マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

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パート54 常夜の国の叛乱者 前編

 

 策略を最大限利用するRTA、はーじまーるよー。

 

 目が覚めるかと思ったらー知らない天井だったー。

 というわけで引き続き『常夜の国の叛乱者』の開幕です。失敗されると神浜が壊滅します。またか(呆れ)。

 

 スタート地点は全面ガラスの高層階の病室ですね。

 患者をガン無視して景観に特化したような謎設計のここは明らかに神浜の病室なのですが、なんとフランス。ずいぶん現代化したな(すっとぼけ)。

 

 ところがどっこい……夢ではなく現実……! セーフ! リセポイント通過!

 

 スタート地点は呼び出されたキャラに関係する場所が再現されるのですが、最悪の場合再現に困ったあげく神浜市がまるっと出現し脱出で大幅なロスをすることとなります。

 その点、建物なら窓ブチ破って出れば良いので簡単です。ただフェントホープだけは勘弁な!

 

 他に誰が呼ばれているかは『時を超えて鳴らす鐘』の参加キャラで変わります。いろはちゃんが参加している場合にはういちゃんが呼ばれるように、基本的には関係する子です。詳しく言うと因果が云々と色々ありますが、その認識でヘーキヘーキ。

 

 キャラによってはドラゴン騎士団環ういが爆誕したり、面白い組み合わせもありますが今回は特にありません。ほんへ見て、どうぞ。

 

 パーティを見ると今回は帆奈ちゃんと一緒ですね。あとは……みふゆさんに引っ張られた小さいやちよさんがどこかにいるはずです。

 やちよさんはやちよさんなので勝手に生き残ります。帆奈ちゃんのとこ行きましょ。

 

「あっ、くれは!」

 

 パパっといる場所までダッシュするとー誰かしらの記憶から姿だけ真似た『ミヌゥ』と『ラピヌ』がいたー。

 

「イッヒヒ! バレちゃった!」

「あらあら、こうも簡単に目くらましを見破るなんて」

 

 コルボーと合わせて仮面三姉妹などと言われるように、同じくとんでもない力を持っています。もちろん戦うわけねーよ!

 どうせ後でまた会うのでスルーして帆奈ちゃんと一緒に窓から脱出! 戦闘スキップ!

 

「ここ病院みたいだけど、無駄に広いし大きいし……あ、里見メディカルセンター? ってうーわ、見て見て外、真っ暗だよ」

 

 里見メディカルセンターだとまるで原作みたいだぁ……と言いつつ、こんなとこに長居する理由はありません。さっさと逃げましょ。

 

 移動中暇なので~……このイベントでやることを解説します。

 

 『常夜の国の叛乱者』のクリア条件は、数ある『正史の断片』を『白紙の予言書』という名のソウルジェム入りスマホくんで確定して、正しい歴史を取り戻すことです。 

 

 今回はゲームオーバーになってもそのまま少し前に戻れたり、助っ人魔法少女が4人いたりと無限稼ぎにうってつけの場所なため、他のチャートや通常プレイでは思惑通りしばらく常世の国に籠るのが定石となっております。失敗されたらリセなのでどうせ来ますし。

 

 しかーし、修正には『イベント戦』、『断片をスマホで撮影』、『正史のイメージが流れるので眺める』の3工程が必要で、RTAには致命的なロスです。こんなん毎回やってたら日が暮れちまうよ。

 

 なので最低限のものだけ確定させ、残りは別地点でスタートしたやちよさんたちに任せます。

 やちよさんはパーフェクトフリーダムみふゆさんに引っ張られて見た目が幼くなりますが、性能は据え置き。頼れるいつものやちよさんなら勝手にやります。

 

 加えて、別地点だと『エリザ・ツェリスカ』がいます。

 彼女はライフル銃を武器とする近距離・遠距離対応の万能魔法少女です。さすがにリズには劣りますが、タルトのような消費の重さもなく、技量も高い万能型。オーバーテクノロジーなガトリング砲で戦ってくれていることでしょう。

 

 さらにエリザ側には頼れるペレネル先生と頼れない白タヌキが遠隔通信で参加してるので、むしろ情報はあっちのほうが多いです。普通に攻略するなら合流したほうがいいですね。まあしないんですけど。

 

 それにしても……そろそろ着いてもいい頃なんですがなにやってんだこいつ……。

 

 ……どっ、どこに行けばよかとですか?(RTA走者にあるまじきミス)

 通しプレイ1回目だからね、全く把握できてないね。

 

「なにあれ、街みたいなのが見えるけど」

 

 はい、答えは『オルレアン近くの集落のゲート』でした!

