。雫ちゃんだよね?」

 

 優し気に言うと、自分自身のスマホを手早く操作して電話をかける。

 気丈に振る舞ってはいたけれど、牧野チャンだって呼び出しの音が鳴り響く間、気が気じゃなかったはずだ。同じ目をしていたから。

 

 そして、空間の歪みが見えた時、やっと少し安心できたんだ。

 事態を把握した保澄ちゃんによって調整屋に直通で運ばれた後は、流れるように動いていった。夜と言ってもまだ早めだったというのもあって、みたまさんがいたのも僥倖だったろう。回復できる魔法少女も呼んでくれたらしく、外で待っていた観鳥さんたち四人が次に見たのは、元気そうな帆秋さんだったんだから。

 

「心配かけたわね」

「も、もういいの?」

「ほら、包帯はあるけど」

「待って待ってくれはちゃん! ここで素肌を晒さないで!」

「どうして」

「どうしたもこうしたもないよ~!!」

 

 誰が来るかわからないのに白い素肌を晒したら、そうもなる。

 ただ包帯は綺麗で、よほど魔法の治療の効き目が良かったらしい。あの場所からなら里見メディカルセンターも近かったけれど、面倒事を考えるとこれで良かったんだろう。

 

「ところで、私を刺したあの人はどうしたの」

「……あっ」

 

 その後、警察へ連絡するか魔女のことだから有耶無耶にするかを悩んだのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、聞いた? 帆秋さん、通り魔に襲われたんだって」

「え、ウソ!? ピンピンしてるよ!? 走り回ってたし!」

「擦り傷ぐらいだったんだって。良かったよねぇ」

 

 聞こえた会話の嘘に私は気づいた。

 傷の治りが早い魔法少女ならば、多少の傷は自力でどうにかなる。そうでなくとも調整屋ならグリーフシードの蓄えがあるし、伝手で回復できる魔法少女を呼んでくれる。昨日のみたまさんの様子からして、後者なんだろう。

 

「でも……」

 

 あの言葉が頭を過る。私とまったく同じ姿をした"私"の言葉が。

 

『明日の夜、北養区でくれはさんが魔女に操られた人に刺される。次は真里愛さん。その魔女を見つけて魔女の結界に乗り込むも、敗れて怪我を負う。最後は、魔女の口づけを受けた家族がみんな死ぬ』

 

 あれが予言だなんて信じてない。だけど、だけど――信じるしかない。

 

「絶対、私だけでなんとかする」

 

 




■今回の内容
 入名クシュ 魔法少女ストーリー1話 『粛清少女の受難』(一部分)
 入名クシュ 魔法少女ストーリー2話 『粛清少女の困惑』(一部分)
 入名クシュ 魔法少女ストーリー3話 『粛清少女の誤算』(一部分)
 『鏡が映すほんとうの私』(一部分)

■入名クシュ
 二刀流吸血鬼風粛清魔法少女。結構ベテラン。
 ゆきかちゃんが黒羽根になる前 = いろはちゃんが神浜に来る前から魔法少女として戦い続け、MSSではういちゃんが出てくるので一部の後もやっぱりソロで戦っている。強者。

■クシュMSS
 誰かさんが『正式に引っ越してくる前に』と言っているので、時系列的には第二部が始まる前。
 本来はみたまさんやかりんちゃんが出てくる。

■Only Dreamers
 クシュちゃんの初主役イベント。
 姉のように慕っていたモブ魔法少女アネカとクシュちゃんとの関係が語られる。なぜそこまで魔女を粛清するのかの謎も。

■アネカ
 妹を亡くし、『妹に代わる存在が欲しい』と願った魔法少女。そのためクシュちゃんが引っ越してきた。
 なお。魔女化の事実を知り、クシュちゃんの契約を後押ししてしまった後悔から絶望し魔女化。

■くれはちゃん
 『停止』くんがなければ即死だった。
 刺されるのは本来エミリー先生ですが、ハードモードだと退場しかねないので受けてもらいます。
 
■イベントの同時発生
 『彼女は走者必見の『珍しいことに会いやすい体質』という能力を持っています。数値などは存在しないフレーバー的な要素だと思われてきましたが、統計の結果、確かに観鳥さんと行動していると僅かですがイベントの発生確率が上がっているのです』
 パート2のこれが原因。

■雫ちゃん
 調整屋に運んでもらった。
 実は彼女自身、マギウス脱走時、ドッペル(1回目)、ドッペル(2回目)、キリカと計4回も調整屋に担ぎ込まれている。お得意様。

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