 第一部が終わってもまだまだ気を緩めてはいけませんね。ゲートとはワープゲートのことなのでさっそく乗り込みましょう。おじゃましまーす。

 

 すると、普通の森に出ます。

 

「あっちに教会が――」

 

 あっおい待てぃ!

 寄ってはいけません。イベントが発生してロスするので全力で回避。このまま砦に向かって前進し、野営しているフランス軍と合流するが吉です。

 

 おう、やってるかい!

 

「あなたたちは……?」

「下がってタルト、魔力の反応がある。イングランド軍の魔法少女かもしれないわ」

 

 タルトとリズの二人に忘れられてて悲しいなぁ……。

 

 夢のフランスでの出来事が確定しておらず揺らいでいるので、そこで出会ったくれはちゃんのことも記憶から消えてしまいました。歴史が変えられたことにより、正しい歴史を忘れてしまっているわけですね。

 元に戻すためには事情を説明して、信用してもらって、協力して正史の断章を集めて……RTAでそんなのやってられねーよ! 通常プレイじゃなきゃ絶対ムリだぜ!

 

 なので、そのための帆奈ちゃんの出番です。

 

「え? やってみるけど……はい『復元』」

 

 帆奈ちゃんには骨董品店を見るついでに、みくらさんの『復元』をコピーしてもらっています。

 彼女がいなければかこちゃんの『再現』でも構いません。完全な歴史の修正と復元とまではいきませんが、ちょちょいと『停止』くんも加えて夢のフランスまでの記憶を取り戻してもらいます。

 

 夢での出来事は本来、術者であるミヌゥ以外は覚えていられません。イベントを進行させれば思い出すこともできますが時間がかかりまくり失踪しまくり白目剥いて吠えまくり。なのでコンボで即復活。

 でも『復元』は探し当てるタイプの魔法らしいっすよ? なんでできるか不思議っすね。

 

「そ、そうですっ! あなたは一緒に戦ったくれはさん! どうして忘れていたんでしょう……!」

 

 思い出したのでイベントを半分ほどスキップできました。一気に黒幕のもとへ乗り込めます。イングランド冷えてるか~?(冷害)

 

「あなたが来てくれるなんて心強い援軍です!」

「ここは夢じゃないのにまた来るなんて、本当に異常な状況なのね……詳しく説明するわ」

 

 そんなことしなくていいから……(せっかち)。

 長くなるので飛ばしますが、簡単に言うとフランスがやべぇってことです。いつもですね。

 

「――ということよ。フランスは今、闇に覆われている。オルレアンに生き残りを集めてはいるけれど、各地にも奮戦している兵士たちがいるわ」

「魔法少女になったメリッサも、メリッサのお父様と一緒に砦のひとつで戦っていると聞きます。まだ、誰も諦めてはいないんです」

「ね、ねえくれは……どうなってんのこれ、みんな目が本気なんだけど……」

 

 だって真実(マジ)だぜ。

 

 タルト関連イベントは複数ありますが、本当にフランスに来るのはこの『常夜の国の叛乱者』のみです。

 つまり、ここで手に入れたものは唯一現代に持ち越すことができます。もうおわかりですね?

 

「ところで背負ってる大きなそれは……」

 

 今こそ買っておいたリュックサックの出番です。

 背負っておくと、砦での探索中、どさくさに紛れて"偶然"にも宝石や食器が入ってしまうわけです。

 窃盗なんてしたら普通メンタルのくれはちゃんのソウルジェムが濁ってしまいますが、報酬としてお礼に貰った分に紛れてたまたま入ってしまう分には関係ありません。不思議ですねぇ、なんか増えてますよ。

 

 リュックサックが服と同じく所持品扱いなのでスマホと一緒に持ち込めるからできることですね。変身したら消えるから戦闘も安心!

 

 なお、難易度ノーマルまでならういちゃんが現代にロウソクを置いてくるイベントがあるので、ういちゃんに激重リュックサックを背負わせることになります。ういちゃん法と呼ばれるついでに置いてきてもらう方法です。

 

 でも戦闘中もうっかり偶然が欲しいですよねぇ。

 あっ先輩、こんなところに色々入る影を固有魔法に持つ魔法少女がいますよ。

 

「こいつの固有魔法使うの? 別にいいけどさ……」

「コピーできる魔法……随分と珍しいわね」

 

 これで帆奈ちゃんが『影の操作』を使えるようになりました。

 

 帆奈ちゃんは現代の存在なので、もちろん影も現代のものです。

 なので影に詰め込めるだけ詰め、詰め込もうぜ? "偶然"、影の中に食器や壺、宝石なんかが入り込んでしまっただけです。無実です無実。気にするこたぁねぇドンドン行こうじゃねぇか。

 

 加えてこの固有魔法、攻撃防御回避移動拘束なんでもやりたい放題し放題のよくばりセット。こんな簡単な戦力強化のチャンスを逃すわけにはいかないよなぁ?

 

 もっとも、熟練度がぜんぜん稼げてないので今は影を伸ばすぐらいしかできません。

 リズがいるうちに地獄のブートキャンプ開催! お金稼ぎも兼ねつつフランス強化合宿イクゾー!!

 

「お二人がいれば解決策も見つかる気がします。一緒に頑張りましょう!」

 

 白紙の予言書のこと教えてなかった(ガバ)。

 というかくれはちゃんたちも知らないわ(ガバ)。

 

 だが別に問題はないので魔女を捜して倒しつつイクゾー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他を全てスルーして、やってきましたロッシュ城。

 メリッサと合流することを最優先にすればイベントをいくつかスキップできます。

 

「お待ちしておりましたわ。乙女とその仲間たち」

「猫の仮面……コルボーの仲間!」

「ミヌゥと申します。どうぞお見知りおきを……」

 

 おっとゲートに入る前に敵襲。

 初っ端からネタバレしますが、このイベントは最初から最後まで全部ミヌゥの策略なので、彼女からすると正史の断片を集めてくれないと困るわけです。手段に迷ってるとわざわざ教えに来てくれます。ありがと~!!

 

「その白紙の予言書を持つ二人をこちらに渡していただければ、手を引いても構いませんが」

「予言書? なんにせよ、お二人は渡しません、私が守ってみせます!」

「どうやら価値がわかっていないご様子……ふふふ、それがいかに重要か、お教えしても良いですわ」

 

 あっ、いいっすかぁ!? 

 

「その小さな箱――」

「はぁッ!!」

「続くわ!」

 

 そうでしたね、どこのジャンヌダルクもだいたい脳筋でしたね。戦闘民族かなにか?

 

 始まってしまいました『仮面の魔法少女 ミヌゥ』戦。

 ついでに自我を失ったイングランド軍魔法少女のみなさんと魔女もいます。 

 

 ミヌゥは雫ちゃんのようにワープができるので、マジで戦う場合は逃げられません。

 しかも持っている焼きゴテは、強制的に魔力を消費させて魔女化させてくる即死アイテムです。ワープからの魔女化コンボとか避けられないんですがそれは(バランス)大丈夫なんですかね?

 

 もっとも今回は手下に時間稼ぎさせて話してくるだけなんで心配ありません。

 されどこの戦いに巻き込まれるとくれはちゃんは簡単にお陀仏なので回避に専念します。

 

「くれは下がってて、あんたは魔女とだけ戦ってればいい……」

 

 帆奈ちゃんの気遣い感じるんでしたよね?

 実際、ここまでくれはちゃんが誰一人札害(マイルドな表現)してないので、ヤっちまうとソウルジェムが穢れてまともに動けなくなります。フランスじゃドッペルも使えないのでゲームオーバー一直線です。

 

 なので回避! 回避! あっお話終わりました? お疲れ様でーす。

 

「……あれ、随分とあっさり帰ってったけど」

「白紙の予言書とやらの持ち主を殺せないけど、先に進ませるわけにもいかない。そんな雰囲気だったわね。配下の魔法少女にも徹底させていたようだった」

 

 さっき裏でミヌゥが必死に遠回しに説明してくれたのを聞いたため、これで正史の断片集めが可能となります。最低限しかやりませんけど。

 

 ミヌゥに感謝しつつメリッサと合流するので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢の中で夢だと気づくの、明晰夢って言うらしいね。眠たい授業で聞いたことがある。

 自覚する要因はたくさんあるらしいけど、あたしの場合は自分の状況だった。

 

「どこここ」

 

 気づいたら病院みたいな場所のベッドにいた。まだ夜なのか窓の外は暗くて、嫌に静かだ。

 昨日はちゃんと寝ていたはずなのに明らかにおかしい。着てるのは制服だし、なにより、それだけじゃない違和感がある。

 

 ――ぺた、ぺた。

 

 そういう、足音だ。

 スリッパで歩くような床との響きが、開けっ放しのドアの向こうから聞こえてくる。

 真っ暗闇でそれだけが響くのはホラーみたいで少し怖い。昔のような無力さを思い出させた。

 

 けど、今のあたしは違うわけ。あ、わかる?

 

「いやいや、誰に言ってるんだか」

 

 ちらりと視線を左手の中指に向ける。

 

 ……指輪がない。

 他の指にも、衣服のどこにも入っていない。あったのはスマートフォンだけだ。

 

「……うん、夢だし」

 

 怖いわけじゃないし。夢だからそんなこともあるって納得しただけ。

 

 こういうのはさっさと確認したほうが良い。どうせ普通の人間だろうし、なんかあったら起きればいいもんね。

 そーっと廊下を覗いてみると、ふわりと揺れるなにかに視線が動く。驚かずに済んだのはそれが淡い栗色の髪だったからに違いない。

 

「あら? あなたは……」

「だれだれ?」

 

 一瞬、くれはだと思った。

 だけどあいつはそんな喋り方しない。髪型も違うしふたりもいる。普通ぐらいの身長で優しそうな顔つきのと、活発そうな顔つきの小さいのだ。似てはいるけど表情豊かだしなんか嬉しそうだし、別人でしかない。

 

 ああ、でも、見たことあるような。あいつの部屋の、引き出しにしまってあった写真――

 

「帆奈ッ!」

 

 今度こそ、何度も聞いた声だった。

 別方向の廊下から跳んできたのは、くれはだ。あたしが間違えるわけがない。

 既に変身してたあいつは、あたしとの間に滑り込むと、あろうことかふたりにカトラスを向けた。

 

「ここは夢じゃない。スマートフォン、あるでしょう? それで変身できるわ」

「いきなりなに言ってんの。あんたがそう言うなら信じるけどさ……」

 

 夢の中でも現実でも、あいつが嘘を言うことはない。実際それで変身できた。

 問題は、目の前のこいつらだ。

 

「どうしたの? そんな姿で刃物を向けるなんて……めっ、ですからね」

()()()()()、怖い顔してるよ」

「喋るな……!」

 

 怒気を含んだ、らしくない声だった。

 

 あのくれはがそこまで感情を露にする、くれはに似ている相手。

 もう、いくらなんでも想像がつく。少しだけ話を聞いた――()()()()()の姉妹だ。 

 

 同時に納得がいった。

 ここが夢じゃないのなら、あいつらは魔法かなんかで現れた偽者。くれはが姉妹のことを大好きだったのは、あの家に住んでたら嫌ってくらいわかるんだ。そこを土足で踏みにじられたのなら、そりゃ、いくらなんでも怒る。

 

 けど、心がざわつく。

 見える背中はすぐそこなのに、どこか手の届かない遠くにあるように見えて、あたしがまだ知らないってことが示されているみたいだ。

 どんな表情をしてるのか確かめる勇気もない。もしも、そこにあるのが無表情じゃなかったら――あたしは、その原因を、どうする?

 

 ……それでも、くれはは"それ"を望まないはずだ。そうに決まってる。

 

 思考を止めて、心配を振り払うように前を見ると、小さいほう……妹の丸っこい目がぐりぐりと動いていた。

 

「あー、ふふ――んふふっ……」

 

 楽しそうに笑っていた口が、裂けそうなほどに吊りあがって。

 

「イッヒヒ! バレちゃった!」

「あらあら、こうも簡単に目くらましを見破るなんて」

 

 まばたきをした途端、妹が桃色の髪とウサギみたいな仮面をした奴に、姉が金髪とネコみたいな仮面をした女に、それぞれ姿を変えた。

 

「どうして偽者とお分かりに? そう簡単に破れる魔法ではないはずですのに」

「ふたりがここで、そんな表情をしてるわけがない」

「それはそれは、記憶から再現したというのに」

「ねえミヌゥ、話すのはいいからさぁ、もうやっちゃっていーい?」

「どうぞラピヌお姉さまの好きなように……殺しさえしなければ、どう遊んでいただいても構いませんわ」

 

 敵。そう判断した瞬間、桃色の光線があたしの頬をかすめた。ラピヌと呼ばれた小さいほうの背後に浮かぶ、空洞のある円にウサギの耳が生えたものが光っている。確認するまでもない。次弾が来る。

 人間と戦うのは初めてじゃない。くれはじゃ手加減するだろうし、あたしがいてよかった。

 

「掴まって!」

「えっ、ちょっ!?」

 

 けど急に抱きかかえられて、とんでもない速度で部屋に入って窓にぶち破った。やることが早すぎる。

 

 全身に感じたのは浮遊感。暗くてわからなかったけど、どうやら1階じゃなかったらしい。

 じゃあって下を見ると地面は――遠い!

 

「はぁぁ!? ここ何階だと思ってやったの!?」

「いつもやってるじゃない」

 

 その言い方は知ってるもので、ちょっと安心した。

 いやしてない。いつもは学校とかの話。いくら魔法少女で身体能力が上がっててもこんなとこから落ちたら痛いでしょ。限度がある。

 

 結局、コンクリートに叩きつけられる……ことはなく、カトラスを『停止』で止めて足場にした。へへっ、便利だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら身体が縮んでいた。

 

「夢ね、夢……」

 

 神浜市立大附属の制服を着ているし、明らかに視点が低いし、そもそも周囲は真っ暗闇だし。おかしすぎる。

 

 持っていたスマホで自分を写してみると、やはりと言うべきか、ショートボブの髪型だった頃の私がいた。

 これは魔法少女になり立てで、みふゆと初めて出会った頃の姿だ。もう6、7年も前のことになる。見た目の他にも、今と比べたら力も心も随分と幼かった。

 

 けれでも特に驚くこともない。自分の姿が変わっていることもあって、ここが夢の中であると私自身すんなり受け入れていた。

 

 あるいは、それこそ油断させるためだったのかもしれない。

 最初からずっと囁いていたのよ。胸の内に眠る魔法の残滓か、想いの欠片か。それが伝えている――()()()()()()()()と。

 

 気づいたのは、コルボーと名乗る魔法少女と相対して手傷を負わされてからだった。

 

「ぐっ……」

「随分楽しませてくれるじゃないか、青いの!」

「こっちは楽しくないわよ」

 

 理由はわからないけれど、スマホで変身できて良かった。

 この黒いのはかなりの手練れで手加減できる相手じゃない。徒手空拳で打ち合うかと思えば、羽根で動きを止めるなんて小細工までしてくる。

 

 身体に感覚が追いつかず反応が遅れる。グリーフシードの蓄えがひとつもないのに魔力が想定以上に減っていくことがじりじりと焦らせた。

 その劣勢を覆したのは、闇の中に輝く金髪だった。

 

「そこのあなた! しゃがんでくださいまし!」

 

 絶え間なく轟く急な銃声。頭上を通り過ぎる煌く光。たった一丁のライフルから、ガトリング砲のごとく弾丸が連射される。

 

「ほぅ、新手か!」

 

 コルボーが距離を取り、隙ができる。

 銃声が止む。これを狙っていたのか、ニヤリとした金髪の彼女は走り寄って、私を立ち上がらせた。

 

「走れますわね、行きますわよ!」

 

 この人物は何者なのか。ともかく助けてくれるようだったし、深く考えずにひた走った。

 コルボーの速度を考えたら追いつかれるはずだというのに、遊んでいるのか本気で追いかけてこない。次第に姿が見えなくなり、逃げきれたようだった。

 

「ここまで来れば安全ですわね」

「はぁ……ありがとう」

「なんの、幼子を守るのも誇り高きドラゴン騎士団の務めですわ!」

 

 幼子。幼子って言われたわ。

 ……いえ、それよりも。

 

「ドラゴン騎士団って……」

「おっと、そうですわね。落ち着いたことですし、自己紹介をしましょうか」

 

 すると彼女は、どこかで見たような雰囲気と誇りある口振りで宣言したのだった。

 

「わたくしは神聖ローマ皇帝ジギスムントの偉大なる妃、バルバラ・ツェリスカが娘。ドラゴン騎士団の一人、エリザ・ツェリスカ! ……よろしくね」

 

 それから続いた自己紹介は、私が見た目通りの年齢じゃないと告げて驚かれるまで続いた。

 「年上っ!?」なんて言われても、仕方ないじゃない。私だって望んでこうなってるわけじゃないし。

 

 それに驚いたのはこっちも同じ。

 ドラゴン騎士団とは、中世に存在した騎士団だとどこかで見た覚えがあったし、そこに属するエリザが言うには、この暗闇の世界はフランス領内なのだという。過去の組織名が出てきたり、魔女や使い魔が跋扈する夜の国と化しているここが外国だなんて言われたり、ますます夢としか思えなくなってきていた。

 

「とまあ、放っておけばフランスどころかこの世が闇に呑み込まれてしまう。そういうこともあって、わたくしはあなたを助けに来たのですわ。その小さな箱……『白紙の予言書』の持ち主をね」

「予言書って、これスマートフォンよ?」

「ス、スマート?」

「ああ、通じないわよね、魔法少女で言うなら遠隔で届くテレパシーみたいな……」

『こういうことだね』

 

 途端に頭に響いたのは、聞き覚えのある厄介者の声だった。

 

「この声、キュゥべえじゃない」

『魔法少女なら知ってるだろうね。詳しくはボクともうひとり……』

『私が説明しましょう。初めまして――錬金術士のペレネル・フラメルと申します』

 

 見晴らしの良い周囲にそれらしき姿はなく、どこから声が届いてるのかと思えば、二人はフランス領外にいるらしい。エリザに持たせた"荷物"の中に特殊な石があって、それを媒介に繋げているそうだ。

 

『まず知っていてもらいたいのは、おそらくキミはタイムトラベルしたということだ』

 

 そんな衝撃的な言葉から始まった説明に、私は頭を抱えた。

 

 3か月ほど前、オルレアンを中心に大きな時空の歪みが観測されたらしい。どうやって? とはもう考えるのを止めた。

 それはちょうど、かのジャンヌ・ダルクが属するフランス軍とイングランド軍の戦い――フランス百年戦争におけるオルレアン包囲戦の最中だったとか。

 

 そこで何者かがタイムパラドクスを引き起こし、時空そのものが不安定になったそう。

 フランスが勝つ歴史とイングランドが勝つ歴史がぶつかり合い、現在も未来も定まらない矛盾した状態になってしまっている。

 

 闇に見えるものは時空の歪み。虚無の海たるタイムパラドクス。今や無事な場所は島のように飛び飛びにあるだけで、フランスはほぼこの有様らしい。

 一度は確定した歴史を、因果律を覆して変えてしまうと世界がこうなるだなんて、やっぱり夢じゃないかと思ってしまう。いくら魔法少女だからってスケールが違いすぎるのよ。

 

 夢じゃないならこの姿は? と聞くと、「身体と精神で呼び寄せられるタイミングが違ったんだろう」とのこと。それぞれ別の要因で選ばれたとか。

 

 さらには私のスマートフォンが『白紙の予言書』とやらになり、しかもここにソウルジェムが入っているのだとか。変身できてしまったし、どこまで行ってもソウルジェムから離れて意識を失うなんてことがなかったのだから事実なのだろう。

 

「……はぁ」

 

 こうしてスマホを弄っていることだけが現実味のある行為で、なにもかもがよくわからない。

 なんとなくみかづき荘の写真でも見て気持ちを落ち着かせようと、保存されているアルバムを呼び出した。

 

 目に留まったのは、神浜マギアユニオンの結成式で撮った写真だった。

 

「――ッ、な、なによ、これ……!?」

 

 私以外の誰もが、消えている。

 いろはも、鶴乃も、フェリシアも、二葉さんも、ももこも、レナも、かえでも、全員の名前をあげきれないほどに。

 

 急いで他の写真を確認すると、もう一つおかしなものがあった。

 順番からして、せっかくだからって帆秋さんがいる時に観鳥さんに撮ってもらったもの……のはず。

 

 そうとしか言えないのは、ただただ、赤かったから。

 知っているみんなも緑の公園も塗り潰されていて、唯一くっきりと見える帆秋さんは怖いくらいに無表情。なのに真正面に向けられた瞳はとても感情的で、胸が張り裂けそうな悲しみが伝わってくる。

 

『誰もが消える未来も、悲劇的な未来も、まだ定まっていないということです。そして、平和な未来も』

 

 ペレネル・フラメルの言葉に追い立てられたわけじゃない。

 ただ、このままじゃいけないと思って、変身して槍を掴んだ。

 

「手伝うわ。未来を取り戻す」

 

 正史の断片とやらを探し出して、白紙の予言書で確定させる。

 それぐらい、すぐに解決してみせるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、意気込んだものの。

 

「チーズケーキ! どうなってますの!」

『どうやら正史の断片を確定させられるのはキミたちだけじゃないらしい。その何者かがタルトたちと出会って、先に確定させていってるんじゃないかな。にしてはただただまっすぐで、最初から目的地が決まっているようだ。断片に見落としがあるようにも見えるけど』

『ではこちらはその抜けを確定させてしまいましょう。手数が増えたのは良いことだわ』

「……まあ、悪くはないわよ。追っていけばいずれ出会えるでしょうし」

 

 行く先々で出てくる誰かを思わせる、どこかで覚えた既視感があったのだった。

 

 




■今回の内容
 『常夜の国の叛乱者』

■エリザ・ツェリスカ
 ドラゴン騎士団の魔法少女。神浜に連れてくるとバランスが壊れる遠近火力担当。笑い声は「にょわほほほ」。驚いたときは「ぴゃっ!?」。あざとい。
 実はいつも使うライフルはペレネル先生に作ってもらった後付け武器で、本来の得物は籠手と尻尾。

■やっちゃん
 身体は子供、頭脳は大人。ななみやちよちゃん。
 原因の5割はみっふ。残りはみっふを連れてったくれはちゃん。

■帆奈ちゃん(影)
 リズの固有魔法『影』をコピーした。
 『暗示』があった頃並みに対魔法少女戦闘力が上がる。

■ラピヌ
 仮面の魔法少女。長女。
 見た目は子供。頭脳も子供。そんなに強くない(フランス基準)。

■ミヌゥ
 仮面の魔法少女。三女。
 昔は年相応の見た目だったので急成長したと思われる。
 
■常夜の国の叛乱者
 簡単に言うと過去に行って歪んだ歴史を正して未来を取り戻すグランドなオーダー。
 現地で協力してくれる人も遠くから通信してくるサポート枠も白いマスコットもいる。
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